(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】缶蓋
(51)【国際特許分類】
B65D 17/34 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B65D17/34
(21)【出願番号】P 2019042834
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2022-02-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯村 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】小南 敦嗣
(72)【発明者】
【氏名】興 敬宏
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 健太郎
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-131518(JP,A)
【文献】特表2011-500463(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0273492(US,A1)
【文献】特開2011-037467(JP,A)
【文献】実開昭55-153329(JP,U)
【文献】特開平04-044950(JP,A)
【文献】特開2012-197103(JP,A)
【文献】特開2006-315747(JP,A)
【文献】特開平11-105870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶蓋開口用のタブと、該タブが固定された缶蓋本体と、を備えた缶蓋であって、
前記缶蓋開口用のタブは、
固定部を介してタブ本体が前記缶蓋本体のパネルに固定され、前記タブ本体のタブ先端部がスコア近傍に配置され、前記固定部に対してタブ先端部と反対側の端部に初期開口時に指を掛ける第1指掛かり部が設けられており、
前記タブ本体を構成する板材を円弧状に折り返したカール部により構成される前記第1指掛かり部の形状は、前記缶蓋本体に対して前記タブ本体側から直交方向に見た平面視においては、前記固定部に向かって凹状に湾曲する湾曲形状
であって、中央部の端部に対する窪み寸法が0.2mm~1.0mmの湾曲形状となっていると共に、
前記缶蓋本体には、前記初期開口時に前記固定部ごと前記パネルの一部を開口するための補助スコアが設けられていることを特徴とする缶蓋。
【請求項2】
前記第1指掛かり部は、前記缶蓋本体のパネルと平行方向であって前記第1指掛かり部の中央部と前記固定部が重なる方向から見た側面視において、前記パネル面との間隔が、前記中央部が両端部よりも大きくなるように凸状に湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の缶蓋。
【請求項3】
前記第1指掛かり部は、前記側面視においてアーチ形状に湾曲する構成で、前記平面視において、両端部を結ぶ線に対して中央部が前記固定部側に入り込んだ位置となるように傾斜する傾斜アーチ形状となっている請求項2に記載の缶蓋。
【請求項4】
前記第1指掛かり部の前記缶蓋本体のパネルとの対向面が、第1指掛かり部から前記固定部に向けて、前記対向面と前記パネル面との隙間が徐々に狭くなる方向に傾斜する傾斜面となっている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の缶蓋。
【請求項5】
第1指掛かり部の前記パネルとの対向面は、前記パネルとの傾斜角度が、前記第1指掛かり部の両端部から前記中央部に向けて徐々に大きくなり、前記中央部において最大となるように傾斜する傾斜面となっている請求項4に記載の缶蓋。
【請求項6】
開口時に前記パネルの除去片と共に前記タブが除去される易開封性の缶蓋開口用のタブであり、前記タブ本体には、前記固定部と前記第1指掛かかり部の間に指が挿入可能な指掛け穴が設けられ、前記指掛け穴の前記第1指掛かり部に対して固定部側の縁部が第2指掛かり部となっている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の缶蓋。
【請求項7】
前記タブの外周縁には、前記タブ本体を構成する板材を円弧状に折り返したカール部が前記タブ先端部を除いて全周に亘って形成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の缶蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指掛かり性の向上及び不意開口の防止を図った缶蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の缶蓋開口用のタブとしては、たとえば、特許文献1に記載のようなものが知られている。すなわち、タブはリベット(固定部)を介して缶蓋のパネルに固定され、タブノーズ(タブ先端部)がスコア近傍に配置され、リベットに対してタブノーズと反対側の端部にスコアの初期開口時に指を掛ける指掛け部(第1指掛かり部)が設けられている。
缶蓋を開口する際には、タブの指掛け部に指を掛け、リベットを支点として上方に引き起こすことにより、タブノーズでスコアを初期開口し、初期開口した後、タブのリング部内周縁(第2指掛かり部)に指を掛け、上方に引っ張ることによって、スコアを初期開口部から連続的にせん断し、スコアに囲まれた部分を除去して缶蓋を開口するようになっている。
また、缶蓋のパネルには、指掛け部に近接する一対のディンプルと、この一対のディンプルの間に設けられた凹部が設けられている。凹部を設けることにより、指掛け部とパネルとの隙間を大きくして指掛け部に指先が掛かりやすくし、さらにディンプルを設けることによって、缶蓋を積み重ねた際に、上位の缶蓋が指掛け部に引っ掛からないように、あるいは缶蓋を装着した缶を積み重ねた際に、上位の缶の缶底が指掛け部に引っ掛からないようにして、缶蓋が不意開口することを防止するようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-30849号公報
【文献】特許第5741198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の缶蓋は、指掛け部がリベットとは反対方向、すなわち後方に向かって凸状に湾曲しているために、指の接触面積が狭く、初期開口時に、指の狭い範囲に力が集中し、指先への圧力、圧迫感が大きくなって、指の痛みを伴う作業となっていた。
また、特許文献2には、直線的に延びる指掛かり部(第1指掛かり部)が開示されているが、特許文献1よりも指の接触領域が広がるものの、やはり、指先への圧力、圧迫感が大きい。
本発明の目的は、初期開口時の指掛かり性の向上、指への圧力、圧迫感の軽減、ならびに指掛け部への指先案内性の付与により、開口操作を容易にし、加えて不意開口の防止を図った缶蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、
缶蓋開口用のタブと、該タブが固定された缶蓋本体と、を備えた缶蓋であって、
前記缶蓋開口用のタブは、
固定部を介してタブ本体が前記缶蓋本体のパネルに固定され、前記タブ本体のタブ先端部がスコア近傍に配置され、前記固定部に対してタブ先端部と反対側の端部に初期開口時に指を掛ける第1指掛かり部が設けられており、
前記タブ本体を構成する板材を円弧状に折り返したカール部により構成される前記第1指掛かり部の形状は、前記缶蓋本体に対して前記タブ本体側から直交方向に見た平面視においては、前記固定部に向かって凹状に湾曲する湾曲形状であって、中央部の端部に対する窪み寸法が0.2mm~1.0mmの湾曲形状となっていると共に、
前記缶蓋本体には、前記初期開口時に前記固定部ごと前記パネルの一部を開口するための補助スコアが設けられていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、次のように構成することができる。
1.前記第1指掛かり部は、前記缶蓋本体のパネルと平行方向であって前記第1指掛かり部の中央部と前記固定部の重なる方向から見た側面視において、前記パネルとの間隔が、前記中央部が両端部よりも大きくなるように凸状に湾曲する構成とする。
第1指掛かり部は、中央部が前記パネルからの距離が大きくなるように凸状に湾曲しているので、固定部に向かって凹状に湾曲していることと相俟って、指先が入りやすく、開口操作が容易である。
また、第1指掛かり部は固定部に向かって凹状に湾曲しているので、缶を上下に積み上げた場合、あるいは缶蓋を上下に積み上げた場合に、上位の缶の缶底の縁や、上位の缶蓋の縁が第1指掛かり部に当たっても、缶蓋本体のパネルとの隙間が最も大きくなる中央部は、パネルとの隙間が最も大きく缶底や缶蓋の縁が引っかかりやすい中央部は固定部に向かって凹状に湾曲しているので缶底や缶蓋の縁からは遠い位置となるため、引っ掛かりにくく、不意開口を防止することができる。
2.前記第1指掛かり部は、前記側面視においてアーチ形状に湾曲する構成で、前記平面視において、両端部を結ぶ線に対して中央部が前記固定部側に入り込んだ位置となるように傾斜する傾斜アーチ形状となっている。
傾斜アーチ形状とすることにより、第1指掛かり部に指先形状がより一層に当接しやくなり、持ち上げる際に指先への圧力、圧迫感をより低減することができ、開口操作が一層容易となる。
3.前記第1指掛かり部の前記パネルとの対向面が、第1指掛かり部から前記固定部に向けて、前記対向面と前記パネルとの隙間が徐々に狭くなる方向に傾斜する傾斜面となっている。
パネルとの対向面が傾斜面となっているので、対向面に指先の腹面を当てることができ、初期開口時のタブの持ち上げが、容易、確実、かつ、楽に行うことができ、開口性が向上する。
4.第1指掛かり部の前記パネルとの対向面は、前記パネルとの傾斜角度が、第1指掛かり部の端部から中央部に向けて徐々に大きくなり、中央部で最大となるような湾曲した傾斜面となっている。
パネルとの対向面が中央部の傾斜角度が最大となるように構成されるので、中央部に指先を誘導することができ、引き起こし方向を、自然とタブ先端部に向かうように誘導することができる。
5.前記パネルの除去片と共にタブが除去される易開封性の缶蓋開口用のタブであり、前記タブ本体には、前記固定部と前記第1指掛かり部の間に指が挿入可能な指掛け穴が設けられ、前記指掛け穴の前記第1指掛かり部に対して反対側の縁部が第2指掛かり部となっている。
このような易開封性の缶蓋開口用のタブは、初期開口時に大きな力を要し、本発明のよ
うに、第1指掛かり部の形状を、平面視において固定部に向かって凹状に湾曲させておくことが効果的である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1指掛かり部は、固定部に向かって凹状に湾曲しているので、初期
開口時の指掛かり性の向上、指への圧力、圧迫感の軽減、さらに、指掛け部への指先案内性の付与により、開口操作が楽にでき、加えて不意開口の防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本発明の実施の形態に係る缶蓋を示すもので、(A)は平面図、(B)は(A)の第1中心線N1に沿う断面図である。
【
図2】
図2は
図1の缶蓋のタブ周辺を拡大して示すもので、(A)は拡大平面図、(B)は(A)の第1中心線N1に沿う断面図、(C)は(B)をC方向から見た図である。
【
図3】
図3は
図2のタブの第1指掛かり部近傍の斜視図である。
【
図4】
図4(A)は
図1の缶蓋開口用のタブの指掛け状態の説明図、(B)は(A)の初期開口状態の説明図、(C)は指先の接触状態を示す平面図、(D)は従来のタブの指先の接触状態を示す平面図、(E)は(D)の指先の接触部分の断面図である。
【
図5】
図5(A)は本発明の他の実施形態に係る缶蓋の部分平面図、(B)は(A)の第1中心線N1に沿う断面図、(C)は缶蓋を積み重ねた状態の説明図、(D)は比較例のタブの部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る缶蓋の全体構成について説明する。
図1(A)は、缶蓋の全体構成を示す平面図、
図1(B)は(A)の第1中心線に沿う中央縦断面図である。
この缶蓋1は全面開口用の易開封性の缶蓋で、全面開口用のスコア6が形成された缶蓋本体2と、缶蓋本体2に固定部としてのリベット部7によって固定される缶蓋開口用のタブ10と、を備えている。以下、
図1(A)の平面図において、パネル中心O1とリベット部7の中心O7を通る線を第1中心線N1、パネル中心O1を通り第1中心線N1と直交する線を第2中心線N2とする。
缶蓋本体2は、パネルを構成する円形のセンターパネル3、センターパネル3の周縁から立ち上がるチャックウォール4、及びチャックウォール4に連続して形成されたシーミングパネル5を有している。
センターパネル3は円板形状で、スコア6は、センターパネル3の周縁に全周に亘って連続的に設けられ、開封時には、スコア6に囲まれた円形の開口予定部3aがタブ10と共に除去される。リベット部7の近傍には、初期開口時にパネルの折れ曲がりを容易にする補助スコア8が設けられている。また、センターパネル3は、環状の段差部33を介して、段差部33とパネル周縁との間の第1パネル部31と、第1パネル部31より一段窪んだ中央領域の第2パネル部32とを備えている。段差部33は、センターパネル3の周縁と同心円状の優弧状の円弧部331と、円弧部331の両端を結ぶ直線部332とを有するD字形状となっている。この例では、直線部332は、第1中心線N1と直交する方向に延びている。また、第1パネル部31には、第1中心線N1と第2中心線N2によって区分される4つの領域に、それぞれ上方に向かって突出するエンボス部34が設けられている。エンボス部34の高さは、缶蓋を重ねた際に、上位の缶蓋の底面を支持するもので、上位缶蓋の底面がタブと干渉しないように構成されている。
【0010】
タブ10は、第1中心線N1に対して線対称形状の卵形の輪郭を有する板状部材で、タブ本体11が缶蓋本体2のセンターパネル3の第1パネル部31に固定され、タブ本体11の小径側の端部であるタブ先端部12がスコア6近傍に配置されている。また、リベット部7に対してタブ先端部12と反対側の大径側の端部である後端側に初期開口時に指を掛ける第1指掛かり部20が設けられている。
リベット部7はタブ先端部12に近く、センターパネル3の第1パネル部31に位置し、第1指掛かり部20の位置はセンターパネル3のパネル中心O1近くに配置され、段差
部33の直線部332を超えて第2パネル部32に面している。
タブ10の外周縁には、
図1(B)に示すように、タブ本体11を構成する板材を裏面側に円弧状に折り返したカール部17が、タブ先端部12を除いて全周に亘って形成されている。タブ先端部12は、第1中心線N1に沿った方向に谷形状に屈曲させて剛性が高められている。
また、第1指掛かり部20が設けられるタブ10の後端部は、両端部が円弧状のコーナー部13c,13cを介してタブ10の側辺部16,16につながる構成となっており、第1指掛かり部20は、両端のコーナー部13c,13cの間に形成されている。
また、タブ本体11には、リベット部7と第1指掛かり部20の間に指が挿入可能な指掛け穴14が設けられ、また、指掛け穴14の縁部にも、カール部18がリング状に全周に亘って形成されており、指掛け穴14の第1指掛かり部20に対してリベット部7側の縁部が、初期開口後の第2指掛かり部30となっている。この第2指掛かり部30は、平面視において、反リベット部側に僅かに凸状に湾曲する構成となっているが、直線的に構成としてもよい。なお、指掛け穴14の周縁部をリング13とすると、リング部13の後端部に第1指掛かり部20が設けられることになる。
【0011】
次に、
図2を参照し、第1指掛かり部20の形状について詳細に説明する。
図2(A)は、
図1のタブの部分拡大平面図、
図2(B)は
図2(A)の第1中心線に沿った断面図、
図2(C)は、
図2(B)をC方向から見た側面図である。
すなわち、
図2(A)に示すように、第1指掛かり部20を、センターパネル3に対してタブ本体11側から直交方向に見た平面視において、リベット部7に向かって凹状に湾曲する湾曲形状となっている。図示例では、第1中心線N1上に位置する曲率中心(不図
示)を中心とする円弧形状となっている。
第1指掛かり部20の断面形状は、
図2(B)に示すように、カール部17に沿って、天面側から裏面にかけて円弧状にUターンする円弧断面であり、第1指掛かり部20の平面視における輪郭線Lは、円弧断面がリベット部7と反対側に最も突出している突出端の形状である。第1指掛かり部20は、タブ10の後端の輪郭線Lを含む断面円弧状の領域を中心に、初期開口時にタブ10を引き起こす際に指が当接する領域であり、第2パネル部32と対向するパネル対向面20c側も含まれる。
第1中心線N1と直交方向の両端部20b,20bはコーナー部13c、13cに接続され、この両端部20b,20bは、第1中心線N1と直交する直交線V1と接しており、中央部20aは直交線V1から、所定の窪み寸法hだけリベット部7側に入り込んでいる。
第1指掛かり部20の端部20b,20b間の距離Aは5~15mmが好ましく、8~11mmがより好ましい。第1指掛かり部20の曲率半径Rは、6~74mm、中央部20aの端部20b,20bに対する窪み寸法hは、0.2~1.0mmとすることが好ましく、0.4~0.8mmがより好ましい。なお曲率半径Rは距離Aならびに窪み寸法hが上記の範囲を満たせば単一曲率でなくてもかまわない。例として複合Rあるいは台形形状であってもよい。
窪み寸法hが0.2mmより小さい場合、フラットに近い形状となり、指への圧力、圧迫感が大きくなる。一方、窪み寸法hが1.0mmを超えると、既存の設備で、従来のタブと同じ材料を用いて第1指掛かり部20のみを一部変更して本形状に加工すると、カール部17の形状が崩れ、安定した形状、寸法が得られなくなる。窪み寸法hを、0.2以上とすれば、指先の形状に近く湾曲させることができ、指への圧力、圧迫感を軽減でき、1.0mm以下することで、既存の設備で安定した寸法の湾曲形状を成形することができる。
【0012】
次に、
図2(C)を参照し、第1指掛かり部20の側面形状について説明する。
この側面図は、第1指掛かり部20を、センターパネル3の第1パネル部31及び第2パネル部32と平行方向であって、第1指掛かり部20側からリベット部7の方向を見て
、第1指掛かり部20の中央部20aがリベット部7の中心O7と重なる方向、すなわち、第1中心線N1に沿った方向から見た側面視の投影図である。この側面図において、第1指掛かり部20は、センターパネル3に対して、中央部20aが両端部20b,20b
よりも高くなるように凸状に湾曲している。
この第1指掛かり部20の凸形状を、上記平面視における輪郭線Lの形状として説明すると、この輪郭線Lは、側面視において、二点鎖線で示すように、第1指掛かり部20のほぼ中央に現れており、この輪郭線Lの形状が、センターパネル3に対して凸状に湾曲している。この湾曲形状は、センターパネル3に対する傾斜角度(輪郭線の接線とセンターパネルとのなす角)が、両端部20b,20bにおいて最も大きく、中央部20aに向け
て徐々に小さくなり、中央部20aにおいては、ほぼ水平となるように湾曲するアーチ形状となっている。
なお、第2指掛かり部30についても、中央部が端部よりも若干高く、第2パネル部32に対して凸条に湾曲している。第2指掛かり部30の湾曲度合は第1指掛かり部20よりも小さく、直線的に構成してもよい。
図3は、第1指掛かり部20を概略的に示す斜視図である。
すなわち、第1中心線N1を通るセンターパネル3と直交する面を第1中心面N0とし、第1指掛かり部20の両端部を結ぶ直交線V1を通るセンターパネル3と直交する面を直交面V0として、第1指掛かり部20の輪郭線Lを立体的に示している。
図示するように、第1指かかり部20は、輪郭線Lの中央部20aが、両端部20b,20bと接する直交面V0に対して窪み寸法hだけリベット部7側に位置するように、リベット部7側に傾斜する傾斜アーチ形状となっている。
【0013】
次に、第1指掛かり部20のパネル対向面20cについて説明する。
図2(B)に示すように、第1指掛かり部20のセンターパネル3の第2パネル部32と対向する対向面20cは、第1指掛かり部20からリベット部7に向けて、第2パネル部32との隙間が徐々に狭くなる方向に傾斜する傾斜面となっている。この対向面20cの第2パネル部32との傾斜角度(
図3の第1中心面N0に対して平行の面で切断した場合の傾斜角度)は、第1指掛かり部20の両端部20b,20bから徐々に大きくなり中央部20aにおいて最大となるように傾斜する構成となっている。この対向面の第1中心
面N0で切断した傾斜角度は、5-10°となっている。
【0014】
次に、本発明の作用について説明する。
缶蓋を開口する際には、
図4(A)に示すように、タブ10の第1指掛かり部20に指先を当てながら、タブ10と第2パネル部32との隙間に指先を入れ、リベット部7を支点として上方に引き起こすことにより、てこの作用によって、タブ先端部12でスコア6を部分的に初期開口し、さらに、タブ10を親指と人差し指で掴んで90度程度まで引き起こす(
図4(B)参照)。初期開口した後は、特に図示しないが、タブ10の指掛け穴14に指をしっかりと挿入し、第2指掛かり部30に指を掛け、タブ10を上方に持ち上げることによって、スコア6を初期開口部Bから連続的にせん断し、スコア6に囲まれた開口予定部を除去して全面開口する。
初期開口時において、第1指掛かり部20から指先に大きな反力が作用するが、第1指掛かり部20は、
図4(C)に示すように、リベット部7に向かって凹状に湾曲し指先形状に沿って接触するので、接触部分P1の接触面積が増大し、指に作用する反力が分散されて、指先への圧力、圧迫感が低減し、指先のフィット感が良くなり、初期開口操作が楽にできる。
特に、第1指掛かり部20は、中央部20aが第2パネル部32に対して凸状に湾曲し、第1指掛かり部20がアーチ形状となっており、第2パネル部32との対向面20cがリベット部7に向かって徐々に隙間が小さくなるような傾斜面となっているので、第1指掛かり部20のパネル対向面20cに指の腹面を当てることができ、初期開口時のタブ10の引き起こしが、容易、確実、かつ、楽に行うことができる。
また、第1指掛かり部20は、缶蓋を上下に積み上げた際、あるいは、缶を上下に積み上げた場合に、上位の缶蓋あるいは上位の缶の缶底の縁が、第1指掛かり部20に当たっても、第2パネル部32cとの隙間が最も大きくなる中央部20aは、リベット部7に向かって遠い位置となるため、中央部20aに引っ掛かりにくく、不意開口を防止できる。
図4(D),(E)には、比較例として従来の第1指掛かり部220を備えたタブ21
0を示している。
この比較例のタブ210は、
図4(E)に示すように、第1指掛かり部220が、リベット部7側には凹状に湾曲した構成ではなく、リベット部7側に凸状に湾曲し、さらに、
図4(D)に示すように、所定高さチップアップさせた構成である。この場合、
図4(D)、(E)に示すように、第1指掛かり部220とパネルとの間に隙間があるものの、指先との接触部分P2の接触面積は小さく、タブ210が指に食い込んで圧力、圧迫感が高く、開口時に強い痛みを伴うこともある。
【0015】
他の実施形態
図5には、本発明の他の実施形態を示している。以下の説明では、上記実施形態と異なる点についてのみ説明するものとし、同一の構成部分については同一の符号を付してその説明は省略するものとする。
すなわち、この実施形態では、
図5(A),(B)に示すように、第2パネル部32の
第1指掛かり部20の近傍に、第1指掛かり部20との隙間をさらに大きくするために、タブ下エンボス35を設けた例である。このタブ下エンボス35を設けると、第2パネル部32の裏面には、タブ下エンボス35に対応する下面凸部35aが突出することになる。
缶蓋1を上下に積み上げた場合、
図5(C)に示すように、上下の缶蓋1,1のタブ10,10の周方向の位置が重なった場合に下面凸部35aが下位の缶蓋のタブのチップア
ップした第1指掛かり部20と干渉しないように、タブ下エンボス35のタブ側の端縁は、タブ10の後端ぎりぎりの位置までとしている。
本願発明では、第1指掛かり部20がリベット部7側に凹状に湾曲しているので、タブ下エンボス35のタブ側の端部35bをリベット部7側に寄せることができる。したがって、タブ下エンボス35の反リベット部側の端部35c位置が決まっている場合には、タブ下エンボス35の面積を大きくすることができ、指先がタブ下エンボス35に入りやすくなり、開口操作がより容易となる。
図5(D)には、本願発明との比較例を示している。この比較例では、タブ10´の第1指掛かり部20´の形状が、反リベット部側に凸状に湾曲する形状で、
図5(A)に2点鎖線で示すように、タブ下エンボス35´の面積が小さくなる。
なお、この例では、全面開口用のタブが除去片と共に除去される易開封タイプの缶蓋を例にとって説明しているが、飲料缶のように、タブが除去片と共に残るステイオンタイプの缶蓋にも適用可能である。このようなステイオンタイプの場合に、タブ下エンボスを拡大できることが有利となる。すなわち、ステイオンタイプの場合、特に図示しないが、通常は、缶蓋の中心側にリベット部があり、タブの後端は缶蓋の周縁のチャックウォール部に近く、タブ下エンボスを設けるスペースが制約されるため、本願発明のように第1指掛かり部をリベット部側に湾曲する形状とすることが有利である。
【0016】
次に、本発明の缶蓋開口用のタブを用いた缶蓋の官能評価試験について説明する。
(タブの説明)
評価サンプルとしては、本発明のタブと従来形状のタブを用いて2種類の蓋を作製した。
本発明のタブは、
図2に示した形状で、第1指掛かり部20の端部20b,20b間の距離Aを10mm、窪み寸法hを0.4mm、曲率半径Rを29.5mmとした傾斜アーチ形状としたものである。
従来形状のタブは、
図4(D),(E)に示したように、本発明の第1指掛かり部20
の傾斜アーチ形状に対して、第1指掛かり部220がチップアップ形状となっている点以外は、同一の形状、寸法ものを用意した。すなわち、
図4(E)に示すように、第1指掛かり部220が、リベット部7側には凹状に湾曲した構成ではなく、リベット部7側に凸状に湾曲し、さらに、
図4(D)に示すように、所定高さチップアップさせた構成である。チップアップの高さは、本発明の第1指掛かり部20の高さと同じである。
(評価試験用蓋の作製)
蓋外径79.4mm(呼称:215径)のアルミニウム製フルオープニング蓋(全面開口型蓋)のタブとして、本発明のタブと従来のタブを用いて2種類の蓋を作製した。以下、本発明のタブを備えた蓋を「実施例」の蓋、従来形状タブを備えた蓋を「比較例」の蓋とする。
(開口評価用缶詰の作製)
溶接缶の片側に実施例の蓋又は比較例の蓋を巻締めた後、缶内に水を入れ、缶内真空度が、-30kPaとなるようにバキュームを引きながら、残りの片側にぶりき蓋を巻締めて開口評価用缶詰を作製した。
(試験の概要)
試験は、被験者20名(20歳~40歳台の男女各10名)で開口評価用缶詰の開口動作を行い、下記a~dの項目について、「実施例」の蓋と「比較例」の蓋を相対比較し、「実施例」の蓋の方がよい、「実施例」の蓋の方がややよい、変わらない、「比較例」の蓋の方がややよい、「比較例」の蓋の方がよい、の5段階で評価した。
なお、開口動作は被験者に一任、すなわち用いる指や指の当て方等の指定は行わず、被験者が日常行う方法で開口動作を行ってもらった。
(評価項目)
a.タブへの指の掛けやすさ:指を掛けやすいのはどちらの蓋か?
b.指先の圧迫感、痛み:タブに指を掛けたとき、指先の圧迫感、痛みが少ないのはどちらの蓋か?
c.指先案内性:指先がタブのセンター方向に誘導されやすいのはどちらの蓋か?
d.総合評価:総合的に初期開口しやすいのはどちらの蓋か?
【0017】
【表1】
(結果)
表1にあるとおり、項目aの指の掛けやすさについては、比較例の方がよいとしたのは4人に対して、実施例の方がよいとしたのは、「ややよい」を含めて12人(60%)であった。
また、項目bの指先への圧迫感、痛みの少なさについては、「ややよい」を含めて8人が実施例の方がよいと回答し、比較例がよいとしたのは2人であった。「変わらない」という回答が10人と最も多かったが、指先の大きさ、形状の個人差が大きく、指先にフィットした被験者に効果が大きかったものと思量される。
項目cの指先案内性についても、項目bと同様の傾向であった。
項目dの総合評価については、指の掛かりやすさと同様の傾向であり、実施例の蓋の方がよいとしたのは、「ややよい」を含めて13人(65%)であった。
(統計的手法による検定)
前記官能評価は被験者毎に「実施例」の蓋と「比較例」の蓋を相対比較評価したものであり、その結果は、対応のある一対のデータとして取り扱い、t検定によって各々の母集団平均に差があるかどうかを検定した。
具体的には、被験者毎に「実施例」の蓋の方がよい、「実施例」の蓋の方がややよい、変わらない、「比較例」の蓋の方がややよい、「比較例」の蓋の方がよい、の5段階の評価結果を各々2点、1点、0点、-1点、-2点と評点付けを行い、「実施例」の蓋ならびに「比較例」の蓋の評点の母集団平均に差があるかどうか、言い換えれば評点の母集団平均が等しい(評価結果の平均が0点)との帰無仮説を棄却することができるかどうか、t検定(片側)を行った。その結果、危険率5%で、前記a~dの評価項目すべてにおいて、「比較例」の蓋にくらべて「実施例」の蓋の方がよいとの結果であった。
【0018】
なお、上記実施形態では、センターパネル3を、第1パネル部31と、第1パネル部31よりも低い第2パネル部32を有する構成としたが、第2パネル部32が無くてもよい。また、センターパネル3はエンボス部34を有する構成となっているが、エンボス部34についても無くてもよい。
また、第1指掛かり部20について、中央部20aをアーチ状に高くしたチップアップ形状としているが、チップアップ形状となっていなくてもよい。この場合でも、指先の接触面積を従来よりも大きくすることができ、指先への圧力、圧迫感を低減することができる。また、チップアップ構成となっていなくても、隙間を確保するためには、上記したように、パネル面側の第1指掛かり部20の近傍に、タブ下エンボス部を形成することにより、指が入る隙間を確保することができる。
また、チップアップ形状とする場合に、上記実施形態では、パネル面に対して側面視でアーチ形状に湾曲する構成としているが、アーチ形状に限らず、たとえば、台形状等、他の形状としてもよい。
さらに、チップアップ形状について、上記実施形態では、第1指掛かり部20のパネル対向面20cが、第2パネル面32との間隔がリベット部7に向けて徐々に狭くなる方向に傾斜する傾斜面となっているが、傾斜面となっていなくてもよい。
また、上記実施形態では、全面開口用の易開封蓋のタブについて説明したが、部分開口用の易開封蓋のタブについても適用できることはもちろん、上記したように、飲料缶の缶蓋のように、開口後に、タブが缶蓋に開口片に残るステイオンタイプの缶蓋のタブについても適用可能である。また、缶蓋が適用される容器は、陽圧缶、陰圧缶に限らず、種々の容器に適用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 缶蓋
2 缶蓋本体
3 センターパネル、31 第1パネル面、32 第2パネル面
331 円弧部、332 直線部、3a 開口予定部
4 チャックウォール、5 シーミングパネル、6 スコア
7 リベット部(固定部)
10 タブ
11 タブ本体、12 タブ先端部、13 リング部、13c コーナー部
14 開口部、16 側辺部、17 カール部、18 カール部
20 第1指掛かり部
20a 中央部、20b 端部、20c 対向面
30 第2指掛かり部
N1 第1中心線、N2 第2中心線
O1 パネル中心
O7 リベット部7の中心
A 第1指掛かり部の両端部間の距離、
R 曲率半径(第1指掛かり部)
V1 直交線(端部位置)
N0 第1中心面、V0 直交面
h 窪み寸法
L 輪郭線