(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20240820BHJP
H04N 1/10 20060101ALI20240820BHJP
G03B 27/62 20060101ALI20240820BHJP
G03B 27/50 20060101ALI20240820BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H04N1/04 106A
H04N1/10
G03B27/62
G03B27/50 A
G03G21/00 384
(21)【出願番号】P 2019217637
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 功武
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-126939(JP,A)
【文献】特開2010-147566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
H04N 1/10
G06T 1/00
G03B 27/62
G03B 27/50
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が置かれる原稿台と、
前記原稿台に対して開閉可能に設けられ、閉じた状態で前記原稿台上を覆うカバーと、
前記カバーの開閉の状態を検出するカバー開閉センサと、
副走査方向に移動して、前記原稿台上の領域を読み取って画像データを生成する読取部と、
前記読取部による読み取りの条件を設定する条件設定部と、
制御部と、を備え、
前記カバー開閉センサは、前記カバーの開き量が第1所定値未満である閉状態、第1所定値以上かつ第2所定値未満である半開き状態、および、前記第2所定値以上である全開状態を検出可能であり、
前記制御部は、
前記
読取部による読み取りが可能である読取可能領域のうちの前記副走査方向の上流側の端から所定長さの領域の画像データを取得し、その取得した画像データから原稿の先端を検出する先端検出処理と、
前記カバー開閉センサの出力から前記カバーの開閉の状態を判別するカバー状態判別処理と、
前
記読取可能領域のうちの一部の領域の画像データを取得する一部画像データ取得処理と、を実行し、
前記先端検出処理において、原稿の前記先端の2頂点を検出し、前記2頂点の位置から前記先端の長さおよび傾きを算出し、
前記カバー状態判別処理の結果、前記カバー開閉センサの出力から前記カバーが前記半開き状態であると判別した場合に、前記一部画像データ取得処理において、前記先端検出処理で算出した前記先端の長さおよび傾きから、前記先端の長さよりも大きく、かつ、前記読取可能領域の前記
副走査方向と直交する主走査方向の幅よりも小さい値を所定幅に設定して、前記所定幅の領域の画像データを取得し、
前記カバー状態判別処理の結果、前記カバー開閉センサの出力から前記カバーが前記全開状態であると判別した場合に、前記一部画像データ取得処理において、前記読取可能領域の前記主走査方向の幅を前記所定幅に設定して、前記所定幅の領域の画像データを取得し、
前記カバー状態判別処理の結果、前記カバー開閉センサの出力から前記カバーが前記閉状態であると判別した場合に、前記一部画像データ取得処理において、前記先端検出処理による検出結果から原稿の前記主走査方向の幅を設定して、その幅の領域の画像データを取得し、
前記一部画像データ取得処理で取得された画像データに対して、前記カバー状態判別処理の結果、前記カバー開閉センサの出力から前記カバーが前記閉状態でないと判別された場合には、前記条件設定部で設定された条件ではなく、予め定められた条件に従った画像処理を実行し、前記カバー状態判別処理の結果、前記カバー開閉センサの出力から前記カバーが前記閉状態であると判別された場合には、前記条件設定部で設定された条件に従った画像処理を実行する、画像読取装置。
【請求項2】
原稿が置かれる原稿台と、
前記原稿台に対して開閉可能に設けられ、閉じた状態で前記原稿台上を覆うカバーと、
前記カバーの開閉の状態を検出するカバー開閉センサと、
副走査方向に移動して、前記原稿台上の領域を読み取って画像データを生成する読取部と、
前記読取部による読み取りの条件を設定する条件設定部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記
読取部による読み取りが可能である読取可能領域のうちの前記副走査方向の上流側の端から所定長さの領域の画像データを取得し、その取得した画像データから原稿の先端を検出する先端検出処理と、
前記カバー開閉センサの出力から前記カバーの開閉の状態を判別するカバー状態判別処理と、
前
記読取可能領域のうちの一部の領域の画像データを取得する一部画像データ取得処理と、を実行し、
前記一部画像データ取得処理において、前記カバー状態判別処理により前記カバーが前記閉じた状態でないと判別された場合には、前記先端検出処理による検出結果にかかわらず、原稿の前記副走査方向と直交する主走査方向の幅を所定幅に設定して、前記所定幅の領域の画像データを取得し、前記カバー状態判別処理により前記カバーが前記閉じた状態であると判別された場合には、前記先端検出処理による検出結果から原稿の前記主走査方向の幅を設定して、その幅の領域の画像データを取得し、
前記一部画像データ取得処理で取得された画像データに対して、前記カバー状態判別処理により前記カバーが前記閉じた状態でないと判別された場合には、前記条件設定部で設定された条件ではなく、予め定められた条件に従った画像処理を実行し、前記カバー状態判別処理により前記カバーが前記閉じた状態であると判別された場合には、前記条件設定部で設定された条件に従った画像処理を実行し、
前記画像処理は、原稿の前記副走査方向と直交する主走査方向に対する傾きに応じて画像データを回転補正する処理であり、
前記制御部は、前記カバー状態判別処理により前記カバーが前記閉じた状態でないと判別された場合には、前記傾きを0に設定する、画像読取装置。
【請求項3】
原稿が置かれる原稿台と、
前記原稿台に対して開閉可能に設けられ、閉じた状態で前記原稿台上を覆うカバーと、
前記カバーの開閉の状態を検出するカバー開閉センサと、
副走査方向に移動して、前記原稿台上の領域を読み取って画像データを生成する読取部と、
前記読取部による読み取りの条件を設定する条件設定部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記カバー開閉センサの出力から前記カバーの開閉の状態を判別するカバー状態判別処理と、
前記読取部による読み取りが可能である読取可能領域のうちの一部の領域の画像データを取得する一部画像データ取得処理と、
前記一部画像データ取得処理で取得した画像データから原稿の主走査方向の側端を検出する側端検出処理と、
前記側端検出処理で前記側端を検出できなかった回数をカウントする側端未検出回数カウント処理と、を実行し、
前記一部画像データ取得処理で取得された画像データに対して、前記カバー状態判別処理により前記カバーが前記閉じた状態でないと判別された場合には、前記条件設定部で設定された条件ではなく、予め定められた条件に従った画像処理を実行し、前記カバー状態判別処理により前記カバーが前記閉じた状態であると判別された場合には、前記条件設定部で設定された条件に従った画像処理を実行し、
前記側端未検出回数カウント処理によりカウントした回数が一定数を超えた場合、原稿の後端を検出する後端検出処理をさらに実行する、画像読取装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像読取装置であって、
前記制御部は、前記読取可能領域のうちの前記副走査方向の上流側の端から所定長さの領域の画像データを取得し、その取得した画像データから原稿の先端を検出する先端検出処理を実行する、画像読取装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像読取装置であって、
前記制御部は、前記一部画像データ取得処理において、前記カバー状態判別処理により前記カバーが前記閉じた状態でないと判別された場合には、前記先端検出処理による検出結果にかかわらず、原稿の前記副走査方向と直交する主走査方向の幅を所定幅に設定して、前記所定幅の領域の画像データを取得し、前記カバー状態判別処理により前記カバーが前記閉じた状態であると判別された場合には、前記先端検出処理による検出結果から原稿の前記主走査方向の幅を設定して、その幅の領域の画像データを取得する、画像読取装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像読取装置であって、
前記画像処理は、原稿の前記副走査方向と直交する主走査方向に対する傾きに応じて画像データを回転補正する処理であり、
前記制御部は、前記カバー状態判別処理により前記カバーが前記閉じた状態でないと判別された場合には、前記傾きを0に設定する、画像読取装置。
【請求項7】
請求項2、5および6のいずれか一項に記載の画像読取装置であって、
前記制御部は、前記先端検出処理において、原稿の前記先端の2頂点を検出し、前記2頂点の位置から前記先端の長さおよび傾きを算出する、画像読取装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像読取装置であって、
前記カバー開閉センサは、前記カバーの開き量が第1所定値未満である閉状態、第1所定値以上かつ第2所定値未満である半開き状態、および、前記第2所定値以上である全開状態を検出可能であり、
前記制御部は、
前記カバー状態判別処理の結果、前記カバー開閉センサの出力から前記カバーが前記半開き状態であると判別した場合に、前記一部画像データ取得処理において、前記先端検出処理で算出した前記先端の長さおよび傾きから、前記先端の長さよりも大きく、かつ、前記読取可能領域の前記主走査方向の幅よりも小さい値を前記所定幅に設定し、
前記カバー状態判別処理の結果、前記カバー開閉センサの出力から前記カバーが前記全開状態であると判別した場合に、前記一部画像データ取得処理において、前記読取可能領域の前記主走査方向の幅を前記所定幅に設定する、画像読取装置。
【請求項9】
請求項1、2、5~8のいずれか一項に記載の画像読取装置であって、
前記所定幅は、前記読取可能領域の前記主走査方向の幅に等しい、画像読取装置。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の画像読取装置であって、
前記条件設定部は、前記原稿台に置かれる原稿の情報を指定して前記読取部による原稿の読み取りを実行する手動設定か、前記原稿台に置かれる原稿の情報を指定せずに前記読取部による原稿の読み取りを実行する自動設定かを設定する、画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FB(Flat Bed:フラットベッド)方式の画像読取装置では、原稿台の下側に読取ユニットが移動可能に設けられており、読取ユニットが移動されつつ、原稿台上に載置された原稿が読取ユニットに読み取られる。
【0003】
このFB方式の画像読取装置において、読取可能領域の先端部(読取開始位置側の端部)において読取ユニットを搬送し、読取ユニットに読み取られた画像データから原稿の先端の2頂点(角)を検出して、その座標情報から原稿の傾きおよびサイズを推定する技術がある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その技術によれば、原稿の傾きおよびサイズから原稿の載置領域に対応する読取領域を設定し、この読取領域内で読取ユニットを搬送して、読取領域の画像を読取ユニットに読み取らせることにより、原稿の読取完了と同時に画像データを得ることができる。
【0006】
しかし、原稿のサイズの推定において、原稿が四角形状であることを前提としている。そのため、原稿台に開いた状態で置かれるブック原稿など、先端縁または側端縁が途中で折れ曲がる原稿では、読取領域が正しく設定されず、原稿の一部が読取領域から外れて、その一部の画像が読み取られずに欠落する画像欠けを発生することがある。
【0007】
本発明の目的は、画像欠けの発生のない原稿全体の読取結果を短時間で得ることができる、画像読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係る画像読取装置は、原稿が置かれる原稿台と、原稿台に対して開閉可能に設けられ、閉じた状態で原稿台上を覆うカバーと、カバーの開閉の状態を検出するカバー開閉センサと、副走査方向に移動して、原稿台上の領域を読み取って画像データを生成する読取部と、読取部による読み取りの条件を設定する条件設定部と、制御部と、を備え、制御部は、カバー開閉センサの出力からカバーの開閉の状態を判別するカバー状態判別処理と、読取部による読み取りが可能である読取可能領域のうちの一部の領域の画像データを取得する一部画像データ取得処理と、を実行し、一部画像データ取得処理で取得された画像データに対して、カバー状態判別処理によりカバーが閉じた状態でないと判別された場合には、条件設定部で設定された条件ではなく、予め定められた条件に従った画像処理を実行し、カバー状態判別処理によりカバーが閉じた状態であると判別された場合には、条件設定部で設定された条件に従った画像処理を実行する。
【0009】
この構成によれば、原稿台に対して、カバーが開閉可能に設けられている。カバーが閉じた状態では、原稿台がカバーで覆われる。原稿台に置かれた原稿がシート状のシート原稿である場合、カバーを閉じた状態にすることができる。原稿台に置かれた原稿が本などのブック原稿である場合、カバーを閉じた状態にすることができない。
【0010】
したがって、原稿台に置かれた原稿が読取部に読み取られるときに、カバーが閉じた状態であれば、その原稿がシート原稿であるから、読取部による読取可能領域のうちの一部の領域の画像データに対して、条件設定部により設定された条件に従った画像処理が実行されても、読取結果から原稿の一部の画像が欠落する画像欠けの発生がない。一方、原稿台に置かれた原稿が読取部に読み取られるときに、カバーが閉じた状態でない場合には、その原稿がブック原稿であるから、読取可能領域のうちの一部の領域の画像データに対して、条件設定部により設定された条件に従った画像処理が実行されると、読取結果に画像欠けが発生する可能性がある。そこで、カバーが閉じた状態でない場合には、条件設定部により設定された条件ではなく、予め定められた条件に従った画像処理が実行される。条件を予め適切に定めておけば、画像欠けの発生を抑制することができる。
【0011】
しかも、読取部による読取可能領域のうちの一部の領域の画像データに対して画像処理が実行され、これが繰り返されることにより、原稿の全体の画像データを得ることができる。
【0012】
よって、画像欠けの発生のない原稿全体の読取結果を短時間で得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、画像欠けの発生のない原稿全体の読取結果を短時間で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像読取装置の斜視図である。
【
図4】原稿台にブック原稿が置かれた状態を示す平面図である。
【
図5】画像読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図6A】原稿読取処理の流れを示すフローチャート(その1)である。
【
図6B】原稿読取処理の流れを示すフローチャート(その2)である。
【
図6C】原稿読取処理の流れを示すフローチャート(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
<画像読取装置の機械的構成>
図1に示される画像読取装置1は、FB(Flatbed:フラットベッド)方式による原稿の読み取りが可能な装置である。画像読取装置1は、たとえば、画像データに係る画像を用紙に印刷する印刷装置(図示せず)とともに、読取機能および印刷機能などの複数の機能を有する複合機(MFP:Multi-Function Peripheral)に用いることができる。この場合、画像読取装置1は、印刷装置上に積み重ねて配置される。
【0017】
画像読取装置1は、略直方体形状の筐体2を備えている。筐体2には、外側ほど下がるように傾斜する傾斜面3が一側縁に沿って設けられている。傾斜面3には、タッチパネル4(条件設定部の一例)が配置されている。タッチパネル4のタッチ操作により、各種の設定や読取開始の指示が可能である。
【0018】
画像読取装置1では、タッチパネル4が設けられている側が正面側である。なお、以下の説明で使用する前後左右の方向は、画像読取装置1を正面側から見た状態を基準に規定されており、
図1、
図2および
図3には、上下を含む各方向が矢印で示されている。
【0019】
画像読取装置1は、カバー5を備えている。カバー5は、筐体2の後端部に接続されて、その後端部に設定された左右方向に延びる軸線を中心に揺動可能に設けられている。カバー5は、その揺動により、筐体2の上面に対して前側が持ち上がって筐体2の上面を開放する状態と、筐体2の上面に対して倒伏して筐体2の上面を覆う状態とに開閉する。
【0020】
カバー5の開閉の状態を検出するため、筐体2の後端部に、カバー開閉センサ6が設けられている。カバー開閉センサ6は、たとえば、上下方向に往復動可能なアクチュエータを備えている。カバー5の下面には、押圧突起が設けられており、アクチュエータは、その押圧突起により、カバー5の筐体2の上面に対する開き量に応じて押し下げられる。カバー開閉センサ6の検出信号は、アクチュエータの位置によって変化する。すなわち、カバー開閉センサ6は、カバー5の開き量(たとえば、筐体2の上面に対する開き角度または筐体2の上面からの浮き上がり量)が第1所定値未満である閉状態、カバー5の開き量が第1所定値以上かつ第2所定値未満である半開き状態、および、カバー5の開き量が第2所定値以上である全開状態の各状態で異なる検出信号を出力する。
【0021】
筐体2の上面には、前後方向および左右方向に延びる端縁を有する矩形状の開口7が形成されている。そして、その開口7を下側から閉鎖するように、原稿が置かれる原稿台8が設けられている。原稿台8は、透明な材料を用いて形成される板状体であり、たとえば、ガラス板である。原稿台8の少なくとも上面は、平面に形成されている。原稿台8は、筐体2の開口7の周辺部により、その周囲が取り囲まれて支持されている。
【0022】
原稿台8の下側には、
図2および
図3に示されるように、CIS(Contact Image Sensor)ユニット11(読取部の一例)および移動機構12が設けられている。
【0023】
CISユニット11には、
図3に示されるように、光源21、ロッドレンズアレイ22及びイメージセンサ23が内蔵されている。光源21は、前後方向に延びるライン状の光を原稿台8に向けて出射するように設けられている。イメージセンサ23は、たとえば、複数の受光素子が主走査方向に配列された構成のリニアイメージセンサであり、主走査方向が前後方向と一致するように設けられている。
【0024】
光源21からの光が原稿台8上の原稿などの読取対象物の表面で反射し、その反射光がロッドレンズアレイ22を通過してイメージセンサ23に入射する。イメージセンサ23に光が入射すると、イメージセンサ23の各受光素子から光電変換による電圧が出力される。各受光素子から出力される電圧は、ゲイン調整回路による増幅後、A/D変換回路によりデジタル値である画素値に変換される。A/D変換回路は、たとえば、8ビット(0~255)の分解能を有しており、下限側の基準電圧(下限値)未満の電圧については一律に「0」に変換し、上限側の基準電圧(上限値)を超える電圧については一律に「255」に変換し、下限値から上限値の範囲の電圧についてはその電圧の大小に応じた画素値に変換する。これにより、読取対象物の主走査方向の1ライン分の読み取りが達成される。
【0025】
移動機構12は、CISユニット11を主走査方向と直交する副走査方向に移動させる機構である。移動機構12は、CISユニット11を担持するキャリッジ24と、正逆回転可能なステッピングモータからなるモータ25と、モータ25により回転駆動される駆動プーリ26と、駆動プーリ26と対をなす従動プーリ27と、駆動プーリ26及び従動プーリ27に巻き掛けられたベルト28とを備えている。駆動プーリ26は、筐体2内の右端部に、回転軸線が前後方向に延びるように配置されている。従動プーリ27は、筐体2内の左端部に、回転軸線が駆動プーリ26の回転軸線と同じ高さの位置で前後方向に延びるように配置されている。ベルト28には、キャリッジ24が取り付けられている。駆動プーリ26の回転によりベルト28が走行し、ベルト28の走行に伴って、キャリッジ24が左右方向と一致する副走査方向に移動する。
【0026】
原稿の読み取りの際には、カバー5が開位置に配置されて、原稿が原稿台8上に置かれる。このとき、原稿は、
図4に示されるように、筐体2の開口7の左端縁および後端縁に当接した状態に配置される。原稿が原稿台8上に載置された後、カバー5が閉じられて、カバー5により原稿が上側から覆われる。その後、タッチパネル4で読取開始を指示する操作が行われると、移動機構12によりCISユニット11が副走査方向に移動されつつ、CISユニット11により原稿における原稿台8との接触面が1ラインずつ読み取られていく。
【0027】
<画像読取装置の電気的構成>
画像読取装置1は、
図5に示されるように、ASIC300を備えている。ASIC300には、CPU(Central Processing Unit)31、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33および回転回路310が設けられている。
【0028】
CPU31(制御部の一例)は、各種の処理のためのプログラムを実行することにより、タッチパネル4の操作により入力される情報およびカバー開閉センサ6の検出信号に基づいて、タッチパネル4、CISユニット11および移動機構12を含む画像読取装置1の各部を制御する。
【0029】
ROM32は、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性メモリからなる。ROM32には、CPU31によって実行されるプログラムおよび各種のデータなどが記憶されている。
【0030】
RAM33は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリであり、CPU31がプログラムを実行する際のワークエリアとして使用される。
【0031】
回転回路310は、画像データを原稿の傾き角度に応じて回転補正するための画像処理回路である。
【0032】
<原稿読取処理>
タッチパネル4では、原稿台8に置かれる原稿のサイズや向きなどの情報を指定して、CISユニット11原稿の読み取りを実行する手動設定と、原稿台8に置かれる原稿のサイズなどを指定せずにCISユニット11による原稿の読み取りを実行する自動設定かを選択的に設定できる。CISユニット11による原稿の読み取りに際しては、手動設定または自動設定の一方を必ず設定しなければならない。その設定後、タッチパネル4で読取開始を指示する操作が行われると、CPU31により、CISユニット11および移動機構12が制御されて、移動機構12によりCISユニット11が副走査方向に移動されつつ、CISユニット11により原稿における原稿台8との接触面が1ラインずつ読み取られていく。このとき、手動設定が設定されている場合には、ユーザが指定した原稿の情報に応じた条件で原稿の読み取りおよび読み取られた画像データに対する画像処理が実行される。一方、自動設定が設定されている場合には、CPU31により、
図6A、
図6Bおよび
図6Cに示される原稿読取処理が実行される。
【0033】
CISユニット11により読み取られた画像データは、RAM33に順次に記憶される。原稿読取処理では、CPU31は、まず、RAM33に記憶された画像データから、CISユニット11による読取可能領域のうちの副走査方向の上流側の端、つまり開口7の左端縁から所定長さ(たとえば、3cm)の先端領域の画像データを読み込む(S11)。
【0034】
次に、CPU31は、先端領域の画像データを用いて、原稿の左エッジ直線式を算出する(S12)。具体的には、CPU31は、開口7の左後角を原点位置として、先端領域内の主走査方向の座標および副走査方向の座標で定まる各位置を対象位置とし、その対象位置の画素値から対象位置が原稿の左エッジを構成する左エッジ点であるか否かを判断する。そして、先端領域内のすべての位置が左エッジ点であるか否かを判断すると、左エッジ点であると判断した位置の近似直線である左エッジ直線式を算出する。
【0035】
また、CPU31は、先端領域の画像データを用いて、原稿の上エッジ直線式を算出する(S13)。すなわち、CPU31は、先端領域内の各位置が原稿の上エッジ(後側のエッジ)を構成する上エッジ点であるか否かを判断し、上エッジ点であると判断した位置の近似直線である上エッジ直線式を算出する。
【0036】
さらに、CPU31は、先端領域の画像データを用いて、原稿の下エッジ直線式を算出する(S14)。すなわち、CPU31は、先端領域内の各位置が原稿の下エッジ(前側のエッジ)を構成する下エッジ点であるか否かを判断し、下エッジ点であると判断した位置の近似直線である下エッジ直線式を算出する。
【0037】
その後、CPU31は、原稿の先端の2頂点の座標を算出する(S15)。原稿の先端の上側(後側)の頂点の座標は、左エッジ直線式で定まる直線と上エッジ直線式で定まる直線との交点の座標として算出することができる。また、原稿の先端の下側(前側)の頂点の座標は、右エッジ直線式で定まる直線と上エッジ直線式で定まる直線との交点の座標として算出することができる。
【0038】
また、CPU31は、原稿の傾き角度を算出する(S16)。原稿の傾き角度は、原稿の左エッジが主走査方向に対してなす鋭角であり、左エッジ直線式を用いて算出することができる。
【0039】
つづいて、CPU31は、カバー開閉センサ6の検出信号を参照して、カバー5が開いているか否かを判断する(S17)。また、CPU31は、カバー5が開いていると判断した場合には(S17:YES)、カバー5が全開状態であるか否かを判断する(S18)。
【0040】
そして、カバー5が開いていない閉状態である場合(S17:NO)、CPU31は、画像処理モードをノーマルモードに設定する(S19)。カバー5が全開状態である場合(S18:YES)、CPU31は、画像処理モードを第1ブックモードに設定する(S20)。カバー5が半開き状態である場合(S18:NO)、CPU31は、画像処理モードを第2ブックモードに設定する(S21)。
【0041】
CPU31は、画像処理モードをノーマルモードに設定した場合(S22:YES)、原稿の先端の2頂点の座標から原稿の主走査方向の幅(以下、「原稿幅」という。)を求める。画像処理モードがノーマルモードに設定されている場合、カバー5が閉状態である場合であり、原稿台8上に置かれた原稿は、ブック原稿などの厚みのある原稿ではなく、1枚の用紙に画像が印刷されたシート状のシート原稿である可能性が高い。そこで、CPU31は、原稿の先端の2頂点の座標から求めた原稿幅を、画像データを原稿の傾き角度に応じて回転補正するための回転回路310に設定する(S23)。また、CPU31は、先に算出した原稿の傾き角度を回転回路310に設定する(S24)。さらに、CPU31は、NG閾値を3カウントに設定する(S25)。
【0042】
一方、画像処理モードが第1ブックモードに設定されている場合、カバー5が全開状態である場合であり、原稿台8上に置かれた原稿は、カバー5を閉じることが意味をなさない(カバー5で原稿を覆えない)程度に厚みのあるブック原稿などである可能性が高い。その場合、原稿の先端縁または側端縁が見開きのために途中で折れ曲がっているので、原稿の先端の2頂点の座標から求まる原稿幅および先に求められた原稿の傾き角度からは必要な画像データが正しく取得されず(読取領域が正しく設定されず)、原稿の一部が読み取られずに欠落する画像欠けを発生するおそれがある。そのため、画像処理モードが第1ブックモードに設定されている場合(S26:YES)、CPU31は、原稿の先端の2頂点の座標から求まる原稿幅ではなく、読取可能領域の主走査方向の最大幅を原稿幅として回転回路310に設定する(S27)。また、CPU31は、原稿の傾き角度を0°として回転回路310に設定する(S28)。さらに、CPU31は、NG閾値を10カウントに設定する(S29)。
【0043】
画像処理モードがノーマルモードおよび第1ブックモードに設定されていない場合(S26:NO)、つまり画像処理モードが第2ブックモードに設定されている場合、カバー5が半開き状態である場合であり、原稿台8上に置かれた原稿は、薄手のブック原稿などである可能性が高い。薄手のブック原稿であれば、原稿の先端縁または側端縁が見開きのために途中で折れ曲がっても、その折れ曲がりは小さい。また、原稿台8上に置かれた原稿がシート原稿であるが、ユーザによってカバー5が完全に閉じられないために、カバー5が半開き状態となっている可能性もあり、この場合、原稿の先端縁および側端縁が途中で折れ曲がらない。そのため、画像処理モードが第2ブックモードに設定されている場合、CPU31は、原稿の先端の2頂点の座標から求まる原稿幅に所定値を加算した値を原稿幅として回転回路310に設定する(S30)。また、CPU31は、原稿の傾き角度を0°として回転回路310に設定する(S31)。さらに、CPU31は、NG閾値を10カウントに設定する(S32)。
【0044】
CPU31は、原稿幅および傾き角度を回転回路310に設定し、また、NG閾値を設定した後、RAM33に記憶されている画像データから所定ライン分の画像データを読み込む(S33)。
【0045】
そして、CPU31は、所定ライン分の画像データを用いて、その所定ライン内での原稿の前側の側端のエッジ(以下、単に「側端エッジ」という。)を検知する側端エッジ検知処理を実行する(S34)。その後、CPU31は、側端エッジ検知処理で原稿の側端エッジが見つかったか否かを判断する(S35)。
【0046】
側端エッジが見つからなかった場合(S35:NO)、CPU31は、RAM33に設定されているNGカウンタのカウント値をインクリメント(+1)する(S36)。そして、CPU31は、インクリメント後のNGカウンタのカウント値がNG閾値を超えたか否かを判断する(S37)。
【0047】
NGカウンタのカウント値がNG閾値を超えていない場合(S37:NO)、CPU31は、所定ライン分の画像データを回転回路310に流す(S38)。そして、CPU31は、RAM33に記憶されている画像データから次の所定ライン分の画像データを読み込み(S39)、その所定ライン分の画像データを用いた側端エッジ検知処理を実行する(S34)。
【0048】
側端エッジ検知処理で原稿の側端エッジが見つかった場合(S35:YES)、CPU31は、NGカウンタを0に初期化する(S40)。その後、CPU31は、RAM33に記憶されている原稿の画像データを最後まで読み込んだか否かを判断する(S41)。原稿の画像データを最後まで読み込んでない場合(S41:NO)、CPU31は、所定ライン分の画像データを回転回路310に流し(S38)、RAM33に記憶されている画像データから次の所定ライン分の画像データを読み込み(S39)、その所定ライン分の画像データを用いた側端エッジ検知処理を実行する(S34)。
【0049】
そして、CPU31は、原稿の画像データを最後まで読み込むと(S41:YES)、原稿の後端(右端)を検知する後端検知処理を実行して(S42)、原稿読取処理を終了する。
【0050】
また、側端エッジ検知処理で側端エッジが見つからずに、NGカウンタのカウント値のインクリメントが繰り返されて、NGカウンタのカウント値がNG閾値を超えた場合(S37:YES)、CPU31は、後端検知処理を実行して(S42)、原稿読取処理を終了する。
【0051】
たとえば、ブック原稿が
図4に示される向きで原稿台8に置かれた場合、そのブック原稿の左右方向の中央部分が原稿台8から浮き上がるため、その部分では、原稿の側端エッジが見つからない可能性がある。そのため、原稿台8に置かれている原稿がブック原稿である場合、つまり第1ブックモードまたは第2ブックモードが設定されている場合には、ノーマルモードが設定されている場合と比較して、NG閾値が大きい値に設定される。これにより、ブック原稿の中央部分で側端エッジが見つからないために、原稿の読み取りの途中で(原稿のすべての画像データを回転回路310に流しきらずに)、原稿読取処理が終了となることが抑制される。
【0052】
<作用効果>
以上のように、カバー5が原稿台8に対して開閉可能に設けられている。カバー5が閉じた状態では、原稿台8がカバー5で覆われる。原稿台8に置かれた原稿がシート状のシート原稿である場合、カバー5を閉じた状態にすることができる。原稿台8に置かれた原稿が本などのブック原稿である場合、カバー5を閉じた状態にすることができない。
【0053】
したがって、原稿台8に置かれた原稿がCISユニット11に読み取られるときに、カバー5が閉じた状態であれば、その原稿がシート原稿であるから、所定ライン分の画像データに対して、先頭領域の画像データから算出された原稿幅および傾き角度などの条件に従った画像処理が実行されても、読取結果から原稿の一部の画像が欠落する画像欠けの発生がない。一方、原稿台8に置かれた原稿がCISユニット11に読み取られるときに、カバー5が閉じた状態でない場合には、その原稿がブック原稿であるから、所定ライン分の画像データに対して、先頭領域の画像データから算出された原稿幅および傾き角度などの条件に従った画像処理が実行されると、読取結果に画像欠けが発生する可能性がある。
【0054】
そこで、カバー5が閉じた状態でない場合には、先頭領域の画像データから算出された原稿幅および傾き角度などの条件ではなく、予め定められた条件に従った画像処理が実行される。具体的には、原稿台8上に置かれた原稿が厚みのあるブック原稿などである場合、原稿の先端の2頂点の座標から求まる原稿幅ではなく、読取可能領域の主走査方向の最大幅が原稿幅として、また、原稿の傾き角度が0°であるとして、それらの条件が画像データを原稿の傾き角度に応じて回転補正するための回転回路310に設定される。また、原稿台8上に置かれた原稿が薄手のブック原稿などである場合にも、原稿の先端の2頂点の座標から求まる原稿幅ではなく、原稿の先端の2頂点の座標から求まる原稿幅に所定値を加算した値を原稿幅として、また、原稿の傾き角度が0°であるとして、それらの条件が回転回路310に設定される。
【0055】
これにより、画像欠けの発生を抑制することができる。
【0056】
また、CISユニット11による読取可能領域のうちの一部の所定ライン分の画像データに対して画像処理が実行され、これが繰り返されることにより、原稿の全体の画像データを得ることができる。
【0057】
よって、画像欠けの発生のない原稿全体の読取結果を短時間で得ることができる。
【0058】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0059】
たとえば、前述の実施形態では、カバー5が半開き状態である場合をカバー5が全開状態である場合と分けているが、これらはカバー5が開いている状態であるとして一括りにされてもよい。その場合、回転回路310に設定される条件として、前述の実施形態でカバー5が半開き状態である場合に設定される原稿幅および原稿の傾き角度が採用されてもよいし、前述の実施形態でカバー5が全開状態である場合に設定される原稿幅および原稿の傾き角度が採用されてもよい。
【0060】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1:画像読取装置
4:タッチパネル
5:カバー
6:カバー開閉センサ
8:原稿台
11:CISユニット
31:CPU