(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】瓶検査装置および瓶検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/90 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
G01N21/90 A
(21)【出願番号】P 2020006954
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】吉川 幸男
(72)【発明者】
【氏名】野村 昭
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-004649(JP,A)
【文献】特開2001-208695(JP,A)
【文献】特開2009-192304(JP,A)
【文献】特開2014-224807(JP,A)
【文献】特開昭54-044587(JP,A)
【文献】特開2007-256076(JP,A)
【文献】特開2013-134163(JP,A)
【文献】特開2001-153813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性材料からなる有底筒状の瓶の外周面を検査する瓶検査装置であって、
前記瓶に対して光を照射する光照射部と、
前記瓶の外周面を撮影して撮影画像を取得する撮像部と、
前記撮影画像に基づいて、前記瓶の外周面に存在する傷の状態を判定する検査処理部と、を備え、
前記瓶は、軸方向の一方側に開口を有し、
前記光照射部は、前記瓶の中心軸よりも前記撮像部側、かつ、前記開口よりも軸方向の一方側から、前記瓶の前記開口の縁部に向けて光を照射
し、
前記撮影画像は、複数のピクセルを有し、
前記検査処理部は、
前記撮影画像内の所定の検査領域における前記複数のピクセルの濃度平均値と、
前記検査領域において前記撮影画像の濃度値が所定の閾値よりも低い部分の面積と、に基づいて、前記傷の状態を判定する、瓶検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の瓶検査装置であって、
前記光照射部は、前記瓶の内周面または外周面に沿って光を照射する、瓶検査装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の瓶検査装置であって、
前記光照射部は、前記瓶の前記縁部に沿って円弧状に配置された光源から、前記縁部に向けて、光を照射する、瓶検査装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の瓶検査装置であって、
前記光照射部は、
光源と、
光源から出射される光を、前記縁部に沿う形状に成形する光成形部と、を有する、瓶検査装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の瓶検査装置であって、
前記光照射部は、環状の前記縁部のうち、前記瓶の中心軸よりも前記撮像部側の一部分のみに光を照射する、瓶検査装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の瓶検査装置であって、
前記撮像部から見て前記瓶の背後に配置される単色のスクリーンをさらに備える、瓶検査装置。
【請求項7】
請求項1から請求項
6までのいずれか1項に記載の瓶検査装置であって、
前記撮像部は、
前記瓶のくびれ部よりも軸方向の一方側の外周面を撮影する第1カメラと、
前記瓶の前記くびれ部よりも軸方向の他方側の外周面を撮影する第2カメラと、を有する、瓶検査装置。
【請求項8】
透光性材料からなる有底筒状の瓶の外周面を
前記瓶の外側から撮像部によって検査する瓶検査方法であって、
a)前記瓶に対して光を照射しつつ、前記瓶の外周面を撮影して、撮影画像を取得する工程と、
b)前記撮影画像に基づいて、前記瓶の外周面に存在する傷の状態を判定する工程と、を有し、
前記瓶は、軸方向の一方側に開口を有し、
前記撮影画像は、複数のピクセルを有し、
前記工程a)では、前記瓶の中心軸よりも前記撮像部側、かつ、前記開口よりも軸方向の一方側から、前記瓶の前記開口の縁部に向けて光を照射し、
前記工程b)では、
前記撮影画像内の所定の検査領域における前記複数のピクセルの濃度平均値と、
前記検査領域において前記撮影画像の濃度値が所定の閾値よりも低い部分の面積と、に基づいて、前記傷の状態を判定する、瓶検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瓶検査装置および瓶検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、牛乳、お酒などに用いられるリターナブル瓶が知られている。リターナブル瓶は、消費者が使用した後に回収され、洗浄等の再生処理が行われた後、再利用される。このようなリターナブル瓶は、繰り返し使用されると、他の瓶との接触などにより、瓶の外周面に徐々に傷が発生する。このため、リターナブル瓶を再利用するときには、傷の状態を確認して、再利用可能であるか否かを検査する必要がある。
【0003】
ただし、瓶の外周面に存在する傷の検査は、目視で行うと、作業者の負担が大きい上に、傷の見落としが発生しやすい。また、作業者によって、検査結果にばらつきが生じる場合もある。このため、瓶の外周面に存在する傷の状態を、自動的に検査できる装置が求められている。
【0004】
瓶の外周面を検査する従来の装置については、例えば、特公平3-31221号公報に記載されている。特公平3-31221号公報の装置は、投光器(3)から瓶の外周面に光を照射し、受光器(4)の検出信号に基づいて、瓶の良否判定を行う。
【文献】特公平3-31221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特公平3-31221号公報のように、受光器において検出される光強度分布に基づいて検査を行う場合、検出精度に限界がある。傷の状態をより精度よく検査するためには、瓶の外周面をカメラにより撮影して、得られた撮影画像を解析する方法が考えられる。しかしながら、特公平3-31221号公報のように、瓶の外側から瓶の外周面に向けて光を照射すると、瓶の外周面における光の反射、または、瓶の表面に付着した水滴による光の乱反射の影響により、傷を明瞭に撮影できない場合がある。
【0006】
本発明の目的は、瓶の外周面における光の反射、または、水滴による光の乱反射の影響を抑えて、瓶の外周面に存在する傷を明瞭に撮影できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1発明は、透光性材料からなる有底筒状の瓶の外周面を検査する瓶検査装置であって、前記瓶に対して光を照射する光照射部と、前記瓶の外周面を撮影して撮影画像を取得する撮像部と、前記撮影画像に基づいて、前記瓶の外周面に存在する傷の状態を判定する検査処理部と、を備え、前記瓶は、軸方向の一方側に開口を有し、前記光照射部は、前記瓶の中心軸よりも前記撮像部側、かつ、前記開口よりも軸方向の一方側から、前記瓶の前記開口の縁部に向けて光を照射する。
【0008】
本願の第2発明は、透光性材料からなる有底筒状の瓶の外周面を検査する瓶検査方法であって、a)前記瓶に対して光を照射しつつ、前記瓶の外周面を撮影して、撮影画像を取得する工程と、b)前記撮影画像に基づいて、前記瓶の外周面に存在する傷の状態を判定する工程と、を有し、前記瓶は、軸方向の一方側に開口を有し、前記工程a)では、前記瓶の中心軸よりも前記撮像部側、かつ、前記開口よりも軸方向の一方側から、前記瓶の前記開口の縁部に向けて光を照射する。
【発明の効果】
【0009】
本願の例示的な第1発明および第2発明によれば、瓶の開口の縁部から、瓶を構成する透光性材料に光が入射する。これにより、瓶の外周面における光の反射、または、水滴による光の乱反射の影響を抑えて、瓶の外周面に存在する傷を明瞭に撮影できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】
図4は、検査処理の流れを示したフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1検査画像および第2検査画像の例を示した図である。
【
図6】
図6は、二値化後の第1検査画像および第2検査画像の例を示した図である。
【
図7】
図7は、変形例に係る光照射部および瓶の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<1.瓶検査装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る瓶検査装置1の側面図である。
図2は、瓶検査装置1の上面図である。この瓶検査装置1は、ガラスなどの透光性材料からなる有底筒状の瓶9の外周面を検査する装置である。瓶9は、牛乳、お酒などに用いられ、使用後に洗浄処理されて再利用される、いわゆるリターナブル瓶である。瓶9は、上端部(軸方向の一方側の端部)に開口90を有する。
図1の瓶9は、略円筒状の胴部91と、胴部91の上側に位置するネック部92と、ネック部92のさらに上側に位置する開口90の縁部93とを有する。ネック部92は、胴部91および縁部93よりも内側へくびれている。
【0013】
この種の瓶9は、製造工程において成形されるときに、冷却に伴う収縮(いわゆるヒケ)によって、胴部91の上下方向の略中央に、僅かにくびれたくびれ部910が形成される。また、デザイン性や保持容易性のために、胴部91の上下方向の中央付近に、意図的にくびれ部910が形成される場合もある。瓶9の胴部91のうち、くびれ部910よりも上側(軸方向の一方側)の部分の外周面(以下「上部外周面911」と称する)と、くびれ部910よりも下側(軸方向の他方側)の部分の外周面(以下「下部外周面912」と称する)とは、瓶9の外周面の中で、最も大径の部分となる。したがって、瓶9を繰り返し使用すると、他の瓶9との接触などにより、上部外周面911および下部外周面912に、円環状の傷94が生じる。
【0014】
瓶検査装置1は、瓶9のこのような傷94の状態を検査し、瓶9が再利用可能であるか否かを判定するための装置である。
図1および
図2に示すように、瓶検査装置1は、ステージ10、スクリーン20、光照射部30、撮像部40、およびコンピュータ50を備えている。
【0015】
ステージ10は、瓶9を支持する支持台である。ステージ10は、水平な上面を有する。瓶9は、ステージ10の当該上面の所定の位置に、起立姿勢で配置される。ステージ10の上面には、瓶9の位置ずれを防止するための窪みまたは当接面が設けられていてもよい。また、ステージ10は、瓶9の位置を固定するための固定具を有していてもよい。さらに、ステージ10は、瓶9の倒れを防止するための部材を有していてもよい。なお、ステージ10は、瓶9を搬送するために移動するコンベアであってもよい。
【0016】
スクリーン20は、撮像部40から見て、ステージ10上に配置された瓶9の背後に配置される。スクリーン20の前面は、後述する撮像部40の撮影において、瓶9の背景となる。スクリーン20の前面は、一様な単色である。スクリーン20の前面の色は、撮影画像において、瓶9の傷94とコントラストがとりやすい暗色とされる。具体的には、スクリーン20の前面の色は、黒色とすることが好ましい。
【0017】
光照射部30は、撮像部40による撮影を明瞭に行うために、瓶9に対して光を照射する部位である。光照射部30は、1つまたは複数の光源31を有する。光源31には、例えば、LED素子が用いられる。
【0018】
図3は、光照射部30および瓶9の断面図である。
図3に示すように、光源31は、瓶9の開口90の縁部93の上方に配置されている。すなわち、光源31は、瓶9の開口90よりも上側(軸方向の一方側)に配置されている。また、
図2中に破線で示したように、複数の光源31は、瓶9の開口90の縁部93に沿って、円弧状に配置されている。複数の光源31を発光させると、各光源31から真下へ向けて、瓶9の中心軸Aと平行に、光が出射される。すなわち、各光源31から、瓶9の胴部91の内周面または外周面に沿う方向に、光が出射される。これにより、瓶9の開口90の縁部93に向けて、光が照射される。
【0019】
図3に示すように、瓶9の開口90の縁部93へ入射した光は、瓶9を構成する透光性材料の内部を進み、透光性材料の表面で反射しながら、瓶9の胴部91の下端へ至る。これにより、瓶9の胴部91に、撮影のための光量が十分に供給される。また、胴部91の外周面または内周面に、水滴95が付着している場合でも、透光性材料の内部を進む光は、水滴95により乱反射しにくい。したがって、水滴95の影響を抑えて、胴部91の光量分布を均一化できる。
【0020】
また、本実施形態の光照射部30は、瓶9の中心軸Aよりも、撮像部40側に配置されている。光照射部30は、円環状の縁部93のうち、中心軸Aよりも撮像部40側の一部分のみに、光を照射する。すなわち、光照射部30は、円環状の縁部93のうち、中心軸Aよりもスクリーン20側の部分には、光を照射しない。
【0021】
このようにすれば、胴部91のうち、中心軸Aよりもスクリーン20側の部分に供給される光の量を低減できる。そして、胴部91のうち、中心軸Aよりも撮像部40側の部分のみに、十分な光量を供給できる。これにより、撮像部40による撮影において、サチュレーションの発生を抑制できる。したがって、胴部91のうち、中心軸Aよりも撮像部40側の部分を、より明瞭に撮影できる。
【0022】
撮像部40は、瓶9の外周面を撮影するための部位である。
図1および
図3に示すように、撮像部40は、第1カメラ41と第2カメラ42とを有する。第1カメラ41および第2カメラ42には、CCDまたはCMOS等の撮像素子を有し、多階調の撮影画像を取得可能なデジタルカメラが用いられる。第1カメラ41は、第2カメラ42の上側に配置されている。第1カメラ41は、瓶9の外側から、胴部91の上部外周面911を撮影する。第2カメラ42は、瓶9の外側から、胴部91の下部外周面912を撮影する。
【0023】
コンピュータ50は、光照射部30および撮像部40を動作制御する制御部としての機能と、取得された撮影画像に基づいて瓶9の外周面に存在する傷94の状態を判定する検査処理部としての機能と、を有する。
【0024】
コンピュータ50は、CPU等のプロセッサ、RAM等のメモリ、およびハードディスクドライブ等の記憶部を有する。また、
図1中に矢印で示したように、コンピュータ50は、上述した光照射部30、第1カメラ41、および第2カメラ42と、電気的に接続されている。コンピュータ50は、記憶部に記憶されたコンピュータプログラムに従って、光照射部30、第1カメラ41、および第2カメラ42の動作を制御する。これにより、撮影処理が実行される。また、コンピュータ50は、撮影処理により取得された撮影画像に基づいて、瓶9の外周面に存在する傷94の状態を判定する。
【0025】
図1に示すように、コンピュータ50には、表示部51が接続されている。表示部51は、撮像部40が取得した画像と、検査結果とを、画面上に表示する。表示部51には、例えば、液晶ディスプレイが用いられる。瓶検査装置1のユーザは、表示部51に表示された画像および検査結果を、随時確認することができる。
【0026】
<2.検査処理の流れ>
続いて、上述した瓶検査装置1による検査処理の流れを説明する。
図4は、検査処理の流れを示したフローチャートである。
【0027】
瓶検査装置1において検査処理を行うときには、まず、ステージ10の上面に瓶9を配置する(ステップS1)。瓶9は、撮像部40とスクリーン20の間に配置される。これにより、光照射部30が瓶9の開口90の縁部93に対向し、第1カメラ41が上部外周面911に対向し、第2カメラ42が下部外周面912に対向する状態となる。
【0028】
次に、光照射部30から光を照射しつつ、第1カメラ41および第2カメラ42による撮影処理を行う(ステップS2)。光照射部30は、瓶9の開口90の縁部93へ向けて、光を照射する。第1カメラ41は、胴部91の上部外周面911を撮影することにより、上部外周面911の撮影画像を取得する。第2カメラ42は、胴部91の下部外周面912を撮影することにより、下部外周面912の撮影画像を取得する。取得された2つの撮影画像は、各カメラ41,42からコンピュータ50へ入力される。
【0029】
2つの撮影画像には、予め検査領域が設定されている。コンピュータ50は、2つの撮影画像を取得すると、まず、各撮影画像から、検査領域の画像を切り出す(ステップS3)。
図5は、第1カメラ41により取得した上部外周面911の撮影画像から切り出された検査領域の画像(以下「第1検査画像I1」と称する)と、第2カメラ42により取得した下部外周面912の撮影画像から切り出された検査領域の画像(以下「第2検査画像I2」と称する)とを示した図である。
図5の第1検査画像I1および第2検査画像I2において、濃度値の低い部分は、胴部91の外周面の傷94に相当する部分である。
【0030】
次に、コンピュータ50は、第1検査画像I1の濃度平均値と、第2検査画像I2の濃度平均値とを、算出する(ステップS4)。具体的には、第1検査画像I1に含まれる複数のピクセルの濃度値の平均値を、第1検査画像I1の濃度平均値として算出する。また、第2検査画像I2に含まれる複数の濃度値の平均値を、第2検査画像I2の濃度平均値として算出する。
【0031】
続いて、コンピュータ50は、第1検査画像I1の濃度平均値と、第2検査画像I2の濃度平均値とを、予め設定された第1基準値と比較する(ステップS5)。そして、第1検査画像I1の濃度平均値および第2検査画像I2の濃度平均値の少なくともいずれか一方が、第1基準値以上である場合(ステップS5:no)、コンピュータ50は、当該瓶9を再利用不能であると判定する。その場合、コンピュータ50は、表示部51に、当該瓶9が再利用不能である旨の検査結果を表示する(ステップS10)。
【0032】
一方、第1検査画像I1の濃度平均値および第2検査画像I2の濃度平均値の両方が、第1基準値よりも低い場合は(ステップS5:yes)、次に、コンピュータ50は、第1検査画像I1および第2検査画像I2を二値化する(ステップS6)。具体的には、第1検査画像I1および第2検査画像I2に含まれる各ピクセルのうち、予め設定された閾値以上の濃度値を有するピクセルを、最大濃度値に変換する。また、第1検査画像I1および第2検査画像I2に含まれる各ピクセルのうち、予め設定された閾値よりも低い濃度値を有するピクセルを、最小濃度値に変換する。これにより、
図6のように、二値化された第1検査画像I1および第2検査画像I2が得られる。
【0033】
図6において、最小濃度値(白色)の部分は、傷94に相当する部分である。コンピュータ50は、二値化後の第1検査画像I1および第2検査画像I2において、最小濃度値の部分の面積(以下「傷面積」と称する)を算出する(ステップS7)。そして、算出された各検査画像I1,I2の傷面積を、予め設定された第2基準値と比較する(ステップS8)。第1検査画像I1の傷面積および第2検査画像I2の傷面積の少なくともいずれか一方が、第2基準値以上である場合(ステップS8:no)、コンピュータ50は、当該瓶9を再利用不能であると判定する。その場合、コンピュータ50は、表示部51に、当該瓶9が再利用不能である旨の検査結果を表示する(ステップS10)。
【0034】
一方、第1検査画像I1の傷面積および第2検査画像I2の傷面積の両方が、第2基準値よりも小さい場合(ステップS8:yes)、コンピュータ50は、当該瓶9を再利用可能であると判定する。その場合、コンピュータ50は、表示部51に、当該瓶9が再利用可能である旨の検査結果を表示する(ステップS9)。
【0035】
以上のように、この瓶検査装置1では、光照射部30が、撮像部40側から光を照射するのではなく、瓶9の開口90よりも上側(軸方向の一方側)から、瓶9の開口90の縁部93へ向けて光を照射する。このため、瓶9の外周面における光の反射、または、水滴95による光の乱反射の影響を抑えて、瓶9を構成する透光性材料に、適切に光を導入できる。これにより、瓶9の外周面に存在する傷94を、明瞭に撮影できる。
【0036】
特に、本実施形態の光照射部30は、瓶9の開口90の縁部93に沿って円弧状に配置された複数の光源31から、光を照射する。これにより、瓶9の縁部93以外の部分へ照射される光の量を低減できる。すなわち、瓶9の外周面および内周面に直接照射される光の量を低減できる。これにより、瓶9の外周面および内周面における光の反射、または、水滴95による光の乱反射の影響を抑えて、瓶9の胴部91に、より適切に光を導入できる。したがって、瓶9の外周面に存在する傷94を、より明瞭に撮影できる。
【0037】
また、本実施形態の光照射部30は、瓶9の開口90の縁部93の全周ではなく、開口90の縁部93のうち、中心軸Aよりも撮像部40側の部分のみに、光を照射する。これにより、瓶9の胴部91のうち、中心軸Aよりも撮像部40側の部分のみに、十分な光量を供給できる。その結果、サチュレーションの発生を抑制し、瓶9の外周面に存在する傷94を、より明瞭に撮影できる。
【0038】
また、本実施形態の瓶検査装置1は、濃度平均値と傷面積の2項目に基づいて、瓶9の外周面に存在する傷94の状態を判定する。すなわち、傷94の深さと傷94の範囲の2つの観点から、傷94の状態を判定する。これにより、瓶9が再利用可能な状態であるか否かを、適切に判定できる。
【0039】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態には限定されない。
【0040】
図7は、一変形例に係る光照射部30および瓶9の断面図である。
図7の例では、光照射部30は、光源31と、光成形部32とを有する。光源31は、上記実施形態のように、円弧状に配列されていなくてもよい。光成形部32は、円弧状のスリット321を有する。光源31から出射された光は、スリット321を通過することによって、瓶9の開口90の縁部93に沿う円弧状に成形される。したがって、上記の実施形態と同様に、瓶9の開口90の縁部93へ光を照射できるとともに、縁部93以外の部分へ照射される光の量を抑えることができる。
【0041】
また、上記の実施形態のステップS5では、第1検査画像I1の濃度平均値および第2検査画像I2の濃度平均値を、同一の第1基準値と比較していた。しかしながら、第1検査画像I1の濃度平均値に対する第1基準値と、第2検査画像I2の濃度平均値に対する第1基準値とは、異なる値であってもよい。
【0042】
また、上記の実施形態のステップS8では、第1検査画像I1の傷面積および第2検査画像I2の傷面積を、同一の第2基準値と比較していた。しかしながら、第1検査画像I1の傷面積に対する第2基準値と、第2検査画像I2の傷面積に対する第2基準値とは、異なる値であってもよい。
【0043】
また、上記の実施形態では、濃度平均値に基づく判定処理(ステップS4~S5)を先に実行し、その後に、傷面積に基づく判定処理(ステップS6~S8)を実行していた。しかしながら、これらの判定処理の順序は、逆であってもよい。また、他の項目に基づいて、判定処理を行ってもよい。
【0044】
また、上記の実施形態では、光照射部30から出射される光は、瓶9の円環状の縁部93のうち、中心軸Aよりも撮像部40側の一部分のみに、照射されていた。しかしながら、光照射部30は、瓶9の縁部93のうち、中心軸Aを中心とする180°以上の角度範囲に、光を照射してもよい。すなわち、光照射部30から出射される光の一部が、瓶9の円環状の縁部93のうち、中心軸Aよりもスクリーン20側の部分に、照射されてもよい。
【0045】
また、上記の実施形態の撮像部40は、2つのカメラ41,42を有していた。しかしながら、撮像部40が有するカメラの数は、1つであってもよい。その場合、1つのカメラが、上部外周面911および下部外周面912の両方を撮影すればよい。あるいは、上部外周面911および下部外周面912のいずれか一方の撮影を、省略してもよい。また、撮像部40は、3つ以上のカメラを有していてもよい。
【0046】
また、上記の実施形態では、胴部91の外周面の全周のうち、一部の角度範囲のみを撮影していた。胴部91の外周面には、通常、円環状に傷94がつくので、一部の角度範囲の傷94の状態を検査すれば、他の角度範囲の傷94の状態も推定できる。しかしながら、ステージ10上で瓶9を回転させながら複数回の撮影を行うなどして、胴部91の外周面の全周を検査してもよい。
【0047】
また、上記の実施形態では、検査処理部が、コンピュータ50により実現されていた。しかしながら、コンピュータ50に代えて、CPUを有するマイコン等の演算処理部が搭載された電気回路装置を、検査処理部として用いてもよい。
【0048】
また、上記の実施形態の瓶9は、ネック部92を有していた。しかしながら、本発明において検査対象となる瓶は、ネック部92を有さない瓶であってもよい。また、本発明において検査対象となる瓶は、無色透明に限らず、有色透明の瓶であってもよい。また、本発明において検査対象となる瓶は、ガラス製に限らず、透光性の樹脂により形成されていてもよい。
【0049】
その他、瓶検査装置の細部の形状および構造については、本願の各図と相違していてもよい。また、上記の実施形態および変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、瓶検査装置および瓶検査方法に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 瓶検査装置
9 瓶
10 ステージ
20 スクリーン
30 光照射部
31 光源
32 光成形部
40 撮像部
41 第1カメラ
42 第2カメラ
50 コンピュータ
51 表示部
90 開口
91 胴部
92 ネック部
93 縁部
94 傷
95 水滴
910 くびれ部
911 上部外周面
912 下部外周面
A 中心軸
I1 第1検査画像
I2 第2検査画像