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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】レーザー発色性カード
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/36 20140101AFI20240820BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240820BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240820BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240820BHJP
   B42D 15/00 20060101ALI20240820BHJP
   B41M 1/12 20060101ALI20240820BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20240820BHJP
   B42D 25/435 20140101ALI20240820BHJP
   B42D 25/305 20140101ALI20240820BHJP
   B42D 25/23 20140101ALI20240820BHJP
【FI】
B42D25/36
B32B27/36 102
B32B7/023
B32B27/00 G
B42D15/00 341B
B41M1/12
B41M1/30 Z
B42D25/435
B42D25/305 100
B42D25/23
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020027123
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021130262
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】太田 拓男
(72)【発明者】
【氏名】竹下 元気
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/129346(WO,A1)
【文献】特開平03-121884(JP,A)
【文献】特開2019-001110(JP,A)
【文献】特開2018-039269(JP,A)
【文献】特開2011-148197(JP,A)
【文献】特開平09-169161(JP,A)
【文献】特開平04-128039(JP,A)
【文献】特開平04-140197(JP,A)
【文献】特開2004-122615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/36
B32B 27/36
B32B 7/023
B32B 27/00
B42D 15/00
B41M 1/12
B41M 1/30
B42D 25/435
B42D 25/305
B42D 25/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層または複数層からなるポリカーボネート樹脂を主成分とするコア基材からなるコア層と、
該コア層の一方の面または両方の面に、スクリーン印刷による銀ベタ印刷層と、
該銀ベタ印刷層上に透明外装基材を兼ねるポリカーボネート樹脂を主成分とするレーザー発色性基材によるレーザー発色層とをこの順に積層して成り、
前記銀ベタ印刷層と前記レーザー発色層との間に、絵柄層が挟まれていることを特徴とするレーザー発色性カード。
【請求項2】
前記レーザー発色層上の一方の面に、スクリーン印刷によるアンカー層を備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザー発色性カード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レーザー発色性シートを用いたカードに関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードなどのプラスチックカード券面への印字方法の一つとして、レーザー発色性基材を用いたレーザー印字が身分証明用IDカードなどに用いられている。これらは全てポリカーボネート基材を用いる構成のものが知られているが、アンテナコイルを包含するために熱形成温度に制限のある非接触式ICカードについては、より低い温度で熱形成できる膜構成のものも提案されている(下記特許文献1)。また自動車の高い室内温度環境への対応が必要となるETCカードへの応用については、コア基材も含めて、カード全体の部材をポリカーボネートが主成分であるものを用いることによって耐熱性を向上させる提案がなされている(下記特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-024207号公報
【文献】特開2018-039269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記特許文献1の技術ではETCカードに要求される耐熱性を満たすことができない。また上記特許文献2の技術では、レーザー発色が単調なグレースケールであることから、印字部位の背景絵柄に応じてコントラストや色味を強調するための工夫が必要であるため、レイアウト設計や製造工程に複雑な要素が入っている。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような課題に対処するためになされたものであって、ETCカードへのレーザー印字を適用するために、カード基材をポリカーボネートが主成分である材料にして耐熱性を向上しながらも、装飾性を確保しつつ、発色性の良いカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
単層または複数層からなるポリカーボネート樹脂を主成分とするコア基材からなるコア層と、
該コア層の一方の面または両方の面に、スクリーン印刷による銀ベタ印刷層と、
該銀ベタ印刷層上に透明外装基材を兼ねるポリカーボネート樹脂を主成分とするレーザー発色性基材によるレーザー発色層とをこの順に積層して成り、
前記銀ベタ印刷層と前記レーザー発色層との間に、絵柄層が挟まれていることを特徴とするレーザー発色性カードである。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記レーザー発色層上の一方の面に、スクリーン印刷によるアンカー層を備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザー発色性カードである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、レーザー発色性カードがポリカーボネート樹脂を主成分とする耐熱仕様のコア層と、ポリカーボネート樹脂を主成分とするレーザー発色層で構成されるため、ETCカードに求められる耐熱品質仕様を満たすことができる。
【0011】
また、コア層とレーザー発色層の間に配置された銀ベタ印刷層によって、レーザー発色層に対して外部から入射された印字のためのレーザー光の余剰光が反射されてレーザー発色層に戻ってくるため、該銀ベタ印刷層の無い場合に比べて発色効率があがり、同一のレーザー光入射エネルギーに対してより高い発色濃度を得ることができ、印字の視認性と表現性が向上する。また余剰レーザー光のコア層への侵入が抑制されるため、コア層の温度上昇も低減することができ、内部残留応力を低減させてカードの変形を抑えることが可能となる。
また、請求項1に記載の発明によれば、カード裏面への印刷層を、外装材を兼ねるレーザー発色層によって保護することにより、絵柄層の損傷を抑えることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、レーザー発色層上に配されたアンカー層によって、該アンカー層上への絵柄層印刷の密着性を向上するのみならず、耐薬品性も大幅に向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態におけるカードの断面図。
図2】第2の実施形態におけるカードの断面図。
図3】第3の実施形態におけるカードの断面図。
図4】第4の実施形態におけるカードの断面図。
図5】第4の実施形態に加えてICモジュールを備えたカードの断面図。
図6】実施例1における発色効率向上を示すグラフ。
図7】実施例2における耐薬品性向上を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図1図4を用いて、各実施形態について説明する。
【0017】
<実施形態1>
図1は請求項1に記載のレーザー発色性カードの断面構造を示すものである。ポリカーボネートを主成分とする耐熱仕様のコア層11の両面に、スクリーン印刷によって銀ベタ印刷層12aおよび12bが形成され、さらにその外側にポリカーボネートを主成分とするレーザー発色性基材によるレーザー発色層13aおよび13bが形成されることによって、コア層11とレーザー発色層13aに銀ベタ印刷層12aが、コア層11とレーザー発色層13bに銀ベタ印刷層12bがそれぞれ挟まれた構造となっている。
【0018】
コア層の厚みは500~700μmであることが好ましい。またレーザー発色層の厚みは50~200μmであることが好ましい。これらの層の厚みは、最終的に他の層も含めたカード全体の厚みが標準規格の最大値である840μmを超えない範囲にすることが必要である。
【0019】
銀ベタ印刷層とレーザー発色層はコア層の片面のみでも構わないが、カードの平坦性を保つ応力調整の観点と、裏面の装飾性を確保する観点から、本実施形態のようにコア層の両面に配置することが好ましい。またレーザー発色層13と銀ベタ印刷層12の間に、接着剤を挟んでも良い。
【0020】
本実施形態によって、カード基材がポリカーボネートを主成分とすることから耐熱性が高く、また銀ベタ印刷層12がコア層11とレーザー発色層13の間に存在することによって、入射レーザー光がレーザー発色層13内で有効に用いられることから、より発色効率の高い積層体が実現できる。
【0021】
<実施形態2>
図2は請求項2に記載のレーザー発色性カードの断面構造を示すものである。前記レーザー発色層13のうち表側、図では上側のレーザー発色層13a面上にスクリーン印刷でアンカー層14を形成したものである。
【0022】
本実施形態によって、後述の実施形態4における絵柄や文字の印刷の密着性を向上するのみならず、耐薬品性も大幅に向上することができる。
【0023】
<実施形態3>
図3は請求項3に記載のレーザー発色性カードの断面構造を示すものである。図1において裏側、図では下側のレーザー発色層13bを形成する前に、下側の銀ベタ印刷層12b面上に、絵柄や文字の絵柄層15を形成している。印刷方式としては、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷などが挙げられる。
【0024】
本実施形態によって、カード裏面への絵柄層15を、外装材を兼ねるレーザー発色層13bによって保護することにより、絵柄層15の損傷を抑えることができる。
【0025】
<実施形態4>
図4は請求項4に記載のレーザー発色性カードの断面構造を示すものである。ここでは全ての請求項の発明が適用されたものとなっている。図2で形成したアンカー層14上に、絵柄や文字の絵柄層16を設けている。この印刷方式も前記同様のオフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷などで良い。該絵柄層16を形成の後、その上からオーバーコート転写箔層17を設けている。またカード表面をマット調にするため、オーバーコート転写箔層17の表面にRa(算術平均粗さ)=0.5~0.7μmの表面粗さ18を設けている。
【0026】
本実施形態によって、カード表面の絵柄層16への損傷を抑えるとともに、マット調のオーバーコート転写箔層17が与える装飾効果によってカードへ高級感を付与することができる。
【0027】
図5図4に示したレーザー発色性カード10にETC車載器を含む外部端末と接続するための接触式の外部端子を有するICモジュール19を備えたETCカードの断面構造を示すものである。
【0028】
以下、上述の各部材の詳細な構成について説明する。
【0029】
<コア層>
コア層11は、非晶性樹脂を主成分として含む。コア層11は、例えば、白色である。コア層11の主成分は、コア層11を構成する成分のなかで最も高い含有率を有する成分であり、例えば、コア層11のなかで50質量%以上の含有率を有する成分である。具体的には、コア層11は、ポリカーボネート、もしくは、ポリカーボネートと非晶質ポリエステルとのポリマーアロイを主成分として含むことが好ましい。非晶性ポリエステルおよびポリカーボネートは、非晶性樹脂の一例である。非晶性ポリエステルとしては、例えば、テレフタル酸とシクロヘキサンジメタノールおよびエチレングリコールとの共重合体、テレフタル酸とイソフタル酸およびエチレングリコールとの共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。コア層11を構成するポリマーは、イソシアネート等によって架橋されていてもよい。
【0030】
また、成形時の流動性の調整のために、コア層11の形成材料には、タルクやシリカが添加されていてもよいし、白色度の向上のために、コア層11の形成材料に、二酸化チタンが添加されていてもよい。
【0031】
<レーザー発色層>
レーザー発色層13は、非晶性樹脂を主成分として含み、レーザー光の照射を受けて不可逆的に着色するレーザー着色性を有する。レーザー発色層13の主成分は、レーザー発色層13 を構成する成分のなかで最も高い含有率を有する成分であり、例えば、レーザー発色層13のなかで50質量%以上の含有率を有する成分である。
【0032】
レーザー発色層13の主成分は、レーザー着色性を有する成分として、例えば炭素を含有する。そして、レーザー光の吸収によってレーザー発色層13が発熱し、その熱によって炭化が生じることによって、レーザー発色層13は黒く着色する。レーザーとしては、例えば、YAGレーザーが用いられる。
【0033】
<銀ベタ印刷層>
銀ベタ印刷層12は、スクリーン印刷用に調整された銀ペーストインクによって形成される。レーザー発色層を発色させるために入射されるレーザー光のうち、発色に寄与しなかった余剰光を該銀ベタ印刷層12で反射させることを目的とする。
【0034】
<絵柄層>
絵柄層15および絵柄層16は前記のようにオフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷などの印刷方法によって形成される。印刷後の乾燥方法としては、熱風乾燥、赤外線や紫外線照射による乾燥等が挙げられる。
【0035】
印刷に用いられるインキの着色には、染料や顔料が用いられる。また、顔料として、アルミニウム、酸化チタン、真鍮等の金属顔料やパール顔料を用いてもよい。インキに含まれる樹脂としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ABSやそれらの共重合体、ポリマーアロイ等が挙げられる。
【0036】
なお、インキが溶剤型インキあるいは水系インキである場合には、上記乾燥方法のうち、熱風乾燥が行われ、インキが紫外線硬化型インキである場合には、上記乾燥方法のうち紫外線照射による硬化が行われればよい。
【0037】
<アンカー層>
アンカー層14はレーザー発色層13a上に形成する絵柄層16について、印刷インキの密着性がポリカーボネートを主成分とするレーザー発色層13aに対しては不十分であることから、レーザー発色層、絵柄層の両方に対して良好な結合性を有する結合部材として
積層されるものである。
【0038】
<オーバーコート転写箔層>
オーバーコート転写箔層17は、図示していない離型性フィルム基材上に転写層が形成された転写箔によって形成される。離型性フィルム基材は、少なくとも、基材フィルムおよび離型層を積層して構成される。転写層は、離型性フィルム基材の離型層側に積層された光沢層および接着層からなり、印刷層15およびアンカー層14面上に転写される部位である。該転写箔は、基材フィルム上に離型層、光沢層、接着層の順で積層塗工して作製される。塗布総膜厚は3μm以下が好ましい。また該オーバーコート転写箔層17は、マット調(艶消し調)の光学的特性を得るために、表面粗さ18が前記離型層側に設けられている。
【0039】
表面粗さ18は以下の方法によって付与することができる。前記離型性フィルム基材として、例えば両面にRa(算術平均粗さ)=0.5~0.7μmの表面粗さにマット加工された二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いて転写箔を作製する。このことによって該基材上に形成される前記転写層に該基材の表面粗さが転写されることで予め表面粗さを備えた転写箔が作製される。
【0040】
ただし表面粗さ18は前記の方法に限らず、平滑な転写箔によるオーバーコート転写箔層の形成後に付与しても構わない。
【実施例
【0041】
<実施例1>
実施形態1について、以下の条件で本発明のレーザー発色性カードを作製した。
(材料)コア基材として、成分が非晶性ポリエステル樹脂 約30wt%、ポリカーボネート樹脂 約40w%、酸化チタン 約10wt%で、厚みが600μmのコアシートを、レーザー発色性基材として、成分がポリカーボネート樹脂 約80wt%、共重合ポリカーボネート 約10wt%、そのほか添加剤 約10wt%で、厚みが100μmのレーザー発色シートをそれぞれ用いた。銀ベタ印刷層はスクリーン印刷用の銀ペーストインクを用い、厚さ約2.5μmの塗布膜を形成した。またオーバーコート転写箔層は予め表面粗さを付与した転写箔を用いて形成した。
【0042】
(工程)前記コアシートの両面に、銀ペーストインクによる前記銀ベタ印刷層をスクリーン印刷で形成したものと、銀ベタ印刷層を形成しないものの2種類を作製した。そしてこれら2種類のシートの両面に接着剤層を塗布したものを、それぞれ2枚の前記レーザー発色シートで挟み、プレス温度140℃の条件下で加熱プレスを行い、更にオーバーコート転写箔層を積層してカード形成用の積層体を得た。この積層体を雄雌金型でカード形状に打ち抜くことでカードを作製した。
【0043】
(比較)こうして作製した銀ベタ印刷層を有する実施形態1のカードと、対照群として作製した本発明を適用していない銀ベタ印刷層を有しないカードのそれぞれに対して、レーザー印字試験を行った。入射レーザー出力を変化させ、各出力に対する発色濃度を比較した結果が図6に示したグラフである。横軸がレーザー出力で、右に行くほど高くなっている。縦軸が発色濃度で、上に行くほど高い。
【0044】
これを見ると、銀ベタ印刷層の有無で明白に2つの群が形成されている。上に位置しているのが本発明を適用した銀ベタ印刷層ありのもので、下に位置しているのが本発明を適用していない銀ベタ印刷層なしのものである。発色濃度がそれぞれに同じ0.7について見ると、当該濃度を発現するために要したレーザー出力は、銀ベタ印刷層ありの場合で約17%、銀ベタ印刷層なしの場合で約30%であり、銀ベタ印刷層を加えることによって必要なレーザー照射エネルギーを43%も低減することができていることがわかる。このことから、銀ベタ印刷層を加えることによって、より濃い印字濃度を少ない入射エネルギーで得ることができることが確認できた。
【0045】
以上から、実施形態1の発明によって、発明の効果に示したところの、コア層とレーザー発色層の間に配置された銀ベタ印刷層によって、レーザー発色層に対して外部から入射された印字のためのレーザー光の余剰光が反射されてレーザー発色層に戻ってくるため、該銀ベタ印刷層の無い場合に比べて発色効率があがり、同一のレーザー光入射エネルギーに対してより高い発色濃度を得ることができることが確認できた。
【0046】
<実施例2>
実施形態2について、以下の条件で本発明のレーザー発色性カードを作製した。
(材料)実施例1と同じ基材を用いた。
(工程)レーザー発色層を形成するまでは、実施例1と同様に行い、その後実施形態2にあるアンカー層をスクリーン印刷で行ったものと、対照群としてアンカー層の形成をオフセット印刷で行なったものの2群を作製した。アンカー層の厚さはそれぞれ約1.5μmである。その後カード作製までは実施例1と同様に行なった。
【0047】
(比較)これら2群のカードに対して、耐薬品性の試験を行なった。試験条件はJIS規格X6305-1に準拠し、JIS規格K6258に規定されている試験用燃料油B(イソオクタンとトルエンの体積比70:30混合物)を浸漬薬品とした。浸漬時間1分間のものと、限界試験として浸漬時間を24時間としたものの2種類の試験について、外観不良状態をまとめたのが図7に示した表である。
【0048】
1分間浸漬試験では、アンカー層の形成にスクリーン印刷を用いたもの、オフセット印刷を用いたもののどちらにも外観変化は現れなかったが、24時間浸漬試験では、スクリーン印刷を用いたものについては外観変化が現れなかったのに対し、オフセット印刷を用いたものについては外観変化が現れる結果となった。このことから、スクリーン印刷で形成したアンカー層によって、カードの耐薬品性が向上することが確認できた。
【0049】
以上から、実施形態2の発明によって、発明の効果に示したところの、レーザー発色層上にスクリーン印刷を用いて配されたアンカー層によって、該アンカー層上への印刷の密着性を向上するのみならず、耐薬品性も大幅に向上することが確認できた。
【符号の説明】
【0050】
10 レーザー発色性カード
11 コア層
12a 銀ベタ印刷層(表側)
12b 銀ベタ印刷層(裏側)
13a レーザー発色層(表側)
13b レーザー発色層(裏側)
14 アンカー層
15 銀ベタ印刷層上の絵柄層
16 アンカー層上の絵柄層
17 オーバーコート転写箔層
18 マット調を演出する表面粗さ
19 ICモジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7