(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】三次元形状計測装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
G01B11/25 H
(21)【出願番号】P 2020042767
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2023-01-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 貴行
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-081048(JP,A)
【文献】特開2015-010844(JP,A)
【文献】特開2018-151172(JP,A)
【文献】特開2016-045019(JP,A)
【文献】国際公開第2014/097539(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象に対して、互いに異なる方向からパターンを投影する複数の投影手段と、
前記複数の投影手段の夫々について、前記パターンが投影された前記計測対象の撮像を取得する撮影手段と、
前記撮像を処理することで、前記計測対象の部分領域の高さを計測する計測手段と、を備え、
前記投影手段の夫々が投影するパターンは、前記投影手段の夫々との相対的な位置が第1位置である第1領域を第1の輝度で投影し、前記投影手段の夫々との相対的な位置が前記第1位置よりも離れた第2領域を前記第1の輝度より低い第2の輝度で投影する分割投影パターンであ
り、
前記第1領域と前記第2領域の境界線は、前記複数の投影手段の夫々の光軸と前記計測対象との交点を通る、
三次元形状計測装置。
【請求項2】
前記計測手段は、前記複数の投影手段の夫々について取得した前記撮像の夫々を基に計測した前記部分領域の高さの平均を、前記部分領域の高さとする、
請求項1に記載の三次元形状計測装置。
【請求項3】
前記計測手段は、前記複数の投影手段の夫々について取得した前記撮像のうち、前記部分領域の輝度が所定範囲内である撮像を基に、前記部分領域の高さを算出する、
請求項1または2に記載の三次元形状計測装置。
【請求項4】
前記複数の投影手段の夫々は、所定の位相のパターンを前記計測対象に投影し、
前記計測手段は、前記複数の投影手段の夫々について取得した前記撮像の夫々において、前記部分領域の位相を基に信頼度を算出し、算出した前記信頼度が所定範囲内である撮像を基に、前記部分領域の高さを算出する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の三次元形状計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元形状計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像を用いて物体の三次元形状を計測する技術として、計測対象の周囲に配置したプロジェクタ等の投影手段の夫々から周期性を有する投影パターンを複数種類投影し、投影パターンが投影された状態の計測対象をカメラ等の撮影手段により撮影して、撮影された二次元画像における投影パターンの歪と計測対象の高さとの関係を用いて計測対象の立体的形状を求める、位相シフト法が知られている。具体的には、撮影された画像において計測対象表面の形状(凹凸など)に依存して生じる投影パターンの歪みを解析することで、計測対象の三次元形状を計測する。
【0003】
上記方法において、複数の投影手段において投影パターンを切り替えながら撮影を行うため、計測時間が長時間化しやすいという問題がある。特許文献1では、ひとつの投影手段が投影パターンを切り替える間に他の投影手段に投影させて撮影を実行することで、計測時間の長時間化を抑制する技術が提案されている。特許文献2では、多数の(例えば8台の)投影手段を設けることで、投影パターンの切り替えや演算処理を効率化して計測時間の長時間化を抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5847568号公報
【文献】特許第5948496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
計測対象となる物体上には、様々な反射特性(例えば、反射率)を有する部材が存在する。そのため、特定の光量の投影パターンを投影して撮影を行うと、ある部材にとっては好適な光量であっても、他のある部材にとっては光量不足であったり光量過多であったりすることがあり得る。光量不足の場合には、撮像において部材に投影された投影パターンを観測することができなくなる。また、光量過多の場合には輝度飽和が生じることで、計測制度が低下する虞がある。
【0006】
そこで、複数の投影手段の夫々が、複数種類の投影パターンの夫々を複数の光量で投影し、計測結果を合成する手法が考えられる。しかしながら、このような手法では、撮影回数が増大することから、計測時間が長時間化しやすい。
【0007】
開示の技術の1つの側面は、光量不足や光量過多を抑制しつつ、計測時間の長時間化を抑制できる三次元形状計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術の1つの側面は、次のような三次元形状計測装置によって例示される。本三次元形状計測装置は、計測対象に対して、互いに異なる方向からパターンを投影する複数の投影手段と、前記複数の投影手段の夫々について、前記パターンが投影された前記計測対象の撮像を取得する撮影手段と、前記撮像を処理することで、前記計測対象の部分領域の高さを計測する計測手段と、を備え、前記投影手段の夫々が投影するパターンは、前記投影手段の夫々との相対的な位置が第1位置である第1領域を第1の輝度で投影し、残り
の第2領域を第1の輝度より低い第2の輝度で投影する分割投影パターンである。ここで、第1位置は、投影手段の夫々で互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。換言すれば、ある投影手段における第1位置は当該投影手段が投影する範囲の手前(当該投影手段に近い位置)であってもよく、他の投影手段における第1位置は当該投影手段が投影する投影範囲の右側であってもよい。
【0009】
ここで、分割投影パターンでは、前記第1領域と前記第2領域の境界線は、前記複数の投影手段の夫々の光軸と前記計測対象との交点を通ることが好ましい。このような特徴を備えることで、計測対象の各領域を第1の輝度及び第2の輝度の双方で効率よく投影することができる。
【0010】
計測対象は、例えば、様々な電子部品を実装したプリント基板である。このようなプリント基板に実装される電子部品には、半導体チップの樹脂のように、反射率の低い領域が存在する。また、プリント基板には、シルク印刷や半田、ランド等の反射率の比較的高い領域が存在する。光量不足や光量過多を抑制するため、高い光量のパターンと低い光量のパターンの夫々を計測対象に投影することとすると、計測対象の撮影回数が増大することにより、計測時間が長時間化する。本三次元形状計測装置は、分割投影パターンを複数の方向の夫々から計測対象に対して投影することで、一回の撮影で複数の光量のパターンを計測対象に投影することができるため、計測時間の長時間化を抑制できる。
【0011】
ここで、計測手段は、前記複数の投影手段の夫々について取得した前記撮像の夫々を基に計測した前記部分領域の高さの平均を、前記部分領域の高さとしてもよい。また、計測手段は、前記複数の投影手段の夫々について取得した前記撮像のうち、前記部分領域の輝度が所定範囲内である撮像を基に、前記部分領域の高さを算出してもよい。また、本三次元形状計測装置は、前記複数の投影手段の夫々は、所定の位相のパターンを前記計測対象に投影し、前記計測手段は、前記複数の投影手段の夫々について取得した前記撮像の夫々において、前記部分領域の位相を基に信頼度を算出し、算出した前記信頼度が所定範囲内である撮像を基に、前記部分領域の高さを算出を算出してもよい。このような特徴を備えることで、本三次元形状計測装置は、高さの算出を高精度に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本三次元形状計測装置は、光量不足や光量過多を抑制しつつ、計測時間の長時間化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る三次元形状計測装置のハードウェア構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態において、プロジェクタがプリント基板に投影するパターンの光量を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態において、パターンを投影するプロジェクタを切り替えた場合における、第1の光量で投影される領域と第2の光量で投影される領域を例示する図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る三次元形状計測装置の機能ブロックを例示する図である。
【
図6】
図6は、実施形態において、初期パラメータ生成で用いるターゲット部材の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態における三次元形状計測処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態における、初期パラメータ生成処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態におけるティーチング処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施形態に係る三次元形状計測装置による計測処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
以下、図面を参照して実施形態について説明する。以下に示す実施形態の構成は例示であり、開示の技術は実施形態の構成に限定されない。
【0015】
(三次元形状計測装置の構成)
まず、
図1及び
図2を参照して、実施形態に係る三次元形状計測装置1の構成例を説明する。
図1は、実施形態に係る三次元形状計測装置のハードウェア構成を示す模式図である。
図2は、
図1のA-A線における端面図である。
【0016】
図1に例示するように、実施形態に係る三次元形状計測装置1は、4つのプロジェクタ10A、10B、10C、10D、カメラ11、制御装置12(例えばコンピュータ)、移動機構13を備える。
【0017】
プロジェクタ10A、10B、10C、10Dは、Digital Mirror Device(DMD)を用いた投影手段である。プロジェクタ10A、10B、10C、10Dは、計測対象となるプリント基板Oに対してパターンを投影する。ここで、パターンとは、例えば輝度の変化が周期性を示す縞模様であり、時間的に位相を変化させることが可能なものである。本実施形態では、位相をπ/2(ラジアン)ずつ変化させるものとする。すなわち、プロジェクタ10A、10B、10C、10Dの夫々は、π/2(ラジアン)ずつ位相を変化させた4種類のパターンをプリント基板Oに対して投影するものとする。このパターンにより、プリント基板Oの三次元形状を計測する処理については公知であるので詳細な説明は割愛する。4つのプロジェクタ10A、10B、10C、10Dは、互いに異なる方向からプリント基板Oに対してパターンを投影するように配置される。なお、プロジェクタ10の数は
図1に例示するように4つであってもよいし、3つ以下または5つ以上であってもよい。なお、本明細書において、プロジェクタ10A、10B、10C、10Dを区別しないときは、プロジェクタ10と総称する。
【0018】
プロジェクタ10は、パターンを投影する領域のうち、プロジェクタ10に近い領域を第1の光量で投影し、プロジェクタ10から遠い領域を第1の光量より低い第2の光量で投影する。
図3は、実施形態において、プロジェクタがプリント基板に投影するパターンの光量を模式的に示す図である。
図3では、プロジェクタ10Aがプリント基板Oにパターンを投影した状態が例示される。
図3において、プロジェクタ10から近い領域B1は第1の光量で投影された領域を例示し、プロジェクタ10から遠い領域B2は第2の光量で投影された領域を例示する。
図3では、プロジェクタ10がパターンを投影する投影範囲の半分が領域B1であり、残りの半分が領域B2となっている。プロジェクタ10は、
図3に例示されるように、異なる光量の領域(領域B1及び領域B2)を含むパターンをプリント基板Oに投影する。以下、本明細書において、
図3に例示するような異なる光量の領域B1及び領域B2を含むパターンを、分割投影パターンと称する。プロジェクタ10は、このように、分割投影パターンをプリント基板Oに投影する。領域B1は、「第1領域」の一例である。領域B2は、「第2領域」の一例である。第1の光量は、「第1の輝度」の一例である。第2の光量は、「第2の輝度」の一例である。プロジェクタ10から近い位置は、「第1位置」の一例である。
【0019】
図4は、実施形態において、パターンを投影するプロジェクタを切り替えた場合における、第1の光量で投影される領域と第2の光量で投影される領域を例示する図である。
図4では、撮影方向の理解のため、プロジェクタ10も例示されている。
図4のA51は、プロジェクタ10Aからプリント基板Oに対してパターンを投影した場合における、領域B1及び領域B2の位置を例示する。
図4のA52は、プロジェクタ10Bからプリント基板Oに対してパターンを投影した場合における、領域B1及び領域B2の位置を例示する。
図4のA53は、プロジェクタ10Cからプリント基板Oに対してパターンを投影した場合における、領域B1及び領域B2の位置を例示する。
図4のA54は、プロジェクタ10Dからプリント基板Oに対してパターンを投影した場合における、領域B1及び領域B2の位置を例示する。
【0020】
プロジェクタ10A、プロジェクタ10B、プロジェクタ10C、プロジェクタ10Dの順にプリント基板Oへパターンを投影するプロジェクタ10を切り替えると、
図4のA51、A52、A53、A54に例示するように、第1の光量で投影される領域B1及び第2の光量で投影される領域B2の位置が変動する。このようにパターンを投影するプロジェクタ10を切り替えることで、プリント基板Oの各領域に対して、第1の光量及び第2の光量の双方によるパターンの投影を行うことができる。
【0021】
カメラ11は、パターンが投影された状態のプリント基板Oを撮影し、デジタル画像を出力する手段である。カメラ11は、例えば、光学系とイメージセンサを有する。カメラ11は、三次元形状の計測を行う際は、プロジェクタ10から投影するパターンの位相を変えながら、複数枚の画像を撮影する。カメラ11は、「撮影手段」の一例である。
【0022】
図2に例示するように、実施形態においては、カメラ11は、プリント基板Oの真上からプリント基板Oを撮影するように配置される。すなわち、実施形態では、計測時にはプリント基板Oがカメラ11の真下に位置するように配置される。なお、本明細書では、撮影手段によって撮影された画像を「観測画像」という。プリント基板Oは、「計測対象」の一例である。
【0023】
制御装置12は、プロジェクタ10及びカメラ11の制御、カメラ11から取り込まれた画像に対する処理、三次元形状の計測などを実行する。制御装置12は、CPU(プロセッサ)、メモリ、不揮発性の記憶装置(例えば、ハードディスクやフラッシュメモリ)、入力装置(例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなど)、表示装置(例えば、液晶ディスプレイなど)を備えるコンピュータを含む。後述する制御装置12の機能は、不揮発性の記憶装置に格納されたプログラムをメモリにロードし、CPUが当該プログラムを実行することにより実現することができる。ただし、制御装置12の機能の全部又は一部を、専用のハードウェアで代替しても構わない。また、分散コンピューティングやクラウドコンピューティングの技術を利用し、制御装置12の機能を複数のコンピュータの協働により実現しても構わない。
【0024】
(制御装置12の機能)
続いて、
図5に基づいて制御装置12の機能を説明する。制御装置12は、画像取得部20、三次元形状計測部21、初期化部22及びパラメータ記憶部23を有する。
【0025】
画像取得部20は、カメラ11から三次元形状計測に用いる複数の観測画像を取り込む。画像取得部20は、例えば、プロジェクタ10毎に、プリント基板Oに投影されるパターンの位相がπ/2(ラジアン)ずつ異なる画像4枚を取得する。本実施形態では、プロジェクタ10は4台あるため、画像取得部20は、16枚の画像を観測取得する。
【0026】
三次元形状計測部21は、取得された複数の観測画像に基づいて、プリント基板Oの三
次元形状を算出する。実施形態では、取得した4枚の画像間におけるプリント基板Oの表面上の一点の位置を表す1ピクセルの位相角を算出する。三次元形状計測部21は、算出した位相角とパラメータ記憶部23が記憶するパラメータとを用いて、当該一点の高さを算出する。三次元形状計測部21は、このような処理を全ピクセルに対して実行することで、観測画像からプリント基板Oの三次元形状を計測する。プリント基板Oの表面上の一点は、「部分領域」の一例である。
【0027】
ここで、三次元形状計測部21は、プロジェクタ10Aがパターンを投影して撮影した第1観測画像、プロジェクタ10Bがパターンを投影して撮影した第2観測画像、プロジェクタ10Cがパターンを投影して撮影した第3観測画像、プロジェクタ10Dがパターンを投影して撮影した第4観測画像のうち、各ピクセルの高さ算出に適した観測画像を選択して、各ピクセルの高さの算出を行う。
【0028】
取得した16枚の観測画像の夫々は、第1の光量でパターンが投影された領域B1と、第1の光量よりも低い第2の光量でパターンが投影された領域B2が含まれる。プリント基板Oでは、シルク印刷や半田、ランド等の反射率の高い部分や、半導体チップの樹脂部分等の反射率の低い部分が混在していることが多い。反射率の高い部分に対して第1の光量でパターンが投影されると、輝度飽和(光量過多)が生じることで、三次元形状計測部21による三次元形状の算出精度が低下する虞がある。また、反射率の低い部分に対して第2の光量でパターンが投影されると、当該反射率の低い部分が観測画像に明確には現れなくなるため、三次元形状計測部21による三次元形状の算出精度が低下する虞がある。そこで、三次元形状計測部21は、例えば、信頼度、輝度及び高さ誤差のうちの少なくともひとつに基づいて、より良い精度で算出できる観測画像を選択する。信頼度は、例えば、投影されたパターンの振幅を信頼度として採用することができる。パターンの位相角θと、信号の実部及び虚部の関係は、以下の式(1)のようになる。
【数1】
【0029】
式(1)を基に算出した実部Reと虚部Imを用いて、信頼度I
ampは、以下の式(2)によって決定できる。
【数2】
【0030】
なお、実部と虚部は、上記式(1)を用いずとも、フーリエ変換を利用して実部と虚部とを算出することもできる。三次元形状計測部21は、算出した信頼度が所定の範囲内である観測画像を、当該ピクセルの高さを算出に適した観測画像として選択してもよい。
【0031】
三次元形状計測部21は、例えば、高さの算出対象とするピクセルの輝度が所定の範囲内である観測画像を、当該ピクセルの高さの算出に適した観測画像として選択してもよい。
【0032】
三次元形状計測部21は、例えば、他の部分との高さの誤差が、予め定めた誤差範囲内に収まる観測画像を、当該ピクセルの高さを算出に適した観測画像として選択してもよい。
【0033】
初期化部22は、あらかじめ高さが判明しているターゲット部材に対してプロジェクタ10からパターンを投影した状態で撮影した場合における、当該撮像の各ピクセルと位相
角との対応関係(初期位相情報)を生成する。
図6は、実施形態において、初期パラメータ生成で用いるターゲット部材の一例を示す図である。
図6(A)は、ターゲット部材100の平面図である。
図6(B)は、ターゲット部材100の側面図である。
図6を参照すると理解できるように、ターゲット部材100は、互いに高さの異なる領域R1、R2、R3、R4、R5が設けられる。領域R1、R2、R3、R4、R5の夫々は、カメラ11の撮影範囲全体に相当する広さを有する。ターゲット部材100の各領域の高さは、例えば、領域R1>領域R2>領域R3>領域R4>領域R5となっている。本明細書において、ターゲット部材100の各領域の高さは、撮影台14を基準として、領域R1の高さをX1、領域R2の高さはX2、領域R3の高さをX3、領域R4の高さをX4、領域R5の高さをX5であるものとする。
【0034】
初期化部22は、例えば、領域R5を撮影した撮像を基に、初期位相情報を生成する。また、初期化部22は、位相角を基に高さを算出する近似式を生成する。初期化部22は、生成した初期位相情報と近似式を含むパラメータを、パラメータ記憶部23に記憶させる。さらに、初期化部22は、カメラ11が撮影する画像と、プロジェクタ10の投影パターンとの位置関係を調整したり、分割投影パターンの生成を行ったりする。
【0035】
(初期化処理の流れ)
図7は、実施形態に係る三次元形状計測装置の初期化処理の流れを例示するフローチャートである。以下、
図7を参照して、実施形態に係る三次元形状計測装置の初期化処理の流れについて説明する。
【0036】
S1では、初期化部22は、プロジェクタ10を制御して、プロジェクタ10の光軸中心にスポット光を出射させる。S2では、初期化部22は、カメラ11が撮影する画像の中心と、プロジェクタ10のスポット光が一致するように、プロジェクタ10の投影パターンを制御する。
【0037】
S3では、初期化部22は、領域B1と領域B2の境界線がS1で出射したスポット光を通る直線となるように、分割投影パターンを生成する。S4では、初期化部22は、生成した分割投影パターンを投影できるように、プロジェクタ10のDMDを制御する。
【0038】
S5では、初期化部22は、初期パラメータを生成する。初期化部22は、生成した初期パラメータをパラメータ記憶部23に記憶させる。初期パラメータを生成する処理の詳細は、
図8を参照して後述する。
【0039】
(初期パラメータ生成処理の流れ)
図8は、実施形態における、初期パラメータ生成処理の流れを例示するフローチャートである。
図8が例示する処理は、
図7のS5の処理に対応する。以下の
図8では、プロジェクタ10Aについての初期パラメータ生成処理を例示するが、プロジェクタ10B、10C、10Dについても同様の処理が実行される。以下、
図8を参照して、初期化部22による初期パラメータ生成処理の流れについて説明する。
【0040】
S51では、初期化部22は、ターゲット部材100の各領域R1、R2、R3、R4、R5の夫々について、プロジェクタ10Aから投影するパターンの位相がπ/2(ラジアン)ずつ異なる画像4枚を取得する。
【0041】
S52では、初期化部22は、領域R5を撮影した画像を基に、カメラ11が撮影する撮像の各ピクセルと位相角との対応関係を生成する。本明細書において、領域R5を撮影した画像を基に生成した対応関係を初期位相情報と称する。初期位相情報は、ピクセル夫々に位相の値を配置した2次元の数値配列として示すことができる。
【0042】
S53では、初期化部22は、領域R1、R2、R3、R4の夫々について、各ピクセルと位相角との対応関係を生成する。初期化部22は、S52で生成した初期位相情報と、各ピクセルと位相角との対応関係とを基に、領域R5との相対的な高さと位相角との対応関係をピクセル夫々について生成する。
【0043】
例えば、初期化部22は、以下のような位相角の差φをピクセル夫々について算出する。初期化部22は、領域R4について、領域R5との高さの差がX4-X5であり、領域R5との位相角の差がφ1であることを算出する。また、初期化部22は、領域R3について、領域R5との高さの差がX3-X5であり、領域R5との位相角の差がφ2であることを算出する。初期化部22は、領域R2について、領域R5との高さの差がX2-X5であり、領域R5との位相角の差がφ3であることを算出する。初期化部22は、領域R1について、領域R5との高さの差がX1-X5であり、位相角の差がφ4であることを算出する。
【0044】
初期化部22は、このように取得した高さと位相角φとの関係から、高さと位相角との対応関係を示す近似式を算出する。近似式は、例えば、以下の式(3)のような形で示すことができ、各ピクセルに対応する式(3)が生成される。
【数3】
【0045】
式(3)において、zは求める高さである。また、式(3)において、係数a、b、c、dは、ピクセル夫々で定まる実数の定数である。本明細書において、ピクセル夫々の近似式の係数a、b、c、dを示す情報をパラメータ係数とも称する。パラメータ係数は、ピクセル夫々について係数aの値を配置した2次元の数値配列、ピクセル夫々について係数bの値を配置した2次元の数値配列、ピクセル夫々について係数cの値を配置した2次元の数値配列、及び、ピクセル夫々について係数dの値を配置した2次元の数値配列として示すことができる。
【0046】
式(3)において、φdの「d」には1から4までの数字が入る。例えば、「φ1」であれば、高さzを算出する対象とするピクセルの、領域R5と領域R4における位相差である。なお、上記式(3)に例示される近似式は3次式であるが、近似式は4次以上の式であってもよいし、2次以下の式であってもよい。
【0047】
(ティーチング処理)
図9は、実施形態におけるティーチング処理の流れを例示するフローチャートである。
図9に例示する処理は、例えば、
図7に例示する初期化処理の後に実行される。以下、
図9を参照して、実施形態におけるディーチング処理の流れについて説明する。
【0048】
S101では、プリント基板Oの検査(三次元形状の計測)に用いるプログラムが作成される。作成されたプログラムは、例えば、初期化部22によってパラメータ記憶部23に記憶される。S102では、視野情報が作成される。視野情報は、例えば、光量、パターンの配置やパターンで形成される縞模様の太さ等の組み合わせを含む。視野情報は、例えば、互いに光量の異なる5種類の組み合わせを含んでもよい。S103では、S102で作成した視野情報から、分割パターンで用いる2種類の組み合わせが選択される。選択された組み合わせのうち、光量の多い(輝度の高い)組み合わせが領域B1への投影に用いられ、光量の少ない(輝度の低い)組み合わせが領域B2への投影に用いられる。S104では、検査プログラムがリリースされる。検査プログラムのリリースでは、S101からS103で作成された、分割パターンを含む検査プログラムが、例えば、初期化部2
2によってパラメータ記憶部23に記憶される。
【0049】
(計測処理)
図10は、実施形態に係る三次元形状計測装置による計測処理の流れを例示するフローチャートである。以下、
図10を参照して、三次元形状計測装置1による計測処理について説明する。
【0050】
S201では、三次元形状計測部21は、パラメータ記憶部23に記憶された検査プログラムを読み出す。S202では、画像取得部20は、プロジェクタ10Aが分割パターンをプリント基板Oに投影した状態でカメラ11が撮影した撮像を取得する。この撮像は、π/2(ラジアン)ずつ位相を変えた4枚の撮像が取得される。画像取得部20は、同様に、プロジェクタ10B、10C、10Dの夫々についても、分割パターンをプリント基板Oに投影した状態でカメラ11が撮影した撮像を取得する。
【0051】
S203では、三次元形状計測部21は、画像取得部20が取得した、プロジェクタ10Aが分割パターンをプリント基板Oに投影した状態の観測画像を基に、各ピクセルの第1の高さを算出する。プロジェクタ10Aが分割パターンをプリント基板Oに投影した状態は、例えば、
図4のA51に例示される。三次元形状計測部21は、同様に、プロジェクタ10B、10C、10Dの夫々についても、観測画像を基に、各ピクセルの高さを算出する。すなわち、三次元形状計測部21は、プロジェクタ10Bが分割パターンをプリント基板Oに投影した状態の観測画像を基に算出した第2の高さを算出する。三次元形状計測部21は、プロジェクタ10Cが分割パターンをプリント基板Oに投影した状態の観測画像を基に算出した第3の高さを算出する。三次元形状計測部21は、プロジェクタ10Dが分割パターンをプリント基板Oに投影した状態の観測画像を基に算出した第4の高さを算出する。
【0052】
三次元形状計測部21は、各ピクセルについて、プロジェクタ10A、10B、10C、10Dの観測画像夫々を基に算出した高さを合成する。三次元形状計測部21は、例えば、あるピクセルについての、第1の高さ、第2の高さ、第3の高さ及び第4の高さの平均を当該ピクセルの高さとしてもよい。S204では、三次元形状計測部21は、S203で計測した各ピクセルの高さを出力する。
【0053】
<実施形態の作用効果>
プリント基板Oには、反射率の高い部品や反射率の低い部品が混在していることが多い。このようなプリント基板Oに対して単一の輝度のパターンを投影すると、計測に好ましい観測画像が取得できない場合がある。このような問題を回避するため、例えば、プロジェクタ10夫々に、第1の光量でパターンを投影させた状態で観測画像を取得し、また、第2の光量でパターンを投影させた状態で観測画像を取得する方法が考えられる。このような方法で観測画像を取得すると、プリント基板Oの撮影回数は、プロジェクタ10の台数と光量を切り替える回数(「第1の光量」と「第2の光量」の2)、位相を変えて撮影する数(π/2ずつ変えて4回)の積となるため、プロジェクタ10が4台の場合には、32回の撮影が実行されることになる。本実施形態では、第1の光量となる領域B1と第2の光量となる領域B2を含む分割パターンを投影するため、一度の撮影で第1の光量と第2の光量の2種類の光量についての撮影が可能となる。そのため、本実施形態では、光量の切り替えが発生しなくなるため、プリント基板Oの撮影回数を16回に減少させることが可能となる。プリント基板Oの撮影回数を減少させることができるため、本実施形態に係る三次元形状計測装置1は、計測時間の長時間化を抑制することができる。
【0054】
本実施形態では、領域B1と領域B2の境界線が、プロジェクタ10の光軸とプリント基板Oとの交点を通る。そのため、プロジェクタ10が互いに異なる方向からプリント基
板Oに対して投影すると、プリント基板O上の全ての領域は、第1の光量及び第2の光量の双方のパターンが投影されることになる。そのため、プリント基板O上に異なる反射率の部材がある場合であっても、第1の光量のパターン及び第2の光量のパターンの少なくともいずれかによって、当該部材の計測に好ましい撮像を得ることができる。
【0055】
<変形例>
実施形態では、4台のプロジェクタ10を用いることで、4方向からプリント基板Oに対して分割パターンの投影を行った。しかしながら、プロジェクタ10の台数は4台に限定されるわけではない。三次元形状計測装置1は、4台より多いプロジェクタ10を備え、4方向よりも多い様々な方向からプリント基板Oに分割パターンを投影してもよい。また、三次元形状計測装置1は、3台以下のプロジェクタ10を備えてもよい。
【0056】
実施形態では、三次元形状計測部21は、各ピクセルについて、第1の高さ、第2の高さ、第3の高さ、第4の高さを算出し、算出したそれぞれの高さの平均を当該ピクセルの高さとしたが、ピクセルの高さは他の方法によって算出してもよい。三次元形状計測部21は、例えば、各ピクセルについて、信頼度の高い観測画像を基に、高さを算出してもよい。また、三次元形状計測部21は、例えば、各ピクセルについて、輝度が所定範囲内である観測画像に基づいて、高さを算出してもよい。また、三次元形状計測部21は、第1の高さ、第2の高さ、第3の高さ及び第4の高さのうち、他の高さとの差が所定値以上である高さを除いて平均を算出し、算出した平均を当該ピクセルの高さとしてもよい。
【0057】
実施形態では、プロジェクタ10に近い領域を第1の光量で投影し、プロジェクタ10から遠い領域を第2の光量で投影する分割投影パターンを採用した。しかしながら、分割投影パターンは、このような態様に限定されない。分割投影パターンは、例えば、プロジェクタ10から計測対象を見る方向において、左側の領域を第1の光量で投影し、右側の領域を第2の光量で投影してもよい。
【0058】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・三次元形状計測装置
10・・・プロジェクタ
11・・・カメラ
12・・・制御装置
20・・・画像取得部
21・・・三次元形状計測部
22・・・初期化部
23・・・パラメータ記憶部
O・・・プリント基板