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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】縫製装置
(51)【国際特許分類】
   D05B 29/02 20060101AFI20240820BHJP
   D05B 19/12 20060101ALI20240820BHJP
   D05B 69/36 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
D05B29/02
D05B19/12
D05B69/36
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020060891
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021159109
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100143960
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 早百合
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 ともみ
(72)【発明者】
【氏名】岡野 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀部 智史
(72)【発明者】
【氏名】倉田 兵武
(72)【発明者】
【氏名】園田 真史
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-266762(JP,A)
【文献】特開2014-188274(JP,A)
【文献】特開2019-201728(JP,A)
【文献】特開2007-007391(JP,A)
【文献】特開2015-150361(JP,A)
【文献】特開平05-007680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B1/00-97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被縫製物を載置する針板と、
上下方向に延び、下端に縫針を装着可能な針棒と、
前記針棒を上下動する針棒機構と、
前記針棒機構を駆動する主軸モータと、
押え足を下端に装着でき、前記針板に載置した前記被縫製物を上から前記押え足で押える押え棒と、
前記押え足が押えた前記被縫製物の厚さである検出厚さを検出する検出部と
を備えた縫製装置において、
縫製予定の一枚又は複数枚の前記被縫製物の厚さとして予め設定された基準厚さを取得する取得部と、
前記検出厚さと、前記基準厚さとを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果を報知する報知制御部と、
前記検出厚さと、前記基準厚さとの差の比較に用いる警告閾値を取得する警告閾値取得部とを備え、
前記報知制御部は、前記基準厚さと前記検出厚さとの差が前記警告閾値以上の時、警告を報知し、更に、
前記警告閾値よりも小さい変更閾値を取得する変更閾値取得部と、
前記基準厚さと前記検出厚さの前記差が前記警告閾値よりも小さく、且つ、前記変更閾値以上の時、縫製条件を前記検出厚さに応じて変更する条件変更部と
を備えることを特徴とする縫製装置。
【請求項2】
前記警告閾値よりも小さい有効閾値を取得する有効閾値取得部と、
前記基準厚さと前記検出厚さの前記差が前記警告閾値よりも小さく、且つ、前記検出厚さから前記基準厚さを差し引いた値が前記有効閾値以上の時、前記基準厚さの前記被縫製物を縫製する時に前記主軸モータに通電する電流よりも大きい電流を供給して前記主軸モータを駆動することで前記縫針に依る前記被縫製物の貫通力を向上する貫通力向上機能を有効に設定する有効設定部とを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の縫製装置。
【請求項3】
前記基準厚さと前記主軸モータ駆動中に取得した前記検出厚さの差が前記警告閾値以上の時、前記主軸モータの駆動を停止する縫製停止部を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の縫製装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記主軸モータ駆動開始前に前記検出厚さを検出し、
前記報知制御部は、前記基準厚さと前記主軸モータ駆動開始前に検出した前記検出厚さの前記比較結果を報知することを特徴とする請求項1に記載の縫製装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記主軸モータ駆動中に前記検出厚さを検出し、
前記報知制御部は、前記主軸モータ駆動中に検出した前記検出厚さが変化した場合に警告を報知することを特徴とする請求項に記載の縫製装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記主軸モータ駆動中に前記検出厚さを検出し、
前記主軸モータ駆動中に検出した前記検出厚さが変化した場合に、縫製条件を前記検出厚さに応じて変更する条件変更部を更に備えることを特徴とする請求項又はに記載の縫製装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記主軸モータ駆動中に前記検出厚さを検出し、
前記報知制御部は、前記主軸モータ駆動中に検出した前記検出厚さが所定値よりも小さい時、前記被縫製物が前記針板と前記押え足の間に無いことを報知し、
前記主軸モータ駆動中に検出した前記検出厚さが前記所定値よりも小さい時、前記主軸モータの駆動を停止する縫製停止部を更に備えることを特徴とする請求項の何れかに記載の縫製装置。
【請求項8】
前記報知制御部は、前記検出厚さと前記基準厚さの前記比較結果として、前記針板に載置した前記被縫製物の枚数を表示することを特徴とする請求項1、4及び5の何れかに記載の縫製装置。
【請求項9】
被縫製物を載置する針板と、
上下方向に延び、下端に縫針を装着可能な針棒と、
前記針棒を上下動する針棒機構と、
前記針棒機構を駆動する主軸モータと、
押え足を下端に装着でき、前記針板に載置した前記被縫製物を上から前記押え足で押える押え棒と、
前記押え足が押えた前記被縫製物の厚さである検出厚さを検出する検出部と
を備えた縫製装置において、
縫製予定の一枚又は複数枚の前記被縫製物の厚さとして予め設定された基準厚さを取得する取得部と、
前記検出厚さと、前記基準厚さとを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果を報知する報知制御部と、
前記検出厚さと、前記基準厚さとの差の比較に用いる警告閾値を取得する警告閾値取得部とを備え、
前記取得部は、縫製途中で前記基準厚さが変わる前記被縫製物を縫製する時、前記主軸モータ駆動中に前記基準厚さを、前記基準厚さの前記被縫製物を縫製する順序である設定順に複数取得し、
前記比較部は、前記主軸モータ駆動中に検出した前記検出厚さが変化した時、前記検出厚さと、前記設定順が次の前記基準厚さとを比較し、
前記報知制御部は、前記検出厚さと、前記設定順が次の前記基準厚さとの差が前記警告閾値以上の時、警告を報知し、更に、
前記警告閾値よりも小さい変更閾値を取得する変更閾値取得部と、
前記基準厚さと前記検出厚さの前記差が前記警告閾値よりも小さく、且つ、前記変更閾値以上の時、縫製条件を前記検出厚さに応じて変更する条件変更部と
を備えることを特徴とする縫製装置。
【請求項10】
縫製途中で前記基準厚さが変わる前記被縫製物を縫製する時の、前記主軸モータ駆動中の前記基準厚さと前記設定順との組合せを複数記憶する記憶部を更に備え、
前記取得部は、前記記憶部が記憶した複数の前記組合せを前記設定順に取得することを特徴とする請求項に記載の縫製装置。
【請求項11】
前記基準厚さと前記設定順との前記組合せを設定する指示を検出した場合に、前記検出部が検出した前記検出厚さを前記基準厚さとして設定し、前記基準厚さと前記設定順との前記組合せを複数前記記憶部に記憶させる記憶制御部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の縫製装置。
【請求項12】
前記検出部は、前記主軸モータ駆動開始前に前記検出厚さを検出し、
前記報知制御部は、前記基準厚さと前記主軸モータ駆動開始前に検出した前記検出厚さの前記比較結果を報知することを特徴とする請求項に記載の縫製装置。
【請求項13】
前記検出部は、前記主軸モータ駆動中に前記検出厚さを検出し、
前記報知制御部は、前記主軸モータ駆動中に検出した前記検出厚さが変化した場合に警告を報知することを特徴とする請求項1に記載の縫製装置。
【請求項14】
前記検出部は、前記主軸モータ駆動中に前記検出厚さを検出し、
前記主軸モータ駆動中に検出した前記検出厚さが変化した場合に、縫製条件を前記検出厚さに応じて変更する条件変更部を更に備えることを特徴とする請求項1又は1に記載の縫製装置。
【請求項15】
前記検出部は、前記主軸モータ駆動中に前記検出厚さを検出し、
前記報知制御部は、前記主軸モータ駆動中に検出した前記検出厚さが所定値よりも小さい時、前記被縫製物が前記針板と前記押え足の間に無いことを報知し、
前記主軸モータ駆動中に検出した前記検出厚さが前記所定値よりも小さい時、前記主軸モータの駆動を停止する縫製停止部を更に備えることを特徴とする請求項1~1の何れかに記載の縫製装置。
【請求項16】
前記報知制御部は、前記検出厚さと前記基準厚さの前記比較結果として、前記針板に載置した前記被縫製物の枚数を表示することを特徴とする請求項、1及び1の何れかに記載の縫製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は縫製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の縫製装置は縫目形成位置の近傍の布を押える押え足を備える。押え足は押え棒の下端に装着し、押え棒は押え足が布を解放する上昇位置と布を押える押え位置の間で移動できる。押え足が動くと、押え棒の一部分と基準の距離が安定して変化する。位置センサは押え位置の押え足の位置を検出する。縫製装置は位置センサの出力値に依り、布厚に応じて縫製装置の縫製条件を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-007391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記縫製装置は、布厚に依って縫製装置の縫製条件を自動計算し、縫製を行う。縫製装置は、作業者が意図しない布厚の被縫製物を縫製する時にも、布厚に依り自動で縫製条件を設定するので、作業者は意図しない布厚の被縫製物を縫製することに気づかない。
【0005】
本発明は被縫製物の厚さに応じた縫製を実行する時の作業者の利便性を向上した縫製装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1の縫製装置は被縫製物を載置する針板と、上下方向に延び、下端に縫針を装着可能な針棒と、前記針棒を上下動する針棒機構と、前記針棒機構を駆動する主軸モータと、押え足を下端に装着でき、前記針板に載置した前記被縫製物を上から前記押え足で押える押え棒と、前記押え足が押えた前記被縫製物の厚さである検出厚さを検出する検出部とを備えた縫製装置において、基準となる一枚又は複数枚の前記被縫製物の厚さである基準厚さを取得する取得部と、前記検出厚さと、前記基準厚さを比較する比較部と、前記比較部の比較結果を報知する報知制御部とを備える。縫製装置は検出厚さと基準厚さとの比較結果を報知する。作業者は縫製装置が報知した比較結果を参照でき、比較結果に依り針板に載置し、押え足が押えた被縫製物が、作業者が意図した被縫製物であるか否かを確認できる。故に縫製装置は被縫製物の厚さに応じた縫製を実行する時の作業者の利便性を従来よりも向上できる。
【0007】
本発明の請求項2の縫製装置は前記検出厚さと、前記基準厚さの差の比較に用いる警告閾値を取得する警告閾値取得部を更に備え、前記報知制御部は、前記基準厚さと前記検出厚さの差が前記警告閾値以上の時、警告を報知する。縫製装置は警告閾値を適宜設定することで、作業者が意図しない厚さの被縫製物が針板に載置してあることを作業者に報知できる。作業者は警告を参照することで、例えば作業者が意図しない被縫製物に縫製することを回避できる。
【0008】
本発明の請求項3の縫製装置は前記警告閾値よりも小さい変更閾値を取得する変更閾値取得部と、前記基準厚さと前記検出厚さの前記差が前記警告閾値よりも小さく、且つ、前記変更閾値以上の時、縫製条件を前記検出厚さに応じて変更する条件変更部とを更に備える。縫製装置は警告閾値、変更閾値を適宜設定することで、作業者が基準厚さと検出厚さとの差が警告を報知するほど大きくないが、基準厚さに依り設定した縫製条件で縫製するには適していない時、検出厚さに応じて縫製条件を自動的に変更できる。縫製装置は作業者が縫製中に縫製条件を変更する手間を省くことができる。
【0009】
本発明の請求項4の縫製装置は前記警告閾値よりも小さい有効閾値を取得する有効閾値取得部と、前記基準厚さと前記検出厚さの前記差が前記警告閾値よりも小さく、且つ、前記検出厚さから前記基準厚さを差し引いた値が前記有効閾値以上の時、前記基準厚さの前記被縫製物を縫製する時と異なる通電パターンで前記主軸モータを駆動することで前記縫針に依る前記被縫製物の貫通力を向上する貫通力向上機能を有効に設定する有効設定部とを更に備える。縫製装置は警告閾値、有効閾値を適宜設定することで、作業者が基準厚さと検出厚さとの差が縫製を中止するほど大きくはないが、基準厚さに依り設定した縫製条件で縫製した時に縫針が被縫製物を貫通しにくい時、貫通力向上機能を自動的に有効に設定できる。縫製装置は作業者が縫製中に貫通力向上機能を有効に設定する手間を省くことができる。
【0010】
本発明の請求項5の縫製装置は前記基準厚さと前記主軸モータ駆動中に取得した前記検出厚さの差が前記警告閾値以上の時、前記主軸モータの駆動を停止する縫製停止部を更に備える。縫製装置は警告閾値を適宜設定することで、作業者が意図しない厚さの被縫製物の縫製を継続することを回避できる。
【0011】
本発明の請求項6の縫製装置の前記検出部は、前記主軸モータ駆動開始前に前記検出厚さを検出し、前記報知制御部は、前記基準厚さと前記主軸モータ駆動開始前に検出した前記検出厚さの前記比較結果を報知する。作業者は縫製装置が報知した比較結果を参照でき、比較結果に依り針板に載置し、押え足が押えた被縫製物が作業者が意図する被縫製物であるかを縫製前に確認できる。故に縫製装置は被縫製物の厚さに応じた縫製を実行する時の作業者の利便性を従来よりも更に向上できる。
【0012】
本発明の請求項7の縫製装置の前記検出部は、前記主軸モータ駆動中に前記検出厚さを検出し、前記報知制御部は、前記主軸モータ駆動中に検出した前記検出厚さが変化した場合に警告を報知する。縫製装置は主軸モータ駆動中に検出した検出厚さが変化した時、報知により作業者に知らせることができる。作業者は縫製装置に依る報知を参照し、検出厚さの変化が作業者が意図したものであるか否かに応じて適切に対処できる。
【0013】
本発明の請求項8の縫製装置の前記検出部は、前記主軸モータ駆動中に前記検出厚さを検出し、前記主軸モータ駆動中に検出した前記検出厚さが変化した場合に、縫製条件を前記検出厚さに応じて変更する条件変更部を更に備える。縫製装置は主軸モータ駆動中に検出した検出厚さが変化した時、検出厚さに応じて縫製条件を自動的に変更できる。縫製装置は、作業者が縫製中に縫製条件を変更する手間を省くことができる。
【0014】
本発明の請求項9の縫製装置の前記検出部は、前記主軸モータ駆動中に前記検出厚さを検出し、前記報知制御部は、前記主軸モータ駆動中に検出した前記検出厚さが所定値よりも小さい時、前記被縫製物が前記針板と前記押え足の間に無いことを報知し、前記主軸モータ駆動中に検出した前記検出厚さが前記所定値よりも小さい時、前記主軸モータの駆動を停止する縫製停止部を更に備える。縫製装置は被縫製物が針板と押え足の間に無いことを報知し、主軸モータの駆動を停止できる。縫製装置は被縫製物の端まで縫製後に、主軸モータの駆動が継続されることを回避できる。
【0015】
本発明の請求項10の縫製装置は前記検出厚さと、前記基準厚さの差の比較に用いる警告閾値を取得する警告閾値取得部を更に備え、前記取得部は、前記主軸モータ駆動中に前記基準厚さを複数設定順に取得し、前記比較部は、前記主軸モータ駆動中に検出した前記検出厚さが変化した時、前記検出厚さと、前記設定順が次の前記基準厚さを比較し、前記報知制御部は、前記検出厚さと、前記設定順が次の前記基準厚さの差が前記警告閾値以上の時、警告を報知する。縫製装置は縫製途中で厚さが変わる被縫製物を縫製する時に、厚さが変化する箇所を異常として検出することを回避できる。縫製装置は検出厚さの変化を検出した時、設定順が次の基準厚さと検出厚さを比較するので、縫製途中で厚さが変わる被縫製物を縫製する時にも基準厚さと検出厚さを適切に比較できる。
【0016】
本発明の請求項11の縫製装置は前記主軸モータ駆動中の前記基準厚さと前記設定順との組合せを複数記憶する記憶部を更に備え、前記取得部は、前記記憶部が記憶した複数の前記組合せを前記設定順に取得する。縫製装置は縫製途中で厚さが変わる被縫製物を縫製する時に、厚さが変化する箇所を異常として検出することを回避できる。縫製装置は検出厚さの変化を検出した時、設定順が次の基準厚さと検出厚さを比較するので、縫製途中で厚さが変わる被縫製物を縫製する時にも基準厚さと検出厚さを適切に比較できる。
【0017】
本発明の請求項12の縫製装置は前記検出部が検出した前記検出厚さを前記基準厚さとして設定し、前記基準厚さと前記設定順との前記組合せを複数前記記憶部に記憶させる記憶制御部を更に備える。縫製装置は検出部が検出した検出厚さを基準厚さとして、基準厚さと設定順との組合せを複数記憶部に記憶できる。縫製装置は他の装置から基準厚さと設定順との組合せを取得する装置よりも、縫製装置に対する検出部の装着公差等の影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】縫製装置1の斜視図。
図2】縫製装置1の内部構造の一部の斜視図。
図3】縫製装置1の内部構造の一部の正面図。
図4】(A)は押え機構44が針下位置に在る時の縫製装置1の内部構造の一部の左側面図、(B)は押え機構44が針上位置に在る時の縫製装置1の内部構造の一部の左側面図。
図5】縫製装置1の電気的構成のブロック図。
図6】縫製処理の流れ図。
図7】設定処理の流れ図。
図8】縫製前検出処理の流れ図。
図9】縫製中検出処理の流れ図。
図10】(A)は第一具体例の被縫製物W1の厚さの説明図、(B)は第二具体例の被縫製物W2の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の縫製装置1の物理的構成を説明する。以下説明では、図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。図1図2の如く、縫製装置1は総合送りミシンであり、ベッド部2、脚柱部3、アーム部4、頭部5を備える。ベッド部2は其の上面に針板14を有し、釜機構、送り機構36、送り量調整機構37を収容する。釜機構は下軸40の回動に依り駆動し、針板14の下方で上糸と下糸を絡ませる。下軸40は主軸31と下軸40に架けたベルト35に依り主軸31と同期して回動する。送り機構36は上下送り軸38、偏心リンク69(図4参照)、偏心ロッド(図示略)、変換体66、水平送り軸39、リンク機構53、送り歯17を備え、下軸40の回動に同期して送り歯17を駆動し、被縫製物を所定の送り量で搬送方向に移動する。搬送方向は後方又は前方である。下軸40、上下送り軸38、水平送り軸39は左右方向に延びる。上下送り軸38は水平送り軸39の前方に在る。上下送り軸38は、下軸40の軸心に対し偏心する偏心リンク69を介して下軸40と連結する。偏心ロッドは偏心リンク69の右方にて下軸40に偏心して設ける。変換体66は下軸40に偏心して設けた偏心ロッドの後端部と連結し、主軸31の回動に依る下軸40の回動を水平送り軸39に伝達する。上下送り軸38の左端、水平送り軸39の左端は、リンク機構53を介して、送り歯17と連結する。送り量調整機構37は送り量調整モータ24、中間軸28、変換体66、カムレバー67、カムディスク65、水平送り軸39を備える。中間軸28は左右方向に延び、変換体66を介して水平送り軸39と連結する。中間軸28の右端部はカムレバー67を有し、カムレバー67は送り量調整モータ24の出力軸に設けたカムディスク65と接触する。送り量調整モータ24はパルスモータである。送り量調整モータ24は出力軸を回動することで、カムディスク65、カムレバー67、中間軸28、変換体66を介して水平送り軸39の回動量を変更し、送り機構36に依る被縫製物の前後方向の送り量を調整する。主軸31の回動に同期して下軸40が回動すると上下送り軸38、水平送り軸39が揺動し、送り歯17は左側面視反時計回り又は時計回りに楕円状の軌跡を描いて回動する。
【0020】
脚柱部3はベッド部2右端部から上方に延び、主軸モータ21、押えモータ22、ベルト35、駆動リンク41を収容する。主軸モータ21は主軸31を回動する。押えモータ22は主軸モータ21の左方且つ後方に設けたパルスモータであり、外押え棒10の下端に装着した外押え足11が被縫製物に加える下向きの押え圧を調整する。押えモータ22は外押え足11の上下動も可能である。駆動リンク41は水平送り軸39と針棒揺動軸42に連結する。
【0021】
アーム部4は脚柱部3上端部から左方に延びる。アーム部4は其の前面に表示部15、入力部16、19、糸調子器13を備える。表示部15は画像を表示する液晶ディスプレイであり、入力部16は表示部15前面に設けたタッチパネルであり、制御部90に各種指示を入力できる。入力部19は表示部15の右方に設け、制御部90に各種指示を入力するスイッチである。糸調子器13は糸調子ソレノイド25(図5参照)を有し、糸調子ソレノイド25の駆動に依り上糸に所定の張力を付与する。アーム部4は糸調子ソレノイド25、交互上昇量調整モータ23、主軸31、押え軸26、針棒揺動軸42、中間軸27、揺動軸45、交互上昇量調整機構50を収容する。糸調子ソレノイド25は比例ソレノイドであり、縫製装置1は糸調子ソレノイド25に供給する駆動電圧を調整することで、上糸に付与する張力を調整できる。交互上昇量調整モータ23は主軸モータ21、押えモータ22の左方に設けたパルスモータである。主軸31、押え軸26、針棒揺動軸42、中間軸27、揺動軸45は左右方向に延びる。主軸31の右端部は主軸モータ21に接続し、左端部は針棒機構32に接続する。押え軸26は主軸31の後方に位置し、右端部に扇形ギヤ64を有する。扇形ギヤ64は押えモータ22の出力軸に設けたピニオン61と噛合い、押えモータ22の駆動に依り回動する。故に押え軸26は押えモータ22の駆動に依り回動する。押え軸26の左端部は押え機構44に接続する。針棒揺動軸42の右端部は駆動リンク41に接続し、左端部は揺動機構34に接続する。交互上昇量調整機構50は交互上昇量調整モータ23、カム機構62、中間軸27、変換体63、揺動軸45を備える。交互上昇量調整モータ23の出力軸は、カム機構62を介して中間軸27に接続する。中間軸27は、変換体63を介し揺動軸45と連結する。交互上昇量調整モータ23は出力軸を回動することで、カム機構62、中間軸27、変換体63を介して揺動軸45の揺動量を変更し、交互上昇量を調整する。交互上昇量は中押え棒8、外押え棒10が主軸31の回動に同期して交互に上下動する時の針板14からの上昇量である。
【0022】
頭部5はアーム部4左端部に設け、其の前面に天秤12を設ける。天秤12は上糸を引上げ、下糸との結び目を作る。頭部5は針棒機構32、天秤機構33、押え機構44、揺動機構34、検出器49を収容する。針棒機構32は主軸31と連結し、針棒6を上下動する。天秤機構33は主軸31の回動と同期して、天秤12を上下動する。
【0023】
押え機構44は押え軸26の左端部と連結し、外押え棒10、中押え棒8、揺動軸45、リンク46、47、70、三角梃子48、付勢部材51、調整部材52、変換体63、偏心ロッド68を備える。外押え棒10は上下に延び、其の下端に外押え足11を着脱できる。中押え棒8は外押え棒10の前方で上下に延びる。中押え棒8は其の下端に中押え足9を着脱できる。揺動軸45の左端は上下方向に延びるリンク46と連結する。リンク46の下端は前後方向に延びるリンク47の後端と連結する。三角梃子48は左側面視三角板状であり、三つの角部の内の一つはリンク47の前端と連結する。三角梃子48の三つの角部の内、残り二つは、外押え棒10、リンク70と連結する。リンク70は、一端部が三角梃子48と連結し、他端部が中押え棒8と連結する。付勢部材51はコイル状の圧縮バネであり、外押え棒10に外挿し、外押え棒10を下方に押える。調整部材52は筒状であり、其の内側に付勢部材51を挿入し、上下動可能である。調整部材52は押えモータ22の駆動に依り上下動し、付勢部材51が外押え棒10に加える下向きの押え圧を調整する。変換体63は主軸31に偏心して設けた偏心ロッド68の後端部と連結し、主軸モータ21の駆動に依る主軸31の回動を揺動軸45に伝達し、揺動軸45を揺動する。主軸31の回動に依り揺動軸45が揺動すると、リンク46は揺動軸45を中心に揺動する。リンク46の揺動に伴いリンク47は前後方向に動作し、三角梃子48を介して外押え棒10と中押え棒8を上下方向に動作させる。図4(A)の如く、リンク47が前方に移動した時、外押え棒10は上昇し、中押え棒8は下降する。図4(B)の如く、リンク47が後方に移動した時、外押え棒10は下降し、中押え棒8は上昇する。押え機構44は主軸31の回動と同期して、外押え棒10と中押え棒8を逆位相すなわち交互に上下動し、外押え足11と中押え足9で交互に被縫製物を上方から針板14に向けて押える。
【0024】
揺動機構34は針棒揺動軸42と連結し、主軸31の回動と同期して、針棒揺動軸42の揺動量に応じた量、針棒6、中押え棒8を被縫製物の搬送方向に揺動する。図4(A)の如く、縫針7の下端が針板14の下方に在り、外押え足11が針板14よりも上方に離れた位置に在り、中押え足9が送り歯17と近接した位置に在る状態を、押え機構44が針下位置に在ると言う。押え機構44が針下位置に在る期間に、縫製装置1は縫針7が被縫製物に刺さっている状態で針棒6、中押え棒8、送り歯17を後方に揺動する。図4(B)の如く、縫針7の下端が針板14の上方に在り、外押え足11が針板14に近接した位置に在り、中押え足9が針板14よりも上方に離れた位置に在る状態を、押え機構44が針上位置に在ると言う。押え機構44が針上位置に在る期間に、縫製装置1は縫針7が被縫製物に刺さっていない状態で針棒6、中押え棒8、送り歯17を前方に揺動する。
【0025】
検出器49は被縫製物の厚さに応じた検出結果を制御部90に出力する。検出器49は例えば頭部5に設けた磁気センサであり、外押え棒10を上下動可能に支持する押え棒抱き60に設けた磁性体71の上下位置を検出する。縫製装置1は頭部5下部に、主軸モータ21の駆動に依り上下動する針棒6、外押え棒10、中押え棒8を備える。針棒6は中押え棒8の前方で上下に延び、其の下端に縫針7を着脱できる。糸駒は縫針7の目孔に上糸を供給する。
【0026】
図5を参照し、縫製装置1の電気的構成を説明する。縫製装置1の制御部90はCPU91、ROM92、RAM93、記憶装置94、入出力インターフェース(I/O)95、駆動回路81~86等を有する。CPU91は縫製装置1の動作を統括制御する。ROM92は各種処理を実行する為のプログラム等を予め記憶する。RAM93は各種処理実行中に生じる各種情報を一時的に記憶する。記憶装置94は不揮発性で、各種設定値を記憶する。記憶装置94は枚数テーブル96、設定テーブル97、閾値テーブル98を記憶する。枚数テーブル96は基準厚さ、枚数と、送り量、糸調子、押え圧、交互上昇量、回転数との対応を記憶する。基準厚さは枚数で示す数重ねた被縫製物の基準となる厚さである。送り量は主軸31が一回転する期間に送り機構36が被縫製物を搬送する量であり、送り量調整モータ24の駆動で調整する。糸調子は上糸に付与する張力を示す量であり、糸調子ソレノイド25の駆動で調整する。押え圧は外押え棒10の下端に装着した外押え足11が被縫製物に加える下方の圧力に応じた量であり、押えモータ22の駆動で調整する。交互上昇量は押え機構44が外押え棒10と中押え棒8を交互に上下動する時の針板14からの高さに応じた量であり、交互上昇量調整モータ23の駆動で調整する。回転数は主軸モータ21の出力軸の回転数である。設定テーブル97は設定順と基準厚さの対応を記憶する。設定順は基準厚さの被縫製物を縫製する順序に対応する。閾値テーブル98は各種閾値を記憶する。テーブル96~98は縫製装置1と接続する周辺機器、他の縫製装置1、及びクラウドに記憶してもよい。テーブル96~98は縫製装置1、縫製装置1に接続するPC、スマートフォン等の機器を用い、閲覧、変更、設定可能でもよい。
【0027】
各駆動回路81~86はI/O95に接続する。駆動回路81は主軸モータ21と接続し、CPU91の制御指令で主軸モータ21を駆動する。駆動回路82は送り量調整モータ24と接続し、CPU91の制御指令で送り量調整モータ24を駆動する。駆動回路83は交互上昇量調整モータ23と接続し、CPU91の制御指令で交互上昇量調整モータ23を駆動する。駆動回路84は押えモータ22と接続し、CPU91の制御指令で押えモータ22を駆動する。駆動回路85は糸調子ソレノイド25と接続し、CPU91の制御指令で糸調子ソレノイド25を駆動する。駆動回路86は表示部15と接続し、CPU91の制御指令で表示部15を駆動する。
【0028】
エンコーダ56~59、入力部16、19、ペダル18、検出器49はI/O95に接続する。エンコーダ56は主軸モータ21の出力軸と接続する主軸31の回転位置、回転速度を検出し、検出結果をI/O95に入力する。エンコーダ57は送り量調整モータ24の出力軸の回転位置、回転速度を検出し、検出結果をI/O95に入力する。エンコーダ58は交互上昇量調整モータ23の出力軸の回転位置、回転速度を検出し、検出結果をI/O95に入力する。エンコーダ59は押えモータ22の出力軸の回転位置、回転速度を検出し、検出結果をI/O95に入力する。入力部16、19は各種指示を検出し、検出結果をI/O95に入力する。ペダル18はペダル18の操作方向と操作量を検出し、検出結果をI/O95に入力する。検出器49は被縫製物の厚さに応じた検出結果をI/O95に入力する。
【0029】
図6図10を参照し、図10(A)、図10(B)に示す二つの具体例を用い、縫製処理を説明する。CPU91は縫製処理で検出器49の検出結果と記憶装置94に記憶した基準厚さを比較し、比較結果に応じた処理を行う。図10(A)の第一具体例は、縫製途中で被縫製物W1の枚数が二枚から三枚、四枚に順に変わる例である。CPU91は第一具体例の縫製処理において縫製途中で検出厚さの変化を検出した時、設定テーブル97に記憶した基準厚さの内、設定順が次の基準厚さを読出し、検出厚さと基準厚さとを比較する処理を行う。検出厚さは検出器49が検出する、外押え足11が押えた被縫製物の厚さである。図10(B)の第二具体例は、縫製途中で被縫製物W2の枚数は変わらないが、被縫製物W2の厚さが変わる例である。CPU91は第二具体例の縫製処理において、検出厚さ又は設定中の縫製条件に応じた基準厚さを用いて、検出厚さと基準厚さとを比較する処理を実行する。縫製処理は縫製装置1の電源を投入した時に起動する。CPU91はROM92から縫製処理用のプログラムをRAM93に読み出して縫製処理を実行する。二つの具体例の縫製処理は互いに異なる時機に行うが、説明を簡単にする為、二つの具体例の縫製処理を並列に説明する。
【0030】
図6の如く、CPU91は初期化処理を行う(S1)。CPU91は入力部16の検出結果に依り、縫製指示を検出したか否かを判断する(S2)。作業者は縫製装置1で縫製を行う時、入力部16を操作して、縫製指示を入力する。縫製指示未検出時(S2:NO)、CPU91は入力部16の検出結果に依り、設定指示を検出したか否かを判断する(S5)。作業者は枚数テーブル96の設定、設定テーブル97の設定、閾値テーブル98の設定の少なくとも何れかを設定する時、入力部16を操作して設定指示を入力する。設定指示未検出時(S5:NO)、CPU91はS14を行う。設定指示検出時(S5:YES)、CPU91は設定処理を行う(S6)。CPU91は設定処理で作業者の指示に応じ、枚数テーブル96の設定、設定テーブル97の設定、閾値テーブル98の設定を行う。作業者は入力部16を操作し、枚数テーブル96の設定、設定テーブル97の設定、閾値テーブル98の設定の何れかを行う指示を入力する。
【0031】
図7の如く、設定処理ではCPU91は入力部16の検出結果に依り、枚数テーブル96を設定する指示を検出したか否かを判断する(S21)。検出器49が検出する被縫製物の厚さは、重ね合わせる被縫製物の数が増えるほど、大きくなる。作業者は例えば検出器49が検出する被縫製物の厚さと、被縫製物の重ね合わせ枚数との対応を枚数テーブル96に記憶したい時に、枚数テーブル96を設定する指示を入力する。枚数テーブル96を設定する指示を検出時(S21:YES)、CPU91は入力部16の検出結果に依り押え機構44が針上位置に在るか否かを判断する(S22)。押え機構44が針上位置に在る時、外押え足11を装着した外押え棒10は針板14に近接した下降位置に在る。作業者は一枚又は所定枚数重ねた基準とする被縫製物を針板14に載置し、押え機構44を針上位置に配置し、入力部16を操作して押え機構44を針上位置に配置したことを示す信号を入力する。CPU91は押え機構44が針上位置に在ることを検出する迄S22の判断を継続する(S22:NO)。押え機構44が針上位置に在ることを検出した時(S22:YES)、CPU91は検出器49の検出結果である検出厚さを基準厚さに設定する(S23)。CPU91は入力部16の検出結果に依り作業者が指定した被縫製物の枚数を取得する(S24)。CPU91はS23で設定した基準厚さとS24で取得した枚数を対応づけて枚数テーブル96に記憶する(S25)。S23で検出する検出厚さは、検出時の縫製装置1の設定に依り変化するので、CPU91は検出時の縫製装置1の設定を基準厚さ、枚数と対応づけて記憶してもよい。CPU91は入力部16の検出結果に依り枚数テーブル96の設定を終了する指示を検出したか否かを判断する(S26)。枚数テーブル96の設定を終了する指示を未検出時(S26:NO)、CPU91は処理をS22に戻す。枚数テーブル96の設定を終了する指示を検出時(S26:YES)、CPU91はS48の処理を行う。
【0032】
枚数テーブル96を設定する指示を未検出時(S21:NO)、CPU91は入力部16の検出結果に依り設定テーブル97を設定する指示を検出したか否かを判断する(S31)。作業者は例えば縫製途中で被縫製物の枚数が変わったり、被縫製物の厚さが変わったりする被縫製物を縫製しようとする時に、入力部16を操作して設定テーブル97を設定する指示を入力する。設定テーブル97を設定する指示を検出時(S31:YES)、CPU91は設定順を示す変数Nに0を設定する(S32)。CPU91は変数Nに一を加えて更新する(S33)。CPU91はS22と同様に押え機構44が針上位置に在るか否かを判断し(S34)、押え機構44が針上位置に在ることを検出する迄S34の判断を継続する(S34:NO)。押え機構44が針上位置に在ることを検出した時(S34:YES)、CPU91は検出器49の検出結果である検出厚さを基準厚さに設定する(S35)。CPU91は変数Nを設定順とし、設定順とS35で設定した基準厚さとの対応を設定テーブル97に記憶する(S36)。CPU91は入力部16の検出結果に依り設定テーブル97の設定を終了する指示を検出したか否かを判断する(S37)。設定テーブル97の設定を終了する指示を未検出時(S37:NO)、CPU91は処理をS33に戻す。設定テーブル97の設定を終了する指示を検出時(S37:YES)、CPU91はS48の処理を行う。
【0033】
設定テーブル97を設定する指示を未検出時(S31:NO)、CPU91は入力部16の検出結果に依り閾値テーブル98を設定する指示を検出したか否かを判断する(S41)。閾値テーブル98を設定する指示を未検出時(S41:NO)、CPU91はS48を行う。閾値テーブル98を設定する指示を検出時(S41:YES)、CPU91は入力部16の検出結果に依り、警告閾値を設定する指示を検出したか否かを判断する(S42)。警告閾値は縫製開始前又は縫製中に検出器49が検出した被縫製物の厚さと基準厚さとの比較結果に応じて、警告を報知するか否かを判断する処理に用いる。警告閾値を設定する指示を検出時(S42:YES)、CPU91は入力部16の検出結果に依り、警告閾値を設定し、警告閾値を閾値テーブル98に記憶する(S43)。警告閾値を設定する指示を未検出時(S42:NO)、又はS43の次に、CPU91は入力部16の検出結果に依り、変更閾値を設定する指示を検出したか否かを判断する(S44)。変更閾値は縫製開始前又は縫製中に検出器49が検出した被縫製物の厚さと基準厚さとの比較結果に応じて、縫製条件を変更するか否かを判断する処理に用いる。変更閾値を設定する指示を検出時(S44:YES)、CPU91は入力部16の検出結果に依り変更閾値を設定し、変更閾値を閾値テーブル98に記憶する(S45)。
【0034】
変更閾値を設定する指示を未検出時(S44:NO)、又はS45の次に、CPU91は入力部16の検出結果に依り、有効閾値を設定する指示を検出したか否かを判断する(S46)。有効閾値は縫製開始前又は縫製中に検出器49が検出した被縫製物の厚さと基準厚さとの比較結果に応じて、貫通力向上機能を有効に設定するか否かを判断する処理に用いる。本例のCPU91は基準厚さの被縫製物を縫製する時と異なる特定通電パターンで主軸モータ21を駆動することで縫針7に依る被縫製物の貫通力を向上する。特定通電パターンは公知の通電パターンを適宜採用してよく、例えば、主軸モータ21の回転数が所定の回転数より高い時に主軸モータ21に通電する電流よりも大きい電流を、縫針7が停止した時機から主軸モータ21への通電開始により前進を始める時機迄の期間よりも長い期間供給する通電と、通電後に所定時間の電流の供給を遮断する通電遮断とを含んでもよい。特定通電パターンは主軸モータ21の回転方向を所定周期、例えば、縫針7が運動方向を反転する上死点又は下死点に到達しない範囲で反転したものであってもよい。
【0035】
有効閾値を設定する指示を検出時(S46:YES)、CPU91は入力部16の検出結果に依り有効閾値を設定し、閾値テーブル98に記憶する(S47)。有効閾値を設定する指示を未検出時(S46:NO)、又はS47の次にCPU91は入力部16の検出結果に依り設定処理を終了する指示を検出したか否かを判断する(S48)。設定処理を終了する指示を未検出時(S48:NO)、CPU91は処理をS21に戻す。設定処理を終了する指示を検出時(S48:YES)、CPU91は設定処理を終了し、処理を図6の縫製処理に戻す。
【0036】
設定指示を未検出時(S5:NO)、又はS6の次にCPU91はS14の処理を行う。縫製指示検出時(S2:YES)、CPU91はS22と同様に押え機構44が針上位置に在るか否かを判断し(S3)、押え機構44が針上位置に在ることを検出する迄S3の判断を継続する(S3:NO)。押え機構44が針上位置に在ることを検出した時(S3:YES)、CPU91は縫製前検出処理を行う(S4)。CPU91は縫製前検出処理で、縫製開始前の検出器49の検出結果に依る被縫製物の検出厚さと記憶装置94に記憶した基準厚さとの比較結果に応じた処理を行う。
【0037】
図8の如く、CPU91は検出器49の検出結果を検出厚さとして検出し、RAM93に記憶する(S51)。CPU91は第一具体例の被縫製物W1について検出厚さT11を検出し、RAM93に記憶する。CPU91は第二具体例の被縫製物W2について検出厚さT21を検出し、RAM93に記憶する。CPU91は基準厚さを取得する(S62)。CPU91は第一具体例では1の設定順の基準厚さT2を取得する。CPU91は第二具体例では枚数テーブル96が記憶する基準厚さの内、S51で検出した検出厚さT21に最も近い枚数が二枚である時の基準厚さT2を取得する。CPU91はS51で取得した検出厚さとS62で取得した基準厚さを比較する(S63)。検出厚さと基準厚さの比較方法は適宜設定してよい。本例のCPU91はS51で取得した検出厚さからS62で取得した基準厚さを差し引いた差を計算する。CPU91は例えば検出厚さと基準厚さを比較し、針板14に載置した被縫製物の枚数を計算してもよい。CPU91は例えば針板14に載置した被縫製物を外押え足11で押さえた時の検出厚さから針板14が外押え足11と接する時の検出厚さを差し引いた値を被縫製物の厚さとして計算してもよい。CPU91は閾値テーブル98を参照し、警告閾値H1を取得する(S64)。CPU91は記憶装置94の閾値テーブル98が記憶する警告閾値H1を取得してもよいし、入力部16の検出結果に依り作業者が入力した警告閾値H1を取得してもよいし、他の装置(例えば、他の縫製装置)から警告閾値H1を取得してもよい。CPU91はS63で計算した差の絶対値がS64で取得した警告閾値H1以上か否かを判断する(S65)。差の絶対値が警告閾値H1以上の時(S65:YES)、CPU91は警告を報知する(S66)。CPU91は例えばエラーメッセージ「布厚異常警告」を表示部15に表示する。CPU91は縫製開始を許可しない縫製不可設定をRAM93に記憶する(S67)。
【0038】
差の絶対値が警告閾値H1以上でない時(S65:NO)、CPU91は閾値テーブル98を参照し、変更閾値H2を取得する(S71)。S64と同様に変更閾値H2の取得方法は適宜変更してよい。本例の変更閾値H2は警告閾値H1より小さい値である。CPU91はS63で計算した差の絶対値がS71で取得した変更閾値H2以上か否かを判断する(S72)。差の絶対値が変更閾値H2以上の時(S72:YES)、CPU91は枚数テーブル96を参照しS51で検出した検出厚さに応じた縫製条件を設定する(S73)。本例のCPU91は縫製条件として送り量、糸調子、押え圧、交互上昇量、回転数を検出厚さに応じた条件に設定する。差の絶対値が変更閾値以上でない時(S72:NO)、又はS73の次に、CPU91は閾値テーブル98を参照し、有効閾値H3を取得する(S74)。S64と同様に有効閾値H3の取得方法は適宜変更してよい。本例の有効閾値H3は警告閾値H1より小さい値である。有効閾値H3は変更閾値H2と同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0039】
CPU91はS63で計算した差がS7で取得した有効閾値H3以上か否かを判断する(S75)。差が有効閾値H3以上の時(S75:YES)、CPU91は貫通力向上機能を有効に設定する(S76)。差が有効閾値H3以上でない時(S75:NO)、又はS76の次に、CPU91はS63での検出厚さと基準厚さの比較結果を報知する(S77)。CPU91は例えば、針板14に載置した被縫製物の枚数を表示部15に表示してもよいし、S63で計算した差を表示部15に表示してもよいし、被縫製物の厚さを表示部15に表示してもよい。CPU91はS73で縫製条件を変更した時、変更後の縫製条件を報知してもよい。CPU91は貫通力向上機能の設定状況を報知してもよい。S51で検出した検出厚さは押え圧、送り歯17、外押え足11の位置等の検出時の縫製装置1の設定に依り変化するので、検出時の設定と共に比較内容を表示してもよい。CPU91は検出厚さと基準厚さとの差異を数値、割合等で示してもよいし、検出厚さと基準厚さとを併記して表示してもよい。CPU91は比較結果を文字で表示してもよいし、図示してもよい。CPU91は縫製開始を許可する縫製許可設定をRAM93に記憶する。S67又はS78の次に、CPU91は縫製前検出処理を終了し、処理を図6の縫製処理に戻す。
【0040】
CPU91はS4の次に、RAM93を参照し、RAM93に縫製許可設定が記憶してあるか否かを判断する(S7)。RAM93が縫製不可設定を記憶する時(S7:NO)、CPU91はS14の処理を行う。RAM93が縫製許可設定を記憶する時(S7:YES)、CPU91は縫製開始指示を検出したか否かを判断する(S8)。作業者は縫製開始時、ペダル18を踏み込み、ペダル18は縫製開始指示を制御部90に入力する。縫製開始指示を未検出時(S8:NO)、CPU91は入力部16の検出結果に依り縫製処理を中止する中止指示を検出したか否かを判断する(S15)。作業者は例えばS77での報知結果を考慮し、被縫製物を配置し直す時、入力部16を操作して中止指示を入力する。中止指示を未検出時(S15:NO)、CPU91は処理をS8に戻す。中止指示を検出時(S15:YES)、CPU91はS14の処理を行う。
【0041】
CPU91は縫製開始指示を検出時(S8:YES)、検出厚さに応じた縫製条件で縫製を開始する(S9)。CPU91は第一、第二具体例で枚数テーブル96を参照し、基準厚さT2に対応する縫製条件を取得する。CPU91はS4で縫製条件を変更した時、変更後の縫製条件を取得する。CPU91は縫製条件に応じて糸調子ソレノイド25を駆動して、糸調子を調整する。CPU91は縫製条件に応じて送り量調整モータ24を駆動して、送り量を調整する。CPU91は縫製条件に応じて交互上昇量調整モータ23を駆動して、交互上昇量を調整する。CPU91は縫製条件に応じて押えモータ22を駆動して、押え圧を調整する。CPU91は縫製条件に応じて主軸モータ21を駆動して、回転数を調整し、貫通力向上機能が有効である時、主軸モータ21の通電パターンを制御する。
【0042】
CPU91は縫製停止指示を検出したか否かを判断する(S10)。作業者は縫製停止時、ペダル18の踏み込みを解除し、ペダル18は縫製停止指示を制御部90に入力する。CPU91はRAM93が縫製停止設定を記憶している時にも、縫製停止指示を検出する。CPU91は縫製停止指示を検出時(S10:YES)、糸調子ソレノイド25、主軸モータ21の駆動を停止し、検出厚さに応じた縫製条件での縫製を停止する(S11)。縫製停止指示を未検出時(S10:NO)、CPU91はエンコーダ56の検出結果に依り検出時機か否かを判断する(S12)。本例のCPU91は、主軸31の回転角度が所定角度の時を検出時機として、縫製中検出処理を実行する。所定角度は例えば押え機構44が針上位置に在る時の角度である。検出時機ではない時(S12:NO)、CPU91は処理をS10に戻す。検出時機である時(S12:YES)、CPU91は縫製中検出処理を行う(S13)。CPU91は縫製中検出処理で、縫製中の検出器49の検出結果に依る被縫製物の検出厚さと記憶装置94に記憶した基準厚さとの比較結果に応じた処理を行う。
【0043】
図9の縫製中検出処理において、図8の縫製前検出処理と同様の処理には同じステップ番号を付与し、説明を省略又は簡略化する。CPU91は検出器49の検出結果を検出厚さとして検出する(S51)。CPU91は記憶装置94の閾値テーブル98を参照し、厚さ閾値を取得する(S52)。厚さ閾値は、針板14と外押え足11の間に被縫製物がないことを検出する為の閾値であり、検出器49の検出精度等を考慮して設定する。CPU91はS51で検出した検出厚さが厚さ閾値以上か否かを判断する(S53)。検出厚さが厚さ閾値以上でない時(S53:NO)、CPU91は被縫製物の厚さが0であることを報知する(S54)。CPU91は例えばエラーメッセージ「針板と外押え足の間に被縫製物がありません。」を表示部15に表示する。CPU91は縫製停止設定をRAM93に記憶し(S55)、縫製中検出処理を終了し、処理を図6の縫製処理に戻す。
【0044】
検出厚さが厚さ閾値以上の時(S53:YES)、CPU91は検出厚さが変化したか否かを判断する(S56)。CPU91は例えば前回の縫製中検出処理又は縫製前検出処理で検出し、RAM93に記憶した検出厚さと、今回の縫製中検出処理で検出し、RAM93に記憶した検出厚さの差の絶対値が、閾値テーブル98が記憶する変化閾値以上の時に、検出厚さが変化したと判断する。変化閾値は検出器49の検出精度等を考慮して適宜設定すればよく、例えば警告閾値H1、変更閾値H2、有効閾値H3よりも小さい値である。
【0045】
CPU91は第一具体例で検出厚さT12を取得した時(S51、S53:YES)、検出厚さが変化したと判断し(S56:YES)、警告を報知する(S57)。CPU91は例えばメッセージ「布厚変化検出」を表示部15に表示する。CPU91は設定テーブル97を参照し、次の設定順が設定テーブル97に記憶してあるかを判断する(S58)。CPU91は第一具体例で次の設定順が記憶してあると判断し(S58:YES)、縫製条件を設定順が次の2に対応する縫製条件を設定し(S59)、2の設定順に対応する基準厚さT3を取得する(S60)。CPU91はS51で検出した検出厚さT12と、S60で取得した基準厚さT3とを比較し、検出厚さT12と基準厚さT3の差を計算する(S63)。CPU91は閾値テーブル98を参照し、警告閾値H1を取得し(S64)、S63で計算した差の絶対値が警告閾値H1以上でないと判断する(S65:NO)。CPU91は閾値テーブル98を参照し、変更閾値H2を取得し(S71)、S63で計算した差の絶対値が変更閾値H2以上でないと判断する(S72:NO)。CPU91は閾値テーブル98を参照し、有効閾値H3を取得し(S74)、S63で計算した差が有効閾値H3以上でないと判断する(S75:NO)。CPU91はS63の比較結果を報知し(S77)、縫製中検出処理を終了し、処理を図6の縫製処理に戻す。
【0046】
CPU91は第一具体例で検出厚さT13を取得した時(S51、S53:YES)、検出厚さが変化したと判断し(S56:YES)、警告を報知する(S57)。CPU91は設定テーブル97を参照し、次の設定順が設定テーブル97に記憶してあると判断し(S58:YES)、縫製条件を設定順が次の3に対応する縫製条件を設定し(S59)、3の設定順に対応する基準厚さT1を取得する(S60)。CPU91はS51で検出した検出厚さT13と、S60で取得した基準厚さT1とを比較し、検出厚さT13と基準厚さT1の差を計算する(S63)。CPU91は閾値テーブル98を参照し、警告閾値H1を取得し(S64)、S63で計算した差の絶対値が警告閾値H1以上であると判断する(S65:YES)。CPU91は警告を報知し(S66)、RAM93に縫製停止設定を記憶する(S68)。CPU91は、縫製中検出処理を終了し、処理を図6の縫製処理に戻す。
【0047】
CPU91は第二具体例で検出厚さT22を取得した時(S51、S53:YES)、検出厚さが変化しないと判断し(S56:NO)、縫製中検出処理を終了し、処理を図6の縫製処理に戻す。CPU91は第二具体例で検出厚さT23を取得した時(S51、S53:YES)、検出厚さが変化したと判断し(S56:YES)、CPU91は警告を報知する(S57)。CPU91は設定テーブル97を参照し、次の設定順が設定テーブル97に記憶してないと判断する(S58:NO)。CPU91は現在の縫製条件に対応する基準厚さT2を取得する(S62)。CPU91はS51で検出した検出厚さT23と、基準厚さT2とを比較し、検出厚さT23と基準厚さT2の差を計算する(S63)。CPU91は閾値テーブル98を参照し、警告閾値H1を取得し(S64)、S63で計算した差の絶対値が警告閾値H1以上でないと判断する(S65:NO)。CPU91は閾値テーブル98を参照し、変更閾値H2を取得し(S71)、S63で計算した差の絶対値が変更閾値H2以上であると判断する(S72:YES)。CPU91はS51で検出した検出厚さT23に応じた縫製条件として、枚数テーブル96の内、検出厚さT23に最も近い基準厚さT3に対応付けた縫製条件に変更する(S73)。CPU91は閾値テーブル98を参照し、有効閾値H3を取得し(S74)、S63で計算した差が有効閾値H3以上であると判断する(S75:YES)。CPU91は貫通力向上機能を有効に設定する(S76)。S63で計算した差が有効閾値H3以上でない時(S75:NO)、CPU91は貫通力向上機能を無効に設定してもよい。CPU91はS63の比較結果を報知し(S77)、縫製中検出処理を終了し、処理を図6の縫製処理に戻す。
【0048】
S13の次に、CPU91は処理をS10に戻す。CPU91は縫製装置1の電源を切る操作を検出したか否かを判断する(S14)。電源を切る操作を未検出時(S14:NO)、CPU91は処理をS2に戻す。電源を切る操作を検出時(S14:YES)、CPU91は縫製処理を終了する。
【0049】
上記実施形態の縫製装置1において、縫製装置1、針棒6、縫針7、外押え棒10、外押え足11、針板14、主軸モータ21、針棒機構32、検出器49、記憶装置94は本発明の縫製装置、針棒、縫針、外押え棒、外押え足、針板、主軸モータ、針棒機構、検出部、記憶部の一例である。S62を行うCPU91は本発明の取得部の一例である。S63を行うCPU91は本発明の比較部の一例である。S57、S66、S77を行うCPU91は本発明の報知制御部の一例である。S64を行うCPU91は本発明の警告閾値取得部の一例である。S71を行うCPU91は本発明の変更閾値取得部の一例である。S59、S73を行うCPU91は本発明の条件変更部の一例である。S74を行うCPU91は有効閾値取得部の一例である。S76を行うCPU91は有効設定部の一例である。S68、S10、S11を行うCPU91は本発明の縫製停止部の一例である。S55を行うCPU91は本発明の縫製停止部の一例である。S36を行うCPU91は本発明の記憶制御部の一例である。
【0050】
縫製装置1は針板14、針棒6、針棒機構32、主軸モータ21、外押え棒10、検出器49、CPU91を備える。針板14は被縫製物を載置する。針棒6は上下方向に延び、下端に縫針7を装着できる。針棒機構32は針棒6を上下動する。主軸モータ21は針棒機構32を駆動する。外押え棒10は外押え足11を下端に装着でき、針板14に載置した被縫製物を上から外押え足11で押える。検出器49は外押え足11が押えた被縫製物の厚さである検出厚さを検出する(S51)。CPU91は基準となる一枚又は複数枚の被縫製物の厚さである基準厚さを取得する(S62、S60)。CP91は検出厚さと、基準厚さを比較する(S63)。CPU91は比較結果を報知する(S77)。縫製装置1は検出厚さと基準厚さとの比較結果を報知するので、作業者は縫製装置1が報知した比較結果を参照でき、比較結果に依り針板14に載置し、外押え足11が押えた被縫製物が、作業者が意図した被縫製物であるか否かを確認できる。故に縫製装置1は被縫製物の厚さに応じた縫製を実行する時の作業者の利便性を従来よりも向上できる。
【0051】
CPU91は検出厚さと、基準厚さの差の比較に用いる警告閾値H1を取得する(S64)。CPU91は、基準厚さと検出厚さの差が警告閾値H1以上の時(S65:YES)、警告を報知する(S66)。縫製装置1は警告閾値H1を適宜設定することで、作業者が意図しない厚さの被縫製物が針板14に載置してあることを作業者に報知できる。作業者は警告を参照することで、作業者が意図しない被縫製物に縫製することを回避できる。
【0052】
CPU91は警告閾値H1よりも小さい変更閾値H2を取得する(S71)。基準厚さと検出厚さの差が警告閾値H1よりも小さく(S65:NO)、且つ、変更閾値H2以上の時(S72:YES)、縫製条件を検出厚さに応じて変更する(S73)。縫製装置1は警告閾値H1、変更閾値H2を適宜設定することで、作業者が基準厚さと検出厚さとの差が、警告を報知するほど大きくないが、基準厚さに依り設定した縫製条件で縫製するには適していない時、検出厚さに応じて縫製条件を自動的に変更できる。縫製装置1は、作業者が縫製中に縫製条件を変更する手間を省くことができる。縫製装置1は検出厚さに応じて糸調子を設定するので、被縫製物の厚さに応じた、被縫製物と上糸の摩擦を考慮して縫製できる。 縫製装置1は検出厚さに応じて押え圧設定するので、被縫製物を適切に押えて縫製できる。縫製装置1は検出厚さに応じて交互上昇量を設定するので、段部を乗り越えられない可能性を低減したり、段部と外押え足11が衝突することによる騒音の発生を抑制したりできる。縫製装置1は検出厚さに応じて主軸モータ21の回転数を調整するので、想定した作業時間で縫製が完了する可能性を高めることができる。
【0053】
縫製装置1は警告閾値H1よりも小さい有効閾値H3を取得する(S74)。基準厚さと検出厚さの差が警告閾値H1よりも小さく(S65:NO)、且つ、検出厚さから基準厚さを差し引いた値である差が、有効閾値H3以上の時(S75:YES)、基準厚さの被縫製物を縫製する時と異なる通電パターンで主軸モータ21を駆動することで縫針7に依る被縫製物の貫通力を向上する貫通力向上機能を有効に設定する(S76)。一般に、被縫製物に対し針棒6の貫通力が十分にない時、縫針7は被縫製物を貫通できず、縫製不良が生じる。被縫製物に対し針棒6の貫通力が過剰にある時、騒音が増加し作業者が不快な思いをする。縫製装置1は警告閾値H1、有効閾値H3を適宜設定することで、作業者が基準厚さと検出厚さとの差が警告を報知するほど大きくはないが、基準厚さに依り設定した縫製条件で縫製した時に縫針7が被縫製物を貫通しにくい時、貫通力向上機能を自動的に有効に設定できる。縫製装置1は作業者が縫製中に貫通力向上機能を有効に設定する手間を省くことができる。縫製装置1は針棒6の貫通力不足に起因して縫製品質が低下することを抑制できる。
【0054】
縫製装置1は基準厚さと主軸モータ21駆動中に取得した検出厚さの差が警告閾値H1以上の時、主軸モータ21の駆動を停止する(S68、S10:YES、S11)。縫製装置1は警告閾値H1を適宜設定することで、作業者が意図しない厚さの被縫製物の縫製を継続することを回避できる。
【0055】
縫製装置1のCPU91は検出器49の検出結果に依り、主軸モータ21駆動開始前に検出厚さを検出し(図8のS51)、基準厚さと主軸モータ21駆動開始前に検出した検出厚さの比較結果を報知する(図8のS77)。作業者は縫製装置1が報知した比較結果を参照でき、比較結果に依り針板14に載置し、外押え足11が押えた被縫製物が、作業者が意図する被縫製物であるかを縫製前に確認できる。故に縫製装置1は被縫製物の厚さに応じた縫製を実行する時の作業者の利便性を従来よりも更に向上できる。
【0056】
縫製装置1のCPU91は検出器49の検出結果に依り、主軸モータ21駆動中に検出厚さを検出し(図9のS51)、主軸モータ21駆動中に検出した検出厚さが変化した場合に警告を報知する(S56:YES、S57)。縫製装置1は主軸モータ21駆動中に検出した検出厚さが変化した時、報知により作業者に知らせることができる。作業者は縫製装置1に依る報知を参照し、検出厚さの変化が作業者が意図したものであるか否かに応じて適切に対処できる。作業者は例えば縫製装置1が報知した警告により、意図せず被縫製物が針板14と外押え足11の間から外れたことを把握できる。作業者は例えば縫製装置1が報知した警告により、意図せず被縫製物が折り畳まれて縫製していることを気づくことができる。
【0057】
縫製装置1のCPU91は検出器49の検出結果に依り、主軸モータ21駆動中に検出厚さを検出し(図9のS51)、主軸モータ21駆動中に検出した検出厚さが変化した場合に(S56:YES)、縫製条件を検出厚さに応じて変更する(S59、S73)。縫製装置1は主軸モータ21駆動中に検出した検出厚さが変化した時、検出厚さに応じて縫製条件を自動的に変更できる。縫製装置1は作業者が縫製中に縫製条件を変更する手間を省くことができる。
【0058】
縫製装置1のCPU91は検出器49の検出結果に依り、主軸モータ21駆動中に検出厚さを検出し(図9のS51)、主軸モータ21駆動中に検出した検出厚さが所定値よりも小さい時(S53:NO)、被縫製物が針板14と外押え足11の間に無いことを報知し(S54)、主軸モータ21駆動中に検出した検出厚さが所定値よりも小さい時、主軸モータ21の駆動を停止する(S55)。縫製装置1は被縫製物が針板14と外押え足11の間に無いことを報知し、主軸モータ21の駆動を停止できる。縫製装置1は被縫製物の端まで縫製後に、主軸モータ21の駆動が継続されることを回避できる。
【0059】
縫製装置1のCPU91は、主軸モータ21駆動中に基準厚さを複数設定順に取得し(S60)、主軸モータ21駆動中に検出した検出厚さが変化した時、検出厚さと、設定順が次の基準厚さを比較する(S63)。CPU91は、検出厚さと、設定順が次の基準厚さの差が警告閾値H1以上の時(S65:YES)、警告を報知する(S66)。縫製装置1は縫製途中で厚さが変わる被縫製物を縫製する時に、厚さが変化する箇所を異常として検出することを回避できる。縫製装置1は検出厚さの変化を検出した時、設定順が次の基準厚さと検出厚さを比較するので、縫製途中で厚さが変わる被縫製物を縫製する時にも基準厚さと、検出厚さを適切に比較できる。作業者は縫製装置1の報知結果を参照することで、例えば同じ縫製パターンを何度か繰り返し縫製する時にも、被縫製物が針板14と外押え足11の間から外れたり、被縫製物を意図せずに折り畳んだ状態で縫製したり、被縫製物の枚数を間違えて縫製したり、被縫製物の種類を間違えたりしていることに気づくことができる。
【0060】
縫製装置1は主軸モータ21駆動中の基準厚さと設定順との組合せを複数記憶する記憶装置94を備える。CPU91は、記憶装置94の設定テーブル97が記憶した複数の組合せを設定順に取得する(S60)。縫製装置1は図10(A)の第一具体例のように縫製途中で厚さが変わる被縫製物を縫製する時に、厚さが変化する箇所を異常として検出することを回避できる。縫製装置1は検出厚さの変化を検出した時、設定順が次の基準厚さと検出厚さを比較するので、縫製途中で厚さが変わる被縫製物を縫製する時にも基準厚さと、検出厚さを適切に比較できる。
【0061】
縫製装置1のCPU91は検出器49が検出した検出厚さを基準厚さとして設定し(S23)、基準厚さと設定順との組合せを複数記憶装置94に記憶する(S25)。縫製装置1は検出器49が検出した検出厚さを基準厚さとして、基準厚さと設定順との組合せを複数記憶装置94に記憶できる。縫製装置1は他の装置から基準厚さと設定順との組合せを取得する装置よりも、縫製装置1に対する検出器49の装着公差等の影響を低減できる。
【0062】
本発明は上記実施形態に限らない。縫製装置1の種類は、本縫いミシン、上下送りミシン等適宜変更してよい。縫製装置1は中押え棒、中押え足を備えなくてもよい。検出器49が被縫製物の厚さを検出する方式は適宜変更してよく、例えば光学式、渦電流式、超音波式、接触式の何れかの近接変位センサでもよい。検出器49の配置、検出時機は適宜変更してよい。
【0063】
縫製装置1が縫製処理を実行する為の指令を含むプログラムはCPU91がプログラムを実行する迄に、縫製装置1の記憶装置94に記憶されればよい。従って、プログラムの取得方法、取得経路、プログラムを記憶する機器の夫々は適宜変更してもよい。CPU91が実行するプログラムはケーブル又は無線通信を介して他の装置から受信し、フラッシュメモリ等の記憶装置に記憶されてもよい。他の装置は例えば、PC、ネットワーク網を介して縫製装置1と接続するサーバを含む。
【0064】
縫製装置1が実行する処理の一部又は全部はCPU91とは別の電子機器(例えば、ASIC)が実行してもよい。縫製装置1が実行する処理は複数の電子機器(例えば、複数のCPU)が分散処理してもよい。縫製装置1が実行する処理の各ステップは必要に応じて順序の変更、ステップの省略、追加ができる。本発明の範囲は縫製装置1上で稼動するオペレーティングシステム(OS)等が、CPU91の指令で各処理の一部又は全部を行う態様も含む。縫製装置1は例えば、上記実施形態に以下の変更を適宜加えてもよい。
【0065】
縫製装置1は被縫製物の検出厚さに応じて縫製条件を変更してもよいし、変更しなくてもよい。縫製装置1は被縫製物の検出厚さに応じて貫通力向上機能の設定を有効にしてもよいし、無効にしてもよいし、設定を変更しなくてもよい。縫製装置1は被縫製物の検出厚さに応じて縫製条件を変更する時、変更の対象となる縫製条件は縫製装置1の構成に応じて適宜変更してよい。縫製装置1は音声出力、警告灯点灯等任意の方法で比較結果、警告を報知してよい。枚数テーブル96、設定テーブル97、閾値テーブル98の少なくとも何れかの設定方法は適宜変更してよい。縫製装置1は警告閾値H1、変更閾値H2、有効閾値H3、厚さ閾値、変化閾値の少なくとも何れかを用いた処理を変更又は省略してよい。縫製装置1は例えば図9のS68を省略し、検出厚さと基準厚さとの差の絶対値が警告閾値H1以上の時(S65:YES)、警告を報知するのみで(S66)、縫製を停止しなくてもよい。警告閾値H1、変更閾値H2、有効閾値H3、厚さ閾値、変化閾値の少なくとも何れかの設定方法は適宜変更してよい。警告閾値H1、変更閾値H2、有効閾値H3、変化閾値の少なくとも何れかは、検出厚さ、基準厚さの少なくとも何れかに応じて変更する値であってもよいし、数式で表される値でもよいし、テーブルに予め記憶した値でもよいし、作業者が入力した値でもよい。
【0066】
縫製装置1は例えば図9のS55を省略し、検出厚さが厚さ閾値以上でない時(S53:NO)、警告を報知するのみで(S54)、縫製を停止しなくてもよい。縫製装置1は縫製開始前、縫製中の何れかのみに、検出厚さを取得し、検出厚さと基準厚さの比較をしてもよい。縫製装置1はS56を省略し、検出厚さが縫製中に変化したか否かを検出しなくてもよい。縫製装置1はS53~S55を省略してもよく、針板14と外押え足11の間に被縫製物が無いことを検出したり、報知したりしなくてもよい。縫製装置1は設定テーブル97を記憶しなくてもよく、S58~S60を省略してもよい。縫製装置1は図7の設定処理の一部又は全部を行わなくてもよく、例えば、入力部16の検出結果に基準厚さを設定してもよい。縫製装置1はS23、S35の少なくとも何れかにおいて被縫製物を縫製中の検出厚さを所定時機に検出してもよい。該時、検出厚さは縫製装置1の縫製条件に応じて変わる為、CPU91はS25、S36で検出厚さと共に、縫製条件を記憶してもよい。縫製条件は例えば針数、一時停止の有無、糸切の有無、送り量の変化、主軸31の回転方向の逆転の有無、糸調子の変化、押え圧の変化、交互上昇量の変化、回転数の変化から適宜選択した条件でもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 :縫製装置
6 :針棒
7 :縫針
10 :外押え棒
11 :外押え足
13 :糸調子器
14 :針板
21 :主軸モータ
22 :押えモータ
23 :交互上昇量調整モータ
24 :送り量調整モータ
25 :糸調子ソレノイド
27 :主軸モータ
32 :針棒機構
34 :押え機構
36 :送り機構
37 :送り量調整機構
49 :検出器
56~59:エンコーダ
90 :制御部
91 :CPU
94 :記憶装置
96 :枚数テーブル
97 :設定テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10