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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】熱化学電池電極用導電性組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 14/00 20060101AFI20240820BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H01M14/00 Z
H02N11/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020066345
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021163678
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩田 貫
(72)【発明者】
【氏名】水野 晃太郎
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-251809(JP,A)
【文献】特開平09-259944(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109616678(CN,A)
【文献】国際公開第2017/155046(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079325(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 14/00
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂(A)と、炭素材料(B)と、硬化剤(C)とを含有する熱化学電池電極用導電性組成物であって、炭素材料(B)が、黒鉛(B-1)および黒鉛以外の炭素材料(B-2)を含み、炭素材料(B)の含有率が、導電性組成物の固形分100質量%中、40~99質量%であり、黒鉛(B-1)の含有率が、炭素材料(B)100質量%中、70~99質量%であり、硬化剤(C)の含有率が、バインダー樹脂(A)100質量%に対して、0.5~20質量%であることを特徴とする熱化学電池電極用導電性組成物。
【請求項2】
炭素材料(B)の含有率が、導電性組成物の固形分100質量%中、65~85質量%であることを特徴とする請求項1に記載の熱化学電池電極用導電性組成物。
【請求項3】
黒鉛(B-1)の含有率が、炭素材料(B)100質量%中、80~99質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱化学電池電極用導電性組成物。
【請求項4】
黒鉛(B-1)の含有率が、炭素材料(B)100質量%中、90~97.5質量%であることを特徴とする請求項に記載の熱化学電池電極用導電性組成物。
【請求項5】
炭素材料(B)の含有率が、導電性組成物の固形分100質量%中、70~80質量%であることを特徴とする請求項2~いずれかに記載の熱化学電池電極用導電性組成物。
【請求項6】
硬化剤(C)が、アジリジン化合物またはエポキシ基含有化合物を含むことを特徴とする請求項1~いずれかに記載の熱化学電池電極用導電性組成物。
【請求項7】
バインダー樹脂(A)が、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選ばれる一種以上を含むことを特徴とする請求項1~いずれかに記載の熱化学電池電極用導電性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱化学電池電極用導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱化学電池は、熱源のある所において熱エネルギーによる化学反応を利用して発電したり(非特許文献1)、熱エネルギーによる化学反応を利用して発電(充電)した後に、熱源がない場所で電池として使用できる(非特許文献2)。
前者は、半永久的に連続で発電することが可能であり、後者も熱源(高温)と熱源のない場所(低温)とに繰り返して配置・保持することで繰り返し使用することが可能である。熱化学電池は、基本的に正極と負極あるいは陽極と陰極の両電極とその間に存在する電解質とからなり、主に二つの動作形態がある。一つ目は、両電極間に温度差がある場合に、化学反応の速度差により電解質中にキャリア濃度差が生じ、電位差が発生する形態である(1セルタイプと呼ばれる)。
もう一つ目は、電解質を分離材で仕切り、両電極を含めた全体を熱により温めた場合に、分離材の左右の化学反応の違いにより発電(充電)し、低温の場所では逆反応を起こし電位差が発生する形態である(これを2セルタイプと呼ぶ)。いずれの場合も、電解質に接する電極界面でイオンと電子との反応が必要であり、電極が必要となる。
従来の熱化学電池の電極としては、金属、特に触媒活性の大きい白金など貴金属を使用したもの(非特許文献3)や、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)―ポリ(スチレンスルホン酸)(以下、PEDOT/PSSと略記することがある)などの導電性高分子を使用したもの(特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/079325号
【非特許文献】
【0004】
【文献】“Seebeck coefficients in ionic Liquids prospects for thermo-electrochemical cell", T.J.Abraham, et al., Chem. Commun., 47, (2011) pp.6260-6262.
【文献】“Charging-free electrochemical system for harvesting Low-grade thermal energy", Y.ang, et al. , PNAS, 111(48), (2014), pp.17011-17016.
【文献】“Review of Thermally Regenerative Electrochemical Systems”, H.L.Chum and R.A.Osteryoung, Synopsis and Summary, vol.1, Solar Energy Research Institute, (1980) pp.1-53.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来公知の材料を電極として使用した場合、白金などの貴金属はコストが課題であり、また、PEDOT/PSSなどの導電性高分子は、耐久性、腐食性に課題があった。そこで、本発明が解決しようとする課題は、熱化学電池に使用した際に、低コスト化、高出力化、高耐久性に寄与する導電性に優れた熱化学電池電極用導電性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、バインダー樹脂(A)と、炭素材料(B)と、硬化剤(C)とを含有する熱化学電池電極用導電性組成物であって、炭素材料(B)が、黒鉛(B-1)および黒鉛以外の炭素材料(B-2)を含み、炭素材料(B)の含有率が、導電性組成物の固形分100質量%中、40~99質量%であり、黒鉛(B-1)の含有率が、炭素材料(B)100質量%中、70~99質量%である上記熱化学電池電極用導電性組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、炭素材料(B)の含有率が、導電性組成物の固形分100質量%中、65~85質量%である上記熱化学電池電極用導電性組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、硬化剤(C)の含有率が、バインダー樹脂(A)100質量%に対して、0.5~20質量%である上記熱化学電池電極用導電性組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、黒鉛(B-1)の含有率が、炭素材料(B)100質量%中、80~99質量%である上記熱化学電池電極用導電性組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、黒鉛(B-1)の含有率が、炭素材料(B)100質量%中、90~97.5質量%である上記熱化学電池電極用導電性組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、炭素材料(B)の含有率が、導電性組成物の固形分100質量%中、70~80質量%である上記熱化学電池電極用導電性組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、硬化剤(C)が、アジリジン化合物またはエポキシ基含有化合物を含む上記熱化学電池電極用導電性組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、バインダー樹脂(A)が、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選ばれる一種以上を含む上記熱化学電池電極用導電性組成物に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、導電性に優れた熱化学電池電極用導電性組成物を提供することができるようになった。これにより、低コスト、高出力、高耐久性を有する熱化学電池ができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。尚、本明細書では、「熱化学電池電極用導電性組成物」は「導電性組成物」と略記することがある。
【0016】
<導電性組成物>
本発明の導電性組成物は、バインダー樹脂(A)と、炭素材料(B)と、硬化剤(C)とを含有する。また、必要に応じて溶剤を含有しても良い。
また、導電性組成物の適正粘度は、特に制限はないが、10mPa・s以上、30,000mPa・s以下であることが好ましい。
【0017】
<バインダー樹脂(A)>
まず、バインダー樹脂(A)について説明する。
バインダー樹脂は、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル樹脂、アクリル樹脂、ブタジエン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂及びシリコン樹脂等からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。特に、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。ただし、これらの樹脂に限定されるわけではない。バインダー樹脂は1種単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
【0018】
バインダー樹脂は、バインダー樹脂が基材に担持された後に、硬化(架橋)反応を受ける、硬化性樹脂とすることもできる。つまり、バインダー樹脂は、自己硬化性のものを選択したり後述する硬化剤と組み合わせたりして、導電性組成物を基材上に印刷したり塗工したりした後、硬化(架橋)させることもできる。
【0019】
バインダー樹脂としては、体積抵抗率と基材への密着性および耐久性の観点からポリウレタン樹脂が好ましい。導電性組成物を基材上に印刷したり塗工したりした後、(熱)プレスする際、樹脂分が軟化し、印刷・塗工時の導電回路の平面的なパターン形状をほぼ維持しつつ、厚み方向に流動すると、空隙を減らし炭素材料(B)同士の接触が増すので、得られる導電回路の体積抵抗率の低下が期待できる。従って、バインダー樹脂としては、(熱)プレスの際、適度に軟化・流動するものが好ましい。
【0020】
バインダー樹脂の重量平均分子量は、塗工性や取扱い性の観点から、1000~200000の範囲が好ましい。また、密着の観点から、ガラス転移温度が-40℃~200℃であることが好ましい。また、膜の耐久性の観点から、硬化時に架橋点として作用する酸価、または水酸基価は、何れか高い値の方が5.0mgKOH/g以上が好ましく、更には5.0mgKOH/g以上50mgKOH/gが好ましい。
【0021】
<ポリウレタン樹脂>
ポリウレンタン樹脂の合成方法としては、特に限定はされないが、例えば、ポリオール化合物(a)とジイソシアネート(b)とを反応させて得られるものなどが挙げられる。
【0022】
ポリオール化合物(a) としては、一般にポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分として知られている、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、その他低分子ジオール類等が使用できる。
【0023】
ポリエーテルポリオール類としては、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体などが挙げられる。
ポリエステルポリオール類としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ダイマージオール等の飽和およびまたは不飽和の炭化水素ジオールに代表される低分子ジオール類と、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル類のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸類、またはこれらの無水物類とを、脱水縮合して得られるポリエステルポリオール類や、環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類が挙げられる。
【0024】
ポリカーボネートポリオール類としては、1)ジオールまたはビスフェノールと炭酸エステルとの反応生成物、2)ジオールまたはビスフェノールにアルカリの存在下でホスゲンとの反応生成物等が挙げられる。炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。また、ジオールとしては、上記低分子ジオール類等が挙げられる。また、ビスフェノールとしては、ビスフェノールAやビスフェノールF、ビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させたビスフェノール類等が挙げられる。
【0025】
上記ポリオール化合物の数平均分子量(Mn)は、導電性組成物を製造する際のポリウレタン樹脂の溶解性、形成される導電回路の耐久性や基材に対する接着強度等を考慮して適宜決定されるが、通常は580~8000の範囲が好ましく、さらに好ましくは1000~5000である。上記ポリオール化合物は、単独で用いても、2種類以上併用してもよい。
【0026】
ジイソシアネート化合物(b)としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族イソシアネート、またはこれらの混合物が挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′-ベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0027】
脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル、ビス(4-イソシアネートシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
<ポリアミド樹脂>
バインダー樹脂としては、体積抵抗率と基材への密着性および耐久性の観点からポリアミド樹脂が好ましい。体積抵抗率は、(熱)プレス中の樹脂分が流動しやすいため良好な結果となる。
本発明に用いられるポリアミド樹脂とは、基本的に二塩基酸とジアミンの重縮合、アミノカルボン酸の重縮合、或いはラクタムの開環重合などの各種反応で得られるアミド結合を有する高分子の総称であり、各種の変性ポリアミドをはじめ、一部水素添加された反応物で製造されたもの、他のモノマーが一部共重合された製造物、或いは各種添加剤などの他の物質が混合されたものなどを含む広い概念である。
【0029】
本発明に用いられるポリアミド樹脂は上記のような条件が満たされれば特に限定されないが、ダイマー酸を主成分とする二塩基酸とポリアミン類とを縮合重合させて得られるダイマー酸変性ポリアミド樹脂が好ましい。ダイマー酸変性ポリアミド樹脂を製造する際のダイマー酸としては、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸などに含まれる天然の一塩基性不飽和脂肪酸を重合したダイマー酸が工業的に広く用いられる。
当該ダイマー酸の市販品としては、ハリダイマー200、300(ハリマ化成社製)、バーサダイム228、216、エンポール1018、1019、1061、1062(コグニス社製)などが挙げられる。さらに、水素添加されたダイマー酸も使用でき、水添ダイマー酸の市販品としてはプリポール1009(クローダジャパン株式会社製)、エンポール1008(コグニス社製)などが挙げられる。
【0030】
上記ダイマー酸以外に、二塩基酸として各種のジカルボン酸を用いることができる。ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、(無水)コハク酸、(無水)マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ビメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,3-または1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸などが用いられる。
【0031】
<ポリエステル樹脂>
バインダー樹脂としては、体積抵抗率と基材への密着性の観点からポリエステル樹脂が好ましい。体積抵抗率は、(熱)プレス中の樹脂分が流動しやすいため良好な結果となる。
ポリエステル樹脂は、単量体として多価カルボン酸と多価アルコールより構成される重合体である。ポリエステル樹脂は、公知のものが採用できる。 ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸等が挙げられ、これらの中から1種または2種以上を選択し使用できる。一方、ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分としては、脂肪族グリコール、エーテルグリコール類、3価以上のポリアルコール等が挙げることができ、これらの中から1種、またはそれ以上を選び使用できる。ポリエステル樹脂の市販品としては、バイロン(東洋紡株式会社製、「バイロン」は登録商標)、ポリエスター(日本合成化学工業株式会社製、「ポリエスター」は登録商標)、テスラック(日立化成ポリマー株式会社製、「テスラック」は登録商標)などが挙げられる。
【0032】
<炭素材料(B)>
次に、炭素材料(B)について説明する。
本発明の導電性組成物は、黒鉛(B-1)および黒鉛以外の炭素材料(B-2)を含有することを特徴とする。
炭素材料(B)の含有率は、導電性組成物の固形分100質量%中、40~99質量%であり、65~85質量%であることが好ましく、70~80質量%であることがより好ましい。
炭素材料(B)の含有率が99質量%を越える場合では、樹脂分が不足して、導電回路の密着性が低下し、密着不良となる。一方で、炭素材料(B)の含有率が40質量%未満の場合には、導電回路中の炭素材料間の接触が減り、導電性が不良となる。
炭素材料(B)の含有率が40~99質量%の場合では、導電性組成物により形成される電極の導電ネットワーク形成が良好な状態で、高い密着性を発現することができる。
【0033】
<黒鉛(B-1)>
黒鉛(B-1)としては、例えば人造黒鉛や天然黒鉛等を使用することが出来る。人造黒鉛としては、無定形炭素の熱処理により、不規則な配列の微小黒鉛結晶の配向を人工的に行わせたものであり、一般的には石油コークスや石炭系ピッチコークスを主原料として製造される。天然黒鉛としては、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等を使用することが出来る。また、鱗片状黒鉛を化学処理等した膨張黒鉛(膨張化黒鉛ともいう)や、膨張黒鉛を熱処理して膨張化させた後、微細化やプレスにより得られた膨張化黒鉛等を使用することも出来る。これらの黒鉛の中でも、配線シートの導電回路に用いる場合は、導電性の観点から、鱗片状黒鉛、膨張化黒鉛、薄片化黒鉛等が好ましい。
【0034】
これら黒鉛の表面は、バインダー樹脂との親和性を増すために、表面処理、例えばエポキシ処理、ウレタン処理、シランカップリング処理、および酸化処理等が施されていてもよい。
【0035】
また、黒鉛の平均粒径は2μm以上であると黒鉛粒子のアスペクト比が増加し、黒鉛粒子間の接触が、面または多点接触になりやすくなるため、導電ネットワークを十分に形成できる。更に、黒鉛の平均粒径が100μm未満では、黒鉛粒子間の空隙が小さくなり、導電ネットワーク中の黒鉛以外の炭素材料間で形成する導電パスの割合が少なくなり、導電性に有利に働く。従って、黒鉛の平均粒径は、2μm以上100μm未満が好ましく、特に、20μm以上50μm以下が好ましい。
【0036】
本明細書でいう平均粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)を指し、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定された数値に基づく。
【0037】
市販の黒鉛としては、例えば、薄片状黒鉛として、日本黒鉛工業社製のCMX、CPB、UP-5、UP-10、UP-20、UP-35N、CSSP、CSPE、CSP、CP、CB-150、CB-100、ACP、ACP-1000、ACB-50、ACB-100、ACB-150、SP-10、SP-20、J-SP、SP-270、HOP、GR-15、LEP、F#1、F#2、F#3、中越黒鉛社製のCX-3000、FBF、BF、CBR、SSC-3000、SSC-600、SSC-3、SSC、CX-600、CPF-8、CPF-3、CPB-6S、CPB、96E、96L、96L-3、90L-3、CPC、S-87、K-3、CF-80、CF-48、CF-32、CP-150、CP-100、CP、HF-80、HF-48、HF-32、SC-120、SC-80、SC-60、SC-32、伊藤黒鉛工業社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50、西村黒鉛社製の10099M、PB-99等が挙げられる。球状天然黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のCGC-20、CGC-50、CGB-20、CGB-50が挙げられる。土状黒鉛としては、日本黒鉛工業社製の青P、AP、AOP、P#1、中越黒鉛社製のAPR、S-3、AP-6、300Fが挙げられる。人造黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のPAG-60、PAG-80、PAG-120、PAG-5、HAG-10W、HAG-150、中越黒鉛社製のRA-3000、RA-15、RA-44、GX-600、G-6S、G-3、G-150、G-100、G-48、G-30、G-50、SECカーボン社製のSGP-100、SGP-50、SGP-25、SGP-15、SGP-5、SGP-1、SGO-100、SGO-50、SGO-25、SGO-15、SGO-5、SGO-1、SGX-100、SGX-50、SGX-25、SGX-15、SGX-5、SGX-1が挙げられる。これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0038】
また、本発明中の導電性組成物に占める黒鉛(B-1)の含有率は、炭素材料(B)100質量%中、70~99質量%であり、75~99質量%であることが好ましく、80~99質量%であることがより好ましく、90~97.5質量%であることがさらに好ましい。
【0039】
黒鉛(B-1)の含有率が、炭素材料(B)100質量%中70質量%未満の場合では、過剰量の黒鉛以外の炭素材料(B-2)による黒鉛粒子の配向性の低下および導電ネットワークの大部分を黒鉛以外の炭素材料が占めることで、高い導電性が発現しなくなる恐れがある。さらには炭素材料(B)100質量%中75質量%以上であれば、特異的な高い導電性が発現する。一方で、黒鉛の含有率が、炭素材料(B)100質量%中99質量%を超える場合には、黒鉛粒子による平面方向の導電性が支配的となり、電極の導電性は頭打ちする恐れがある。
【0040】
黒鉛(B-1)の含有率が、上記の好ましい含有率の範囲内であると、電極のピンホールが少なく導電回路のムラが少ない良好な塗膜が形成できる上、黒鉛粒子による平面方向の高い導電性に加え、適切な量の黒鉛以外の炭素材料(B-2)によって、黒鉛由来の平面方向の導電性を阻害せずに垂直方向の導電ネットワークが強化されるため、非常に高い導電性を発現できる。
【0041】
<黒鉛以外の炭素材料(B-2)>
黒鉛以外の炭素材料としては、特に限定されるものではないが、粒径および比表面積の観点からカーボンブラックがより好ましい。それ以外にも、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することが出来る。
【0042】
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック(登録商標)、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
【0043】
カーボンブラックの酸化処理は、カーボンブラックを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボンブラック表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンブラックの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンブラックが好ましい。
【0044】
カーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子同士の接触点が増えるため、体積抵抗率を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、30m2/g以上が好ましく、更にはBET比表面積が100m2/g以上が好ましく、更にはBET比表面積が500m2/g以上が好ましく、更にはBET比表面積が800m2/g以上が好ましく、更にはBET比表面積が1000m2/g以上が好ましい。
【0045】
また、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005~1μmが好ましく、特に、0.01~0.2μmが好ましい。ただし、ここでいう一次粒子径とは、電子顕微鏡などで測定された粒子径を平均したものである。
【0046】
市販のカーボンブラックとしては、例えば、東海カーボン社製のトーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500、デグサ社製のプリンテックスL、コロンビヤン社製のRaven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、500
0ULTRA、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA、PUERBLACK100、115、205、三菱化学社製の#2350、#2400B、#2600B、#3050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B、キャボット社製のMONARCH1400、1300、900、VulcanXC-72R、BlackPearls2000、TIMCAL社製のEnsaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP-Li等のファーネスブラック)、ライオン社製のEC-300J、EC-600JD等のケッチェンブラック、電気化学工業社製のデンカブラック、デンカブラックHS-100、FX-35等のアセチレンブラックが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0047】
導電性炭素繊維としては、石油由来の原料から焼成して得られるものが良いが、植物由来の原料からも焼成して得られるものも用いることが出来る。また、カーボンナノチューブには、グラフェンシートが一層でナノメートル領域の直径を有するチューブを形成する単層カーボンナノチューブと、グラフェンシートが多層である多層カーボンナノチューブがある。そのため、多層カーボンナノチューブの直径は、典型的な単層カーボンナノチューブの0.7-2.0nmに対して、30nmと大きい値を示す。
【0048】
市販の導電性炭素繊維やカーボンナノチューブとしては、昭和電工社製のVGCF等の気相法炭素繊維、名城ナノカーボン社製のEC1.0,EC1.5,EC2.0,EC1.5-P等の単層カーボンナノチューブ、CNano社製のFloTube9000、FloTube9100、FloTube9110、FloTube9200、Nanocyl社製のNC7000、Knano社製の100T等が挙げられる。
【0049】
熱化学電池用電極は、その他リチウムイオン電池と同様に、電解質イオンと電極との反応点が多いほど電池出力が向上する。すなわち、電極の比表面積が大きいものが好ましい。従って、黒鉛以外の炭素材料としては、BET比表面積が30m2/g以上が好ましく、更にはBET比表面積が100m2/g以上が好ましく、更にはBET比表面積が500m2/g以上が好ましく、更にはBET比表面積が800m2/g以上が好ましく、更にはBET比表面積が1000m2/g以上が好ましい。
【0050】
<硬化剤(C)>
次に、硬化剤(C)について説明する。
硬化剤(C)は、導電性組成物を硬化させるために含有される。硬化剤(C)同士で反応し、架橋が形成されるものであってもよいし、バインダー樹脂(A)や炭素材料(B)が硬化剤と反応する官能基を有する場合、これら官能基と反応して架橋が形成されるものであってもよい。バインダー樹脂を硬化させることで、樹脂の物理的強度や化学的耐性が向上し、導電回路の耐久性が良化する。さらに、硬化時の導電回路の体積収縮の効果により、導電性が良化する。
【0051】
硬化剤としては、例えば、エポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、ブロックイソシアネート基含有化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド基含有化合物、ベンゾオキサジン化合物、フェノール樹脂、マレイミド化合物、β―ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物、金属キレート等が挙げられ、導電回路の耐久性の観点からは、アジリジン化合物とエポキシ基含有化合物が好ましく、導電性の観点からは、アジリジン化合物が好ましい。アジリジン化合物は、カルボキシル基、フェノール性水酸基、酸無水物等を含有するバインダー樹脂との反応性が非常に良く、導電回路の乾燥直後から硬化が開始することで、硬化収縮が顕著に起きるため、フィラー同士の接触が密になり、他の硬化剤を使用する場合よりも極端に導電性が向上する。
【0052】
<エポキシ基含有化合物>
エポキシ基含有化合物としては、エポキシ基を分子内に有する化合物であればよく、特に限定されるものではないが、1分子中に平均2個以上のエポキシ基を有するものを好ましく用いることができる。エポキシ基有化合物としては、例えば、グリジシルエーテル型エポキシ樹脂、グリジシルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、または環状脂肪族(脂環型)エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂を用いることができる。
【0053】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、またはテトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等が挙げられる。
【0054】
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、またはテトラグリシジルメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0055】
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、例えば、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、またはジグリシジルテトラヒドロフタレート等が挙げられる。
環状脂肪族(脂環型)エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシシクロヘキシルメチル-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、またはビス(エポキシシクロヘキシル)アジペートなどが挙げられる。
エポキシ基含有化合物としては、上記化合物の一種を単独で、若しくは二種以上を組み合わせて用いることができる。エポキシ基含有化合物としては、耐久性の点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、またはテトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンを用いることが好ましい。
【0056】
<アジリジン化合物>
アジリジン化合物としては、分子内にアジリジン基を含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。
【0057】
アジリジン化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、トリ-1-アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1、3、5-トリアジン、トリメチロールプロパントリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3-(1-アジリジニル)ブチレート]、トリメチロールプロパントリス[3-(1-(2-メチル)アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3-(1-アジリジニル)-2-メチルプロピオネート]、2,2’-ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラ[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、ジフェニルメタン-4,4-ビス-N,N’-エチレンウレア、1,6-ヘキサメチレンビス-N,N’-エチレンウレア、2,4,6-(トリエチレンイミノ)-Syn-トリアジン、ビス[1-(2-エチル)アジリジニル]ベンゼン-1,3-カルボン酸アミド等が挙げられる。
特に、2,2’-ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]は、良好な耐久性と導電性が得られるため、本発明において好ましく使用される。
【0058】
<カルボジイミド基含有化合物>
カルボジイミド基含有化合物としては、日清紡績株式会社のカルボジライトシリーズが挙げられる。その中でもカルボジライトV-01、03、05、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0059】
<イソシアネート基含有化合物>
イソシアネート基含有化合物としては、イソシアネート基を分子内に有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。1分子中にイソシアネート基を1個有するイソシアネート基含有化合物としては、具体的には、n-ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1-ビス[(メタ)アクリロイルオキシメチル]エチルイソシアネート、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
また、1,6-ジイソシアナトヘキサン、ジイソシアン酸イソホロン、ジイソシアン酸4,4’-ジフェニルメタン、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアン酸トリレン、ジイソシアン酸トルエン、2,4-ジイソシアン酸トルエン、ジイソシアン酸ヘキサメチレン、ジイソシアン酸4-メチル-m-フェニレン、ナフチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等のジイソシアン酸エステル化合物と水酸基、カルボキシル基、アミド基含有ビニルモノマーとを等モルで反応せしめた化合物もイソシアン酸エステル化合物として使用することができる。
【0060】
1分子中にイソシアネート基を2個有するイソシアネート基含有化合物としては、具体的には、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート[別名:イソホロンジイソシアネート]、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0061】
また、1分子中にイソシアネート基を3個有するイソシアネート基含有化合物としては、具体的には、芳香族ポリイソシアネート、リジントリイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられ、上記で説明したジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体が挙げられる。
【0062】
<ブロックイソシアネート基含有化合物>
ブロックイソシアネート基含有化合物しては、上記イソシアネート基含有化合物中のイソシアネート基がε-カプロラクタムやMEKオキシム等で保護されたブロック化イソシアネート基含有化合物であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、上記イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基を、ε-カプロラクタム、MEKオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピラゾール、フェノール等でブロックしたものなどが挙げられる。特に、イソシアヌレート環を有し、MEKオキシムやピラゾールでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネート三量体は、本発明に使用した場合、保存安定性は勿論のこと、ポリイミドや銅に対する接着強度や半田耐熱性に優れるため、非常に好ましい。
【0063】
<ベンゾオキサジン化合物>
ベンゾオキサジン化合物としては、Macromolecules,36,6010(2003)記載の「P-a」、「P-alp」、「P-ala」、「B-ala」、Macromolecules,34,7257(2001)記載の「P-appe」、「Bappe」、四国化成株式会社製「B-a型ベンゾオキサジン」、「F-a型ベンゾオキサジン」、「B-m型ベンゾオキサジン」などが挙げられる。
【0064】
<フェノール樹脂>
フェノール樹脂としては、フェノール、クレゾール類、およびビスフェノール類等の化合物とホルムアルデヒドとの付加化合物、またはその部分縮合物が挙げられる。具体的には、フェノール樹脂、クレゾール樹脂、t-ブチルフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、キシリレン変性フェノール樹脂、テトラキスフェノール樹脂、ビスフェノールA樹脂、ポリ-p-ビニルフェノール樹脂のレゾール型樹脂やノボラック型樹脂が挙げられる。その他、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。中でも、フェノール樹脂のレゾール型樹脂は、耐熱性および硬化性の面で非常に優れており、本発明において好適に用いることができる。
【0065】
<マレイミド化合物>
マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を少なくとも1個有しているもので、例えば、フェニルマレイミド、1-メチル-2,4-ビスマレイミドベンゼン、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-4,4-ビフェニレンビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3-ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3-ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3-ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-s-ブチル-3,4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]デカン、4,4’-シクロヘキシリデン-ビス[1-(4-マレイミドフェノキシ)フェノキシ]-2-シクロヘキシルベンゼン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどがあり、単独でも2種類以上を混合して使用しても良い。
【0066】
<β-ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物>
β-ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラキス(ヒドロキシエチル)アジパミド(エムスケミー社製Primid XL-552)をはじめとする種々の化合物を挙げることができる。
【0067】
<金属キレート>
金属キレートとしては、金属アルコキシドとβ-ジケトンやケトエステル(アセト酢酸エチル等)等のキレート化剤と反応したキレート化合物を挙げることができ、アルミニウムキレート、ジルコニウムキレート、チタンキレート等を挙げることができる。
【0068】
本発明において、硬化剤(C)は、一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用しても良い。硬化剤(C)の使用量は、本発明の導電性組成物の用途等を考慮して決定すればよく、特に限定されるものではないが、硬化剤(C)の含有率が、バインダー樹脂(A)100質量%に対して、0.5~20質量%であることが好ましい。0.5質量%以上だと架橋性が良好となり、導電性、耐久性ともに良化傾向になり、20質量%以下であれば、導電性組成物のポットライフが良好となる。
【0069】
<溶剤>
次に、溶剤について説明する。導電性組成物中のバインダー樹脂(A)と、導電性の炭素材料(B)と、硬化剤(C)とを均一に混合する場合、溶剤を適宜用いることが出来る。そのような溶剤としては、有機溶剤や水を挙げることが出来る。
有機溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などの内から導電性組成物の組成に応じ適当なものが使用できる。また、溶剤は2種以上用いてもよい。
尚、スクリーン印刷などの導電性組成物に一定以上の粘性が要求される印刷塗工方式を採用する場合、有機溶剤の25℃で粘度は、30mPa・s~75000mPa・sが好ましい。上記範囲内であれば、高い導電性と塗工に適した分散性を両立することができる。例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1、3-ブチレングリコール、イソボルニルシクロヘキサノールが挙げられる。ここで示すところの高粘度溶剤は、二種以上用いて良いし、メチルエチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコールのような25℃の時の粘度が30mPa・s未満の低粘度溶剤と併用して使用することも可能である。
【0070】
次に、その他成分について説明する。本発明の導電性組成物には、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、ラジカル補足剤、充填剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、増粘剤、顔料分散剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を添加してもよい。
【0071】
<分散機・混合機>
導電性組成物を得る際に用いることができる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS-5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルが、セラミック製または樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、または、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
【0073】
<電極>
本発明の導電性組成物を用いて電極を製造する場合、導電性組成物を、使用用途に応じて紙、プラスチック等の基材の片面または両面上に、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、オフセット印刷、凸版印刷、インクジェット、キャスト法等の通常の印刷方式により印刷または自立膜を形成することができる。
【0074】
紙基材としては、コート紙、非コート紙、その他、合成紙、ポリエチレンコート紙、含浸紙、耐水加工紙、絶縁加工紙、伸縮加工紙等の各種加工紙が使用できる。また、プラスチック基材としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロハン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリスチレン、ビニルアルコール、エチレン- ビニルアルコール、ナイロン、ポリイミド、ポリカーボネート等のプラスチックからなる基材を使用することができる。また、金属基材としては、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔またはステンレス箔などの金属箔または合金箔が使用することができる。
【0075】
本発明の導電性組成物を用いて製造された電極の体積抵抗率は、5×10-2Ω・cm未満であることが好ましい。体積抵抗率は、5×10-2Ω・cm未満であることで、熱化学電池用電極として好適に利用することができる。なお、体積抵抗率が低いほど、熱化学電池内での内部抵抗を減らすことができるため好ましい。
【実施例
【0076】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例および比較例における「部」は「質量部」を表し、Mwは重量平均分子量、Tgはガラス転移温度を意味する。
【0077】
<バインダー樹脂A-1の合成>
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、テレフタル酸とアジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールとから得られるポリエステルポリオール((株)クラレ製「クラレポリオールP-2011」、Mn=2011)455.5部、ジメチロールブタン酸16.5部、イソホロンジイソシアネート105.2部、トルエン140部を仕込み、窒素雰囲気下90℃3時間反応させ、これにトルエン360部を加えてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、イソホロンジアミン19.9部、ジ-n-ブチルアミン0.63部、2-プロパノール294.5部、トルエン335.5部を混合したものに、得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液969.5部を添加し、50℃で3時間続いて70℃2時間反応させ、トルエン126部、2-プロパノール54部で希釈し、Mw=61,000、酸価=10mgKOH/g、ウレタンプレポリマーの両末端に有する遊離のイソシアネート基に対してポリアミノ化合物および反応停止剤中のアミノ基の合計当量が0.98である、ポリウレタン樹脂A-1の溶液を得た。
【0078】
<バインダー樹脂A-2の合成>
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、多塩基酸化合物としてプリポール1009を156.2g、5-ヒドロキシイソフタル酸を5.5g、ポリアミン化合物としてプリアミン1074を146.4g、イオン交換水を100g仕込み、発熱の温度が一定になるまで撹拌した。温度が安定したら110℃まで昇温し、水の流出を確認してから、30分後に温度を120℃に昇温し、その後、30分ごとに10℃ずつ昇温しながら脱水反応を続けた。温度が230℃になったら、そのままの温度で3時間反応を続け、約2kPaの真空下で、1時間保持し、温度を低下させた。最後に、酸化防止剤を添加し、Mw=24000、酸価13.2mgKOH/g、水酸基価5.5mgKOH/g、ガラス転移温度-32℃のポリアミド樹脂A-2を得た。
【0079】
なお、樹脂の特性は下記の通りに行った。
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
Mwの測定は東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC-8020」を用いた。測定は、溶離液にテトラヒドロフラン(THF)、カラムに「LF-604」(昭和電工株式会社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、流量0.6ml/分、カラム温度40℃の条件で行い、重量平均分子量(Mw)の決定は、分子量既知のポリスチレン換算で行った。
【0080】
<酸価の測定>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。酸価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)。酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
ただし、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0081】
<水酸基価の測定>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。
水酸基価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)。
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.05}/S]+D
ただし、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0082】
<ガラス転移温度の測定方法>
メトラー・トレド(株)製「DSC-1」を使用し、-80~150℃まで2℃/分で昇温して測定した。
【0083】
<バインダー樹脂溶液の調製>
実施例、比較例で使用するバインダー樹脂を以下に示す溶剤を使用して固形分率20%の溶液に調製した。混合溶剤の組成比は質量比である。
・バインダー樹脂A-1-1の溶液:バインダー樹脂A-1の溶液をトルエン/メチルエチルケトン/2-プロパノール(1/1/1)で希釈してバインダー樹脂A-1-1の溶液を得た。
・バインダー樹脂A-2-1の溶液:バインダー樹脂A-2をトルエン/2-プロパノール(2/1)で希釈してバインダー樹脂A-2-1の溶液を得た。
・バインダー樹脂A-3-1の溶液:バインダー樹脂A-3:バイロンUR3500(東洋紡株式会社製、ポリウレタン樹脂)をトルエン/メチルエチルケトン(1/1)で希釈してバインダー樹脂A-3-1の溶液を得た。
・バインダー樹脂A-4-1の溶液:バインダー樹脂A-4:バイロンGK130(東洋紡株式会社製、ポリエステル樹脂)をトルエン/メチルエチルケトン(1/1)で希釈してバインダー樹脂A-4-1の溶液を得た。
【0084】
<硬化剤の調製>
実施例、比較例で使用する硬化剤を以下に示す溶剤を使用して固形分率50%の溶液に調製した。混合溶剤の組成比は質量比で記載。
・硬化剤C-1-1の溶液:硬化剤C-1(アジリジン化合物 ケミタイトPZ-33:株式会社日本触媒製)をトルエンで希釈して硬化剤C-1-1の溶液を得た。
・硬化剤C-2-1の溶液:硬化剤C-2(エポキシ化合物 TETRAD-X:三菱ガス化学株式会社製)をトルエンで希釈して硬化剤C-2-1の溶液を得た。
・硬化剤C-4-1の溶液:硬化剤C-4(イソシアネート化合物 タケネートD-110N:三井化学株式会社社製)を酢酸エチルで希釈して硬化剤C-4-1の溶液を得た。
【0085】
<導電性組成物および電極>
(実施例1)
バインダー樹脂としてA-1-1の溶液を120部(樹脂固形分24部)、炭素材料のうち、黒鉛としてB-1-1:鱗片状黒鉛CPB(日本黒鉛社製)を70部、黒鉛以外の炭素材料としてB-2-1:ケッチェンブラック(登録商標)EC-600JD(ライオンスペシャリティケミカルズ社製)を6部、溶剤としてトルエン/メチルエチルケトン/2-プロパノール(1/1/1)を204部、をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行った後、硬化剤としてC-1-1の溶液を0.48部(硬化剤固形分0.24部)を添加して、導電性組成物(1)を得た。得られた導電性組成物をテフロン(登録商標)容器に注ぎ入れ、80℃1時間乾燥し、その後150℃3時間で硬化させ、導電膜を得た。この際、硬化後の膜厚が60μmになるように導電性組成物の量を調整した。得られた導電膜をφ16mmの円板状に打ち抜き電極とした。
【0086】
<コイン型電池の組み立て>
アルゴン雰囲気で満たされたグローブボックス中でSUS316製のケースを用い、上記で得られた電極2枚の間にポリプロピレン製のセパレータを介し、さらに電解液として、0.5M K3[Fe(CN)6]/ K4[Fe(CN)6]・3H2Oの水溶液を注入してCR2032型のコイン電池を作製した。
【0087】
(実施例2~40)
バインダー樹脂、黒鉛、黒鉛以外の炭素材料、硬化剤をそれぞれ表1に記載した種類、量に変更した以外は、実施例1と同様の方法で電極およびコイン電池を得た。
【0088】
<比較例1>
PEDOT/PSS溶液 オルガコンS315(日本アグファケミカルズ社製)をテフロン(登録商標)容器に注ぎ入れ、80℃1時間乾燥し、更に150℃3時間で乾燥させ、導電膜を得た。この際、乾燥後の膜厚が60μmになるように導電性組成物の量を調整した。得られた導電膜をφ16mmの円板状に打ち抜き電極とした。更に、実施例1同様にして、コイン電池を作製した。
【0089】
以上の方法により、得られた電極、コイン電池において以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0090】
<電極の体積抵抗率>
電極の体積抵抗率は、ロレスタGP(三菱化学アナリテック社製)を用いて4端子法で測定(JIS-K7194)して判定した。評価結果を表1に示す。
◎◎:「体積抵抗率が3.5×10-3Ω・cm未満(非常に極めて良好)」
◎〇:「体積抵抗率が3.5×10-3Ω・cm以上、4×10-3Ω・cm未満(非常に極めて良好)」
◎:体積抵抗率が4×10-3Ωcm以上、5×10-3Ω・cm未満(極めて良好)
○:体積抵抗率が5×10-3Ω・cm以上、1×10-2Ω・cm未満(良好)
○△:体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以上、5×10-2Ω・cm未満(使用可能範囲内)
△:体積抵抗率が5×10-2Ω・cm以上、1×10-1Ω・cm未満(不良)
×:体積抵抗率が1×10-1Ω・cm以上(極めて不良)
【0091】
<電極の耐久性>
耐湿熱試験前の体積抵抗率に対する耐湿熱試験後の体積抵抗率の上昇率(変化率)で評価した。以下に評価方法を示す。作製した電極を小型環境試験器(エスペック株式会社:型番SH-661)に投入し、温度60℃、相対湿度90%で5000時間保管して耐湿熱試験を行った後、上記と同様に体積抵抗率の測定を行った。
◎:体積抵抗率の上昇率が10%未満(極めて良好)
〇:体積抵抗率の上昇率が10%以上20%未満(良好)
△:体積抵抗率の上昇率が20%以上30%未満(使用可能範囲内)
×:体積抵抗率の上昇率が30%以上(極めて不良)
【0092】
<電池評価>
上記コイン型電池を用いて、電池の出力測定を実施した。25℃の屋内で、65℃に加熱したホットプレート上にコイン電池を置き、コイン電池の上下で40℃の温度差をつけた。次に、陽極側、陰極側にソースメータをつなぐことで電圧値、電流値を測定し、出力を求めた。
◎◎:電池出力が15μW以上(極めて良好)
◎:電池出力が10μW以上15μW未満(良好)
〇:電池出力が5μW以上10μW未満(使用可能範囲内)
△:電池出力が5μW未満(不良)
【0093】
【表1】
【0094】
【表1】
【0095】
実施例で使用した材料を下記に示す。
<バインダー樹脂(A)>
・A-1:ポリウレタン樹脂(Mw=61,000、酸価=10mgKOH/g、ガラス転移温度-35℃)
・A-2:ポリアミド樹脂(Mw=24000、酸価13.2mgKOH/g、水酸基価5.5mgKOH/g、ガラス転移温度-32℃)
・A-3:ポリウレタン樹脂 バイロン(登録商標)UR3500(Mw=40,000、酸価:35mgKOH/g、水酸基価:10mgKOH/g、ガラス転移温度10℃、東洋紡株式会社製)
・A-4:ポリエステル樹脂 バイロン(登録商標)GK130(Mw=7,600、水酸基価:19mgKOH/g、ガラス転移温度15℃、東洋紡株式会社製)
【0096】
<炭素材料(B)>
<黒鉛(B-1)>
・B-1-1:鱗片状黒鉛CPB(日本黒鉛社製)平均粒径20μm
・B-1-2:薄片化黒鉛UP-20(日本黒鉛社製)平均粒径20μm
・B-1-3:膨張化黒鉛GR15(日本黒鉛社製)平均粒径15μm
・B-1-4:球状黒鉛CGB-50(日本黒鉛社製)平均粒径50μm
・B-1-5:人造黒鉛PAG-5(日本黒鉛社製)平均粒径30μm

<黒鉛以外の炭素材料(B-2)>
・B-2-1:ケッチェンブラック(登録商標)EC-600JD(ライオンスペシャリティケミカルズ社製)
・B-2-2:ケッチェンブラック(登録商標)EC-300J(ライオンスペシャリティケミカルズ社製)
・B-2-3:ファーネスブラック#3050B(三菱ケミカル社製)
・B-2-4:デンカブラックHS-100(電気化学工業社製)
・B-2-5:多層カーボンナノチューブVGCF-H(昭和電工社製)
・B-2-6:多層カーボンナノチューブ NC7000(nanocyl社製)
・B-2-7:単層カーボンナノチューブ TUBALL (OCSiAl社製)
・B-2-8:単層カーボンナノチューブ ZEONANOSG101(ゼオンナノテクノロジー社製)
【0097】
<硬化剤(C)>
・C-1:アジリジン化合物 ケミタイトPZ-33 (固形分100%、日本触媒社製)
・C-2:エポキシ基含有化合物 TETRAD-X(固形分100%、三菱ガス化学社製)
・C-3:カルボジイミド基含有化合物 カルボジライトV-03(固形分50%、日清紡ケミカル社製)
・C-4:イソシアネート基含有化合物 タケネートD-110N(固形分75%、三井化学社製)
【0098】
実施例1~40は電極の抵抗値が低いため、熱化学電池としての出力を確認できた。一方で、比較例1は抵抗値が高いため、熱化学電池としての出力が低くなった。また、実施例1~40は電極の耐久性が優れているが、比較例1は、耐久性が低く、熱化学電池用電極としての実用性は悪い。