(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】熱化学電池電極用導電性組成物
(51)【国際特許分類】
H01M 14/00 20060101AFI20240820BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H01M14/00 Z
H02N11/00 A
(21)【出願番号】P 2020066346
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩田 貫
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-251809(JP,A)
【文献】特開平09-259944(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109616678(CN,A)
【文献】国際公開第2017/155046(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079325(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 14/00
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体(A)および炭素材料(B)を含む熱化学電池電極用組成物であって、重合体(A)が、(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位、ならびに活性水素基含有単量体、塩基性単量体および(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選択される1種以上の単量体単位を含む共重合体であり、重合体(A)中、(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位を40質量%以上100質量%未満含
み、重
合体(A)の含有率が、炭素材料(B)の全量に対して5~100質量%であることを特徴とする熱化学電池電極用導電性組成物。
【請求項2】
活性水素基含有単量体が、(メタ)アクリル酸および/またはヒドロキシエチル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位を含むことを特徴とする請求項1記載の熱化学電池電極用導電性組成物。
【請求項3】
重合体(A)中、(メタ)アクリル酸およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位の合計量を1~25質量%含むことを特徴とする請求項2記載の熱化学電池電極用導電性組成物。
【請求項4】
更に、無機金属塩、無機塩基および有機塩基からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1~3いずれか記載の熱化学電池電極用導電性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱化学電池電極用導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱化学電池は、熱源のある所において熱エネルギーによる化学反応を利用して発電したり(非特許文献1)、熱エネルギーによる化学反応を利用して発電(充電)した後に、熱源がない場所で電池として使用できる(非特許文献2)。
前者は、半永久的に連続で発電することが可能であり、後者も熱源(高温)と熱源のない場所(低温)とに繰り返して配置・保持することで繰り返し使用することが可能である。熱化学電池は、基本的に正極と負極あるいは陽極と陰極の両電極とその間に存在する電解質とからなり、主に二つの動作形態がある。一つ目は、両電極間に温度差がある場合に、化学反応の速度差により電解質中にキャリア濃度差が生じ、電位差が発生する形態である(1セルタイプと呼ばれる)。
もう一つ目は、電解質を分離材で仕切り、両電極を含めた全体を熱により温めた場合に、分離材の左右の化学反応の違いにより発電(充電)し、低温の場所では逆反応を起こし電位差が発生する形態である(これを2セルタイプと呼ぶ)。いずれの場合も、電解質に接する電極界面でイオンと電子との反応が必要であり、電極が必要となる。
従来の熱化学電池の電極としては、金属、特に触媒活性の大きい白金など貴金属を使用したもの(非特許文献3)や、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)―ポリ(スチレンスルホン酸)(以下PEDOT/PSS)などの導電性高分子を使用したもの(特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】“Seebeck coefficients in ionic Liquids prospects for thermo-electrochemical cell", T.J.Abraham, et al., Chem. Commun., 47, (2011) pp.6260-6262.
【文献】“Charging-free electrochemical system for harvesting Low-grade thermal energy", Y.ang, et al. , PNAS, 111(48), (2014), pp.17011-17016.
【文献】“Review of Thermally Regenerative Electrochemical Systems”, H.L.Chum and R.A.Osteryoung, Synopsis and Summary, vol.1, Solar Energy Research Institute, (1980) pp.1-53.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来公知の材料を電極として使用した場合、白金などの貴金属はコストが課題であり、また、PEDOT/PSSなどの導電性高分子は、耐久性、腐食性に課題がある。そこで、本発明が解決しようとする課題は、熱化学電池に使用した際に、低コスト化、高出力化、高耐久性に寄与する導電性に優れた熱化学電池電極用導電性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、重合体(A)および炭素材料(B)を含む熱化学電池電極用組成物であって、重合体(A)が、(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位、ならびに活性水素基含有単量体、塩基性単量体および(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選択される1種以上の単量体単位を含む共重合体であり、重合体(A)中、(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位を40質量%以上100質量%未満含む熱化学電池電極用導電性組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、活性水素基含有単量体が、(メタ)アクリル酸および/またはヒドロキシエチル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位を含む上記熱化学電池電極用導電性組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、重合体(A)中、(メタ)アクリル酸およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位の合計量を1~25質量%含む上記熱化学電池電極用導電性組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、更に、無機金属塩、無機塩基および有機塩基からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む上記熱化学電池電極用導電性組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、重合体(A)の含有率が、炭素材料(B)の全量に対して5~100質量%である上記熱化学電池電極用導電性組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、導電性に優れた熱化学電池電極用導電性組成物を提供することができるようになった。これにより、低コスト、高出力、高耐久性を有する熱化学電池ができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。尚、本明細書では、「熱化学電池電極用導電性組成物」は「導電性組成物」と略記することがある。また、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロ」、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリロイルオキシ」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ「アクリルまたはメタクリル」、「アクリロまたはメタクリロ」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリレートまたはメタクリレート」及び「アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ」を表すものとする。
【0013】
<重合体(A)>
重合体(A)は、(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位と、活性水素基含有単量体、塩基性単量体、および(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選択される1種以上の単量体に由来する単量体単位とを含む共重合体であり、(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位を40質量%以上100質量%未満含有する。 重合体(A)は、(メタ)アクリロニトリルに由来するシアノ基と重合体主鎖が炭素材料(B)への吸着性を高め、炭素材料(B)の凝集を抑制し、導電性組成物中に安定に存在させることができる。
【0014】
<活性水素基含有単量体>
まず、活性水素基含有単量体について説明する。活性水素基含有単量体は、1分子に1つ以上の活性水素基を有していれば特に限定はない。本明細書でいう活性水素基としては、水酸基、カルボキシル基、1級アミノ基、2級アミノ基、メルカプト基等が挙げられる。
【0015】
水酸基含有単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼン、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートまたはこれら単量体のカプロラクトン付加物(付加モル数は1~5)等が挙げられる。
【0016】
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、および無水マレイン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸等の酸無水物基含有単量体の単官能アルコール付加体等が挙げられる。
【0017】
1級アミノ基含有単量体としては、例えば、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アリルアミン塩酸塩、二水素アリルアミンリン酸塩、2-イソプロペニルアニリン、3-ビニルアニリン、4-ビニルアニリン等が挙げられる。
【0018】
2級アミノ基含有単量体としては、例えば、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
メルカプト基含有単量体としては、例えば、アクリル酸2-(メルカプトアセトキシ)エチル、アリルメルカプタン等が挙げられる。
【0020】
上記の内、水酸基含有単量体またはカルボキシル基含有単量体が好ましい。具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび/または(メタ)アクリル酸が好ましく、ヒドロキシエチルアクリレートおよび/またはアクリル酸がより好ましい。
【0021】
重合体(A)を構成する単量体単位として(メタ)アクリル酸および/またはヒドロキシエチル(メタ)アクリレートに由来する単量体を含む場合、(メタ)アクリル酸およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位の合計量は、重合体(A)中、1~25質量%の範囲内が好ましく、10~25質量%の範囲内がより好ましい。
この範囲で含まれることで、炭素材料(B)との親和性を高め、塗工適性を向上させることができる。
【0022】
<塩基性単量体>
次に、塩基性単量体について説明する。塩基性単量体は、塩基性を有する単量体であるが、上記活性水素基含有単量体以外の単量体を指す。
【0023】
例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;
N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミドアクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類;
1-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾール等の複素環式芳香族アミン含有ビニル単量体類;
N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド類;
N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N-アルキル(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
【0024】
原料の入手のしやすさ、取り扱いやすさ、後述する分散媒との親和性の観点から、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートが好ましく、ジメチルアミノエチルアクリレートがより好ましい。
【0025】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル>
次に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルについて説明する。本明細書でいう(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、(メタ)アクリロイル基と一価の飽和脂肪族炭化水素基とが結合したエステルを指し、一価の飽和脂肪族炭化水素基上の水素原子が一部置換基によって置換されているものも含まれる。ここでいう一価の飽和脂肪族炭化水素基とは、アルキル基、シクロアルキル基等が挙げられる。ただし、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、上で述べた活性水素基含有単量体および塩基性単量体は除くものである。
例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の鎖状アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル等の分岐アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等のシクロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の芳香族基に置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル等のフルオロ基に置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル等の脂環式エポキシ基に置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシリルエーテル基に置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル基に置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル等の環化重合性単量体類;
等が挙げられる。
【0026】
上記の内、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリルが好ましく、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルがより好ましい。
【0027】
重合体(A)は、上記単量体以外のその他単量体を構成単位として含んでも良い。その他単量体としては、
スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類;
エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、およびイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
酢酸ビニル、およびピロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類;
テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、または3-メチルオキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環式(メタ)アクリレート類;等が挙げられる。
【0028】
重合体(A)は、水を分散媒とする場合、(メタ)アクリル酸単位を含有することが好ましく、NMP(N-メチルピロリドン)を分散媒とする場合、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体単位を含有することが好ましい。
【0029】
重合体(A)の製造方法は、特に限定はされず、例えば、溶解重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法、沈殿重合等のいずれの方法を用いてもよい。また、重合反応は、イオン重合、フリーラジカル重合、リビングラジカル重合のいずれでもよい。また、ランダム重合、ブロック重合いずれの方法でも合成できる。
【0030】
重合体(A)である共重合体中、(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位は、40質量%以上100質量%未満含有し、65質量%以上95質量%以下含有することがより好ましく、75質量%以上95質量%以下含有することがさらに好ましい。(メタ)アクリロニトリルに由来する単量体単位を上記範囲で含有することで炭素材料(B)への吸着性が向上する。
【0031】
また、重合体(A)の重量平均分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量で、3000以上500000以下の範囲が好ましく、4000以上200000以下の範囲がより好ましく、5000以上50000以下の範囲がさらに好ましい。重量平均分子量を上記範囲内とすることで、炭素材料(B)への吸着性が向上する。
【0032】
重合体(A)中のアクリロニトリルに由来する単位が、環状構造を有すると分散性、流動性、保存安定性がより向上する。共重合体をアルカリで処理するとアクリロニトリルに由来する単位が水素化ナフチリジン環等の環状構造へ変化する。
【0033】
<炭素材料(B)>
炭素材料(B)は、導電性向上に寄与するものである。そのため、炭素材料(B)の含有量を増やすことで導電性を向上させることができる。 炭素材料(B)としては、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラフェン(グラフェンナノプレートを含む)等が挙げられる。 使用する炭素材料(B)の種類は1種でもよいし、2種以上を組み合せて使用しても良い。炭素材料(B)の形状は、特に限定されず、不定形、凝集状、鱗片状、微結晶状、球状、フレーク状、ワイヤー状等を適宜用いることができる。
【0034】
ゼーベック係数と導電性との両立の観点で、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラフェン(グラフェンナノプレートを含む)からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、より好ましくはカーボンナノチューブであり、特に好ましくは単層カーボンナノチューブある。
【0035】
炭素材料としては、例えば、薄片状黒鉛として、日本黒鉛工業社製のCMX、UP-5、UP-10、UP-20、UP-35N、CSSP、CSPE、CSP、CP、CB-150、CB-100、ACP、ACP-1000、ACB-50、ACB-100、ACB-150、SP-10、SP-20、J-SP、SP-270、HOP、GR-60、LEP、F#1、F#2、F#3、中越黒鉛工業所社製のBF-3AK、FBF、BF-15AK、CBR、CPB-6S、CPB-3、96L、96L-3、K-3、SC-120、SC-60、HLP、CP-150、SB-1、伊藤黒鉛工業社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50、西村黒鉛社製の10099M、PB-99等が挙げられる。球状天然黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のCGC-20、CGC-50、CGB-20、CGB-50が挙げられる。土状黒鉛としては、日本黒鉛工業社製の青P、AP、AOP、P#1、中越黒鉛社製のAPR、K-5、AP-2000、AP-6、300F、150Fが挙げられる。人造黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のPAG-60、PAG-80、PAG-120、PAG-5、HAG-10W、HAG-150、中越黒鉛社製のG-4AK、G-6S、G-3G-150、G-30、G-80、G-50、SMF、EMF、SFF、SFF-80B、SS-100、BSP-15AK、BSP-100AK、WF-15C、SECカーボン社製のSGP-100、SGP-50、SGP-25、SGP-15、SGP-5、SGP-1、SGO-100、SGO-50、SGO-25、SGO-15、SGO-5、SGO-1、SGX-100、SGX-50、SGX-25、SGX-15、SGX-5、SGX-1が挙げられる。
【0036】
市販の導電性炭素繊維やカーボンナノチューブとしては、昭和電工社製のVGCF等の気相法炭素繊維、名城ナノカーボン社製のEC1.5,EC1.5-P、楠本化成社製のTUBALL、ゼオンナノテクノロジー社製のZEONANO等の単層カーボンナノチューブ、CNano社製のFloTube9000、FloTube7000、FloTube2000、Nanocyl社製のNC7000、Knano社製の100T、200P等が挙げられる。
【0037】
市販のカーボンブラックとしては、例えば、東海カーボン社製のトーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500、デグサ社製のプリンテックスL、コロンビヤン社製のRaven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、500
0ULTRA、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA、PUERBLACK100、115、205、三菱化学社製の#2350、#2400B、#2600B、#3050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B、キャボット社製のMONARCH1400、1300、900、VulcanXC-72R、BlackPearls2000、TIMCAL社製のEnsaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP-Li等のファーネスブラック)、ライオン社製のEC-300J、EC-600JD等のケッチェンブラック、電気化学工業社製のデンカブラック、デンカブラックHS-100、FX-35等のアセチレンブラックが挙げられる。これらは特に限定されることはない。
【0038】
熱化学電池用電極は、その他Liイオン電池と同様に、電解質イオンと電極との反応点が多いほど電池出力が向上する。すなわち、電極の比表面積が大きいものが好ましい。従って、炭素材料としては、BET比表面積が30m2/g以上が好ましく、更にはBET比表面積が100m2/g以上が好ましく、更にはBET比表面積が500m2/g以上が好ましく、更にはBET比表面積が800m2/g以上が好ましく、更にはBET比表面積が1000m2/g以上が好ましい。
【0039】
また、前記重合体(A)は、熱化学電池電極用導電性組成物中で炭素材料(B)の分散、および塗膜強度の向上に寄与する。重合体(A)の含有量を増やすことで分散性および塗膜強度を向上させることができる。重合体(A)は、炭素材料(B)の分散性も向上させることができるため、材料中の導電パスを阻害しにくいという特徴を有しているが、塗膜強度と導電性との両立の観点から、前記重合体(A)の含有量は、炭素材料(B)の全量に対して、上限が、400質量%以下が好ましく、200質量%以下がより好ましく、120%以下が更に好ましく、100質量%以下が特に好ましい。また、重合体(A)の効果を発揮するために、下限は、炭素材料(B)の全量に対して、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。
【0040】
本発明の熱化学電池電極用導電性組成物は、熱化学電池特性を維持する上で、ラジカルを発生する化合物を含有しないことが好ましく、重合体(A)と炭素材料(B)のみ、もしくは、重合体(A)と炭素材料(B)と無機金属塩、無機塩基および有機塩基から選ばれる少なくとも1種とからなることがより好ましいが、塗工、膜形成の観点から、必要に応じてその他成分を含んでも良い。
【0041】
本発明の熱化学電池電極用導電性組成物は、無機塩基、無機金属塩、または有機塩基を含有できる。これにより、熱化学電池電極用導電性組成物を構成する成分の経時安定性がより向上する。無機塩基および無機金属塩としては、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を有する化合物であることが好ましく、詳しくは、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属の、塩化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩、バナジウム酸塩、モリブデン酸塩、ニオブ酸塩、ならびにホウ酸塩等が挙げられる。また、これらの中でも容易にカチオンを供給できる面でアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物、水酸化物、炭酸塩が好ましい。
アルカリ金属の水酸化物は、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属の水酸化物は、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
アルカリ金属の炭酸塩は、例えば、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属の炭酸塩は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
これらの中でも水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウムがより好ましい。なお、本発明の無機塩基および無機金属塩が有する金属は、遷移金属であってもよい。
【0042】
有機塩基としては、炭素数1~40の1級、2級、3級アルキルアミンが挙げられる。
炭素数1~40の1級アルキルアミンとしては、プロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、2-アミノエタノール、3-アミノプロパノール、3-エトキシプロピルアミン、3-ラウリルオキシプロピルアミン等が挙げられる。
【0043】
炭素数1~40の2級アルキルアミンとしては、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、N-メチルヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジステアリルアミン、2-メチルアミノエタノール等が挙げられる。
【0044】
炭素数1~40の3級アルキルアミンとしては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルブチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルオクチルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、トリエタノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エタノール等が挙げられる。
【0045】
この内、炭素数1~30の1級、2級または3級アルキルアミンが好ましく、炭素数1~20の1級、2級または3級アルキルアミンが更に好ましい。
【0046】
有機塩基としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール等の塩基性窒素原子を含有する化合物類を用いても良い。
【0047】
無機塩基、および無機金属塩、有機塩基の配合量は、重合体(A)100質量部に対して、1~50質量部がより好ましい。適量配合することで分散性がより向上する。
【0048】
(分散媒)
本発明の熱化学電池電極用組成物は、分散媒を含んでも良い。分散媒は、前記重合体(A)と炭素材料(B)とを混合する際の媒体として使用され、インキもしくはペーストとして印刷、塗工する際の塗工性を向上することができる。使用できる分散媒としては、重合体(A)と炭素材料(B)とを溶解または良分散できるものが好ましく、有機溶剤や水を挙げることができる。分散媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いても良い。
【0049】
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-ブチレングリコール、イソボルニルシクロヘキサノール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリフルオロエタノール、m-クレゾール、およびチオジグリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、N-メチルピロリドン等から、必要に応じて適宜選択することができる。重合体(A)と炭素材料(B)の分散性や溶解性の観点から、N-メチルピロリドンが特に好ましい。
【0050】
(樹脂)
本発明の熱化学電池電極用導電性組成物は、成膜性や膜強度の調整等を目的として、導電性および熱で特性に影響しない範囲で、重合体(A)の他に、樹脂を含んでもよい。
樹脂は、熱化学電池電極用導電性組成物の各成分に相溶または混合分散できるものが好ましく、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ギルソナイト、ゼラチン、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂および塩素化ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0051】
これらの樹脂は1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、これらの樹脂の共重合体等であっても良い。
特に限定するものではないが、一実施形態において、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、アクリルアミド樹脂であることが好ましい。
【0052】
導電性の観点から、樹脂を含む場合、樹脂の含有量は、前記重合体(A)と炭素材料(B)との全質量を基準として、99質量%以下の範囲が好ましく、50質量%以下の範囲がより好ましく、20質量%以下の範囲がさらに好ましい。
【0053】
<分散機・混合機>
導電性組成物を得る際に用いることができる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS-5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルが、セラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、または、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
【0055】
<電極>
本発明の導電性組成物を用いて電極を製造する場合、導電性組成物を、使用用途に応じて紙、プラスチック等の基材の片面または両面上に、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、オフセット印刷、凸版印刷、インクジェット、キャスト法等の通常の印刷方式により印刷または自立膜を形成することができる。
【0056】
紙基材としては、コート紙、非コート紙、その他、合成紙、ポリエチレンコート紙、含浸紙、耐水加工紙、絶縁加工紙、伸縮加工紙等の各種加工紙が使用できる。また、プラスチック基材としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロハン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリスチレン、ビニルアルコール、エチレン- ビニルアルコール、ナイロン、ポリイミド、ポリカーボネート等のプラスチックからなる基材を使用することができる。また、金属基材としては、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔又はステンレス箔などの金属箔または合金箔が使用することができる。
【0057】
(電極の体積抵抗率)
本発明の導電性組成物を用いて製造された電極の導電率は、300S/cm以上であることが好ましい。体積抵抗率は、20S/cm以上であることで、熱化学電池用電極として好適に利用することができる。なお、導電率が高いほど、熱化学電池内での内部抵抗を減らすことができるため、材料コスト、生産性、熱化学電池としての性能を考慮すると、導電率が高いほど好ましい。
【実施例】
【0058】
以下、実験例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、例中、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ意味するものとする。また、「NMP」とは、N-メチルピロリドンを示す。
【0059】
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
重量平均分子量(Mw)は、RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。装置は、HLC-8320GPC(東ソー社製)を用い、分離カラムを3本直列に繋ぎ、充填剤には順に東ソー社製「TSK-GELSUPERAW-4000」、「AW-3000」及び「AW-2500」を用い、オーブン温度40℃、溶離液として30mMトリエチルアミン及び10mMLiBrのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を用い、流速0.6mL/分で測定した。測定用試料は、上記溶離液からなる分散媒に1%の濃度で調整し、20μL注入した。分子量は、ポリスチレン換算値である。
【0060】
<重合体(A)の製造>
(製造例1)
(重合体(A-1)の製造)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、アセトニトリル100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を70℃に加熱して、アクリロニトリル50部、アクリル酸25部、スチレン25部および2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(日油社製:V-65)5部、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール2部からなる混合物を3時間かけて反応容器内に滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、70℃で1時間反応させた後、V-65を0.5部添加し、さらに70℃で1時間反応を続けた。その後、不揮発分測定にて転化率が98%を超えたことを確認した。生成物を減圧濾過によって濾別し、アセトニトリル100部にて洗浄を行い、減圧乾燥によって溶媒を完全に除去して重合体(A-1)を得た。重合体(A-1)のMwは、15000であった。
【0061】
(製造例2~18)
(重合体(A-2)~(A-18)の製造)
単量体の種類と配合量を表1に示す通り変更し、製造例1と同様にして、それぞれ重合体(A-2)~(A-18)を製造した。各重合体のMwを表1に示す。なお、重合体(A-2)~(A-18)の合成は、連鎖移動剤の添加、重合開始剤量の調整、および反応条件等を適宜変更してMwを調整した。連鎖移動剤に3-メルカプト-1,2-プロパンジオールを用いた。表1中、特に断りのない限り、単量体の数値は「部」を表し、空欄は配合していないことを意味する。以下、表1中の略号を示す。
AA:アクリル酸
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
DMAEA:ジメチルアミノエチルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
LA:ラウリルアクリレート
【0062】
(製造例19)
(重合体(A-19)の製造)
製造例3で得られた重合体(A-3)50部を、198部の水中に添加し、ディスパーで撹拌してスラリー状にした。次いで、2部の1N水酸化ナトリウム水溶液を25℃で滴下し、ディスパーにて2時間撹拌した。IR測定(装置:FT/IR-410、日本分光社製)にてシアノ基由来のピーク強度が80%以下に減少したことを確認し、アクリロニトリルに由来する単量体単位の一部が、環状構造に変化したことを確認した。次いで、水で水洗、ろ過乾燥し、重合体(A-19)を得た。重合体(A-19)は、IRスペクトルでシアノ基(2230cm-1)の減少、及びUVスペクトルで環化に伴う300nmと380nmに2つの吸収ピークを確認した。重合体(A-19)のMwは14000であった。
【0063】
(製造例20)
(重合体(A-20)の製造)
重合体(A-3)を重合体(A-7)に変更した以外は、製造例19と同様に行い、水素化ナフチリジン環を有する重合体(A-20)を得た。なお、Mwは14000であった。
【0064】
【0065】
<導電性組成物および電極>
(実施例1)
重合体(A-1)0.1部、GNP(XGSciences社製グラフェンナノプレート「xGNP-M-5」)0.4部、NMP79.5部をそれぞれ秤量して混合した。更にビーズを加え、スキャンデックスで4時間振とう後、ろ過してビーズを取り除き、熱化学電池電極用導電性組成物の分散液1を得た。得られた分散液1をテフロン(登録商標)容器に注ぎ入れ、140℃3時間で乾燥させ、導電膜を得た。この際、乾燥、硬化時の膜厚が60μmになるように導電性組成物の量を調整した。得られた導電膜をφ16mmの円板状に打ち抜き電極とした。
【0066】
<コイン型電池の組み立て>
アルゴン雰囲気で満たされたグローブボックス中でSUS316製のケースを用い、上記で得られた電極2枚の間にポリプロピレン製のセパレータを介し、さらに電解液として、0.5M K3[Fe(CN)6]/ K4[Fe(CN)6]・3H2Oの水溶液を注入してCR2032型のコイン型電池を作製した。
【0067】
(実施例2~37)
材料の種類および配合量を表2に示す内容にそれぞれ変更した以外は、実施例1の製造方法と同様にして、各々の電極、及びコイン型電池をそれぞれ得た。
【0068】
(比較例1)
PEDOT/PSS溶液 オルガコンS315(日本アグファケミカルズ社製)をテフロン(登録商標)容器に注ぎ入れ、80℃1時間乾燥し、更に150℃3時間で乾燥させ、導電膜を得た。この際、乾燥後の膜厚が60μmになるように導電組成物の量を調整した。得られた導電膜をφ16mmの円板状に打ち抜き電極とした。更に、実施例1と同様にして、コイン型電池を作製した。
【0069】
以上の方法により、得られた電極、コイン型電池において以下の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0070】
(導電率)
得られた電極を、JIS-K7194に準じて、ロレスタGX MCP-T700(三菱化学アナリテック社製)を用いて四探針法で導電率を測定した。比較例1の導電率を1としたときの相対値として表2に示す。
【0071】
<電極の耐久性>
耐湿熱試験前の体積抵抗率に対する耐湿熱試験後の体積抵抗率の上昇率(変化率)で評価した。以下に評価方法を示す。作製した電極を小型環境試験器(エスペック株式会社:型番SH-661)に投入し、温度60℃、相対湿度90%で5000時間保管して耐湿熱試験を行った後、上記と同様に体積抵抗率の測定を行った。
◎:体積抵抗率の上昇率が10%未満(極めて良好)
〇:体積抵抗率の上昇率が10%以上20%未満(良好)
△:体積抵抗率の上昇率が20%以上30%未満(使用範囲内)
×:体積抵抗率の上昇率が30%以上(極めて不良)
【0072】
<電池評価>
上記コイン型電池を用いて、電池出力測定を実施した。室温25℃の屋内で、65℃に加熱したホットプレート上にコイン電池を置き、コイン電池の上下で40℃の温度差をつけた。次に、陽極側、陰極側にソースメータをつなぐことで電圧値、電流値を測定し、出力を求めた。
◎◎:電池出力が15μW以上(極めて良好)
◎:電池出力が10μW以上15μW未満(良好)
〇:電池出力が5μW以上10μW未満(使用範囲内)
△:電池出力が5μW未満(不良)
【0073】
【0074】
表2に記載した材料を以下に示す。
炭素材料(B)
・GNP1(XGSciences社製グラフェンナノプレートレット「xGNP-R-7」)
・GNP2(XGSciences社製グラフェンナノプレートレット「xGNP-C-300」)
・CB(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製 ケッチェンブラック「EC-600JD」)
・黒鉛(富士黒鉛工業株式会社製 球状黒鉛「WF-30F」)
・MWCNT(nanocyl社製多層カーボンナノチューブ「NC7000」)
・SWCNT1(ゼオンナノテクノロジー株式会社製単層カーボンナノチューブ「ZEONANOSG101」)
・SWCNT2(OCSiAl社製単層カーボンナノチューブ「TUBALL」)
【0075】
実施例1~37は、電極の導電率が高いため、熱化学電池としての高い出力を確認できた。一方で、比較例1は導電率が低いため、熱化学電池としての出力が低くなった。また、実施例1~37は電極の耐久性が優れているが、比較例1は、耐久性が低く、熱化学電池用電極としての実用性は悪い。