(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】移動ロボット
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240820BHJP
【FI】
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2020087547
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】岡田 知大
(72)【発明者】
【氏名】樫 禎介
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-129058(JP,A)
【文献】特開2017-107563(JP,A)
【文献】特開2007-122272(JP,A)
【文献】特開2017-097538(JP,A)
【文献】特開2016-129923(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0206400(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人搬送車と、
前記無人搬送車に搭載されたロボット基部と、
上面視において、前記無人搬送車の外縁で規定される前記無人搬送車の内側の範囲内で前記ロボット基部に配置され、前記無人搬送車の進行方向前方の高さ方向における規定範囲内に存在する検出物を検出する検出センサと、を備え、
前記検出センサは、前記ロボット基部の左右の何れか側面に位置するとともに、前記ロボット基部の正面視において前記ロボット基部の前面よりも前記ロボット基部の左右方向の外側に向かって突出
し、
前記検出センサは、前記検出センサから前記無人搬送車の進行方向前方の床面までの距離を検出する、移動ロボット。
【請求項2】
前記検出センサは、上面視において前記無人搬送車の進行方向と直交する方向の前記ロボット基部の両側に1つずつ配置されている、請求項1に記載の移動ロボット。
【請求項3】
前記検出センサの検出方向は、前記無人搬送車の進行方向から前記無人搬送車の外側に傾いている、請求項2に記載の移動ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な分野においてロボットが使用されており、特に近年では、自律移動型ロボットなどと呼ばれるロボットが知られている。自律移動型ロボットは、サーバなどを利用して取得した情報と、リアルタイムでモニタして取得した情報とに基づいて、自律的に移動するロボットである。自律移動型ロボットは、人間によるオペレーションを必要とせずに、所定の場所まで自律的に移動し、そこで作業を行うことができる。
【0003】
このように自律走行や作業を担うロボットの多くには、走行や作業を円滑に行うべく路面上または周辺にある検出物を検出するセンサが配置されている。例えば、特許文献1には、路面上を移動する移動装置であって、前記路面上または周辺にある検出物を検出する検出方向を前記移動装置の進行方向または前記路面に対する方向となる下方向のいずれかの方向になるように変更できる検出部と、前記検出方向を前記下方向にして前記検出物を検出した前記出物の位置および方向を含む周辺および路面に係るデータを記憶する記憶部と、前記検出方向を前記進行方向にして前記検出物を検出した検出結果と、前記周辺および路面に係るデータとに基づいて、前記移動装置が移動するルートを決定する決定部と、を含む移動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術では、高さ方向にある検出物を検出する検出部は、移動装置から水平方向に飛び出して配置されている。そのため、移動装置が旋回した時に、飛び出した検出部が周囲の物に衝突するという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、移動ロボットが旋回した時に、検出センサが周囲の物に衝突するのを回避できる移動ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る移動ロボットは、無人搬送車と、前記無人搬送車に搭載されたロボット基部と、上面視において、前記無人搬送車の外縁で規定される前記無人搬送車の内側の範囲内で前記ロボット基部に配置され、前記無人搬送車の進行方向前方の高さ方向における規定範囲内に存在する検出物を検出する検出センサと、を備える。
【0008】
前記構成によれば、ロボット基部に配置された検出センサは、無人搬送車の外縁の外側に飛び出していない。したがって、無人搬送車の旋回中に、移動ロボットの周囲の物に検出センサが衝突するのを回避できる。
【0009】
一実施形態において、前記検出センサは、上面視において前記無人搬送車の進行方向と直交する方向の前記ロボット基部の両側に1つずつ配置されている。
【0010】
前記構成によれば、高さ方向の検出センサが進行方向と直交する方向のロボット基部の両側に1つずつ配置されているため、移動ロボットが通行する経路において両側の高さ方向における規定範囲内に存在する検出物を検出できる。したがって、高さ方向の検出センサがロボット基部に1つ配置されている場合と比較して、移動ロボットの進行方向前方にある検出物をより効果的に検出することができる。
【0011】
一実施形態において、前記検出センサの検出方向は、前記無人搬送車の進行方向から前記無人搬送車の外側に傾いている。
【0012】
前記構成によれば、検出センサの検出方向を、進行方向から無人搬送車の外側に傾けることで、移動ロボットが通行する経路よりも外側の範囲の高さ方向における規定範囲内に存在する検出物を検出できる。そのため、移動ロボットは進行方向前方にある検出物を広範囲に検出することができる。
【0013】
一実施形態において、前記検出センサは、前記検出センサから前記無人搬送車の進行方向前方の床面までの距離を検出する。
【0014】
前記構成によれば、検出センサは、検出センサから進行方向前方の床面までの距離を検出することができる。そのため、検出センサが、検出センサから床面までの距離の変化を検出することによって、移動ロボットは進行方向前方における床面の段差を検出することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、移動ロボットが旋回した時に、検出センサが周囲の物に衝突するのを回避できる移動ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る移動ロボットの斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る移動ロボットの正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る移動ロボットの上面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る移動ロボットの検出センサの検出範囲を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。
【0018】
§1 適用例
まず、
図1を用いて、本発明が適用される場面の一例について説明する。本実施形態に係る移動ロボットは、
図1に示す移動ロボット100であってもよい。
【0019】
図1に示すように、移動ロボット100は、無人搬送車1およびロボット基部2を備える。ロボット基部2には、進行方向前方の高さ方向における規定範囲内に存在する検出物を検出する検出センサ3が配置されている。本実施形態の移動ロボット100は、無人搬送車1によって自律的に走行する。
【0020】
自律的に走行する場合、周囲の状況をセンサなどによって検出し、移動可能な経路を確認してから走行する必要がある。しかしながら、従前において、高さ方向のセンサは、上面視において無人搬送車1の外縁の外側に飛び出して配置され、周囲の物に衝突する可能性がある。本発明では、無人搬送車1の外縁で規定される無人搬送車1の内側の範囲内に検出センサ3が配置されているため、移動ロボット100が旋回した時に、検出センサ3が周囲の物に衝突するのを回避することができる。
【0021】
§2 構成例
図1~
図3に基づいて、本発明の実施形態に係る移動ロボット100の構成について詳細に説明する。
図1は、移動ロボット100の外観構成を示す斜視図である。
図2は、移動ロボット100の外観構成を示す正面図である。
図3は、移動ロボット100の外観構成を示す上面図である。
【0022】
(移動ロボット100の構成)
図1に示すように、移動ロボット100は、無人搬送車1と、ロボット基部2と、検出センサ3と、を備えている。ロボット基部2は、上面視において無人搬送車1の外縁31(
図3に記載)で規定される無人搬送車1の内側の範囲内に収まるよう設計されている。
【0023】
無人搬送車1と、ロボット基部2とは、互いに連結され、無人搬送車1の移動に応じて、ロボット基部2が移動する。無人搬送車1と、ロボット基部2とは、既知のいかなる連結構造を用いて連結されていてもよい。
【0024】
無人搬送車1は、左右の車輪11を備える。無人搬送車1は、左右の車輪11が回転することにより移動し、また、左右の車輪11の回転数および回転方向を制御することにより方向転換する。
【0025】
ロボット基部2には、進行方向前方の高さ方向における規定範囲内に存在する検出物を検出する検出センサ3が配置されている。また、ロボット基部2は移動ロボット100を制御する制御部、所定の作業を行う作業部などの、移動ロボットにおいて使用可能な従来周知の部材を備えていてもよい。制御部としては、例えば左右の車輪11を制御する制御部、外部と通信する通信部などが挙げられる。作業部としては、例えばマニピュレータまたは荷台などが挙げられる。マニピュレータは、作業をおこなう実動部分であり、従来周知のマニピュレータから構成してもよい。
【0026】
また、ロボット基部2は高さ方向の検出センサ3以外に、移動ロボット100の周囲環境に関する情報を取得する種々のセンサを備えていてもよい。例えば、水平方向に検出範囲を有するレーザスキャナなどが挙げられる。
【0027】
(検出センサ3の構成)
検出センサ3は、移動ロボット100の高さ方向の周囲環境に関する情報を取得するセンサである。検出センサ3の構成は、周知の構成を使用することができる。例えば、レーザー照射によって、情報を取得するセンサが挙げられる。本実施形態において搭載されている検出センサ3は、移動ロボット100の進行方向前方において、高さ方向における所定の検出範囲の周囲環境の情報を取得することができる。
【0028】
図3に示すように、検出センサ3は、上面視において無人搬送車1の外縁31で規定される無人搬送車1の内側の範囲内でロボット基部2に配置されている。言い換えれば、検出センサ3は無人搬送車1のフットプリント内に収まって配置されている。ここで、フットプリントとは、上面視での無人搬送車1の投影領域である。実際に、
図3で示すように、検出センサ3は無人搬送車1の外縁31の外側に位置しない。移動ロボット100は、無人搬送車1の最大幅を記憶し、旋回半径を算出している。移動ロボット100は、旋回半径をもとに無人搬送車1が旋回可能な経路を通行する。したがって、ロボット基部2に配置された検出センサ3は無人搬送車1の最大幅内に収まっているため、無人搬送車1が旋回した時に、検出センサ3が周囲の物に衝突するのを回避できる。
【0029】
図3の符号301に示すように、本実施形態において検出センサ3は、上面視において進行方向と直交する方向のロボット基部2の両側に1つずつ配置されている。このように高さ方向の検出センサ3が配置されていることで、移動ロボット100が通行する経路において両側の高さ方向における規定範囲内に存在する検出物を検出できる。したがって、検出センサ3がロボット基部2に1つ配置されている場合と比較して、移動ロボット100の進行方向前方にある検出物をより効果的に検出し、周囲の物への衝突を回避できる。なお、検出センサ3は、ロボット基部2に1つ配置されていてもよく、2つ以上配置されていてもよい。
【0030】
図3の符号301および302に示すように、検出センサ3の検出方向は、無人搬送車1の進行方向前方であればよい。ここで、検出方向とは上面視における検出センサ3が物体を検出する方向である。具体的には、
図3の符号301で示すように、検出センサ3の検出方向32は進行方向でもよく、
図3の符号302で示すように、検出センサ3の検出方向33は進行方向から無人搬送車1の外側に傾いていてもよい。
【0031】
図3の符号302で示すように、検出センサ3の検出方向33を進行方向から無人搬送車1の外側に傾けた場合、移動ロボット100が通行する経路の外側の範囲において、高さ方向における規定範囲内に存在する検出物を検出できる。そのため、移動ロボット100は、広範囲の進行方向前方の検出物を検出することができ、周囲の物への衝突を回避できる。
【0032】
§3 動作例
移動ロボット100が移動する際には、検出センサ3によって進行方向前方の高さ方向における規定範囲内に存在する検出物を検出し、該検出物への衝突を回避しながら移動する。このとき、検出センサ3は上面視において、無人搬送車1の外縁31で規定される無人搬送車1の内側の範囲内に収まっているため、移動ロボット100が旋回した時に、検出センサ3が周囲の物に衝突するのを回避できる。
【0033】
図4は、本実施形態の移動ロボット100の検出センサ3の検出範囲を模式的に示した図である。
図4の符号401および402に示すように、検出センサ3は、検出センサ3の位置を中心として、進行方向前方の高さ方向を扇状に検出する検出範囲34および36を有する。
【0034】
本実施形態において、検出センサ3は、その検出範囲に検出物が存在する場合、検出物を検出することによって検出センサ3から検出物までの距離を計測する。すなわち、
図4の符号401に示す場合であれば、検出センサ3から床面41までの距離35を計測することで、進行方向前方に段差がなく、床面41は平面であることを検出できる。
【0035】
一方、
図4の符号402に示す場合であれば、検出センサ3から平面である床面41までの距離35と比較して、検出センサ3から床面42までの距離37が長いことが検出できる。すなわち、床面42は進行方向前方に下方に落ち込んだ段差があることを検出できる。
【0036】
このように、検出センサ3は進行方向前方の床面までの距離を検出することで、移動ロボット100は進行方向前方における段差を検出することができる。
【0037】
(本実施形態の効果)
本実施形態において、移動ロボット100は、進行方向前方の高さ方向における規定範囲内に存在する検出物を検出できる検出センサ3を有している。検出センサ3は、上面視において無人搬送車1の外縁31で規定される無人搬送車1の内側の範囲内でロボット基部2に配置される。したがって、移動ロボット100が旋回した時に、検出センサ3が周囲の物に衝突するのを回避できる。
【0038】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
100 移動ロボット
1 無人搬送車
2 ロボット基部
3 検出センサ
31 外縁
32・33 検出方向
35・37 距離
41・42 床面