(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】医療用チューブのオス側コネクタユニット
(51)【国際特許分類】
A61M 39/10 20060101AFI20240820BHJP
A61J 15/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
A61M39/10 100
A61M39/10 120
A61J15/00
(21)【出願番号】P 2020090668
(22)【出願日】2020-05-25
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川邉 美浪
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/087880(WO,A1)
【文献】特開2013-090914(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0033334(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/10
A61J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メスルアーを有するメスコネクタの前記メスルアーに内挿されるオスルアーを先端側に有するオスコネクタと、
前記オスコネクタが内挿可能であると共に前記メスコネクタに螺合可能な螺合部を先端側に有するカプラと、を備えるオス側コネクタユニットであって、
前記オスコネクタは、基端側外面に径方向外側に突出するコネクタ側突部を有し、
前記カプラは、基端側内面に径方向内側に突出するカプラ側突部を有し、
前記コネクタ側突部及び前記カプラ側突部は、前記オスコネクタの先端側の軸心と前記カプラの先端側の軸心とが一致する場合に係合するよう形成されており、
前記メスルアーに前記オスルアーが内挿した接続状態であって前記オスコネクタの先端側の軸心と前記カプラの先端側の軸心とが一致する場合は、前記コネクタ側突部及び前記カプラ側突部が係合して、前記カプラの前記オスコネクタからの分離が規制され、
前記メスルアーと前記オスルアーとが分離した分離状態であって前記オスコネクタの先端側の軸心と前記カプラの先端側の軸心とが一致しない場合は、前記コネクタ側突部及び前記カプラ側突部が非係合となり、前記カプラが前記オスコネクタから分離可能となる、
医療用チューブに用いられるオス側コネクタユニット。
【請求項2】
前記オスコネクタの先端側の軸心と前記カプラの先端側の軸心とが一致して共通軸心を形成する場合に、前記カプラ側突部の内周面の軸心または前記コネクタ側突部の外周面の軸心は、前記共通軸心に対して偏心することにより、前記コネクタ側突部及び前記カプラ側突部が係合する、
請求項1に記載の医療用チューブに用いられるオス側コネクタユニット。
【請求項3】
前記コネクタ側突部を軸心方向に沿って見たときの外周輪郭形状と、前記カプラ側突部を軸心方向に沿ってみたときの内周輪郭形状とは同じである、
請求項1または2に記載の医療用チューブに用いられるオス側コネクタユニット。
【請求項4】
前記オスコネクタは、前記コネクタ側突部を挟んで前記オスルアーの反対側に設けられた把持部を有し、前記把持部の外周面には一対の把持面が形成されている、
請求項1~3の何れかに記載の医療用チューブに用いられるオス側コネクタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用として用いられるチューブの端部に取り付けられるオス側コネクタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の腸が機能しているものの、嚥下障害などで栄養を口から摂取できない場合に、経腸栄養療法が用いられる。経腸栄養療法では、患者の鼻から胃又は空腸へ入れた経鼻チューブを通じて、あるいは、胃ろう又は腸ろうに通したPEGカテーテルを通じて、体内に栄養が供給される。このとき、経鼻チューブやPEGカテーテル(以下、これらをまとめて「経腸栄養チューブ」と称する)の体外側の端部に、延長チューブを接続したり栄養剤の入ったシリンジ又はバッグ等を接続したりするため、コネクタが用いられている(特許文献1)。
【0003】
この特許文献1は、メスコネクタに接続するためのオスコネクタとして、メスコネクタに挿入されるオスルアーと、これらのオスルアー及びメスコネクタの双方に螺合するロック部とを備える構成を開示している。また、使用期間に適宜オスコネクタを洗浄できるよう、ロック部はオスルアーに対して着脱可能になっており、かつ、オスルアーから意図せずロック部が離脱することを防止する機構(回転防止機構)も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1が開示する回転防止機構は、オスルアー側の凹部とロック部側の凸部とで構成されており、オスルアーとロック部とを所定位置まで螺合させると、これら凹部と凸部とが互いに係合することでオスルアーとロック部との相対回転が防止される。つまり、この回転防止機構は、所定の螺合状態からオスルアーとロック部とを相対回転させて分離する場合に、凹部と凸部との係合を解除するのに要する分だけ初動の回転トルクが大きくなるように形状設計されたものである。
【0006】
しかしながら、このような機構がその機能を適切に発揮できるか否かは、凹部及び凸部の寸法精度に依存する。そして、各製品の個体差によっては、係合解除のための回転トルクが大きくなり過ぎて操作性が悪化したり、逆に小さくなり過ぎて所望の回転防止機能を発揮できなかったりする可能性がある。また、オスコネクタとメスコネクタとを接続するとき、オスルアーの凹部とロック部の凸部とが係合するまで螺合させる必要があるが、この操作はユーザに依存する。そのため、ユーザが凹部と凸部とが係合するまで螺合しなかった場合には、オスルアーからロック部が離脱してしまう可能性が懸念される。
【0007】
そこで本発明は、医療用チューブを他のチューブ等と接続するオス側コネクタユニットであって、洗浄のために容易に分解可能であり、かつ、意図せぬ分離を防止することができるオス側コネクタユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る医療用チューブに用いられるオス側コネクタユニットは、メスルアーを有するメスコネクタの前記メスルアーに内挿されるオスルアーを先端側に有するオスコネクタと、前記オスコネクタが内挿可能であると共に前記メスコネクタに螺合可能な螺合部を先端側に有するカプラと、を備えるオス側コネクタユニットであって、前記オスコネクタは、基端側外面に径方向外側に突出するコネクタ側突部を有し、前記カプラは、基端側内面に径方向内側に突出するカプラ側突部を有し、前記コネクタ側突部及び前記カプラ側突部は、前記オスコネクタの先端側の軸心と前記カプラの先端側の軸心とが一致する場合に係合するよう形成されており、前記オスコネクタの先端側の軸心と前記カプラの先端側の軸心とが一致する場合は、前記コネクタ側突部及び前記カプラ側突部が係合して、前記カプラの前記オスコネクタからの分離が規制され、前記オスコネクタの先端側の軸心と前記カプラの先端側の軸心とが一致しない場合は、前記コネクタ側突部及び前記カプラ側突部が非係合となり、前記カプラが前記オスコネクタから分離可能となる。
【0009】
このような構成によれば、メスコネクタとオス側コネクタユニット(オスコネクタ及びカプラ)とから成るコネクタは、メスコネクタにオスコネクタが内挿し、かつ、メスコネクタにカプラが螺合することで接続される。このとき、オスコネクタの先端側の軸心とカプラの先端側の軸心とが一致して同軸状になる。従って、上記構成のオス側コネクタユニットによれば、前記2つの軸心が一致するときは(コネクタが接続状態のときは)、コネクタ側突部とカプラ側突部とが係合するので、カプラはオスコネクタから離脱不能となる。それゆえ、接続状態にあるコネクタでは、オスコネクタからカプラが予期せず離脱するのを防止できる。また、コネクタが非接続状態のときは、前記2つの軸心が一致しないようにオスコネクタ及びカプラの位置をずらすことで、コネクタ側突部とカプラ側突部とが非係合となる。従って、このときカプラはオスコネクタから離脱可能であり、容易に分解することができる。
【0010】
また、前記オスコネクタの先端側の軸心と前記カプラの先端側の軸心とが一致して共通軸心を形成する場合に、前記カプラ側突部の内周面の軸心または前記コネクタ側突部の外周面の軸心は、前記共通軸心に対して偏心することにより、前記コネクタ側突部及び前記カプラ側突部が係合していてもよい。
【0011】
これにより、コネクタが接続状態のときにカプラ側突部とコネクタ側突部とが互いに係合するので、オスコネクタからカプラが外れることがない。
【0012】
また、前記コネクタ側突部を軸心方向に沿って見たときの外周輪郭形状と、前記カプラ側突部を軸心方向に沿ってみたときの内周輪郭形状とは同じであってもよい。
【0013】
これにより、オスコネクタとカプラとを相対的に回転させて、コネクタ側突部及びカプラ側突部を互いの輪郭形状が一致するように操作することで、オスコネクタからカプラを取り外すことが可能となる。従って、オスコネクタとメスコネクタとが分離している状態であっても、オスコネクタからカプラが意図せず離脱してしまうのを防止できる。
【0014】
また、前記オスコネクタは、前記コネクタ側突部を挟んで前記オスルアーの反対側に設けられた把持部を有し、前記把持部の外周面には一対の把持面が形成されていてもよい。
【0015】
これにより、オスコネクタとメスコネクタとを分離するときに、把持部を持って操作することで、容易に分離することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る医療用チューブに用いられるオス側コネクタユニットによれば、洗浄等のために容易に分解可能であり、かつ、意図せぬ分離を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施の形態に係る経腸栄養チューブ用のオス側コネクタユニットを含むコネクタの正面図である。
【
図2】
図2は、コネクタ1の一部を切断して示す部分断面図である。
【
図3】
図3は、チューブ、オスコネクタ、及びカプラの斜視断面図である。
【
図5】
図5(a)はカプラの斜視断面図であり、
図5(b)はカプラの軸線A3に沿って遠位側から見た外観図である。
【
図6】
図6(a)は、カプラに対してオスコネクタを径方向に相対変位させた状態を示す断面図であり、
図6(b)は、オスコネクタからカプラを引き抜く途中の状態を示す断面図である。
【
図7】
図7(a)は、変形例1に係るカプラ側突部の構成を示す模式図であり、
図7(b)は、変形例2に係るカプラ側突部の構成を示す模式図である。
【
図8】
図8は、変形例3に係るオスコネクタ及びカプラを示す両者の分離状態の斜視図である。
【
図9】
図9は、変形例3に係るオスコネクタ及びカプラを示す両者の内挿状態の斜視断面図である。
【
図10】
図10は、変形例4に係るコネクタのオスコネクタ及びカプラの分解斜視図である。
【
図11】
図11は、変形例4に係るコネクタのオスコネクタ及びカプラが嵌合している状態での斜視断面図である。
【
図12】
図12は、変形例4に係るカプラの斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る医療用チューブに用いられるオス側コネクタユニットについて、医療用チューブとして経腸栄養チューブを例にし、当該チューブ用のオス側コネクタユニットについて図面を参照しつつ説明する。本発明は、医療用チューブに用いられるオス型コネクタユニットの全般に対して有意な効果を奏するが、特に経腸栄養チューブ用のオス側コネクタユニットに適用することで好適な効果を奏する。
【0019】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態に係る経腸栄養チューブ用のオス側コネクタユニット6を適用したコネクタ1の正面図であり、
図2は、コネクタ1の一部を切断して示す部分断面図である。
図1及び
図2に示すように、コネクタ1は、チューブ2に接続されるオスコネクタ3と、このオスコネクタ3に接続されるメスコネクタ4と、これらのオスコネクタ3及びメスコネクタ4に被さるカプラ5とを備えている。また、このうちオスコネクタ3及びカプラ5は、本発明に係るオス側コネクタユニット6を構成している。
【0020】
なお、
図1では、チューブ2、オスコネクタ3、及びカプラ5を実線で示し、メスコネクタ4は輪郭のみを二点鎖線で示している。
図2では、メスコネクタ4は外観を示し、チューブ2、オスコネクタ3、及びカプラ5は断面を示している。また
図3に、チューブ2、オスコネクタ3、及びカプラ5の斜視断面図を示す。
【0021】
チューブ2は、経鼻チューブ、あるいは、胃ろうを通じて体内から体外に延びるカテーテル等であり、シリコン等で構成されている。チューブ2の体内側の端部である遠位端は、患者の胃、十二指腸、又は空腸に位置し、体外側の端部である近位端10には、オスコネクタ3の基端部が接続されている。なお、以下の説明では、コネクタ1を通じた栄養剤の通流方向の下流側を「遠位側」と称し、上流側を「近位側」と称する。
【0022】
[オスコネクタ]
図4は、オスコネクタ3の外観斜視図である。オスコネクタ3はおよそ筒状を成し、自身の軸心A1(例えば、オスルアー23の内部通路25の軸心)に沿って位置するチューブ接続部20、把持部21、コネクタ側突部22、及びオスルアー23を有している。即ち、オスコネクタ3は、チューブ2の近位端10が接続されるチューブ接続部20と、メスコネクタ4が接続される先端側の部分であるオスルアー23とを有している。また、把持部21及びコネクタ側突部22はチューブ接続部20とオスルアー23との間に位置し、かつ、オスルアー23と把持部21はコネクタ側突部22を挟んで位置している。
【0023】
オスコネクタ3は、軸心A1に沿って延びて遠位端(基端)及び近位端(先端)のそれぞれで開口する内部通路25を有している。内部通路25は、軸心A1に沿って遠位側から近位側へ並ぶ第1通路26、第2通路27、及び第3通路28を含んでいる。第1通路26はチューブ2が挿通される部分であり、チューブ接続部20の遠位端にて開口すると共に、チューブ接続部20の近位端の近傍まで延びている。第1通路26は、その全長にわたってほぼ一定の内径を有しているが、遠位端には断面形状が拡径されたテーパ部29が形成されている。これにより、チューブ2を第1通路26へ内挿しやすくなっている。
【0024】
第2通路27は、チューブ接続部20の近位側部分の内部に形成され、第1通路26よりも内径が小さくなっており、第1通路26との間に周回する段差が形成されている。従って、チューブ2は、その先端がこの段差に突き当たるまで第1通路26内に挿入できる。また、第2通路27は、遠位側から近位側へ向かうに従って徐々に縮径した通路となっている。第3通路28は、第2通路27の近位端での内径と実質的に同一である一定の内径を有し、オスコネクタ3の近位端(オスルアー23の近位端)にて開口している。
【0025】
図4に示すように、チューブ接続部20は円筒状の本体30を有している。本体30の外周面における近位端には、拡径方向へ突き出したフランジ31が全周にわたって形成されている。また、本体30の外周面には、軸心A1方向に沿って延びるリブ32が、周方向に複数(
図4の例では6つ)、互いに所定の間隔を空けて突設されている。このリブ32の近位端はフランジ31における遠位側の面に当接しており、リブ32の遠位端は本体30の遠位端の近傍に位置している。
【0026】
チューブ接続部20の近位端には、本体30よりも外径が小さい円筒部33を介して把持部21が接続されている。把持部21は、おおむね円筒状を成しており、その外周面には一対の把持面34が設けられている。この把持面34はほぼ矩形状の面を成している。より詳しく言えば、把持面34は、周方向の両端部分(
図4の上下両端部分)に比べて中央部分が窪んだ凹状の曲面になっている。従って、この一対の把持面34は、例えば親指と人差し指で把持しやすくなっている。なお、把持面34は上記のような曲面に限らず、例えば周囲に比べて中央が窪んだすり鉢状の曲面でもよいし、平坦な平面であってもよい。また、複数の凸を設けて当接される指への摩擦力を向上させることで把持面を形成してもよい。
【0027】
また、把持部21は、その外周面において上記一対の把持面34以外の部分に円弧面35を有している。円弧面35は、軸心A1に直交する断面が、軸心A1と同軸の円弧状を成しており、一対の把持面34に挟まれるようにして2か所に設けられている(
図4の上部と下部の2か所)。なお、把持部21の遠位端では、端面と円弧面35との境界である角部36が面取りされて丸められている。
【0028】
オスコネクタ3は、その基端側外面(特に、オスルアー23に対して基端側の外面)に、径方向外側に突出するコネクタ側突部22を有している。このコネクタ側突部22は、上述した把持部21の近位端に接続され、外方へ突出して形成されている。より詳しくは、コネクタ側突部22は、軸心A1と同軸を成し、かつ、軸心A1方向の寸法が小さい円筒状を成している。コネクタ側突部22は、その外径が把持部21の円弧面35の外径よりも大きい。従って、コネクタ側突部22は、軸心A1回りの全周にわたり、把持部21の周方向のいずれの部分よりも外方(拡径方向)へ突出して形成されている。更に言えば、コネクタ側突部22は、軸心A1回りの全周にわたり、オスコネクタ3の他の部分(把持部21の他、チューブ接続部20、及びオスルアー23を含む)よりも外方へ突出して形成されている。また、軸心A1に沿って見たとき、コネクタ側突部22の外周面37の輪郭形状(外周輪郭形状)は、円形状(例えば、真円形状)を成している。なお、コネクタ側突部22の近位端では、端面と外周面37との境界である角部38が面取りされて丸められている。
【0029】
コネクタ側突部22の近位端には、メスコネクタ4に嵌合するオスルアー23が接続されている。オスルアー23は軸心A1と同軸のおおむね円筒状を成し、遠位側の円筒部分39と、近位側のテーパ部分40とを有している。円筒部分39は、コネクタ側突部22よりも小径であって一定の外径を有している。テーパ部分40は、遠位端は円筒部分39と同一の外径を有し、近位側へ向かうに従って若干縮径した外形を有している。また、先端部23の近位端では、端面とテーパ部分40との境界である角部41がテーパ状に面取りされている。従って、オスコネクタ3をメスコネクタ4に嵌合するとき、オスルアー23をメスコネクタ4(より詳しくは、後記のメスルアー51)に内挿しやすくなっている。
【0030】
[メスコネクタ]
図2に示すように、メスコネクタ4はおよそ円筒状を成しており、遠位側のメスルアー51と近位側のチューブ接続部52とを有している。また、メスコネクタ4は、自身の軸心A2に沿って延びて遠位端及び近位端のそれぞれで開口する内部通路50を有している。メスルアー51は、内径及び外径がともに一定の円筒状であり、そのうち内径は、オスコネクタ3が有するオスルアー23の外径とほぼ同一又はそれより若干大きくなっている。チューブ接続部52は、内径及び外径が徐々に縮径する縮径部53と、内径及び外径が一定の円筒部54とを有している。縮径部53は、円筒部54に対して遠位側に位置し、メスルアー51に対して外面及び内面が共に滑らかに繋がっている。
【0031】
このようなメスコネクタ4が有するメスルアー51内に、オスコネクタ3が有するオスルアー23が内挿されることで、オスコネクタ3及びメスコネクタ4は嵌合状態となる。このとき、オスコネクタ3の内部通路25とメスコネクタ4の内部通路50とが連通すると共に、それぞれ軸心A1,A2が一致する。つまり、オスコネクタ3の近位端側(先端側)に位置するオスルアー23の軸心A1と、メスコネクタ4の遠位端側(先端側)に位置するメスルアー51の軸心A2とが一致する。また、
図2においてカプラ5を省いた状態を考えれば分かるように、オスコネクタ3とメスコネクタ4とが嵌合状態にあるとき、把持部21はメスコネクタ4の外部に露出している。
【0032】
メスコネクタ4が有するメスルアー51の外周面のうち遠位端付近には雄ネジ部55が突設されている。この雄ネジ部55は、後述するカプラ5の雌ネジ部(螺合部)72と螺合する。
【0033】
[カプラ]
図1及び
図2に示すように、カプラ5は、嵌合状態にあるオスコネクタ3及びメスコネクタ4に被さるようにしてこの嵌合状態を保持する部材であり、およそ円筒状を成している。カプラ5は、遠位側(基端側)の小径部61と、近位側(先端側)に位置して小径部61よりも外径が大きい把持部62とを有している。更にカプラ5は、遠位端及び近位端のそれぞれで開口する内部空間60を有している(
図2参照)。
【0034】
小径部61及び把持部62の外形は、それぞれ軸心A3(
図1参照)に対して同軸を成す円筒状を成している。この軸心A3は、例えば、カプラ5が有する雌ネジ部74の螺合中心と一致する軸心である。把持部62は、小径部61から近位側へ向かうに従って断面がテーパ状に拡径する部分と、一定の外径を成す円筒部分とを有している。また、把持部62の外周面には、軸心A3方向に沿って延びるリブ63が、周方向に複数(
図1の例では6つ)、互いに所定の間隔を空けて突設されている。
【0035】
次に、カプラ5の内部構造について説明する。
図5(a)はカプラ5の斜視断面図であり、
図5(b)はカプラ5を軸心A3に沿って遠位側から見た外観図である。カプラ5の内部空間60は、遠位側にあってオスコネクタ3に外嵌する第1外嵌部70と、近位側にあってメスコネクタ4に外嵌する第2外嵌部71とによって画定される。
【0036】
このうち近位側の第2外嵌部71は、およそ把持部62の内側に対応して位置し、その内周部には雌ネジ部72が突設して形成されている。この雌ネジ部72は、カプラ5がメスコネクタ4に外嵌するときに、メスルアー51に形成された雄ネジ部55と螺合する。また、上述したように、雌ネジ部72は、軸心A3と同軸に形成されている。従って、雌ネジ部72が雄ネジ部55と螺合すると、メスコネクタ4の軸心A2とカプラ5の軸心A3とは一致する(
図1参照)。
【0037】
遠位側の第1外嵌部70は、およそ小径部61の内側に対応して位置し、その内面(すなわち、カプラ5の基端側内面)には、全周のうち一部にカプラ側突部74が径方向内側へ突出して形成されている。更に、第1外嵌部70の内面には、上記カプラ側突部74の遠位側に導入部73が設けられ、カプラ側突部74の近位側に遊嵌部75が設けられている。
【0038】
遠位側の導入部73は、カプラ5にオスコネクタ3を内嵌させるときに、オスコネクタ3を内部空間60へ導く導入空間を画定している。従って、導入部73の内周面76は、オスコネクタ3のコネクタ側突部22の外径寸法に対して比較的余裕があるよう、コネクタ側突部22の外径よりも大きな内径を有している。また、導入部73の遠位端の角部77は面取りされて丸められており、オスコネクタ3を内挿しやすくなっている。
【0039】
カプラ側突部74は、軸心A3に沿って見たときの内面形状が円形状(例えば、真円形状)である。つまり、カプラ側突部74の内周面78の輪郭形状(内周輪郭形状)は、コネクタ側突部22の外周輪郭形状と同じになっている。また、カプラ側突部74の内径は、コネクタ側突部22の外径と実質的に同一(正確には、少し大きく)なっている。
【0040】
一方、
図5(a)に示すように、カプラ側突部74の内周面78の中心を通る軸心A4は上記軸心A3とは一致しておらず、軸心A3に対して径方向に所定寸法だけ偏心して設定されている。
図5(a)の構成の場合、軸心A4は軸心A3に対して下方に偏心している。更に、カプラ側突部74の内径は、導入部73の内径よりも小さい。従って、
図5(b)に示すように、軸心A3(又は軸心A4)に沿って見たとき、カプラ側突部74は導入部73内に位置すると共に、カプラ側突部74と導入部73とは互いの中心が偏心した状態(ズレた状態)で位置している。
【0041】
近位側の遊嵌部75は、カプラ側突部74の内周面78と面一を成す内周面82と、カプラ側突部74の内周面78よりも拡径方向に窪んだ凹面83と、を含む内面84を有している。このうち凹面83は、遊嵌部75の内面84において、軸心A3に対して軸心A4が偏心している方向とは反対側(
図5(a)では上側)に位置している。凹面83は、コネクタ側突部22の外周面37に形状及び寸法がほぼ整合する円弧面を成しており、その中心は、軸心A3と実質的に一致している。遊嵌部75の内部空間は、このような内周面82及び凹面83により画定されるため、オスコネクタ3のコネクタ側突部22の外周面37と遊嵌部75の内面84との間には、偏心方向に所定のクリアランス90が形成される(
図3参照)。
【0042】
その結果、カプラ側突部74は、軸心A3に沿って近位側から見たときに、遊嵌部75の内面84から内方(軸心A3に近づく方向)へ突出する突出部分80と、内方へ突出していない面一部分81とを有する。
図5(a)では、突出部分80は上部に位置し、面一部分81は下部に位置している。この突出部分80は、本実施の形態では、第1外嵌部70の内周の周方向において、全周のうちおよそ半分(中心角180度の領域)に形成されている。
【0043】
[コネクタの接続]
このようなコネクタ1の接続について説明する。コネクタ1の接続前は、オスコネクタ3とメスコネクタ4とが分離しており、かつ、
図3に示すようにオスコネクタ3にのみカプラ5が被さった状態となっている。このとき、オスコネクタ3は、コネクタ側突部22がカプラ5の第1外嵌部70の遊嵌部75内に位置しており、カプラ5に対してクリアランス90の分だけ径方向に変位(オフセット)できる。つまり、オスコネクタ3は、コネクタ側突部22の外周面37が遊嵌部75の凹面83に当接する位置と、外周面37が凹面83から離隔する位置との間で、径方向に変位可能となっている。
【0044】
また、この状態で、オスコネクタ3のオスルアー23の近位端は、カプラ5の近位端よりも更に近位側に突出している(
図1参照)。オスコネクタ3とメスコネクタ4とを嵌合させる場合、はじめに、この突出したオスルアー23にメスコネクタ4のメスルアー51を対向させて接近させ、オスルアー23をメスルアー51に内挿する。ここから更に両者を接近させると、メスコネクタ4の雄ネジ部55とカプラ5の雌ネジ部72とが当接するので、メスコネクタ4とカプラ5とを相対的に周回させることで、雄ネジ部55と雌ネジ部72とを螺合させる。
【0045】
メスコネクタ4とカプラ5とを螺合させるに従い、メスコネクタ4はカプラ5の内部に遠位側へ引き込まれる。これにより、オスコネクタ3はメスコネクタ4に嵌合した状態となり、かつ、この嵌合状態がカプラ5によって保持されて、コネクタ1は接続状態となる。なお、コネクタ1の接続手順は上記のものに限られない。本実施の形態に係るカプラ5は、オスコネクタ3が内部空間60を通過できる寸法及び形状を有している。従って、カプラ5を例えばチューブ2のところまで遠位側へ後退させてオスコネクタ3を露出させ、この状態でオスコネクタ3とメスコネクタ4とを嵌合させてから、カプラ5を戻してオスコネクタ3に外嵌させ、かつ、メスコネクタ4に螺合させるようにしてもよい。
【0046】
ここで、メスコネクタ4とカプラ5とを螺合すると、メスコネクタ4の軸心A2とカプラ5の軸心A3とが一致する。更に、オスコネクタ3とメスコネクタ4とが嵌合することで、両者の径方向位置が固定されるので、オスコネクタ3の軸心A1もメスコネクタ4の軸心A2と一致する。従って、コネクタ1の接続状態において、各軸心A1~A3は互いに一致する。
【0047】
一方、カプラ5が有するカプラ側突部74の軸心A4は、上述したように軸心A3に対して偏心している。すなわち、カプラ側突部74の軸心A4は、嵌合状態のオスコネクタ3及びメスコネクタ4にカプラ5が嵌合しているときのオスコネクタ3の軸心A1(このとき軸心A1は軸心A3と一致する)に対してずれている。このとき、オスコネクタ3が有するコネクタ側突部22の一部は、カプラ5の遊嵌部75の凹面83が形成するスペース85(
図5(a)参照)に入り込む。その結果、コネクタ側突部22のうちこのスペース85に入り込んだ部分の遠位側の端面が、カプラ側突部74の突出部分80の近位側の端面に係合(当接)する。
【0048】
このように、コネクタ1が接続状態にあるとき、第1コネクタ部材3とカプラ部材5とは、共に第2コネクタ部材4を介して係合することにより、径方向(偏心方向)への相対変位が規制される。また、コネクタ1が接続状態にあり、軸心A1(オスコネクタ3の先端側の軸心)及び軸心A3(カプラ5の先端側の軸心)が一致して共通軸心を形成するとき、カプラ側突部74の内周面の軸心A4はこの共通軸心に対して偏心する。このとき、上述したように、オスコネクタ3とカプラ5とは、コネクタ側突部22とカプラ側突部74とが係合する(端面同士で当接する)ことにより、軸心A1に沿った方向への相対変位が規制される。このように、コネクタ1が接続状態にあるとき、オスコネクタ3とカプラ5とは、径方向及び軸心A1方向の何れへの相対変位も規制されるため、カプラ5はオスコネクタ3から離脱不能となって分離が規制され、カプラ5が予期せず外れるのを防止できる。
【0049】
[カプラの取り外し]
次に、メスコネクタ4に対して分離状態にあるオスコネクタ3から、カプラ5を取り外すときの態様について、
図3に加えて
図6(a)及び
図6(b)も参照しつつ説明する。
【0050】
図3のオスコネクタ3は、メスコネクタ4から分離しており、かつ、カプラ5が外嵌している。このときオスコネクタ3は、既に説明したように、コネクタ側突部22がカプラ5の第1外嵌部70の遊嵌部75内に位置しており、カプラ5に対してクリアランス90の分だけ径方向に変位(オフセット)できる。なお、本実施の形態に係るコネクタ1は、
図3の状態において、オスコネクタ3とカプラ5とが、互いに周方向への変位が規制されず自由になっている。つまり、このコネクタ1は、いわゆるフリーロックカプラ式である。
【0051】
図6(a)は、
図3の状態から、カプラ5に対してオスコネクタ3を径方向(より詳しくは、軸心A3に対する軸心A4の偏心方向とは反対の方向)に相対変位させた状態を示す断面図である。このとき、コネクタ側突部22は、遊嵌部75の凹面83から離れてスペース85(
図5(a)も参照)から離脱し、凹面83とは反対側の内周面82に外周面37が当接している。このとき、オスコネクタ3の軸心A1とカプラ5の軸心A3とが不一致になる一方で、オスコネクタ3の軸心A1とカプラ側突部74の軸心A4とが一致する。そして、コネクタ側突部22とカプラ側突部74とが非係合となって両者の係合状態は解除される。従って、この
図6(a)の状態のとき、オスコネクタ3をカプラ5から抜くことが可能となる。
【0052】
図6(b)は、オスコネクタ3からカプラ5を引き抜く途中の状態を示す断面図である。より具体的には、
図6(a)の状態から、オスコネクタ3をカプラ5に対して軸心A1方向に沿って相対的に遠位側へ移動させた状態である。このとき、コネクタ側突部22の外周面37と、カプラ側突部74の内周面78とは、全周においてほぼ摺接している。そして、このままオスコネクタ3とカプラ5とを離隔する方向へ移動させると、両者を完全に分離することができる。
【0053】
ここで、本実施の形態に係るコネクタ1は、ユーザが操作しなければ、
図3に示す状態のオスコネクタ3とカプラ5とが容易には分離しない構成となっている。例えば、カプラ側突部74は、第1外嵌部70の内周のうち、周方向の半分の領域にわたる突出部分80を有している。これにより、コネクタ側突部22とカプラ側突部74とは互いに係合(干渉)しやすいため、ユーザの操作なしには容易に分離しない。
【0054】
また、カプラ側突部74の内径は、コネクタ側突部22の外径と実質的に同一(正確には、少し大きく)なっている。そのため、ユーザの操作がない状態で、コネクタ側突部22とカプラ側突部74との位置が偶然に一致する可能性は低く、容易に分離しないようになっている。
【0055】
一方で、コネクタ側突部22の外周輪郭形状とカプラ側突部74の内周輪郭形状は、いずれも円形状(ここでは、真円形状)で同じになっている。そのため、オスコネクタ3とカプラ5とを分離しようとするときには、互いの周方向の相対位置にかかわらず、抜き取ることができる。すなわち、オスコネクタ3の軸心A1と、カプラ側突部74の軸心A4とを一致させるだけで、互いの周方向の相対位置にかかわらず、分離することができる。従って、ユーザが分離を意図して操作した場合には、比較的容易に分離することができる。
【0056】
更に、
図5(a)に示すように、遊嵌部75は、上述したように、カプラ側突部74の内周面78と面一を成す内周面82と、カプラ側突部74の内周面78よりも拡径方向に窪んだ凹面83と、を含む内面84を有している。そして、この内周面82にコネクタ側突部22が当接するとき、コネクタ側突部22とカプラ側突部74とは係合が解除された状態となる。そして、その状態からオスコネクタ3とカプラ5とを分離方向へ操作すれば、コネクタ側突部22は遊嵌部75から脱して、遊嵌部75の内周面82からこれと面一を成すカプラ側突部74の内周面78へ導かれる。
【0057】
従って、ユーザは、オスコネクタ3とカプラ5とを互いに分離する方向に操作しつつ、コネクタ側突部22の外周面37を遊嵌部75の内面84に接するようにして、オスコネクタ3をカプラ5に対し軸心A3回りに公転させれば、コネクタ側突部22とカプラ側突部74との係合を解除し、容易に分離することができる。この分離操作を換言すれば、ユーザは、オスコネクタ3をカプラ5から引き抜くように付勢しつつ、コネクタ側突部22の外周面37と遊嵌部75の内面84との接触位置を内面84に沿ってなぞるようにその周方向にずらしていけばよい。このようにすれば、コネクタ側突部22を周方向に一周するまでの間に、その外周面37がカプラ5の内周面82と接する位置にくるので、そのとき上記付勢によってオスコネクタ3はカプラ5から引き抜かれる。
【0058】
(変形例1,2)
ところで、上述した例では、コネクタ側突部22の外周輪郭形状とカプラ側突部74の内周輪郭形状が同じ円形状であると共に、カプラ側突部74の内径がコネクタ側突部22の外径と実質的に同一である構成を示した。また、カプラ側突部74として、全周のうちおよそ半分に突出部分80を有する構成を示した。しかし、コネクタ側突部22及びカプラ側突部74の構成はこれに限られない。例えば、輪郭形状は円形状でなくてもよく、また、突出部分は全周の半分未満又は半分以上であってもよい。
【0059】
ただし、カプラ側突部の突出部分は、カプラ5の内面における設定範囲が広いほど、コネクタ側突部と係合(干渉)する可能性(確率)が高くなり、意図せぬ抜けを防止できる点、及び、コネクタの接続状態における締結強度の向上が図れる点、において好ましい。
【0060】
図7(a)は、変形例1に係るカプラ側突部の構成を示す模式図であり、
図7(b)は、変形例2に係るカプラ側突部の構成を示す模式図である。各図において左図にはカプラ側突部を示し、右図にはカプラ側突部とコネクタ側突部との相対位置関係を示している。なお、何れにおいても、コネクタ側突部は上記実施の形態において説明したコネクタ側突部22と同一の構成を例示している。
【0061】
図7(a)に示す構成では、遊嵌部の内面184が円形状を成しており、これに対してカプラ側突部174は偏心した内周面178を有する円形状を成している。そして、カプラ側突部174のうち内面184から内方へ突出した突出部分180は、突出していない面一部分181よりも広い、全周の大部分の範囲に設けられている。
【0062】
このような構成の場合、
図7(a)の右図に示すように、コネクタ側突部22がカプラ側突部174に係合しやすいため、ユーザの操作なしには容易に係合が解除されない。すなわち、
図7(a)の構成の場合、突出部分180が周方向の広い範囲に設けられているため、コネクタ側突部22が突出部分180に係合しやすい。従って、コネクタ側突部22とカプラ側突部174とを精度良く位置合わせしなければ、係合を解除できないため、不測の脱離を防止できる。
【0063】
一方、
図7(b)に示すものは、
図7(a)に例示した構成に比べれば、比較的容易に係合が解除される構成となっている。具体的に説明すると、
図7(b)に示す構成において、遊嵌部の内面284は、
図7(a)に示した内面184と同じであって同寸法の円形状を成している。一方、
図7(b)に示すカプラ側突部274は、突出部分280が、突出していない面一部分281よりも狭い、全周の一部分の範囲に設けられている。
【0064】
このような構成の場合、
図7(b)の右図に示すように、コネクタ側突部22がカプラ側突部274に係合する確率が
図7(a)の場合より低くなるため、ユーザによる比較的容易な操作によって係合が解除される。
【0065】
図7(a)及び
図7(b)で説明したように、カプラ側突部の突出部分の周方向における設定範囲が広いほど、不測の脱離を防止できる点で好ましい。また、前述したように、コネクタの接続状態における締結強度の向上を図れる点でも好ましい。一方、突出部分の周方向における設定範囲が広いほど、カプラをオスコネクタから取り外すときの作業性は低下する。従って、カプラ側突部の形状及び寸法は、不測の脱離防止、締結強度の向上、及び、取り外すときの作業性等を考慮し、適宜設定すればよい。
【0066】
(変形例3)
上述した実施の形態では、コネクタ側突部22は全周にわたって外方へ突出して形成され、カプラ側突部74は全周のうち一部分だけ内方へ突出して形成された構成を示した。しかしながら、コネクタ側突部22及びカプラ側突部74の突出態様はこれに限られない。
【0067】
図8は、変形例3に係るオスコネクタ303及びカプラ305を示す両者の分離状態の斜視図であり、
図9は、変形例3に係るオスコネクタ303及びカプラ305を示す両者の嵌合状態の斜視断面図である。なお、
図8及び
図9では、上記実施の形態で説明したものと同じ構成には対応する符号を表記して、その説明は省略する。
【0068】
図8及び
図9に示すように、変形例3に係るコネクタ301は、実施の形態で説明したのとほぼ同様のオスコネクタ303及びカプラ305を有している。ただし、オスコネクタ303は、コネクタ側突部322が軸心A1に対して偏心しており、実質的に周方向の一部分のみが把持部21あるいは先端部23の外周面から外方へ突出した構成となっている。これに対し、カプラ305が有するカプラ側突部374は、軸心A3の全周にわたって形成されており、その内周面378は、軸心A3に対して同軸を成している。
【0069】
また、
図9に示すように、カプラ305の遊嵌部375は、軸心A3に対して同軸を成して全周にわたって形成された一定の内径を有する内面384を有している。この内面384は、カプラ側突部374の内周面378よりも軸心A3に対して拡径方向に位置している。
【0070】
このように、変形例3に係るコネクタ301は、上記実施の形態に係るコネクタ1に比べて、コネクタ側突部及びカプラ側突部の突出態様が反対になっており、コネクタ側突部322が周方向において部分的に突出し、カプラ側突部374が全周にわたって突出している。このような構成であっても、上記実施の形態に係るコネクタ1と同様の作用効果を奏することができる。
【0071】
(変形例4)
実施の形態のオス側コネクタユニット6は、いわゆるフリーロックカプラ式のものを例示したが、本発明を適用できるオス側コネクタユニットの形式はこれに限られない。以下、変形例4に係るオス側コネクタユニットとして、固定ロックカプラ式のオス側コネクタユニット406を例示する。
【0072】
図10は、変形例4に係るオス側コネクタユニット406のオスコネクタ403及びカプラ405の分解斜視図である。
図11は、変形例4に係るオス側コネクタユニット406のオスコネクタ403及びカプラ405が嵌合している状態での斜視断面図である。
図12は、変形例4に係るカプラ405の斜視断面図である。なお、
図10~
図12では、上記実施の形態で説明したものと同じ構成には対応する符号を表記して、その説明は省略する。
【0073】
図10に示すように、このオスコネクタ403は、把持部421からコネクタ側突部422に至る側面部分に面一の平坦面442を有している。より具体的には、上記実施の形態のオスコネクタ3(
図4参照)に対して、把持部21からコネクタ側突部22に至る側面部分を、軸線A1に沿う平面により切り欠くようにして、平坦面442が形成されている。このような平坦面442は、軸線A1を挟む2か所に、互いに並行を成すように設けられている。以下、本変形例4では、軸線A1(又は軸線A3)に直交する方向のうち、2つの平坦面442が配設されている方向を第1方向といい、軸線A1及び第1方向の両方に直交する方向を第2方向という。
【0074】
これにより、把持部421及びコネクタ側突部422のそれぞれを、軸心A1に直交する面で切断したときの外周断面形状は、第1方向に並んで対を成す並行な線分と、第2方向に並んで対を成す円弧状の曲線と、で四方が囲まれた非真円形状の外周輪郭形状となっている。なお、コネクタ側突部422の第2方向の両端部は、把持部421よりも拡径方向に突出している。
【0075】
また、基端部420の近位端には、拡径方向に突き出したフランジ431が全周にわたって形成されている。このフランジ431は、拡径方向への突出寸法が実施の形態に係るフランジ31よりも大きく、軸線A1に沿ってみたとき、その外形はコネクタ側突部422よりも外側に位置している。
【0076】
一方、カプラ405は、実施の形態のカプラ5の第1外嵌部70とは異なる構成の第1外嵌部470を備えている。即ち、変形例4に係る第1外嵌部470は、
図12に示すようにカプラ側突部474と遊嵌部475とを有しているが、実施の形態に係る第1外嵌部70のような導入部73を有していない。
【0077】
カプラ405が有するカプラ側突部474は、軸線A3に沿ってみたときの内周輪郭形状が、オスコネクタ403のコネクタ側突部422の外形輪郭形状と整合している。具体的には、カプラ側突部474を軸心A3に直交する面で切断したときの内周断面形状は、第1方向に並んで対を成す並行な線分と、第2方向に並んで対を成す円弧状の曲線と、で四方が囲まれた非真円形状の内周輪郭形状となっている。つまり、カプラ側突部474は、一対の平面491と一対の曲面492とで構成された内周面478を有している。
【0078】
カプラ405が有する遊嵌部475の内面484は、内周面482及び凹面483を有している。このうち内周面482は、内面484の全周のうち一部分(
図10~
図12では下部)を占め、カプラ側突部474の内面(下側の曲面492)と同じ輪郭形状を有している。また、凹面483は、内面484の全周のうち内周面482以外の部分(
図10~
図12では上部)を占め、カプラ側突部474の内周輪郭形状よりも拡径方向へ窪んだ輪郭形状を有している。
【0079】
なお、カプラ側突部474の中心は、上記実施の形態と同様に偏心して設定されている。即ち、カプラ側突部474の中心は、嵌合状態のオスコネクタ403及びメスコネクタにカプラ405が外嵌しているときのオスコネクタ403の軸心A1に対してずらして設定されている。また、コネクタ側突部422及びカプラ側突部474は、オスコネクタ403の先端側の軸心A1とカプラ405の先端側の軸心A3とが一致する場合に互いに係合(当接)する一方、軸心A1及び軸心A3が一致しない場合に非係合となるように形成されている。なお、この変形例に係るオス側コネクタユニット406は、実施の形態で例示したメスコネクタ4と接続可能である。
【0080】
このような変形例4に係るオス側コネクタユニット406は、メスコネクタと接続状態にあるとき、オスコネクタ403及びカプラ405は
図11に示すような状態となる(メスコネクタの図示は省略する)。従って、コネクタ側突部422は、カプラ405の遊嵌部475に位置し、カプラ側突部474の近位端に係合(当接)して抜けることがない。なお、オスコネクタ403のフランジ431の近位側端面とコネクタ側突部422の遠位側端面との離隔寸法は、カプラ側突部474の軸心A3方向の寸法と実質的に同一である。従ってユーザは、オスコネクタ403をカプラ405に内挿するとき、フランジ431がカプラ405の遠位側の開口端面に当接することで、コネクタ側突部422が遊嵌部475に到達したと判断できる。
【0081】
一方、オスコネクタ403からメスコネクタが分離されると、
図11に示す状態において、オスコネクタ403とカプラ405とが第2方向に相対変位可能となる。ただし、本変形例4に係る構成の場合、上記の通り、オスコネクタ403の基端部を軸心A1に直交する面で切断したときの画面の断面形状が非真円形状であり、かつ、カプラ405の基端部を軸心A3に直交する面で切断したときの内面の断面形状も非真円形状である。そして、オスコネクタ403の把持部421の平坦面442と、カプラ405のカプラ側突部474の平面491とが対向して接している。そのため、オスコネクタ403とカプラ405とは周方向への相対変位が規制される。従って、このオス側コネクタユニット406は、オスコネクタ403及びカプラ405が一体的に回転する(供回りする)固定ロックカプラ式である。
【0082】
このオス側コネクタユニット406も、
図11の状態からオスコネクタ403をカプラ405に対して下方へ変位させると、コネクタ側突部422とカプラ側突部474とが非係合となって両者の係合状態は解除され、オスコネクタ403をカプラ405から抜くことが可能となる。
【0083】
以上に説明したとおり、本実施の形態に係るオス側コネクタユニット並びに各変形例に係るオス側コネクタユニットによれば、接続状態のときにオスコネクタからカプラが意図せず抜けるのを防止できると共に、オスコネクタに対してメスコネクタが分離している状態では、偏心方向に相対変位させることで、オスコネクタからカプラを容易に離脱して分解することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、経腸栄養療法に用いられるチューブのコネクタに限ったことではなく、医療用として用いられる各種チューブのコネクタ全般についても該当する。本発明は、医療用チューブに用いられるチューブの端部に取り付けられるオス側コネクタユニットに適用でき、特に、経腸栄養療法において用いられるチューブの端部に取り付けられるオス側コネクタユニットに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 コネクタ
3 オスコネクタ
4 メスコネクタ
5 カプラ
21 把持部
22 コネクタ側突部
34 把持面
74 カプラ側突部