(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】リトレッドタイヤの製造方法及びリトレッドタイヤ
(51)【国際特許分類】
B29D 30/58 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B29D30/58
(21)【出願番号】P 2020097360
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北谷 司
(72)【発明者】
【氏名】井坂 航
(72)【発明者】
【氏名】永原 直哉
(72)【発明者】
【氏名】吉永 尚生
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-023904(JP,U)
【文献】特表2014-504570(JP,A)
【文献】特表平08-506292(JP,A)
【文献】特開平08-224786(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103073735(CN,A)
【文献】特開2005-247954(JP,A)
【文献】特開2009-197100(JP,A)
【文献】特表2016-512181(JP,A)
【文献】特開昭53-014780(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0345726(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0157876(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0101582(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/54-30/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩耗したタイヤを台タイヤとしてリトレッドタイヤを製造する方法であって、
前記台タイヤを回転させながら、前記台タイヤの外周面に接着剤からなる接着層を形成する工程と、
前記台タイヤを回転させながら、前記接着層を介して前記台タイヤに補修トレッドを貼り付ける工程と
を含み、
前記台タイヤの回転軸を通る鉛直線が前記外周面と交差する上下2か所の交差位置のうち下側の交差位置が第一基準位置であり、前記第一基準位置から回転方向に90°回転した位置が第二基準位置であり、前記第一基準位置から回転方向に180°回転した位置が第三基準位置であり、前記第一基準位置から回転方向に270°回転した位置が第四基準位置であり、
前記接着層が形成される、前記台タイヤの外周面の状態が、前記摩耗したタイヤの外周面の状態と実質的に同じであ
り、
前記接着層が、軸方向及び周方向に並ぶ多数のエレメントからなり、
前記接着層の形成工程において、
前記接着剤を吐出するノズルを前記台タイヤの軸方向に断続的に動かし、前記台タイヤを前記台タイヤの周方向に断続的に動かすことで、前記台タイヤの外周面上に、前記接着剤からなる多数の前記エレメントが順に形成される、
リトレッドタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記ノズルが、前記第二基準位置と前記第三基準位置との間に配置さ
れ、
前記補修トレッドの貼り付け工程において、前記補修トレッドが、前記第二基準位置と前記第三基準位置との間で、前記接着層が前記外周面に形成された前記台タイヤに載せられ、ローラーで前記台タイヤに向けて押し付けられる、
請求項1に記載のリトレッドタイヤの製造方法。
【請求項3】
照射モジュールを用いて前記接着層を介して前記補修トレッドを貼り付けた台タイヤに電子線を照射する工程を含み、
前記接着剤が、前記電子線によって架橋する液状ゴムを含
み、
前記照射工程において、前記照射モジュールが、前記補修トレッドの外側から、前記台タイヤと前記補修トレッドとの間に形成された前記接着層に向けて、電子線を照射する、
請求項1
又は2に記載のリトレッドタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記照射モジュールが、前記第三基準位置と前記第四基準位置との間に配置される、
請求項3に記載のリトレッドタイヤの製造方法。
【請求項5】
計測モジュールを用いて前記台タイヤの外周面のプロファイルを計測する工程をさらに含み、
前記台タイヤの前記外周面上に前記接着層が構成される前に、前記外周面のプロファイルが計測され、
計測した前記外周面のプロファイルに基づいて、前記外周面上に形成する前記接着層の形状が特定され、前記形状を特定した前記接着層を構成する各エレメントの位置データ及び形状データにしたがって、前記ノズルを前記台タイヤの軸方向に断続的に動かし、前記台タイヤを前記台タイヤの周方向に断続的に動かすことで、前記台タイヤの外周面上に、前記接着剤からなる多数の前記エレメントが順に形成される、
請求項1から4のいずれか一項に記載のリトレッドタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記接着層の形成工程において、前記ノズルを備える付加製造装置を用いて前記接着層が形成され、
前記付加製造装置が、前記接着層を構成する各エレメントの前記位置データ及び前記形状データに基づいて、前記接着層を形成する、
請求項5に記載のリトレッドタイヤの製造方法。
【請求項7】
前記台タイヤの内圧が5kPa以上100kPa以下に設定され、
前記接着剤がゴム組成物からなり、相対湿度50%の環境下で、E型粘度計を用いて、温度60℃、振り角1%、周波数1Hzにて計測される、前記ゴム組成物の粘度が、0.1Pa・s以上1500Pa・s以下である、
請求項1から6のいずれか一項に記載のリトレッドタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リトレッドタイヤの製造方法及びリトレッドタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのトレッドは使用により摩耗する。タイヤの再資源化の観点から、トレッドを再生し、リトレッドタイヤ(更生タイヤとも称される。)として摩耗したタイヤを再利用することが検討されている(例えば、下記の特許文献1)。
【0003】
リトレッドタイヤは、例えば、加硫済みの補修トレッドを台タイヤに接合することで得られる。摩耗したタイヤの外周面は、でこぼこした状態にある。補修トレッドをしっかり接合するために、摩耗したタイヤの外周面に対して、例えば、バフ研磨が行われる。これにより、台タイヤの外周面の状態が整えられる。この外周面に、未加硫のクッションゴムを介して補修トレッドが貼り付けられる。蒸気釜にタイヤを投入する等して、タイヤは加熱される。クッションゴムが加硫され、補修トレッドが台タイヤに接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トラック、バス等に装着されるタイヤのトレッドは厚い。これに対して乗用車に装着されるタイヤのトレッドは薄い。通常、トレッドの内側にはバンド又はベルトが位置する。乗用車用タイヤにおいては、摩耗したタイヤの外周面にバフ研磨を行うと、バンドやベルトが損傷することが懸念される。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑みてなされたものであり、トレッドの厚さによらず摩耗したタイヤの再利用を促すことができる、リトレッドタイヤの製造方法及びリトレッドタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るリトレッドタイヤの製造方法は、摩耗したタイヤを台タイヤとしてリトレッドタイヤを製造する方法である。この製造方法は、
(1)前記台タイヤの外周面に接着剤からなる接着層を形成する工程、及び
(2)前記接着層を介して前記台タイヤに補修トレッドを貼り付ける工程
を含む。前記接着層が形成される、前記台タイヤの外周面の状態は、前記摩耗したタイヤの外周面の状態と実質的に同じである。
【0008】
好ましくは、このリトレッドタイヤの製造方法では、前記接着層の形成工程において、前記台タイヤの外周面上に、前記接着剤からなる多数の前記エレメントを順に形成することで、前記接着層は構成される。
【0009】
好ましくは、このリトレッドタイヤの製造方法では、前記接着層の形成工程、及び前記補修トレッドの貼り付け工程は、前記台タイヤを回転させながら行われる。
【0010】
好ましくは、このリトレッドタイヤの製造方法では、前記台タイヤの回転軸を通る鉛直線が前記外周面と交差する位置が第一基準位置であり、前記第一基準位置から回転方向に90°回転した位置が第二基準位置であり、前記第一基準位置から回転方向に180°回転した位置が第三基準位置であり、前記ノズルは、前記第二基準位置と前記第三基準位置との間に配置される。
【0011】
好ましくは、このリトレッドタイヤの製造方法では、前記補修トレッドの貼り付け工程において、前記補修トレッドは、前記第二基準位置と前記第三基準位置との間で前記台タイヤに載せられる。
【0012】
好ましくは、このリトレッドタイヤの製造方法では、前記補修トレッドの貼り付け工程において、前記補修トレッドは、ローラーで前記台タイヤに向けて押し付けられる。
【0013】
好ましくは、このリトレッドタイヤの製造方法は、前記接着層を介して前記補修トレッドを貼り付けた台タイヤに電子線を照射する工程を含む。前記接着剤は、前記電子線によって架橋する液状ゴムを含む。
【0014】
本発明の一態様に係るリトレッドタイヤは、台タイヤと、前記台タイヤの径方向外側に位置し、路面と接触する補修トレッドと、前記台タイヤと、前記補修トレッドとの間に位置する接着層とを備える。前記台タイヤと前記補修トレッドとは前記接着層を介して接合される。前記台タイヤの外周面の状態は摩耗したタイヤの外周面の状態と実質的に同じである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トレッドの厚さによらず摩耗したタイヤの再利用を促すことができる、リトレッドタイヤの製造方法及びリトレッドタイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るリトレッドタイヤの製造方法で用いられる、台タイヤを示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の台タイヤにトレッドを再生して得られる、リトレッドタイヤを示す断面図である。
【
図3】
図3は、リトレッドタイヤの製造装置を示す正面図である。
【
図4】
図4は、リトレッドタイヤの製造装置を示す側面図である。
【
図5】
図5は、リトレッドタイヤの製造方法のフローを示すフロー図である。
【
図6】
図6は、接着層の形成を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0018】
本発明の一実施形態に係るリトレッドタイヤの製造方法は、使用により摩耗したタイヤのトレッドを再生して、この摩耗したタイヤをリトレッドタイヤとして再利用するために用いられる。この製造方法は、摩耗したタイヤを台タイヤとしてリトレッドタイヤを製造する方法である。
【0019】
[台タイヤ]
図1は、この製造方法で用いられる台タイヤ2を示す。
図1において、左右方向はタイヤの軸方向であり、上下方向はタイヤの径方向である。この
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤの周方向である。
【0020】
タイヤは、トレッドにおいて路面と接触する。トレッドは架橋ゴムからなり、使用により摩耗していく。
図1において、二点鎖線で示される部分は使用により摩耗した部分を表す。この台タイヤ2は、トレッドが摩耗した結果、交換が必要になったタイヤである。この製造方法では、トレッドが摩耗しているものの使用可能な状態にあるタイヤが、台タイヤ2として用いられてもよい。
【0021】
図示されないが、タイヤはトレッドの径方向内側にバンド又はベルトを備える。バンド又はベルトはコードを含み、タイヤを補強する。この製造方法で用いられる台タイヤ2は摩耗したタイヤであるが、バンド又はベルトは露出していない。
【0022】
[リトレッドタイヤ]
図2は、
図1に示された台タイヤ2を用いて製造されたリトレッドタイヤ4を示す。
図2において、左右方向はタイヤの軸方向であり、上下方向はタイヤの径方向である。この
図2の紙面に対して垂直な方向は、タイヤの周方向である。
【0023】
リトレッドタイヤ4は、台タイヤ2と、補修トレッド6と、接着層8とを備える。補修トレッド6は、架橋ゴムからなる。この補修トレッド6は、台タイヤ2の径方向外側に位置し、路面と接触する。接着層8は、台タイヤ2と補修トレッド6との間に位置する。このリトレッドタイヤ4では、台タイヤ2と補修トレッド6とは、接着層8を介して接合される。この接着層8は、補修トレッド6を台タイヤ2に接着する役割を果たす。
【0024】
この製造方法では、接着層8は接着剤からなる。後述するが、この接着剤は、電子線の照射により架橋するゴム組成物からなる。電子線の照射により接着層8において架橋反応が生じ、台タイヤ2と補修トレッド6とが接合される。リトレッドタイヤ4において接着層8は、架橋ゴムからなる。
【0025】
詳述しないが、リトレッドタイヤ4も、通常のタイヤと同様、サイドウォール、ビード、カーカス等の多数の要素を備える。リトレッドタイヤ4においては、使用により摩耗した部分を補修トレッド6に置き換えている以外は、元のタイヤの構成と同等の構成を有する。元のタイヤとは、摩耗が生じる前のタイヤを意味する。
【0026】
リトレッドタイヤ4において補修トレッド6は、元のタイヤのトレッドの材質と同等の材質で構成されてもよく、元のタイヤのトレッドの材質とは異なる材質で構成されてもよい。このリトレッドタイヤ4では、元のタイヤのトレッドのトレッドパターンと同等のトレッドパターンが補修トレッド6に構成されてもよく、元のタイヤのトレッドのトレッドパターンと異なるトレッドパターンがこの補修トレッド6に構成されてもよい。
【0027】
[製造装置]
図3及び
図4は、リトレッドタイヤ4の製造で用いる製造装置10の一例を示す。
図3はこの製造装置10の正面図であり、
図4はこの製造装置10の側面図である。
図3において左右方向はタイヤの軸方向に対応する。
図4においては、紙面に対して垂直な方向がタイヤの軸方向に対応する。
図3及び
図4において上側から下側に向かう方向は、鉛直方向である。
【0028】
この製造装置10は、
図1に示された台タイヤ2にトレッドを再生して、
図2に示されたリトレッドタイヤ4を製造する装置である。この製造装置10は、支持モジュール12、計測モジュール14、形成モジュール16、供給モジュール18、貼り付けモジュール20、及び照射モジュール22を備える。
【0029】
支持モジュール12は、台タイヤ2を回転可能に支持する。支持モジュール12は、リム24と、シャフト26とを備える。この支持モジュール12では、リム24に台タイヤ2が組まれる。リム24に組まれた台タイヤ2の内部には、空気が充填される。これにより、台タイヤ2の内圧が調整される。シャフト26は、この製造装置10のフレーム28に回転可能に支持される。リム24は、このシャフト26に固定される。
【0030】
図示されないが、支持モジュール12は駆動部(例えば、モーター)を備える。この支持モジュール12では、駆動部がシャフト26を回転させることで、リム24に組まれた台タイヤ2が回転する。
図4において、符号RAは台タイヤ2の回転軸を表す。この支持モジュール12は、回転軸RAを中心に台タイヤ2をその周方向に回転させる。
図4において矢印Rで示される方向は、リトレッドタイヤ4の製造時における台タイヤ2の回転方向である。
【0031】
計測モジュール14はレーザー変位計である。計測モジュール14は、台タイヤ2の外周面プロファイルを計測する。後述するが、この製造方法では、計測モジュール14で計測された、台タイヤ2の外周面プロファイルに基づいて、この台タイヤ2の外周面上に形成する接着層8の形状が特定される。台タイヤ2の外周面プロファイルは、台タイヤ2を回転させながら計測される。
【0032】
形成モジュール16は、台タイヤ2の外周面と対向するように配置される。この形成モジュール16は、台タイヤ2の外周面上に接着層8を形成する。この形成モジュール16は、形状データに基づいて三次元構造物を製造する、付加製造装置(3Dプリンタとも称される。)である。この形成モジュール16は、接着層8を多数のエレメントに区分し、これらエレメントを順に形成していく。この接着層8の形成は台タイヤ2を回転させながら行われる。この形成モジュール16は、エレメントを形成する形成ユニット30と、台タイヤ2に対する形成ユニット30の位置を調整する調整ユニット32とを備える。
【0033】
形成ユニット30は、ノズル34を備える。前述したように、接着層8は接着剤からなる。ノズル34は、この接着層8のための接着剤を吐出し、接着層8の一部をなすエレメントを形成する。
【0034】
図示されないが、形成ユニット30は、ギアポンプ等の移送部と、接着剤を収容するタンクとを備える。この形成ユニット30では、移送部が、タンクからノズル34に向けて接着剤を移送する。
【0035】
調整ユニット32は、台タイヤ2から形成ユニット30までの高さと、台タイヤ2に対する形成ユニット30の軸方向位置とを調整する。この調整により、台タイヤ2に対するノズル34の径方向位置と軸方向位置とがコントロールされる。
【0036】
この製造装置10の調整ユニット32は、第一移動部36と、第二移動部38とを備える。第一移動部36は、前述の形成ユニット30を軸方向に移動させる。第二移動部38は、この形成ユニット30を径方向に移動させる。
【0037】
第一移動部36は、第一移動体40と、第一案内体42とを備える。図示されないが、この第一移動部36は、第一移動体40を第一案内体42に対して移動させる、アクチュエーターのような駆動部材をさらに備える。この第一移動部36では、第一案内体42が第一移動体40を軸方向に案内する。第一移動体40は軸方向に移動する。
【0038】
第二移動部38は、第二移動体44と、第二案内体46とを備える。図示されないが、この第二移動部38は、第二移動体44を第二案内体46に対して移動させる、アクチュエーターのような駆動部材をさらに備える。この第二移動部38では、第二案内体46が第二移動体44を径方向に案内する。第二移動体44は径方向に移動する。
【0039】
この形成モジュール16では、前述の形成ユニット30は、第二移動体44に固定される。第二移動体44の移動によって、形成ユニット30は径方向に動かされる。これにより、台タイヤ2から形成ユニット30、詳細にはノズル34までの高さが調整される。
【0040】
この形成モジュール16では、第二案内体46は第一移動体40に固定される。前述したように、形成ユニット30は第二移動体44に固定される。第一移動体40の移動によって、形成ユニット30は軸方向に動かされる。これにより、台タイヤ2に対する形成ユニット30、詳細にはノズル34の軸方向位置が調整される。
【0041】
この製造装置10では、台タイヤ2は回転軸RAを中心に周方向に回転する。台タイヤ2に対するノズル34の周方向位置は、台タイヤ2を回転させることで調整される。
【0042】
供給モジュール18は、支持モジュール12にセットされた台タイヤ2に補修トレッド6を供給する。この供給モジュール18は、コンベア48を備える。コンベア48は、他の装置(図示されず)で準備された補修トレッド6を搬送する。補修トレッド6は、接着層8が形成された、台タイヤ2の外周面に載せられる。
【0043】
貼り付けモジュール20は、補修トレッド6を台タイヤ2に貼り付ける。この貼り付けモジュール20は、ローラー50を備える。ローラー50は、軸方向に延びる丸棒状の部材である。ローラー50は、台タイヤ2に載せられた補修トレッド6の外側に配置される。ローラー50は、アクチュエーターのような駆動部(図示されず)によって径方向内向きに動かされる。ローラー50は補修トレッド6を台タイヤ2に向けて押し付ける。これにより、補修トレッド6が接着層8を介して台タイヤ2に貼り付けられる。
【0044】
照射モジュール22は、電子線を照射する電子線照射装置である。この製造装置10では、照射モジュール22は、台タイヤ2に載せられた補修トレッド6の外側に配置される。この照射モジュール22は、電子線を照射し接着層8を架橋する。これにより、台タイヤ2と補修トレッド6とが接合される。電子線の照射電圧及び照射線量は、補修トレッド6の厚さ及び接着層8の厚さを考慮し決められる。乗用車用タイヤの場合、電子線の照射電圧は、100kV以上が好ましく、5000kV以下が好ましい。電子線の照射線量は、30kGy以上が好ましく、150kGy以下が好ましい。
【0045】
図示されないが、この製造装置10は制御モジュールを備える。この制御モジュールは、例えばCPU等の演算部、RAM及びROMを含む記憶部等を有するマイクロコンピュータにより構成される。この制御モジュールは、記憶部に記憶されたプログラムを演算部が実行することによって、所定の機能を発揮する。
【0046】
この製造装置10では、制御モジュールは、支持モジュール12、計測モジュール14、形成モジュール16、供給モジュール18、貼り付けモジュール20、及び照射モジュール22と、通信ケーブルで繋げられる。詳述しないが、制御モジュールは、記憶部に記憶された、この製造装置10の動作プログラムに基づいて、支持モジュール12、計測モジュール14、形成モジュール16、供給モジュール18、貼り付けモジュール20、及び照射モジュール22の動作を制御する。
【0047】
[製造方法]
図5には、この製造方法のフローが示される。この製造方法は、準備工程S1、形成工程S2、貼り付け工程S3、及び照射工程S4を含む。
【0048】
準備工程S1では、台タイヤ2が支持モジュール12に取り付けられる。これにより、台タイヤ2が製造装置10にセットされる。この製造方法では、シャフト26に予め取り付けられていたリム24に、台タイヤ2が組まれる。台タイヤ2が組まれたリム24が、シャフト26に取り付けられてもよい。
【0049】
前述したように、この製造方法では、摩耗したタイヤが台タイヤ2として用いられる。摩耗したタイヤの外周面には、摩耗屑、砂等が付着していることが懸念される。摩耗屑、砂等の付着物は、補修トレッド6の、台タイヤ2への接合に影響する。このため、この準備工程S1においては、外周面が洗浄され、摩耗屑、砂等の付着物が除かれる。
【0050】
この製造方法では、接着層8を多数のエレメントに区分し、これらエレメントを順に形成することで、接着層8は構成される。このため、この準備工程S1においては、台タイヤ2の外周面プロファイルが計測モジュール14によって計測される。そして、計測した外周面プロファイルに関するデータに基づいて、形成予定の接着層8の形状が特定され、接着層8を構成する、各エレメントの形状データ及び位置データが準備される。これらデータの準備は、制御モジュールにおいて、台タイヤ2の外周面プロファイルに関するデータを処理することにより行われる。準備されたデータは、製造装置10の動作プログラムに反映される。
【0051】
この製造方法では、台タイヤ2を支持モジュール12にセットし、台タイヤ2の外周面のプロファイルを計測すると、エレメントの形成開始位置にノズル34が配置される。形成工程S2が開始される。
【0052】
形成工程S2では、形成モジュール16のノズル34から接着剤を吐出して、台タイヤ2の外周面上に、この接着剤からなる多数のエレメントが順に形成される。これにより接着層8が構成される。この形成工程S2では、台タイヤ2の外周面に接着剤からなる接着層8が形成される。この接着層8の形成方法が
図6を用いて説明される。
【0053】
この形成工程S2では、形成するエレメント52の位置データに基づいて、
図6(a)に示されるように、形成モジュール16の調整ユニット32がエレメント52の形成位置にノズル34を配置する。
【0054】
ノズル34の配置が完了すると、エレメント52の形状データに基づいて、
図6(b)に示されるように、接着剤がノズル34から吐出される。これにより、台タイヤ2の外周面上に、この接着剤からなるエレメント52が形成される。
【0055】
エレメント52が形成されると、次のエレメント52の位置データに基づいて、
図6(c)に示されるように、次のエレメント52の形成位置にノズル34が配置される。ノズル34の配置後、次のエレメント52が形成される。
【0056】
この形成工程S2では、台タイヤ2に対するノズル34の周方向位置をセットすると、軸方向において一方側から他方側に向けてノズル34を動かしながら、エレメント52が順に形成される。軸方向において他方側のエレメント52の形成が完了すると、台タイヤ2を回転させ、次の周方向位置にノズル34がセットされる。この形成工程S2は、台タイヤ2を回転させながら行われる。軸方向において他方側から一方側に向けてノズル34を動かしながら、エレメント52が順に形成される。このようにして、接着層8が構成される。
【0057】
貼り付け工程S3では、供給モジュール18が補修トレッド6を台タイヤ2に供給する。この製造方法では、別の製造装置で準備された、加硫済みの補修トレッド6が、台タイヤ2に供給される。
【0058】
この貼り付け工程S3では、補修トレッド6は、台タイヤ2に載せられ、貼り付けモジュール20のローラー50で台タイヤ2に向けて押し付けられる。これにより、補修トレッド6が台タイヤ2に貼り付けられる。この製造方法では、補修トレッド6を台タイヤ2に載せる前に、この台タイヤ2の外周面に接着層8が構成される。この貼り付け工程S3では、接着層8を介して台タイヤ2に補修トレッド6が貼り付けられる。
【0059】
この貼り付け工程S3では、補修トレッド6の周方向の一方の端面54と他方の端面54とが接ぎ合わされる。これにより、補修トレッド6の台タイヤ2への貼り付けが完了する。補修トレッド6の周方向長さが容易に調整できる観点から、この製造方法では、補修トレッド6の端面54は傾斜面で構成されるのが好ましい。
【0060】
この製造方法では、台タイヤ2の外周面に、元のタイヤに刻まれた、周方向に延びる溝(以下、周方向溝)の一部が残っている場合、この残存している周方向溝の存在を考慮して、補修トレッド6が準備される。この製造方法では、残存する周方向溝に係合するように、内周面に突条が設けられた、補修トレッド6が準備されてもよい。この場合、この突条は、台タイヤ2に対する補修トレッド6の位置ずれ防止に貢献する。
【0061】
この製造方法では、貼り付け工程S3と、前述の形成工程S2とは、台タイヤ2を回転させながら行われる。この貼り付け工程S3は、形成工程S2と並行して行うことができる。この貼り付け工程S3が、形成工程S2を終えた後に行われてもよい。
【0062】
照射工程S4では、接着層8を介して補修トレッド6を貼り付けた台タイヤ2に電子線が照射される。この製造方法では、照射モジュール22が、補修トレッド6の外側から、台タイヤ2と補修トレッド6との間に形成された、未架橋状態の接着層8に向けて電子線を照射する。電子線の照射により接着層8が架橋し、台タイヤ2と補修トレッド6とがこの接着層8を介して接合される。これにより、台タイヤ2と補修トレッド6とが一体化され、リトレッドタイヤ4が得られる。
【0063】
この製造方法では、照射工程S4と、前述の形成工程S2及び貼り付け工程S3とは、台タイヤ2を回転させながら行われる。この照射工程S4は、形成工程S2及び貼り付け工程S3と並行して行うことができる。この照射工程S4が、貼り付け工程S3を終えた後に行われてもよい。
【0064】
この製造方法では、台タイヤ2として用いられる、摩耗したタイヤの外周面は、その付着物の除去のために、洗浄されるが、この外周面に対して、従来の製造方法のように、バフ研磨等の研磨は行われない。形成工程S2において接着層8が形成される、台タイヤ2の外周面の状態は、付着物が除かれている点においては、摩耗したタイヤの外周面の状態とは異なる。しかし、この台タイヤ2の外周面は、摩耗したタイヤの外周面と同じようにでこぼこした状態にある。この台タイヤ2の外周面の状態は、摩耗したタイヤの外周面の状態と実質的に同じである。
【0065】
この製造方法では、台タイヤ2の外周面に対して研磨を行うことなく、摩耗したタイヤの外周面にそのまま、接着層8を介して補修トレッド6が貼り付けられる。この製造方法では、研磨による、バンド又はベルトの損傷が懸念される、トレッドが薄い、乗用車用タイヤにおいても、摩耗したタイヤをリトレッドタイヤ4として再利用できる。バフ研磨のための工程が不要となるので、この製造方法は、リトレッドタイヤ4の生産性の向上を図ることができる。さらにバフ研磨のための装置が不要となるので、この製造方法は、リトレッドタイヤ4の製造装置10のコンパクト化も図ることができる。
【0066】
前述したように、この製造方法では、接着層8の形成工程S2において、台タイヤ2の外周面上に、接着剤からなる多数のエレメント52を順に形成することで、接着層8が構成される。このため、この製造方法は、台タイヤ2の外周面の形状を、この外周面に積層される接着層8の形状に反映させて、この接着層8を構成することができる。この製造方法では、台タイヤ2の外周面の不整を、接着層8が補正するので、台タイヤ2の外周面に対して研磨を行わなくても、補修トレッド6はこの接着層8を介して台タイヤ2にしっかりと貼り付けられる。この観点から、この製造方法では、接着層8の形成工程S2において、台タイヤ2の外周面上に、接着剤からなる多数のエレメント52を順に形成することで、接着層8が構成されるのが好ましい。
【0067】
前述したように、この製造方法では、台タイヤ2の外周面プロファイルが計測モジュール14によって計測される。これにより、台タイヤ2の外周面上に構成される接着層8の形状に、この外周面プロファイルに関するデータを反映させることができる。接着層8を構成する各エレメント52の形状が外周面プロファイルを考慮して決められるので、台タイヤ2の外周面の不整を接着層8によって効果的に補正できる。この製造方法によれば、台タイヤ2の外周面に対して研磨を行わなくても、補修トレッド6はこの接着層8を介して台タイヤ2にしっかりと貼り付けられる。この観点から、この製造方法では、台タイヤ2の外周面上に接着層8が構成される前に、台タイヤ2の外周面プロファイルが計測されるのが好ましい。
【0068】
図4において、符号B1で表される位置は、台タイヤ2の回転軸RAを通る鉛直線がこの台タイヤ2の外周面と交差する位置である。この製造方法では、この位置B1が第一基準位置である。符号B2は第一基準位置B1から回転方向に90°回転した位置を表し、この位置B2が第二基準位置である。符号B3は第一基準位置B1から回転方向に180°回転した位置を表し、この位置B3が第三基準位置である。符号B4は第一基準位置B1から回転方向に270°回転した位置を表し、この位置B4が第四基準位置である。
【0069】
図4に示されるように、形成モジュール16のノズル34は、第二基準位置B2と第三基準位置B3との間に配置される。この製造方法では、ノズル34が吐出した接着剤に作用する自重の向きに抗する方向に、台タイヤ2の外周面が、ノズル34の前を通過する。接着剤がノズル34から切れやすいので、接着剤からなるエレメント52が予定していた形状で安定に形成される。この製造方法では、台タイヤ2の外周面の不整を効果的に補正できる、接着層8が得られる。この観点から、この製造方法では、形成モジュール16のノズル34は、第二基準位置B2と第三基準位置B3との間に配置されるのが好ましい。
【0070】
図4に示されるように、補修トレッド6は、第二基準位置B2と第三基準位置B3との間で台タイヤ2に載せられる。補修トレッド6の自重を利用して、この補修トレッド6が台タイヤ2に載せられるので、この補修トレッド6は台タイヤ2に効果的に巻き付けられる。この観点から、この製造方法では、補修トレッド6は、第二基準位置B2と第三基準位置B3との間で台タイヤ2に載せられるのが好ましい。この場合、台タイヤ2の外周面上に接着層8を構成しつつ、補修トレッド6を台タイヤ2に効率よく貼り付けることができる観点から、形成モジュール16のノズル34は第二基準位置B2側に配置され、補修トレッド6が台タイヤ2に載せられる位置は第三基準位置B3側に設定されるのがより好ましい。そして、効率よく補修トレッド6を台タイヤ2に接合できる観点から、第三基準位置B3と第四基準位置B4との間に、照射モジュール22が配置されるのがさらに好ましい。
【0071】
前述したように、リム24に組まれた台タイヤ2の内部には空気が充填され、台タイヤ2の内圧が調整される。この製造方法では、台タイヤ2の外周面位置の変動が抑えられる観点から、台タイヤ2の内圧は5kPa以上が好ましく、10kPa以上がより好ましく、20kPa以上がさらに好ましい。この台タイヤ2の内圧は、100kPa以下が好ましく、90kPa以下がより好ましく、80kPa以下がさらに好ましい。
【0072】
この製造方法では、接着層8は、ゴム組成物からなる接着剤を用いて形成される。形成モジュール16によって接着層8を安定に形成できるのであれば、この接着剤のためのゴム組成物粘度に特に制限はない。未架橋状態においては接着層8の形成に適し、リトレッドタイヤ4においては十分な強度を有する接着層8として機能できる観点から、相対湿度50%の環境下で、E型粘度計(例えば、Anton-Paar社製のMCR301)を用いて、温度60℃、振り角1%、周波数1Hzにて計測される、ゴム組成物の粘度は0.1Pa・s以上が好ましく、1Pa・s以上がより好ましい。このゴム組成物の粘度は1500Pa・s以下が好ましく、1000Pa・s以下がより好ましい。
【0073】
この製造方法では、接着層8を構成する接着剤として、電子線の照射により架橋するゴム組成物が用いられる。
【0074】
この製造方法では、接着剤のためのゴム組成物は液状ゴムを含むことができる。液状ゴムとしては、特に制限されず、公知のものを使用することができる。液状ゴムの具体例としては、液状ブタジエンゴム、液状スチレン-ブタジエン共重合ゴム、液状イソプレン-ブタジエン共重合ゴム、液状イソプレンゴム、液状水素化イソプレンゴム及び液状イソプレン-スチレン共重合ゴムが挙げられる。これらの中でも、補修トレッド6と台タイヤ2とをしっかりと接合でき、リトレッドタイヤ4においては十分な強度を有する接着層8として機能できる観点から、接着剤のためのゴム組成物は、電子線によって架橋する液状ゴムを含むのが好ましい。電子線の照射によって架橋点として機能する、(メタ)アクリロイル基やビニル基のような不飽和結合を有する液状ゴムや、エポキシ化合物やオキセタン化合物のような環状エーテルを有する液状ゴムが好ましく、特に(メタ)アクリロイル基を有する液状ゴムが好ましい。液状ゴムは、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基またはメタクリロイル基」を意味する。これに類する表現も同様である。
【0075】
ゴム組成物における液状ゴムの含有量は、特に制限されないが、補修トレッド6と台タイヤ2とをしっかりと接合でき、リトレッドタイヤ4においては十分な強度を有する接着層8として機能できる観点から、40質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。この液状ゴムの含有量は、90質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。この製造方法では、この液状ゴムの含有量は、ゴム組成物全質量に対する液状ゴムの質量の比率により表される。
【0076】
液状ゴムの数平均分子量(Mn)は、特に制限されないが、補修トレッド6と台タイヤ2とをしっかりと接合でき、リトレッドタイヤ4においては十分な強度を有する接着層8として機能できる観点から、好ましくは500以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。この液状ゴムの数平均分子量(Mn)は、60,000以下が好ましく、40,000以下がより好ましい。この製造方法では、液状ゴムの数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用い、標準ポリスチレンにより換算して測定された値により表される。
【0077】
この接着剤のためのゴム組成物は、補修トレッド6と台タイヤ2とをしっかりと接合できる観点から、共架橋剤を含むことができる。共架橋剤としては、共架橋剤として公知のものが使用できる。共架橋剤の具体例としては、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛、メタクリル酸マグネシウム;スチレンモノマー、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマーのように不飽和結合を有するもの、そして、これらのオリゴマーが挙げられる。共架橋剤は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。
【0078】
ゴム組成物における共架橋剤の含有量は、特に制限されないが、補修トレッド6と台タイヤ2とをしっかりと接合でき、リトレッドタイヤ4においては十分な強度を有する接着層8として機能できる観点から、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。この共架橋剤の含有量は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。この製造方法では、この共架橋剤の含有量は、ゴム組成物全質量に対する共架橋剤の質量の比率により表される。
【0079】
この接着剤のためのゴム組成物は、補修トレッド6と台タイヤ2とをしっかりと接合でき、リトレッドタイヤ4においては十分な強度を有する接着層8として機能できる観点から、架橋ゴムを含むことができる。架橋ゴムとしては、特に制限されず、天然ゴム又は合成ゴムを架橋した、公知の架橋ゴムを使用できる。架橋ゴムを構成するゴム成分としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらの中でも、補修トレッド6と台タイヤ2とをしっかりと接合でき、リトレッドタイヤ4においては十分な強度を有する接着層8として機能できる観点から、架橋ゴムとしては、硫黄等の加硫剤を用いて天然ゴムを架橋した架橋ゴムが好ましい。架橋ゴムは、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。
【0080】
ゴム組成物が架橋ゴムを含む場合、補修トレッド6と台タイヤ2とをしっかりと接合でき、リトレッドタイヤ4においては十分な強度を有する接着層8として機能できる観点から、架橋ゴムは微粒子状であるのが好ましい。この場合、架橋ゴムの粒子径としては、特に制限されないが、補修トレッド6と台タイヤ2とをしっかりと接合でき、リトレッドタイヤ4においては十分な強度を有する接着層8として機能できる観点から、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。この製造方法では、この架橋ゴムの粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径測定装置を用いて得られるメディアン径(積算50%の粒径)により表される。
【0081】
ゴム組成物における架橋ゴムの含有量は、特に制限されないが、補修トレッド6と台タイヤ2とをしっかりと接合でき、リトレッドタイヤ4においては十分な強度を有する接着層8として機能できる観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。この架橋ゴムの含有量は、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。この製造方法では、この架橋ゴムの含有量は、ゴム組成物全質量に対する架橋ゴムの質量の比率により表される。
【0082】
この接着剤のためのゴム組成物は、ラジカル開始剤を含むことができる。このゴム組成物がラジカル開始剤を含むことにより、前述の液状ゴムの硬化が促進される。ラジカル開始剤としては、特に制限されず、電子線の照射によってラジカルを発生させる、公知のものを使用することができる。好ましいラジカル開始剤としては、アセトフェノン、4,4’-ジメトキシベンジル、ジベンゾイル、2-ヒドロキシ-2-フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン-2-カルボン酸、ベンゾフェノン-4-カルボン酸、ベンゾフェノン-2-カルボン酸メチル、N,N,N’,N’-テトラエチルー4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2-メトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-イソプロポキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-イソブトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-エトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(モルフォリノ)フェニル]-1-ブタノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、1,4-ジベンゾイルベンゼン、2-エチルアントラキノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、2-イソニトロソプロピオフェノン、2-フェニル-2-(p-トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)が挙げられる。ラジカル開始剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0083】
ゴム組成物がラジカル開始剤を含む場合、このラジカル開始剤の含有量は、液状ゴム100質量部に対して、0.5質量以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。ラジカル開始剤の含有量は、液状ゴム100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましい。
【0084】
この接着剤のためのゴム組成物は、フィラーをさらに含むことができる。このゴム組成物がフィラーを含むことにより、補修トレッド6と台タイヤ2とをしっかりと接合でき、リトレッドタイヤ4においては十分な強度を有する接着層8として機能できる。このフィラーとしては、特に制限されず、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、タルクなどが挙げられる。シリカをフィラーとする場合、表面改質されていないシリカを用いてもよい。また、シランカップリング剤などで表面改質された表面改質シリカ、またはシリカとシランカップリング剤との混合物などをフィラーとして使用することにより、硬化によって得られる接着層8の機械的強度をより一層高めることができる。フィラーは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0085】
この接着剤のためのゴム組成物がフィラーを含む場合、さらにシランカップリング剤を含んでいてもよい。特に、表面改質されていないフィラーを配合する場合、シランカップリング剤を含んでいることにより、液状ゴムとフィラーとを強固に結合することができ、硬化によって得られる接着層8に優れたゴム特性を発揮させることができる。
【0086】
フィラーの含有量としては、特に制限されないが、補修トレッド6と台タイヤ2とをしっかりと接合でき、リトレッドタイヤ4においては十分な強度を有する接着層8として機能できる観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。このフィラーの含有量は、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。この製造方法では、このフィラーの含有量は、ゴム組成物全質量に対するフィラーの質量の比率により表される。
【0087】
この接着剤のためのゴム組成物は、補修トレッド6と台タイヤ2とをしっかりと接合でき、リトレッドタイヤ4においては十分な強度を有する接着層8として機能できる観点から、液状ゴムと化学結合可能なポリロタキサンを含んでいてもよい。ポリロタキサンとは、環状分子の開口部が直鎖状分子によって串刺し状に包摂されている擬ポリロタキサンの両端(直鎖状分子の両端)に、封鎖基を配置してなるものであり、公知のものが使用できる。
【0088】
ポリロタキサンを構成する直鎖状分子としては、例えばポリカプローラークトン、スチレン-ブタジエン共重合体、イソブテン-イソプレン共重合体、ポリイソプレン、天然ゴム(NR)、ポリエチレングリコール、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレンーポリプロピレン共重合体が挙げられる。また、直鎖状分子は、例えばスチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物の1種または2種以上の重合体や、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン等の共役ジエン化合物の1種または2種以上の重合体、あるいは前記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の共重合体であってもよい。これら直鎖状分子は、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。直鎖状分子の重量平均分子量は、1万以上100万以下が好ましい。また、直鎖状分子の両端を封鎖する封鎖基としては、例えば、ジニトロフェニル基、アダマンチル基、トリチル基、フルオレセイン、ピレン、またはこれらの誘導体の1種または2種以上が挙げられる。
【0089】
環状分子としては、例えばシクロデキストリン、クラウンエーテル、ベンゾクラウン、ジベンゾクラウン、ジシクロヘキサノクラウン、またはこれらの誘導体の1種または2種以上が挙げられる。環状分子としては、特にα、β、またはγ-シクロデキストリン又はその誘導体の1種または2種以上が好ましい。
【0090】
前述したように、ポリロタキサンは、液状ゴムと化学結合可能である。より具体的には、ポリロタキサンは、液状ゴムと化学結合可能な官能基を備える。この官能基は、環状分子の側鎖に存在しているのが好ましい。
【0091】
ポリロタキサンにおいて、液状ゴムと化学結合可能な官能基としては、特に制限されないが、好ましくは、電子線によって架橋する(メタ)アクリロイル基、ビニル基などの不飽和結合が好ましく、特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。前述の液状ゴムが、電子線によって架橋する前述の不飽和結合を有する場合に、液状ゴムの不飽和結合と、ポリロタキサンの官能基とを化学結合させることができる。
【0092】
ポリロタキサンとしては、市販品も使用できる。この市販品としては、例えば、アドバンスト・ソフトマテリアルズ(株)製のセルム(登録商標)スーパーポリマーSM3403P、SA3403P、SA2403P、SM1313P、SA1313P等が挙げられる。これらの製品はいずれも、50質量%メチルエチルケトン溶液として供給される。さらにこの市販品としては、SM3405P、SA3405P、SA2405P等が挙げられる。これらの製品はいずれも、70質量%酢酸エチル溶液として供給される。さらにこのポリロタキサンとしては、アクリル系オリゴマー等の反応性希釈剤を配合したものも供給されている。かかる製品としては、例えばアドバンスト・ソフトマテリアルズ(株)製のセルム(登録商標)キー・ミクスチャーSM3400C、SA3400C、SA2400C等が挙げられる。ポリロタキサンは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0093】
この接着剤のためのゴム組成物に含まれるポリロタキサンの含有量は、特に制限されないが、補修トレッド6と台タイヤ2とをしっかりと接合でき、リトレッドタイヤ4においては十分な強度を有する接着層8として機能できる観点から、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。このポリロタキサンの含有量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。この製造方法では、このポリロタキサンの含有量は、ゴム組成物全質量に対するポリロタキサンの質量の比率により表される。
【0094】
この接着剤のためのゴム組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において各種の添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、特に制限されず、例えば、ポリマー、染料、顔料、レべリング剤、流動性調整剤、消泡剤、可塑剤、重合禁止剤、難燃化剤、分散安定化剤、保存安定化剤、酸化防止剤、金属、金属酸化物、金属塩、セラミックス、などが挙げられる。ゴム組成物に含まれる添加剤は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0095】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、本発明によれば、トレッドの厚さによらず摩耗したタイヤの再利用を促すことができる、リトレッドタイヤ4の製造方法及びリトレッドタイヤ4が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上説明されたリトレッドタイヤの製造に関する技術は、種々な摩耗したタイヤに適用できる。
【符号の説明】
【0097】
2・・・台タイヤ
4・・・リトレッドタイヤ
6・・・補修トレッド
8・・・接着層
10・・・製造装置
12・・・支持モジュール
14・・・計測モジュール
16・・・形成モジュール
18・・・供給モジュール
20・・・貼り付けモジュール
22・・・照射モジュール
24・・・リム
26・・・シャフト
34・・・ノズル
36・・・第一移動部
38・・・第二移動部
48・・・コンベア
50・・・ローラー
52・・・エレメント