(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】電磁波透過部材及びその製造方法、並びに電磁波透過部材用塗工液
(51)【国際特許分類】
B22F 1/102 20220101AFI20240820BHJP
B22F 1/0545 20220101ALI20240820BHJP
B22F 9/24 20060101ALI20240820BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20240820BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240820BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240820BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240820BHJP
【FI】
B22F1/102
B22F1/0545
B22F9/24 E
B22F9/00 B
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/63
(21)【出願番号】P 2020118761
(22)【出願日】2020-07-09
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2019132844
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】中山 由美
(72)【発明者】
【氏名】大江 靖
(72)【発明者】
【氏名】田淵 恵里香
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-105372(JP,A)
【文献】特開2019-099890(JP,A)
【文献】特開2016-107610(JP,A)
【文献】特開2015-104707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、銀ナノ粒子を含む銀ナノ粒子層を備え、
前記銀ナノ粒子層は、金属調意匠色を呈し、導電性がなく、周波数が3.7GHz以上3THz以下の範囲内の電磁波を透過
し、
前記銀ナノ粒子層に含まれる前記銀ナノ粒子の平均一次粒子径(D50)は、10nm以上200nm以下の範囲内であり、
前記銀ナノ粒子の表面は、複数の保護分子により覆われており、
前記銀ナノ粒子の表面を覆っている前記複数の保護分子のうち最も多い分子は、1級アミノ基を有するアルキルアミン、または1級アミノ基と3級アミノ基とを有するアルキルジアミンであることを特徴とする電磁波透過部材。
【請求項2】
前記銀ナノ粒子層は、金属調意匠色を呈し、導電性がなく、周波数が30GHz以上300GHz以下の範囲内の電磁波を透過することを特徴とする請求項1に記載の電磁波透過部材。
【請求項3】
前記銀ナノ粒子層は、正反射率が10%以上であり、金属調意匠色を呈することを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の電磁波透過部材。
【請求項4】
前記銀ナノ粒子層は、表面抵抗値が1×10
7Ω/□以上であり、且つ周波数が3.7GHz以上3THz以下の範囲内における電磁波透過損失が1.5dB以下であることを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の電磁波透過部材。
【請求項5】
前記銀ナノ粒子層は、表面抵抗値が1×10
7Ω/□以上であり、且つ周波数が1MHz以上110GHz以下の範囲内における電磁波透過損失が1dB以下であることを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の電磁波透過部材。
【請求項6】
前記銀ナノ粒子層は、その膜厚が10nm以上1μm以下の範囲内であり、且つ平面視で、少なくとも一部が互いに不連続の状態にある島状構造を形成して
おり、
前記島状構造における島同士の間隔は、1nm以上10nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の電磁波透過部材。
【請求項7】
前記銀ナノ粒子層は、前記銀ナノ粒子以外にバインダー成分を1質量%以上10質量%以下の範囲内で含
み、
前記バインダー成分として、硝酸セルロース、アクリル樹脂、アクリル酸を有する化合物、またはメタクリル酸を有する化合物を含むことを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の電磁波透過部材。
【請求項8】
前記銀ナノ粒子の表面を覆っている前記複数の保護分子のうち最も多い分子は、前記1級アミノ基を有するアルキルアミンであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電磁波透過部材。
【請求項9】
前記銀ナノ粒子の表面は、前記保護分子である、n-オクチルアミン、n-ブチルアミン、及びN,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンにより覆われていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電磁波透過部材。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電磁波透過部材に備わる銀ナノ粒子層を製造するための電磁波透過部材用塗工液であって、
前記電磁波透過部材用塗工液は、銀ナノ粒子及び分散媒を含み、且つ、固形成分を10質量%以上40%質量以下の範囲内で含むことを特徴とする電磁波透過部材用塗工液。
【請求項11】
前記電磁波透過部材用塗工液は、分散剤をさらに含み、
前記銀ナノ粒子を、前記分散媒の質量に対して10質量%以上40%質量以下の範囲内で含み、
前記分散剤を、前記銀ナノ粒子の質量に対して1質量%以上20質量%以下の範囲内で含むことを特徴とする請求項10に記載の電磁波透過部材用塗工液。
【請求項12】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電磁波透過部材の製造方法であって、
前記銀ナノ粒子層に含まれる前記銀ナノ粒子を、シュウ酸銀とアミンとを混合して、熱分解することによって生成したシュウ酸銀アミン錯体を用いて製造することを特徴とする電磁波透過部材の製造方法。
【請求項13】
請求項10または請求項11に記載の電磁波透過部材用塗工液を、基材上に塗布し乾燥させることで銀ナノ粒子層を形成することを特徴とする電磁波透過部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波透過部材及びその製造方法、並びに電磁波透過部材用塗工液に関する。
【背景技術】
【0002】
銀ナノ粒子は、他の物質には見られない電気的、熱的、光学的特性を有し、太陽電池からセンサーに至る幅広い製品で利用されている。さらに、銀ナノ粒子は、他の多くの色素や顔料と異なり、光の吸収や散乱が極めて効果的であり、粒子の大きさや形状に応じて色彩を有する。光と銀ナノ粒子との強い関係は表面プラズモン共鳴と呼ばれ、特定の波長の光で励起された際に金属表面の伝導電子が集団的な振動を起こし、通常にはない光散乱や光吸収特性が発現する。
【0003】
一般に金属銀が分散した塗液は、金属配線の用途に用いられることが多い。例えば、金属銀が分散した塗液で配線基板上にパターンを形成し、その塗液中に含まれる金属銀を焼結させて配線を形成する。金属銀を導電性材料として使用する場合、分散した金属銀の微細化による融点降下を利用して低温で焼結する必要があることが知られている。そして、現在では、微細化したナノサイズの金属ナノ粒子が低温焼結可能な材料として期待されている。
【0004】
また、銀ナノ粒子を色材として用いた報告もなされている。例えば、銀ナノ粒子特有の光学的特性を有する機能膜を作製する場合には、分散性が高い塗液を用いて、低温では焼結しない銀膜を形成する必要があることが報告されている。
このように、金属ナノ構造体による表面プラズモン共鳴を利用した技術は、基礎と応用の両分野において進展がめざましく、銀ナノ粒子2次元結晶シートを金属基板上に積層すると、積層数に応じてオレンジ~赤~ピンク~紫の鮮やかな呈色が得られることも知られている(特許文献1)。
【0005】
銀ナノ粒子の表面プラズモン共鳴に基づいた発色は、銀ナノ粒子の濃度が低く、粒子間が十分な間隔を有するマトリックスを光が透過する際に得られる。これに対して、マトリックス中の銀ナノ粒子の濃度(含有量)を90質量%程度に増大させて銀ナノ粒子間の距離が縮まった膜を形成させると、透過光でなく、反射光のみが観察される。そして、この場合には、金属光沢を有する金属調意匠を発現させることとなる(非特許文献1)。さらに、その膜を加熱し金属以外の成分を熱分解させるなどして銀ナノ粒子同士を融着させると金属光沢の意匠が得られるばかりでなく、膜強度が上がる。また、膜厚が1μm以下であれば、融着による導電性の発現はなく、電磁波を透過する金属調意匠膜が得られる。なお、自動車業界では、良好な電磁波透過性を得るための表面抵抗値として1×107Ω/□以上が目安とされている。自動車のエンブレムに用いられるためには、76GHz、79GHzでの電磁波透過性(透過減衰量-1.5dB以上)が必要となってくる。(非特許文献2)
【0006】
金属調意匠性を備えながらも電磁波を透過する膜として、例えば特許文献2には、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等、あるいは、銅、ニッケル、ビスマス、インジウム、コバルト、亜鉛、タングステン、クロム、鉄、モリブデン、タンタル、マンガン、スズ、チタン等の1種又は2種以上の金属を含有する粒子径が約1~100nmである金属ナノ粒子と、樹脂成分とからなる塗膜及びその形成方法並びにその塗液組成物が示されている。
【0007】
そして、この塗膜は電磁波透過性を有すると共に、密着性及び高輝度外観を有し、且つこれらのバランスに優れていることが記載されている。また、この樹脂成分はオキサゾリン基を含有する樹脂(重合体)(a)とカルボキシ基を含有する樹脂(b)とからなることが記載されている。さらに、樹脂(b)はナノ粒子に対する親和性の高い官能基とともに溶媒親和部分も含む両親媒性の高分子量の共重合体であり、数平均分子量が1000~100万であることが好ましいことが記載されている。
【0008】
しかしながら、特許文献2に示す塗膜は、高級なメタリック感を得るため、金属フレーク又は鱗片状無機粉末を塗布対象となる基材の表面に対して略平行に配列させたものであるため、シェードにおいても鱗片状粉末による反射が依然として多く、結果的に明度差が不十分であり市場で求められている金属質感には至っていなかった。また良好な電磁波透過性も望めなかった。
【0009】
また、特許文献3には、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールを少なくとも含んだ有機物が表面に付着した平均粒径(D50)45~100nmの略球状の銀粒子と、不可避不純物を含んだ溶媒としての水とからなる水性銀コロイド液が記載されている。
ここで、ナノサイズの銀粒子を得る方法としては、銀化合物をアンモニア溶液で溶解した銀アンミン錯体塩の水溶液と、還元剤としてのヒドラジンと、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールの少なくとも2種類の分散剤と、を混合して銀粒子を還元により析出させる方法がある。しかしながら、その方法は生産性に劣ることや、その方法で析出させた銀粒子の粒形が小さい場合には、銀粒子を基材表面に塗工した際に銀粒子同士が焼結してしまい電磁波透過性が低下してしまうことがあった。
【0010】
そのため、従来技術の電磁波透過部材には、十分な金属質感(高い金属調意匠性)と良好な電磁波透過性の両方を兼ね備えたものは少なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第6091417号公報
【文献】特許第5163715号公報
【文献】特開2015-105372号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】小林敏勝、日本色材協会誌、75巻、p66-70(2002)
【文献】斎藤隆之他、表面技術、67巻、12号、p662-666(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、十分な金属質感(高い金属調意匠性)と良好な電磁波透過性とを兼ね備えた電磁波透過部材及びその製造方法、並びに電磁波透過部材用塗工液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様に係る電磁波透過部材は、基材上に、銀ナノ粒子を含む銀ナノ粒子層を備え、前記銀ナノ粒子層は、金属調意匠色を呈し、導電性がなく、周波数が3.7GHz以上3THz以下の範囲内の電磁波を透過することを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る電磁波透過部材用塗工液は、銀ナノ粒子、分散剤、及び分散媒を含み、且つ、固形成分を10質量%以上40%質量以下の範囲内で含むことを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る電磁波透過部材の製造方法は、前記銀ナノ粒子層に含まれる前記銀ナノ粒子を、シュウ酸銀とアミンとを混合して、熱分解することによって生成したシュウ酸銀アミン錯体を用いて製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、高い金属調意匠性と良好な電磁波透過性とを兼ね備えた電磁波透過部材及びその製造方法、並びに電磁波透過部材用塗工液を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る電磁波透過部材の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の実施例1で得られた銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
【
図3】本発明の実施例1で得られた銀ナノ粒子の粒度分布及び累積度数(%)を示す図である。
【
図4】本発明の実施例1で得られた銀ナノ粒子層表面の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
【
図5】本発明の実施例1で得られた電磁波透過部材のミリ波透過減衰量を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態に係る銀ナノ粒子層、及び金属調意匠色を呈する電磁波透過部材の各構成及び各製造方法について説明する。ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す各実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
本実施形態において、金属調意匠性とは、金属質感のことをいう。また、一般に金属調意匠色、即ち金属調意匠の金属光沢とは、金属特有のツヤ感や光沢感等のことをいい、例えば光輝性の低いつや消しの金属光沢も含む。具体的には、正反射率を測定して金属光沢の有無を判断し、正反射率が10%以上であれば金属光沢があると判断する。正反射率が10%未満では、マットな色調の方が強くなり、金属光沢とは言い難くなる場合がある。なお、銀の折り紙は、正反射率が38%程度であり、金属の銀は正反射率が90%以上である場合が多い。
【0019】
[電磁波透過部材1]
図1は、本実施形態に係る電磁波透過部材の構成を模式的に示す断面図である。
本実施形態に係る電磁波透過部材1は、基材2、下地層5、銀ナノ粒子層4、及びオーバーコート層6をこの順に備えている。以下、各層の詳細について説明する。
【0020】
[基材2]
基材2は、銀ナノ粒子層4や下地層5を支持する層である。このため、基材2は、銀ナノ粒子層4や下地層5を支持・形成することが可能であり、且つ非金属であれば、その種類を問わない。基材2としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリプロピレンフィルム等のフィルムが挙げられる。
基材2の表面は、銀ナノ粒子層4や下地層5の形成が容易になるように処理が施されていてもよい。基材2がフィルムの場合、表面に施す処理としては、例えば、コロナ処理が挙げられる。
【0021】
[銀ナノ粒子層4]
銀ナノ粒子層4は、銀ナノ粒子3を含む層であり、基材2、或いは下地層5上に形成された層である。銀ナノ粒子層4は、金属調意匠色を呈し、導電性がなく、周波数が3.7GHz以上3THz以下の範囲内の電磁波を透過する層である。なお、銀ナノ粒子層4は、金属調意匠色を呈し、導電性がなく、周波数が30GHz以上300GHz以下の範囲内の電磁波(所謂、ミリ波)を透過する層であってもよい。
また、銀ナノ粒子層4は、正反射率が10%以上であれば好ましい。より好ましくは50%以上であり、正反射率が90%以上であれば、銀本来の高い金属調意匠性が得られる。
また、銀ナノ粒子層4は、その表面抵抗値が1×107Ω/□以上であり、且つ周波数が3.7GHz以上3THz以下の電磁波の範囲内における電磁波透過損失が1.5dB以下であれば好ましい。また、銀ナノ粒子層4は、その表面抵抗値が1×107Ω/□以上であり、且つ周波数が1MHz以上110GHz以下の電磁波の範囲内における電磁波透過損失が1dB以下であってもよい。表面抵抗値及び電磁波透過損失がそれぞれ上記数値範囲内であれば、使用する上で何ら問題のない電磁波透過性が得られる。
【0022】
また、銀ナノ粒子層4は、その膜厚が10nm以上1μm以下の範囲内であり、且つ平面視で、少なくとも一部が互いに不連続の状態にある島状構造を形成していれば好ましい。銀ナノ粒子層4の膜厚が上記数値範囲内であり、且つ銀ナノ粒子層4の表面が島状構造を形成していれば、高い金属調意匠性を得つつ、使用する上で何ら問題のない電磁波透過性が得られる。ここで、「島状構造」とは、銀ナノ粒子3の集合体である粒子塊(所謂「島」)同士が各々独立しており、それらの粒子が、互いに僅かに離間し又は一部接触した状態で敷き詰められてなる構造を意味する。また、「不連続の状態」とは、特に限定されるものではなく、島状、クラックが形成された状態などが含まれる。なお、個々の「粒子塊(島)」の幅は、特に限定されるものではなく、例えば、平面視で50nm以上500nm以下の範囲内である。また、島同士の間隔(クラックの幅)は、例えば、1nm以上10nm以下の範囲内である。島同士の間隔(クラックの幅)が上記数値範囲内であれば、良好な電磁波透過性が確実に得られる。また、電磁波はクラック等の「不連続な部分」があるため、透過できると考えられる。
【0023】
銀ナノ粒子層4は、厚み方向には銀ナノ粒子3が少なくとも1層以上で並んでいれば金属調意匠性が得られる。よって、銀ナノ粒子層4の厚みは、銀ナノ粒子層4に含まれる銀ナノ粒子3の最小の大きさである10nm以上であることが好ましい。また、銀ナノ粒子層4の厚みが、1μmを超えると電磁波透過性が低下することがある。
銀ナノ粒子層4は、銀ナノ粒子3以外にも非反応性樹脂、光硬化性樹脂等のバインダー成分を1質量%以上10質量%以下の範囲内で含んでいてもよい。バインダー成分が10質量%を超えると銀ナノ粒子3の濃度が下がり、金属調意匠性が低下したり、硬化収縮によるカールが強くなったりする傾向がある。また、バインダー成分が1質量%未満では、塗膜の硬度が十分でないため、オーバーコート層6を形成した際に銀ナノ粒子3がオーバーコート層6内に移行してしまい、金属調意匠性が低下してしまうことがある。
【0024】
また、上述の非反応性樹脂としては、具体的には硝酸セルロース、アクリル樹脂等の樹脂が挙げられる。また、光硬化性樹脂としては、重合性化合物である不飽和二重結合を有する化合物、例えばアクリル酸、メタクリル酸を有する化合物と、電離放射線によりラジカル種を発生する光重合開始剤と、を含む樹脂等が挙げられる。なお、本実施形態で使用可能な不飽和二重結合を有する化合物の具体例については、後述する。
また、上述の光重合開始剤は、上述の重合性化合物を光重合させるための開始剤である。このため、上述の重合性化合物を光重合させることが可能であれば、その種類を問わない。なお、本実施形態で使用可能な光重合開始剤の具体例については、後述する。
【0025】
銀ナノ粒子層4に含まれる銀ナノ粒子3の平均一次粒子径(D50)は、10nm以上200nm以下の範囲内である。銀ナノ粒子3の平均一次粒子径(D50)が10nm未満または200nmを超えると、銀ナノ粒子層4を形成するための塗工液である銀ナノ粒子層用組成物中における銀ナノ粒子3の分散性が低下し、銀ナノ粒子層4が島状構造を形成できず、電磁波透過部材1の電磁波透過性が低下する場合がある。
なお、本実施形態において、銀ナノ粒子3の平均一次粒子径(D50)は、Nanotrac UPA-EX150粒度分布計(動的光散乱法、日機装社製)を用い、0.1質量%トルエン溶液にて測定した粒度分布から求めた。
また、銀ナノ粒子3の表面は、例えば、1級アミノ基を有するアルキルアミン、或いは1級アミノ基と3級アミノ基とを有するアルキルジアミンを主成分として含む保護分子により覆われていることが好ましい。ここでいう「主成分」とは、銀ナノ粒子3の表面を覆っている複数の保護分子のうち最も多い成分(分子)をいう。
【0026】
[オーバーコート層6]
オーバーコート層6は、銀ナノ粒子層4上に設けた層であり、0.1μm以上10μm以下の厚みを有する層である。オーバーコート層6の厚みが0.1μm未満では、オーバーコート層6の強度を高めることができない可能性がある。また、オーバーコート層6の厚みが10μmを超えると、電磁波透過部材1全体にカールが生じたり、銀ナノ粒子層4の金属調意匠性が低下したりする場合がある。
また、オーバーコート層6は、銀ナノ粒子層4の色調が変化しないという条件、及び銀ナノ粒子層4と密着可能であるという条件を満たしている必要がある。
【0027】
なお、オーバーコート層6は、市販のクリアラッカースプレーや、下地層5と同じ(メタ)アクリル酸エステル化合物を用いて形成することができる。オーバーコート層6は、例えば、1種類または2種類以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物を重合させて形成した層であってもよい。より詳しくは、オーバーコート層6は、1種類または2種類以上のポリエステルウレタンアクリレート等を用いて形成された層であって、例えば、オーバーコート層用組成物を大気中で硬化させた層である。ここで、上述した「大気中」とは、大気中における窒素濃度と同じ、またはそれ以下の窒素濃度における環境下を意味する。なお、オーバーコート層6は、電離放射線により重合開始種を発生する化合物、例えば、光重合開始剤を含んでいてもよい。
また、オーバーコート層6は、例えば、銀ナノ粒子層4の形成に用いた非反応性樹脂や光硬化性樹脂等のバインダー成分を用いて形成してもよい。
【0028】
[下地層5]
下地層5は、銀ナノ粒子層4を支持する層であり、4μm以上60μm以下の厚みを有する層である。下地層5は、例えば、1種類または2種類以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物を重合させて形成した層である。より詳しくは、下地層5は、1種類または2種類以上のウレタンアクリルオリゴマー等を用いて形成された層であって、例えば、下地層5を形成するための塗工液である下地層用組成物を大気中で硬化させて形成した層である。ここで、上述した「大気中」とは、大気中における窒素濃度と同じ、またはそれ以下の窒素濃度における環境下を意味する。なお、下地層5は、電離放射線により重合開始種を発生する化合物、例えば、光重合開始剤を含んでいてもよい。また、本実施形態では、下地層5を設けず、基材2上に銀ナノ粒子層4を直接形成してもよい。つまり、下地層5は、必要に応じて設ければよい。
【0029】
(電磁波透過部材1の製造方法)
上述した本実施形態に係る電磁波透過部材1に備わる銀ナノ粒子層4を作成する上で必要となる銀ナノ粒子3の合成方法について、まず説明する。次に、銀ナノ粒子3を含んだ銀ナノ粒子分散液(銀ナノ粒子層用組成物)の調製等について説明する。次に、下地層5を形成するために用いる下地層用組成物の調製等について説明する。そして、最後に、オーバーコート層6を形成するために用いるオーバーコート層用組成物の調製等について説明する。
【0030】
[銀ナノ粒子3の合成]
銀ナノ粒子3を構成する銀の原料としては、含銀化合物のうちで、加熱により容易に分解して金属銀を生成する銀化合物が好ましく使用される。このような銀化合物としては、例えば、蟻酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、安息香酸、フタル酸などのカルボン酸と銀が化合したカルボン酸銀の他、塩化銀、硝酸銀、炭酸銀等がある。そして、それらの銀化合物の中でも、分解により容易に金属を生成し、かつ、銀以外の不純物を生じにくい観点からシュウ酸銀が好ましく用いられる。シュウ酸銀は、銀含有率が高いとともに、加熱によりシュウ酸イオンが二酸化炭素として分解除去される。このために、還元剤を必要とせず熱分解により金属銀がそのまま得られ、不純物が残留しにくい点で有利といえる。
【0031】
本実施形態では、上記銀化合物に所定のアルキルアミン或いはアルキルジアミンを加えて、銀化合物とアルキルアミン或いはアルキルジアミンとの錯化合物を生成させる。この錯化合物は、銀、アルキルアミン或いはアルキルジアミン及びシュウ酸イオンを含んでいる。なお、この錯化合物においては、銀化合物に含まれる各銀原子に対してアミンに含まれる窒素原子がその非共有電子対を介して配位結合することにより、錯化合物を生成しているものと推察される。
上記アルキルアミン或いはアルキルジアミンの銀原子への配位の容易さを考慮すると、アミノ基は1級であるRNH2(Rは炭化水素基)であることが好ましく、アミノ基が3級であるR3N(Rは炭化水素基)であると空間的に困難となる。このため、アルキルジアミンが1級のアミノ基(1級アミノ基)と3級のアミノ基(3級アミノ基)とを備えていれば、1級アミノ基が選択的に銀原子に配位し、3級アミノ基は分子鎖に応じて外側を向くことになる。なお、2級アミノ基は、配位可能であるが、合成上の問題で高価であることと、反応性が1級よりも落ちるため、1級アミノ基及び3級アミノ基の使用が好ましい。
【0032】
このようにして生成した、アミン或いはジアミンが配位した金属銀原子は、その生成後に速やかに凝集し、相互に金属結合を生成して結合して銀ナノ粒子を形成する。この際に、各銀原子に配位したアミン、ジアミンが銀ナノ粒子の表面に保護膜を形成するため、一定の銀原子が集合して銀ナノ粒子を形成した後は、当該アミン、ジアミンの保護膜によってそれ以上の銀原子が結合することが困難になると考えられる。このため、錯化合物に含まれる銀化合物の分解と銀ナノ粒子の生成を、溶媒が存在せず銀原子が極めて高密度に存在する状態で行った場合でも、典型的には、平均一次粒子径(D50)が10nm以上200nm以下の範囲内で粒子径の揃った銀ナノ粒子が安定して得られるものと考えられる。
【0033】
銀化合物とアミン、ジアミンとの錯化合物の生成において、銀原子とアミン、ジアミンとのモル比を1:1~1:4の範囲内とすることが好ましく、1:2~1:4の範囲内とすることがより好ましい。銀化合物とアミン、ジアミンとの錯化合物の生成において、アミン、ジアミンの量が上記の範囲を超えて少なくなると、アミン、ジアミンが配位していない銀原子の割合が増加し、得られる銀ナノ粒子が肥大するようになる。また、銀原子の2倍量以上のアミン、ジアミンが存在することにより、平均一次粒子径(D50)がほぼ10nm以上200nm以下の範囲内の銀ナノ粒子が安定して得られるようになることから、この程度のアミン、ジアミン量により確実にすべての銀原子がアミン、ジアミンにより配位可能になるものと考える。また、アミン、ジアミンが銀原子の4倍量を超えると、反応系における銀原子の密度が低下して、最終的な銀の回収歩留まりが低下するため、アミン、ジアミンの使用量は、銀原子の4倍量以下とすることが好ましい。また、銀原子とアミン、ジアミンのモル比を1:1程度とする場合には、全てのアミンが銀原子に配位して錯化合物を形成して反応系を保持する分散溶媒が存在しないこととなるため、必要に応じてメタノール等の反応溶媒を混合することも好ましい。また、上記の添加範囲であればアミン、ジアミンの両方を用いてもよい。
【0034】
銀化合物とアミン、ジアミンとの錯化合物を攪拌しながら加熱すると、青色、灰色光沢を呈する懸濁液が得られる。この懸濁液から過剰のアミン、ジアミン等を除去することによって、本実施形態に係る保護分子で表面が被覆された銀ナノ粒子(以下、単に「銀ナノ粒子」とも称する)が得られる。銀化合物とアミン、ジアミンとの錯化合物を加熱して銀ナノ粒子を得る際の条件は、使用する銀化合物やアミン、ジアミンの種類に応じて、熱分解を行う際の温度、圧力、雰囲気などの条件を適宜選択できる。この際に、生成する銀ナノ粒子が、熱分解を行う雰囲気との反応により汚染されたり、銀ナノ粒子の表面を覆う保護膜が分解されたりすることを防止する観点から、アルゴン雰囲気などの不活性雰囲気内で銀化合物の熱分解を行うことが好ましい。一方、銀化合物としてシュウ酸銀を用いる場合には、シュウ酸イオンの分解によって発生する二酸化炭素により反応空間が保護されるため、大気中においてシュウ酸銀とアミン、ジアミンとの錯化合物を加熱することでシュウ酸銀の熱分解が可能である。
【0035】
銀化合物の熱分解のために銀化合物とアミン、ジアミンとの錯化合物を加熱する温度は、アミン、ジアミンの脱離を防止する観点から概ね使用するアミン、ジアミンの沸点以下が好ましい。本実施形態では、一般的に80~130℃程度に加熱することで、アミン、ジアミンで形成された保護膜を有する銀ナノ粒子を得ることができる。
上記の通り、一般に、銀に対して過剰量のアルキルアミンを必要とする他の銀ナノ粒子の合成方法に比べて、本実施形態では、銀原子:アミン、ジアミンの総量が1:1(モル比)でも銀ナノ粒子が高収率で合成できるため、アルキルアミン、アルキルジアミンの使用量を削減できる。また、シュウ酸イオンの熱分解で生じる二酸化炭素は、反応系外に容易に除去されるため、還元剤に由来する副生成物がなく、反応系から銀ナノ粒子の分離も簡単にでき、銀ナノ粒子の純度も高い。
【0036】
[銀ナノ粒子分散液の調製及び銀ナノ粒子層4の形成]
本実施形態に係る銀ナノ粒子3を分散媒として用いられる溶剤等に分散させる際、つまり銀ナノ粒子分散液(銀ナノ粒子層用組成物)を調製する際には、固形成分である銀ナノ粒子3の含有量を分散媒に対して10質量%以上40質量%以下の範囲内とすることが好ましい。銀ナノ粒子3の含有量が10質量%未満では、銀ナノ粒子層用組成物を基材2上に塗工した状態において、銀ナノ粒子3同士の距離が離れることにより、表面プラズモン共鳴に起因する呈色のみが視認されて金属調意匠色を呈さない場合がある。また、銀ナノ粒子3の含有量が40質量%を超えると、銀ナノ粒子層用組成物中における銀ナノ粒子3の分散性が低下し、銀ナノ粒子層用組成物中で銀ナノ粒子3が凝集してしまう場合がある。また、銀ナノ粒子3の表面を保護する保護膜を脱離させないような条件で、保護膜を形成する際に用いた過剰のアルキルジアミン等を除去すると共に使用する溶剤で置換することで、保護膜を有する銀ナノ粒子3が分散した分散液を得ることが好ましい。
【0037】
上記保護膜を有する銀ナノ粒子3を分散させる分散媒としては、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、1-ブタノール、日本テルペン化学社製のターピネオールC、ジヒドロターピネオール、テルソルブTHA-90等を挙げることができる。また、これらの溶剤(分散媒)のうち、数種類を混合して用いてもよい。また、上述の溶剤は、銀ナノ粒子分散液中に、銀ナノ粒子分散液全体の97質量%まで含めることができる。なお、銀ナノ粒子分散液に含まれる上記分散媒は、銀ナノ粒子分散液を基材2等に塗布し乾燥させる際に実質的に除去される。
また、本実施形態に係る銀ナノ粒子3を大気等に晒した場合には、低温でもその保護膜が脱離して銀ナノ粒子3の凝集焼結が開始される。このため、保護膜を形成する際に用いた過剰のアルキルアミン、アルキルジアミン等を溶剤に適宜置換する際には、銀ナノ粒子3が大気等に晒されない条件を選択して置換を行うことが好ましい。
【0038】
本実施形態に係る銀ナノ粒子3を分散媒として用いられる溶剤等に分散させる際、分散剤を用いてもよい。分散剤の含有量としては、銀ナノ粒子3の含有量に対して1質量%以上20質量%以下の範囲内が好ましい。分散剤の含有量が1質量%未満では銀ナノ粒子3が十分に溶剤等に分散せず塗工性が悪くなることがある。また、分散剤の含有量が20質量を超えると金属調意匠性を呈さない場合がある。
【0039】
分散剤は、大きく分けてアニオン系、カチオン系、ノニオン系に分類でき、粒子表面の電位や分散媒の種類に応じて適宜選択する。アニオン系の分散剤は、硫酸エステル型、リン酸エステル型、カルボン酸型、スルホン酸型が代表的なもので主にエチレンオキサイド(EO)付加型の分子構造をとるものが多い。カチオン系の分散剤は、第4級アンモニウム塩型でCl塩型、非Cl塩型、EO付加型に分類できる。ノニオン系分散剤は、アルキレンオキサイド付加型、カルカノールアミド型に大別できる。本実施形態に係る銀ナノ粒子3の表面修飾は、アミン錯体となっていることから、特に、アニオン系の分散剤が好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(塩)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル琥珀酸塩等が好ましく、特にポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(塩)が好ましい。具体的には、フォスファノールRB-40、RD-510Y、RD720N、RL-210、RS-410(東邦化学工業)、NIKKOL DDP-8NV、DDP-2、DDP-4、DDP-6、DDP-8、DDP-10(日光ケミカルズ)、プライサーフ A212C、A215C、A208F、M208F、A208A、A208B、A210B、A219B、DB-01、AL、DBS(第一工業製薬社)等を挙げることができるがこの限りではない。
【0040】
銀ナノ粒子分散液には、銀ナノ粒子層4の表面硬化向上や膜強度向上も目的として、重合性化合物である多官能不飽和二重結合を有する化合物と、光重合開始剤とを加えてもよい。銀ナノ粒子分散液に添加可能な重合性化合物としては、具体的には、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、多塩基酸変性アクリレートであるDPE6A-MS(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートコハク酸変性物)、PE3A-MS(ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸変性物)、DPE6A-MP(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートフタル酸変性物)、PE3A-MS(ペンタエリスリトールトリアクリレートフタル酸変性物)等を挙げることができるがこの限りではない。
【0041】
本実施形態では、銀ナノ粒子3に重合性化合物を添加した場合、銀ナノ粒子3の質量(WAg)と、重合性化合物の質量(WC)との混合質量割合(WAg/WC)は、1/10以上10/1以下の範囲内が好ましく、銀ナノ粒子3の割合が1/10よりも少なくなると、銀ナノ粒子3に由来する金属調意匠色が低下することがある。
【0042】
また、本実施形態の銀ナノ粒子分散液は、電離放射線により重合開始種を発生する化合物、即ち重合開始剤を含んでいてもよい。電離放射線のうち紫外線を照射することにより重合開始種を発生する化合物(光重合開始剤)を使用する場合、その光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α-ヒドロキシケトン、ベンジルメチルケタール、α―アミノケトン、モノアシルフォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイド等を単独或いは混合して用いることができる。具体的には、BASF社、Irgacure 184、Irgacure 651、Irgacure 1173、Irgacure 907、Irgacure 369、Irgacure 819、Irgacure TPO、ランバルティ社、Esacure KIP-150、Esacure ONE等を挙げることができるが、この限りではない。
【0043】
光重合開始剤の使用量は、銀ナノ粒子分散液中の全固形分量を基準として0.05質量%以上1質量%以下の範囲内が好ましく、特に0.1質量%以上1質量%以下の範囲内が好ましい。この範囲より少なくとも多くても、銀ナノ粒子層4の硬度は低くなる傾向にある。
本実施形態では、銀ナノ粒子3と、重合性化合物及び光重合開始剤とを溶剤等に分散・溶解して粘度を調製した塗液である銀ナノ粒子分散液を基材2に塗布し、紫外線照射等の電離放射線照射処理を行い硬化させて、銀ナノ粒子層4を形成する。
【0044】
なお、本実施形態において、上述した成分以外に、必要に応じて相溶性のある添加物、例えば、可塑剤、安定剤、界面活性剤、レベリング剤、カップリング剤などを、本実施形態の目的を損なわない範囲で添加することができる。但し、カールを抑制するため、或いは硬度を上げるためのフィラー類は、透過率の低下や分散性に不具合を生じるため加えないことが好ましい。
【0045】
以下、銀ナノ粒子3の生成に用いる物質について更に詳細に説明する。
<シュウ酸銀>
シュウ酸銀は、銀含有率が高く、通常200℃で分解する。熱分解すると、シュウ酸イオンが二酸化炭素として除去され金属塩がそのまま得られるため、還元剤を必要とせず、不純物が残留しにくい点で有利である。このため、本実施形態において銀ナノ粒子3を得るための銀の原料となる銀化合物としてはシュウ酸銀が好ましく用いられる。そこで、以下、銀化合物としてシュウ酸銀を用いた場合について、本実施形態を説明する。但し、上記のように、銀化合物と所定のジアミンとの間で生成する錯化合物において、当該ジアミンが銀原子に配位した状態であればシュウ酸銀に限定されずに用いられることは言うまでもない。
【0046】
本実施形態で用いられるシュウ酸銀として制限はなく、例えば、市販のシュウ酸銀を用いることができる。また、シュウ酸銀のシュウ酸イオンの20モル%以下を、例えば炭酸イオン、硝酸イオン及び酸化物イオンの少なくとも1種以上で置換してもよい。特に、シュウ酸イオンの20モル%以下を炭酸イオンで置換した場合、シュウ酸銀の熱的安定性を高める効果がある。置換量が20モル%を超えると上述の錯化合物が熱分解しにくくなる場合がある。特に、沸点が250℃以下のアルキルジアミンを含んだシュウ酸イオン・アルキルジアミン・銀錯化合物では、100℃以下の低い温度での熱分解で銀ナノ粒子を高効率で得ることができる。
【0047】
<アミン>
本実施形態で用いられるアミンは、アルキルアミン、アルキルジアミンであり、特に、その構造に制限はない。アミンは、シュウ酸銀と反応して、上述の錯化合物を形成するため、少なくともひとつのアミノ基が1級アミノ基、或いは2級アミノ基であることが必要であり、1級アミノ基であることが好ましい。さらに、ジアミンの場合は、非極性の分散溶媒との親和性を高めるため、もう一方のアミノ基は3級アミノ基であることが望ましい。アルキルアミンとしては、例えば、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、1,2-ジメチルプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、イソアミルアミン、tert-アミルアミン、3-ペンチルアミン、n-アミルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ペンチルアミン、n-オクチルアミン、2-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ノニルアミン、n-アミノデカン、n-アミノウンデカン、n-ドデシルアミン、n-トリデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ペンタデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-ヘプタデシルアミン、n-オクタデシルアミン、n-オレイルアミン、等を挙げることができる。さらに、アルキルジアミンとしては、例えば、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチル-1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、N,N-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N-ジイソプロピル、N,N-ジブチルアミノプロパン、N,N-ジイソブチル1,3-ジアミノプロパン、等が挙げられるが、この限りではない。また、複数の異なるアルキルジアミンを同時にシュウ酸銀と反応させてもよい。
【0048】
[下地層用組成物の調製及び下地層5の形成]
本実施形態では、(メタ)アクリル酸エステル化合物と、電離放射線により重合開始種を発生する化合物とを含む塗液組成物である下地層用組成物を基材2上に塗布し、下地層用組成物に電離放射線を照射し硬化させて、所謂下地層5を形成してもよい。なお、下地層5の形成工程の詳細については、後述する。
下地層5の形成に用いる(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等のオリゴマー、プレポリマー、モノマー等のラジカル重合性化合物等が挙げられる。これらの樹脂は、例えば、熱、紫外線、電子線等のエネルギーを加えることで架橋するものである。これらの化合物を、膜強度、基材との密着性、カール量を考慮しながら適宜選択する。
【0049】
下地層5を、基材2から容易に剥離可能な自立膜とする場合には、下地層用組成物は、(メタ)アクリル酸エステル化合物として、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂A(以下、単に「樹脂A」とも称する)及びウレタン(メタ)アクリレート樹脂B(以下、単に「樹脂B」とも称する)を少なくとも含むことが好ましい。樹脂Aは、1分子中に2つのアクリロイル基またはメタクリロイル基を含み、且つ分子量が2000以下のモノマー、オリゴマーである。また、樹脂Bは、1分子中に2つまたは3つのアクリロイル基またはメタクリロイル基を含み、且つ分子量が3000以上20000以下のモノマー、オリゴマーである。なお、下地層用組成物において、樹脂Aの質量%(WA)と樹脂Bの質量%(WB)の比(WA/WB)は、30質量%/70質量%~70質量%/30質量%の範囲内であることが好ましい。
【0050】
本実施形態では、上述のように、樹脂Aとして、1分子中に2つのアクリロイル基またはメタクリロイル基を含むモノマーを使用し、樹脂Bとして、1分子中に2つまたは3つのアクリロイル基またはメタクリロイル基を含むモノマーを使用することが好ましい。これは、アクリロイル基またはメタクリロイル基が1つである場合には、目的とする光硬化性樹脂フィルムを形成することが困難であり、硬化不足によるタックを生じるおそれがあるからである。また、アクリロイル基またはメタクリロイル基が4つ以上である場合には、硬化収縮が大きいことによるカールが発生し、塗膜の引張伸度が著しく低下するおそれがあるからである。
【0051】
下地層用組成物を用いて形成した下地層5において、樹脂Aは、主に強度向上に寄与する。このため、樹脂Aと紫外線重合開始剤とを含み、樹脂Bを含まない塗液を光硬化させた光硬化物は、引張試験における最大応力が60N/mm2以上であり、且つ引張伸度が10%以下であることが好ましい。また、上記の引張特性を得るために、樹脂Aの分子量は、2000以下であることが好ましい。樹脂Aの分子量が2000より大きいと、塗液粘度が高くなり、塗工が困難となる。
【0052】
なお、樹脂Aとしては、例えば、特開2013-159691に記載の、ウレタンアクリレートC-1(新中村化学工業社)、AH-600、AT-600(共栄社化学社)などの他、UA-1280、UA-1280MK(新中村化学工業社)、紫光UV6300B、UV7620A、UV7600B(日本合成化学社)、UF-8001G(共栄社化学社)等を用いることができる。つまり、樹脂Aとしては、ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーやモノマーを用いることができる。これらの中でも、特にUA-1280MKを好ましく用いることができる。
【0053】
また、樹脂Bとしては、例えば、紫光UV7000B、紫光UV3520(日本合成化学社)等を用いることができる。つまり、樹脂Bとしては、ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーやモノマーを用いることができる。これらの中でも、特に紫光UV7000Bを好ましく用いることができる。
なお、下地層用組成物を用いて形成した下地層5に含まれる(メタ)アクリル酸エステル化合物は、PET等の基材2から容易に剥離が出来て、自立膜として成り立たせるために、靭性と伸度とを必要とする。そのため、ウレタン(メタ)アクリレート以外のオリゴマーやモノマーのみを使用した場合、硬化膜のカールが大きいことや基材2から剥離できない等の問題が生じる可能性がある。
【0054】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物を硬化させるための電離放射線により重合開始種を発生する化合物、即ち重合開始としては、上述の銀ナノ粒子分散液と同様の光ラジカル重合開始剤を用いることができる。具体的には、光重合開始剤として、例えば、Esacure ONE(ランバルティ社)を用いることができる。
重合開始剤の含有量は、塗液である下地層用組成物中の全固形分量を基準として0.5質量%以上5質量%以下の範囲内が好ましい。重合開始剤の含有量がこの範囲外であると、膜硬度は低くなるおそれがある。
【0055】
また、下地層用組成物は、溶剤をさらに含んでもよい。下地層用組成物に含まれる溶剤は、樹脂Aや樹脂Bとの相溶性が高いケトン系溶剤であるアセトン、またはメチルエチルケトンの中から塗工適性等を考慮して適宜選択し得る。
下地層5の形成方法は、基材2に下地層用組成物を塗布できる限りにおいては限定されるものではなく、例えば、スピンコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スプレー法、インクジェット法等が挙げられる。
なお、下地層5は、市販のクリアラッカーを噴霧塗布して形成してもよい。例えば、ニトロセルロースラッカー、アクリルラッカー、水性ラッカーが挙げられ、基材2を侵さないものを適宜選択する。
【0056】
[オーバーコート層用組成物の調製及びオーバーコート層6の形成]
オーバーコート層6は、銀ナノ粒子層4の金属調意匠色が変化しないこと、銀ナノ粒子層4との密着がよいことを条件に、(メタ)アクリル酸エステル化合物と、電離放射線により重合開始種を発生する化合物(重合開始剤)とを含むオーバーコート層用組成物を用いて形成される。オーバーコート層6があることで耐光性や耐熱性等の膜の耐久性を強めることができる。
オーバーコート層用組成物に用いる(メタ)アクリル酸エステル化合物は、光硬化後に銀ナノ粒子層4と密着することが望ましいので、1分子中に2つ以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を含むオリゴマーやモノマーが好ましい。アクリロイル基またはメタクリロイル基が1つでは塗膜として弱く、銀ナノ粒子層4との密着が悪い場合もある。より密着性を強くするために好ましくは、弱酸のカルボン酸が含まれるポリエステル系ウレタンアクリレートが好ましい。具体的には、UF-3003、UF-3003M、UF-3123M、UF-3223BA(共栄社化学社)等を用いることができる。
【0057】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物を硬化させるための重合開始剤としては、上述の銀ナノ粒子分散液と同様の光ラジカル重合開始剤を用いることができる。具体的には、光重合開始剤として、例えば、Esacure ONE(ランバルティ社)を用いることができる。
重合開始剤の含有量は、塗液であるオーバーコート層用組成物中の全固形分量を基準として0.5質量%以上5質量%以下の範囲内が好ましい。重合開始剤の含有量がこの範囲外であると、膜硬度は低くなるおそれがある。
【0058】
また、オーバーコート層用組成物は、溶剤をさらに含んでもよい。オーバーコート層用組成物に含まれる溶剤は、相溶性が高いケトン系溶剤であるアセトン、またはメチルエチルケトンの中から塗工適性等を考慮して適宜選択し得る。
オーバーコート層6の形成方法は、銀ナノ粒子層4上にオーバーコート層用組成物を塗布できる限りにおいては限定されるものではなく、例えば、スピンコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スプレー法、インクジェット法等が挙げられる。
なお、オーバーコート層6は、市販のクリアラッカーを噴霧塗布して形成してもよい。例えば、ニトロセルロースラッカー、アクリルラッカー、水性ラッカーが挙げられ、銀ナノ粒子層4を侵さないものを適宜選択する。
【0059】
以上のように、基材2(下地層5)上に銀ナノ粒子層4とオーバーコート層6とを形成することにより、高い金属調意匠性と良好な電磁波透過性とを備えた電磁波透過部材を作成することができる。より詳しくは、銀の原料となる銀化合物として、例えば、シュウ酸銀を用いると共に、N,N-ジアルキルアミノアルキルアミンを介在させることによって、シュウ酸銀に含まれる銀原子にそのジアミンの1級アミノ基部分が配位した錯化合物が形成される。そして、この状態でシュウ酸銀を構成するシュウ酸イオンの部分を熱分解することにより、銀ナノ粒子3を高収率で調製することができる。また。銀ナノ粒子3は、錯形成しない3級アミノ基が粒子の最外面を向くため、カルボキシ基を有する例えばアクリレート化合物、メタクリレート化合物とイオン結合により引き寄せあうことで分散系を崩すことなく分散液として調製することができる。さらに得られた塗液は、有機溶剤等で容易に希釈可能であり、且つ光重合開始剤等も添加可能である。この分散液を用いて基材2上で作製した銀ナノ粒子3の塗布膜を高圧水銀灯等でUV照射すると、膜強度が高く基材密着性の強い硬化膜を得ることができる。
【0060】
つまり、本実施形態の電磁波透過部材1の製造方法であれば、銀ナノ粒子分散液を基材2上に塗工するだけで、高い金属調意匠性を備えた電磁波透過部材を作成することができる。
また、本実施形態の電磁波透過部材1の製造方法であれば、銀ナノ粒子分散液を基材2上に塗工するだけで、銀ナノ粒子層4の表面に島状構造を形成することができるため、良好な電磁波透過性を備えた電磁波透過部材を作成することができる。
以下に、実施例として、銀ナノ粒子3の製造方法及び金属調意匠色を呈する電磁波透過部材1の評価を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
[実施例1]
〔シュウ酸銀の合成〕
シュウ酸二水和物(関東化学社)9.92gに蒸留水60mLを加え加温しながら溶解させ、110℃のオイルバス中で攪拌しながら、硝酸銀(関東化学社)26.7gに20mLの蒸留水を加え加温しながら溶解させたものを加え、1時間加熱攪拌を続けた。析出したシュウ酸銀を自然ろ過で回収し、さらに熱水200mL、メタノール(関東化学社)50mLでろ過洗浄した後、遮光デシケーター内で減圧しながら室温乾燥した。こうして得たシュウ酸銀の収量は、21.6g(収率90.4%)であった。
【0062】
〔銀ナノ粒子3の合成〕
N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン(東京化成社)3.26gにオレイン酸0.13gを加えたところに、上述の工程で得たシュウ酸銀1.90gを加え、110℃のオイルバスで加熱攪拌した。1分以内で二酸化炭素の発泡が起こり、数分後に褐色の懸濁液に変化した。5分間加熱後、冷却したところにメタノール30mLを加え、遠心分離により得られた沈殿物を自然乾燥すると青色固形物1.48g(銀基準収率97.0%)を得た。なお、
図2は、実施例1で得られた銀ナノ粒子3の走査型電子顕微鏡像である。また、
図3は、実施例1で得られた銀ナノ粒子の粒度分布及び累積度数(%)を示す図である。
【0063】
〔銀ナノ粒子分散液の調製〕
上述の工程で得た青色固形物0.10gをトルエン(関東化学社)2.0gに分散させて、分散剤としてプライサーフA208F(第一工業製薬社)0.02gを加え、銀ナノ粒子分散液(銀ナノ粒子層用組成物)とした。
上記工程で得た銀ナノ粒子3を含む銀ナノ粒子層用組成物を、タミヤ社スプレーワークHGシングルエアーブラシセット(180D)の塗液カップに入れ、当該エアーブラシにてPETフィルム(基材)上に噴霧し、室温で5分間乾燥した。その後市販のクリアラッカーでオーバーコートすることで金属調意匠色を呈する電磁波透過部材を得た。なお、
図4は、実施例1で得た銀ナノ粒子層4の表面の走査型電子顕微鏡像であり、
図4には、銀ナノ粒子層4の表面における島状構造が示されている。
【0064】
[実施例2]
〔銀ナノ粒子3の合成〕
実施例1のN,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン(東京化成社)3.26gの代わりにn-オクチルアミン(東京化成社)2.26g、n-ブチルアミン(東京化成社)0.78g、N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン(東京化成社)0.22gの混合物を使用する以外は実施例1と同様に操作して、青色固形物1.40g(銀基準収率91.7%)を得た。
【0065】
〔銀ナノ粒子分散液の調製〕
上述の工程で得た青色固形物0.10gに、シクロヘキサノン(関東化学社)2.0g、分散剤としてプライサーフA208F(第一工業製薬社)0.02gを加え、攪拌分散させて、銀ナノ粒子分散液(銀ナノ粒子層用組成物)とした。
実施例1の銀ナノ粒子分散液の代わりに上述した銀ナノ粒子分散液を用いた以外は実施例1と同様に操作して金属調意匠色を呈する電磁波透過部材を得た。
【0066】
[比較例1]
アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レフィルム加工株式会社製「VM-PET 1510」、膜厚12μm)をそのまま評価した。
【0067】
<正反射率の評価>
日立U4100分光光度計を用いて入射角が25°で波長400~800nmの光の正反射率(鏡面反射率)を測定した。
正反射率(鏡面反射率)が10%以上であれば、金属調意匠性を備えている。
【0068】
<表面抵抗値の測定>
ミリ波透過性(電磁波透過性)を簡易に測定するため、三菱ケミカルアナリテック社製高抵抗低効率計を用いて表面抵抗値を測定し、導電性がない(即ち表面抵抗値が測定できない、あるいは極めて大きい)ことを確認した。印加電圧は500Vで測定した。また、自動車業界では、良好な電磁波透過性を得るための表面抵抗値として、1×107Ω/□以上が目安とされている。
【0069】
<電磁波透過性の評価>
測定はベクトルネットワークアナライザ(Keysight PNA N5222B 10MHz-26.5GHz,Virginia Diodes Inc,WR12 55-95GHz)を用いて、フリースペースタイプS パラメータ測定法で測定した。実施例1の電磁波透過部材を1片が120mmの正方形に成形した平板状の試料を用い、送信アンテナからミリ波を試料に照射し、試料を透過して受信アンテナに入射するミリ波の強度を測定し減衰量(dB)を得た。測定周波数は、60GHz~90GHzとし79GHzで評価した。
これらの各評価結果を表1、
図5に示す。
【0070】
【0071】
以上のように、実施例1で得られた電磁波透過部材は、金属調意匠色を呈しながらも使用する上で十分な電磁波透過性を有することが確認できた。また、実施例2は、その電磁波透過性(透過減衰量)については未測定ではあるが、測定した表面抵抗値が実施例1と同程度であることから、実施例1と同程度に粒子間に隙間があり、実施例1と同程度の電磁波透過性があると考えられる。一方で比較例1に示したアルミ蒸着膜は、金属調意匠色を呈するものの、導電性があるため、電磁波透過性を期待できるものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明したように、本発明における銀ナノ粒子層は、金属調意匠色を呈する電磁波透過部材に適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 …電磁波透過部材
2 …基材
3 …銀ナノ粒子
4 …銀ナノ粒子層
5 …下地層
6 …オーバーコート層