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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/16 20060101AFI20240820BHJP
   B43K 21/22 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B43K21/16 W
B43K21/22 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020124885
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021380
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】松下 欣也
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-037227(JP,A)
【文献】特開2014-104682(JP,A)
【文献】特開平02-122996(JP,A)
【文献】国際公開第2018/164208(WO,A1)
【文献】米国特許第06254296(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00-21/26
24/00-24/18
27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過大な筆圧が芯に加えられたときに前記芯が折れづらくなるよう作動する芯折れ防止機構を備えたシャープペンシルであって、
先端に設けられた芯パイプから突出した前記芯の長さに基づいて、前記芯折れ防止機構が作動する場合と作動しない場合とを切り替え可能に構成されたものであり、
前記芯折れ防止機構が、前記芯を保持したチャックをスプリングの付勢力に抗して後方に移動可能に構成したものであり、
前記芯折れ防止機構の作動を規制する作動規制手段が設けられたものであり、
前記作動規制手段が、筆記軸の先端部に前後動可能に支持された前記芯パイプを含み当該芯パイプが筆記面に押圧されて後退した場合にのみ作動し得るように構成されているものであり、
前記作動規制手段が、前記芯パイプに係合しない場合の姿勢である第一姿勢と、前記芯パイプに係合した場合の前記第一姿勢とは異なる姿勢である第二姿勢との間で姿勢変更可能な移動規制部材を設けたものであり、
前記移動規制部材が、前記第二姿勢において前記芯を保持した前記チャックの後退を規制し得るものであるシャープペンシル。
【請求項2】
過大な筆圧が芯に加えられたときに前記芯が折れづらくなるよう作動する芯折れ防止機構を備えたシャープペンシルであって、
先端に設けられた芯パイプの後退動作に基づいて、前記芯折れ防止機構が作動する状態から作動しない状態に切り替え可能に構成されたものであり、
前記芯折れ防止機構が、前記芯を保持したチャックをスプリングの付勢力に抗して後方に移動可能に構成したものであり、
前記芯折れ防止機構の作動を規制する作動規制手段が設けられたものであり、
前記作動規制手段が、筆記軸の先端部に前後動可能に支持された前記芯パイプを含み当該芯パイプが筆記面に押圧されて後退した場合にのみ作動し得るように構成されているものであり、
前記作動規制手段が、前記芯パイプに係合しない場合の姿勢である第一姿勢と、前記芯パイプに係合した場合の前記第一姿勢とは異なる姿勢である第二姿勢との間で姿勢変更可能な移動規制部材を設けたものであり、
前記移動規制部材が、前記第二姿勢において前記芯を保持した前記チャックの後退を規制し得るものであるシャープペンシル。
【請求項3】
前記芯パイプが筆記面に押圧されて後退した場合における前記芯の長さが所定値以下のときに前記芯折れ防止機構が作動しないように設定されている請求項1記載のシャープペンシル。
【請求項4】
前記所定値は、前記芯パイプの先端と前記芯の先端とが筆記面に対して同時に接し得る値である請求項3記載のシャープペンシル。
【請求項5】
前記芯パイプが、前後方向に延びてなり内部に前記芯が挿通されるパイプ部と、このパイプ部の基端に一体に設けられ前記パイプ部よりも大きな外径をなすスライダー部とを備えたものであり、
前記芯パイプが後退し前記スライダー部の後端部が前記移動規制部材に係合した場合に、当該移動規制部材が前記第一姿勢から前記第二姿勢に姿勢変更し得るようになっている請求項1、2、3又は4記載のシャープペンシル。
【請求項6】
前記チャックに外嵌し前後方向の相対移動により当該チャックを開閉動作させ得るチャック保持部材を備えたものであり、
前記チャック保持部材が外周にフランジ部を設けてなるものであり、
前記移動規制部材が、前記第二姿勢において前記フランジ部に係合し得る係合爪を備えたものであり、
前記係合爪が前記フランジ部に係合することにより、前記チャック保持部材を介して前記チャックの後退が制限されている請求項5記載のシャープペンシル。
【請求項7】
前記筆記軸の全部又は一部が、外部から内部を視認し得る構成をなしており、
前記芯折れ防止機構及び前記作動規制手段の作動状態を外部から視覚を通じて確認可能である請求項1、2、3、4、5又は6記載のシャープペンシル。
【請求項8】
過大な筆圧が芯に加えられたときに前記芯が折れづらくなるよう作動する芯折れ防止機構を備えたシャープペンシルであって、
前記芯折れ防止機構が、前記芯を保持したチャックをスプリングの付勢力に抗して後方に移動可能に構成したものであり、
先端に設けられた芯パイプから突出した前記芯の長さに基づいて、前記チャックが後方に移動して前記芯折れ防止機構が作動する場合と前記チャックの後退が規制されることにより前記芯折れ防止機構が作動しない場合とを切り替え可能に構成されたものであり、
前記芯パイプが筆記面に押圧されて後退した場合における前記芯の長さが所定値以下のときに前記芯折れ防止機構が作動しないように設定されており、
前記所定値は、ゼロよりも大きく、且つ、前記芯パイプの先端と前記芯の先端とが筆記面に対して同時に接し得る値であるシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャープペンシルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、過大な筆圧が芯に加えられた場合に当該芯がパイプ内に引っ込み得るように構成された芯折れ防止機能付きのシャープペンシルが知られている。このシャープペンシルは、芯を折れ難くするために、芯を保持したチャックをスプリングの付勢力に抗して後方に移動可能に設けている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところが、従来の構成のものは、筆記時において、常に、芯折れ防止機能が作動していることになる。換言すれば、従来の芯折れ防止機能付きのシャープペンシルは、芯に対して、常にスプリングの付勢力を及ばせているものとなっている。
【0004】
したがって、従来の芯折れ防止機能付きのシャープペンシルは、スプリングによる付勢力が常に芯に対して及んでいることに起因して、使用者に対して書き難さを感じさせてしまうものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-37227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、芯折れ防止機能が常に作用するために使用者に対して書き難さを感じさせてしまうという不具合を好適に抑制し得るシャープペンシルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0008】
請求項1に記載の発明は、過大な筆圧が芯に加えられたときに前記芯が折れづらくなるよう作動する芯折れ防止機構を備えたシャープペンシルであって、先端に設けられた芯パイプから突出した前記芯の長さに基づいて、前記芯折れ防止機構が作動する場合と作動しない場合とを切り替え可能に構成されたものであり、前記芯折れ防止機構が、前記芯を保持したチャックをスプリングの付勢力に抗して後方に移動可能に構成したものであり、前記芯折れ防止機構の作動を規制する作動規制手段が設けられたものであり、前記作動規制手段が、筆記軸の先端部に前後動可能に支持された前記芯パイプを含み当該芯パイプが筆記面に押圧されて後退した場合にのみ作動し得るように構成されているものであり、前記作動規制手段が、前記芯パイプに係合しない場合の姿勢である第一姿勢と、前記芯パイプに係合した場合の前記第一姿勢とは異なる姿勢である第二姿勢との間で姿勢変更可能な移動規制部材を設けたものであり、前記移動規制部材が、前記第二姿勢において前記芯を保持した前記チャックの後退を規制し得るものであるシャープペンシルである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、過大な筆圧が芯に加えられたときに前記芯が折れづらくなるよう作動する芯折れ防止機構を備えたシャープペンシルであって、先端に設けられた芯パイプの後退動作に基づいて、前記芯折れ防止機構が作動する状態から作動しない状態に切り替え可能に構成されたものであり、前記芯折れ防止機構が、前記芯を保持したチャックをスプリングの付勢力に抗して後方に移動可能に構成したものであり、前記芯折れ防止機構の作動を規制する作動規制手段が設けられたものであり、前記作動規制手段が、筆記軸の先端部に前後動可能に支持された前記芯パイプを含み当該芯パイプが筆記面に押圧されて後退した場合にのみ作動し得るように構成されているものであり、前記作動規制手段が、前記芯パイプに係合しない場合の姿勢である第一姿勢と、前記芯パイプに係合した場合の前記第一姿勢とは異なる姿勢である第二姿勢との間で姿勢変更可能な移動規制部材を設けたものであり、前記移動規制部材が、前記第二姿勢において前記芯を保持した前記チャックの後退を規制し得るものであるシャープペンシルである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記芯パイプが筆記面に押圧されて後退した場合における前記芯の長さが所定値以下のときに前記芯折れ防止機構が作動しないように設定されている請求項1記載のシャープペンシルである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記所定値は、前記芯パイプの先端と前記芯の先端とが筆記面に対して同時に接し得る値である請求項3記載のシャープペンシルである。
【0014】
請求項に記載の発明は、前記芯パイプが、前後方向に延びてなり内部に前記芯が挿通されるパイプ部と、このパイプ部の基端に一体に設けられ前記パイプ部よりも大きな外径をなすスライダー部とを備えたものであり、前記芯パイプが後退し前記スライダー部の後端部が前記移動規制部材に係合した場合に、当該移動規制部材が前記第一姿勢から前記第二姿勢に姿勢変更し得るようになっている請求項1、2、3又は4記載のシャープペンシルである。
【0015】
請求項に記載の発明は、前記チャックに外嵌し前後方向の相対移動により当該チャックを開閉動作させ得るチャック保持部材を備えたものであり、前記チャック保持部材が外周にフランジ部を設けてなるものであり、前記移動規制部材が、前記第二姿勢において前記フランジ部に係合し得る係合爪を備えたものであり、前記係合爪が前記フランジ部に係合することにより、前記チャック保持部材を介して前記チャックの後退が制限されている請求項記載のシャープペンシルである。
【0016】
請求項7に記載の発明は、前記筆記軸の全部又は一部が、外部から内部を視認し得る構成をなしており、前記芯折れ防止機構及び前記作動規制手段の作動状態を外部から視覚を通じて確認可能である請求項1、2、3、4、5又は6記載のシャープペンシルである。
請求項8に記載の発明は、過大な筆圧が芯に加えられたときに前記芯が折れづらくなるよう作動する芯折れ防止機構を備えたシャープペンシルであって、前記芯折れ防止機構が、前記芯を保持したチャックをスプリングの付勢力に抗して後方に移動可能に構成したものであり、先端に設けられた芯パイプから突出した前記芯の長さに基づいて、前記チャックが後方に移動して前記芯折れ防止機構が作動する場合と前記チャックの後退が規制されることにより前記芯折れ防止機構が作動しない場合とを切り替え可能に構成されたものであり、前記芯パイプが筆記面に押圧されて後退した場合における前記芯の長さが所定値以下のときに前記芯折れ防止機構が作動しないように設定されており、前記所定値は、ゼロよりも大きく、且つ、前記芯パイプの先端と前記芯の先端とが筆記面に対して同時に接し得る値であるシャープペンシルである。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、芯折れ防止機能が常に作用するために使用者に対して書き難さを感じさせてしまうという不具合を好適に抑制し得るシャープペンシルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態を示す側面図。
図2】同実施形態における一部破断した側面図。
図3】同実施形態における芯折れ防止機構の作動説明図。
図4】同実施形態における作動規制手段の作動説明図。
図5】同実施形態における作動規制手段の作動説明図。
図6図4(a)の対応断面図。
図7図4(b)の対応断面図。
図8】同実施形態における部品(ロックフレーム)の説明図。
図9】同実施形態における部品(ロックスリーブ)の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図1~9を参照して説明する。
【0020】
この実施形態は、本発明を、ノック式のシャープペンシルに適用したものである。シャープペンシルは、使用者による筆記面Mに対する筆記操作により、過大な筆圧が芯Sに加えられたときに芯Sが折れづらくなるよう作動する芯折れ防止機構Cを備えたものである。
【0021】
シャープペンシルは、使用者が把持する部位をなす筆記軸Aと、筆記軸Aの内部に配設されたチャック2を主体に構成された芯繰出機構Bと、芯S(この実施形態では、芯Sの太さが0.3mmのものを適用している。)を保持したチャック2をスプリングたるクッションスプリングv2の付勢力に抗して動作させる芯折れ防止機構Cと、芯折れ防止機構Cの作動を規制し得る作動規制手段Dとを備えたものである。
【0022】
芯繰出機構Bは、筆記軸Aの内部に設けられ芯Sを収容し得る芯ケースb1と、当該芯ケースb1の前に連結されたチャック2と、チャック2に外装され当該チャック2に対して前後方向に相対移動することによりチャック2を開閉動作させるチャック保持部材3を有したものである。
【0023】
芯折れ防止機構Cは、筆記軸Aの内部に設けられ芯Sを保持したチャック2をクッションスプリングv2の付勢力に抗して後方に移動可能に構成したものである。
【0024】
作動規制手段Dは、筆記軸Aの内部に設けられ芯Sを保持したチャック2の後退を規制することにより芯折れ防止機構Cの作動を規制し得るように構成されたものである。
【0025】
以下、このシャープペンシルについて詳述する。
【0026】
<筆記軸A>
筆記軸Aは、シャープペンシルの内部機構を収容するケースの役割を担うものである。筆記軸Aは、先端部に芯パイプ1のパイプ部11が挿通し得る保持孔jを有し芯パイプ1を前後方向に進退動作可能に保持し得る軸先端部a1と、筒状をなし軸先端部a1の後部に連結された軸前部a2と、筒状をなし前端部が軸前部a2の後部に連結されるとともに後端部が開放された軸後部a3とを備えたものである。
【0027】
軸先端部a1は、側面視において前方に向かって漸次先細りになる概略円錐形状をなし前端部に芯パイプ1のパイプ部11を進退動作可能に保持し得る前後方向に延びた保持孔j1が設けられた円錐状部分a11と、円錐状部分a11の後に連設され当該円錐状部分a11よりも大きな径をなす前円筒状部分a12と、前円筒状部分a12の後に連設され当該前円筒状部分a12よりも大きな径をなす後円筒状部分a13とを備えている。
【0028】
軸先端部a1は、内部に作動規制手段Dを構成するロックスリーブ4とロックスリーブ4を保持するロックフレーム5を前後動しないように保持している。軸先端部a1は、その全体が透明又は半透明をなした合成樹脂製のものであり、外部から内部を視認可能な構成をなしている。
【0029】
軸前部a2は、軸先端部a1の後部に外嵌することにより軸先端部a1に連結されているものである。なお、軸先端部a1は、軸前部a2の後端部から挿入され、前円筒状部分a12及び後円筒状部分a13が所定の位置において軸前部a2の前部に内嵌されるようになっている。軸前部a2は、その全体が透明又は半透明をなした合成樹脂製のものであり、外部から内部を視認可能な構成をなしている。
【0030】
軸前部a2には、作動規制手段Dを構成する移動規制部材41の係合爪tに近接した部位の外周面に、内方に向かって凹ませた前の凹み部a21が設けられている。さらに、軸前部a2には、芯折れ防止機構Cを構成する隙間skに近接した部位の外周面に、内方に向かって凹ませた後の凹み部a22が設けられている。
【0031】
前の凹み部a21は、内部を見えやすくする凹レンズの役割を担うものである。前の凹み部a21は、使用者に対して、作動規制手段Dが作動しているのか否かを視認させやすくしている。
【0032】
後の凹み部a22は、内部を見えやすくする凹レンズの役割を担うものである。後の凹み部a22は、使用者に対して、芯折れ防止機構Cが作動しているのか否かを視認させやすくしている。
【0033】
軸後部a3は、軸前部a2における後部の内周面に螺合することにより軸前部a2に連結されている。軸後部a3の後端部からは、内部に収容された芯ケースb1の後端部に装着されたキャップb2が突出するようになっている。キャップb2は、芯繰出機構Bを構成するものであり、芯Sを繰り出すために使用者が前方に押圧するノック部として機能する部位をなす。
【0034】
軸後部a3の前端縁は、軸前部a2の内部に収容された後のバネ受けスリーブc2の後端部に設けられた鍔部c21の後面に当接している。後のバネ受けスリーブc2における鍔部c21の前面には、ミドルスリーブc3の後端縁が当接している。ミドルスリーブc3における前部の外周面に設けられた段部c32は、軸先端部a1における後円筒状部分a13の後端縁に接続している。
【0035】
つまり、ミドルスリーブc3及び後のバネ受けスリーブc2は、軸先端部a1と軸後部a3との間に挟まれて位置し、それぞれの前後方向の移動が規制されている。換言すれば、ミドルスリーブc3及び後のバネ受けスリーブc2は、筆記軸Aに対して前後動しないように位置決めされている。ミドルスリーブc3と軸先端部a1との間に配されたロックスリーブ4及びロックフレーム5も、筆記軸Aに対して前後動しないように位置決めされている。
【0036】
一方で、芯パイプ1、チャック2、芯ケースb1、キャップb2、チャック保持部材3、及び、前のバネ受けスリーブc1は、筆記軸Aに対して前後動可能に収容されている。
【0037】
次に、筆記軸A内に設けられた芯繰出機構B、芯折れ防止機構C、及び、作動規制手段Dについて詳述する。
【0038】
<芯繰出機構B>
芯繰出機構Bは、後端部に設けられたノック部たるキャップb2をチャックスプリングv1の付勢力に抗して前方に押圧操作することにより、前方への移動が規制されたチャック保持部材3に対してチャック2を前方に相対移動させて芯Sを前に向かって繰り出すことができるようにしたものである。すなわち、芯繰出機構Bは、チャック2とチャック保持部材3の前後方向の相対移動により、チャック2に芯Sを持つ姿勢と芯Sを持たない姿勢とを交互に採らせて、芯Sの繰り出しを行わせるものである。
【0039】
芯繰出機構Bは、軸心部分に芯通路21が設けられ芯Sを保持する姿勢と芯Sを保持しない姿勢とを採ることができる既知の構成であるチャック2と、チャック2が挿入されるチャック挿入孔32を有してなりチャック2に外嵌し当該チャック2に対する前後方向の相対移動により当該チャック2を開閉動作させ得るチャック保持部材3と、チャック2の後端部に軸心を一致させて一体的に連結されてなり、内部に芯Sを収容し得る芯ケースb1と、芯ケースb1の後端部に着脱可能に取り付けられたキャップb2と、芯ケースb1と前のバネ受けスリーブc1との間に介設された芯Sの繰出用のスプリングであるチャックスプリングv1とを備えたものである。
【0040】
チャック2は、既知の構成のものであり、先端部が三又状に形成された真鍮製のものである。
【0041】
チャック保持部材3は、軸心部分に前後方向に貫通したチャック挿入孔32が設けられている。チャック保持部材3におけるチャック挿入孔32の先端部には、チャック2の前後移動に対応させてチャック2の先端部を開閉動作させるチャックリングcrが配設されている。チャックリングcrの先端側にはノックしたときの芯Sの出代となるクリアランスが形成されている。
【0042】
チャック保持部材3は、前部の外周に設けられた円柱状のフランジ部31と、フランジ部31よりも後部の外周に鍔状に設けられた円柱状をなす位置決め部33とを備えている。位置決め部33の前端面はミドルスリーブc3の前端部に設けられた鍔部c31と係合し、チャック保持部材3の前方への移動を規制している。
【0043】
位置決め部33は、前のバネ受けスリーブc1の前端部に設けられた凹陥部c13に内嵌するようになっている。チャック保持部材3は、芯折れ防止機構Cが作用する場合に、クッションスプリングv2の付勢力に抗して前のバネ受けスリーブc1とともに後方に一体的に移動し得るものとなっている。
【0044】
芯ケースb1は、内部に芯Sを収容し得る空間を形成したものであり、収容された芯Sをチャック2の芯通路21に対して導入し得る形状をなしている。芯ケースb1の前端部にはチャック2の後端部が連結される円筒状のチャック連結部b11が設けられている。チャック連結部b11の外周には、チャックスプリングv1の後端部を受けるばね受け部たるばね受け段部b12が形成されている。
【0045】
<芯折れ防止機構C>
芯折れ防止機構Cは、使用者の筆記操作により過大な筆圧が芯Sに加えられたときに当該芯Sをクッションスプリングv2の付勢力に抗して後退させ得るものである。芯折れ防止機構Cは、芯パイプ1の先端stから前方に突出した芯Sが、使用者の筆記操作による筆圧によって筆記面Mから応力を受け、クッションスプリングv2の付勢力に抗して後方に弾性的に後退し得る(後方にクッションし得る)ように構成されたものである。
【0046】
芯折れ防止機構Cは、芯Sを保持し得るチャック2と、芯Sを保持したチャック2に外嵌し当該チャック2とともに後退動作し得るチャック保持部材3と、チャック保持部材3の後端部に接続し、当該チャック保持部材3と一体的に前後動し得る前のバネ受けスリーブc1と、筆記軸Aに対して前後動し得る前のバネ受けスリーブc1と筆記軸Aに対して前後動しない後のバネ受けスリーブc2との間に介設されたクッションスプリングv2と、クッションスプリングv2により付勢されたチャック2、チャック保持部材3、及び、前のバネ受けスリーブc1の前方への移動を規制し得る移動規制部たる鍔部c31を有するとともにクッションスプリングv2の付勢力に抗して芯Sを保持したチャック2、チャック保持部材3、及び、前のバネ受けスリーブc1の後方への移動を一定の範囲で許容し得るミドルスリーブc3を備えたものである。
【0047】
前のバネ受けスリーブc1は、前端部にチャック保持部材3の位置決め部33に対して外嵌する凹陥部c13を設けてなる前円筒部c11と、前円筒部c11の後に連設され当該前円筒部c11よりも大きな径をなす後円筒部c12とを備えたものである。
【0048】
前円筒部c11における凹陥部c13の後部には、チャックスプリングv1の前端部を受けるばね受け部たるばね受けフランジc14が形成されている。また、後円筒部c12における前端部の内周面には、クッションスプリングv2の前端部を受けるばね受部たるばね受け段部c15が形成されている。
【0049】
後のバネ受けスリーブc2は、前部の内周面にクッションスプリングv2の後端部を受けるばね受部たるばね受けフランジc23が設けられた円筒部本体c22と、円筒部本体c22の後端部に形成された鍔部c21とを備えたものである。
【0050】
ミドルスリーブc3は、前端部に鍔部c31が設けられた前円筒部c33と、前円筒部c33の後部に連設され当該前円筒部c33よりも大きな径をなす後円筒部c34とを備えている。
【0051】
ミドルスリーブc3における前円筒部c33の内部には、前のバネ受けスリーブc1の前円筒部c11が配されており、ミドルスリーブc3に対して前後動し得る前のバネ受けスリーブc1の上下方向及び左右方向の位置決めがなされている。ミドルスリーブc3における後円筒部c34の内部には、前のバネ受けスリーブc1の後円筒部c12及び後のバネ受けスリーブc2の円筒部本体c22が収容されている。
【0052】
前のバネ受けスリーブc1の後端縁e1と後のバネ受けスリーブc2の前端縁e2との間には隙間skが設けられている。すなわち、ミドルスリーブc3の内部に位置する前のバネ受けスリーブc1の後端縁e1と後のバネ受けスリーブc2の前端縁e2との間には、芯折れ防止機構Cを構成する前のバネ受けスリーブc1の後退動作を許容し得る隙間skが設けられている。
【0053】
前のバネ受けスリーブc1と後のバネ受けスリーブc2との間には、クッションスプリングv2が介設されており、両者が離れる方向に付勢されている。前のバネ受けスリーブc1と後のバネ受けスリーブc2とは、クッションスプリングv2の圧縮が許容される所定の幅寸法w1の隙間skを介して離間して配設されている。
【0054】
しかして、この実施形態のシャープペンシルは、芯パイプ1の先端stから突出した芯Sの長さw3に基づいて、芯折れ防止機構Cが作動する場合(ON状態)と作動しない場合(OFF状態)とを切り替え可能に構成されている。
【0055】
すなわち、シャープペンシルは、先端stから出た芯Sの長さw3が所定値以下のときには、芯折れ防止機構Cが作動しないように設定されている。また、シャープペンシルは、先端stから出た芯Sの長さw3が所定値よりも大きいときには、芯折れ防止機構Cが作動し得るように設定されている。
【0056】
なお、芯Sの長さw3の「所定値」とは、芯パイプ1の先端stと芯Sの先端snとが筆記面Mに対して同時に接し得る値である。芯パイプ1の先端stから突出した芯Sの長さw3は、図5の例に示すように、60°の角度で筆記面Mに対して筆記するようにした場合では、約0.06mmに設定されている。
【0057】
シャープペンシルは、筆記軸Aに対して前後動し得る芯パイプ1の後退動作に基づいて、芯折れ防止機構Cが作動する状態(ON状態)から芯折れ防止機構Cが作動しない状態(OFF状態)に切り替え可能に構成されたものとなっている。
【0058】
より具体的な構成を説明すれば、シャープペンシルには、芯折れ防止機構Cの作動を規制する作動規制手段Dが設けられている。作動規制手段Dは、筆記軸Aの先端に設けられた芯パイプ1に関連して作動し得るものとなっている。
【0059】
<作動規制手段D>
作動規制手段Dは、筆記軸Aにおける軸先端部a1の保持孔j1に前後動可能に支持された芯パイプ1を含み当該芯パイプ1が筆記面Mに押圧されて最前位置(G)よりも所定の距離w2だけ後の所定位置に後退し後退位置(H)に位置するようになった場合にのみ作動し得るように構成されている。
【0060】
作動規制手段Dは、中心部に芯Sが挿通されるものであり筆記軸Aに対して進退動作可能な芯パイプ1と、芯パイプ1と係合して姿勢変更し得る移動規制部材41を有したロックスリーブ4と、ロックスリーブ4を筆記軸Aに対して前後動しないように支持させるロックフレーム5と、第二姿勢(F)の移動規制部材41と係合し得るフランジ部31が設けられたチャック保持部材3とを備えたものである。
【0061】
芯パイプ1は、前後方向に延びてなり内部に芯Sが挿通されるパイプ部11と、パイプ部11の基端に一体に設けられパイプ部11よりも大きな外径をなすスライダー部12とを備えたものである。スライダー部12の内部には、芯Sと係合する図示しない合成樹脂製の戻り止め部材が設けられている。芯パイプ1は、筆記面Mと当接することにより後方に後退し、後退位置(H)をとる場合に、スライダー部12の後端部がロックスリーブ4の移動規制部材41に係合し得るものとなっている。
【0062】
ロックスリーブ4は、芯パイプ1に係合しない場合の姿勢である第一姿勢(E)と芯パイプ1のスライダー部12に係合した場合の第二姿勢(F)との間で姿勢変更可能な移動規制部材41と、前後方向に延びてなり一端部たる後端部が移動規制部材41の前後方向中央部に接続されたアーム部42と、アーム部42の他端部たる前端部が接続し軸先端部a1の先端部内面に内嵌する筆記軸接続部43とを備えたものである。
【0063】
移動規制部材41は、前後方向に延びてなるものである。移動規制部材41は、チャック保持部材3を挟んで上下に対をなして配されている。移動規制部材41は、アーム部42における上下方向の弾性変形により第一姿勢(E)と第二姿勢(F)との間でシーソー状に動作し得るものとなっている。
【0064】
移動規制部材41における前端部の内面側には芯パイプ1のスライダー部12と係合し得るカム面kmを有した突起kが設けられている。また、移動規制部材41における後端部の内面側には第二姿勢(F)においてチャック保持部材3のフランジ部31に係合し当該チャック保持部材3の後退動作を規制し得る係合爪tが設けられている。
【0065】
作動規制手段Dは、芯パイプ1が最前位置(G)から後退位置(H)にまで後退しスライダー部12の後端部が移動規制部材41における突起kのカム面kmに係合した場合に、当該移動規制部材41が第一姿勢(E)から第二姿勢(F)に姿勢変更し得るようになっている。この実施形態では、最前位置(G)から後退位置(H)に至る距離w2が、0.5mmに設定されている。
【0066】
突起kのカム面kmは、筆記面Mに押圧されて最前位置(G)から後退位置(H)に後退した芯パイプ1におけるスライダー部12の後端周縁部12aに当接するようになっている。
【0067】
第一姿勢(E)をなす移動規制部材41における突起kのカム面kmが、芯パイプ1におけるスライダー部12の後端周縁部12aに当接すると、カム面kmの案内作用によって突起kを有する前部が外方(反軸心方向)に移動するとともに係合爪tを有する後部が内方(軸心方向)すなわちチャック保持部材3の方向に移動して、移動規制部材41は第二姿勢(F)に遷移することになる。
【0068】
係合爪tは、第一姿勢(E)ではチャック保持部材3に係合しないものとなっている。一方で、係合爪tは、第二姿勢(F)において、チャック保持部材3の外周に設けられたフランジ部31に係合し得るようになっている。
【0069】
チャック保持部材3は、芯Sを保持している状態のチャック2が後方に移動するのを規制している。そのため、移動規制部材41が第二姿勢(F)をなして係合爪tがフランジ部31に係合すると、チャック保持部材3の後退が規制されるとともに当該チャック保持部材3を介して芯Sを保持したチャック2の後退も規制されるものとなっている。
【0070】
つまり、筆記軸Aに対して前後動し得る芯パイプ1が、最前位置(G)から後退位置(H)に後退する動作に基づいて、作動規制手段Dを構成する移動規制部材41を第一姿勢(E)から第二姿勢(F)に姿勢変更させ、チャック保持部材3を後退可能な状態から後退不能な状態に切り替えることにより、芯折れ防止機構Cが作動する状態(ON状態)から芯折れ防止機構Cが作動しない状態(OFF状態)に切り替えることができるようになっている。
【0071】
ロックフレーム5は、ロックスリーブ4を軸先端部a1内における所定の位置に保持させるためのものである。ロックフレーム5は、後端部に設けられた環状部51と、環状部51の左右両側部から前方に突出し前端部にロックスリーブ4における筆記軸接続部43の左右両側部に設けられた係合凹部43aに内嵌する左右一対の嵌合突起52aを設けた左右の側壁52を備えている。
【0072】
環状部51の上下両端部には、軸先端部a1における前円筒状部分a12の後端縁に係合し得る外方に突出した位置決め突起51aが形成されている。
【0073】
続いて、以上に述べた構成をなすシャープペンシルの作動についてその一例を説明する。
【0074】
使用者が、ノック部であるキャップb2を前方に押圧すると、芯繰出機構Bの作用により、芯パイプ1に収容された芯Sがチャック2内の芯通路21を通過して前方に繰り出される。筆記軸Aの軸先端部a1内に配された芯パイプ1は、芯繰出機構Bによって前方に繰り出された芯Sとともに前方に移動し、最も前端の位置である最前位置(G)に位置することになる。
【0075】
シャープペンシルは、図5の例に示すように、芯パイプ1の先端stから僅かに芯Sが突出した状態で、芯パイプ1のパイプ部11によって芯折れが抑制された状態で、筆記を継続的に行うことができるようになっている。
【0076】
すなわち、筆記が継続されて芯Sが摩耗していくにしたがって、芯パイプ1は筆記軸Aに対して後方に移動するものとなっている。このとき、芯パイプ1の先端stと芯Sの先端snは、図5の例に示すように、筆記面Mに対して同時に接している。
【0077】
一方で、図3の例に示すように、芯パイプ1の先端stから、芯Sが過大に突出している場合には、筆記時において、芯パイプ1の先端stが筆記面Mに接することができない。図3の例では、芯パイプ1の先端stは筆記面Mに接することがなく、チャック2により保持された芯Sの先端snのみが筆記面Mに接していることになる。この場合に、シャープペンシルの芯折れ防止機構Cが作動し得るものとなっている。
【0078】
すなわち、使用者による筆記面Mに対する筆記操作により、過大な筆圧が芯Sに加えられたときに、芯折れ防止機構Cが作動することになる。芯Sに対して筆記面Mからの応力を受けると、芯Sを保持したチャック2、芯ケースb1、キャップb2、チャック2を保持するチャック保持部材3、チャックスプリングv1、及び、当該チャック保持部材3に連結された前のバネ受けスリーブc1が、クッションスプリングv2の付勢力に抗して後方に移動し得るものとなっている。
【0079】
前のバネ受けスリーブc1と後のバネ受けスリーブc2との間には所定寸法w1の隙間skが設けられている。芯折れ防止機構Cは、前のバネ受けスリーブc1と後のバネ受けスリーブc2との間に設けた所定寸法w1の隙間sk分だけ、芯Sをクッションスプリングv2の付勢力に抗してクッション(弾性的に後退)させることができるようになっている。
【0080】
なお、この実施形態では、隙間skの寸法w1は0.85mmに設定されている。芯折れ防止機構Cによって、芯Sは、0.85mmまで後方にクッションし得るものとなっている。
【0081】
使用者により筆記面Mに対する筆記が継続され芯Sが摩耗することにより芯パイプ1が最前位置(G)から後退位置(H)に移動した場合、或いは、使用者の任意で芯パイプ1を最前位置(G)から後退位置(H)に移動させた場合には、芯折れ防止機構Cの作動を規制し得る作動規制手段Dが機能し得るものとなっている。
【0082】
芯パイプ1の先端stが筆記面Mに当接した状態で筆記操作が継続されると、筆記前の初期状態において最前位置(G)に位置していた芯パイプ1は芯Sの摩耗に追従して漸次後方に移動することになる。
【0083】
芯パイプ1が最前位置(G)から一定寸法w2(この実施形態では0.5mm)後に移動して後退位置(H)に至ると、芯パイプ1におけるスライダー部12の後端周縁部12aが、ロックスリーブ4に設けられた第一姿勢(E)をなす移動規制部材41の突起kに当接する。
【0084】
芯パイプ1が突起kのカム面kmを後方に押圧すると、カム面kmの案内作用により、突起kが設けられた移動規制部材41の前部はアーム部42の弾性変形によって支点stを中心に反軸心方向に回動するとともに係合爪tが設けられた移動規制部材41の後部はアーム部42の弾性変形によって支点stを中心に軸心方向に回動し、移動規制部材41は第一姿勢(E)から第二姿勢(F)に姿勢変更することになる。
【0085】
移動規制部材41が第二姿勢(F)を採ると、移動規制部材41の後部に設けられた係合爪tがチャック保持部材3のフランジ部31に係合することにより、チャック保持部材3の後方への移動を規制し得るものとなる。
【0086】
チャック保持部材3の後方への移動が規制されると、当該チャック保持部材3に内嵌されたチャック2も後方に移動することができなくなる。そうすると、前のバネ受けスリーブc1を介してクッションスプリングv2を圧縮させることもないため、芯折れ防止機構Cの作動は規制されることになる。
【0087】
芯Sは、クッションスプリングv2による付勢力を受けておらず、且つ、クッションスプリングv2を圧縮し得る態様をなしていない。つまり、芯折れ防止機構Cの作動がOFF状態に切り替わり、「芯Sがバウンドする」という現象は生じないようになっている。
【0088】
このとき、芯パイプ1は、ロックスリーブ4の移動規制部材42によって後方への移動が規制されないようになっている。移動規制部材42の突起kは、芯パイプ1が後退するに連れて反軸心方向に動き得るようになっている。そのため、芯パイプ1は、作動規制手段Dが作用している状態であっても、筆記軸Aに対して後方に移動可能なものとなっている。芯パイプ1は、使用者による筆記面Mに対する筆記操作が行われ、芯Sの先端snが摩耗して後退することに追従して後退することができるようになっている。
【0089】
使用者は、シャープペンシルを使用して、パイプ部11の先端stが軸先端部a1内に没入するまでの間、作動規制手段Dが作動している状態、且つ、芯折れ防止機構Cの作動が規制された状態で、筆記を行うことができるようになっている。
【0090】
以上説明したように、本実施形態に係るシャープペンシルは、過大な筆圧が芯Sに加えられたときに芯Sを後退させ得る芯折れ防止機構Cを備えたものである。そして、シャープペンシルは、先端に設けられた芯パイプ1から突出した芯Sの長さに基づいて、芯折れ防止機構Cが作動する場合と作動しない場合とを切り替え可能に構成されたものとなっている。
【0091】
このため、本実施形態に係るシャープペンシルであれば、芯折れ防止機能が常に作用するために使用者に対して筆記し難さを与え易いという不具合を好適に抑制し得るものとなっている。
【0092】
しかも、先端に設けられた芯パイプ1から突出した芯Sの長さに基づいて芯折れ防止機構Cが作動する場合と作動しない場合とを切り替え可能に構成されているため、使用者により任意に切り替え操作を行うことなく自動的に芯折れ防止機構Cのオン/オフを切り替えることができるものとなっている。
【0093】
芯Sの長さw3が所定値以下のときに芯折れ防止機構Cが作動しないように設定されており、芯Sの長さw3が所定値よりも大きいときは芯折れ防止機構Cが作動し得るように設定されている。
【0094】
このため、芯Sが芯パイプ1の先端stから出すぎているときは、芯折れ防止機構Cの作用によって芯折れの防止を図ることができるようになっている。
【0095】
一方で、芯Sが芯パイプ1の先端stから出すぎていないとき、すなわち、芯Sの長さw3が所定値以下であり芯パイプ1の先端stと芯Sの先端snとが筆記面Mに対して同時に接している場合には、作動規制手段Dが作動して、芯Sがバウンド(弾性的に後退)することを防止できるようになっている。
【0096】
芯折れ防止機構Cが、芯Sを保持したチャック2をスプリングたるクッションスプリングv2の付勢力に抗して後方に移動可能に構成したものである。
【0097】
このため、芯Sをクッションスプリングv2の圧縮を利用して弾性的に後退させることにより、芯Sに対して折れ難さに資する一定のクッション性を付与し得るものとなっている。
【0098】
芯折れ防止機構Cの作動を規制する作動規制手段Dが設けられたものである。そして、作動規制手段Dが、筆記軸Aの先端部に前後動可能に支持された芯パイプ1を含み当該芯パイプ1が筆記面Mに押圧されて後退した場合にのみ作動し得るように構成されている。
【0099】
このため、芯パイプ1に関連させて芯折れ防止機構Cの作動を規制し得るものとなっている。
【0100】
作動規制手段Dが、芯パイプ1に係合しない場合の姿勢である第一姿勢(E)と、芯パイプ1に係合した場合の第一姿勢(E)とは異なる姿勢である第二姿勢(F)との間で姿勢変更可能な移動規制部材41を設けたものである。そして、移動規制部材41が、第二姿勢(F)において芯Sを保持したチャック2の後退を規制し得るものとなっている。
【0101】
このため、芯パイプ1との係わり合いによって第二姿勢(F)に姿勢変更された移動規制部材41により、チャック2の後退を規制し得るものとなっている。
【0102】
芯パイプ1が、前後方向に延びてなり内部に芯Sが挿通されるパイプ部11と、パイプ部11の基端に一体に設けられパイプ部11よりも大きな外径をなすスライダー部12とを備えたものである。そして、芯パイプ1が筆記軸Aに対して後退しスライダー部12の後端部たる後端周縁部12aが移動規制部材41に係合した場合に、当該移動規制部材41が第一姿勢(E)から第二姿勢(F)に姿勢変更し得るようになっている。
【0103】
このため、芯パイプ1の後退動作を利用して移動規制部材41を好適に第一姿勢(E)から第二姿勢(F)に姿勢変更し得るものとなっている。
【0104】
チャック2に外嵌し前後方向の相対移動により当該チャック2を開閉動作させ得るチャック保持部材3を備えたものである。そして、チャック保持部材3が外周にフランジ部31を設けてなるものである。移動規制部材41が、第二姿勢(F)においてフランジ部31に係合し得る係合爪tを備えている。係合爪tがフランジ部31に係合することにより、チャック保持部材3を介してチャック2の後退が制限されている。
【0105】
このため、移動規制部材41は、チャック保持部材3を介してチャック2の後退を好適に規制し得るものとなっている。
【0106】
筆記軸Aの一部が、外部から内部を視認し得る構成をなしている。そして、芯折れ防止機構C及び作動規制手段Dの作動状態を外部から視覚を通じて確認可能なものとなっている。
【0107】
このため、使用者は、芯折れ防止機構C及び作動規制手段Dの作動状態を視認し得ることを通じてシャープペンシルを楽しく快適に使用することができるようになっている。
【0108】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0110】
芯パイプから突出した芯の長さ(出芯寸法)に基づいて、芯折れ防止機構が作動する場合と作動しない場合とを切り替え可能に構成する具体的構成は、種々の構成のものを採用することが可能である。
【0111】
芯折れ防止機構が作動しないように設定された所定値以下の芯の長さ、及び、芯折れ防止機構が作動し得るように設定された所定値よりも大きな芯の長さは、使用者による筆記面に対する筆記の角度や芯パイプにおける先端の形状や芯の太さ等に応じて変動し得るものである。
【0112】
筆記軸は、その一部だけでなく全部が外部から内部を視認し得る構成をなしていてもよい。また、外部から内部を視認し得る構成は、透明の部品を使用するものに限られない。例えば、窓孔を設けることにより外部から内部を視認し得るように構成したものであってもよい。
【0113】
また、外部から内部を視認し得る構成として、前後の凹み部に代えて、凸レンズの役割を担う前後の凸部を設けるようにしてもよい。
【0114】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0115】
A…筆記軸
B…芯繰出機構
C…芯折れ防止機構
D…作動規制手段
1…芯パイプ
2…チャック
3…チャック保持部材
4…チャックスリーブ
5…ロックフレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9