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  • 特許-空気調和機 図1
  • 特許-空気調和機 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20240820BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240820BHJP
   F24F 11/32 20180101ALI20240820BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20240820BHJP
【FI】
H02M7/06 H
H02M7/06 S
H02M7/48 M
F24F11/32
F24F11/89
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020127579
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024787
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 賢治
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-204429(JP,A)
【文献】特開2015-111999(JP,A)
【文献】特開2019-158204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/06
H02M 7/48
F24F 11/32
F24F 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源に3本の電源ラインで接続され、同三相交流電源の交流電圧を直流電圧に変換する整流器と、前記整流器の出力に並列に接続された平滑コンデンサ及び直流電圧検出部と、前記整流器の出力が入力されるインバータと、同インバータで駆動されるモータとを備えた空気調和機であって、
前記3本の電源ラインのうちの1本の電源ラインである第1電源ラインに直列に接続されたスイッチ手段と、
前記直流電圧検出部で検出された電圧に基づいて、前記第1電源ラインを前記スイッチ手段により遮断する過電圧制御手段と、を備え
記空気調和機が運転中の場合であって、前記直流電圧検出部で検出された電圧が予め定められた第1閾値を超えた時、
前記過電圧制御手段は、前記第1電源ラインを前記スイッチ手段により遮断し、
前記空気調和機は欠相運転を行うことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記空気調和は、前記過電圧制御手段が前記スイッチ手段により前記第1電源ラインを
遮断した後、前記モータの回転数を低下させて欠相運転を行うことを特徴とする請求項1
記載の空気調和機。
【請求項3】
前記過電圧制御手段は、前記空気調和機が運転中の場合であって、前記スイッチ手段によ
り前記第1電源ラインが遮断されている場合、前記直流電圧検出部で検出された電圧が、
前記第1閾値よりも小さな値である第2閾値以下となった時、前記第1電源ラインを前記
スイッチ手段により接続することを特徴とする請求項1または請求項2記載の空気調和機
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相交流電源を用いる空気調和機に係わり、より詳細には、三相交流電源が過電圧となった時の室外機の保護動作に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三相交流電源を使用する電子機器の電源装置は、例えば、特許文献1に開示されているものが有る。この電源装置は三相交流電源の入力側の3本の電源ラインにそれぞれ直列に電流を遮断する遮断回路を設けており、3本の電源ラインの下流側に設けられた整流器で整流された電圧が過電圧となった時、遮断回路により三相交流電源を遮断して電源装置を保護するようになっている。
【0003】
このような電源装置を空気調和機に備えた場合、仕向け先によっては実用上問題となる場合がある。例えば商用電源の整備が進んでいない地域向けの空気調和機の使用状態においては、交流電圧が不安定で時間帯によって一時的に過電圧状態となったり、定格電圧に復帰したりすることが頻繁に発生する。
【0004】
この空気調和機に前述した過電圧保護機能を備えた電源装置を採用した場合、過電圧になる都度、保護回路が動作して空気調和機の動作が停止し、これを解除するために交流電源が定格電圧に復帰してから手動により空気調和機を再起動しなければならない。
このため再起動に手間がかかり、また、空気調和機の運転停止により室内の温度が不快になる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-204429号公報(段落番号0036~0038)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上述べた問題点を解決し、三相交流電源を使用する空気調和機において、過電圧による電子機器の保護を行うと共に、過電圧の保護に伴う空気調和機の運転停止により室内の温度が不快になることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の課題を解決するため本発明は、
三相交流電源に3本の電源ラインで接続され、同三相交流電源の交流電圧を直流電圧に変換する整流器と、前記整流器の出力に並列に接続された平滑コンデンサ及び直流電圧検出部と、前記整流器の出力が入力されるインバータと、同インバータで駆動されるモータとを備えた空気調和機であって、
前記3本の電源ラインのうちの1本の電源ラインである第1電源ラインに直列に接続されたスイッチ手段と、
前記直流電圧検出部で検出された電圧に基づいて、前記第1電源ラインを前記スイッチ手段により遮断する過電圧制御手段と、を備え、
前記過電圧制御手段は、前記空気調和機が運転中の場合、
前記直流電圧検出部で検出された電圧が予め定められた第1閾値を超えた時、前記第1電源ラインを前記スイッチ手段により遮断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上の手段を用いることにより、本発明による空気調和機によれば、三相交流電源を使用する空気調和機において、過電圧による電子機器の保護を行うと共に、過電圧の保護に伴う空気調和機の運転停止により室内の温度が不快になることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明による空気調和機の実施例を示すブロック図である。
図2】過電圧制御部の内部を示すブロック図である。
図3】過電圧制御部の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明による空気調和機1の実施例を示すブロック図である。この空気調和機1は室内機3と室外機2が通信接続されている。
室外機2は、スター結線された三相交流電源4に接続される、第1電源ライン13と第2電源ライン14と第3電源ライン15と、これらの電源ラインが入力に接続された整流器17と、入力された交流電圧を直流電圧に変換して出力する整流器17の出力が入力に接続されるインバータ20と、このインバータ20の出力に接続された圧縮機のモータ21と、整流器17の正出力端と負出力端の間に並列に接続された直流電圧検出部18、及び平滑コンデンサ19を備えている。
【0012】
さらに、第1電源ライン13には直列に第1リレー(スイッチ手段)11が、また、第2電源ライン14には直列に第2リレー12が、それぞれ備えられている。このため、第1リレー11の接点が開になった時、第1電源ラインを遮断し、第1リレー11の接点が閉になった時、第1電源ラインを接続することになる。
また、室外機2は第2電源ライン14と第3電源ライン15の間に入力が接続され、制御用電圧を出力する制御用電源部16と、過電圧制御部(過電圧制御手段)30とマイコン23を備えた室外機制御部22を備えている。なお、室外機制御部22は入力された制御用電圧を用いて動作する。
【0013】
そして、過電圧制御部30は、直流電圧検出部18で検出した直流電圧信号と、マイコン23が出力し、空気調和機1が運転中か停止中かを示す運転状態信号が入力され、これらの信号の状態によって第1リレー11を開閉させる第1リレー制御信号と、第2リレー12を開閉させる第2リレー制御信号と、欠相運転指示信号を出力する。また、マイコン23は、直流電圧検出部18で検出した直流電圧信号と、欠相運転指示信号が入力され、これらの信号に基づいてインバータ制御信号をインバータ20へ出力する。
【0014】
なお、空気調和機1の定格電圧はAC230ボルト(実効値)、これを整流した場合の直流電圧の波高値は398ボルトであり、定格電圧範囲の上限値は定格電圧の+10%(AC253ボルト~実効値)、つまり、この時の直流電圧の波高値は438ボルトである。このため、この電圧を超えると空気調和機1は第1リレー11を開とすることで欠相運転を行って、整流器17が出力する直流電圧を低下させると共に圧縮機のモータ21の回転数や駆動電圧を低下させて運転能力低下させ、以降の運転が継続できるようにする。
また、空気調和機1が耐えられる電圧の上限値は定格電圧の+15%(AC264ボルト~実効値)であり、この時の直流電圧の波高値は457ボルトに相当する。これを超える電圧が室外機2に印加されると部品が壊れるおそれがあるため空気調和機1は三相交流電源4との接続を遮断して運転を停止する。
【0015】
図2は過電圧制御部30の内部を示すブロック図である。
過電圧制御部30は、過電圧判定部33と、電圧保護判定部34と、第1リレー駆動部31と、第2リレー駆動部32を備えている。
【0016】
過電圧判定部33と電圧保護判定部34には直流電圧検出部18で検出した直流電圧信号が入力されている。過電圧判定部33は直流電圧信号が示す電圧が第1閾値(438ボルト)を超えるとローレベルの欠相運転指示信号をハイレベルにしてマイコン23と第1リレー駆動部31へ出力する。その後、過電圧判定部33は直流電圧信号が示す電圧が第2閾値(398ボルト)以下になるとハイレベルの欠相運転指示信号をローレベルにしてマイコン23と第1リレー駆動部31へ出力する。このように第2閾値を第1閾値よりも小さくすることで、閾値による判定にヒステリシスを持たせている。
電圧保護判定部34は入力された直流電圧信号が第3閾値(457ボルト)を超えるとハイレベルの保護指示信号を第2リレー駆動部32へ出力する。
【0017】
第1リレー駆動部31と第2リレー駆動部32には運転状態信号が入力されており、この信号が運転状態(ハイレベル)の時、第1リレー制御信号により第1リレー11の接点を閉とし、第2リレー制御信号により第2リレー12の接点を閉とする。なお、運転状態信号が運転停止状態(ローレベル)の時、それぞれのリレーの接点は開となるように各リレー駆動部はリレー制御信号を出力する。
【0018】
一方、運転状態信号が運転状態となっている場合であっても、欠相運転指示信号が欠相運転指示(ハイレベル)の場合、第1リレー駆動部31は第1リレー制御信号をローレベルにして三相交流電源4の三相の相電圧のうち1相の相電圧を遮断して欠相させる。ただし、空気調和機としての動作は継続される。その後、運転状態信号が運転状態となっている場合であっても、保護指示信号が保護指示(ハイレベル)の場合、第2リレー駆動部32は第2リレー制御信号をローレベルにして三相交流電源4の三相の相電圧の残りの二相の相電圧のうちさらにもう1相の相電圧を遮断して整流器17以降に電源が供給されないようにして部品を保護する。
【0019】
図3は、過電圧制御部30の動作を説明する説明図である。
図3の横軸は時間である。縦軸において図3(1)は交流電圧(実効値)を、図3(2)は直流電圧検出部18で検出した直流電圧を、図3(3)は運転状態信号を、図3(4)は欠相運転指示信号を、図3(5)は保護指示信号を、図3(6)は第1リレー制御信号を、図3(7)は第2リレー制御信号を、それぞれ示している。なおt0~t7は時刻である。
【0020】
図3においてt0の時点では交流電圧は230ボルト(定格電圧)である。また、空気調和機1は運転を停止した状態である。そしてt1で図3(3)に示すようにマイコン23が空気調和機1の運転を開始するために運転状態信号をローレベル(停止)からハイレベル(運転)にして出力すると、第1リレー駆動部31はハイレベルの第1リレー制御信号を、また、第2リレー駆動部32はハイレベルの第2リレー制御信号を、それぞれ出力する。この結果、第1リレー11と第2リレー12の接点が閉となる。
【0021】
その後、交流電圧は電圧変動により徐々に上昇し、これに対応して図3(2)に示すように直流電圧がt2で第1閾値を超える。これを過電圧と判定した過電圧判定部33はローレベルの欠相運転指示信号をハイレベルにして出力する。このハイレベルの欠相運転指示信号が入力された第1リレー駆動部31は第1リレー11の接点を開にする。この結果、三相運転でなく二相による欠相運転となり、整流器17の出力電圧(直流電圧)は低下する。ただし、運転能力が三相運転のままだとマイコン23は直流電圧の低下を補うようにインバータ20を制御するため、入力電流が増えて整流器17の定格電流を超えるおそれがある。
【0022】
このため、このハイレベルの欠相運転指示信号が入力されたマイコン23は、同時に運転能力を低下させてモータ21に流れる電流を低下させる。この結果、室外機2の入力電流が低下して欠相運転でも整流器17の定格電流を超えるおそれがない。このため図示しない過電流保護回路による電流トリップを防止して過電圧状態であっても部品を保護しつつ電流トリップによる運転停止を防止することができる。
【0023】
一方、t2以降に上昇していた交流電圧は下降に転じて、t5で定格電圧範囲の上限値であるAC253ボルトまで低下している。従って、もしt2以降も三相運転のままであれば図3(2)に示すように直流電圧は破線のように第3閾値である457ボルトを超えていた、つまり部品が破壊されていた可能性がある。
本願では直流電圧が第1閾値を超えた段階で二相による欠相運転に切り替えており、直流電圧の上昇が抑制される。
【0024】
そしてt3で直流電圧が第1閾値以下になっているが、前述したように過電圧判定部33の判定において、第2閾値が第1閾値より小さく設定されているので直流電圧が第2閾値以下になるまで二相による欠相運転を継続する。そしてt4において直流電圧が第2閾値以下になったため、過電圧判定部33は欠相運転指示信号をハイレベル(欠相運転)からローレベル(三相運転)にして出力する。
【0025】
このため第1リレー駆動部31は第1リレー制御信号をハイレベルにして第1リレー11の接点を閉とする。一方、マイコン23はローレベルの欠相運転指示信号の入力により、二相による欠相運転を通常の三相運転に切り替えて、この通常運転を継続する。
【0026】
そして、電源電圧変動によりt6で再び直流電圧が第1閾値を超えると、過電圧判定部33は前述のように第1リレー11の接点を開にさせる一方、マイコン23は二相による欠相運転を開始する。そして、さらに上昇する交流電圧によりt8で直流電圧が第3閾値を超えた時、電圧保護判定部34は保護指示信号をローレベル(未保護)からハイレベル(保護)にして第2リレー駆動部32に出力する。
【0027】
これが入力された第2リレー駆動部32は、第2リレー制御信号をローレベルからハイレベルにして第2リレー12の接点を開にする。このため、第1リレー11と第2リレー12の接点が共に開となり、整流器17へ供給される交流電圧が遮断され、部品を過電圧から保護することができる。
なお、t8以降に直流電圧が供給されなくなって電圧が急激に低下したため、マイコン23は運転を停止する。
【0028】
室外機2は整流器17や平滑コンデンサ19、インバータ20など高電圧で大電流を扱う部品が多用されている。一般的にこれらは高価な部品であり、できるだけコストを低減させるため、電圧マージンを大きく取ることができない。このため過電圧に対しては余裕がないが、本願で説明したように定格電圧範囲では三相運転を行い、製品の保証範囲外である定格電圧範囲の上限を超えた場合は欠相運転により直流電圧を低下させて部品破壊を防止しつつ運転を継続し、部品の定格電圧を超える場合は空気調和機の運転を停止する。
【0029】
これにより、三相交流電源を使用する空気調和機において、過電圧による電子機器の保護を行いつつ、空気調和機の運転停止により室内の温度が不快になることを防止することができる。
【0030】
本実施例では定格電圧が230ボルトの場合を説明しているが、これに限るものでなく、200ボルトやその他の電圧でもよい。また、それぞれの閾値は製品の仕様によって任意に変更してもよい。また、本実施例では過電圧制御部30をハードウェアとして説明しているが、この機能をソフトウェアで実現し、マイコン23に内蔵させてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 空気調和機
2 室外機
3 室内機
4 三相交流電源
11 第1リレー(スイッチ手段)
12 第2リレー
13 第1電源ライン
14 第2電源ライン
15 第3電源ライン
16 制御用電源部
17 整流器
18 直流電圧検出部
19 平滑コンデンサ
20 インバータ
21 モータ
22 室外機制御部
23 マイコン
30 過電圧制御部(過電圧制御手段)
31 第1リレー駆動部
32 第2リレー駆動部
33 過電圧判定部
34 電圧保護判定部
図1
図2
図3