IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

特許7540242コルゲータ及び段ボールシートの製造方法
<>
  • 特許-コルゲータ及び段ボールシートの製造方法 図1
  • 特許-コルゲータ及び段ボールシートの製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】コルゲータ及び段ボールシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B31F 1/24 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B31F1/24 E
B31F1/24 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020139283
(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公開番号】P2022035160
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2022-12-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金井 慎也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 比斗志
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-240639(JP,A)
【文献】実開昭53-088477(JP,U)
【文献】特開平01-316257(JP,A)
【文献】国際公開第2015/128546(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31F 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波型に形成された中芯と第1ライナとを貼り合せて片面段ボールシートを製造するシングルフェーサと、前記シングルフェーサで製造された前記片面段ボールシートに第2ライナを貼り合せて段ボールシートを製造するダブルフェーサとを備えると共に、前記ダブルフェーサの上流側に配置され前記第2ライナを加熱するプレヒータと、前記ダブルフェーサの上流側に配置され前記片面段ボールシートの前記中芯の段頂部に接着剤を塗布するグルーマシンとを備えたコルゲータであって、
前記プレヒータの上流側に、前記中芯の段頂部に貼り合せられる前記第2ライナの裏面に、液体の貼合速度向上剤を塗布する貼合速度向上剤塗布装置を備え、
前記貼合速度向上剤塗布装置は、前記貼合速度向上剤を塗布する塗布モードと、前記貼合速度向上剤の塗布を停止する塗布停止モードとを備え、
前記貼合速度向上剤塗布装置は、前記貼合速度向上剤を前記裏面の要部に塗布幅50~300mmの範囲で部分的に塗布すると共に、
前記貼合速度向上剤塗布装置は、前記貼合速度向上剤の塗布量を調整する塗布量調整部を備え、
前記貼合速度向上剤塗布装置は、前記ダブルフェーサに前記第2ライナが進入した際に、前記第2ライナの前記裏面に塗布された前記貼合速度向上剤の液分が蒸散して前記裏面が乾燥状態になるように、前記塗布量調整部により前記貼合速度向上剤の塗布量を調整する
ことを特徴とするコルゲータ。
【請求項2】
前記貼合速度向上剤塗布装置は、スプレー方式により前記裏面に非接触で前記貼合速度向上剤を塗布する
ことを特徴とする請求項1に記載のコルゲータ
【請求項3】
前記接着剤は、澱粉系接着剤である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のコルゲータ。
【請求項4】
前記貼合速度向上剤は、硼素化合物を含む
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載のコルゲータ。
【請求項5】
波型に形成された中芯と第1ライナとを貼り合せて片面段ボールシートを製造するシングルフェーサ工程と、前記シングルフェーサ工程で製造された前記片面段ボールシートに第2ライナを貼り合せて段ボールシートを製造するダブルフェーサ工程とを備え、前記ダブルフェーサ工程の前に前記第2ライナを加熱するライナ加熱工程と、前記ダブルフェーサ工程の前に前記片面段ボールシートの前記中芯の段頂部に接着剤を塗布する接着剤塗布工程とを備えた段ボールシートの製造方法であって、
前記ライナ加熱工程の前に、前記中芯の段頂部に貼り合せられる前記第2ライナの裏面に、選択的に液体の貼合速度向上剤を塗布する貼合速度向上剤塗布工程を、段ボールシートの材料シートに応じて選択的に実施し、
前記貼合速度向上剤塗布工程では、前記貼合速度向上剤を前記裏面の要部に塗布幅50~300mmの範囲で部分的に塗布すると共に、
前記貼合速度向上剤塗布工程では、前記ダブルフェーサに前記第2ライナが進入した際に、前記第2ライナの前記裏面に塗布された前記貼合速度向上剤の液分が蒸散して前記裏面が乾燥状態になるように、前記貼合速度向上剤の塗布量を調整する
ことを特徴とする段ボールシートの製造方法。
【請求項6】
前記貼合速度向上剤塗布工程では、スプレー方式により前記裏面に非接触で前記貼合速度向上剤を塗布する
ことを特徴とする請求項に記載の段ボールシートの製造方法
【請求項7】
前記接着剤は、澱粉系接着剤である
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の段ボールシートの製造方法。
【請求項8】
前記貼合速度向上剤は、硼素化合物を含む
ことを特徴とする請求項5~7の何れか1項に記載の段ボールシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールシートを製造するコルゲータ及び段ボールシートを製造する製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
段ボールシートは、波型に形成された中芯とシングルフェーサ側ライナとを貼り合せて片面段ボールシート(片段シート)を製造するシングルフェーサと、シングルフェーサで製造された片面段ボールシートの中芯にダブルフェーサ側ライナを貼り合せて段ボールシート(両面段ボールシート)を製造するダブルフェーサとを備えたコルゲータによって製造される。
【0003】
シングルフェーサでの加工工程(シングルフェーサ工程)及びダブルフェーサでの加工工程(ダブルフェーサ工程)で、ライナと中芯との貼り合せに使用する接着剤は、通常、水系の澱粉系接着剤(以後、貼合糊という)である。
シングルフェーサ工程では、先に段繰りされた波形中芯の段頂部に貼合糊を塗工し、その後ライナと貼り合せてライナと中芯とを接着する。
【0004】
貼合糊の製糊方式にはスタインホール方式、プレミックス方式、ノーキャリア方式等の様々な方式がある。未糊化澱粉と糊化澱粉の混合水液からなるスタインホール方式が代表的であり、ライナと中芯との貼り合せ後での加熱により、未糊化澱粉が膨潤→接着剤の増粘→未糊化澱粉の糊化→接着剤の乾燥等の工程を経て接着が完了する。
ダブルフェーサ工程では、片面段ボールシートの段頂部への貼合糊の塗工→ライナとの貼り合せ→熱板等での加熱→段ボールシートの裁断→パレット積→空冷・乾燥の順でライナと片面段ボールの接着を完成する。
【0005】
このようにして生産される段ボールシートの生産速度は、ダブルフェーサ工程でのライナと中芯との貼合時の初期接着強度に影響される場合が多く、ライナや中芯の種類により貼合時の初期接着強度が相違する。つまり、段ボールシートの初期接着強度が低いと、例えばその後のカッティングやスリッティング等の裁断時に受ける裁断ショック等で、未だ十分に固まっていない貼合部からの剥れが発生する等の不具合が生じるため、例えば貼合性の悪い原紙を使用する場合には、貼合速度を低下させざるを得ず、生産速度の低下を招くことになる。
【0006】
ダブルフェーサ工程での貼合速度に最も影響がある特性は、段ボールシートを裁断する時の接着強度(初期接着強度)であり、裁断による圧力に耐える接着強度が必要である。カッティングやスリッティング等の裁断時の接着部への圧力は、段ボールシートの紙質構成等により異なり、低坪量、低強度の構成の場合は低く、高坪量、高強度の構成になるに従って強くなる。
【0007】
このため、ライナと片面段ボールシートとを接着する接着強度(初期接着強度)も高坪量、高強度の構成の段ボールほど、高くする必要があり、高坪量、高強度の構成のシートの場合は、貼合速度を落として、接着強度を高くしている。
このように高坪量、高強度の構成の段ボールほど、貼合速度を遅くしなければならず、例えば、中芯の種類が160g/m以上で強度の高い強化中芯の場合は、それ以下の強度の中芯に比較して、極端に貼合速度が遅くなる傾向があった。
【0008】
ダブルフェーサ工程の貼合速度を向上させる技術としては、特許文献1~4に記載された貼合速度を向上させる貼合速度向上剤をライナに塗布するものが開示されている。
特許文献1には、ライナの裏面に苛性ソーダ及び/ 又は苛性カリと硼酸化合物からなる水溶性の貼合速度向上剤が開示されている。
【0009】
特許文献2には、水100重量部に対して多価アルコール5~150重量部を含有する多価アルコール水溶液中に硼砂を溶解させたことを特徴とする段ボールシート貼合速度向上剤水100重量部に対して多価アルコール5~150重量部を含有する多価アルコール水溶液中に硼砂を溶解させた貼合速度向上剤が開示されている。
特許文献3には、苛性ソーダまたは苛性カリ18~50重量%と硼砂82~50重量%との混合組成物からなる貼合速度向上剤が開示されている。
特許文献4には、主として八硼酸ナトリウムからなる硼素化合物である貼合速度向上剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2011-240639号公報
【文献】特開平7-23826号公報
【文献】特開平7-195648号公報
【文献】特開平7-290622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記のようにダブルフェーサ工程での貼合速度を向上させるために貼合速度向上剤を使用すると、当然ながら生産コストの増加を招くことになる。
そこで、貼合速度向上剤の使用によるコスト増を抑えながら、ダブルフェーサ工程での貼合速度を向上させることが課題となっている。
【0012】
本件は、上記の課題に着目して創案されたもので、貼合速度向上剤の使用によるコスト増を抑えながら、ダブルフェーサ工程での貼合速度を向上させることが可能なコルゲータ及び段ボールシートの製造方法を提供することを目的の一つとしている。なお、本目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本件のコルゲータは、波型に形成された中芯と第1ライナとを貼り合せて片面段ボールシートを製造するシングルフェーサと、前記シングルフェーサで製造された前記片面段ボールシートに第2ライナを貼り合せて段ボールシートを製造するダブルフェーサとを備えると共に、前記ダブルフェーサの上流側に配置され前記第2ライナを加熱するプレヒータと、前記ダブルフェーサの上流側に配置され前記片面段ボールシートの前記中芯の段頂部に接着剤を塗布するグルーマシンとを備えたコルゲータであって、前記プレヒータの上流側に、前記中芯の段頂部に貼り合せられる前記第2ライナの裏面に、液体の貼合速度向上剤を塗布する貼合速度向上剤塗布装置を備え、前記貼合速度向上剤塗布装置は、前記貼合速度向上剤を塗布する塗布モードと、前記貼合速度向上剤の塗布を停止する塗布停止モードとを備えていることを特徴としている。
【0014】
前記貼合速度向上剤塗布装置は、前記裏面の要部に部分的に前記貼合速度向上剤を塗布することが好ましい。
前記貼合速度向上剤塗布装置は、スプレー方式により前記裏面に非接触で前記貼合速度向上剤を塗布することが好ましい。
前記貼合速度向上剤塗布装置は、前記貼合速度向上剤の塗布量を調整する塗布量調整部を備え、前記貼合速度向上剤塗布装置は、前記ダブルフェーサに前記第2ライナが進入した際に、前記第2ライナの前記裏面に塗布された前記貼合速度向上剤の液分が蒸散して前記裏面が乾燥状態になるように、前記塗布量調整部により前記貼合速度向上剤の塗布量を調整することが好ましい。
前記接着剤は、澱粉系接着剤であることが好ましい。
前記貼合速度向上剤は、硼素化合物を含むことが好ましい。
【0015】
本件の段ボールシートの製造方法は、波型に形成された中芯と第1ライナとを貼り合せて片面段ボールシートを製造するシングルフェーサ工程と、前記シングルフェーサ工程で製造された前記片面段ボールシートに第2ライナを貼り合せて段ボールシートを製造するダブルフェーサ工程とを備え、前記ダブルフェーサ工程の前に前記第2ライナを加熱するライナ加熱工程と、前記ダブルフェーサ工程の前に前記片面段ボールシートの前記中芯の段頂部に接着剤を塗布する接着剤塗布工程とを備えた段ボールシートの製造方法であって、前記ライナ加熱工程の前に、前記中芯の段頂部に貼り合せられる前記第2ライナの裏面に、選択的に液体の貼合速度向上剤を塗布する貼合速度向上剤塗布工程を、段ボールシートの材料シートに応じて選択的に実施することを特徴としている。
【0016】
前記貼合速度向上剤塗布工程では、前記裏面の要部に部分的に前記貼合速度向上剤を塗布することが好ましい。
前記貼合速度向上剤塗布工程では、スプレー方式により前記裏面に非接触で前記貼合速度向上剤を塗布することが好ましい。
前記貼合速度向上剤塗布工程では、前記ダブルフェーサに前記第2ライナが進入した際に、前記第2ライナの前記裏面に塗布された前記貼合速度向上剤の液分が蒸散して前記裏面が乾燥状態になるように、前記貼合速度向上剤の塗布量を調整することが好ましい。
前記接着剤は、澱粉系接着剤であることが好ましい。
前記貼合速度向上剤は、硼素化合物を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本件によれば、貼合速度向上剤の塗布が必要な時だけ塗布を実施することで、不要な貼合速度向上剤の使用によるコスト増を抑えながら、ダブルフェーサ工程での貼合速度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係るコルゲータの要部の構成図である。
図2】一実施形態に係る貼合速度向上剤塗布装置を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、一実施形態としてのコルゲータ及び段ボールシートの製造方法を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0020】
〔コルゲータ〕
コルゲータ(コルゲートマシン)は、図1に示すように、波型に形成された中芯1と裏ライナ(第1ライナ)2とを貼り合せて片面段ボールシート3を製造するシングルフェーサ10と、シングルフェーサ10で製造された片面段ボールシート3に表ライナ(第2ライナ)4を貼り合せて段ボールシート5を製造するダブルフェーサ20とを備えている。なお、図中の矢印は、シート類1,2,3,4,5の進行方向を示す。
【0021】
詳細は図示しないが、シングルフェーサ10では、プレヒータで加熱された裏ライナ2に、プレヒータで加熱され段ロールで波型に段繰り形成された中芯2を貼り合せて片面段ボールシート3を製造する。
【0022】
シングルフェーサ10とダブルフェーサ20との間には、片面段ボールシート3を加熱するプレヒータ31と、片面段ボールシート3の中芯1の段頂部1aに接着剤を塗布するグルーマシン32とが配置されている。シングルフェーサ10で製造された片面段ボールシート3は、図1に矢印で示すように搬送されながら、プレヒータ31で加熱され、中芯1の段頂部1aに接着剤を塗布されてダブルフェーサ20に進入する。
【0023】
また、ダブルフェーサ20の上流には、プレヒータ31及びプレヒータ31と並列的に、表ライナ4を加熱するプレヒータ33が配置されている。表ライナ4は、図1に矢印で示すように搬送されながら、プレヒータ33で加熱されてダブルフェーサ20に進入する。
【0024】
ダブルフェーサ20には、上流にヒーティングパート21が配置され、下流にクーリングパート22が配置され、さらに、片面段ボールシート3及び表ライナ4を、ヒーティングパート21及びクーリングパート22を通過するように搬送するキャンバスベルト23,24が配置されている。
【0025】
ヒーティングパート21には、片面段ボールシート3及び表ライナ4の搬送ルートに沿って、下方に熱板25が配備され、上方に複数のウェイトロール26が配備されている。片面段ボールシート3及び表ライナ4は、ヒーティングパート21の入り口部分で集合し、キャンバスベルト23で搬送されながら、熱板25とウェイトロール26との間を移動して、熱板25で加熱され、ウェイトロール26で加圧されて、貼り合わされる。
また、図示しないが、クーリングパート22の下流には、片面段ボールシート5にスリット加工を行うスリッタ装置や罫線加工を行うスコアラ装置等が装備される。
【0026】
〔接着剤〕
本実施形態において、シングルフェーサ10での中芯1と裏ライナ2との接合、及び、ダブルフェーサ20での中芯1と表ライナ4との接合に使用する接着剤は、水系の澱粉系接着剤(いわゆる、貼合糊)である。貼合糊は、未糊化澱粉と糊化澱粉の混合水液であり、中芯1とライナ2又は4との貼り合せ後での加熱により、未糊化澱粉が膨潤→接着剤の増粘→未糊化澱粉の糊化→接着剤の乾燥等の工程を経て接着が完了する、いわゆる、スタインホール法を用いた貼合糊(スタインホール接着剤)である。
【0027】
〔貼合速度向上剤塗布装置〕
コルゲータのプレヒータ33の上流側には、表ライナ4の裏面4aに、液体の貼合速度向上剤を塗布する貼合速度向上剤塗布装置40が装備されている。
貼合速度向上剤塗布装置40は、図2に示すように、塗布装置本体41と、塗布装置本体41の作動を操作する制御装置42とを備えている。貼合速度向上剤塗布装置40は、作動モードとして、貼合速度向上剤を塗布する塗布モードと、貼合速度向上剤の塗布を停止する塗布停止モードとを備えており、オペレータが図示しない入力手段によって制御装置42にモード選択信号を入力することで、作動モードが設定されるようになっている。
【0028】
本実施形態の塗布装置本体41は、液体の貼合速度向上剤を噴射するスプレーノズル41aと、スプレーノズル41aに貼合速度向上剤を加圧供給する供給路に介装されたバルブ41bを備え、スプレー方式で、表ライナ4の裏面4aに、非接触で貼合速度向上剤を塗布するようになっている。
【0029】
本実施形態の貼合速度向上剤塗布装置40では、表ライナ4の裏面4aの要部に部分的に貼合速度向上剤を塗布するように、スプレーノズル41aが配置されている。裏面4a要部とは、表ライナ4の両端や、ダブルフェーサ20の下流の図示しないスリッタ装置によるスリット加工により切り口となる箇所である。図2に示す例では、表ライナ4の両端部分にそれぞれスプレーノズル41aが配置されている。各スプレーノズル41aの裏面4aにおける塗布幅Wは、段ボールシート5の幅サイズにもよるが、50~300mmの範囲とすることが好ましい。塗布幅Wが50mm未満の場合、貼合速度向上剤の塗布効果が十分発揮されない可能性がある。また、塗布幅Wが300mmを超えた場合には、塗布効果が頭打ちになったりコスト的な課題が発生したりする可能性がある。
【0030】
これらの箇所は、段ボールシート5の初期接着強度が低いと、裁断時に受ける裁断ショック等で、未だ十分に固まっていない貼合部からの剥れが発生しやすい箇所である。つまり、初期接着強度が低いと貼合部からの剥れが発生し易い箇所に限定して部分的に貼合速度向上剤を塗布すれば、全面に貼合速度向上剤を塗布しなくても剥れの発生を防止することができる点に着目して、裏面4aの要部に貼合速度向上剤を塗布している。
【0031】
バルブ41bは、開度調整可能であり、制御装置42を通じて、バルブ41bを閉鎖(開度0)することで塗布停止モードを設定でき、バルブ41bを開放することで塗布モードを設定できるようになっている。また、制御装置42を通じて、バルブ41bの開度を調整することで、貼合速度向上剤の噴射量、即ち、裏面4aへの貼合速度向上剤の塗布量を調整することができる。したがって、バルブ41bの開度調整機能は、貼合速度向上剤の塗布量を調整する塗布量調整部に相当する。
【0032】
また、本実施形態では、オペレータが制御装置42を通じて、バルブ41bの開度を調整することで表ライナ4の裏面4aへの貼合速度向上剤の塗布量を調整するようになっている。具体的には、ダブルフェーサ20に表ライナ4が進入した際に、プレヒータ33による加熱によって表ライナ4の裏面4aに塗布された貼合速度向上剤の液分が蒸散して、裏面4aが乾燥状態になるように、貼合速度向上剤の塗布量を調整する。
【0033】
なお、ダブルフェーサ20に表ライナ4が進入した際に裏面4aが乾燥状態になるようにするのは、貼合糊の水分量の減量調整に頼らずに、中芯1と表ライナ4との貼合部の水分量を抑えて、加工後の段ボールシートに反りが発生することを抑制するためである。裏面4aが乾燥状態になるか否かは、プレヒータ33による加わる熱量や、製造時の環境条件(温度や湿度)にも影響する。そこで、製造時の環境条件に応じて、プレヒータ33による加熱量の設定に加えて、貼合速度向上剤の塗布量を調整することが好ましい。
【0034】
〔貼合速度向上剤〕
本実施形態で用いる貼合速度向上剤は、硼素化合物を含み且つ苛性カリ及び苛性ソーダをいずれも含まないものが適用されている。
具体的には、貼合速度向上剤は、濃度2.0~15.0%に相当する量の水溶液の硼素化合物を、20℃~70℃に加熱保温した水で溶解したものである。
アルカリ性が強い苛性カリ及び苛性ソーダを含まないようにすることで、塗布・調製などの際の安全性がより向上する。また、苛性カリ又は苛性ソーダを含まなくても、一定の貼合速度向上効果は得られることが確認されている。
【0035】
また、表ライナ4の裏面4aへの貼合速度向上剤の標準的な塗布量は、0.05~0.50g/mとする。塗布量が0.05g/mを下回ると、貼合速度の向上効果が少なく、塗布量が0.50g/mを超えると、表ライナ4の水分量が増加して、ダブルフェーサ20に表ライナ4が進入した際に、裏面4aに水分を残存させてしまい、段ボールシート5の反り等の変形の要因となるおそれがある。
【0036】
〔段ボールシートの製造方法〕
本実施形態にかかる段ボールシートの製造方法は、上記のコルゲータを用いて、以下のように行われる。
まず、波型に形成された中芯1と裏ライナ2とを貼り合せて片面段ボールシート3を製造する(シングルフェーサ工程)。次に、シングルフェーサ工程で製造された片面段ボールシート3に表ライナ4を貼り合せて段ボールシート5を製造する(ダブルフェーサ工程)。
【0037】
また、ダブルフェーサ工程の前に、シングルフェーサ工程で製造された片面段ボールシート3プレヒータ31で表ライナ4を加熱する片面段ボールシート加熱工程を実施し、加熱後の片面段ボールシート3の中芯1の段頂部1aにグルーマシン32で接着剤を塗布する接着剤塗布工程を実施する。
【0038】
これらの片面段ボールシート加熱工程及び接着剤塗布工程と並行して、表ライナ4の裏面4aに、液体の貼合速度向上剤を塗布する貼合速度向上剤塗布工程を実施し、その後、段ボールシートの材料シートに応じて選択的に実施するプレヒータ33で表ライナ4を加熱するライナ加熱工程を実施する。ただし、貼合速度向上剤塗布工程は、貼合速度向上剤の塗布が必要な場合に限定して選択的に実施する。
【0039】
〔作用及び効果〕
本実施形態に係るコルゲータ及び段ボールシートの製造方法は、上記のように構成されているので、以下のような作用及び効果を得ることができる。
貼合速度向上剤塗布装置40は、貼合速度向上剤を塗布する塗布モードと、貼合速度向上剤の塗布を停止する塗布停止モードとを備えているので、貼合速度向上剤の塗布が必要な場合に限定して選択的に塗布モードを実施することができる。
【0040】
例えば、段ボールシート5の坪量が高いほど、また、段ボールシート5の要求強度が高いほど、接着強度(初期接着強度)も高くする必要があり、逆に、段ボールシート5の坪量が低い場合や、段ボールシートの要求強度が低い場合には、接着強度(初期接着強度)をそれほど高くする必要はない。
【0041】
そこで、段ボールシート5の接着強度(初期接着強度)を高くする必要がある場合には、貼合速度向上剤塗布工程を実施し、段ボールシート5の接着強度(初期接着強度)を高くする必要がない場合には、貼合速度向上剤塗布工程を実施しないようにすることで、貼合速度向上剤の使用量を抑制しながら、段ボールシート5に必要な接着強度(初期接着強度)を確保することができる。
【0042】
また、貼合速度向上剤塗布装置40は、貼合速度向上剤を塗布する場合にも、表ライナ4の裏面4aの要部に部分的に貼合速度向上剤を塗布するので、この点からも貼合速度向上剤の使用量を抑制しながら、段ボールシート5に必要な接着強度(初期接着強度)を確保することができる。
【0043】
さらに、ダブルフェーサ20に表ライナ4が進入した際に、プレヒータ33による加熱によって表ライナ4の裏面4aに塗布された貼合速度向上剤の液分が蒸散して、裏面4aが乾燥状態になるように、貼合速度向上剤の塗布量を調整するので、貼合糊の水分量の減量調整に頼らずに、中芯1と表ライナ4との貼合部の水分量を抑えて、加工後の段ボールシートに反りが発生することを抑制することができる。
【0044】
前記のように、製造時の環境条件に応じて、プレヒータ33による加熱量の設定に加えて貼合速度向上剤の塗布量を調整することが好ましいが、貼合速度向上剤の塗布量を多く必要で、ダブルフェーサ20に表ライナ4が進入した際に裏面4aが乾燥状態にするのが困難な場合には、貼合糊の水分量の調整を加えるようにしてもよい。
【0045】
〔その他〕
以上、実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
例えば、実施形態に係る貼合速度向上剤塗布装置40には、スプレー方式の塗布装置本体41を採用しているので、塗布モードと塗布停止モードとの切換が極めて容易であるが、貼合速度向上剤塗布装置40は貼合速度向上剤の塗布を停止させることができればよく本実施形態のものに限定されない。
また、実施形態においては、貼合糊としてスタインホール接着剤を使用したが、その他任意の方式の貼合糊(プレミックス方式、ノーキャリア方式等)でも同様に使用できる。
また、本実施形態では、硼素化合物を含み且つ苛性カリ及び苛性ソーダをいずれも含まない貼合速度向上剤を用いているが、貼合速度向上剤はこれに限定されない。
【0046】
また、上記実施形態では、制御装置42を通じて、オペレータが塗布モードと塗布停止モードとの切換や貼合速度向上剤の塗布量を調整しているが、制御装置42に、判断機能を設けて、段ボールシートの仕様データに応じて制御装置42が自動で塗布モードと塗布停止モードとの切換を行なってもよく、製造時の環境条件データに応じて、プレヒータ33による加熱量の設定に加えて貼合速度向上剤の塗布量を何れも自動で調整してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 中芯
1a 中芯1の段頂部
2 裏ライナ(第1ライナ)
3 片面段ボールシート
4 表ライナ(第2ライナ)
4a 表ライナ4の裏面
5 段ボールシート
10 シングルフェーサ
20 ダブルフェーサ
21 ヒーティングパート
22 クーリングパート
23,24 キャンバスベルト
25 熱板
26 ウェイトロール
31 プレヒータ
32 グルーマシン
33 プレヒータ
40 貼合速度向上剤塗布装置
41 塗布装置本体
41a スプレーノズル
41b バルブ(塗布量調整部)
42 制御装置
図1
図2