IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-画像形成装置 図1
  • 特許-画像形成装置 図2
  • 特許-画像形成装置 図3
  • 特許-画像形成装置 図4
  • 特許-画像形成装置 図5
  • 特許-画像形成装置 図6
  • 特許-画像形成装置 図7
  • 特許-画像形成装置 図8
  • 特許-画像形成装置 図9
  • 特許-画像形成装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240820BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20240820BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G03G21/00 530
G03G21/16 176
G03G15/08 340
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020158299
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052109
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】水野 雄介
(72)【発明者】
【氏名】坂口 新太郎
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-322539(JP,A)
【文献】特開2013-228600(JP,A)
【文献】特開2016-009134(JP,A)
【文献】特開2018-004785(JP,A)
【文献】特開2016-224374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 21/16
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体筐体と、
現像剤を収容する第1カートリッジと、
現像剤を収容する第2カートリッジと、
前記本体筐体内の温度を取得する第1温度センサと、
外気温を取得する第2温度センサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1温度センサの取得値と、前記第1温度センサの取得値にかける第1係数とに基づいて、前記第1カートリッジに対応した第1制御用温度を演算し、
前記第1温度センサの取得値と、前記第1温度センサの取得値にかける第2係数であって、前記第1係数とは異なる第2係数とに基づいて、前記第2カートリッジに対応した第2制御用温度を演算し、
前記第1制御用温度および前記第2制御用温度のうち高い方に基づいて、前記本体筐体内を冷却するための冷却制御を実行し、
前記第1カートリッジが交換されたと判定した場合には、前記第2温度センサの取得値に基づいて前記第1制御用温度を設定し、
前記第2カートリッジが交換されたと判定した場合には、前記第2温度センサの取得値に基づいて前記第2制御用温度を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1制御用温度を、さらに前回の前記第1制御用温度に基づいて演算し、
前記第2制御用温度を、さらに前回の前記第2制御用温度に基づいて演算することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
外気温を取得する第2温度センサを備え、
前記制御部は、
前記第1制御用温度を、さらに、前記第2温度センサの取得値と、前記第2温度センサの取得値にかける第3係数とに基づいて演算し、
前記第2制御用温度を、さらに、前記第2温度センサの取得値と、前記第2温度センサの取得値にかける第4係数であって、前記第3係数とは異なる第4係数とに基づいて演算することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1制御用温度を、さらに前記第1カートリッジの動作量に基づいて演算し、
前記第2制御用温度を、さらに前記第2カートリッジの動作量に基づいて演算することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1カートリッジは、黒の現像剤を収容し、
前記第2カートリッジは、有彩色の現像剤を収容し、
前記制御部は、
単色の画像を形成するとき、前記第2カートリッジを動作させずに、前記第1カートリッジを動作させ、
多色の画像を形成するとき、前記第1カートリッジおよび前記第2カートリッジを動作させることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記本体筐体内を冷却するファンを備え、
前記制御部は、
前記冷却制御において、前記冷却制御を実行していないときよりも前記ファンの風量を増大させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記冷却制御において、前記冷却制御を実行していないときよりも単位時間当たりの印刷ページ数を減少させることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
シートに現像剤像を定着させる定着装置を備え、
前記第1カートリッジは、前記第2カートリッジよりも前記定着装置に近く、
前記第1温度センサから前記第1カートリッジまでの距離は、前記第1温度センサから前記第2カートリッジまでの距離よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体筐体内を冷却するための冷却制御を実行する制御部を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置の制御部として、機内温度センサから取得した機内温度と、外気温センサから取得した外気温と、カートリッジの駆動状態とに基づいて、冷却制御のトリガーとなる制御用温度を演算するものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-224374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、画像形成装置が、複数のカートリッジを備える場合には、カートリッジごとに駆動状態や機内における温度環境が異なるため、制御用温度の演算の仕方によっては、複数のカートリッジを良好に冷却させることができなくなるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、冷却制御によって複数のカートリッジを良好に冷却させることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、本体筐体と、現像剤を収容する第1カートリッジと、現像剤を収容する第2カートリッジと、前記本体筐体内の温度を取得する第1温度センサと、制御部と、を備える。
前記制御部は、前記第1温度センサの取得値と、前記第1温度センサの取得値にかける第1係数とに基づいて、前記第1カートリッジに対応した第1制御用温度を演算し、前記第1温度センサの取得値と、前記第1温度センサの取得値にかける第2係数であって、前記第1係数とは異なる第2係数とに基づいて、前記第2カートリッジに対応した第2制御用温度を演算し、前記第1制御用温度および前記第2制御用温度のうち高い方に基づいて、前記本体筐体内を冷却するための冷却制御を実行する。
【0007】
この構成によれば、設置条件などが異なるカートリッジのうち、温度が高い方のカートリッジに対応した制御用温度で冷却制御を実行するので、第1カートリッジおよび第2カートリッジを良好に冷却することができる。
【0008】
また、前記制御部は、前記第1制御用温度を、さらに前回の前記第1制御用温度に基づいて演算し、前記第2制御用温度を、さらに前回の前記第2制御用温度に基づいて演算してもよい。
【0009】
この構成によれば、制御用温度の演算をより正確に行うことができる。
【0010】
また、前記画像形成装置は、外気温を取得する第2温度センサを備え、前記制御部は、前記第1制御用温度を、さらに、前記第2温度センサの取得値と、前記第2温度センサの取得値にかける第3係数とに基づいて演算し、前記第2制御用温度を、さらに、前記第2温度センサの取得値と、前記第2温度センサの取得値にかける第4係数であって、前記第3係数とは異なる第4係数とに基づいて演算してもよい。
【0011】
この構成によれば、制御用温度の演算をより正確に行うことができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記第1制御用温度を、さらに前記第1カートリッジの動作量に基づいて演算し、前記第2制御用温度を、さらに前記第2カートリッジの動作量に基づいて演算してもよい。
【0013】
この構成によれば、制御用温度の演算をより正確に行うことができる。
【0014】
また、前記第1カートリッジは、黒の現像剤を収容し、前記第2カートリッジは、有彩色の現像剤を収容し、前記制御部は、単色の画像を形成するとき、前記第2カートリッジを動作させずに、前記第1カートリッジを動作させ、多色の画像を形成するとき、前記第1カートリッジおよび前記第2カートリッジを動作させてもよい。
【0015】
形成する画像の種類によってカートリッジの動作量が変わる場合であっても、第1制御用温度および第2制御用温度をより正確に演算することができる。
【0016】
また、前記画像形成装置は、前記本体筐体内を冷却するファンを備え、前記制御部は、前記冷却制御において、前記冷却制御を実行していないときよりも前記ファンの風量を増大させてもよい。
【0017】
この構成によれば、ファンによる送風によって本体筐体内を冷却することができる。
【0018】
また、前記制御部は、前記冷却制御において、前記冷却制御を実行していないときよりも単位時間当たりの印刷ページ数を減少させてもよい。
【0019】
この構成によれば、単位時間当たりの印刷ページ数を減少させることで、例えばカートリッジの動作量が少なくなったり、定着装置からの発熱量を抑えたりすることができるので、カートリッジを良好に冷却させることができる。
【0020】
また、前記画像形成装置は、外気温を取得する第2温度センサを備え、前記制御部は、前記第1カートリッジが交換されたと判定した場合には、前記第2温度センサの取得値に基づいて前記第1制御用温度を設定し、前記第2カートリッジが交換されたと判定した場合には、前記第2温度センサの取得値に基づいて前記第2制御用温度を設定してもよい。
【0021】
交換後のカートリッジの温度は、外気温に近いため、カートリッジが交換された場合に、外気温である第2温度センサの取得値に基づいて制御用温度を設定することで、制御用温度を適切に演算することができる。
【0022】
また、前記画像形成装置は、シートに現像剤像を定着させる定着装置を備え、前記第1カートリッジは、前記第2カートリッジよりも前記定着装置に近く、前記第1温度センサから前記第1カートリッジまでの距離は、前記第1温度センサから前記第2カートリッジまでの距離よりも小さくてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、冷却制御によって複数のカートリッジを良好に冷却させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】カラープリンタの構成を示す図である。
図2】ドロワを引き出した状態を示す図である。
図3】感光ドラムと現像ローラの離間・接触の状態を説明する図である。
図4】層厚規制ブレードへの熱の出入りを示す熱回路である。
図5】制御部の動作を示すフローチャートである。
図6】第1温度演算処理を示すフローチャートである。
図7】冷却制御開始終了判定を示すフローチャートである。
図8】カバー開時処理を示すフローチャートである。
図9】第2温度演算処理を示すフローチャートである。
図10】本体筐体が第1温度センサを備えた変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、画像形成装置の一例としてのカラープリンタ1は、本体筐体10と、シートPを供給する給紙部20と、給紙されたシートPに画像を形成する画像形成部30と、画像が形成されたシートPを排出する搬送部90と、制御部100とを備えている。
【0026】
本体筐体10は、第1開口10Aと、フロントカバー11と、第2開口10Bと、リアカバー12とを有している。第1開口10Aは、後述するユニットUが通過可能な開口である。フロントカバー11は、第1開口10Aを開ける開位置と、第1開口10Aを閉じる閉位置との間で回動可能となっている。
【0027】
第2開口10Bは、シートPが通過可能な開口である。リアカバー12は、第2開口10Bを開ける開位置と、第2開口10Bを閉じる閉位置との間で回動可能となっている。
【0028】
給紙部20は、シートPを収容する給紙トレイ21と、給紙トレイ21からシートPを画像形成部30へ搬送するシート搬送機構22とを備えている。
【0029】
画像形成部30は、スキャナユニット40と、ユニットUと、転写ユニット70と、定着装置80とを備えている。
【0030】
スキャナユニット40は、図示しないレーザ発光部、ポリゴンミラー、レンズおよび反射鏡などを備えている。スキャナユニット40は、レーザビームを各感光ドラム61の表面上に照射する。
【0031】
ユニットUは、第1開口10Aを通して本体筐体10から引き出し可能となっている。ユニットUは、4つのカートリッジ50と、ドロワ60とを備えている。
【0032】
カートリッジ50は、ドロワ60に着脱可能となっている。カートリッジ50は、現像剤の一例としてのトナーを収容する収容部51と、現像ローラ52と、現像ローラ52に接触して現像ローラ52上のトナーの層厚を規制する層厚規制ブレード53とを備えている。4つのカートリッジ50の収容部51内には、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色のトナーが収容されている。
【0033】
カートリッジ50は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色のトナーが入った50Y,50M,50C,50Kの符号で示すものがシートPの搬送方向上流からこの順で並んで配置されている。なお、本明細書および図面において、トナーの色に対応した感光ドラム61や現像ローラ52などを特定する場合には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれに対応させて、Y,M,C,Kの記号を付することとする。
【0034】
ユニットUが本体筐体10の画像形成用位置に配置された状態において、カートリッジ50Yが第1開口10Aに最も近く、カートリッジ50Kが第1開口10Aから最も遠くに位置している。以下の説明では、カートリッジ50Kを、「第1カートリッジ50K」とも称し、カートリッジ50Yを、「第2カートリッジ50Y」とも称する。第1カートリッジ50Kは、第2カートリッジ50Yよりも定着装置80に近い。
【0035】
ドロワ60は、本体筐体10の画像形成用位置から上下方向に直交した方向に引き出し可能となっている。ここで、画像形成用位置は、画像形成を行うときのドロワ60の位置をいう。ドロワ60は、感光体の一例としての感光ドラム61と、図示せぬ帯電器と、4つのカートリッジ50を着脱可能に保持するフレーム62と、第1温度センサSE1と、第1接点CN1とを備えている。感光ドラム61および帯電器は、フレーム62に、4つの現像ローラ52に対応して4つ設けられている。
【0036】
フレーム62は、上下方向に直交した方向において、本体筐体10に移動可能に支持されている。第1温度センサSE1は、例えば、サーミスタであり、本体筐体10内の温度である機内温度を取得する。第1接点CN1は、配線を介して第1温度センサSE1と導通している。
【0037】
第1温度センサSE1と第1接点CN1は、ドロワ60の引き出し方向Dにおいて、最も上流側の第1カートリッジ50Kよりも上流側に設けられている。言い換えると、第1温度センサSE1と第1接点CN1は、ドロワ60の引き出し方向Dにおいて、最も上流側の第1カートリッジ50Kと定着装置80との間の位置に設けられている。第1温度センサSE1から第1カートリッジ50Kまでの距離は、第1温度センサSE1から第2カートリッジ50Yまでの距離よりも小さい。
【0038】
本体筐体10は、制御部100と配線を介して導通する第2接点CN2を備えている。第1接点CN1は、ドロワ60が本体筐体10の画像形成用位置に配置された状態で、第2接点CN2に接続されている。詳しくは、ドロワ60が画像形成用位置に配置されたとき、第1接点CN1が第2接点CN2に接続される。
【0039】
また、図2に示すように、ドロワ60が本体筐体10から引き出された状態では、第1接点CN1は、第2接点CN2から離れている。詳しくは、ドロワ60が画像形成用位置から外れたとき、第1接点CN1が第2接点CN2から離れる。
【0040】
図1に戻って、転写ユニット70は、駆動ローラ71と、従動ローラ72と、搬送ベルト73と、転写ローラ74とを備えている。搬送ベルト73は、エンドレスベルトである。駆動ローラ71および従動ローラ72は、搬送ベルト73を回転させるローラ
である。転写ローラ74は、対応する感光ドラム61との間で搬送ベルト73を挟持するローラであり、各感光ドラム61に対向して4つ配置されている。
【0041】
定着装置80は、シートPにトナー像を定着させる装置である。定着装置80は、ヒータHで加熱される加熱ローラ81と、加熱ローラ81に押圧される加圧ローラ82とを備えている。
【0042】
ドロワ60が、本体筐体10の画像形成用位置にあるとき、カラープリンタ1は画像形成が可能である。画像形成用位置は、感光ドラム61と転写ユニット70とが接触している位置であり、スキャナユニット40が感光ドラム61の所定位置を露光可能な位置である。画像形成部30では、まず、各感光ドラム61の表面が、帯電器により一様に帯電された後、スキャナユニット40で露光される。これにより、各感光ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。その後、現像ローラ52によって、収容部51内のトナーが、感光ドラム61上の静電潜像に供給されることで、感光ドラム61上にトナー像が形成される。
【0043】
次に、搬送ベルト73上に供給されたシートPが各感光ドラム61と各転写ローラ74との間を通過することで、各感光ドラム61上に形成されたトナー像がシートP上に転写される。そして、シートPが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過することで、シートP上に転写されたトナー像が熱定着される。
【0044】
搬送部90は、画像形成部30から搬出されたシートPを本体筐体10の排出トレイ13に排出する排出機構として機能するとともに、画像形成部30により一方の面に画像が形成されたシートPの表裏を反転させた状態で当該シートPを画像形成部30へ再度搬送する再搬送手段として機能している。具体的に、搬送部90は、搬送経路91と、排出ローラ92と、再搬送経路93と、を主に備えている。
【0045】
搬送経路91は、定着装置80から排出トレイ13に向けてシートPを案内する経路である。
【0046】
排出ローラ92は、正逆両方に回転可能に構成されており、正回転時には画像形成部30から搬出されたシートPを排出トレイ13に向けて排出し、逆回転時にはシートPを本体筐体10内に引き込むように搬送する。
【0047】
再搬送経路93は、画像形成部30により一方の面に画像が形成されたシートPを、給紙部20の下を通して再び画像形成部30へ案内するように構成されている。
【0048】
搬送部90では、画像形成が終了した場合には、画像形成部30から搬出されたシートPは、搬送経路91を搬送され、正回転する排出ローラ92によって本体筐体10の外部に排出されて排出トレイ13上に載置される。また、一方の面に画像が形成されたシートPの他方の面に画像を形成する場合には、シートPの全体が本体筐体10の外部に完全に排出される前に排出ローラ92が逆回転することで、シートPは再度本体筐体10内に引き戻され、搬送経路91から再搬送経路93に搬送される。その後、シートPは、再搬送経路93を搬送され、給紙部20によって再び画像形成部30に搬送される。
【0049】
本体筐体10は、ファン14と、吸気口15と、第2温度センサSE2を有している。
【0050】
ファン14は、本体筐体10内を冷却するファンであり、定着装置80よりも上方に配置されている。ファン14は、定着装置80とドロワ60の間に配置されている。ファン14は、本体筐体10内の空気を吸引して外部に排出するように構成されている。
【0051】
吸気口15は、外部から本体筐体10内に空気を取り込むための開口である。吸気口15は、定着装置80に対して、ドロワ60とは反対側に配置されている。吸気口15は、定着装置80よりも下方に配置されている。すなわち、吸気口15は、定着装置80およびカートリッジ50が発生する熱の影響を受けにくい位置に配置されている。
【0052】
第2温度センサSE2は、例えば、サーミスタであり、吸気口15の内側に対面して配置されている。この第2温度センサSE2は、吸気口15から取り込まれた空気の温度を検知することで、本体筐体10外の温度である外気温を取得するように構成されている。第2温度センサSE2は、配線を介して制御部100に接続されている。
【0053】
また、カラープリンタ1は、フロントカバー11の開閉を検知するフロントカバー開閉センサ11Aと、リアカバー12の開閉を検知するリアカバー開閉センサ12Aとをさらに備えている。
【0054】
フロントカバー開閉センサ11Aとリアカバー開閉センサ12Aは、各カバー11,12が閉じているときカバー11,12の一部が当たって制御部100にON信号を出力する。フロントカバー開閉センサ11Aとリアカバー開閉センサ12Aは、各カバー11,12が開いているときカバー11,12が離間して制御部100にOFF信号を出力する。
【0055】
制御部100は、CPU、ROM、RAMなどを有し、予め用意されたプログラムなどに従い、印刷指令の受信などに応じて様々な処理を実行するように構成されている。図3に示すように、制御部100は、多色の画像を形成するカラーモードと、単色の画像を形成するモノクロモードと、全離間モードとを実行可能である。制御部100は、現像ローラ52を感光ドラム61に対して接触または離間させるための離間機構200を制御することで、各モードを切り替えている。
【0056】
具体的に、制御部100は、カラーモードにおいては、すべての現像ローラ52Y,52M,52C,52Kを、それぞれ対応する感光ドラム61Y,61M,61C,61Kに接触させて、すべての現像ローラ52とすべての感光ドラム61を回転させる。つまり、制御部100は、多色の画像を形成するとき、第1カートリッジ50Kおよび第2カートリッジ50Yを含むすべてのカートリッジ50を動作させる。
【0057】
制御部100は、モノクロモードにおいては、ブラック用の現像ローラ52Kのみを感光ドラム61Kに接触させ、その他の3色の現像ローラ52Y,52M,52Cについては、対応する感光ドラム61Y,61M,61Cから離間させる。また、制御部100は、モノクロモードにおいては、現像ローラ52Kのみとすべての感光ドラム61を回転させ、他の現像ローラ52Y,52M,52Cについては停止させる。つまり、制御部100は、単色の画像を形成するとき、第2カートリッジ50Yを含むカラー用のカートリッジ50Y,50M,50Cを動作させずに、第1カートリッジ50Kを動作させる。
【0058】
さらに、制御部100は、例えば感光ドラム61をクリーニングする場合などには、全離間モードを実行することで、すべての現像ローラ52Y,52M,52C,52Kを、それぞれ対応する感光ドラム61Y,61M,61C,61Kから離間させる。
【0059】
制御部100は、制御用温度に基づいて、本体筐体10内を冷却するための冷却制御を実行可能となっている。ここで、制御用温度は、カートリッジ50の温度として推定される温度であり、本実施形態では、層厚規制ブレード53の温度Tとして推定されている。
【0060】
制御部100は、第1カートリッジ50Kに対応した第1制御用温度を演算するとともに、第2カートリッジ50Yに対応した第2制御用温度を演算するように構成されている。そして、制御部100は、第1制御用温度および第2制御用温度のうち高い方に基づいて、冷却制御を実行する。
【0061】
具体的に、制御部100は、機内温度、外気温、および、現像ローラ52の駆動状態等に基づいて、所定時間おきに、前回の演算から現在までの層厚規制ブレード53の温度変化である差分温度を演算し、得られた差分温度と前回演算した層厚規制ブレード53の温度との和を現在の層厚規制ブレード53の温度とする演算を行う。
【0062】
具体的には、現在の層厚規制ブレード53の温度T(n)[℃]は、前回演算した層厚規制ブレード53の温度T(n-1)[℃]と、層厚規制ブレード53の差分温度ΔT[℃]を用いて、
(n)=T(n-1)+ΔT ・・(1)
という演算により求められる。
【0063】
ここで、(1)式における層厚規制ブレード53の差分温度ΔT[℃]は、図4に示すように、機内の空気、詳しくは第1温度センサSE1周りから層厚規制ブレード53に移動する熱量ΔEin-B(n)[J]と、層厚規制ブレード53から外気に移動する熱量ΔEout-B(n)[J]と、層厚規制ブレード53の発熱量Q[W]を用いて、
ΔT
=(ΔEin-B(n)-ΔEout-B(n)+Q×Δt)/C ・・(2)
ただし、
[J/℃] 層厚規制ブレードの熱容量
Δt[s] 前回の演算から現在までの時間
という演算により求められる。
【0064】
なお、(2)式における機内の空気から層厚規制ブレード53に移動する熱量ΔEin-B(n)[J]は、前回取得した機内温度Tin(n-1)[℃]と、前回演算した層厚規制ブレード53の温度T(n-1)[℃]と、機内の空気と層厚規制ブレード53の間の熱抵抗Rin-B[℃/W]を用いて、
ΔEin-B(n)
=(Tin(n-1)-T(n-1))×Δt/Rin-B ・・(3)
という演算により求められる。
【0065】
また、(2)式における層厚規制ブレード53から外気に移動する熱量ΔEout-B(n)[J]は、前回取得した外気温Tout(n-1)[℃]と、前回演算した層厚規制ブレード53の温度T(n-1)[℃]と、外気温と層厚規制ブレード53の間の熱抵抗Rout-B[℃/W]とを用いて、
ΔEout-B(n)
=(T(n-1)-Tout(n-1))×Δt/Rout-B ・・(4)
という演算により求められる。
【0066】
(3),(4)式におけるRin-B、Rout-Bは、第1制御用温度を演算するときと、第2制御用温度を演算するときとで、異なる値に設定されている。言い換えると、第1制御用温度の演算に使用する第1関数と、第2制御用温度の演算に使用する第2関数は、Rin-B、Rout-Bが異なっている。
【0067】
詳しくは、第1温度センサSE1から第1カートリッジ50Kまでの距離と、第1温度センサSE1から第2カートリッジ50Yまでの距離が異なるため、前回の第1温度センサSE1の取得値としての機内温度Tin(n-1)等にかける係数である1/Rin-Bは、第1関数と第2関数とで、異なる値に設定されている。ここで、第1関数における1/Rin-Bは、第1係数に相当し、第2関数における1/Rin-Bは、第2係数に相当する。
【0068】
また、本体筐体10外の所定位置から第1カートリッジ50Kまでの距離と、本体筐体10外の所定位置から第2カートリッジ50Yまでの距離が異なるため、前回の第2温度センサSE2の取得値としての外気温Tout(n-1)等にかける係数である1/Rout-Bは、第1関数と第2関数とで、異なる値に設定されている。ここで、第1関数における1/Rout-Bは、第3係数に相当し、第2関数における1/Rout-Bは、第4係数に相当する。
【0069】
また、(2)式における層厚規制ブレード53の発熱量Qは、カートリッジ50の動作量に応じて変化するパラメータであり、カートリッジ50の動作量に相当する。発熱量Qは、例えば現像ローラ52の駆動時間、停止時間および回転速度に基づいて設定することができる。
【0070】
(2)~(4)式より、制御部100は、前回の第1温度センサSE1の取得値である機内温度Tin(n-1)と、第1係数1/Rin-Bと、前回の第1制御用温度である前回の層厚規制ブレード53Kの温度T(n-1)と、第1カートリッジ50Kの動作量である発熱量Qと、前回の第2温度センサSE2の取得値である外気温Tout(n-1)と、第3係数1/Rout-Bとに基づいて、第1制御用温度である層厚規制ブレード53Kの温度Tを演算する。
【0071】
また、制御部100は、前回の第1温度センサSE1の取得値である機内温度Tin(n-1)と、第2係数1/Rin-Bと、前回の第1制御用温度である前回の層厚規制ブレード53Yの温度T(n-1)と、第2カートリッジ50Yの動作量である発熱量Qと、前回の第2温度センサSE2の取得値である外気温Tout(n-1)と、第4係数1/Rout-Bとに基づいて、第2制御用温度である層厚規制ブレード53Yの温度Tを演算する。
【0072】
制御部100は、現像ローラ52の駆動状態、リアカバー12の開閉状態、片面印字を実行する場合と両面印字を実行する場合、シートPのサイズ、ファン14の駆動状態、定着装置80の状態の各状態のそれぞれに応じて、記憶部から上記した定数(Q、C、Rin-B、Rout-B)を取得し、取得した定数を用いて層厚規制ブレード53の温度を演算する。ここで、記憶部は、一例としてROMまたはRAMであり、例えば、各状態の複数の組み合わせと複数の定数の関係を示すマップを記憶している。例えば、リアカバー12の閉状態に対しては、上記した定数として所定の値が設定され、リアカバー12が開状態であるときは、上記した定数のうち、Rin-BおよびRout-Bの値が、所定の値とは異なる値に設定される。
【0073】
ここで、現像ローラ52の駆動状態は、本実施形態では、現像ローラ52を駆動するためのモータの駆動・停止、および、現像ローラ52の回転速度に応じた状態である。また、定着装置80の状態としては、印刷中の状態と、印刷時よりも低い温度に維持するレディ状態と、定着装置80がOFFの状態であるスリープ状態がある。
【0074】
制御部100は、原則、前述した第1関数および第2関数を用いて第1制御用温度および第2制御用温度を演算により求める。ただし、状況によっては、例外的に、制御部100は、第1関数および第2関数を用いずに、第1制御用温度および第2制御用温度を設定する。
【0075】
また、制御部100は、原則、第1制御用温度および第2制御用温度に基づいて冷却制御の開始・終了を行う。ただし、状況によっては、例外的に、制御部100は、第1制御用温度および第2制御用温度に基づかずに、冷却制御の終了を行う。
【0076】
また、制御部100は、冷却制御中にドロワ60が画像形成用位置から外された場合には、冷却制御を継続するように構成されている。
【0077】
以下、制御部100の動作について詳細に説明する。制御部100は、図5に示す処理を繰り返し実行している。
【0078】
図5に示す処理において、制御部100は、まず、第1温度演算処理を実行する(S1)。図6に示すように、第1温度演算処理において、制御部100は、まず、各温度センサSE1,SE2から機内温度および外気温を取得するとともに、記憶部から第1関数および第2関数に用いるそれぞれの定数(Q、C、Rin-B、Rout-B)を取得する(S101)。詳しくは、ステップS101において、制御部100は、第1カートリッジ50Kおよび第2カートリッジ50Yでの各現像ローラ52の駆動状態などの各状態を判定し、判定した各状態に基づいて、第1関数および第2関数に用いるそれぞれの定数(Q、C、Rin-B、Rout-B)を取得する。
【0079】
ステップS101の後、制御部100は、第1関数に基づいて第1制御用温度である層厚規制ブレード53Kの温度T(n)を演算し、第2関数に基づいて第2制御用温度である層厚規制ブレード53Yの温度T(n)を演算する(S102)。詳しくは、ステップS102において、制御部100は、記憶部に記憶されている、層厚規制ブレード53K,53Yのそれぞれの温度Tと、機内温度Tinおよび外気温Toutとを、第1関数および第2関数のそれぞれのT(n-1)と、Tin(n-1)およびTout(n-1)とに代入して、演算を行う。
【0080】
なお、カラープリンタ1において最初にステップS102の演算を行う場合におけるT、Tin、Toutは、初期値として予め記憶部に記憶されていてもよいし、T、TinおよびToutを、それぞれ今回取得した機内温度や外気温に基づいて設定してもよい。
【0081】
ステップS102の後、制御部100は、今回演算した層厚規制ブレード53K,53Yの温度T(n)と、今回取得した機内温度Tin(n)および外気温Tout(n)とを、記憶部内のT、Tin、Toutに上書きすることで、T、Tin、Toutを更新して(S103)、第1温度演算処理を終了する。なお、本実施形態では、T、Tin、Toutを上書きすることとしたが、T、Tin、Toutを時系列で所定数ずつ記憶しておいてもよい。
【0082】
図5に戻って、制御部100は、ステップS1の後、冷却制御開始終了判定を実行する(S2)。図7に示すように、冷却制御開始終了判定において、制御部100は、まず、第1カートリッジ50Kの層厚規制ブレード53Kの温度Tと、第2カートリッジ50Yの層厚規制ブレード53Yの温度Tを、記憶部から取得する(S201)。ステップS201の後、層厚規制ブレード53Kの温度Tと層厚規制ブレード53Yの温度Tのうち高い方の温度Tを選択する(S202)。
【0083】
ステップS202の後、制御部100は、温度Tが第1閾値T1以下であるか否かを判定する(S203)。ステップS203においてT≦T1でないと判定した場合には(No)、制御部100は、温度Tが、第1閾値T1よりも大きい第2閾値T2以下であるか否かを判定する(S204)。
【0084】
ここで、第2閾値T2は、トナーの融点以下の温度である。なお、第2閾値T2は、第1閾値T1と同じ値であってもよい。
【0085】
ステップS204においてT≦T2でない、つまり温度Tが第2閾値T2よりも大きいと判定した場合には(No)、制御部100は、冷却制御を開始して(S206)、本処理を終了する。なお、冷却制御中において、ステップS206の処理に入った場合には、制御部100は、冷却制御を継続する。ステップS203またはステップS204においてYesと判定した場合には、制御部100は、冷却制御を終了して(S205)、本処理を終了する。
【0086】
なお、制御部100は、冷却制御中において、温度Tに基づいて以下の処理を実行している。制御部100は、冷却制御中において、温度Tが、第2閾値T2よりも大きい第3閾値T3以下の場合には、冷却制御を実行していないときよりもファン14の風量を増大させる。詳しくは、制御部100は、冷却制御において、冷却制御を開始する前のファン14の回転速度よりも大きな回転速度でファン14を回転させる。
【0087】
また、制御部100は、冷却制御中において、温度Tが、第3閾値T3よりも大きく、かつ、第3閾値T3よりも大きい第4閾値T4以下である場合には、印刷制御における単位時間当たりの印刷ページ数を冷却制御を実行していないときよりも減少させる。印刷ページ数を減少させる方法としては、例えば、感光ドラム61や現像ローラ52等の回転速度を通常の印刷を行う場合よりも低下させてシートPの搬送速度を通常の印刷を行う場合よりも遅くする方法や、シートPの搬送間隔を通常の印刷を行う場合よりも大きくする方法などが挙げられる。なお、通常の印刷は、冷却制御を開始する前の印刷制御であって、単位時間当たりの印刷ページが最大となるように印刷制御を実行する。
【0088】
シートPの搬送速度を遅くする方法では、現像ローラ52の回転速度が低下することで、現像ローラ52と層厚規制ブレード53との摩擦による熱の発生を抑えて、カートリッジ50を冷却することができる。この場合、一例としてシートPの搬送速度を冷却制御を実行しないときの半分とすることができる。また、シートPの搬送間隔を大きくする方法では、加熱ローラ81から熱を奪うシートPが定着装置80に供給される頻度を低くして、定着装置80からの発熱量を抑えて、機内温度Tinの上昇を抑制することでカートリッジ50を冷却することができる。
【0089】
また、制御部100は、冷却制御中において、温度Tが、第4閾値T4よりも大きい場合には、印刷を停止する。印刷を停止することで、現像ローラ52と層厚規制ブレード53との摩擦による熱の発生と定着装置80からの発熱量を抑えることができるので、カートリッジ50を冷却することができる。
【0090】
図5に戻って、制御部100は、ステップS2の後、印刷ジョブがあるか否かを判定する(S3)。ステップS3において印刷ジョブがあると判定した場合には(Yes)、制御部100は、印刷ジョブに基づいて印刷処理を実行する(S4)。ステップS4の後、または、ステップS3でNoと判定した場合には、制御部100は、フロントカバー開閉センサ11Aからの信号に基づいてフロントカバー11が開いているか否かを判定する(S5)。
【0091】
ステップS5においてフロントカバー11が開いていないと判定した場合には(No)、制御部100は、ステップS1の処理に戻る。ステップS5においてフロントカバー11が開いていると判定した場合には(Yes)、制御部100は、カバー開時処理を実行し(S6)、その後、ステップS1の処理に戻る。
【0092】
図8に示すように、カバー開時処理において、制御部100は、まず、ドロワ60に設けられた第1温度センサSE1から応答があるか、つまり第1接点CN1が第2接点CN2から離脱したかを判定することで、ドロワ60が本体筐体10の画像形成用位置から引き出されたか否かを判定する(S601)。ステップS601においてドロワ60が本体筐体10の画像形成用位置から引き出されたと判定した場合には(Yes)、制御部100は、ドロワ60が画像形成用位置から引き出されてからの経過時間TMが所定時間Tth以上であるか否かを判定する(S602)。
【0093】
ステップS602においてTM≧Tthでないと判定した場合には(No)、制御部100は、第2温度演算処理を実行する(S603)。図9に示すように、第2温度演算処理は、前述した第1温度演算処理のステップS101,S103とは一部処理が異なるステップS111,S113と、前述した第1温度演算処理と同様のステップS102を有する処理である。
【0094】
制御部100は、ステップS111において、第2温度センサSE2から外気温を取得するとともに、記憶部から第1関数および第2関数に用いるそれぞれの定数(Q、C、Rin-B、Rout-B)を取得するが、第1温度センサSE1から機内温度を取得しない。制御部100は、ステップS111の後、ステップS102を実行し、その後、ステップS113に移行する。
【0095】
ステップS113において、制御部100は、今回演算した層厚規制ブレード53K,53Yの温度T(n)と、今回取得した外気温Tout(n)を、記憶部内のT、Toutに上書きすることで、T、Toutを更新するが、記憶部内の機内温度Tinについては更新しない。これにより、記憶部内の機内温度Tinは、ドロワ60が画像形成用位置から外される直前に制御部100が取得した第1温度センサSE1の取得値に維持されるようになっている。そのため、制御部100は、ステップS601においてドロワ60が画像形成用位置から引き出されたと判定した場合には(Yes)、ステップS102において、ドロワ60が画像形成用位置から引き出される直前に取得した第1温度センサSE1の取得値と、前回の層厚規制ブレード53K,53Yの温度T等に基づいて、今回の層厚規制ブレード53K,53Yの温度T(n)を演算する。
【0096】
図8に戻って、制御部100は、ステップS602においてTM≧Tthであると判定した場合には(Yes)、層厚規制ブレード53K,53Yの温度Tに関わらず、冷却制御を停止する(S604)。つまり、制御部100は、ドロワ60が画像形成用位置から外された状態において、ドロワ60が画像形成用位置から外されてからの経過時間TMが所定時間Tth以上になった場合に、冷却制御を停止する。
【0097】
ステップS603またはステップS604の後、制御部100は、第1温度センサSE1から応答があるか、つまり第1接点CN1が第2接点CN2に接続されたかを判定することで、ドロワ60が本体筐体10の画像形成用位置に配置されたか否かを判定する(S605)。ステップS605においてドロワ60が画像形成用位置に配置されていないと判定した場合には(No)、制御部100は、ステップS602の処理に戻る。
【0098】
ステップS605においてドロワ60が画像形成用位置に配置されたと判定した場合には(Yes)、制御部100は、温度演算の対象となる第1カートリッジ50Kおよび第2カートリッジ50Yの少なくとも一方が新品に交換されたか否かを判定する(S606)。ここで、新品に交換されたかの判定は、例えばカートリッジ50に設けたICチップに記憶されている情報に基づいて判定してもよいし、カートリッジ50に設けられた、新品位置から旧品位置に移動可能な突起の位置を検知することで判定してもよい。
【0099】
ステップS606において新品に交換されたと判定した場合には(Yes)、制御部100は、新品のカートリッジ50に対応する記憶部内の温度Tを、今回取得した外気温Tout(n)に書き換える(S607)。つまり、制御部100は、ドロワ60が画像形成用位置に移動された際に(S605:Yes)、カートリッジ50が新品に交換されたと判定した場合には(S606:Yes)、経過時間TMに関わらず、前回の第1制御用温度および第2制御用温度としての記憶部内の各温度Tを用いずに、第2温度センサSE2の取得値に基づいて第1制御用温度および第2制御用温度としての記憶部内の温度Tを設定する。ステップS606において第1カートリッジ50Kおよび第2カートリッジ50Yが両方とも新品に交換されていないと判定した場合には(No)、制御部100は、ドロワ60が画像形成用位置から引き出されてからの経過時間TMが所定時間Tth以上であるか否かを判定する(S608)。
【0100】
ステップS608においてTM≧Tthでないと判定した場合には(No)、制御部100は、図6に示す第1温度演算処理を実行する(S609)。つまり、制御部100は、ドロワ60が画像形成用位置から引き出された後(S601:Yes)、ドロワ60が画像形成用位置に移動されたときに(S605:Yes)、ドロワ60が画像形成用位置から引き出されてからの経過時間TMが所定時間Tth未満である場合には(S608:No)、記憶部内に記憶されている、前回の第1温度センサSE1の取得値(Tin)と、前回の層厚規制ブレード53K,53Yの温度T等に基づいて、今回の層厚規制ブレード53K,53Yの温度T(n)を演算する。
【0101】
なお、ステップS605でドロワ60が画像形成用位置に配置されたと判定された直後の第1温度演算処理においては、前回の機内温度Tin(n-1)として、ドロワ60が画像形成用位置から引き出される直前に取得された第1温度センサSE1の取得値に維持された記憶部内のTinが使われる。ただし、このときの第1温度演算処理のステップS101で取得した今回の機内温度Tin(n)は、ステップS103で記憶部内の機内温度Tinに上書きされて、記憶部内の機内温度Tinが更新される。そのため、2回目以降の制御サイクルにおける第1温度演算処理では、前回の制御サイクル時に第1温度センサSE1から取得された機内温度が、前回の機内温度Tin(n-1)として演算に用いられる。
【0102】
ステップS608においてTM≧Tthであると判定した場合には(Yes)、制御部100は、第1温度センサSE1から機内温度を取得し、取得した今回の機内温度Tin(n)を、記憶部内の各カートリッジ50K,50Yに対応した各温度Tに上書きして、記憶部内の各温度Tを更新する(S610)。つまり、制御部100は、ドロワ60が画像形成用位置から引き出された後(S601:Yes)、ドロワ60が画像形成用位置に移動されたときに(S605:Yes)、経過時間TMが所定時間Tth以上である場合には(S608:Yes)、前回の制御用温度としての記憶部内の各温度T(ステップS610で更新される前の各温度T)を用いずに、第1温度センサSE1の取得値に基づいて制御用温度としての記憶部内の各温度Tを設定する。
【0103】
ステップS609またはステップS610の後、制御部100は、冷却制御の終了条件を満たすか否かを判定する(S611)。ここで、冷却制御の終了条件は、図7の処理のうちステップS201~S203の処理である。つまり、制御部100は、ステップS611において、記憶部に記憶されている各カートリッジ50K,50Yに対応した各温度Tのうち高い方の温度Tが、第1閾値T1以下であるか否かを判定する。
【0104】
ステップS611において終了条件を満たすと判定した場合には(Yes)、制御部100は、冷却制御を停止する(S612)。なお、ステップS612よりも前の処理であるステップS604で既に冷却制御を停止している場合には、制御部100は、ステップS612において何もしない。
【0105】
つまり、制御部100は、経過時間TMが所定時間Tth以上になった後にドロワ60が画像形成用位置に移動された場合には(S605:Yes)、ステップS604で既に冷却制御を停止していることから、ステップS612において何もしない。これに対し、経過時間TMが所定時間Tth未満であるときにドロワ60が画像形成用位置に移動された場合には(S605:Yes)、ステップS604の処理を実行していないので、制御部100は、ステップS612において、制御用温度としての各カートリッジ50K,50Yに対応した各温度Tに基づいて冷却制御を停止する。
【0106】
ステップS612の後、または、ステップS611においてNoと判定した場合には、制御部100は、フロントカバー開閉センサ11Aからの信号に基づいてフロントカバー11が閉じられたか否かを判定する(S613)。ステップS613においてフロントカバー11が閉じられたと判定した場合には(Yes)、制御部100は、本処理を終了する。ステップS613においてフロントカバー11が閉じられていないと判定した場合には(No)、制御部100は、ステップS601の処理に戻る。
【0107】
ステップS601においてドロワ60が引き出されていないと判定した場合には(No)、制御部100は、図6に示す第1温度演算処理を実行する(S614)。ステップS614の後、制御部100は、ステップS611の処理に進む。
【0108】
以上のように構成されたカラープリンタ1の作用および効果について説明する。
印刷動作中や印刷動作前に行われるウォーミング動作により現像ローラ52が回転すると、摩擦などによって層厚規制ブレード53の温度が上昇する。また、定着装置80がON状態になっていると、定着装置80からの熱により、層厚規制ブレード53が温められる。
【0109】
カラープリンタ1では、制御部100により、第1温度センサSE1が検知した機内温度と、第2温度センサSE2が検知した外気温、および、現像ローラ52の駆動状態に基づいて層厚規制ブレード53の温度を演算し、層厚規制ブレード53の温度が第2閾値T2より高くなると、冷却制御を実行する。これにより、適切に冷却制御が実行されるので、トナーの劣化を抑制することができる。
【0110】
そして、制御部100は、層厚規制ブレード53の温度の演算で使用する定数を、現像ローラ52の駆動状態に応じて変えるので、現像ローラ52の駆動状態の違いによるカートリッジ50の温度変化の違いを考慮して演算することができる。これにより、適切に冷却制御を実行することができる。
【0111】
また、片面印字を実行する場合のように、冷えたシートPのみが画像形成部30に供給される場合と、両面印字を実行する場合のように、定着装置80を通って加熱されたシートPが画像形成部30に供給される場合とで、カートリッジ50の温度変化に違いがあるが、制御部100は、層厚規制ブレード53の温度の演算で使用する定数を、片面印字を実行する場合と両面印字を実行する場合とで変えるので、片面印字を実行する場合と両面印字をする場合とで、カートリッジ50の温度変化の違いを考慮して演算することができる。
【0112】
そして、小サイズ紙に印字をする場合は、シートPの熱容量が小さいので、小サイズ紙よりも大きいシートPに印字をする場合よりもカートリッジ50からシートPに伝わる熱量が小さく、カートリッジ50の温度が上昇しやすい。本実施形態では、制御部100は、層厚規制ブレード53の温度の演算で使用する定数を、小サイズ紙に印字する場合と、小サイズ紙よりも大きいシートPに印字をする場合とで変えるので、シートPのサイズの違いによるカートリッジ50の温度変化の違いを考慮して演算することができる。
【0113】
また、制御部100は、層厚規制ブレード53の温度の演算で使用する定数を、ファン14の稼働状態に応じて変えるので、ファン14による機内の冷却効果の違いによるカートリッジ50の温度変化の違いを考慮して演算することができる。
【0114】
そして、制御部100は、層厚規制ブレード53の温度の演算で使用する定数を、定着装置80の稼働状態に応じて変えるので、定着装置80の稼働状態によるカートリッジ50の温度変化の違いを考慮して演算することができる。
【0115】
本実施形態では、カートリッジ50に温度センサを設けていないので、カートリッジ50のコストを抑えることができる。
【0116】
また、第1温度センサSE1は、本体筐体10内の定着装置80とカートリッジ50の間の位置に配置されているので、第1温度センサSE1で、定着装置80からカートリッジ50に向けて移動する熱を測定することができる。
【0117】
そして、第2温度センサSE2は、吸気口15に対面して配置されているので、第2温度センサSE2で、本体筐体10内に取り込まれた外気温を適切に測定することができる。
【0118】
ドロワ60が再度画像形成用位置に配置されたときにおいてドロワ60が引き出されてからの経過時間TMが所定時間Tth未満の場合には、第1温度センサSE1での取得値がドロワ60を引き出す前とそれほど変わらない可能性が高い。そのため、この場合において、第1温度センサSE1の取得値と前回の制御用温度とに基づいて制御用温度を演算することで、適正な制御用温度を得ることができる。また、ドロワ60が再度画像形成用位置に配置されたときにおいて経過時間TMが所定時間Tth以上の場合には、第1温度センサSE1での取得値がドロワ60を引き出す前と大きく変わる可能性が高い。そのため、この場合において、前回の制御用温度を用いずに、第1温度センサSE1の取得値に基づいて制御用温度を設定することで、適正な制御用温度を得ることができる。
【0119】
ドロワ60が画像形成用位置から引き出された場合に、ドロワ60が画像形成用位置から引き出される直前に取得した第1温度センサSE1の取得値と前回の前記制御用温度とに基づいて、制御用温度を演算するので、ドロワ60を再度画像形成用位置に配置した後の第1温度演算処理における制御用温度の演算をより正確に行うことができる。
【0120】
ドロワ60が画像形成用位置に配置されたときに接続され、ドロワ60が画像形成用位置から外れたときに離間する第1接点CN1および第2接点CN2をドロワ60と本体筐体10のそれぞれに設けたので、制御部100が第1温度センサSE1から応答を得られない場合に、ドロワ60が画像形成用位置から外れていると判定することができる。
【0121】
冷却制御においてファン14の風量を増大させるので、ファン14による送風によって本体筐体10内を冷却することができる。
【0122】
冷却制御において単位時間当たりの印刷ページ数を減少させることで、例えばカートリッジ50の動作量が少なくなったり、定着装置80からの発熱量を抑えたりすることができるので、カートリッジ50を良好に冷却させることができる。
【0123】
新品のカートリッジ50の温度は、外気温に近いため、新品のカートリッジ50に交換された場合に、外気温である第2温度センサSE2の取得値に基づいて制御用温度を設定することで、制御用温度を適切に演算することができる。
【0124】
第1温度センサSE1をドロワ60の引き出し方向Dにおいてカートリッジ50よりも上流側に設けることで、ドロワ60を本体筐体10の画像形成用位置に配置した状態において、第1温度センサSE1が本体筐体10のうち温度が高くなりやすい中央付近に配置されるので、本体筐体10のうち温度が高くなりやすい部分の温度に基づいて制御用温度を適切に演算し、適切な冷却制御を行うことができる。
【0125】
ドロワ60が画像形成用位置から外されて第1温度センサSE1から取得値を取得できなくなった状況であっても、経過時間TMが所定時間Tth以上になると冷却制御を停止するので、冷却制御が無駄に継続されてしまうのを抑えることができる。なお、経過時間TMが所定時間Tth以上の場合には、カートリッジ50が外気に長い時間晒されて十分冷却されている可能性が高いので、冷却制御を停止しても支障はない。
【0126】
経過時間TMが所定時間Tth未満であるときにドロワ60が画像形成用位置に配置されると、制御用温度に基づいて冷却制御が停止されるので、適正な制御温度に基づいて冷却制御を停止させることができる。
【0127】
設置条件などが異なるカートリッジ50K,50Yのうち、温度が高い方のカートリッジ50に対応した制御用温度で冷却制御を実行するので、第1カートリッジ50Kおよび第2カートリッジ50Yを良好に冷却することができる。
【0128】
第1制御用温度を第1関数に基づいて演算するので、第1制御用温度の演算をより正確に行うことができる。第2制御用温度を第2関数に基づいて演算するので、第2制御用温度の演算をより正確に行うことができる。
【0129】
モノクロモードにおいて、動作させる第1カートリッジ50Kを第1制御用温度の演算対象とし、動作させない第2カートリッジ50Yを第2制御用温度の演算対象としたので、形成する画像の種類によってカートリッジ50の動作量が変わる場合であっても、第1制御用温度および第2制御用温度をより正確に演算することができる。
【0130】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0131】
前記実施形態では、ドロワ60を再度画像形成用位置に配置した際に経過時間TMが所定時間Tth以上である場合には、第1温度センサSE1の取得値を、制御用温度(T)として設定したが、本発明はこれに限定されず、第1温度センサの取得値に所定の係数をかけるなど、第1温度センサの取得値に基づいて制御用温度を設定してもよい。
【0132】
前記実施形態では、第1接点CN1および第2接点CN2の接続・離脱によりドロワ60が画像形成用位置に配置されているかを判定したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ドロワの位置を検知するセンサによってドロワが画像形成用位置に配置されているかを判定してもよい。
【0133】
前記実施形態では、カートリッジ50が交換されたと判定した場合に、第2温度センサSE2の取得値を、制御用温度(T)として設定したが、本発明はこれに限定されず、第2温度センサの取得値に所定の係数をかけるなど、第2温度センサの取得値に基づいて制御用温度を設定してもよい。
【0134】
前記実施形態では、感光ドラム61を備えないカートリッジ50を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、カートリッジは感光ドラムを備えていてもよい。
【0135】
前記実施形態では、感光体の一例として感光ドラム61を例示したが、本発明はこれに限定されず、感光体は、例えば、ベルト状の感光体であってもよい。
【0136】
前記実施形態では、冷却制御として、ファン14の制御、印刷ページ数の減少および印刷停止を温度Tに応じて段階的に行うこととしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、冷却制御は、ファン14のみを制御するものであってもよいし、印刷ページ数の減少のみを行うものであってもよい。
【0137】
前記実施形態では、有彩色の現像剤の一例としてイエローのトナーを例示したが、本発明はこれに限定されず、有彩色の現像剤は、例えば、マゼンタなどのイエロー以外の有彩色のトナーであってもよい。
【0138】
前記実施形態では、4つのうち2つのカートリッジ50K,50Yを温度演算の対象としたが、本発明はこれに限定されず、3つ以上のカートリッジを温度演算の対象としてもよい。
【0139】
前記実施形態では、ドロワ60が第1温度センサSE1を備える構成としたが、本体筐体10が第1温度センサSE1を備える構成としても良い。図10に示すように、第1温度センサSE1は、ドロワ60と定着装置80との間の位置に設けられている。言い換えると、第1温度センサSE1は、定着装置80に最も近いカートリッジ50Kと、定着装置80との間の位置に設けられている。本体筐体10が第1温度センサSE1を備える構成では、ドロワ60が引き出された場合であっても、制御部100は第1温度センサSE1によって機内温度を取得可能である。
【0140】
前記実施形態では、カラープリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えば複写機や複合機などに本発明を適用してもよい。
【0141】
前記実施形態では、制御部100が、片面印字と両面印字とで、制御用温度を演算するための定数を切り替えていたが、制御部の構成はこれに限定されるものではない。例えば、制御部は、シートPの第1面に印字をするときと、シートPの第2面に印字をするときとで、制御用温度を演算するための定数を切り替えるようになっていてもよい。
【0142】
定着装置は、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、定着装置は、定着ベルトと、ニップ板と、ニップ板との間でシートを挟む加圧部材とを備える構成であってもよい。
【0143】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0144】
1 カラープリンタ
10 本体筐体
50K 第1カートリッジ
50Y 第2カートリッジ
100 制御部
SE1 第1温度センサ
温度
in(n) 機内温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10