(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】振動アクチュエーター及び電子機器
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B06B1/04 S
(21)【出願番号】P 2020164639
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五味 喜広
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇徳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇樹
【審査官】北川 大地
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-226500(JP,A)
【文献】特開2020-006344(JP,A)
【文献】特開2004-282230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
H02K 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル、及び、前記コイルが巻回され、前記コイルの巻回軸方向に延在して一端部及び他端部が突出するコアを有する可動体と、
マグネットを有する固定体と、
前記コアの一端部側で、前記固定体に対して前記可動体を回動自在に支持する軸部と、
を有し、通電される前記コイルと前記マグネットの協働により、前記可動体が前記固定体に対して前記軸部を中心に往復回転振動する振動アクチュエーターであって、
前記マグネットは、非通電時において、前記コアの前記一端部及び他端部の少なくとも前記他端部に対して、前記コアの延在方向で対向して配置され、且つ、往復回転振動方向で並ぶ極性の異なる2極の磁極を有し、
前記コアは、前記他端部側に切り欠き部を有し、
前記切り欠き部には、ウェイト部が固定され
、
前記切り欠き部は、前記コアの前記他端部において、前記コアの延在方向に延在する芯部を囲むように形成され、
前記ウェイト部は、前記切り欠き部に、前記芯部の周囲を囲むように配置される複数の分割体により構成されている、
振動アクチュエーター。
【請求項2】
前記切り欠き部は、前記コアの前記他端部において、前記コアの延在方向に
対して、芯部の断面が
前記他端部の延在方向に全体の断面に対して一定比率の面積を有するように設けられている、
請求項1記載の振動アクチュエーター。
【請求項3】
前記切り欠き部は、前記他端部が前記他端部の自由端側に前記コアの延在方向の厚みを有するように前記他端部に設けられている、
請求項1
または2に記載の振動アクチュエーター。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載の振動アクチュエーターを実装する、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエーター及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器には、振動を指や手足等に伝達することによって、着信を通知したり、タッチパネルの操作感触やゲーム機のコントローラー等の遊戯装置の臨場感を向上させたりする振動発生源として振動アクチュエーターが実装されている。なお、電子機器は、携帯電話やスマートフォンなどの携帯通信端末、タブレットPCなどの携帯情報端末、携帯型ゲーム端末、据置型ゲーム機のコントローラー(ゲームパッド)の他、服や腕などに装着されるウェアラブル端末を含む。
【0003】
特許文献1~3に開示の振動アクチュエーターは、コイルを有する固定体と、マグネットを有する可動体と、を備え、コイルとマグネットで構成されるボイスコイルモーターの駆動力を利用して、可動体を往復動させることにより、振動を生じさせる。特許文献1~3に示す振動アクチュエーターは、可動体がシャフトに沿って直線移動するリニアアクチュエーターであり、振動方向が電子機器の主面と平行になるように実装される。電子機器と接触するユーザーの体表面には、体表面に沿う方向の振動が伝達される。
【0004】
また、振動アクチュエーターとしては、特許文献4に開示のように、振動させる可動体を、片持ちで支持する振動アクチュエーターが知られている。
この振動アクチュエーターでは、板バネの基端側を固定体に固定し、可動端となる板バネの先端側に、カップ状のヨーク内に円柱状のマグネットを配置することにより可動体が構成されている。また、固定体側には、マグネットとヨークの縁とマグネットの間に、上端が位置するようにコイルが配設されている。コイルへの通電により可動体は振動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-095943号公報
【文献】特開2015-112013号公報
【文献】特許第4875133号公報
【文献】特開2002-177882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、可動体を片持ちで揺動自在に支持する片持ち式の振動アクチュエーターでは、軸や複数個所で可動体を支持する構成と比較して、簡易な構成とすることができる。
この構成において、振動感を高めるためには推力を大きく、つまり振動を示すG値を強くする必要があり、そのためには、マグネットの厚さ寸法を厚く、つまりサイズを大きくして磁気回路における磁束を増加することが考えられる。
しかしながら、単純に厚いマグネットを用いるのみでは、ヨークが飽和しやすくなるため、ヨークの厚さも厚くすることが必要となり、マグネットのサイズが設定されている場合では、可動体側の寸法にも大きく影響することになり、イナーシャが低下し、共振点が高くなるという問題がある。
よって磁気特性を維持した状態でイナーシャを増加させて共振点を維持して駆動させたいという要望があった。
【0007】
本発明の目的は、サイズを大きくすることなくイナーシャを増加でき、好適な振動を発生する振動アクチュエーター及び電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る振動アクチュエーターは、
コイル、及び、前記コイルが巻回され、前記コイルの巻回軸方向に延在して一端部及び他端部が突出するコアを有する可動体と、
マグネットを有する固定体と、
前記コアの一端部側で、前記固定体に対して前記可動体を回動自在に支持する軸部と、
を有し、通電される前記コイルと前記マグネットの協働により、前記可動体が前記固定体に対して前記軸部を中心に往復回転振動する振動アクチュエーターであって、
前記マグネットは、非通電時において、前記コアの前記一端部及び他端部の少なくとも前記他端部に対して、前記コアの延在方向で対向して配置され、且つ、往復回転振動方向で並ぶ極性の異なる2極の磁極を有し、
前記コアは、前記他端部側に切り欠き部を有し、
前記切り欠き部には、ウェイト部が固定され、
前記切り欠き部は、前記コアの前記他端部において、前記コアの延在方向に延在する芯部を囲むように形成され、
前記ウェイト部は、前記切り欠き部に、前記芯部の周囲を囲むように配置される複数の分割体により構成されている構成を採る。
【0009】
本発明の一態様に係る電子機器は、上記の振動アクチュエーターを実装している構成を採る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サイズを大きくすることなくイナーシャを増加でき、好適な振動を発生する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る振動アクチュエーターを示す外観斜視図である。
【
図2】振動アクチュエーターのカバーを外した状態を示す斜視図である。
【
図3】振動アクチュエーターにおいて固定体と可動体とを示す分解図である。
【
図4】振動アクチュエーターの全体分解斜視図である。
【
図7】振動アクチュエーターの磁気回路を示す平断面図である。
【
図9】振動アクチュエーターの変形例1の要部構成を示す断面図である。
【
図10】振動アクチュエーターの変形例2の要部構成を示す一部分解斜視図である。
【
図12】振動アクチュエーターを実装する電子機器の一例であるゲーム機器を示す図である。
【
図13】振動アクチュエーターを実装する電子機器の一例である携帯情報端末を示す図である。
【
図14】振動アクチュエーターを実装する電子機器の一例であるウェアラブル端末を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
[振動アクチュエーター1の全体構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る振動アクチュエーターを示す外観斜視図である。
図2は、振動アクチュエーターのカバーを外した状態を示す斜視図である。また、
図3は、振動アクチュエーターにおいて固定体と可動体とを示す分解図であり、
図4は、振動アクチュエーターの全体分解斜視図である。
【0014】
本実施の形態では、直交座標系(X,Y,Z)を使用して説明する。後述する図(変形例1、2の説明に供する図も含む)においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。以下において、振動アクチュエーター1の幅、奥行き、高さは、それぞれ、X方向、Y方向、Z方向の長さである。本実施の形態の振動アクチュエーターは、便宜上、便宜上、
図1~
図4では、X方向を横方向に向けて配置し、振動方向として説明する。また、本実施の形態における「可動体の軸」は、可動体を中心としたY方向を意味し、本実施の形態では、コイル中心軸と同様の軸である。なお、X方向及びマイナスX方向を両側方と、Z方向プラス側を上側、Z方向マイナス側を下側としてもよい。
【0015】
図1~
図4に示すように、振動アクチュエーター1は、可動体10、軸部50及び固定体20を備える。可動体10は、軸部50を介して固定体20に支持される。
【0016】
可動体10は、一端側で挿通する軸部50を支点として他端側が往復移動するように、固定体20に回動自在に支持されている。振動アクチュエーター1では、可動体10の本体を構成する部位の一部として、ウェイト部80を有する。ウェイト部80は、コア14の本体を構成する部位の一部を切り欠いた部位に抜けないように設けられている。
【0017】
振動アクチュエーター1は、例えば、ゲーム機器GC、スマートフォンSP及びウェアラブル端末W等の電子機器(
図12~
図14参照)に振動発生源として実装され、可動体10の往復回転移動することにより、電子機器の振動機能を実現する。振動アクチュエーター1は、例えば、振動することで、ユーザーに対して操作感や臨場感を与えたり、着信を通知したりする場合に駆動する。
【0018】
振動アクチュエーター1は、例えば、電子機器において、ユーザーに接触する振動伝達面とXY面が平行となるように実装される。振動伝達面は、例えば、電子機器では、ゲームコントローラーの場合では、ユーザーの指等の体表面が接触する面(操作ボタン等が配置される表面或いは、他の指等が当接する裏面)スマートフォンやタブレット端末の場合はタッチパネル面である。また、摺動伝達面は、ユーザーの服や腕などに装着されるウェアラブル端末では、服や腕に接触する外面(
図14に示す内周面208)である。
【0019】
振動アクチュエーター1では、可動体10は、コイル12と、コイル12が巻回されるコア14とを有し、固定体20はマグネット(第1マグネット30及び第2マグネット40)を有する。
【0020】
可動体10は、固定体20に対して、マグネット(第1マグネット30及び第2マグネット40)の吸引力による磁気バネにより、可動自在に支持される。本実施の形態では、可動体10は、マグネット(第1マグネット30及び第2マグネット40)と、コイル12及びコア14とにより構成される磁気バネにより固定体20に対して軸部50周りに可動自在に支持されている。
【0021】
[軸部50]
図5は、
図1のA―A線断面図である。
図2~
図5に示す軸部50は、可動体10を固定体20に対して、軸回りに往復回転移動、つまり、振動自在に支持する。
【0022】
軸部50は、非磁性体および磁性体のどちらで構成されてもよい。本実施の形態では、軸部50は、例えば、SUS420J2等の磁性体により構成されている。
【0023】
軸部50は、可動体10を挟むように対向して配置されるベースプレート22と、ケース24の上面部241との間に架設されている。ケース24の上面部241と可動体10との間には軸部50に外装されるワッシャ282が介在し、ベースプレート22と可動体10の間には、軸部50に外装されるワッシャ284が介在する。これらワッシャ282、284により、軸部50は、可動体10を固定体20に対して円滑に往復回転するように支持している。
【0024】
[可動体10]
可動体10は、先端側にウェイト部80を有するものであり、例えば、ウェイト部80を可動体本体の一部に固定し、磁束飽和せずに磁気バネ定数やトルクに影響を与えることなく、イナーシャを増加する。以下、可動体10について具体的に説明する。
【0025】
可動体10では、一端側から他端側に延在し、可動体本体を構成するコア14に、コイルボビン18を介してコイル12が巻回されている。
【0026】
可動体10は、コア14の一端側に設けられた軸受けであるブッシュ(軸受け)16と、他端側(先端側)に設けられたウェイト部80と、を有する。
【0027】
コア14は、コイル12のコイル軸方向に延在して形成され、コイル12の通電により磁化される磁性体である。コア14は、ベースプレート22およびケース24の上面部241との間に、それぞれから所定間隔を空けて配置されている。ここで所定間隔とは、可動体10の可動範囲を構成する空間である。コア14は、巻回されたコイル12の巻回軸方向に延在して設けられている。コア14では、一端部142及び他端部144がコイル12の両側から突出している。
【0028】
コア14は、フェライトコアであってもよい。また、コア14は、電磁ステンレス、焼結材、MIM(メタルインジェクションモールド)材、積層鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板(SECC、比重は7.85)等により構成されてもよい。
【0029】
コア14は、軸部50の軸方向と直交する方向に延在して設けられている。コア14は、一端側に形成された貫通孔にブッシュ16が嵌め込まれ、このブッシュ16に挿通された軸部50を介して、コア14は、回動する。コア14は、他端部を自由端部として固定体20であるベースプレート22およびケース24の上面部241の延在する方向に対して直交する方向、ここではX方向に振動する。
【0030】
コア14は、一端部142から他端側(先端側)に向かって、軸部50、コイル12、自由端部を構成する他端部144の順に配置されている。
【0031】
コア14の一端部142側に設けられるブッシュ16は、筒状であり、挿通される軸部50を中心に可動体10を回動可能としており、焼結金属等の金属、樹脂等どのような材料により形成されてもよい。軸部50が磁性体である場合は、ブッシュ16は、非磁性材料で形成されることが好ましい。また、軸部50が非磁性体であれば、ブッシュ16は磁性体により形成されてもよい。このように、軸部50或いはブッシュ16の一方が非磁性体であれば、コア14を通る磁束が、軸部50とブッシュ16との間を通ることがなく、双方の間で、磁気吸引力の発生に起因する摩擦の増加が発生することがない。
【0032】
すなわち、ブッシュ16とブッシュ16を挿通する軸部50との間に磁気吸引力による摩擦が発生することがなく、可動体10の回動を円滑に行うことができる。例えば、軸部50に耐久性を有する磁性シャフト(例えば、SUS420J2)を用いるとともに、ブッシュ16として銅系の焼結軸受を用いて振動アクチュエーター1を形成してもよい。これにより、可動体10の駆動において不要な磁気吸引力を抑制し、かつ、低摩擦にて可動体10を保持することができる。すなわち、可動体10の駆動による摩耗を抑制し、信頼性の高い振動アクチュエーター1を実現できる。
【0033】
また、コア14の一端部142には、フレキシブル基板15の一端部152が固定され、コイル12の両端部はフレキシブル基板15の回路に接続されている。
【0034】
フレキシブル基板15は、コイル12に電力を供給するものあり、本実施の形態では可動体10と固定体20とを接続するように配設されている。
【0035】
フレキシブル基板15は、可動体10のコイル12に接続される一端部152と、固定体20側に固定される他端部154と、一端部152と他端部154との間に、一端側からコイル12に導通する少なくとも1つ以上の可撓性を有する湾曲部156とを有する。湾曲部156は、一端部152と他端部154との間に介設され可動体10の振動に追従して変形する可撓性を有する。湾曲部156は、軸部50の軸方向と直交する方向に可撓する。
【0036】
コイル12は、通電されて可動体10を可動するコイルであり、通電されてコア14を磁化し、特に、一端部142及び他端部144は磁化して磁極となる。コイル12は、通電方向が切り替えられることにより、コア14の両端部(一端部142及び他端部144)の極性を変更する。
【0037】
コア14の一端部142と他端部144との間には、コア14の一端部142と他端部144とを連絡するコア芯部146を有する。このコア芯部146は、一端部142と他端部144の外形よりも小さい外形の部位であって、このコア芯部146にコイル12が巻かれたコイルボビン18(ボビン分割体181、182)が外装されている。
【0038】
コイルボビン18は、ボビン分割体181、182により構成される。ボビン分割体181、182のそれぞれは、コア芯部146を周方向で囲むように外装して固定される。ボビン分割体181、182は、例えば、ポリアミド樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)等の樹脂材料により構成されてもよい。
【0039】
コア14に、コイルボビン18を介してコイル12が巻回されることにより、可動体10は、一端部142側から他端部144側に向かって対向幅が小さくなる直方体形状を有する。コイル12の巻回軸はコイル軸であり、コア芯部146の中心軸でもある。コイル12の巻回軸方向は、コイル軸方向であり、コア14の延在方向である。
【0040】
コア14は、コイル12が通電されて励磁されることにより、基端部と先端部、つまり、一端部142と他端部144とにおいてコイル12の軸方向に位置する端面142a、144a(
図5参照)の振動方向(X方向)の長さの中心が、磁極の中心となる。
【0041】
可動体10では、可動体10の磁極の中心がコイル12のコイル軸上、コア芯部146の中心に位置している。
【0042】
他端部144は、コア14においてコア芯部146の先端側がコア芯部146の軸を中心に放射方向に向かって張り出すような形状を有する。他端部144には、ウェイト部80が設けられている。
【0043】
図6は、可動体の説明に供する図であり、
図6Aは、可動体の説明に供する可動体の縦断面図であり、
図6Bは、
図3のB-B線断面図である。
【0044】
図4~
図6に示すように、他端部144は、コア14の一部を切り欠いた形状の切り欠き部148を有する。切り欠き部148には、ウェイト部80が取り付けられ、切り欠き部148は、溝部或いは穴であってもよい。
【0045】
切り欠き部148は、軸部50の延在方向と平行な方向で2箇所にそれぞれ開口するように凹状に形成されており、凹状内にウェイト部80が、凹状内を埋めるように取り付けられている。切り欠き部148によりコア14、ここでは、他端部144は、他端部144の中心部でありコア14の軸を含み、且つ、コア芯部146に連続する延長芯部147を有する。
【0046】
切り欠き部148は、他端部144において、自由端を構成する頭部149が、磁気飽和しないようなコア14の延在方向の厚みL2を有するように設けられる。また、他端部144において、ウェイト部80で挟まれる部位であり、コア芯部146の延長上にある延長芯部147の厚みL1は、他端部144の全体の厚みに対して、一定比率の厚みを有する。切り欠き部148は、コア14の他端部144において、コア14の延在方向に延在する延長芯部147の断面が一定比率の面積を有するように設けられている。この構成により、磁気特性の低下、磁束の減少化が防止される。
【0047】
コア14では、ウェイト部80を、可動体10、つまり、コア14の回動により遠心力が発生しても、コア14から外れないように凹状の切り欠き部148内に固定している。例えば、コア14の他端部144が、切り欠き部148内で、ウェイト部80を挟持してもよいし、切り欠き部148に対するウェイト部80の圧入により固定されてもよいし、接着や溶接等により固定されてもよい。
【0048】
切り欠き部148は、ウェイト部80の形状に対応して形成されており、一層ウェイト部80を他端部144から外れにくくしている。本実施の形態では箱状に形成されており、これに対応してウェイト部80は直方体状に形成されている。
【0049】
ウェイト部80は、可動体10の重さを調整するものであり、高比重材料からなる。ウェイト部80は、例えば、コア14に使用される電気亜鉛めっき鋼板(SECC、比重は7.85)等の材料よりも比重が2倍以上高い材料(例えば、比重が16~19程度)により形成されるのが好ましく、例えば、タングステンを適用できる。これにより、設計等において可動体10の外形寸法が設定された場合でも、可動体10の質量を比較的容易に増加させることができ、磁束飽和することなく磁気バネ定数及びトルクに影響を与えることなく、所望の振動出力を実現することができる。
【0050】
[固定体20]
固定体20は、軸部50を介して可動体10を回動自在に支持する。
固定体20は、マグネット(第1マグネット30及び第2マグネット40)の他、ベースプレート22及びケース24を有する。固定体20は、更に、緩衝部(クッション材)60を有する。
【0051】
ベースプレート22は、鋼板等の板状材(本実施の形態では矩形板)により形成される。ベースプレート22は、本実施の形態では、振動アクチュエーター1の一側面(ここでは底面)を構成する。
【0052】
ベースプレート22には、ケース24が被さるように取り付けられ、ベースプレート22は、ケース24とともに、可動体10を可動可能に収容する筐体を構成する。筐体は、本実施の形態では、中空の直方体状に形成される。筐体において長手方向で一端部側には、可動体10の振動方向と直交する方向に沿って軸部50が固定されている。ケース24の上面部241は、振動アクチュエーター1の一側面に対向する他側面を構成する。
【0053】
ベースプレート22には、一端側に、軸固定部23を介して軸部50が立設されている。ベースプレート22上に、可動体10が離間して対向配置されている。また、ベースプレート22の一端部には、可動体10の一端部142の一端面に対向して、第1マグネット30が配置され、ベースプレート22の他端部には、可動体10の他端部144の端面(先端面)に対向して第2マグネット40が配置されている。なお、本実施の形態では、第1マグネット30を有する構成としたが、第1マグネット30を省略し、第2マグネット40のみを有する構成としてもよい。
【0054】
ケース24は、ベースプレート22に対向する可動体10を覆うようにベースプレート22に固定される。
ケース24において、ベースプレート22と高さ(Z方向)で対向する上面部241には、図示しない軸固定部を介して、軸部50の他端が固定されている。
【0055】
ケース24は、ベースプレート22側で開口する箱形状(本実施の形態では角箱状)に形成されている。ケース24では、上面部241に、ベースプレート22との間で軸部50が架設されている。ケース24は、可動体10の振動方向、例えば、幅方向(X方向)で、離間して対向配置される両側面部242、243と、可動体10の延在方向(ここでは奥行き方向(Y方向))で離間する一端面部244及び他端面部245を有する。
【0056】
ベースプレート22にケース24が取り付けられることにより形成される筐体の寸法は特に制限されないが、本実施の形態では、幅(X方向)、奥行き(Y方向)、高さ(Z方向)のうち、奥行きが最も長い直方体形状となるように構成されている。
【0057】
ケース24は、ベースプレート22とともに、導電性を有する材料、例えば、鋼板等の板状材(本実施の形態では矩形板)により形成されてもよい。これにより、ベースプレート22及びケース24は、電磁シールドとして機能できる。
【0058】
また、ケース24の両側面部242、243には、他端部側のそれぞれに、振動する可動体10の自由端側が接触する緩衝部60(クッション材61、62)が設けられている。
【0059】
緩衝部60は、可動体10が振動した際に、可動体10の他端部144が接触することにより、可動体10の振動を振動アクチュエーター1の筐体に伝達する(
図8参照)。これにより、緩衝部60は、大きな振動を筐体に発生させることができる。
【0060】
緩衝部60は、例えば、エラストマー、シリコーンゴム等のゴム、樹脂、又は多孔質弾性体(例えば、スポンジ)などの軟質材料により形成される。本実施の形態では緩衝部60は、筐体側である両側面部242、243に設けたクッション材61、62としている。緩衝部60は、可動体10側、例えば、可動体10の自由端部である他端部144に設けて、可動体10の振動時に、可動体10が緩衝部60で両側面部242、243に接触するようにしてもよい。緩衝部60が、エラストマーである場合、可動体10の駆動時において、可動体10のコア14の他端部144と、側面部242、243とが接触する際の音、或いは振動ノイズの発生を低減できる。
【0061】
また、緩衝部60が、シリコーンゴムである場合、可動体10のコア14の他端部144と、側面部242、243とが接触する際の音、或いは振動ノイズの発生を低減できる。これに加えて、緩衝部60がシリコーンゴムである場合、内部に気泡を含むスポンジ状の材料により形成された場合のエラストマーと比較して、その厚みに個体差が発生することがない。よって、緩衝部60の厚みが所望の厚みとなるように、緩衝部60の厚さの管理を容易に行うことができ、緩衝部60としての特性の安定を確保できる。
【0062】
マグネット(第1マグネット30及び第2マグネット40)は、コイル12との協働により、可動体10を可動する。マグネットは、可動体10に対する磁気吸引力により磁気バネとして機能する。本実施の形態では、コイル12が巻回されたコア14と磁気バネを構成し、可動体10を可動自在に支持している。
【0063】
マグネットは、コイル12に対してコイル12の軸方向で対向するように配置される。
マグネットは、本実施の形態では、コア14の一端部に対してコイル12の軸方向で離間して対向する第1マグネット30と、コア14の他端部に対してコイル12の軸方向で離間して対向する第2マグネット40とを有する。
【0064】
第1マグネット30及び第2マグネット40は、それぞれコア14(可動体10)に向けて着磁されている。本実施の形態では、第1マグネット30及び第2マグネット40の着磁方向は、コイル12の軸方向と平行である。第1マグネット30及び第2マグネット40は、それぞれコア14に対向する側の面として、軸部50の延在方向と直交する方向(可動体10の振動方向に相当)で並ぶ異なる2極の磁極を有する。
【0065】
この磁極の境界、つまり、磁極の切り替わり位置に対向して、可動体10のコア14の中心(ここでは、コイル12の軸であり、コイル12が励磁された際の磁極の中心に相当)が位置するように配置される。
【0066】
第1マグネット30及び第2マグネット40の双方の磁極の極性は、可動体10のコイル12が励磁されることにより発生するトルクが可動体10の同一回転方向に発生するように着磁されている。
【0067】
例えば、
図5及び
図6に示すように、第1マグネット30及び第2マグネット40において、側面部242側に配置され、且つ、可動体10に対向するそれぞれの磁極301、401は、同極(
図5では、S極)となるように形成されている。また、第1マグネット30及び第2マグネット40において、側面部243側に配置され、且つ、可動体10に対向するそれぞれの磁極302、402は、同極(
図5では、N極)となるように形成されている。
【0068】
第1マグネット30の裏面には、バックヨーク32が貼設され、第2マグネット40の裏面には、バックヨーク42が貼設されており、それぞれのマグネット30、40の磁気吸引力の向上が図られている。
【0069】
例えば、第1マグネット30及び第2マグネット40において、側面部242側にS極、側面部243側にN極となるように着磁されているとする。この場合、コイル12の非通電時においては、
図5に示すように第1及び第2マグネット30、40では、それぞれN極から出射し、S極に入射する磁束が形成される。非通電時では、コイル12が巻回されるコア14の一端部142は、第1マグネット30のS極とN極の双方に吸引され、異なる磁極301,302(S極とN極)の切替位置で保持される。また、コア14の他端部144は、第2マグネット40のS極とN極の双方に吸引され、異なる磁極401,402(S極とN極)の切替位置で保持される。第1マグネット30及び第2マグネット40は、可動体10の磁性体であるコア14とともに、コア14との間に発生する磁気吸引力により磁気バネとして機能し、可動体10を可動自在に支持している。
【0070】
側面部243には、一端部152でコイル12に接続されるフレキシブル基板15の他端部154が固定されている。
【0071】
フレキシブル基板15は、コイル12に接続される一端部152が可動体10の一端部に固定され、他端部154が固定体20、ここでは、側面部243に固定されている。他端部154は、一部を筐体の外面に露出させて側面部243に固定されている。可動体10の可動時において、軸部50の近傍は、可動体10の他端側の部位よりも可動範囲が小さい。これにより、軸部50の近傍に配置されるフレキシブル基板15では、湾曲部156に掛かる荷重が小さくなる。このように、フレキシブル基板15は、軸部50近傍で固定されているので、フレキシブル基板15の変位を最小限にすることができ、可動時に発生する応力による断線を防止できる。
【0072】
なお、フレキシブル基板15において、一端部152と可動体10との間に、例えば、弾性接着剤又は弾性接着テープ等の弾性部材を介在させて、振動時の衝撃を弾性部材が吸収するようにしてもよい。
【0073】
[振動アクチュエーター1の磁気回路]
図7は、振動アクチュエーターの磁気回路を示す図であり、振動アクチュエーター1をZ方向プラス側(上側)からZ方向マイナス側(下側)に見た状態を示す。
図8A~
図8Cは、可動体の動作を示す縦断面図であり、振動アクチュエーター1をZ方向プラス側(上側)からZ方向マイナス側(下側)に見た状態を示す。
図8Aは、非通電時における可動体10の状態(基準状態)を示す。
図8Bは、可動体10の先端部側、つまり、コア14の他端部144側から振動アクチュエーター1を見て時計回りにコイル12に通電したときの可動体10の状態を示す。
図8Cは、可動体10の先端部側、つまり、コア14の他端部144側から振動アクチュエーター1を見て反時計回りにコイル12に通電したときの可動体10の状態を示す。
【0074】
振動アクチュエーター1において、可動体10は、固定体20のベースプレート22とケース24との間に、軸部50を介して一端側を支持された状態で配置されている。加えて、マグネット(第1マグネット30及び第2マグネット40)は、可動体10のコイル12の軸方向で、異なる2極の磁極をコイル12側に向けて、コイル12が巻回されるコア14の両端部(一端部142、他端部144)に対向して配置されている。第1マグネット30の磁極301と、第2マグネット40の磁極401とは同極であり、第1マグネット30の磁極302と、第2マグネット40の磁極402とは同極である。
【0075】
第1マグネット30及び第2マグネット40の各マグネットでは、異なる2極の磁極301、302、401、402は、それぞれ軸部50の軸方向と直交する振動方向(X方向)に並べて配置されている。
【0076】
可動体10は、フレキシブル基板15を介して電源供給部(例えば、
図12~
図14に示す駆動制御部203)からコイル12が通電されることにより、X方向、つまり、ケース24の側面部242、243に対して接離する方向に往復動する。
【0077】
具体的には、可動体10の他端部が揺動する。これにより、振動アクチュエーター1の振動出力が、振動アクチュエーター1を有する電子機器のユーザーに伝達される。
【0078】
振動アクチュエーター1では、
図7に示す磁気回路が形成される。
【0079】
振動アクチュエーター1では、コイル12への非通電時において、つまり、基準状態では、コイル12が巻回されるコア14の両端部(一端部142、他端部144)は、それぞれ、第1マグネット30及び第2マグネット40にそれぞれ吸引される。
【0080】
コア14は、両端部(一端部142、他端部144)のぞれぞれの軸方向と直交する長さ(振動方向の長さ)の中心が、マグネットの磁極の切替位置に対向する位置に位置している。なお、両端部(一端部142、他端部144)のぞれぞれの軸方向と直交する長さ(振動方向の長さ)の中心は、コイル12の軸と同一軸上に位置している。
【0081】
具体的には、コア14の一端部142は、第1マグネット30の異なる磁極301、302の双方の磁気吸引力により吸引され、磁極301、302の切替位置で保持される。
【0082】
また、コア14の他端部(自由端部)144は、第2マグネット40の異なる磁極401、402の双方の磁気吸引力により吸引され、磁極401、402の切替位置で保持される。
【0083】
このように可動体10は、固定体20の第1マグネット30及び第2マグネット40とで構成する磁気バネのみで、基準状態で保持される。
【0084】
振動アクチュエーター1において、コイル12は、第1マグネット30及び第2マグネット40からの磁束に沿うように、且つ、離間して配置されている。
【0085】
この構成により、
図7及び
図8Bに示すように通電が行われると、コイル12に流れる電流により、コア14の両端部(一端部142、他端部144)はそれぞれ異なる磁極となるように磁化される。具体的には、一端部142はN極、他端部144はS極に磁化される。
【0086】
これにより、一端部142は、第1マグネット30の磁極301に吸引され、第1マグネット30の磁極302とは反発して推力fが発生し、推力f方向に移動する。一方、他端部144は、第2マグネット40の磁極401とは反発し、第2マグネット40の磁極402に吸引され、推力-F方向に移動する。
【0087】
図8Bに示すように、コイル12への通電により、振動アクチュエーター1では、軸部50を挟んで位置する両端部(一端部142、他端部144)が、推力f、-F方向にそれぞれ移動することにより、同一回転方向である推力-Mが発生する。これにより、可動体10は、軸部50を中心に、推力-M方向に回転して、可動体10の他端部144が側面部243側に移動し、クッション材62を介して側面部243、つまり筐体に接触(具体的には衝突)し、筐体に振動を付与する。
【0088】
また、コイル12の通電方向が逆方向に切り替わり、
図8Cに示すように通電が行われると、それぞれ逆向きの推力-f、Fが発生する。具体的には、一端部142はS極、他端部144はN極に磁化される。これにより、一端部142は、第1マグネット30の磁極301とは反発し、第1マグネット30の磁極302に吸引され、推力-fが発生し、推力-f方向に移動する。一方、他端部144は、第2マグネット40の磁極401に吸引され、第2マグネット40の磁極402とは反発し、F方向に移動する。
【0089】
図8C示すように、コイル12への通電により、振動アクチュエーター1では、軸部50を挟んで位置する両端部(一端部142、他端部144)が、推力-f、F方向にそれぞれ移動することにより、同一回転方向である推力Mが発生する。これにより、可動体10は、軸部50を中心に、推力M方向に回転して、可動体10の他端部144が側面部243とは反対側の側面部242側に移動し、クッション材61を介して側面部242、つまり筐体に接触(具体的には衝突)し、筐体に振動を付与する。
【0090】
振動アクチュエーター1では、可動体10は、板ばね等の弾性部材を用いることなく、マグネット(少なくとも第2マグネット40)及びコア14を用いた磁気ばねのみを用いて、固定体20に対して、軸部50を中心に往復回転振動自在に支持されている。
【0091】
したがって、従来のように金属ばねにより可動体を振動自在に支持する振動アクチュエーターと異なり、金属ばね特有の不具合となる金属疲労や衝撃による破損を防ぐことができる。
【0092】
また、軸部50は、可動体10のコア14の一端部142側で、可動体10を揺動自在に支持しており、コア14の他端部144側の一部を切り欠いた切り欠き部148に高比重材料からなるウェイト部80が取り付けられている。ウェイト部80は切り欠き部148において切り欠き部148内での振動方向での移動が規制されるように設けられている。これにより、ウェイト部80は、可動体10の往復回転移動時における移動方向である四方を囲まれた状態で、揺動する可動体10の全長となり可動体本体を構成するコア14の一部として可動体10に設けられている。
【0093】
すなわち、可動体10のサイズを変更することなく、可動体10から外れないように、可動体10の先端部(他端部)の質量を大きくできる。これにより、振動アクチュエーター1では、磁気特性を維持した状態で、共振点を下げること無く、イナーシャを増加させることができる。
【0094】
また、本実施の形態では、マグネットは、第1マグネット30及び第2マグネット40として、コア14の両側に配置されている。各々2極の磁極301、302、401、402は、可動体10のそれぞれの端部142、144で発生するトルクが、同一回転方向に発生するように、配置されている。コア14の両端部(一端部142、他端部144)の双方で、第1マグネット30及び第2マグネット40との間に磁気吸引力が発生し、互いに引き合う。
【0095】
これにより、第1マグネット30及び第2マグネット40とコイル12との協働により可動体10を可動させる際に、軸部50に加わる磁気吸引力による荷重が相殺されて、軸部50及びブッシュ16に掛かる負荷を低減できる。
【0096】
また、可動体10は、筐体内で、筐体の側面部242,243に接触する(接触する状態に相当する状態)ので、振動アクチュエーター筐体に直接的に振動を伝達し、振動アクチュエーター1自体から大きな振動を発生させることができる。また、可動体10が振動する際に、固定体20(筐体)に接触するため、振動量も一定となり、振動アクチュエーター1として安定した振動出力を実現できる。
【0097】
なお、可動体10の自由端部であるコア14の他端部144が、自由端側に向かってX方向の厚みが薄くなるように形成されている。これにより、他端部144が揺動してクッション材61、62に接触する際の可動体10の可動域が、可動体10の自由端部であるコア14の他端部144が自由端側に向かってX方向の厚みが同じ厚みである場合と比較して、広くなっている。よって、振動アクチュエーター1は、より大きな振動出力を確保できる。
【0098】
また、振動アクチュエーター1によれば、ケース24の内壁面(側面部242、243)に緩衝部60が設けられ、可動体10とは、緩衝部60(クッション材61、62)を介して接触する。緩衝部60は、可動体10が振動してベースプレート22又はケース24に接触する際の衝撃を緩和し、接触音や振動ノイズの発生を低減しつつ、ユーザーに振動を伝達することができる。また、振動する度に、可動体10は、緩衝部60を介してベースプレート22及びケース24に交互に接触(具体的には衝突)するので、振動出力が増幅される。これにより、実際の可動体10による振動出力よりも大きな振動出力を、ユーザーに体感させることができる。
【0099】
ここで、振動アクチュエーター1は、フレキシブル基板15を介して電源供給部(例えば、
図12~
図14に示す駆動制御部203)からコイル12へ入力される交流波によって駆動される。つまり、コイル12の通電方向は周期的に切り替わり、可動体10にはX方向プラス側の推力MとX方向マイナス側の推力-Mが交互に作用する。これにより、可動体10の他端側は、XY面内で円弧状に振動する。
【0100】
以下に、振動アクチュエーター1の駆動原理について簡単に説明する。本実施の形態の振動アクチュエーター1では、可動体10の慣性モーメント(イナーシャ)をJ[kg・m2]、磁気ばねのねじり方向のバネ定数をKspとした場合、可動体10は、固定体20に対して、下式(1)によって算出される共振周波数fr[Hz]で振動する。
【0101】
【0102】
可動体10は、バネ-マス系の振動モデルにおけるマス部を構成するので、コイル12に可動体10の共振周波数f
rに等しい周波数の交流波が入力されると、可動体10は共振状態となる。すなわち、電源供給部(例えば、
図12~
図14に示す駆動制御部203)からコイル12に対して、可動体10の共振周波数f
rと略等しい周波数の交流波を入力することにより、可動体10を効率良く振動させることができる。
【0103】
振動アクチュエーター1の駆動原理を示す運動方程式及び回路方程式を以下に示す。振動アクチュエーター1は、下式(2)で示す運動方程式及び下式(3)で示す回路方程式に基づいて駆動する。
【0104】
【0105】
【0106】
すなわち、振動アクチュエーター1における可動体10の慣性モーメント(イナーシャ)J[kg・m2]、回転角度θ(t)[rad]、トルク定数Kt[N・m/A]、電流i(t)[A]、バネ定数Ksp[N・m/rad]、減衰係数D[N・m/(rad/s)]等は、式(2)を満たす範囲内で適宜変更できる。また、電圧e(t)[V]、抵抗R[Ω]、インダクタンスL[H]、逆起電力定数Ke[V/(rad/s)]は、式(3)を満たす範囲内で適宜変更できる。
【0107】
このように、振動アクチュエーター1では、可動体10の慣性モーメント(イナーシャ)Jと磁気ばねのバネ定数Kspにより決まる共振周波数frに対応する交流波によりコイル12への通電を行った場合に、効率的に大きな振動出力を得ることができる。
【0108】
<変形例1>
図9は、本実施の形態1の振動アクチュエーターにおける可動体の変形例1の要部構成を示す断面図である。詳細には、
図9Aは、変形例1の可動体の説明に供する可動体の縦断面図であり、
図9Bは、
図3のB-B線断面出示す部位と同様の部分を図示した振動アクチュエーターの変形例1のコアの他端部の断面図である。
【0109】
図9に示す振動アクチュエーターにおける変形例1の可動体10Aでは、振動アクチュエーター1の可動体と比較して、コア14Aの他端部(先端部)144Aに設けるウェイト部80Aの形状を変更した点で異なる。
【0110】
すなわち、可動体10Aでは、振動アクチュエーター1の構成において、コア14Aの他端部144Aに設けられる切り欠き部148Aの形状がZ方向に貫通する貫通孔であり、その貫通孔内にウェイト部80Aが取り付けられている。
【0111】
図9の変形例1の可動体10Aでは、コア14と同様の構成的構成を有するコア14Aを有し、このコア14Aの一端部142A側に、軸部50(
図2参照)が挿入されるブッシュ16が挿入され、他端部144A側に、ウェイト部80Aが設けられている。
一端部142Aと、他端部144Aとの間のコア芯部146Aの外周には、コイルボビン18を介してコイル12が巻回されている。
【0112】
他端部144Aに設けられる切り欠き部148Aは、振動方向及びコア14Aの延在方向の双方と直交する方向(Z方向)に貫通して形成される貫通孔である。
ウェイト部80Aは、貫通孔(切り欠き部148A)内で、重心がコア芯部146Aの軸線上に位置するように固定されている。
これにより可動体10Aは、実施の形態1のウェイト部80を有する可動体10と同様の作用効果を奏することができる。
【0113】
図10は、振動アクチュエーターの変形例2の要部構成を示す一部分解斜視図であり、
図11は、
図10のC-C線断面図である。
【0114】
図10に示す変形例2の可動体10Bは、振動アクチュエーター1の可動体10と比較して、ウェイト部80Bの形状と、これに対応するコア14Bの先端部144Bの形状とが異なる。すなわち、可動体10Bでは、ウェイト部80Bは分割体81B、82Bにより構成される。
【0115】
分割体81B、82Bは、延長芯部147Bの周囲を囲むように形成されており、それぞれ、タングステン等の高比重材により構成されている。
【0116】
延長芯部147Bは、コア14Bにおいて、コイル12が巻回させるコア芯部146Bの延長上に配置され、且つ、コア芯部146Bに連続して形成されている。
なお、コア芯部146Bの外周は、幅方向で分割されたボビン分割体184、185を組み合わせることにより形成されたボビン18Bにより囲まれている。このボビン18Bにコイル12が巻回されている。
【0117】
延長芯部147Bは、コア14Bにおいて長手方向で連続する一端部142B、コア芯部146B、他端部144Bのうち、他端部144Bの一部に切り欠き部148Bとともに、設けられている。
【0118】
延長芯部147Bは、切り欠き部148Bと、自由端である頭部149Bとともに、コア14Bの他端部144Bを構成する。他端部144Bでは、切り欠き部148B内に、ウェイト部80Bが取り付けられているといえる。
【0119】
分割体81B、82Bは、断面コ字(U字)状あるいはL字状に形成される。分割体81B、82Bは、同じ形状であれば、ウェイト部80Bの製作コストを削減できる。
分割体81B、82は、延長芯部147Bを挟むように、延長芯部147Bを包囲するように取り付けられている。
【0120】
分割体81B、82Bは延長芯部147Bに圧入や接着剤等を介して固定される。分割体81B、82Bは、コア14B上において、コイル12が巻回される部位と、頭部149Bとの間の凹状の部分に配置され、且つ延長芯材147Bを囲むように設けられている。これにより、可動体10Bの回動により遠心力が発生しても、外れにくい。
【0121】
分割体81B、82Bによりなるウェイト部80Bは、自由端側、つまり頭部149B側に向かって幅方向、つまり振動方向の長さが漸次小さくなるように形成されている。これにより、ウェイト部80Bと頭部149Bとによる他端部144Bの幅方向長さも、自由端側に向かって幅方向で短くなっている。
これにより可動体10Bは、実施の形態1のウェイト部80を有する可動体10と同様の作用効果を奏することができる。
【0122】
<振動アクチュエーターを実装する電子機器>
図12から
図14は、振動アクチュエーターを実装する電子機器の一例を示す図である。
図12は、振動アクチュエーターをゲームコントローラーGCに実装した例を示し、
図13は、振動アクチュエーターを携帯端末としてのスマートフォンSPに実装した例を示し、
図14は、振動アクチュエーターをウェアラブル端末Wに実装した例を示す。
【0123】
ゲームコントローラーGCは、例えば、無線通信によりゲーム機本体に接続され、ユーザーが握ったり把持したりすることにより使用される。ゲームコントローラーGCは、ここでは矩形板状を有し、ユーザーが両手でゲームコントローラーGCの左右側を掴み操作するものとしている。
【0124】
ゲームコントローラーGCは、振動により、ゲーム機本体からの指令をユーザーに通知する。なお、ゲームコントローラーGCは、図示しないが、指令通知以外の機能、例えば、ゲーム機本体に対する入力操作部を備える。
【0125】
スマートフォンSPは、例えば、携帯電話やスマートフォン等の携帯通信端末である。スマートフォンSPは、振動により、外部の通信装置からの着信をユーザーに通知するとともに、スマートフォンSPの各機能(例えば、操作感や臨場感を与える機能)を実現する。
【0126】
ウェアラブル端末Wは、ユーザーが身につけて使用するものである。ウェアラブル端末Wは、ここではリング形状を有し、ユーザーの指に装着される。ウェアラブル端末Wは、無線通信により情報通信端末(例えば、携帯電話)に接続される。ウェアラブル端末Wは、振動により、情報通信端末における電話やメールの着信をユーザーに通知する。なお、ウェアラブル端末Wは、着信通知以外の機能(例えば、情報通信端末に対する入力操作)を備えていてもよい。
【0127】
図12~
図14に示すように、ゲームコントローラーGC、スマートフォンSP及びウェアラブル端末W等の電子機器は、それぞれ、通信部201、処理部202、駆動制御部203、及び駆動部としての振動アクチュエーター1(可動体10A、10Bを有する振動アクチュエーターも含む)を適用した振動アクチュエーター100A、100B、100C、100Dを有する。なお、ゲームコントローラーGCでは、複数の振動アクチュエーター100A、100Bが実装される。
【0128】
ゲームコントローラーGC、スマートフォンSP及びウェアラブル端末Wにおいて、振動アクチュエーター100A、100B、100C、100Dは、例えば、端末の主面と振動アクチュエーター1の振動方向と直交する面、ここではケース24の側面部242、243が平行となるように実装される。電子機器の主面とは、ユーザーの体表面に接触する面であり、本実施の形態では、ユーザーの体表面に接触して振動を伝達する振動伝達面を意味する。
【0129】
具体的には、ゲームコントローラーGCでは、操作するユーザーの指先、指の腹、手の平等が接触する面、或いは、操作部が設けられた面と、振動方向が直交するように振動アクチュエーター100A、100Bが実装される。また、スマートフォンSPの場合は、表示画面(タッチパネル面)と振動方向が直交するように振動アクチュエーター100Cが実装される。ウェアラブル端末Wの場合は、リング状の筐体の内周面208が主面(振動伝達面)であり、内周面208とXY面が略平行(平行も含む)となるように、振動アクチュエーター1が実装される。これにより、ゲームコントローラーGC、スマートフォンSP及びウェアラブル端末Wの主面に対して垂直な方向の振動が、ユーザーに伝達される。
【0130】
通信部201は、外部の通信装置と無線通信により接続され、通信装置からの信号を受信して処理部202に出力する。ゲームコントローラーGCの場合、外部の通信装置は、情報通信端末としてのゲーム機本体であり、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信規格に従って通信が行われる。スマートフォンSPの場合、外部の通信装置は、例えば基地局であり、移動体通信規格に従って通信が行われる。また、ウェアラブル端末Wの場合、外部の通信装置は、例えば、携帯電話、スマートフォン、携帯型ゲーム端末等の情報通信端末であり、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信規格に従って通信が行われる。
【0131】
処理部202は、入力された信号を、変換回路部(図示省略)により振動アクチュエーター100A、100B、100C、100Dを駆動するための駆動信号に変換して駆動制御部203に出力する。なお、スマートフォンSPにおいては、処理部202は、通信部201から入力される信号の他、各種機能部(図示略、例えばタッチパネル等の操作部)から入力される信号に基づいて、駆動信号を生成する。
【0132】
駆動制御部203は、振動アクチュエーター100A、100B、100C、100Dに接続されており、振動アクチュエーター100A、100B、100C、100Dを駆動するための回路が実装されている。駆動制御部203は、振動アクチュエーター100A、100B、100C、100Dに対して駆動信号を供給する。
【0133】
振動アクチュエーター100A、100B、100C、100Dは、駆動制御部203からの駆動信号に従って駆動する。具体的には、振動アクチュエーター100A、100B、100C、100Dにおいて、可動体10は、ゲームコントローラーGC、スマートフォンSP及びウェアラブル端末Wの主面に直交する方向に振動する。
【0134】
可動体10は、振動する度に、ケース24の側面部242、243にクッション材61、62を介して接触するので、可動体10の振動に伴うケース24の側面部242、243への衝撃、つまり、筐体への衝撃が、ダイレクトにユーザーに振動として伝達される。特に、ゲームコントローラーGCでは、複数の振動アクチュエーター100A、100Bが実装されているため、入力される駆動信号に応じて、複数の振動アクチュエーター100A、100Bのうちの一方、または双方を同時に駆動させることができる。
【0135】
ゲームコントローラーGC、スマートフォンSP及びウェアラブル端末Wに接触するユーザーの体表面には、体表面に垂直な方向の振動が伝達されるので、ユーザーに対して十分な体感振動を与えることができる。ゲームコントローラーGCでは、ユーザーに対する体感振動を、振動アクチュエーター100A、100Bのうちの一方、または双方で付与でき、少なくとも強弱の振動を選択的に付与するといった表現力の高い振動を付与できる。
【0136】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0137】
また、例えば、本発明に係る振動アクチュエーターは、実施の形態で示したゲームコントローラーGC、スマートフォンSP及びウェアラブル端末W以外の携帯機器(例えば、タブレットPCなどの携帯情報端末、携帯型ゲーム端末)に適用する場合に好適である。また、本実施の形態の振動アクチュエーター1は、上述した携帯機器の他、振動を必要とする美顔マッサージ器等の電動理美容器具にも用いることができる。
【0138】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明に係る振動アクチュエーターは、サイズを大きくすることなく、磁気特性の影響を与えることなく、駆動の際のイナーシャを向上でき、小型でユーザーに十分な体感振動を与えることができ、ゲームコントローラー、スマートフォン、或いはウェアラブル端末等の電子機器に搭載されるものとして有用である。
【符号の説明】
【0140】
1、100A、100B、100C、100D 振動アクチュエーター
10、10A、10B 可動体
12 コイル
14、14A、14B コア
15 フレキシブル基板
16 ブッシュ(軸受け)
18、18B ボビン
20 固定体
22 ベースプレート
23 軸固定部
24 ケース
30 第1マグネット
32、42 バックヨーク
40 第2マグネット
50 軸部
60 緩衝部
61、62 クッション材
80、80A、80B ウェイト部
81B、82B 分割体
142、152 一端部
144、154 他端部
142a、144a 端面
146、146A、146B コア芯部
147、147B 延長芯部(中心軸部)
148、148A、148B 切り欠き部
149、149B 頭部
156 湾曲部
181、182、184、185 ボビン分割体
201 通信部
202 処理部
203 駆動制御部
208 内周面
241 上面部
242、243 側面部
244 一端面部
245 他端面部
282、284 ワッシャ
301、302、401、402 磁極