(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】印刷用カセット及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 17/32 20060101AFI20240820BHJP
B41J 35/28 20060101ALI20240820BHJP
B41J 3/36 20060101ALI20240820BHJP
B41J 15/16 20060101ALI20240820BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B41J17/32
B41J35/28
B41J17/32 A
B41J3/36 T
B41J15/16
B41J15/04
(21)【出願番号】P 2020164717
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田上 裕也
(72)【発明者】
【氏名】村山 健太郎
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-110823(JP,A)
【文献】国際公開第2006/033393(WO,A1)
【文献】特開2012-152951(JP,A)
【文献】特開2020-146972(JP,A)
【文献】特開昭60-224571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 17/00 - 17/42
B41J 27/00 - 27/22
B41J 31/00 - 35/38
B41J 3/01 - 3/54
B41J 3/62
B41J 15/00 - 15/24
B41J 11/00 - 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カセット収納部を備える印刷装置本体に装着可能な印刷用カセットであって、
印刷用テープの第1ロールと、
第1方向において前記カセット収納部に挿入可能なケースと、
を備え、
前記ケースは、
前記第1ロールを支持する第1ケース部と、
前記第1ケース部と前記第1方向において重ねて配置された第2ケース部と、
を有し、
前記第2ケース部は、
前記印刷用テープが露出するヘッド開口と、
前記ケースが前記カセット収納部に挿入された状態で、前記印刷装置本体と前記第1方向にそれぞれ接触する第1接触部、第2接触部及び第3接触部と、
を有し、
前記第1接触部、前記第2接触部、及び前記第3接触部は、互いに離れて配置され、
前記第1方向から視て、前記第1接触部と前記第2接触部とが離れる方向は、前記第2接触部と前記第3接触部とが離れる方向と異な
り、
前記ヘッド開口は、前記第1方向において、前記第1ロールとは異なる位置に配置される、印刷用カセット。
【請求項2】
前記ケースは、前記第1ケース部の反対側にて、前記第2ケース部と前記第1方向において重ねて配置される蓋部をさらに有する、請求項1に記載の印刷用カセット。
【請求項3】
前記第2接触部は、前記第2ケース部の一部が前記第1方向に凹んだ凹部の底面である、請求項1又は請求項2に記載の印刷用カセット。
【請求項4】
前記第1方向から視て、前記凹部の前記底面は、前記第1方向と直交する方向に延伸する、請求項3に記載の印刷用カセット。
【請求項5】
カセット収納部を備える印刷装置本体に装着可能な印刷用カセットであって、
印刷用テープの第1ロールと、
第1方向において前記カセット収納部に挿入可能なケースと、
を備え、
前記ケースは、
前記第1ロールを支持する第1ケース部と、
前記第1ケース部と前記第1方向において重ねて配置された第2ケース部と、
を有し、
前記第2ケース部は、
前記印刷用テープが露出するヘッド開口と、
前記ケースが前記カセット収納部に挿入された状態で、前記印刷装置本体と前記第1方向にそれぞれ接触する第1接触部、第2接触部及び第3接触部と、
を有し、
前記第1接触部、前記第2接触部、及び前記第3接触部は、互いに離れて配置され、
前記第1方向から視て、前記第1接触部と前記第2接触部とが離れる方向は、前記第2接触部と前記第3接触部とが離れる方向と異な
り、
前記第2接触部は、前記第2ケース部の一部が前記第1方向に凹んだ凹部の底面であり、
前記第1方向から視て、前記凹部の前記底面は、前記第1方向と直交する方向に延伸し、
前記ケースは、前記印刷用テープを外部に排出する排出口を有し、
前記凹部の前記底面の延伸方向は、前記排出口での前記印刷用テープの排出方向と平行な第2方向と、前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向との双方と交差する、印刷用カセット。
【請求項6】
前記印刷装置本体は、駆動力を入力する駆動シャフトを備え、
前記ケースは、前記駆動シャフトが挿入される挿入孔を有し、
前記ケースが前記カセット収納部に挿入された状態で、前記凹部の内側面は、前記挿入孔の中心軸周りの前記ケースの回転を規制する、請求項3から請求項5のうちのいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項7】
前記第1接触部は、前記ヘッド開口と前記第1方向において重なる、
請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項8】
前記第2接触部は、前記第1方向から視た前記第2ケース部の角部に配置される、
請求項1から請求項7のうちのいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項9】
前記第3接触部は、前記第2ケース部の前記第1方向と平行な外側面と連続して配置される、請求項1から
請求項8のいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項10】
前記ケースは、前記カセット収納部に挿入された状態で前記第1方向において前記カセット収納部と対向する底面を有し、
前記第3接触部は、前記第1方向において前記底面と異なる位置に配置される、
請求項9に記載の印刷用カセット。
【請求項11】
前記印刷用テープの印刷に供される補助テープの第2ロールをさらに備え、
前記第2ケース部は、前記第2ロールを支持し、
前記補助テープは、前記ヘッド開口において前記印刷用テープと重ね合わされる、請求項1から
請求項10のいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項12】
前記補助テープを巻き取る巻取スプールをさらに備え、
前記印刷装置本体は、駆動力を入力する駆動シャフトを備え、
前記ケースは、前記駆動シャフトが挿入される挿入孔を有し、
前記巻取スプールの回転軸心は、前記挿入孔の中心軸と一致する、
請求項11に記載の印刷用カセット。
【請求項13】
前記第1方向から視て、前記挿入孔の前記中心軸及び前記第2接触部を通り、かつ、前記第1接触部と前記第3接触部とに挟まれる仮想直線が存在する、
請求項12に記載の印刷用カセット。
【請求項14】
前記ケースは、前記ケースの外面から突出すると共に、前記ケースの前記カセット収納部内における前記第1方向と直交する方向の位置決めをする凸部を有する、請求項1から
請求項13のいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項15】
前記ケースが前記カセット収納部に挿入された状態で、前記凸部は、前記第1方向と平行な軸周りの前記ケースの回転を規制する、
請求項14に記載の印刷用カセット。
【請求項16】
外部に駆動力を出力する出力ギアをさらに備え、
前記凸部の少なくとも一部は、前記第1方向と直交する方向において前記出力ギアと重なる、
請求項14又は請求項15に記載の印刷用カセット。
【請求項17】
前記印刷装置本体は、前記印刷用テープを切断するカッターを備え、
前記ケースが前記カセット収納部に挿入された状態で、前記凸部は、前記カッターと対向する、
請求項14から請求項16のいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項18】
前記印刷装置本体は、前記印刷用テープに印刷を行う印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドに取り付けられたヒートシンクとを備え、
前記ケースが前記カセット収納部に挿入された状態で、前記凸部は、前記ヒートシンクと対向する、
請求項14から請求項16のいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項19】
前記ケースは、前記ヘッド開口よりも前記印刷用テープの排出方向上流側において、前記印刷用テープの幅方向の移動を規制する第1規制部を有する、請求項1から
請求項18のいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項20】
前記印刷用テープの印刷に供される補助テープをさらに備え、
前記ケースは、前記ヘッド開口よりも前記印刷用テープの排出方向上流側において、前記補助テープの幅方向の移動を規制する第2規制部を有する、
請求項19に記載の印刷用カセット。
【請求項21】
前記ケースは、前記カセット収納部に挿入された状態で、前記印刷装置本体によって前記第1方向に押圧される被押圧部を有し、
前記第1方向から視て、3つの頂点がそれぞれ前記第1接触部、前記第2接触部及び前記第3接触部に含まれ、かつ、前記被押圧部の全体を囲む仮想三角形が存在する、請求項1から
請求項20のいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項22】
前記ケースの前記第1方向と平行な外側面に配置されたRFIDタグをさらに備え、
前記第1方向から視て、前記第2接触部及び前記第3接触部を通り、前記RFIDタグの中心との距離が前記第1接触部との距離よりも小さい第1仮想直線と、
前記第1方向から視て、前記第3接触部及び前記第1接触部を通り、前記RFIDタグの中心との距離が前記第2接触部との距離よりも小さい第2仮想直線と、
前記第1方向から視て、前記第1接触部及び前記第2接触部を通り、前記RFIDタグの中心との距離が前記第3接触部との距離よりも小さい第3仮想直線と、
が存在する、請求項1から
請求項21のいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項23】
請求項1から
請求項22のいずれか1項に記載の印刷用カセットと、
前記印刷用カセットが装着される印刷装置本体と、
を備える、印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷用カセット及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用テープに印刷を行う印刷装置では、印刷用テープを収容したカセットを印刷装置本体に着脱することで、印刷用テープの交換及び供給が行われる(特許文献1参照)。カセットには、印刷ヘッドによって印刷用テープに印刷を行うヘッド開口が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のカセットにおいて、印刷装置本体に対するカセットの装着位置がずれると、印刷ヘッドとヘッド開口との位置ずれが発生する。その結果、印刷用テープの印刷品質が低下するおそれがある。
【0005】
本開示の一局面は、ヘッド開口の位置ずれを抑制できる印刷用カセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、カセット収納部を備える印刷装置本体に装着可能な印刷用カセットである。印刷用カセットは、印刷用テープの第1ロールと、第1方向においてカセット収納部に挿入可能なケースと、を備える。ケースは、第1ロールを支持する第1ケース部と、第1ケース部と第1方向において重ねて配置された第2ケース部と、を有する。
【0007】
第2ケース部は、印刷用テープが露出するヘッド開口と、ケースがカセット収納部に挿入された状態で、印刷装置本体と第1方向にそれぞれ接触する第1接触部、第2接触部及び第3接触部と、を有する。第1接触部、第2接触部、及び第3接触部は、互いに離れて配置される。第1方向から視て、第1接触部と第2接触部とが離れる方向は、第2接触部と第3接触部とが離れる方向と異なる。
【0008】
本開示の別の態様は、印刷用カセットと、印刷用カセットが装着される印刷装置本体と、を備える印刷装置である。
【0009】
これらのような構成によれば、3つの接触部によって印刷用カセットの挿入方向(つまり第1方向)における位置決め精度を高めることができる。そのため、印刷装置本体への装着時における印刷装置本体に対するヘッド開口の位置ずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1A,1B,1Cは、実施形態における印刷装置本体を示す模式的な斜視図である。
【
図2】
図2Aは、実施形態における印刷用カセットの底面図であり、
図2Bは、
図2Aの印刷用カセットの平面図である。
【
図7】
図7Aは、
図2BのVIIA-VIIA線での模式的な断面図であり、
図7Bは、
図2BのVIIB-VIIB線での模式的な断面図であり、
図7Cは、
図2BのVIIC-VIIC線での模式的な断面図であり、
図7Dは、
図2BのVIID-VIIBDでの模式的な断面図である。
【
図8】
図8は、
図1Aの印刷装置における出力ギアとプラテンギアとの係合状態を示す模式図である。
【
図9】
図9Aは、
図2Aとは異なる実施形態における印刷用カセットの模式的な斜視図であり、
図9Bは、
図9Aの印刷用カセットの模式的な背面図である。
【
図10】
図10は、
図2Aとは異なる実施形態における印刷用カセットの印刷装置本体に装着された状態での模式的な断面図である。
【
図11】
図11は、
図2Aとは異なる実施形態における印刷用カセットの印刷装置本体に装着された状態での模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1A,1B,1Cに示す印刷装置本体100は、
図2A,2Bに示す印刷用カセット10と共に、テープ状の印刷媒体に印刷を行う印刷装置を構成する。
【0012】
本実施形態では、出力ギア21の軸方向を上下方向とし、上下方向と垂直な方向のうち出力ギア21と巻取スプール16とが並ぶ方向を前後方向とし、上下方向と前後方向との双方に垂直な方向を左右方向とする。
【0013】
<印刷装置本体>
印刷装置本体100は、
図1A,1B,1Cに示すように、カセット収納部101と、印刷ヘッド102と、ヒートシンク102Aと、プラテンローラ103と、プラテンギア104と、駆動シャフト105と、カッター106と、駆動源107と、検出部108と、制御ユニット109と、筐体110と、蓋111と、押え部材112とを備える。
【0014】
(カセット収納部)
カセット収納部101は、印刷用カセット10が装着される凹部である。カセット収納部101は、印刷用カセット10の位置決め機能を有する。カセット収納部101は、筐体110に設けられている。
【0015】
(印刷ヘッド)
印刷ヘッド102は、カセット収納部101の内部に配置されている。印刷ヘッド102は、個別に発熱が制御される複数の発熱素子を有する。
【0016】
(ヒートシンク)
ヒートシンク102Aは、印刷ヘッド102を保持している。ヒートシンク102Aは、厚み方向が前後方向と平行となるように配置された金属板であり、前面に印刷ヘッド102が取り付けられている。ヒートシンク102Aは、印刷ヘッド102の熱を放出する機能を有する。
【0017】
(プラテンローラ)
プラテンローラ103は、カセット収納部101の内部において、印刷ヘッド102と
対向するように印刷ヘッド102の近傍に配置されている。プラテンローラ103は、印刷ヘッド102に対し、近づく方向又は離れる方向に揺動可能である。プラテンローラ103の回転軸心L1は、上下方向と平行である。
【0018】
(プラテンギア)
プラテンギア104は、プラテンローラ103に連結されている。本実施形態では、プラテンギア104の回転軸心L2は、プラテンローラ103の回転軸心L1と同一線上に配置されている。プラテンギア104は、プラテンローラ103と共に揺動可能である。
【0019】
(駆動シャフト)
駆動シャフト105は、印刷用カセット10の巻取スプール16と入力ギア22とに挿入される。駆動シャフト105は、巻取スプール16と入力ギア22とを回転させる駆動力を印刷用カセット10に入力する。
【0020】
駆動シャフト105は、カセット収納部101の内部に配置されている。駆動シャフト105の回転軸心L3は、上下方向と平行である。駆動シャフト105は、駆動源107によって回転軸心L3を中心に回転する。
【0021】
(カッター)
カッター106は、印刷用カセット10から排出された印刷用テープ11Aを切断する。カッター106は、筐体110の開口110Aの内側に配置されている。
【0022】
(駆動源)
駆動源107は、駆動シャフト105を回転駆動させる。駆動源107としては、例えばモータとギアとを組み合わせた機構が使用できる。
【0023】
(検出部)
検出部108は、印刷用カセット10に与えられた識別情報を印刷用カセット10から検出する。
【0024】
具体的には、検出部108は、無線通信によって印刷用カセット10のRFID(Radio Frequency Identification)タグ51から識別情報を読み取るリーダである。
【0025】
(制御ユニット)
制御ユニット109は、検出部108が検出した識別情報に基づいて、印刷用テープ11Aへの印刷を制御する。
【0026】
制御ユニット109は、例えば、プロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、入出力部とを備えるコンピュータにより構成される。制御ユニット109は、予め記憶されたプログラムを実行することで、印刷ヘッド102及び駆動源107を制御する。
【0027】
(蓋)
蓋111は、筐体110に対し搖動可能に取り付けられている。印刷用カセット10は、
図1Aに示す蓋111が開いた状態で筐体110内(つまりカセット収納部101)に下方に挿入される。
【0028】
蓋111は、印刷用カセット10がカセット収納部101に挿入された状態で、印刷用カセット10の上部を覆うようにカセット収納部101の開口を閉塞する。これにより、印刷用カセット10が印刷装置本体100内に保持される。
【0029】
(押え部材)
押え部材112は、蓋111の内面(つまり、蓋111が閉じた状態でカセット収納部101と対向する面)に設けられている。
【0030】
蓋111が閉じられた状態では、押え部材112が印刷用カセット10を筐体110内で下方に押圧する。本実施形態では、押え部材112は、蓋111の内面から突出した円筒状の部材である。押え部材112は、先端が印刷用カセット10の被押圧部31Bに当接することで、被押圧部31Bを下方に押圧する。
【0031】
<印刷用カセット>
印刷用カセット10は、印刷媒体(つまり印刷用テープ11A)を格納している。印刷用カセット10は、印刷装置本体100への装着及び印刷装置本体100からの脱離が可能である。印刷用カセット10の交換により、印刷媒体の補給、及び印刷媒体の種類(例えば、サイズ、色、材質等)の変更ができる。
【0032】
印刷用カセット10は、
図2A,2Bに示すように、印刷用テープ11Aの少なくとも一部及びインクリボン14A(補助テープの一例)の少なくとも一部が収容されるケース35と、ケース35に貼られたRFIDタグ51とを備える。
【0033】
印刷用カセット10の外形(つまり、ケース35の形状)は、上下方向に平行な辺と、前後方向に平行な辺と、左右方向に平行な辺とを有する直方体状である。ケース35は、下方に向かってカセット収納部101へ挿入可能である。ケース35は、底面36と、天面37とを有する。
【0034】
底面36は、ケース35がカセット収納部101に挿入された状態で上下方向においてカセット収納部101と対向する。底面36は、上下方向と直交している。底面36には、挿入孔34Dが設けられている。
【0035】
天面37は、ケース35がカセット収納部101に挿入され、かつ蓋111が閉じられた状態で上下方向において蓋111と対向する。天面37は、上下方向と直交している。天面37には、被押圧部31Bが設けられている。
【0036】
図3A,3B,3Cに示すように、ケース35は、さらに、左側面38Aと、後側面38Bとを有する。
【0037】
左側面38Aは、ケース35の上下方向と平行な外側面のうち、前後方向と平行、かつ第1ロール11、第2ロール14及び伝達機構20よりも左方に位置する面である。後側面38Bは、ケース35の上下方向と平行な外側面のうち、左右方向と平行、かつ第1ロール11、第2ロール14及び伝達機構20よりも後方に位置する面である。
【0038】
印刷用カセット10は、
図4A,4Bに示すように、第1ロール11と、第1供給スプール12と、第2ロール14と、第2供給スプール15と、巻取スプール16と、クラッチバネホルダ17と、伝達機構20とを備える。
【0039】
(第1ロール)
第1ロール11は、印刷が行われる印刷用テープ11Aを第1供給スプール12に巻回したものである。印刷用テープ11Aの表面には、印刷装置本体100の印刷ヘッド102及びインクリボン14Aによって印刷が行われる。
【0040】
(第1供給スプール)
第1供給スプール12は、上下方向と平行な回転軸心L4周りに回転可能である。第1供給スプール12は、印刷装置本体100のプラテンローラ103による印刷用テープ11Aの搬送に伴って回転することで、印刷用テープ11Aを印刷ヘッド102に供給する。第1供給スプール12の回転軸心L4は、第1ロール11の巻回軸心と一致する。
【0041】
(第2ロール)
第2ロール14は、印刷用テープ11Aの印刷に用いられるインクリボン14Aを第2供給スプール15に巻回したものである。
【0042】
インクリボン14Aは、ヘッド開口33Bにおいて、印刷用テープ11Aと重ね合わされ、印刷ヘッド102による印刷に供される。印刷に使用されたインクリボン14Aは、巻取スプール16に巻き取られる。
【0043】
第2ロール14には、クラッチバネホルダ17に保持されたクラッチバネ(図示省略)によって回転抵抗が付される。第2ロール14の少なくとも一部は、上下方向において、第1ロール11と重なる位置に配置されている。
【0044】
(第2供給スプール)
第2供給スプール15は、回転軸心L5周りに回転可能である。第2供給スプール15の回転軸心L5は、上下方向と平行である。第2供給スプール15は、インクリボン14Aの巻取スプール16による巻き取りに伴って回転することで、インクリボン14Aを印刷ヘッド102に供給する。
【0045】
(巻取スプール)
巻取スプール16は、回転軸心L6周りに回転可能である。巻取スプール16の回転軸心L6は、第2供給スプール15の回転軸心L5と平行である。
【0046】
巻取スプール16は、円筒状であり、内周面16Aで規定される中空部を有する。巻取スプール16の内周面16Aにはスプライン歯16Bが設けられている。スプライン歯16Bには、印刷装置本体100の駆動シャフト105が連結される。巻取スプール16は、駆動シャフト105によって回転され、インクリボン14Aを巻き取る。
【0047】
(伝達機構)
伝達機構20は、印刷用カセット10が印刷装置本体100に装着された際に、駆動シャフト105から伝達される駆動源107の駆動力をプラテンローラ103に伝達すると共に、プラテンローラ103を印刷用カセット10ごとに設定された回転速度で回転させる。伝達機構20は、出力ギア21と、入力ギア22と、アイドルギア23とを有する。
【0048】
図5に示すように、第1ロール11、伝達機構20、及び巻取スプール16は、上下方向において、第1ロール11、伝達機構20、及び巻取スプール16の順に並んで配置されている。つまり、伝達機構20は、上下方向において、第1ロール11と巻取スプール16との間に位置する。
【0049】
(出力ギア)
図4A,4Bに示す出力ギア21は、印刷用テープ11Aの搬送に供される駆動力を外部に出力するための外歯ギアである。具体的には、出力ギア21は、印刷装置本体100のプラテンギア104に外部からの駆動力を伝達する。
【0050】
出力ギア21の回転軸心L7は、第2供給スプール15の回転軸心L5と平行である。
出力ギア21の全体は、上下方向においてケース35のカバー部32Bと重なっている。また、出力ギア21は、ヘッド開口33Bと連通する空間に一部が露出している。
【0051】
出力ギア21は、印刷用カセット10が印刷装置本体100に装着された状態(つまりケース35がカセット収納部101に収納された状態)で、ヘッド開口33Bと連通した空間においてプラテンギア104に係合する。
【0052】
(入力ギア)
入力ギア22は、アイドルギア23を介して出力ギア21と間接的に係合し、駆動力を出力ギア21に伝達する。
【0053】
入力ギア22は、外歯ギア22Aと、外歯ギア22Aの一方の側面に固定されると共に、内周面にスプライン歯を有する円筒状の内歯ギアであるスプール22Bとを有する。外歯ギア22Aは、スプール22Bに入力された駆動源107の駆動力によってスプール22Bと一体回転する。
【0054】
入力ギア22の回転軸心L8(つまり、外歯ギア22Aの回転軸心、及びスプール22Bの回転軸心)は、巻取スプール16の回転軸心L6と同一線上に配置されている。入力ギア22の少なくとも一部は、上下方向において、第1ロール11と重なる位置に配置されている。
【0055】
入力ギア22の回転軸心L8は、上下方向において、巻取スプール16の中空部と重なる。そのため、印刷用カセット10が印刷装置本体100に装着された状態では、駆動シャフト105が巻取スプール16と入力ギア22とに同時に挿通される。その結果、入力ギア22は、巻取スプール16と直接連結はされないが、巻取スプール16と共に駆動シャフト105によって回転される。
【0056】
(アイドルギア)
アイドルギア23は、入力ギア22と出力ギア21とに駆動連結され(つまり係合し)、入力ギア22に入力された駆動力を出力ギア21に伝達する。
【0057】
アイドルギア23は、入力ギア22に係合した上流ギア23Aと、出力ギア21に係合した下流ギア23Bとが同軸上に並んで配置された段ギアである。下流ギア23Bは、上流ギア23Aよりも径が小さい。また、下流ギア23Bは、上下方向において、上流ギア23Aよりも第1ロール11に近い位置(つまり上方)に配置されている。
【0058】
アイドルギア23は、入力ギア22に入力された駆動力の回転速度を減速して出力ギア21に伝達する。つまり、伝達機構20は、入力ギア22の回転速度を出力ギア21の回転速度で除した伝達比を減速比とする減速機構を含んでいる。
【0059】
(ケース)
ケース35は、第1蓋部31と、第1ケース部32と、第2ケース部33と、第2蓋部34とを有する。
【0060】
第1蓋部31は、印刷用カセット10の天面37を含む上端部を構成している。第1ケース部32は、第1蓋部31の下方に配置され、第1蓋部31と上下方向に連結されている。
【0061】
第2ケース部33は、第1ケース部32の下方に配置され、第1ケース部32と上下方向に連結されている。つまり、第2ケース部33は、第1ケース部32と上下方向に重ね
て配置されている。第2蓋部34は、印刷用カセット10の底面36を含む下端部を構成している。第2蓋部34は、第2ケース部33と上下方向に連結されている。
【0062】
第1蓋部31と第1ケース部32とは、第1ロール11を収容する第1収容部41を構成している。つまり、第1ロール11は、第1蓋部31と第1ケース部32とで囲まれた空間に配置されている。
【0063】
第2蓋部34と第2ケース部33とは、第2ロール14、第2供給スプール15、及び巻取スプール16を収容する第2収容部42を構成している。つまり、第2ロール14、第2供給スプール15、及び巻取スプール16は、第2蓋部34と第2ケース部33とで囲まれた空間に配置されている。
【0064】
第1ケース部32と第2ケース部33とは、出力ギア21の一部、入力ギア22、及びアイドルギア23を収容する第3収容部43を構成している。つまり、出力ギア21の一部、入力ギア22、及びアイドルギア23は、第1ケース部32と第2ケース部33とで囲まれた空間に配置されている。第3収容部43は、上下方向において第1収容部41と第2収容部42との間に配置されている。
【0065】
第1蓋部31は、天板31Aと、被押圧部31Bとを有する。
天板31Aは、第1ロール11を上方から覆う板部であり、ケース35の天面37を構成している。
【0066】
被押圧部31Bは、印刷用カセット10が印刷装置本体100に装着された状態で、印刷装置本体100の押え部材112から上下方向に押圧される部位である。被押圧部31Bは、天面37よりも上方に若干突出している。
【0067】
第1ケース部32は、第1側壁32Aと、カバー部32Bと、第1ガイド32Cと、第1ギア支持部32Dと、第2ギア支持部32Eと、第3ギア支持部32Fと、第1ロール支持部32Hとを有する。
【0068】
第1側壁32Aは、ケース35の上下方向と平行な外側面を構成する。
カバー部32Bは、上下方向と垂直な表面を有する部位である。カバー部32Bは、上下方向において出力ギア21と重なる位置に配置されている。本実施形態では、カバー部32Bは、第1側壁32Aの下端部と連続して設けられ、第1ケース部32の右前方の角部に配置されている。
【0069】
第1ガイド32Cは、第1ロール11から引き出された印刷用テープ11Aが巻き掛けられる部位である。第1ガイド32Cは、第1ロール11の周方向に沿って離れて配置された複数の板状のリブを有する。複数のリブは、第1ロール11の径方向に突出しており、下方に向かうほど突出量(つまり板幅)が大きくなっている。
【0070】
第1ギア支持部32Dは、出力ギア21を回転可能に支持する。第2ギア支持部32Eは、入力ギア22を回転可能に支持する。第3ギア支持部32Fは、アイドルギア23を回転可能に支持する。
【0071】
図4Bに示す第1ロール支持部32Hは、上下方向に延伸する軸部である。第1ロール支持部32Hは、第1供給スプール12に挿通されることで、第1ロール11及び第1供給スプール12を回転可能に支持する。
【0072】
第2ケース部33は、第2側壁33Aと、ヘッド開口33Bと、バー33Cと、第2ガ
イド33Dと、第1接触部33Eと、第2接触部33Fと、第3接触部33Gと、第2ロール支持部33Hと、第1補助壁33Iとを有する。
【0073】
第2側壁33Aは、ケース35の上下方向と平行な外側面を構成する。
ヘッド開口33Bは、第2側壁33Aの一部を切り欠いた部位である。ヘッド開口33Bは、印刷用カセット10が印刷装置本体100に装着された状態で、内部に印刷ヘッド102が配置される空間である。
【0074】
ヘッド開口33Bにおいて、印刷ヘッド102による印刷用テープ11Aの印刷が行われる。ヘッド開口33Bは、印刷ヘッド102が下方から挿入可能なように、印刷用カセット10の下方に開口している。
【0075】
図2Aに示すように、ヘッド開口33Bにおいて、印刷用テープ11A及びインクリボン14Aが左右方向に架け渡される。印刷用テープ11Aは、ヘッド開口33Bにおいてケース35の外部に露出すると共に、インクリボン14Aと重ね合わされる。
【0076】
図4A,4Bに示すバー33Cは、第2側壁33Aから下方に突出している。バー33Cは、第2蓋部34のスリット部34Bと共に排出口35Aを構成している。ヘッド開口33Bにて印刷された印刷用テープ11Aは、幅方向が上下方向と平行となる向きで、排出口35Aから排出される。印刷用テープ11Aは、筐体110の開口110A(
図1B参照)を介して印刷装置の外部に排出される。
【0077】
ヘッド開口33B及び排出口35Aは、上下方向において第1ロール11と離れた位置(具体的には下方)に配置されている。出力ギア21は、上下方向において、ヘッド開口33B又は排出口35Aと、第1ロール11との間に配置されている。
【0078】
また、第2ロール14の少なくとも一部は、上下方向と直交する方向において、ヘッド開口33B及び排出口35Aと重なっている。つまり、第2ロール14の少なくとも一部は、上下方向においてヘッド開口33B及び排出口35Aと同じ位置に存在する。
【0079】
第2ガイド33Dは、第1ガイド32Cと同様に、第1ロール11から引き出された印刷用テープ11Aが巻き掛けられる部位である。第2ガイド33Dは、第2ロール14の周方向に沿って離れて配置された複数の板状のリブを有する。複数のリブは、第2ロール14の径方向に突出しており、下方に向かうほど突出量(つまり板幅)が小さくなる。
【0080】
第1接触部33E、第2接触部33F、及び第3接触部33Gは、それぞれ、ケース35がカセット収納部101に挿入された状態で、筐体110の内面と上下方向にそれぞれ接触する。
【0081】
つまり、第1接触部33E、第2接触部33F、及び第3接触部33Gは、それぞれ、印刷装置本体100の対応する部位に上方から接触することで、カセット収納部101におけるケース35の上下方向の位置決めを行う。
【0082】
第1接触部33E、第2接触部33F、及び第3接触部33Gは、互いに離れて配置されている。また、上下方向から視て、第1接触部33Eと第2接触部33Fとが離れる方向は、第2接触部33Fと第3接触部33Gとが離れる方向と異なっている。
【0083】
つまり、
図2Aに示すように、上下方向から視て、第1接触部33E、第2接触部33F、及び第3接触部33Gは、直線状に並んでいない。換言すれば、第1接触部33E、第2接触部33F、及び第3接触部33Gを同時に通過する仮想直線は存在しない。
【0084】
第1接触部33Eは、ヘッド開口33Bと上下方向において重なる位置に配置されている。具体的には、第1接触部33Eは、ヘッド開口33Bの上方に配置されている。第1接触部33Eは、ヘッド開口33Bを介して、印刷用カセット10の下方に向かって露出している。第1接触部33Eは、ヘッド開口33Bに挿入されるヒートシンク102Aに接触する。
【0085】
第2接触部33Fは、上下方向から視た第2ケース部33の角部に配置されている。具体的には、第2接触部33Fは、第2ケース部33の左前方の角部に、中心軸が上下方向と平行となるように配置された有底の筒体33Jの底面で構成されている。筒体33Jは、第2側壁33Aから左右方向及び前後方向において第2蓋部34と重なる位置まで延伸している。
【0086】
第2接触部33Fは、第2ケース部33の一部が上方に凹んだ凹部の底面である。第2接触部33Fを構成する筒体33Jには、カセット収納部101内において上下方向に延伸するピン101B(
図1B参照)が挿入される。
【0087】
上下方向から視て、第2接触部33Fを構成する凹部の底面は、上下方向と直交する方向に延伸している。具体的には、凹部の底面の延伸方向は、排出口35Aでの印刷用テープ11Aの排出方向(つまり左右方向)と、前後方向との双方と交差している。より詳細には、凹部の底面は、挿入孔34Dの中心軸P1に向かって延伸しており、凹部の底面の延伸方向は、挿入孔34Dの中心軸P1を中心とする円の周方向と直交する。
【0088】
凹部の内側面(つまり筒体33Jの内周面)は、筒体33Jに挿入されたピン101Bの左右方向及び前後方向との双方と交差する方向への移動を許容する一方で、ピン101Bの挿入孔34Dの中心軸P1を中心とする揺動を規制する。
【0089】
そのため、ケース35がカセット収納部101に挿入された状態で、筒体33Jの内周面は、挿入孔34Dの中心軸P1周り(具体的には駆動シャフト105の回転軸心L3周り)のケース35の回転を規制する。
【0090】
図3Cに示すように、第3接触部33Gは、第2ケース部33の上下方向と平行な外側面(具体的には、ケース35の後側面38Bの一部)と連続して配置されている。つまり、第3接触部33Gは、後側面38Bに設けられた凹部によって構成されている。
【0091】
また、第3接触部33Gは、上下方向においてケース35の底面36と異なる位置(つまり上方)に配置されている。第3接触部33Gは、カセット収納部101内において上下方向に延伸するリブ101C(
図1C参照)の上端と接触する。
【0092】
図4Aに示す第2ロール支持部33Hは、上下方向に延伸する軸部である。第2ロール支持部33Hは、第2供給スプール15に挿通されることで、第2ロール14及び第2供給スプール15を回転可能に支持する。
【0093】
第1補助壁33Iは、ヘッド開口33Bよりも印刷用テープ11Aの排出方向上流側において、印刷用テープ11Aの搬送路及びインクリボン14Aの搬送路の上方に配置されている。第1補助壁33Iは、印刷用テープ11A及びインクリボン14Aの上方への移動を規制する部位を下面に有する。
【0094】
第2蓋部34は、底板34Aと、スリット部34Bと、第2補助壁34Cと、挿入孔34Dとを有する。
底板34Aは、第2ロール14及び巻取スプール16を下方から覆う板部であり、ケース35の底面36を構成している。
【0095】
スリット部34Bは、底板34Aから上方に突出している。スリット部34Bは、第2ケース部33のバー33Cと組み合わされることで、スリット状の排出口35Aを構成している。
【0096】
第2補助壁34Cは、第2ケース部33の第1補助壁33Iと上下方向に対向している。第2補助壁34Cは、印刷用テープ11A及びインクリボン14Aの下方への移動を規制する部位を上面に有する。
【0097】
挿入孔34Dは、駆動シャフト105が挿入される開口である。挿入孔34Dは、底板34Aに設けられている。巻取スプール16の回転軸心L6は、挿入孔34Dの中心軸と一致している。また、ケース35がカセット収納部101に挿入された状態では、駆動シャフト105の回転軸心L3も挿入孔34Dの中心軸と一致する。
【0098】
図6に示すように、印刷用カセット10には、上下方向から視て、挿入孔34Dの中心軸P1及び第2接触部33Fを通り、かつ、第1接触部33Eと第3接触部33Gとに挟まれる仮想直線S0が存在する。
【0099】
つまり、第1接触部33Eは、仮想直線S0によって2分割される印刷用カセット10の一方の部分(つまり右前方部)に配置され、第2接触部33Fは、印刷用カセット10の他方の部分(つまり左後方部)に配置されている。
【0100】
さらに、印刷用カセット10には、上下方向から視て、3つの頂点がそれぞれ第1接触部33E、第2接触部33F及び第3接触部33Gに含まれ、かつ、被押圧部31Bの全体を囲む仮想三角形Tが存在する。
【0101】
図7A,7B,7C,7Dに示すように、第1ガイド32C及び第2ガイド33Dは、第1ロール11を構成する印刷用テープ11Aを第1収容部41から第2収容部42に送る通路を構成している。
【0102】
具体的には、
図7Aに示すように、第1ロール11から引き出された印刷用テープ11Aは、螺旋を描くように第1ガイド32Cに第1ロール11の径方向外側から当接しながら第1収容部41内で下後方に向かって搬送される。印刷用テープ11Aは、さらに
図7Bに示すように、第3収容部43を上下方向に跨ぎつつ、左下方に向かって搬送される。
【0103】
第2収容部42に到達した印刷用テープ11Aは、
図7Cに示すように、第2ガイド33Dに径方向外側から当接しながら下前方に向かって搬送される。印刷用カセット10の下端部に到達した印刷用テープ11Aは、
図7Dに示すように、ヘッド開口33Bを通過して排出口35Aから右方に排出される。
【0104】
また、第1補助壁33I及び第2補助壁34Cによって、ヘッド開口33Bよりも印刷用テープ11Aの排出方向上流側において、印刷用テープ11Aの幅方向の移動を規制する第1規制部とインクリボン14Aの幅方向の移動を規制する第2規制部とが構成されている。
【0105】
(RFIDタグ)
図3Aに示すRFIDタグ51は、印刷用カセット10を識別するための識別情報を外部装置(つまり印刷装置本体100)に検出させる。RFIDタグ51は、ケース35の
左側面38Aに配置されている。
【0106】
RFIDタグ51は、アンテナとICチップとを有する。RFIDタグ51は、印刷装置本体100の検出部108による非接触式の読み取りによって、ICチップに記憶された識別情報を検出部108に検出させる。
【0107】
識別情報は、例えば、伝達機構20に関する情報、印刷用テープ11Aに関する情報等を含む。伝達機構20に関する情報は、例えば、入力ギア22の回転速度を出力ギア21の回転速度で除した伝達比に関連する情報、伝達機構20が含む回転体(つまりギア)の数に関連する情報等を含む。印刷用テープ11Aに関する情報は、例えば、印刷用テープ11Aの幅、厚み、材質、色、層構成等を示す情報を含む。
【0108】
図6に示すように、印刷用カセット10には、第1仮想直線S1と、第2仮想直線S2と、第3仮想直線S3とが存在する。
【0109】
第1仮想直線S1は、上下方向から視て、第2接触部33F及び第3接触部33Gを通り、RFIDタグ51の中心51Aとの距離D11が第1接触部33Eとの距離D12よりも小さい。
【0110】
第2仮想直線S2は、上下方向から視て、第3接触部33G及び第1接触部33Eを通り、RFIDタグ51の中心51Aとの距離D21が第2接触部33Fとの距離D22よりも小さい。
【0111】
第3仮想直線S3は、上下方向から視て、第1接触部33E及び第2接触部33Fを通り、RFIDタグ51の中心51Aとの距離D31が第3接触部33Gとの距離D32よりも小さい。
【0112】
<印刷装置本体によるテープ搬送及び印刷>
印刷用カセット10が印刷装置本体100に装着された状態で、印刷ヘッド102は、ヘッド開口33Bにおいて、印刷用テープ11A及びインクリボン14Aと前後方向に重なる位置に配置される。
【0113】
印刷用テープ11Aは、プラテンローラ103によってヘッド開口33Bに搬送されると共に、プラテンローラ103によってインクリボン14Aを介して発熱素子が発熱した印刷ヘッド102に押し付けられる。これにより、インクリボン14Aの表面に配置されたインクの一部が印刷用テープ11Aに転写され、印刷用テープ11Aに文字、記号等が印刷される。
【0114】
プラテンローラ103は、印刷後の印刷用テープ11Aを印刷用カセット10内から外部に向けて搬送する。プラテンローラ103は、出力ギア21と係合されたプラテンギア104によって回転する。プラテンローラ103及びプラテンギア104は、印刷用カセット10と離れた位置と、
図8に示すプラテンギア104が出力ギア21に係合した位置との間で揺動可能である。
【0115】
印刷用カセット10のケース35がカセット収納部101に挿入された状態では、駆動シャフト105が挿入孔34Dを貫通して入力ギア22に係合すると共にプラテンギア104が出力ギア21に係合する。
【0116】
具体的には、駆動シャフト105が印刷用カセット10の巻取スプール16及び入力ギア22に挿入された状態で、プラテンローラ103及びプラテンギア104が印刷用カセ
ット10のヘッド開口33Bに向けて揺動することで、プラテンギア104が出力ギア21に係合する。
【0117】
印刷用カセット10が装着された状態で駆動シャフト105により入力ギア22が回転されることで出力ギア21が回転される。さらに、出力ギア21の回転によりプラテンギア104が回転し、プラテンギア104の回転によりプラテンローラ103が回転する。
【0118】
検出部108は、カセット収納部101に装着された印刷用カセット10のRFIDタグ51から識別情報を検出する。検出部108が検出した識別情報は、制御ユニット109に送られる。制御ユニット109は、識別情報に基づいて印刷ヘッド102の印刷周期(つまり加熱のオンオフの切り替え周期)、駆動源107の回転方向等を制御する。
【0119】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)3つの接触部33E,33F,33Gによって印刷用カセット10の挿入方向(つまり上下方向)における位置決め精度を高めることができる。そのため、印刷装置本体100への装着時における印刷装置本体100に対するヘッド開口33Bの位置ずれを抑制できる。
【0120】
(1b)第2接触部33F及び凹部を構成する筒体33Jによって、上下方向における印刷用カセット10の位置決めを行うと同時に、駆動シャフト105から入力される駆動力によるケース35の回転を規制できる。
【0121】
(1c)凹部(つまり筒体33J)が角部に設けられることで、ケース35の回転を的確に規制できる。
(1d)凹部の底面が前後方向及び左右方向との双方と交差する向きに延伸することで、ケース35の回転を的確に規制できる。
【0122】
(1e)第2接触部33Fと第3接触部33Gとが仮想直線S0を挟んで配置されることで、印刷用カセット10の上下方向における位置決め精度を高めることができる。また、3つの接触部33E,33F,33Gの距離を大きくとることができる。
【0123】
(1f)第1規制部によって、印刷用テープ11Aをヘッド開口33Bへ安定して搬送できる。また、第2規制部によって、インクリボン14Aをヘッド開口33Bへ安定して搬送できる。
【0124】
(1g)仮想三角形Tに被押圧部31Bが包含されることで、印刷装置本体100の蓋111から印刷用カセット10に加わる押圧力が3つの接触部33E,33F,33Gのいずれかに偏ることを抑制できる。
【0125】
(1h)第1仮想直線S1、第2仮想直線S2、及び第3仮想直線S3が存在するようにRFIDタグ51が配置されることで、ケース35の回転による検出部108に対するRFIDタグ51の傾き(つまりRFIDタグ51の変位量)が抑制できる。
【0126】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
図9A,9Bに示す印刷用カセット10Aは、
図2Aの印刷用カセット10の第1ケース部32に、凸部32Gを設けたものである。
【0127】
凸部32Gは、ケース35の左側面38Aから左方に突出したリブである。凸部32G
の少なくとも一部は、左右方向において出力ギア21と重なっている。
【0128】
凸部32Gは、カセット収納部101の左内面101A(
図1B参照)に対向し、ケース35のカセット収納部101内における左右方向の位置決めをする。また、ケース35がカセット収納部101に挿入された状態で、凸部32Gは、上下方向と平行な軸周り(具体的には駆動シャフト105の回転軸心L3周り)のケース35の回転を規制する。
【0129】
印刷用カセット10Aでは、凸部32Gによってケース35の回転が規制されるため、第2ケース部33に第1実施形態における筒体33Jが設けられない。印刷用カセット10Aの第2接触部33Fは、第2ケース部33の下面の一部によって構成されている。
【0130】
[2-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)凸部32Gによって、左右方向の位置決めを行いつつ、駆動シャフト105から入力される駆動力によるケース35の回転を規制できる。
【0131】
(2b)凸部32Gが左右方向において出力ギア21と重なることで、出力ギア21のプラテンギア104との噛み合いによる反力を凸部32Gで受けることができる。その結果、上記反力によって印刷用カセット10Aに発生するねじれを抑制できる。
【0132】
[3.第3実施形態]
[3-1.構成]
図10に示す印刷用カセット210は、
図9Aの印刷用カセット10Aにおける第1ケース部32の凸部32Gに代えて、第2ケース部33に凸部33Kを設けたものである。
【0133】
凸部33Kは、第2ケース部33の外面のうち、カッター106と対向する外側面から突出している。具体的には、凸部33Kは、ケース35の右側面において排出口35Aよりも左方(つまり内側)の領域から右方に突出している。
【0134】
ケース35がカセット収納部101に挿入された状態で、凸部33Kは、カッター106と左右方向に対向し、ケース35のカセット収納部101内における左右方向の位置決めをする。また、ケース35がカセット収納部101に挿入された状態で、凸部33Kは、上下方向と平行な軸周りのケース35の回転を規制する。
【0135】
[3-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)凸部33Kによって、カッター106に対する印刷用カセット210の位置精度が高められる。その結果、印刷装置本体100から排出される印刷用テープ11Aにおける切断位置(つまり余白部分の長さ)のバラツキを抑制できる。
【0136】
[4.第4実施形態]
[4-1.構成]
図11に示す印刷用カセット310は、
図9Aの印刷用カセット10Aにおける第1ケース部32の凸部32Gに代えて、第2ケース部33に凸部33Lを設けたものである。
【0137】
凸部33Lは、第2ケース部33の外面のうち、ヘッド開口33Bの内面を構成している部位から突出している。具体的には、凸部33Lは、ヘッド開口33Bの後面から前方に突出している。
【0138】
ケース35がカセット収納部101に挿入された状態で、凸部33Lは、ヒートシンク
102Aと前後方向に対向し、ケース35のカセット収納部101内における前後方向の位置決めをする。また、ケース35がカセット収納部101に挿入された状態で、凸部33Lは、上下方向と平行な軸周りのケース35の回転を規制する。
【0139】
[4-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(4a)凸部33Lによって、印刷ヘッド102に対する印刷用カセット310の位置精度が高められる。その結果、印刷用テープ11Aに加わる圧力及び熱のバラツキに起因する印刷時の色の濃さ、線の太さ等のバラツキを抑制できる。
【0140】
[5.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0141】
(5a)上記実施形態の印刷装置は、インクリボンを用いて印刷するものに限定されない。印刷装置は、印刷用テープの代わりとして帯状の感熱紙を用いてもよい。つまり、印刷用カセットは、必ずしもインクリボンを備えなくてもよい。
【0142】
また、印刷装置は、サーマルヘッドによって印刷パターンの穿孔が行われるステンシルテープを印刷用テープとして用いてもよい。印刷用テープとしてステンシルテープが用いられる場合は、インクリボンに変えて、ステンシルテープを保護する合紙テープが補助テープとして用いられる。
【0143】
この場合、ヘッド開口において、合紙テープはステンシルテープよりも印刷ヘッドに近い位置でステンシルテープに重ね合わせられてもよいし、合紙テープはステンシルテープよりも印刷ヘッドから離れた位置でステンシルテープに重ね合わせられてもよい。
【0144】
(5b)上記実施形態の印刷用カセットにおいて、第1接触部はヘッド開口と重ならない位置に配置されてもよい。第2接触部は、第2ケースの角部以外に配置されてもよい。また、第2接触部は、凹部の底面で構成されなくてもよい。第3接触部は、外側面と離れて配置されてもよい。
【0145】
(5c)第1実施形態の印刷用カセットにおいて、凸部は、必ずしも上下方向と直交する方向において出力ギアと重ならなくてもよい。また、ケースは必ずしも凸部を有しなくてもよい。また、印刷用カセットは、第2実施形態の凸部に加えて、第3実施形態及び/又は第4実施形態の凸部を有してもよい。
【0146】
(5d)上記実施形態の印刷用カセットにおいて、RFIDタグは、ケースの左側面以外の外面に配置されてもよい。また、印刷用カセットは、必ずしもRFIDタグを備えなくてもよい。
【0147】
(5e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0148】
10…印刷用カセット、11…第1ロール、11A…印刷用テープ、
14…第2ロール、14A…インクリボン、16…巻取スプール、21…出力ギア、
31B…被押圧部、32…第1ケース部、32G…凸部、33…第2ケース部、
33B…ヘッド開口、33E…第1接触部、33F…第2接触部、
33G…第3接触部、33I…第1補助壁、33J…筒体、33K,33L…凸部、
34C…第2補助壁、34D…挿入孔、35…ケース、35A…排出口、36…底面、
37…天面、38A…左側面、38B…後側面、51…RFIDタグ、
100…印刷装置本体、101…カセット収納部、101A…左内面、
101B…ピン、101C…リブ、102…印刷ヘッド、102A…ヒートシンク、
105…駆動シャフト、106…カッター、108…読取部。