(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】蓄電システム及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20240820BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20240820BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240820BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240820BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240820BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20240820BHJP
H02J 1/10 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H02J7/34 B
H02J7/34 J
H02J7/35 B
H02J7/00 302C
H02J7/02 J
H02J7/10 P
H02J1/00 306L
H02J1/10
H02J1/00 306M
(21)【出願番号】P 2020171166
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 友寛
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0169083(US,A1)
【文献】国際公開第2016/170811(WO,A1)
【文献】特開2005-224009(JP,A)
【文献】国際公開第2019/145997(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/34
H02J 7/35
H02J 7/00
H02J 7/02
H02J 7/10
H02J 1/00
H02J 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を蓄電する蓄電池が接続された蓄電装置を基本単位とし、DC接続バスに接続された複数の前記蓄電装置が前記DC接続バスのグリッド電圧の制御で自律的に充電または放電を制御する蓄電システムであって、
1以上の前記蓄電装置は、
前記DC接続バスに接続され、電流-電圧ドループ特性を使用して充放電電流を制御する双方向DC/DCコンバータと、
前記双方向DC/DCコンバータで変換された電力を検出する電力検出部と、
前記充放電電流がゼロとなるオフセット電圧が制御領域の中間電圧である前記電流-電圧ドループ特性を基準特性とし、前記電力検出部によって検出された電力と予め設定された電力-電圧ドループ特性とに基づいて算出されるグリッド電圧指令と前記グリッド電圧との偏差に応じて前記基準特性から前記オフセット電圧を移動させた前記電流-電圧ドループ特性を、前記双方向DC/DCコンバータで使用する前記電流-電圧ドループ特性として決定する特性制御部と、を具備することを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
前記電流-電圧ドループ特性は、出力電力の最小値及び最大値が、前記電流-電圧ドループ特性における制御領域の制御下限電圧及び制御上限電圧となる1次関数の演算式による垂下特性をもつことを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記蓄電池の蓄電量としてSOCを算出する蓄電量検出部を具備し、
前記特性制御部は、前記蓄電量検出部によって算出された前記SOCに応じて前記電力‐電圧ドループ特性の傾きを変更させ、前記電力‐電圧ドループ特性を前記SOCで重みづけすることで、前記蓄電装置の蓄電量に応じて充放電電力量を制御することを特徴とする請求項2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記蓄電池の蓄電量としてSOCを算出する蓄電量検出部を具備し、
前記特性制御部は、充電方向では前記電流-電圧ドループ特性の移動速度を前記SOCが少ないほど早く、放電方向では前記電流-電圧ドループ特性の移動速度を前記SOCが多いほど早くそれぞれ制御することを特徴とする請求項2に記載の蓄電システム。
【請求項5】
DC接続バスに接続されて前記DC接続バスのグリッド電圧の制御で自律的に充電または放電を制御する蓄電装置は、
前記DC接続バスに接続され、電流-電圧ドループ特性を使用して充放電電流を自律的に制御する双方向DC/DCコンバータと、
前記双方向DC/DCコンバータで変換された電力を検出する電力検出部と、
前記充放電電流がゼロとなるオフセット電圧が制御領域の中間電圧である前記電流-電圧ドループ特性を基準特性とし、前記電力検出部によって検出された電力と予め設定された電力-電圧ドループ特性とに基づいて算出されるグリッド電圧指令と前記グリッド電圧との偏差に応じて前記基準特性から前記オフセット電圧を移動させた前記電流-電圧ドループ特性を、前記双方向DC/DCコンバータで使用する前記電流-電圧ドループ特性として決定する特性制御部と、を具備することを特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散設置された複数の電力蓄電装置間で電力融通を行う蓄電システム及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギーの利用方法として、系統連系ではなく自己消費(自家消費)システムへのシフトが予想されている。自己消費システムとしては、例えば、防災拠点において、太陽電池装置で発電された電力を蓄電する蓄電装置が考えられる。
【0003】
そこで、本出願人は、DCグリッドに接続された双方向DC/DCコンバータを放電用と充電用とに切り換えて設定するだけで、各蓄電装置間の電力融通を制御することができ、エネルギーの利用効率が高く、リスク低減された安価なシステムを提案した(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、充電設定時と放電設定時とで異なる充電ドループ特性と放電ドループ特性とをそれぞれ用いて、充電設定時に充電電流がゼロになる制御下限電圧と放電設定時に放電電流がゼロになる制御上限電圧との間をグリッド電圧の制御範囲として運用している。しかしながら、DC接続バスへの負荷機器や発電機器の接続によるDCグリッドの負荷変動に対応することができず、グリッド電圧を制御範囲に抑制できなくなるという問題点があった。
【0006】
すなわち、グリッド電圧が下限電圧を下回ってしまうDCグリッドの負荷変動に対して、充電設定されている蓄電装置は対応することできず、グリッド電圧を制御範囲に抑制できなくなってしまう。また、グリッド電圧が上限電圧を上回ってしまうとDCグリッドの負荷変動に対して、放電設定されている蓄電装置は対応することできず、グリッド電圧を制御範囲に抑制できなくなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、従来技術の上記問題を解決し、DC接続バスの負荷変動に対応してグリッド電圧を制御範囲内で追従させることができる蓄電システム及び蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の蓄電システムは、直流電力を蓄電する蓄電池が接続された蓄電装置を基本単位とし、DC接続バスに接続された複数の前記蓄電装置が前記DC接続バスのグリッド電圧の制御で自律的に充電または放電を制御する蓄電システムであって、1以上の前記蓄電装置は、前記DC接続バスに接続され、電流-電圧ドループ特性を使用して充放電電流を制御する双方向DC/DCコンバータと、前記双方向DC/DCコンバータで変換された電力を検出する電力検出部と、前記充放電電流がゼロとなるオフセット電圧が制御領域の中間電圧である前記電流-電圧ドループ特性を基準特性とし、前記電力検出部によって検出された電力と予め設定された電力-電圧ドループ特性とに基づいて算出されるグリッド電圧指令と前記グリッド電圧との偏差に応じて前記基準特性から前記オフセット電圧を移動させた前記電流-電圧ドループ特性を、前記双方向DC/DCコンバータで使用する前記電流-電圧ドループ特性として決定する特性制御部と、を具備することを特徴とする。
また、本発明の蓄電装置は、DC接続バスに接続されて前記DC接続バスのグリッド電圧の制御で自律的に充電または放電を制御する蓄電装置は、前記DC接続バスに接続され、電流-電圧ドループ特性を使用して充放電電流を自律的に制御する双方向DC/DCコンバータと、前記双方向DC/DCコンバータで変換された電力を検出する電力検出部と、前記充放電電流がゼロとなるオフセット電圧が制御領域の中間電圧である前記電流-電圧ドループ特性を基準特性とし、前記電力検出部によって検出された電力と予め設定された電力-電圧ドループ特性とに基づいて算出されるグリッド電圧指令と前記グリッド電圧との偏差に応じて前記基準特性から前記オフセット電圧を移動させた前記電流-電圧ドループ特性を、前記双方向DC/DCコンバータで使用する前記電流-電圧ドループ特性として決定する特性制御部と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドループ制御の基準を制御領域の中心に設定した電流-電圧ドループ特性によって、充放電方向にシームレスで対応可能に制御することできるため、DC接続バスの負荷変動に対応してグリッド電圧を制御範囲内で追従させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る蓄電システムの実施の形態の構成例を示す構成図である。
【
図2】
図1に示す蓄電装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示すDC接続バスに接続された蓄電装置をモデル化した図である。
【
図4】
図3に示すモデルにおいて負荷やオフセット電圧の変動に伴うグリッド電圧の変動を示すグラフである。
【
図5】
図1に示す蓄電装置の動作を説明する説明図である。
【
図6】
図2に示す特性制御部の構成を示すブロック図である。
【
図7】
図2に示す特性制御部によるドループ特性決定動作を説明する図である。
【
図8】
図6に示すK
soc=の算出例を示す図である。
【
図9】本発明に係る蓄電システムにおける放電方向の動作を説明する図である。
【
図10】本発明に係る蓄電システムにおける充電方向の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態において、同様の機能を示す構成には、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0012】
本実施の形態は、
図1を参照すると、蓄電池2が接続された蓄電装置1を1つの基本単位として、複数の蓄電装置1をDC接続バス20で並列に接続し、蓄電装置1間の電力融通を実施する蓄電システムである。なお、DC接続バス20は、無電源地域や防災地区等を想定しており、安定した電源(電力系統等)に接続されておらず、低インピーダンスのDCグリッドを形成している。また、
図1には、N台の蓄電装置1をDC接続バス20に接続した例が示されており、DC接続バス20に接続する蓄電装置1の台数には制限はない。
【0013】
図2を参照すると、蓄電装置1は、グリッド接続端子T1と、蓄電池接続端子T2と、PV接続端子T3と、負荷接続端子T4とをそれぞれ備えている。
【0014】
グリッド接続端子T1は、DC接続バス20に接続され、直流電力を送受電する端子である。蓄電池接続端子T2は、接続された蓄電池2の充放電用の端子である。PV接続端子T3は、接続箱31を介して接続された太陽電池3によって発電された直流電力を受電する端子である。負荷接続端子T4は、接続された負荷4に電力を供給する端子である。
【0015】
蓄電装置1は、
図2を参照すると、第1双方向DC/DCコンバータ11(以下、第1DC/DC11と称す)と、第2双方向DC/DCコンバータ12(以下、第2DC/DC12と称す)と、MPPTDC/DCコンバータ13と、PCS14と、電流センサ15と、電力検出部16と、蓄電量検出部17と、特性制御部18とを備えている。そして、第1DC/DC11と、第2DC/DC12と、MPPTDC/DCコンバータ13及びPCS14は、DCリンク19を介して接続されている。
【0016】
第2DC/DC12は、蓄電池接続端子T2とDCリンク19との間に接続され、DCリンク19のDCリンク電圧一定制御(固定値制御)で蓄電池2を充放電する充放電器である。第2DC/DC12は、蓄電池2を充電する際、DCリンク19の直流電圧を蓄電池2の充電に適した電圧に変換して蓄電池2への充電を行う。また、第2DC/DC12は、蓄電池2から放電する際、蓄電池2の直流電圧をDCリンク19の直流電圧に変換して蓄電池2からの放電を行う。
【0017】
MPPTDC/DCコンバータ13は、PV接続端子T3とDCリンク19との間に接続され、太陽電池3によって発電された直流電力を受電する最大電力点追従方式(MPPT:Maximum Power Point Tracking)のDC/DCコンバータである。MPPTDC/DCコンバータ13は、太陽電池3から受電した直流電力をDCリンク19に出力する。
【0018】
PCS14は、負荷接続端子T4とDCリンク19との間に接続され、DCリンク19の直流電圧を負荷4に適した電力に変換して負荷4に供給するパワーコンディショナシステムである。
【0019】
電流センサ15は、蓄電池2が充放電される際の充放電電流を検出して蓄電量検出部17に出力する。
【0020】
電力検出部16は、第1DC/DC11に接続され、第1DC/DC11で変換された電力POUTを検出し、検出された電力POUTとグリッド電圧Vgridとを特性制御部18に出力する。なお、本実施の形態において電力検出部16は、充電方向の電力POUTを正とし、放電方向の電力POUTを負として検出する。
【0021】
蓄電量検出部17は、蓄電池2の蓄電量の検出として、電流センサ15によって検出された蓄電池2の充放電電流に基づいて、SOC(SOC:State of charge)を算出する。蓄電量検出部17は、蓄電池2の充電電流と、放電電流とそれぞれ積算し、その差分値に基づいてSOCを算出する。なお、蓄電量は、蓄電池2の端子電圧等に基づいて検出しても良い。
【0022】
特性制御部18は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータ等の情報処理部である。ROMには制御プログラムが記憶されている。特性制御部18のCPUは、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、制御プログラムをRAMに展開させることで動作する。
【0023】
特性制御部18は、電力検出部16によって検出された電力POUTと、蓄電量検出部17によって算出されたSOCとに基づいて、一次関数の演算式による垂下特性を有する電流-電圧ドループ特性を決定する。
【0024】
第1DC/DC11は、グリッド接続端子T1とDCリンク19との間に接続され、特性制御部18によって決定された電流-電圧ドループ特性に基づいて、DC接続バス20の電圧(以下、グリッド電圧と称す)に応じて充放電電流を自律的に制御する。
【0025】
まず、本実施の形態の蓄電システムにおける制御モデルについて
図3乃至
図5を参照して詳細に説明する。
図3(a)は、DC接続バス20に接続されたN台の蓄電装置1をモデル化したものである。
図3(a)において、i
1~i
Nは、N台の蓄電装置1それぞれの充放電電流であり、Rは、電流-電圧ドループ特性の傾きとなる仮想抵抗値である。そして、Vof
1~Vof
Nは、DC接続バス20のグリッド電圧Vgridとi
1~i
NとRとから導出されるN台の蓄電装置1それぞれのオフセット電圧である。
【0026】
図3(a)のモデルによると、k台目の蓄電装置1における充放電電流i
kは、
i
k=Vgrid/R-Vof
k/R
となり、
N台の蓄電装置1の合計充放電電流iΣは、Vof
1~Vof
Nの平均をVof
avrとすると、
iΣ=N×Vgrid/R-N×Vof
avr/R
となる。
【0027】
従って、系全体のモデルは、
図3(b)で表すことができ、系全体ドループ特性は、
図3(c)に示す系全体のブロック図のように
Vgrid=(R/N)×iΣ+Vof
avr
となる。なお、
図3(b)に示すi
LOADは、DC接続バス20に接続された負荷電流であり、
iΣ=-i
LOAD
の関係である。
【0028】
これにより、負荷電流i
LOADの変化量Δi
LOADが与えるグリッド電圧Vgridの変動量ΔVgridは、
ΔVgrid=(R/N)×ΔiΣ
となって、変化量Δi
LOADにより発生する変動量ΔVgridは、
図4(a)に示すように単機の動作特性にも同量の電圧変動として現れる。
【0029】
また、系全体のオフセット電圧Vofの変化量Vof
avrが与えるグリッド電圧Vgridの変動量ΔVgridは、
ΔVgrid=ΔVof
avr
となって、変化量Vof
avrにより発生する変動量ΔVgridは、
図4(b)に示すように単機の動作特性にも同量の電圧変動として現れる。
【0030】
そこで、本実施の形態では、
図5(a)に点線で示すように、充放電電流がゼロとなるオフセット電圧Vofがドループ制御領域(制御下限電圧Vc
min-制御上限電圧Vc
max)の中間電圧Vc
midである電流-電圧ドループ特性を基準特性として、負荷電流の両極性の変化にシームレスで対応できるようにした。そして、
図5(b)に示すように、外乱(負荷および系の変動)に起因する変化量Δi
LOADや変化量Vof
avrが与える変動量ΔVgridを単機の蓄電装置1において電流-電圧ドループ特性のオフセット電圧Vofを基準特性(中間電圧Vc
mid)から
図5(a)に実線で示すように移動制御することで任意のグリッド電圧Vgridにコントロールする。なお、
図5(a)に示す一点鎖線は、移動制御された単機のドループ特性を合計した系全体のドループ特性であり、グリッド電圧Vgridは、系全体のドループ特性と負荷電流i
LOADとの交点にコントロールされる。
【0031】
次に、特性制御部18によるドループ特性決定動作を
図6乃至
図8を参照して詳細に説明する。
特性制御部18は、
図6を参照すると、電力検出部16によって検出された電力P
OUTと、蓄電量検出部17によって算出されたSOCとに基づいて、グリッド電圧指令Vgrid
*を算出するグリッド電圧算出部181と、グリッド電圧指令Vgrid
*と、フィードバックされたグリッド電圧Vgridとの偏差に基づいて、オフセット電圧指令Vof
*を算出するオフセット電圧算出部182とを備えている。
【0032】
グリッド電圧算出部181には、
図7に示すように、出力電力の最小値Pc
min及び最大値Pc
maxが、電流-電圧ドループ特性における制御領域の制御下限電圧Vc
min及び制御上限電圧Vc
maxとなる1次関数の演算式による垂下特性をもつ電力‐電圧ドループ特性が設定されている。グリッド電圧算出部181は、この電力‐電圧ドループ特性を用いることでグリッド電圧指令Vgrid
*を
Vgrid
*=
(1/K
soc)×[(Vc
max-Vc
min)/(Pc
max-Pc
min)]×P
OUT+Vc
mid
によって算出する。これにより、電力検出部16によって検出された電力P
OUTに応じて、充電時はグリッド電圧指令Vgrid
*が中間電圧Vc
midから制御上限電圧Vc
maxの方向へ,放電時はグリッド電圧指令Vgrid
*が中間電圧Vc
midから制御下限電圧Vc
minの方向へそれぞれ操作される。
【0033】
(1/K
soc)は、電力‐電圧ドループ特性を蓄電量検出部17によって算出されたSOCで重みづけするための係数である。本実施の形態において、K
socは、
図8に示すように、SOCに基づいて.555以上1.0以下の値に算出される。そして、K
socは、電力P
OUTの極性を用いて演算式を変え、電力P
OUTが正で充電方向である場合、蓄電量が少ないほど小さい値となり、電力P
OUTが負で放電方向である場合、蓄電量が多いほど小さい値となる。従って、電力P
OUTが正で充電方向である場合、蓄電量が少ないほど電力‐電圧ドループ特性の傾きが大きくなるため、算出されるグリッド電圧指令Vgrid
*は、蓄電量が多い蓄電装置1よりも蓄電量が少ない蓄電装置1の方が大きい値となる。また、電力P
OUTが負で放電方向である場合、蓄電量が多いほど電力‐電圧ドループ特性の傾きが大きくなるため、算出されるグリッド電圧指令Vgrid
*は、蓄電量が多い蓄電装置1よりも蓄電量が少ない蓄電装置1の方が大きい値となる。
【0034】
オフセット電圧算出部182は、グリッド電圧指令Vgrid*と、フィードバックされたグリッド電圧Vgridとの偏差を積分した値に中間電圧Vcmidを加算することで、電流-電圧ドループ特性を決定するオフセット電圧指令Vof*を算出する。
【0035】
オフセット電圧算出部182によって算出されたオフセット電圧指令Vof*は、第1DC/DC11に出力され、第1DC/DC11は、決定された電流-電圧ドループ特性に基づいて、DC接続バス20の電圧(以下、グリッド電圧と称す)に応じて充放電電流を自律的に制御する。
【0036】
このように、電流-電圧ドループ特性によるドループ制御の基準を制御領域の中心に設定し、充放電方向にシームレスで対応可能に制御することで、DC接続バス20の負荷変動に対応してグリッド電圧Vgridを制御範囲内に追従させることができる。
【0037】
そして、電力‐電圧ドループ特性をSOCで重みづけすることで、蓄電装置1の蓄電量に応じて充放電電力量を制御することができ、DC接続バス20に接続された蓄電装置1間の蓄電量を平均化して蓄電システムを最適に運用することができる。
【0038】
図9(a)に示すように、蓄電量が少ない(放電方向でK
soc=1.000)の蓄電装置1aと、蓄電量が多い(放電方向でK
soc=0.555)の蓄電装置1bとをDC接続バス20に接続した状態で、DC接続バス20に電流源30を接続してDC接続バス20から電流源30の方向に流れる電流i
cuを印加するシミュレーションを実施した。電流i
cuは、10[sec]に2.7Aを流し、30[sec]に1.0Aに変更した。
【0039】
その結果、
図9(b)に示すように、電流i
cuの印加によって生じるグリッド電圧Vgridの変動が抑制され、
図9(c)に示すように、K
soc(SOC)に依存した分担比率(1/1.000:1/0.555)で放電が実施されることが分かる。
【0040】
また、
図10(a)に示すように、蓄電量が少ない(充電方向でK
soc=0.555)の蓄電装置1aと、蓄電量が多い(充電方向でK
soc=1.000)の蓄電装置1bとをDC接続バス20に接続した状態で、DC接続バス20に電流源30aを接続して電流源30aからDC接続バス20の方向に流れる電流i
cuを印加するシミュレーションを実施した。電流i
cuは、10[sec]に2.6Aを流し、30[sec]に1.0Aに変更した。
【0041】
その結果、
図10(b)に示すように、電流i
cuの印加によって生じるグリッド電圧Vgridの変動が抑制され、
図10(c)に示すように、K
soc(SOC)に依存した分担比率(1/0.555:1/1.000)で充電が実施されることが分かる。
【0042】
すなわち、グリッド電圧Vgridは、蓄電装置1a、1bでも共通である。そのため、電力分担比率は電流分担比率でもある(電力=電圧×電流)。従って、Ksoc(SOC)に応じて、電力‐電圧ドループ特性の傾きを可変させることで、電力の分担比率が変更される。
【0043】
なお、本実施の形態の蓄電システムでは、1台以上の蓄電装置1がDC接続バス20接続されていれば、所定の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の蓄電装置1は、グリッド電圧に応じて充放電電流を自律的に制御する他構成の蓄電装置(例えば、特許文献1の蓄電装置)と並列に接続して用いることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態によれば、直流電力を蓄電する蓄電池2が接続された蓄電装置1を基本単位とし、DC接続バス20に接続された複数の蓄電装置1がDC接続バス20のグリッド電圧Vgridの制御で自律的に充電または放電を制御する蓄電システムであって、1以上の蓄電装置1は、DC接続バス20に接続され、電流-電圧ドループ特性を使用して充放電電流を制御する第1DC/DC11(双方向DC/DCコンバータ)と、第1DC/DC11で変換された電力を検出する電力検出部16と、充放電電流がゼロとなるオフセット電圧Vofが制御領域の中間電圧Vcmidである電流-電圧ドループ特性を基準特性とし、電力検出部16によって検出された電力と予め設定された電力-電圧ドループ特性とに基づいて算出されるグリッド電圧指令Vgrid*とグリッド電圧Vgridとの偏差に応じて基準特性からオフセット電圧Vofを移動させた電流-電圧ドループ特性を、第1DC/DC11で使用する電流-電圧ドループ特性として決定する特性制御部18とを備える。
この構成により、ドループ制御の基準を制御領域の中心に設定した電流-電圧ドループ特性によって、充放電方向にシームレスで対応可能に制御することできるため、DC接続バス20の負荷変動に対応してグリッド電圧Vgridを制御範囲内で追従させることができる。
【0045】
さらに、本実施の形態によれば、電流-電圧ドループ特性は、出力電力の最小値Pcmin及び最大値Pcmaxが、電流-電圧ドループ特性における制御領域の制御下限電圧Vcmin及び制御上限電圧Vcmaxとなる1次関数の演算式による垂下特性をもつ。
この構成により、簡単な制御で負荷変動に対応することができる。
【0046】
さらに、本実施の形態によれば、蓄電池2の蓄電量としてSOCを算出する蓄電量検出部17を備え、特性制御部18は、蓄電量検出部17によって算出されたSOCに応じて電力‐電圧ドループ特性の傾きを変更させ、電力‐電圧ドループ特性をSOCで重みづけすることで、蓄電装置1の蓄電量に応じて充放電電力量を制御する。
この構成により、蓄電量に応じて充放電電流を制御することができ、DC接続バス20に接続した蓄電装置1間の蓄電量の平均化を実施することができる。
【0047】
さらに、本実施の形態によれば、特性制御部18は、電力-電圧ドループ特性の傾きを変更させる代わりに、充電方向では電流-電圧ドループ特性の移動速度をSOCが少ないほど早く、放電方向では電流-電圧ドループ特性の移動速度をSOCが多いほど早くそれぞれ制御する。
この構成により、DC接続バス20に接続された蓄電装置1の充放電電流を利用し、DC接続バス20に接続した蓄電装置1間の蓄電量の平均化を実施することができる。
【0048】
以上、本発明を具体的な実施形態で説明したが、上記実施形態は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
1、1a、1b 蓄電装置
2 蓄電池
3 太陽電池
4 負荷
11 第1DC/DC(第1双方向DC/DCコンバータ)
12 第2DC/DC(第2双方向DC/DCコンバータ)
13 MPPTDC/DCコンバータ
14 PCS
15 電流センサ
16 電力検出部
17 蓄電量検出部
18 特性制御部
19 DCリンク
20 DC接続バス
30 30a 電流源
31 接続箱
181 グリッド電圧算出部
182 オフセット電圧算出部
T1 グリッド接続端子
T2 蓄電池接続端子
T3 PV接続端子
T4 負荷接続端子