(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/00 20060101AFI20240820BHJP
F21S 45/50 20180101ALI20240820BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20240820BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20240820BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20240820BHJP
F21W 103/35 20180101ALN20240820BHJP
F21W 103/45 20180101ALN20240820BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20240820BHJP
【FI】
B60Q1/00 E
F21S45/50
F21W102:00
F21W103:00
F21W103:20
F21W103:35
F21W103:45
F21Y101:00
(21)【出願番号】P 2020172493
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】稲村 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 ひとみ
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-128935(JP,U)
【文献】特開昭63-062102(JP,A)
【文献】実開平06-084604(JP,U)
【文献】米国特許第05879186(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00
F21S 45/50
F21W 102/00
F21W 103/00
F21W 103/20
F21W 103/35
F21W 103/45
F21Y 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具のハウジングの裏側にて前記ハウジングの内外を貫通する筒状に突出形成され、車両側から延出するコネクタが接続されるソケットと、
前記ハウジングと車体との間に挟装され、前記ソケットが挿通される挿通孔を有するガスケットと、を備え、
前記ソケットの壁部には、前記壁部の一部を前記ハウジング側に向かって切り欠いて前記ハウジングの内外を貫通するとともに前記コネクタの爪部が係止される壁穴が形成され、
前記ハウジングの前記壁穴に隣接する位置には、前記ガスケットの前記壁部に対向する部位を前記車両側へ押圧して前記壁穴を閉塞させるリブが突設され
、
前記ガスケットは、前記挿通孔に対して間隔をあけて、前記挿通孔に沿って設けられた切り込み状のスリットを更に有し、
前記リブは、前記ガスケットのうち前記スリットと前記挿通孔とに挟まれた部位を押圧する
ことを特徴とする、車両用灯具。
【請求項2】
前記リブが、前記スリットの延在方向に間隔をあけて一対設けられる
ことを特徴とする、請求項
1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記ガスケットの厚みが、前記リブの押圧による前記ガスケットの移動量よりも大きい寸法である
ことを特徴とする、請求項1
または2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に取り付けられる車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具と車体との間にガスケットを介装させることで、車両用灯具の内部への進水や異物の進入を防止する構造が知られている。この種の構造では、例えば車両用灯具にリブが突設されるとともに、これに係合する溝がガスケットに凹設される。リブと溝とを係合させることで、車両用灯具に対するガスケットの固定状態が安定し、ガスケットの脱落や位置ずれが防止されうる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用灯具において、ソケットに接続されるコネクタには、ソケットとコネクタとの接合状態を維持するための係止爪が設けられたものが存在する。また、コネクタの周囲を囲むように配置されるソケットの壁部には、係止爪を係止するための壁穴が設けられる。例えば、
図5に示すように、車両用灯具のハウジング50の裏側には、コネクタ53が接続されるソケット51が設けられる。ソケット51は、ハウジング50の内外を貫通する筒状に突出形成される。また、コネクタ53には係止爪54が設けられ、ソケット51の壁部に形成された壁穴52と係止爪54とが係合するように形成される。
【0005】
上記のような構造では、ハウジング50の成型性の問題により、壁穴52からハウジング50の一部分までを切り欠いたような大きな開口部ができてしまう。このような開口部は、例えば
図5に示すように、車両用灯具内の基板56から延びる端子ピン57を保護するためのブラケット58によって閉塞されうる。しかしながら、車両の仕向地や仕様によっては、コスト削減のために車両用灯具への結線を省略する場合(テールランプ無し仕様の場合)がある。この場合、
図5中に示す端子ピン57やブラケット58がなくなるため、開口部が残ってしまい、車両用灯具の内部への進水や異物の進入のおそれがある。
【0006】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、簡素な構成で封止性を改善できるようにした車両用灯具を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の車両用灯具は、車両用灯具のハウジングの裏側にてハウジングの内外を貫通する筒状に突出形成され、車両側から延出するコネクタが接続されるソケットと、ハウジングと車体との間に挟装され、ソケットが挿通される挿通孔を有するガスケットとを備える。ソケットの壁部には、壁部の一部をハウジング側に向かって切り欠いてハウジングの内外を貫通するとともにコネクタの爪部が係止される壁穴が形成される。また、ハウジングの壁穴に隣接する位置には、ガスケットの壁部に対向する部位を車両側へ押圧して壁穴を閉塞させるリブが突設される。ガスケットは、挿通孔に対して間隔をあけて、挿通孔に沿って設けられた切り込み状のスリットを更に有する。リブは、ガスケットのうちスリットと挿通孔とに挟まれた部位を押圧する。
【発明の効果】
【0008】
開示の車両用灯具によれば、簡素な構成で封止性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例としての車両用灯具が適用された車両の斜視図である。
【
図4】(A)~(C)は、実施例及び比較例としての構造を示す模式的な断面図である。
【
図5】比較例としての構造を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1.構成]
図1は、実施例としての車両用灯具1が適用された車両10の斜視図である。車両用灯具1は車体の外表面に取り付けられる。ここでいう車両用灯具1には、例えばフロントコンビネーションランプやリヤコンビネーションランプなどの複合灯具,テールゲートランプ,前照灯(ヘッドライト),後退灯(バックランプ),尾灯(テールランプ),制動灯(ブレーキランプ),方向指示灯(ウインカーランプ)などの灯具が含まれる。
【0011】
図2は、
図1に示された車両用灯具1である左側のテールゲートランプの分解斜視図である。この車両用灯具1は、ハウジング17とその外側を覆う透明な(あるいは半透明の)レンズ18とを備える。車両用灯具1の光源やリフレクターは、ハウジング17とレンズ18とに覆われた空間内に配置される。
図2に示すように、ハウジング17の裏側には、ソケット2,リブ3,開口部4,シールリブ15が設けられる。また、車両用灯具1は、ガスケット5を挟んでテールゲートのアウターパネル12(車体)に固定される。ガスケット5は、ハウジング17とアウターパネル12との間に挟装される板状の封止部材であり、ゴムや樹脂で形成される。
【0012】
ソケット2は、車両10側から延出するワイヤーハーネス8のコネクタ9が接続される部位である。このソケット2は、ハウジング17の裏側において、ハウジング17の内外を貫通する筒状に突出形成される。
図3に示すように、ソケット2には、少なくとも開口部4の周囲の一部分を囲むように立設された壁部19が設けられる。開口部4は、ハウジング17の内外を連通する孔であり、ここを介してハウジング17内の基板や端子ピンにコネクタ9が接続される。開口部4は、上面視(ソケット2をコネクタ9の接続方向に離隔した位置から見た状態)において、壁部19の内側に形成されるだけでなく、壁部19よりも外側に飛び出した孔として形成される。また、壁部19は、コネクタ9の爪部21(ラッチ)が弾性的に係止される壁穴20を有する。壁穴20は開口部4と一体に繋がる形状に形成されている。壁穴20に爪部21を係合させることで、コネクタ9のソケット2への係止状態が良好に維持されるようになっている。
【0013】
図2に示すように、ワイヤーハーネス8は、テールゲートのインナーパネル11とアウターパネル12との間に配索される。また、インナーパネル11にはインナー開口部13が穿孔され、アウターパネル12にはアウター開口部14が穿孔される。これらのインナー開口部13,アウター開口部14は、コネクタ9をソケット2に接続する際の作業孔として利用される開口部であり、ソケット2の近傍に設けられる。
【0014】
リブ3は、開口部4及び壁部19に隣接してハウジング17の裏側に突設される部位である。このリブ3は、ハウジング17の壁穴20に隣接する位置に設けられ、壁部19の壁穴20が閉塞されるようにガスケット5を車両側へと押圧する機能を持つ。
図2に示すように、リブ3は後述するスリット7の延在方向(縦方向)に間隔をあけて一対設けられる。なお、リブ3の先端形状は、ガスケット5の表面に面接触するように平面状に形成される。
【0015】
シールリブ15は、ソケット2の周囲を囲むようにハウジング17の裏側に突設された土手状の部位である。シールリブ15の全体形状は、
図2に示すように、環状である。ガスケット5は、シールリブ15に押圧されてテールゲートのアウターパネル12に対して圧着されるようになっている。これにより、ソケット2の周囲が好適に封止される。なお、シールリブ15の先端形状についても、ガスケット5の表面に面接触するように平面状に形成される。
【0016】
ガスケット5は、ソケット2が挿通される挿通孔6と、挿通孔6に対して間隔をあけて、挿通孔6に沿って設けられる切り込み状のスリット7とを有する。挿通孔6は、ハウジング17の裏側のソケット2をその正面から見たときの形状(壁部19の外周縁に対応する形状)に穿孔された孔であり、ほぼ四角形状である。また、スリット7は、ほぼ四角形状の挿通孔6の長辺に対して間隔をあけて設けられた細隙である。挿通孔6とスリット7とに挟まれた部位は、リブ3によって押圧される。
図2に示す例ではスリット7の形状が円弧状になっているが、スリット7を直線状に形成してもよいし、円弧以外の曲線状に形成してもよい。
【0017】
図4(A)に示すように、ガスケット5の厚みt
1は、リブ3によって押圧されたことによるガスケット5の移動量t
2よりも大きい寸法に設定される。言い換えれば、リブ3がガスケット5を押圧したときの移動量t
2は、ガスケット5の厚みt
1よりも小さく設定される。したがって、ハウジング17の裏面を基準としたときのリブ3の突出量は、シールリブ15の突出量とガスケット5の厚みt
1との合計よりも小さくなる。
【0018】
[2.作用,効果]
(1)上記の車両用灯具1には、車両側から延出するコネクタ9が接続されるソケット2とガスケット5とリブ3とが設けられる。ソケット2は、ハウジング17の裏側において、ハウジング17の内外を貫通する筒状に突出形成される。ガスケット5は、ソケット2が挿通される挿通孔6を有し、ハウジング17とアウターパネル12との間に挟装される。ソケット2の壁部19には、壁部19の一部をハウジング17側に向かって切り欠いてハウジング17を貫通して形成された、コネクタ9の爪部21が係止される壁穴20が設けられる。また、ハウジング17におけるソケット2の壁穴20に隣接する位置には、ガスケット5の壁部19に対向する部位を車両側へ押圧して壁穴20を閉塞させるリブが突設される。これにより、
図4(A)に示すように、簡素な構成で壁穴20をガスケット5で塞ぐことができるとともに、車両用灯具1の内部への進水や異物の進入を防止することができ、封止性を改善できる。
【0019】
図4(B)は、リブ3やスリット7がない場合のソケット2まわりの構造を示す断面図である。この場合、ガスケット5がリブ3によって押圧されず、壁穴20が開放された状態となり、ガスケット5の端部に隙間ができる。この隙間は、
図4(B)中に白抜き矢印で示すように、車両用灯具1の内部への進水や異物の進入の要因となりうる。このような構造に比して、上記の車両用灯具1では、ガスケット5の端部が壁部19の壁穴20を覆う位置まで移動するため、隙間が生じることなく封止性能が維持される。なお、ガスケット5の端部による壁穴20の閉塞作用は、
図5に示すような端子ピン57やブラケット58がない場合であっても有効である。したがって、車両の仕向地や仕様にかかわらず、封止性を改善できる。
【0020】
(2)上記のガスケット5には、ソケット2が挿通される挿通孔6と、挿通孔6に対して間隔をあけて設けられる切り込み状のスリット7とが設けられる。また、ガスケット5のうち、スリット7と挿通孔6とに挟まれた部位がリブ3によって押圧されるようになっている。このような構造により、
図2に示すように、スリット7と挿通孔6とに挟まれた部位を無理なくスライド移動させることができ、容易に開口部4や壁穴20をガスケット5で塞ぐことができる。
【0021】
(3)上記のリブ3は、スリット7の延在方向に間隔をあけて一対設けられる。これにより、ガスケット5のうち、スリット7と挿通孔6とに挟まれた部位をほぼ均一に押圧することができ、壁穴20の全体を容易に閉塞することができる。したがって、車両用灯具1の内部への進水や異物の進入をより確実に防止することができる。
【0022】
(4)ガスケット5の厚みt1は、リブ3の押圧によるガスケット5の移動量t2よりも大きい寸法に設定される。これにより、スリット7が閉鎖された状態を維持しつつ、スリット7と挿通孔6とに挟まれた部位をスライド移動させることができ、封止性能を向上させることができる。
【0023】
[3.変形例]
上記の実施例はあくまでも例示に過ぎず、本実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施例の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせることができる。例えば、上述の実施例のスリット7は省略可能である。少なくともハウジング17の壁穴20に隣接する位置にリブ3を形成しておくことで、
図4(C)に示すように、簡素な構成でソケット2の周囲の開口部4や壁穴20をガスケット5で塞ぐことができ、車両用灯具1の内部への進水や異物の進入を防止することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 車両用灯具
2 ソケット
3 リブ
4 開口部
5 ガスケット
6 挿通孔
7 スリット
8 ワイヤーハーネス
9 コネクタ
10 車両
11 インナーパネル
12 アウターパネル(車体)
13 インナー開口部
14 アウター開口部
15 シールリブ
17 ハウジング
18 レンズ
19 壁部
20 壁穴
21 爪部