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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】クランプ及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20240820BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240820BHJP
   F16B 5/06 20060101ALI20240820BHJP
   F16B 2/22 20060101ALI20240820BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20240820BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240820BHJP
   H02G 3/32 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H02G3/30
H01B7/00 301
F16B5/06 C
F16B2/22 C
F16B2/08 C
B60R16/02 623H
B60R16/02 620A
H02G3/32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020172952
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064367
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】堺 達郎
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-087101(JP,U)
【文献】特開2011-024356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
H02G 3/32
H01B 7/00
F16B 5/06
F16B 2/22
F16B 2/08
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共に扁平な断面形状を有する芯線を備えるとともに並列する2つの電線に対して適用され、固定対象に固定可能に構成されるとともに前記2つの電線を保持するクランプであって、
前記固定対象に固定される固定部材と、
前記固定部材に着脱可能に設けられ、前記2つの電線を個別に保持する2つの保持部材と、を備え、
前記固定部材は、前記2つの電線が並列する方向に間隔をおいて設けられた2つの挿入孔を有しており、
前記保持部材の各々は、前記電線を保持する保持部と、前記挿入孔に挿入される軸部と、前記保持部と前記軸部とを連結する連結部と、を有している、
クランプ。
【請求項2】
前記挿入孔の各々は、前記軸部に係合して前記軸部の回転を規制する規制部を有している、
請求項に記載のクランプ。
【請求項3】
前記保持部は、前記電線と共にテープ巻きされることで前記電線を保持するものである、
請求項または請求項に記載のクランプ。
【請求項4】
芯線を備えるとともに並列する2つの電線と、固定対象に固定可能に構成されるとともに前記2つの電線を保持するクランプと、を備えるワイヤハーネスであって、
前記芯線の各々の長さ方向に直交する断面形状は、幅方向の寸法に対して厚さ方向の寸法が小さい扁平形状であり、
前記クランプは、
前記固定対象に固定される固定部材と、
前記固定部材に着脱可能に設けられ、前記2つの電線を個別に保持する2つの保持部材と、を備え、
前記クランプは、第1クランプと、第2クランプと、を含み、
前記第1クランプは、前記2つの電線のうち、前記2つの電線の前記芯線が互いの前記幅方向において並列している部分を保持しており、
前記第2クランプは、前記2つの電線のうち、前記2つの電線の前記芯線が互いの前記厚さ方向において並列している部分を保持している、
ワイヤハーネス。
【請求項5】
前記クランプは、第3クランプを含み、
前記第3クランプは、前記2つの電線のうち、前記第1クランプにより保持される部分と、前記第2クランプにより保持される部分との間の部分であって、前記2つの電線の前記芯線が前記固定部材から離れるほど互いの距離が変化するように前記固定部材に対して傾斜している部分を保持している、
請求項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クランプ及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、並列する複数の電線と、複数の電線を一括して保持するクランプとを備えるワイヤハーネスが開示されている。電線は、芯線と芯線の外周を被覆する絶縁被覆とを有している。芯線の長さ方向に直交する断面形状は、幅方向の寸法に対して厚さ方向の寸法が小さい扁平形状をなしている。
【0003】
こうしたワイヤハーネスは、例えば、車両の床下において、車両の前後方向に直線状に延びる部分と、上記直線状に延びる部分から車幅方向に屈曲される部分と、上記直線状に延びる部分から上下方向に屈曲される部分とを有している。ワイヤハーネスが屈曲される部分においては、芯線が塑性変形するように屈曲されている。これにより、ワイヤハーネスの姿勢が、その配索経路に沿った状態で維持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-21556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、断面形状が扁平形状をなす芯線は、厚さ方向に屈曲させることは容易である一方、幅方向に屈曲させることは困難である。芯線を容易に屈曲させるためには、ワイヤハーネスが上下方向に屈曲される部分の直前においては、上下方向と芯線の各々の厚さ方向とを一致させるとともに、ワイヤハーネスが左右方向に屈曲される部分の直前においては、左右方向と芯線の各々の厚さ方向とを一致させることが好ましい。
【0006】
しかしながら、こうしたワイヤハーネスでは、電線の姿勢が互いに異なる複数の部分が存在する。このため、電線の姿勢が互いに異なる複数の部分にそれぞれ対応した形状を有する複数種類のクランプを準備する必要がある。
【0007】
本開示の目的は、汎用性を高めることができるクランプ及びワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のクランプは、共に扁平な断面形状を有する芯線を備えるとともに並列する2つの電線に対して適用され、固定対象に固定可能に構成されるとともに前記2つの電線を保持するクランプであって、前記固定対象に固定される固定部材と、前記固定部材に着脱可能に設けられ、前記2つの電線を個別に保持する2つの保持部材と、を備える。
【0009】
本開示のワイヤハーネスは、芯線を備えるとともに並列する2つの電線と、固定対象に固定可能に構成されるとともに前記2つの電線を保持するクランプと、を備えるワイヤハーネスであって、前記芯線の各々の長さ方向に直交する断面形状は、幅方向の寸法に対して厚さ方向の寸法が小さい扁平形状であり、前記クランプは、固定対象に固定される固定部材と、前記固定部材に着脱可能に設けられ、前記2つの電線を個別に保持する2つの保持部材と、を備え、前記クランプは、第1クランプと、第2クランプと、を含み、前記第1クランプにおける前記保持部材の各々は、前記2つの電線のうち、前記2つの電線の前記芯線が互いの前記幅方向において並列している部分を保持しており、前記第2クランプにおける前記保持部材の各々は、前記2つの電線のうち、前記2つの電線の前記芯線が互いの前記厚さ方向において並列している部分を保持している。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、汎用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態のワイヤハーネスが配索された車両を示す模式図である。
図2図2は、ワイヤハーネスの平面図である。
図3図3は、図1の3-3線に沿った断面図である。
図4図4は、固定部材と保持部材とを分離して示すクランプの平面図である。
図5図5は、図2の5-5線に沿った断面図である。
図6図6は、図1の6-6線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示のクランプは、共に扁平な断面形状を有する芯線を備えるとともに並列する2つの電線に対して適用され、固定対象に固定可能に構成されるとともに前記2つの電線を保持するクランプであって、前記固定対象に固定される固定部材と、前記固定部材に着脱可能に設けられ、前記2つの電線を個別に保持する2つの保持部材と、を備える。
【0013】
同構成によれば、2つの保持部材を固定部材に対して着脱することができる。このため、2つの電線の姿勢に対応した形状を有する2つの保持部材を適宜選択することで、固定部材の共通化を図ることができる。したがって、クランプの汎用性を高めることができる。
【0014】
[2]前記固定部材は、前記2つの電線が並列する方向に間隔をおいて設けられた2つの挿入孔を有しており、前記保持部材の各々は、前記電線を保持する保持部と、前記挿入孔に挿入される軸部と、前記保持部と前記軸部とを連結する連結部と、を有していることが好ましい。
【0015】
同構成によれば、例えば軸部に対する連結部のなす角度を変更するなど、連結部の構成を適宜設定することにより、2つの電線の姿勢に対応した形状を有する2つの保持部材を容易に具現化することができる。
【0016】
[3]前記挿入孔の各々は、前記軸部に係合して前記軸部の回転を規制する規制部を有していることが好ましい。
同構成によれば、挿入孔は、軸部の回転を規制する規制部を有しているため、固定部材に対して保持部材の各々が位置決めされる。したがって、2つの電線を所望の姿勢にて安定して保持することができる。
【0017】
[4]前記保持部は、前記電線と共にテープ巻きされることで前記電線を保持するものであることが好ましい。
同構成によれば、電線と保持部とが共にテープ巻きされることで、電線が保持部材によって保持される。このため、クランプは、外形寸法が異なる複数種類の電線を保持することができる。したがって、クランプの汎用性を一層高めることができる。
【0018】
また、上記構成によれば、保持部材が固定部材に対して着脱できることから、固定部材に保持部材が取り付けられていない状態において保持部と電線とをテープ巻きした後に、保持部材を固定部材に取り付けることができる。このため、クランプを電線に組み付ける際の作業性を向上させることができる。
【0019】
[5]本開示のワイヤハーネスは、芯線を備えるとともに並列する2つの電線と、固定対象に固定可能に構成されるとともに前記2つの電線を保持するクランプと、を備えるワイヤハーネスであって、前記芯線の各々の長さ方向に直交する断面形状は、幅方向の寸法に対して厚さ方向の寸法が小さい扁平形状であり、前記クランプは、固定対象に固定される固定部材と、前記固定部材に着脱可能に設けられ、前記2つの電線を個別に保持する2つの保持部材と、を備え、前記クランプは、第1クランプと、第2クランプと、を含み、前記第1クランプは、前記2つの電線のうち、前記2つの電線の前記芯線が互いの前記幅方向において並列している部分を保持しており、前記第2クランプは、前記2つの電線のうち、前記2つの電線の前記芯線が互いの前記厚さ方向において並列している部分を保持している。
【0020】
同構成によれば、ワイヤハーネスの配索経路のうち、例えば、上下方向に屈曲される箇所の直前に第1クランプを適用することで、上下方向と芯線の各々の厚さ方向とを一致させた状態で、2つの電線を保持することができる。また、ワイヤハーネスの配索経路のうち、例えば、車幅方向に屈曲される箇所の直前に第2クランプを適用することで、車幅方向と芯線の各々の厚さ方向とを一致させた状態で、2つの電線を保持することができる。
【0021】
また、上記構成によれば、2つの保持部材を固定部材に対して着脱することができる。このため、第1クランプと第2クランプとで固定部材の共通化を図ることができる。これにより、クランプの汎用性、ひいてはワイヤハーネスの汎用性を高めることができる。
【0022】
[6]前記クランプは、第3クランプを含み、前記第3クランプは、前記2つの電線のうち、前記第1クランプにより保持される部分と、前記第2クランプにより保持される部分との間の部分であって、前記2つの電線の前記芯線が前記固定部材から離れるほど互いの距離が変化するように前記固定部材に対して傾斜している部分を保持していることが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、2つの電線のうち第1クランプにより保持される部分と第2クランプにより保持される部分との間の部分では、2つの電線の芯線が固定部材から離れるほど互いの距離が変化するように固定部材に対して傾斜している。このため、上記構成によれば、2つの電線のうち第1クランプにより保持される部分と第2クランプにより保持される部分との間の部分において2つの電線を安定して保持することができる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のクランプ及びワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本明細書における「平行」や「直交」は厳密に平行や直交の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行や直交の場合も含まれる。
【0025】
(ワイヤハーネス10の全体構成)
図1及び図2に示すように、ワイヤハーネス10は、2個または3個以上の電気機器を電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、ハイブリッド車や電気自動車等の車両Vの前部に設置されたインバータ1と、そのインバータ1よりも車両Vの後方に設置された高圧バッテリ2とを電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、車両Vの床下を通るように配索される。例えば、ワイヤハーネス10の長さ方向における中間部が、車室外である車両Vの床下を通るように配索される。
【0026】
インバータ1は、車両走行の動力源となる車輪駆動用の図示しないモータと接続される。インバータ1は、高圧バッテリ2の直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリ2は、例えば、数百ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。
【0027】
ワイヤハーネス10は、並列する2つの電線20と、2つの電線20を保持する複数のクランプ30とを備えている。2つの電線20の両端には、それぞれコネクタC1,C2が取り付けられている。電線20の各々の一端は共通のコネクタC1を介してインバータ1と接続され、電線20の各々の他端は共通のコネクタC2を介して高圧バッテリ2と接続されている。なお、電線20の各々は、同一の電気機器に接続されるものでなくてもよい。
【0028】
ここで、図1における左右方向が車両の前後方向であり、図2における上下方向が車両の幅方向であり、図1における上下方向が車両の上下方向である。以下の説明では、便宜上、車両の前後方向に延びる方向をX軸方向と称し、車両の幅方向に延びる方向をY軸方向と称し、車両の上下方向に延びる方向をZ軸方向と称する。
【0029】
(電線20の構成)
電線20は、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向において三次元的に屈曲して延びている。電線20は、例えば、高電圧・大電流に対応可能な高圧電線である。電線20は、自身に電磁シールド構造を有しないノンシールド電線であってもよいし、自身に電磁シールド構造を有するシールド電線であってもよい。
【0030】
2つの電線20の外周は、例えば、図示しない筒状の外装部材により覆われている。外装部材は、例えば、電線20の長さ方向における一部の外周を覆うように設けられている。外装部材としては、例えば、その長さ方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に連なって設けられた蛇腹構造を有するコルゲートチューブが挙げられる。
【0031】
図3に示すように、電線20の各々は、導体よりなる芯線21と、芯線21の外周を被覆する絶縁性の絶縁被覆22とを有している。
(芯線21の構成)
芯線21としては、例えば、複数の金属素線を撚り合せてなる撚線、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体(単芯線やバスバ等)や内部が中空構造をなす筒状導体(パイプ導体)などを用いることができる。芯線21は、例えば、撚線によって構成されている。芯線21の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。芯線21は、例えば、押出成形によって成形されている。
【0032】
芯線21の横断面形状、つまり、芯線21の長さ方向に直交する断面形状は、幅方向の寸法に対して厚さ方向の寸法が小さい扁平形状である。芯線21は、例えば、横断面形状が円形状をなす撚線を金型等で圧縮して横断面形状が扁平形状になるように形成されている。本明細書において、「扁平形状」には、長方形、長円形や楕円形などが含まれる。本明細書における「長方形」は、長辺と短辺とを有するものであり、正方形を除いたものである。また、本明細書における「長方形」には、稜部を面取りした形状や、稜部を丸めた形状も含まれる。
【0033】
芯線21の横断面形状は、例えば、長辺及び短辺を有する長方形である。芯線21の横断面形状は、例えば、芯線21の長さ方向の全体にわたって同一である。
(絶縁被覆22の構成)
絶縁被覆22は、例えば、芯線21の外周面を全周にわたって密着状態で被覆している。絶縁被覆22の外周面は、例えば、芯線21の外周面に沿った形状に形成されている。絶縁被覆22の横断面形状は、例えば、外周縁及び内周縁が長方形をなす環状である。絶縁被覆22は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。絶縁被覆22は、例えば、芯線21に対する押出成形によって形成することができる。
【0034】
(クランプ30)
クランプ30は、車両Vの下部を覆うパネルPに固定可能に構成されている。パネルPは、固定対象の一例である。
【0035】
クランプ30は、パネルPに固定される固定部材40と、2つの電線20を個別に保持する2つの保持部材50とを備えている。保持部材50の各々は、固定部材40に着脱可能に設けられている。
【0036】
(固定部材40の構成)
固定部材40は、ベース部41と、ベース部41から突出した突出部44と、突出部44から延びる支軸45と、支軸45の先端に設けられた係合部46とを有している。ベース部41と、突出部44と、支軸45と、係合部46とは、例えば、樹脂材料により一体に形成されている。
【0037】
図4に示すように、ベース部41は、平面視において、例えば、2つの電線20が並列する方向(以下、並列方向と称する)に長い長方形板状をなしている。なお、並列方向は、図4における左右方向と一致する。本明細書における「平面視」とは、対象物をパネルPの法線方向から視ることを指す。
【0038】
ベース部41は、並列方向に間隔をおいて設けられた2つの挿入孔42を有している。挿入孔42は、ベース部41を厚さ方向に貫通している。挿入孔42は、平面視において、五角形状をなしている。当該五角形は、正方形における1つの角を、当該1つの角に隣り合う2つの角の対角線に平行な線分によって切断した形状である。2つの挿入孔42は、上記対角線同士が平行をなすように設けられている。
【0039】
挿入孔42は、後述する保持部材50の軸部53に係合して軸部53の回転を規制する規制部42aを有している。本実施形態では、挿入孔42の内面が軸部53の外面に係合することで軸部53の軸線を中心とした回転が規制される。すなわち、挿入孔42の内面が規制部42aとして機能する。
【0040】
ベース部41は、並列方向に間隔をおいて設けられた2つのスリット43を有している。スリット43は、ベース部41を厚さ方向に貫通するとともに並列方向に延びている。スリット43の一端は、ベース部41の並列方向における端面に開口している。スリット43の他端は、挿入孔42に連なっている。スリット43の幅は、スリット43の一端から他端に向かうほど徐々に狭くなっている。スリット43の他端における幅は、平面視における挿入孔42の最大幅、すなわち、上記対角線の長さよりも小さい。
【0041】
図3に示すように、突出部44は、ベース部41の並列方向における中央部からパネルPに向かって突出している。突出部44は、例えば、円板状をなしている。突出部44は、パネルPに接触している。
【0042】
支軸45は、例えば、円柱状をなしている。支軸45の直径は、突出部44の直径よりも小さい。支軸45は、パネルPを貫通して設けられた取付孔Paに挿入されている。取付孔Paは、例えば、平面視において円形状をなしている。
【0043】
係合部46は、支軸45の先端から支軸45の外周側に向かって突出している。係合部46は、例えば、円錐状をなしている。係合部46の底面46aにおける外径は、取付孔Paの外径よりも大きい。係合部46は、自身が弾性変形することにより取付孔Paに挿入可能に構成されている。係合部46は、パネルPのうち取付孔Paに連なる部分に係合可能に構成されている。
【0044】
係合部46を取付孔Paに挿入すると、係合部46の底面46aの直径が小さくなるように係合部46が弾性変形する。そして、係合部46が取付孔Paを通り抜けると、係合部46が元の形状に戻るように弾性復帰する。これにより、係合部46の底面46aが、パネルPのうち取付孔Paに連なる部分に係合される。こうして、クランプ30がパネルPに固定されることで、クランプ30に保持された電線20がパネルPに対して固定される。
【0045】
(保持部材50の構成)
保持部材50は、電線20を保持する保持部51と、挿入孔42に挿入される軸部53と、保持部51と軸部53とを連結する連結部52とを有している。
【0046】
図4に示すように、保持部51は、電線20の長さ方向に延びる長方形板状をなしている。保持部51の幅は、電線20の幅、より詳しくは、芯線21の幅よりも小さい。保持部51は、電線20と共にテープ巻きされることで電線20を保持するものである。保持部51は、例えば、電線20の厚さ方向における一方の外面に沿った状態で、電線20と共にテープ巻きされている。本実施形態では、保持部51の長さ方向における両端部と電線20とがテープ60によって固定されている。
【0047】
軸部53は、例えば、角柱状をなしている。軸部53の断面形状は、正方形状をなしている。当該正方形の対角線の長さは、挿入孔42の上記対角線の長さと同一である。
図3に示すように、軸部53の先端には、係合部54が設けられている。係合部54は、軸部53の先端から軸部53の外周側に向かって突出している。係合部54は、例えば、円錐状をなしている。係合部54の底面54aにおける外径は、平面視における挿入孔42の寸法よりも大きい。
【0048】
軸部53は、スリット43を通じて挿入孔42に挿入可能に構成されている。軸部53がスリット43を通過するとき、軸部53によってベース部41が押し広げられるように弾性変形することにより、スリット43の幅が大きくなる。そして、軸部53が挿入孔42に挿入されると、スリット43が元の形状に戻るように弾性復帰する。これにより、係合部54の底面54aがベース部41のうち挿入孔42に連なる部分に係合される。このとき、上述したように、挿入孔42の内面が軸部53の外面に係合する。こうして、保持部材50が、固定部材40に固定される。
【0049】
連結部52は、保持部51の幅方向における一端と軸部53とを連結している。連結部52は、例えば、角柱状をなしている。連結部52は、上記一端のうち保持部51の長さ方向における中央部から延びている。換言すると、保持部51は、連結部52から電線20の長さ方向の両側に延びている。
【0050】
(ワイヤハーネス10の構成)
図1に示すように、ワイヤハーネス10は、車両Vの床下に配索される部分から車室内に向けてZ軸方向に屈曲された第1屈曲部10Aを有している。第1屈曲部10Aにおける2つの電線20の姿勢は、2つの電線20の芯線21が互いの幅方向において並列する姿勢である。第1屈曲部10Aでは、2つの電線20が厚さ方向に屈曲されている。ワイヤハーネス10のうち第1屈曲部10Aの直前及び直後における2つの電線20の姿勢は、第1屈曲部10Aにおける2つの電線20の姿勢と同様である。
【0051】
図2に示すように、ワイヤハーネス10は、X軸方向に延びる部分からY軸方向に屈曲された第2屈曲部10Bを有している。第2屈曲部10Bは、例えば、ワイヤハーネス10のうち車両Vの床下に配索される部分に設けられている。第2屈曲部10Bにおける2つの電線20の姿勢は、2つの電線20の芯線21が互いの厚さ方向において並列する姿勢である。第2屈曲部10Bでは、2つの電線20が厚さ方向に屈曲されている。ワイヤハーネス10のうち第2屈曲部10Bの直前及び直後における2つの電線20の姿勢は、第2屈曲部10Bにおける2つの電線20の姿勢と同様である。
【0052】
ワイヤハーネス10のうち、車両Vの床下に配索される部分であって、第1屈曲部10Aと第2屈曲部10Bとの間の部分では、2つの電線20がパネルPに対して傾斜している。より詳しくは、2つの電線20の芯線21が、Z軸方向においてパネルPから離れるほど互いの距離が大きくなるようにパネルPに対して傾斜している。
【0053】
本実施形態のクランプ30は、第1クランプ31、第2クランプ32、及び第3クランプ33を含んでいる。各クランプ31~33では、上述した保持部材50の軸部53に対する連結部52のなす角度が互いに異なる。
【0054】
ここで、本明細書における「軸部53に対する連結部52のなす角度」とは、軸部53の軸線と、連結部52における電線20とは反対側に位置する外面とがなす角度である。
(第1クランプ31の構成)
図1に示すように、第1クランプ31は、2つの電線20のうち第1屈曲部10Aの直前及び直後に設けられている。図3に示すように、第1クランプ31は、2つの電線20のうち、2つの電線20の芯線21が互いの幅方向において並列している部分を保持している。第1クランプ31における軸部53に対する連結部52のなす角度θ1は、例えば、90°である。このとき、芯線21の各々の厚さ方向に延びる軸線L同士が平行をなしている。
【0055】
ここで、本明細書における「軸線L同士が平行をなす」とは、2つの軸線Lが互いに離れている場合と、2つの軸線Lが一致する場合とを含む。
(第2クランプ32の構成)
図2に示すように、第2クランプ32は、2つの電線20のうち第2屈曲部10Bの直前及び直後に設けられている。図5に示すように、第2クランプ32は、2つの電線20のうち、2つの電線20の芯線21が互いの厚さ方向において並列している部分を保持している。第2クランプ32における軸部53に対する連結部52のなす角度θ2は、例えば、180°である。このとき、芯線21の各々の軸線L同士が平行をなしている。
【0056】
(第3クランプ33の構成)
図1及び図2に示すように、第3クランプ33は、2つの電線20のうち第1クランプ31により保持される部分と、第2クランプ32により保持される部分との間の部分に複数設けられている。図6に示すように、第3クランプ33は、2つの電線20の芯線21が、ベース部41の厚さ方向、すなわちZ軸方向において固定部材40から離れるほど互いの距離が大きくなるように固定部材40に対して傾斜している部分を保持している。第3クランプ33における軸部53に対する連結部52のなす角度θ3は、例えば、135°である。このとき、芯線21の各々の軸線L同士がなす角度は直角である。
【0057】
本実施形態の作用について説明する。
クランプ30においては、2つの保持部材50を固定部材40に対して着脱することができる。このため、2つの電線20の姿勢に対応した形状を有する2つの保持部材50を適宜選択することで、固定部材40の共通化を図ることができる。
【0058】
本実施形態の効果について説明する。
(1)クランプ30は、パネルPに固定される固定部材40と、固定部材40に着脱可能に設けられ、2つの電線20を個別に保持する2つの保持部材50とを備える。
【0059】
こうした構成によれば、上述した作用を奏することから、クランプ30の汎用性を高めることができる。
(2)固定部材40のベース部41は、2つの電線20が並列する並列方向に間隔をおいて設けられた2つの挿入孔42を有している。保持部材50の各々は、電線20を保持する保持部51と、ベース部41の挿入孔42に挿入される軸部53と、保持部51と軸部53とを連結する連結部52とを有している。
【0060】
こうした構成によれば、例えば軸部53に対する連結部52のなす角度を変更するなど、連結部52の構成を適宜設定することにより、2つの電線20の姿勢に対応した形状を有する2つの保持部材50を容易に具現化することができる。
【0061】
(3)挿入孔42の各々は、軸部53に係合して軸部53の回転を規制する規制部42aを有している。
こうした構成によれば、挿入孔42は、軸部53の回転を規制する規制部42aを有しているため、固定部材40に対して保持部材50の各々が位置決めされる。したがって、2つの電線20を所望の姿勢にて安定して保持することができる。
【0062】
(4)保持部51は、電線20と共にテープ巻きされることで電線20を保持するものである。
こうした構成によれば、電線20と保持部51とが共にテープ巻きされることで、電線20が保持部材50によって保持される。このため、クランプ30は、外形寸法が異なる複数種類の電線20を保持することができる。したがって、クランプ30の汎用性を一層高めることができる。
【0063】
また、上記構成によれば、保持部材50が固定部材40に対して着脱できることから、固定部材40に保持部材50が取り付けられていない状態の保持部51と電線20とをテープ巻きした後に、保持部材50を固定部材40に取り付けることができる。このため、クランプ30を電線20に組み付ける際の作業性を向上させることができる。
【0064】
(5)ワイヤハーネス10は、並列する2つの電線20と、第1クランプ31と、第2クランプ32とを備える。第1クランプ31は、2つの電線20のうち第1屈曲部10Aの直前に設けられている。第2クランプ32は、2つの電線20のうち第2屈曲部10Bの直前に設けられている。
【0065】
こうした構成によれば、2つの電線20のうち第1屈曲部10Aの直前に第1クランプ31が設けられている。このため、Z軸方向と芯線21の各々の厚さ方向とを一致させた状態で、2つの電線20を保持することができる。また、2つの電線20のうち第2屈曲部10Bの直前に第2クランプ32が設けられている。このため、Y軸方向と芯線21の各々の厚さ方向とを一致させた状態で、2つの電線20を保持することができる。
【0066】
また、上記構成によれば、2つの保持部材50を固定部材40に対して着脱することができる。このため、第1クランプ31と第2クランプ32とで固定部材40の共通化を図ることができる。これにより、クランプ30の汎用性、ひいてはワイヤハーネス10の汎用性を高めることができる。
【0067】
(6)ワイヤハーネス10は、第3クランプ33を備える。第3クランプ33は、2つの電線20のうち、第1クランプ31により保持される部分と、第2クランプ32により保持される部分との間の部分であって、2つの電線20の芯線21がZ軸方向において固定部材40から離れるほど互いの距離が大きくなるように固定部材40に対して傾斜している部分を保持する。
【0068】
こうした構成によれば、2つの電線20のうち第1クランプ31により保持される部分と第2クランプ32により保持される部分との間の部分では、2つの電線20の芯線21がZ軸方向において固定部材40から離れるほど互いの距離が大きくなるように固定部材40に対して傾斜している。このため、上記構成によれば、2つの電線20のうち第1クランプ31により保持される部分と第2クランプ32により保持される部分との間の部分において2つの電線20を安定して保持することができる。
【0069】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0070】
・各クランプ31~33の数は適宜変更できる。
・ワイヤハーネス10から第3クランプ33を省略することができる。すなわち、ワイヤハーネス10は、クランプ30として、第1クランプ31及び第2クランプ32のみを備えるものであってもよい。
【0071】
・第3クランプ33は、2つの電線20の芯線21が固定部材40から離れるほど互いの距離が小さくなるように固定部材40に対して傾斜している部分を保持するものであってもよい。この場合、第3クランプ33の構成としては、上記実施形態における2つの保持部材50同士を入れ替えたものであってもよいし、軸部53に対する連結部52のなす角度θ3が、90°より小さいものであってもよい。
【0072】
・保持部51は、連結部52から電線20の長さ方向の一方にのみ延びるものであってもよい。
・保持部51は、電線20を幅方向または厚さ方向において挟むことによって電線20を保持するものであってもよい。この場合、テープ60を省略することもできる。
【0073】
・挿入孔42の平面視における形状と、軸部53の断面形状とは、例えば、三角形などの五角形とは異なる多角形状であってもよい。
・挿入孔42の内面に設けられた凸部と、軸部53の外面に設けられた凹部とを互いに係合させることで軸部53の回転を規制することもできる。この場合、挿入孔42の凸部が規制部42aとして機能する。同様に、挿入孔42の内面に設けられた凹部と、軸部53の外面に設けられた凸部とを互いに係合させることで軸部53の回転を規制することもできる。この場合、挿入孔42の凹部が規制部42aとして機能する。
【0074】
・挿入孔42から規制部42aを省略することができる。この場合、例えば、挿入孔42の平面視における形状、及び軸部53の断面形状の少なくとも一方を円形状にしてもよい。
【0075】
・ベース部41からスリット43を省略することもできる。この場合、上記実施形態における挿入孔42は、平面視において正方形状をなす。
・保持部材50における軸部53に対する連結部52のなす角度は、2つの電線20の姿勢に応じて適宜変更できる。
【0076】
・クランプ30の固定対象は、パネルPに限定されない。他に例えば、車両Vのフレームであってもよい。また、固定対象は、上記フレームまたはパネルPに取り付けられたブラケットであってもよい。
【0077】
・ワイヤハーネス10は、インバータと高圧バッテリとを電気的に接続するものであったが、これに限定されない。ワイヤハーネス10は、車両Vに搭載される種々の電気機器間を電気的に接続するワイヤハーネスに対して適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
L 軸線
θ1 角度
θ2 角度
θ3 角度
C1 コネクタ
C2 コネクタ
P パネル
Pa 取付孔
V 車両
1 インバータ
2 高圧バッテリ
10 ワイヤハーネス
10A 第1屈曲部
10B 第2屈曲部
20 電線
21 芯線
22 絶縁被覆
30 クランプ
31 第1クランプ
32 第2クランプ
33 第3クランプ
40 固定部材
41 ベース部
42 挿入孔
42a 規制部
43 スリット
44 突出部
45 支軸
46 係合部
46a 底面
50 保持部材
51 保持部
52 連結部
53 軸部
54 係合部
54a 底面
60 テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6