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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】現像ユニット及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
G03G15/08 221
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020179712
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070577
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083840
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 実
(72)【発明者】
【氏名】城ヶ瀧 康平
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-085906(JP,A)
【文献】特開2018-155844(JP,A)
【文献】特開2014-170028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体に現像剤を供給し、前記静電潜像担持体上の潜像を現像する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に当接してニップ領域を形成するように配置され、表面に導電性発泡スポンジからなる弾性層を有し、前記現像剤担持体に前記現像剤を供給するφ13mmの外周をもつ現像剤供給部材と
を備え、
断面外径16[mm]、長さ50[mm]のステンレス製の圧子を、前記弾性層の、前記ニップ領域の延在方向端部及び中央部の表面に0.73[mm]押し込んだときの前記中央部の応力に対する前記端部の応力の比率が、0.97以上1.23以下であり、
一辺が50[mm]の正方形の表面を有し厚さが10[mm]のステンレス製の圧子の前記表面に粒度30[μm]の研磨フィルムを固定したものを用い、前記研磨フィルムを、前記弾性層に0.73[mm]押し込み、前記現像剤供給部材を136.1[mm/秒]の周速で回転させた場合に、
前記圧子の押し込み前の前記現像剤供給部材の外径に対して、前記圧子の押し込み量が0.73[mm]に達してから250秒後に前記圧子を離間させたときの前記現像剤供給部材の外径の減少量が、0.03[mm]以下である
ことを特徴とする現像ユニット。
【請求項2】
静電潜像担持体に現像剤を供給し、前記静電潜像担持体上の潜像を現像する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に当接してニップ領域を形成するように配置され、表面に導電性発泡スポンジからなる弾性層を有し、前記現像剤担持体に前記現像剤を供給するφ13mmの外周をもつ現像剤供給部材と
を備え、
断面外径16[mm]、長さ50[mm]のステンレス製の圧子を、前記弾性層の、前記ニップ領域の延在方向端部及び中央部の表面に0.73[mm]押し込んだときの前記中央部の応力に対する前記端部の応力の比率が、0.97以上1.23以下であり、
前記弾性層の加硫後、発泡処理前の材料で形成したダンベル1号形状の試験片を用い、JIS-K6251の引張試験を行った場合に、前記試験片が破断したときの伸び率([%])をそのときの応力([N/mm2])で除した値が、72.6[%/N/mm2]以上、81.6[%/N/mm2]以下である
ことを特徴とする現像ユニット。
【請求項3】
前記現像剤供給部材は、逆クラウン形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像ユニット。
【請求項4】
前記現像剤供給部材は、シリコーンを主成分とすることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の現像ユニット。
【請求項5】
前記弾性層のアスカーF硬度は、40以上、46以下であることを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載の現像ユニット。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか1項に記載の現像ユニットと、
前記静電潜像担持体に形成された現像剤像を媒体に転写する転写ユニットと、
前記媒体に転写された現像剤像を前記媒体に定着する定着ユニットと
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子写真方式のプリンタや複写装置などに用いられる現像ユニット、及び現像ユニットを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成装置は、像担持体の表面に形成された潜像を現像する現像剤担持体と、現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給部材とを有する現像ユニットを備える(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-8140号公報(例えば、図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現像剤供給部材は、現像剤担持体に現像剤を供給するだけでなく、現像剤担持体の表面に残った現像剤をかき取る機能を有するが、使用時間の経過とともに、これらの機能が低下し、画像品位の低下を招いていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における実施形態の現像ユニットは、静電潜像担持体に現像剤を供給し、前記静電潜像担持体上の潜像を現像する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に当接してニップ領域を形成するように配置され、表面に導電性発泡スポンジからなる弾性層を有し、前記現像剤担持体に前記現像剤を供給するφ13mmの外周をもつ現像剤供給部材とを備え、
断面外径16[mm]、長さ50[mm]のステンレス製の圧子を、前記弾性層の、前記ニップ領域の延在方向端部及び中央部の表面に0.73[mm]押し込んだときの前記中央部の応力に対する前記端部の応力の比率が、0.97以上1.23以下であり、
一辺が50[mm]の正方形の表面を有し厚さが10[mm]のステンレス製の圧子の前記表面に粒度30[μm]の研磨フィルムを固定したものを用い、前記研磨フィルムを、前記弾性層に0.73[mm]押し込み、前記現像剤供給部材を136.1[mm/秒]の周速で回転させた場合に、
前記圧子の押し込み前の前記現像剤供給部材の外径に対して、前記圧子の押し込み量が0.73[mm]に達してから250秒後に前記圧子を離間させたときの前記現像剤供給部材の外径の減少量が、0.03[mm]以下であることを特徴とする。
【0006】
本発明における実施形態の別の現像ユニットは、静電潜像担持体に現像剤を供給し、前記静電潜像担持体上の潜像を現像する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に当接してニップ領域を形成するように配置され、表面に導電性発泡スポンジからなる弾性層を有し、前記現像剤担持体に前記現像剤を供給するφ13mmの外周をもつ現像剤供給部材とを備え、
断面外径16[mm]、長さ50[mm]のステンレス製の圧子を、前記弾性層の、前記ニップ領域の延在方向端部及び中央部の表面に0.73[mm]押し込んだときの前記中央部の応力に対する前記端部の応力の比率が、0.97以上1.23以下であり、
前記弾性層の加硫後、発泡処理前の材料で形成したダンベル1号形状の試験片を用い、JIS-K6251の引張試験を行った場合に、前記試験片が破断したときの伸び率([%])をそのときの応力([N/mm2])で除した値が、72.6[%/N/mm2]以上、81.6[%/N/mm2]以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明における実施形態によれば、現像剤供給部材による、現像剤の供給ムラや、現像剤のかき取り性の低下による汚れやカスレ発生による、画像品位の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態による現像ユニットを備えたプリンタの要部構成を概略的に示す要部構成図である。
図2】現像ユニットの内部構成を、現像ユニットに装着されたトナーカートリッジと共に模式的に示す概略構成図である。
図3】プリンタの制御系のうち、本発明とかかわる部分の要部構成を示すブロック図である。
図4】実施の形態1の供給ローラの要部構成を示す外観図である。
図5】供給ローラの製造方法を示すフローチャートである。
図6】シリコーンゴム製の導電性の発泡層のFT-IR(フーリエ変換赤外分光法)分析により得られるスペクトル強度分布を示す図である。
図7】ウレタンゴム製の導電性発泡層のFT-IR分析により得られるスペクトル強度分布を示す図である。
図8】伸長度が72.6%未満の場合、或いは81.6%を超える場合の、初期或いは連続印刷中の供給ローラのセル壁の様子を模式的に示す説明図である。
図9】回転応力減衰率が27.0%未満の場合、或いは31.0%を超える場合の、初期或いは回転応力試験後の供給ローラのセル壁の様子を模式的に示す説明図である。
図10】JIS-K6251に規定するダンベル1号形状の試験片の形状を示す図である。
図11】供給ローラの回転応力減衰率の測定方法の説明に供する概略構成図である。
図12】(a)は、供給ローラの簡易摩耗試験の測定方法の説明に供する概略構成図であり、(b)は、圧子の構成を示す外観斜視図である。
図13】供給ローラ25の外径変化量及び重量変化量の測定手順を示すフローチャートである。
図14】供給ローラの回転応力比率の測定方法の説明に供する概略構成図であり、(a)は端部を試験するときの図であり、(b)は中央部を試験するときの図である。
図15】(a)は、記録用紙の略全域にわたって2×2(ハーフトーン)パターン印刷を施した際の画像を模式的に示した図であり、(b)は、その部分拡大図である。
図16】トナー攪拌係数kと回転応力比率(B/A)の関係を示す特性グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施形態による現像ユニットを備えたプリンタの要部構成を概略的に示す要部構成図である。
【0010】
図1に示すように、画像形成装置としてのプリンタ1は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色の現像ユニット2K,2C,2M,2Y(特に区別する必要がない場合には単に現像ユニット2と称す場合がある)、各色のトナーカートリッジ3K,3C,3M,3Y(特に区別する必要がない場合には単にトナーカートリッジ3と称す場合がある)、転写ユニット14、露光ユニット5K,5C,5M,5Y(特に区別する必要がない場合には単に露光ユニット5と称す場合がある)、記録媒体としての記録用紙10を収納・供給する給紙カセット6、記録用紙10にトナー像を定着させる定着ユニット7等を備える。
【0011】
現像ユニット2は、転写ユニット14による記録用紙10の搬送路(図中に一点鎖線で示す用紙搬送経路8の水平部分)に沿って、供給側(用紙搬送方向の上流側)から排出側(用紙搬送方向の下流側)に向かって、現像ユニット2K、現像ユニット2C、現像ユニット2M、現像ユニット2Yの順に配列され、各々がプリンタ1本体に対して着脱自在に構成されている。尚、プリンタ1の現像ユニット2のように、着脱可能な或いは可動な構成要素の個々に対して、その構成要素を除いた部分をプリンタ1本体と称す場合がある。
【0012】
トナーカートリッジ3K,3C,3M,3Yは、未使用の現像剤としてのトナー40K,40C,40M,40Y(特に区別する必要がない場合には単にトナー40と称す場合がある)を収容するトナー貯蔵部31K,31C,31M,31Y(特に区別する必要がない場合には単にトナー貯蔵部31と称す場合がある)を備えている。そして、対応する各現像ユニット2K,2C,2M,2Yの上部において各々が着脱自在に構成され、装着された状態で、未使用のトナー40を対応する現像ユニット2に供給する。
【0013】
現像ユニット2K,2C,2M,2Yは、いずれも同じ構造であり、各々が対応する、静電潜像担持体としての感光ドラム21K,21C,21M,21Y(特に区別する必要がない場合には単に感光ドラム21と称す場合がある)、帯電ローラ22K,22C,22M,22Y(特に区別する必要がない場合には単に帯電ローラ22と称す場合がある)、現像剤担持体としての現像ローラ23K,23C,23M,23Y(特に区別する必要がない場合には単に現像ローラ23と称す場合がある)、現像ブレード24K,24C,24M,24Y(特に区別する必要がない場合には単に現像ブレード24と称す場合がある)、現像剤供給部材としての供給ローラ25K,25C,25M,25Y(特に区別する必要がない場合には単に供給ローラ25と称す場合がある)、クリーニングブレード27K,27C,27M,27Y(特に区別する必要がない場合には単にクリーニングブレード27と称す場合がある)、及び第1搬送部28K,28C,28M,28Y(特に区別する必要がない場合には単に第1搬送部28と称す場合がある)等を備える。
【0014】
各第1搬送部28は、後述するように、対応するクリーニングブレード27によって除去された廃棄トナーを感光ドラム21の軸方向である図1の紙面上方(後述するY軸のプラス方向)に向けて搬送する。第2搬送部29は、各第1搬送部28より送られてきた廃棄トナーを、一括して現像ユニット2Kより用紙搬送方向の上流側に配置された廃棄トナー収容器32まで搬送する。廃棄トナー収容器32は、第2搬送部29により搬送された廃棄トナーを収容し、プリンタ1本体に対して着脱自在に設けられている。
【0015】
尚、図1中のX、Y、Zの各軸は、記録用紙10が4つの現像ユニット2を通過する際の搬送方向にX軸をとり、各感光ドラム21の回転軸方向にY軸をとり、これら両軸と直交する方向にZ軸をとっている。また、後述する他の図においてX、Y、Zの各軸が示される場合、これらの軸方向は、共通する方向を示すものとする。即ち、各図のXYZ軸は、各図の描写部分が、図1に示すプリンタ1を構成する際の配置方向を示している。またここでは、Z軸が略鉛直方向となるように配置されるものとする。
【0016】
図2は、現像ユニット2の内部構成を、現像ユニット2に装着されたトナーカートリッジ3と共に模式的に示す概略構成図である。同図を参照しながら現像ユニット2の構成について更に説明する。
【0017】
現像ユニット2は、感光ドラム21、感光ドラム21の表面を均一に帯電させる帯電ローラ22、露光ユニット5(図1)によって感光ドラム21の表面に形成された静電潜像にトナー40(図1)を付着させて現像する現像ローラ23、現像ローラ23に供給されたトナー40の層厚を規制する現像ブレード24、現像ローラ23にトナー40を供給する供給ローラ25、記録用紙10(図1)に転写されずに感光ドラム21上に残留するトナー40を除去するクリーニングブレード27、クリーニングブレード27により除去されたトナー40を廃棄トナーとして搬送する第1搬送部28とを備える。
【0018】
感光ドラム21は、導電性支持体と光導電層とによって構成され、導電性支持体としてのアルミニウム等の金属パイプに、ブロッキング層、光導電層としての電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層した構成の有機系感光体であり、記録用紙10をX軸のプラス方向に搬送する方向(同図の矢印方向)に回転する。
【0019】
帯電ローラ22は、トナー40と同極性のバイアス電圧を印加する帯電ローラ用電源121(図3)が接続されており、金属シャフトとエピクロルヒドリンゴム等の半導電性ゴム層によって構成されて感光ドラム21に所定の圧接量で当接する位置に配置され、感光ドラム21の回転により同図の矢印方向に従動回転して、印加されたバイアス電圧により感光ドラム21の表面を一様均一に帯電する。
【0020】
現像ローラ23は、トナー40と同極性、又は逆極性の何れかのバイアス電圧を印加する現像ローラ用電源122(図3)が接続されており、金属シャフトと半導電性ウレタンゴム層、及び表面処理層とによって構成されて感光ドラム21に所定の圧接量で当接する位置に配置され、感光ドラム21の回転に対して逆方向(同図の矢印方向)に所定の周速比を持って回転し、印加されたバイアス電圧によって、帯電したトナー40を感光ドラム21上の静電潜像部に付着させて現像する。
【0021】
現像ブレード24は、トナー40と同極性、又は逆極性の何れかのバイアス電圧を印加する現像ローラ用電源122、或いは供給ローラ用電源123(図3)が接続されており、現像ローラ23の長手方向の幅と略同じ幅を有する例えば厚さ0.08[mm]の金属薄板部材である。更に、一端側が固定され、他端側における、その先端部から僅かに内側の面が現像ローラ23の周面と当接するように配置され、印加されたバイアス電圧及び当接圧によって現像ローラ23の周面に形成されるトナー40を帯電し、層厚を規制する。
【0022】
供給ローラ25は、トナー40と同極性、又は逆極性の何れかのバイアス電圧を印加する供給ローラ用電源123(図3)が接続されており、金属製シャフトである芯金51(図4)と導電性発泡シリコーンスポンジの弾性層としての発泡層52(図4)とによって構成される。軸が現像ローラ23の軸と平行に、現像ローラ23とニップ領域を形成するように所定の圧接量で当接する位置に配置され、同図に矢印で示すように、現像ローラ23の回転に対して同方向(現像ローラ23との接面に対して逆向き)に所定の周速比を持って回転して、印加されたバイアス電圧によってトナーカートリッジ3が備えるトナー貯蔵部31から補充されたトナー40を現像ローラ23に供給する。従って、上記ニップ領域は、供給ローラ25の軸方向に延在する。
【0023】
また供給ローラ25は、現像ローラ23との当接摩擦力によりトナー40を帯電し、且つ現像ローラ23上の未現像トナーを掻きとる。尚、供給ローラ25については、後に詳しく説明する。
【0024】
クリーニングブレード27は、その一端が感光ドラム21に所定の圧接量で当接する位置に配置されたウレタンゴム部材である。第1搬送部28は、クリーニングブレード27により除去されたトナー40及び付着物を廃棄トナーとして、感光ドラム21の軸方向である図2の紙面上方(Y軸のプラス方向)に向けて搬送する。
【0025】
トナー収容部38には、現像ユニット2に装着されるトナーカートリッジ3から、トナー供給口35を介して供給されるトナー40を、攪拌する攪拌部材37及びY軸方向に均一に均すための搬送スクリュー36が配置されている。
【0026】
具体的には、トナー収容部38は、その長手方向の長さが150.03[mm]、短手方向の長さが64.0[mm]であり、トナー供給口35の、長手方向の長さは15.0[mm]であり短手方向の長さは9.7[mm]である。ここで、トナー収容部38の長手方向の長さに対するトナー供給35の長手方向の長さの比は、15.0[mm]/150.03[mm]=0.099となる。本実施の形態では、トナー供給35は、トナー収容部38の長手方向において、トナー収容部38のほぼ中央部に配置されている。従って、トナー収容部38の長手方向において、トナー収容部38に対してトナー供給口35が短く、トナー収容部38の両端部にはトナーが直接供給されない。更に、攪拌部材37及び搬送スクリュー36により、トナー供給口35から供給されたトナーをY軸方向に均一に均しているため、トナー収容部38の両端部から中央部ヘトナーを搬送する構成が無い。そのため、新品トナーと比較して特性が変化したトナー、いわゆる劣化したトナーが、外添剤が剥離することで、トナー収容部38の両端部に溜まりやすい。
【0027】
現像ユニット2、トナーカートリッジ3、及び廃棄トナー収容器32等は何れも交換ユニットであり、トナーが消費されたり構成部品が劣化したりして寿命がきたときに交換することができる。
【0028】
図1において、露光ユニット5K、5C、5M、5Yは、例えばLED(Light Emitting Diode)等の発光素子とレンズアレイとを備えたLEDヘッドであり、プリンタ1が入力する印刷データに基づいて対応する感光ドラム21K、21C、21M、21Yの表面にそれぞれ光を照射し、露光部分の電位を光減衰させて静電潜像を形成する。
【0029】
給紙カセット6は、内部に記録用紙10を積層した状態で収容し、プリンタ1の下部に着脱自在に装着されている。給紙カセット6の用紙繰り出し側の上部には記録用紙10を1枚ずつ捌いて用紙搬送経路8(図中に一点鎖線で示す)に繰り出すホッピングローラ等を備えた図示せぬ用紙給紙部が配設されている。用紙搬送経路8の要所には図示しない搬送ローラが配置され、記録用紙10を順次下流側に搬送する。
【0030】
転写ユニット14は、記録用紙10を静電吸着して下流側に搬送する転写ベルト9、図示せぬ駆動部により矢印方向に回転されて転写ベルト9を駆動するドライブローラ11、ドライブローラ11と対を成して転写ベルト9を張架するテンションローラ12、及び感光ドラム21K、21C、21M、21Yにそれぞれ転写ベルト9を介して対向圧接するように配置され矢印方向に回転し、トナー像を記録用紙10に転写する転写ローラ4K、4C、4M、4Y(特に区別する必要がない場合には単に転写ローラ4と称す場合がある)を備える。
【0031】
各転写ローラ4には、トナー40と逆極性のバイアス電圧を印加する転写ローラ用電源124(図3)が接続されており、印加されたバイアス電圧により、それぞれ対応する感光ドラム21に形成されたトナー像を順次重ねて記録用紙10に転写する。
【0032】
定着ユニット7は、用紙搬送経路8において現像ユニット2の下流側に配設され、加熱ローラ7a、加圧ローラ7b、図示せぬサーミスタ及び加熱ヒータを備える。加熱ローラ7aは、例えばアルミニウム等からなる中空円筒状の芯金にシリコーンゴムの耐熱弾性層を被覆し、その上にPFA(テトラフルオロエチレン‐パーフルオロルアルキルビニルエーテル共重合体)チューブを被覆する事によって形成されている。そして、その芯金内には例えば、ハロゲンランプ等の加熱ヒータが設けられている。
【0033】
加圧ローラ7bは、例えばアルミニウム等からなる芯金にシリコーンゴムの耐熱弾性層を被覆し、その上にPFAチューブを被覆した構成であり、加熱ローラ7aとの間に圧接部が形成されるように配設されている。サーミスタは、加熱ローラ7aの表面温度検出手段であり、加熱ローラ7aの近傍に非接触で配設される。
【0034】
加熱ローラ7aは、サーミスタが検出したその表面温度に基づいて、定着制御部127(図3)によって温度制御される加熱ヒータによってその表面温度が所定の温度となるように維持される。トナー像が転写された記録用紙10が、温度管理された加熱ローラ7aと加圧ローラ7bとによって形成される圧接部を通過すると、通過時に加えられる熱及び圧力によって、記録用紙10上のトナー像が定着する。
【0035】
図3は、プリンタ1の制御系のうち、本発明とかかわる部分の要部構成を示すブロック図である。以下、図1図2を参照しながらこの制御系について説明する。
【0036】
同図において、制御部101は、ROM、RAM、入出力ポート、タイマ等によって構成され、図示されない上位装置からI/F(Interface)制御部111を介して印刷データ及び制御コマンドを受信してプリンタ1全体のシーケンスを制御し印刷動作を行う。受信メモリ112は、上位装置からI/F制御部111を介して入力された印刷データを一時的に記録し、画像データ編集メモリ113は、受信メモリ112に記録された印刷データを受け取ると共に、その印刷データを編集処理するとこによって形成された画像データ、即ちイメージデータを記録する。
【0037】
操作部114は、プリンタ1の状態を表示するためのLED及びプリンタに操作者からの指示を与えるためのスイッチや表示部を備え、センサ群115は、プリンタ1の動作状態を監視するための各種のセンサ、例えば用紙位置検出センサ、温湿度センサ、濃度センサ等からなる。
【0038】
帯電ローラ用電源121は、制御部101の指示によって帯電ローラ22に電圧を印加し、感光ドラム21の表面を帯電させ、現像ローラ用電源122は、静電潜像にトナー40を付着させるために現像ローラ23に所定の電圧を印加し、供給ローラ用電源123は、現像ローラ23にトナー40を供給するために供給ローラ25に所定の電圧を印加し、転写ローラ用電源124は、感光ドラム21に形成されたトナー像を記録用紙10に転写するために転写ローラ4に所定の電圧を印加するである。尚、帯電ローラ用電源121、現像ローラ用電源122、及び供給ローラ用電源123は、制御部101の指示によって電圧を変更することができるようになっている。
【0039】
ヒューズ用電源125は、現像ユニット2が未使用品か否かを判別する速断ヒューズ130に電流を流すヒューズ用電源であり、ヘッド駆動制御部126は、画像データ編集メモリ113に記録されたイメージデータを露光ユニット5に送り、そのLEDの発光を駆動する。定着制御部127は、転写されたトナー像を記録用紙10に定着するために、定着ユニット7の加熱ヒータを加熱駆動して加熱ローラ7aの表面温度を制御し、加圧ローラ7bの回転を制御する。
【0040】
搬送モータ制御部128は、記録用紙10を搬送するための用紙搬送モータ131を回転制御し、その搬送モータ制御部128は、制御部101の指示によって所定のタイミングで記録用紙10を搬送したり停止させたりする。駆動制御部129は、感光ドラム21を回転動作させるための駆動モータ132を駆動する。その駆動制御部129によって駆動モータ132が回転駆動されると、図2に示されるように感光ドラム21が矢印方向に回転すると共に、帯電ローラ22、現像ローラ23、供給ローラ25がそれぞれ所定の回転速度で矢印方向に回転する。
【0041】
ドットカウンタ101aは,画像データ編集メモリ113から印刷に必要なドット数をカウントし、ドラムカウンタ101bは、印刷動作中に回転した感光ドラム21の回転数をカウントする。算出部101cは、センサ群115から読み取った温度や、ドラムカウンタ101bの回転数を基に演算を行い、回転フラグ発生の有無を決定する。
【0042】
図4は、実施の形態1の供給ローラ25の要部構成を示す外観図である。同図を参照しながら、供給ローラ25の構成について更に説明する。
【0043】
供給ローラ25は、導電性支持体としてφ6[mm]の芯金51を支軸とし、その外側に、φ13[mm]で、長手方向の長さが221.4[mm]の発泡層52を形成している。発泡層52の、発泡体外層52aとその内側の内部層52bとには、無数のセルが存在する。発泡層52のゴム材料としては、ウレタン系ゴム、シリコーン系ゴム、EPDMゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、等が用いられている。特に近年の傾向では、ウレタン系、シリコーン系が主流となっている。
【0044】
芯金51は、所定の剛性を有すると共に十分な導電性を有する金属であればよく、例えば、鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等が用いられる。また、金属以外の材料でも導電性と適度な剛性を有する材料であれば用いる事ができ、例えば導電性粒子を分散した樹脂成型品や、セラミックス等を使用する事も可能である。更にロール形状のほか、空中のパイプ形状としても良い。また、芯金51両端にはギア装着段差が施されていたり、ピン穴が存在する形状もあり、この場合その両端部が発泡層52を有する部分より径が細くなっている事もある。
【0045】
発泡層52の外径は、軸方向に一定であってもよいし、供給ローラ25の軸方向端部に近づくにつれて外径が減少するクラウン形状、供給ローラ25の軸方向端部に近づくにつれて外径が増加する逆クラウン形状、或いはテーパ形状であってもよく、両端部で径の異なる形状であってもよいが、後述する理由により、本実施の形態では逆クラウン形状が好ましい。
【0046】
次に、供給ローラ25の一般的な製造方法について説明する。図5は、供給ローラ25の製造方法を示すフローチャートである。先ず、上記したゴム材料に、フィラー、発泡剤及び架橋剤を添加する(ステップS101)。
【0047】
フィラーには、補強性充填剤と導電性充填剤とがある。補強性充填剤としては、例えば、シリカ(煙霧質シリカ又は沈降性シリカ)、補強性カーボンブラック等を用いることができる。導電性充填剤としては、例えば、導電性カーボンブラック、ニッケル、アルミニウム、銅等の金属粉末、酸化亜鉛等の金属酸化物、もしくは、硫酸バリウム、酸化チタン、チタン酸カリウム等に酸化錫をコーティングしたもの等を用いることができる。ここでは、フィラーとして、チタン、補強性カーボンブラック、及び導電性カーボンブラックを用いる。
【0048】
発泡剤としては、アゾ化合物系発泡剤(ここでは、アゾビスイソブチルニトリル:AIBN)を用いる。但し、アゾ化合物系発泡剤の代わりに、重炭酸塩系、イソシアネート系、亜硝酸塩、ヒドラジナ誘導体、またはアジド化合物系発泡剤等を用いてもよい。
【0049】
架橋剤(加硫剤)としては、パーオキサイドおよび硫黄系加硫剤を用いる。但し、これらの代わりに、白金触媒存在下のハイドロジェンシロキサン、またはイソシアネート剤等を用いてもよい。
【0050】
このようにゴム材料に、フィラー、発泡剤および架橋剤を添加したものを、加圧ニーダまたはミキシングロール等を用いて、混合し、混錬する(ステップS102)。
【0051】
混錬したゴム組成物を押出成型機に充填して、芯金51の周囲に押し出し成形する(ステップS103)。これにより、芯金51の表面に円筒状のゴム組成物が成形される。以下では、芯金51の表面にゴム組成物(ゴムコンパウンド)が成形されたものを、ローラ体と称する。
【0052】
次に、このようにして形成したローラ体を加熱炉内にセットし、ゴムの加硫に必要な温度に加熱する(ステップS104)。この工程(1次加硫工程)では、ゴムの加硫が進行するが、発泡は生じない。
【0053】
1次加硫工程の後、発泡のためのプレ加硫工程(ステップS105)を行う。プレ加硫工程では、上述した1次加硫工程よりも高い温度でローラ体を加熱する。これにより、発泡が生じて気泡(セル)が形成され、ゴムの加硫も進行する。ステップS105と後述するステップS1207を、発泡処理と称する。
【0054】
プレ加硫工程の後、加熱炉からローラ体を取り出し、ローラ体の発泡層の外周を粗研磨する(ステップS106)。ここでは、発泡層の外周(表面)の厚さ数[mm]の範囲を、粗研磨で取り除く。上述した1次加硫工程およびプレ加硫工程では、発泡層の外周に、気泡の小さいスキン層が形成されるが、このスキン層は粗研磨によって取り除かれる。
【0055】
その後、粗研磨したローラ体を加熱炉内にセットし、2次加硫工程(ステップS107)を行う。2次加硫工程では、1次加硫工程における加熱温度よりも高い温度までローラ体を加熱する。これにより、さらに発泡が生じ、ゴムの加硫も進行する。
【0056】
2次加硫工程では、予めスキン層が取り除かれているため、ゴムの架橋状態の偏り(歪み)を抑制し、気泡を均一に(即ち、発泡層の表面全体に亘って均一な大きさに)形成することができる。また、2次加硫工程では、シリコーンに由来する低分子シロキサンが揮発により除去されるが、上記のように発泡層の表面からスキン層が取り除かれているため、低分子シロキサンを効果的に除去することができる。
【0057】
2次加硫工程の後、ローラ体の発泡層の表面を研磨により仕上げ加工して、所定の外径を得る(ステップS108)。これにより、芯金51の表面に導電性の発泡層52が形成された供給ローラ25が形成される(ステップS109)。
【0058】
また、予めゴムパウンドをチューブ状に押し出すとともに加熱して加硫発泡させ、スポンジゴムチューブを成形し、これを芯金51に被せて供給ローラ25を形成する事も可能である。この時、必要に応じて芯金51と導電性の発泡層52との間を接着剤で固定しても良い。本実施の形態では、導電性の発泡層52のゴム材料としてシリコーンゴムを用いる。シリコーンゴムを採用した供給ローラ25の発泡層52は、独立セル状態の複数のセルを有している。シリコーンゴムは独立気泡を有するため、シリコーンゴムを主成分とすることが最も好ましい。
【0059】
連続気泡を有する導電性発泡層の場合、トナーが気泡の内部に奥深くまで侵入可能であるため、気泡内でトナーが詰まる可能性がある。そのため、画像形成装置による印刷枚数の増加と共に、気泡内に詰まるトナーが増加し、その結果、導電性発泡層の硬度及び電気抵抗が上昇し、ソナーの供給不足に起因する画像むら(カスレ)が発生する可能性がある。これに対し、独立気泡を有する導電性発泡層の場合、トナーが気泡の内部に奥深くまで侵入することがなく、気泡内のトナーの詰まりが生じにくい。そのため、画像形成装置による印刷枚数が増加しても、導電性発泡層の硬度及び電気抵抗の上昇が少なく、画像むら(カスレ)の発生も抑制される。
【0060】
ここで、供給ローラ25の材料となるシリコーン比率及びウレタン比率の算出方法について説明する。
【0061】
供給ローラ25の導電性の発泡層52から1辺が1[cm]の正方形の試料を切り出し、FT-IR(フーリエ変換赤外分光法)分析を行った。分析範囲は、波数400~4000[cm-1]とした。
【0062】
図6は、シリコーンゴム製の導電性の発泡層52のFT-IR(フーリエ変換赤外分光法)分析により得られるスペクトル強度分布を示す図である。図6では、波数778[cm-1]にSiOのピークが見られ、波数995[cm-1]にSi-O-Siのピークが見られ、波数1254[cm-1]にSiCのピークが見られる。
【0063】
図7は、ウレタンゴム製の導電性の発泡層52のFT-IR分析により得られるスペクトル強度分布を示す図である。図7では、波数1721[cm-1]にCOのピークが見られ、波数2937[cm-1]にNHのピークが見られる。
【0064】
供給ローラ25の導電性の発泡層52が、シリコーンゴムと他の物質(例えばウレタンゴム)を含むものであっても、シリコーンゴムの主成分が50重量%以上であればよい。またシリコーンゴムは、変性シリコーンゴムであってもよい。
【0065】
尚、本実施の形態の供給ローラ25は、発泡層52の諸元の特定の要素を、後述するように範囲限定したものであるが、ここでは、これらが限定されない種々の供給ローラを供給ローラ25´として区別し、各要素について以下に説明する。
【0066】
(製品硬度について)
供給ローラ25´の導電性の発泡層52は、アスカーF硬度40以上46以下の低硬度で使用することが望まれる。これは供給ローラ25´の硬度が上記の範囲より高い場合、トナーダメージの負荷が増大することによるグレイニネス(ドット形成)の悪化や、接触部での圧がよりかかるためトナーや部材の摩耗が増大し、高耐久化に向かない欠点がある。逆に上記の範囲より低い場合、硬度調整に使用される発泡剤の量が過多になり製造上難しく、製造されたものでもローラ内の発泡状態のムラが大きく品質上安定しないため、供給ローラとして使用することは難しい。
【0067】
供給ローラ25´の硬度調整には、AIBN(Azobis isobutyronitrile)などの発泡剤が用いられ、発泡剤の量により硬度を調整する。発泡剤の使用により、スポンジの発泡倍率は上昇し、発泡セルの大きさ、セル壁の厚さを変化させることが可能である。
【0068】
(伸張度について)
供給ローラ25´のソリッド時の状態での伸張度は、後述する試験結果により、72.6[%/N/mm]以上81.6[%/N/mm]以下の範囲内であることが望ましい。ここでいう伸張度は、引張試験でのソリッドが伸張させていった場合の破断時のゴム試験片の伸び率[%]を、ソリッドを引っ張って破断させるのに要した最大応力(破断強度)で割った値を指す。この値が高いほど圧縮回転させたとき、回転方向に伸びやすく、逆に低いほど、回転方向に伸びにくく、逆に破断(摩耗)しやすいことが考えられる。尚、伸張度の測定方法については、後で詳しく説明する。
【0069】
図8は、伸長度が72.6%未満の場合、或いは81.6%を超える場合の、初期或いは連続印刷中の供給ローラ25´のセル壁の様子を模式的に示す説明図である。
【0070】
同図に示すように、伸張度が72.6[%/N/mm]未満である場合、現像ローラ(現像剤担持体)23とニップさせた状態で回転させたとき、供給ローラ25´のセル壁は伸び難く、回転方向での圧力でセル壁が千切れやすく、つまり摩耗しやすい。これによりこの供給ローラ25´を使用していくと連続印字中で摩耗が加速し、現像ローラ23とのニップ幅が小さくなり、現像ローラ23上の未現像トナーがかき取れないため、汚れが発生する。
【0071】
逆に伸張度が81.6[%/N/mm]を超えた場合、現像ローラ(現像剤担持体)23とニップさせた状態で回転させたとき、図8に示すように、供給ローラ25´自体は回転方向で伸びやすく、連続印字中で回転方向にセル壁が寝るためにヘタリ易くなる。これにより垂直方向の応力低下が発生し、結果現像ローラ23への応力が低下する。この原因から現像ローラ23上の未現像トナーがかき取れないため、汚れが発生する。以上のことから供給ローラ25´のソリッドの状態での伸張度は、72.6[%/N/mm]以上81.6[%/N/mm]以下の範囲内であることが望ましいといえる。
【0072】
尚、ここでいう「汚れ」とは、正常に帯電したトナーに対して帯電量が高いトナー、いわゆる過剰帯電トナーにより、画像の背景部、即ち印刷物の非画像部にトナーが付着することをという。本実施の形態では、マイナス帯電するトナーを用いているため、過剰にマイナス帯電したトナーにより「汚れ」が発生する。
【0073】
(回転応力減衰率について)
供給ローラ25´の導電性の発泡層52の回転応力減衰率は、後述する試験結果により、27%以上31%以下の範囲内であることが望ましい。ここでいう回転応力減衰率は、供給ローラ25´の発泡層52に金属製圧子を0.73mm押しこみ、6時間圧縮回転させた回転応力試験後の初期応力に対する減衰率を指す。尚、回転応力減衰率の測定方法については、後で詳しく説明する。
【0074】
図9は、回転応力減衰率が27.0%未満の場合、或いは31.0%を超える場合の、初期或いは回転応力試験後の供給ローラ25´のセル壁の様子を模式的に示す説明図である。
【0075】
同図に示すように、回転応力減衰率が27%未満である場合、供給ローラ25´は、硬度が高い或いは変形しにくい状態であるため、現像ローラ(現像剤担持体)23との接触回転時でも供給ローラの25´導電性の発泡層52は変形前の形を維持しようとする。このため、現像ローラ23などの接触部材に対して強く圧がかかることになり、感光ドラム21の負荷トルクが上昇する問題が発生する。また、それにより現像ローラ23の表層に対して損傷を引き起こす可能性があり、現像ローラ23のフィルミングなどが発生し、それに起因する印字不良が発生する恐れがある。
【0076】
逆に回転応力減衰率が31%を超えた場合、供給ローラ25´の歪み性が悪い状態、つまり発泡層52の押し込み部の弾力性の回復が鈍いためヘタリ易く、図9に示すように、6時間後の状態では現像ローラ(現像剤担持体)23との回転時の接触圧が弱く、現像ローラ23の未現像後のトナーが十分にかき取れず、汚れが発生する。以上のことから供給ローラ25´の回転応力減衰率は27%以上31%以下が望ましいといえる。
【0077】
ここで、上記で説明した「摩耗(量)」と「ヘタリ」を詳しく規定するために採用した簡易摩耗試験による測定結果について説明する。
【0078】
(簡易摩耗試験について)
簡易摩耗試験は、粒度30[μm](#600)のラッピングフィルムを貼り付けてある金属圧子に、回転している供給ローラ25´の中央付近を250秒間押し当てた前後の供給ローラ25´の重量と押し当て部の外径を測定するものである。簡易摩耗試験後の供給ローラ25´の重量変化を重量変化量[g]、摩耗試験後の圧子ニップ部の外径変化量を外径変化量[mm]と示す。尚、簡易摩擦試験の測定方法については、後で詳しく説明する。
【0079】
重量変化量[g]は、供給ローラ25´の導電性の発泡層52の摩耗量を表すことが可能である。この重量変化量はラッピングフィルムで接触回転した際に発泡層52のセル壁が削れる(摩耗する)ことにより発生しているものである。
【0080】
外径変化量[mm]は、供給ローラ25´の導電性の発泡層52の摩耗による状態とヘタリによる状態を表すことが可能である。外径変化量が大きい場合、摩耗によって削れている状態と、セル壁が寝てヘタっている状態がある。発泡層52の重量変化量が大きく、外径変化量が大きい場合、摩耗による影響が強いといえる。また同発泡層52の重量変化量は小さいが、外径変化量が大きい場合、摩耗はしてないが、セル壁が寝てヘタっているため、外径が小さくなったといえる。
【0081】
後述する試験結果により、簡易摩耗試験前後のニップ部での供給ローラ25´の、外径変化量が0.03mm以下で且つ重量変化量が0.07g以下であることが望ましい。上記以外の規定であると、摩耗、或いはヘタリによる状態が発生しており、上記で説明した通り、現像後の現像ローラ(現像剤担持体)23の残トナーを十分に掻きとれず汚れが発生してしまう。故に、簡易摩耗試験前後のニップ部での供給ローラ25´の外径変化量が、0.03mm以下で且つ供給ローラ25´の重量変化量が0.07g以下であることが望ましい。
【0082】
(回転応力比率について)
供給ローラ25´の回転時の、中央部応力A[N]と端部の応力B[N]の比率B/A(回転応力比率)は、後述する試験結果により、0.97以上1.23以下が望ましい。ここでいう回転応力は、φ13.0(mm)の金属ローラの最表面に接触する位置を基準高さとし、そこから供給ローラ25´の導電性の発泡層52に金属製圧子を0.73mm押しこんだ際のローラ回転時の最大応力[N]を指す。回転応力比率は中央部回転応力A[N]と端部の回転応力B[N]の比(B/A)を指す。尚、回転応力比率の測定方法については、後で詳しく説明する。
【0083】
回転応力比率が1.23を超える場合、供給ローラ25´端部側の圧がより強くなることで、感光ドラム21のトルク負荷増大及び端部側のトナーダメージが増大することによりグレイニネス(ドットの再現性)の悪化が発生する。
【0084】
回転応力比率が0.97以下の場合、現像ローラ23とのニップ幅が小さくなり、現像ローラ23へのトナー供給、現像後の現像ローラ23の残トナーのかき取り効率が悪くなる。また連続印字を行っていくと供給ローラ25´側の摩耗により、端部側での現像ローラ23とのニップ幅が減少し、より供給性、かき取り性が低下するため、現像ユニット2の耐久性が悪くなる。特にドラムカウント30k以上印字した状態においては供給ローラ25´の端部側のトナー供給にムラが発生し、ベタ端部で部分カスレが発生する。またこのカスレの発生は、両端部に古いトナーが押しこまれたことで両端部に劣化したトナーが溜まりやすい故に、現像ローラ23へのトナー供給が低下することにもよる。特に本実施の形態のような、トナー収容部38に対してトナー供給口35が中央付近に設けられている場合はその傾向が顕著である。また、本実施の形態では、トナー収容部38の長手方向の長さに対するトナー供給口35の長手方向の比は0.099で実施したが、比率がより大きくなればトナー供給口からのトナー供給性が良化するため、よりカスレを抑制できる。
【0085】
以上のように、供給ローラ25´の回転時の、中央部応力A[N]と端部の応力B[N]の比率B/A(回転応力比率)は0.97以上1.23以下が望ましい。
【0086】
例えば、供給ローラ25´中央部よりも端部側の外径が太い逆クラウン形状にして、端部側の応力を中央部よりも高くすることで、連続印字経時での供給ローラ25´側の摩耗による、端部側での現像ローラ23とのニップ幅減少を抑制できるため、トナー供給性が維持されて現像ユニット2の長寿命が可能になる。また規定範囲内でこの回転応力比率が大きいほど(1.23に近いほど)トナーの攪拌性が高くなるため、古いトナーが滞在しやすい端部側もフレッシュなトナーが多いセンター側と混ざりやすくなるため、長寿命でかつ高品質な画像を得ることが可能になる。
【0087】
次に、伸張度、回転応力減衰率、簡易摩耗試験、回転応力比率の各測定方法について説明する。
【0088】
(伸張度の測定方法)
伸張度の測定では、供給ローラ25´の導電性の発泡層52を構成するゴム材料の、加硫後、発泡処理前の材料(ソリッドのゴム材料)を用いて、図10に示すようにJIS-K6251に規定するダンベル1号形状の試験片209を形成した。試験片209は、一方向に長い板状片であり、長手方向中央の平行部209aと、長手方向両端部のつかみ部209bとを有する。尚、加硫後、発泡処理前の材料とは、図5を参照して説明した製造工程において、ステップS104の加硫工程後、ステップS105のプレ加硫工程を行う前の材料である。
【0089】
図10において、符号209、209a、209b以外の数字は寸法を表しており、単位は[mm]である。試験片209の全長は120[mm]であり、標線間距離は80[mm]である。試験片209の平行部209aの幅は10[mm]であり、各つかみ部209bの最大幅は25[mm]である。
【0090】
試験片209を引張試験機に取り付け、JIS-K6251に基づく引張試験を行った。試験片209の両端のつかみ部209bを、引張試験機の上下一対のチャック(把持部)で把持し、長手方向に引張力を加えた。試験片209のチャック間距離は、80[mm]とした。引張試験機による引張速度は、500[mm/分]とした。
【0091】
このように試験片209に引張力を加え、試験片209が破断したときの試験片209の伸び率を、伸び率E[%]とする。より具体的には、伸び率E[%]は、試験片209の引張前の長さ120[mm]に対する、試験片209の破断時の長さの比率である。
【0092】
また、引張試験機のロードセルで測定した試験片209の破断時の応力を、応力S[N/mm]とする。
【0093】
ここでは、試験片209の破断時の伸び率E[%]を、破断時の応力S[N/mm]で除算した値を、伸張度[%/(N/mm)]と定義する。伸張度が高いほど、圧縮回転させたとき、導電性の発泡層52が回転方向に伸びて変形しやすく、伸張度が低いほど、導電性の発泡層52が回転方向に伸びにくく、変形する際に破断(磨耗)しやすいことが考えられる。
【0094】
(回転応力減衰率の測定方法)
供給ローラ25´の回転応力減衰率の測定方法について、図11を参照しながら説明する。図11は、供給ローラ25´の回転応力減衰率の測定方法の説明に供する概略構成図である。
【0095】
ここでの供給ローラ25´の回転応力減衰率の測定は、インストロン社製圧縮試験機(型名:INSTRON 5543A)を用いて実施した。図11に示すように、回転支持材201に、供給ローラ25´の芯金51の両端部を回転可能に載置する。この状態で供給ローラ25´を回転速度200[rpm](周速度136.1[mm/秒])で回転させ、回転状態の発泡層52に、断面外径16[mm]、長さ50[mm]のSUS製の円柱である圧子205を、圧縮速度10[mm/分]で、0.73[mm]まで押し込んで連れ回り状態とし、その状態を6時間維持させる。
【0096】
回転応力減衰率は、6時間後の供給ローラ25´の応力が初期時の応力に対してどれくらい減衰しているかを示したものである。つまり回転応力減衰率は下式にて表すことができる。
回転応力減衰率[%]=(1-(6H後の供給ローラ25の応力[N]
/初期時押し込み時の応力[N]))×100
【0097】
(簡易摩擦試験の方法)
供給ローラ25´の外径変化量及び重量変化量を測定する簡易摩耗試験の測定方法について、図12を参照しながら説明する。図12(a)は、供給ローラ25´の簡易摩耗試験の測定方法の説明に供する概略構成図であり、図12(b)は、圧子206の構成を示す外観斜視図である。
【0098】
ここでの供給ローラ25´の簡易摩耗試験の測定は、インストロン社製圧縮試験機(型名:INSTRON 5543A)を用いて実施した。図12(a)に示すように、回転支持材201に、供給ローラ25´の芯金51の両端部を回転可能に載置する。この状態で供給ローラ25´を回転速度200[rpm]で回転させ、回転状態の発泡層52に、圧子206を当接させる。
【0099】
圧子206は、図12(b)に示すように、一辺が50[mm]の正方形の表面を有し、厚さが10[mm]のSUS製の金属板206aの一方の面に、粒度30[μm](#600)のラッピング(研磨)フィルム(20mm×50mm)206bを中央振り分けで貼り付けてある。この圧子206を、回転速度200[rpm](周速度136.1[mm/秒])で回転している供給ローラ25´の発泡層52に、圧縮速度10[mm/分]で、0.73[mm]まで押し込んでその状態を250秒間維持させる。
【0100】
図13は、供給ローラ25´の外径変化量及び重量変化量の測定手順を示すフローチャートである。まず、簡易摩耗試験の開始前に、供給ローラ25´の重量(重量w1とする)を測定する(ステップS201)。
【0101】
次に、供給ローラ25´の外径(外径d1とする)を測定する(ステップS202)。また、供給ローラ25´における圧子206との接触領域C(図12(a))において、軸方向に等間隔に9か所で外径を測定し、平均値を求めた。供給ローラ25´の外径測定には、アポロ精工株式会社製のローラ径自動測定装置「RM202」を用いた。
【0102】
その後、上述したように供給ローラ25´を回転速度200[rpm](周速136.1[mm/秒])で回転させ、圧子206を押し込み速度10[mm/分]で導電性の発泡層52に押し込み、押し込み量が0.73[mm]に達すると、その状態を維持したまま供給ローラ25´を250秒間回転させ、圧子206を導電性の発泡層52から離間させる(ステップS203)。
【0103】
この状態で、供給ローラ25´の外径(外径d2とする)を測定し(ステップS204)、更に供給ローラ25´の重量(重量w2とする)を測定する(ステップS205)。
供給ローラ25´の重量及び外径の測定方法は、ステップS201,S202で説明した通りである。
【0104】
ステップS201,S205で求めた供給ローラ25の重量w1,w2から、供給ローラ25´の重量変化量(w1-w2)を求めた。供給ローラ25の重量減少量は、供給ローラ25´の摩耗量を反映している。
【0105】
また、ステップS202,S204で求めた供給ローラ25´の外径d1,d2から、供給ローラ25´の外径変化量(d1-d2)を求めた。供給ローラ25´の外径減少量は、供給ローラ25の摩耗量とセル壁の倒れ具合(ヘタリ具合)を反映している。
【0106】
(回転応力比率の測定方法)
次に、供給ローラ25´の回転応力比率の測定方法について、図14を参照しながら説明する。図14は、供給ローラ25´の回転応力比率の測定方法の説明に供する概略構成図であり、同図(a)は端部を試験するときの図であり、同図(b)は中央部を試験するときの図である。
【0107】
ここでの供給ローラ25´の回転応力比率の測定は、インストロン社製圧縮試験機(型名:INSTRON 5543A)を用いて実施した。図14に示すように、回転支持材201に、供給ローラ25´の芯金51の両端部を回転可能に載置する。この状態で供給ローラ25´を回転速度200[rpm]で回転させ、回転状態の発泡層52に、断面外径16[mm]、長さ50[mm]のSUS製の円柱である圧子205を、圧縮速度10[mm/分]で、0.73[mm]まで押し込む。
【0108】
押し込む際、事前にφ13.0[mm]の金属ローラの最表面に接触する位置を基準高さとして見積もり、その基準高さから供給ローラ25´の導電性の発泡層52に金属製の圧子205を0.73[mm]押し込んで測定を行った。図14(a),(b)に示すように、上記測定を中央部と端部側で行い、回転している供給ローラ25´からの最大応力(回転応力)を測定した。このとき中央部の回転応力A[N]で端部の回転応力B[N]を割った値を回転応力比率(B/A)として算出した。
【0109】
尚、本実施の形態では、発泡層52の長手方向の長さが221.4mmであり、圧子205の長手方向の長さが50[mm]である。よってここでいう中央部での測定とは、発泡層52の長手方向において、その中央部(端部から110.7[mm]±20[mm]の位置)に、センター振り分けで配置される圧子205の中央部(端部から25[mm]の位置)を重ねるようにして配置して測定することに相当する。
【0110】
次に、供給ローラ25´の、伸張度を72.6[%/N/mm]以上81.6[%/N/mm]以下に、回転応力減衰率を27%以上31%以下に、回転応力比率を0.97以上1.23以下とする根拠となった印刷試験及びその試験結果について説明する。
【0111】
表1は、試験試料として用意した諸元の異なる、実施例1~6及び比較例1~7の13種類の供給ローラ25´と、これ等を用いて行った印刷試験による評価結果とを列記したものである。
【0112】
【表1】
【0113】
同表に示すように、実施例1~6及び比較例1~7の13種類の試験試料としての供給ローラ25´は、伸張度、回転応力減衰率、回転応力比率がそれぞれ異なっている。ここで、試験試料としての13種類の供給ローラ25´について説明する。
【0114】
実施例1の供給ローラ25´は、伸張度が81.6[%/N/mm]、回転応力減衰率が28[%]、回転応力比率が1.23である。中央部よりも端部側の方が発泡層52の厚みがあり、ゴム部の摩耗量が少なく、ヘタっていないサンプルであり、且つトナーの攪拌も良いサンプルである。
実施例2の供給ローラ25´は、伸張度が72.6[%/N/mm]、回転応力減衰率が29[%]、回転応力比率が1.23である。中央部よりも端部側の方が発泡層52の厚みがあり、ゴム部の摩耗量が少なく、ヘタっていないサンプルであり、且つトナーの攪拌も良いサンプルである。
実施例3の供給ローラ25´は、伸張度が81.6[%/N/mm]、回転応力減衰率が28[%]、回転応力比率が0.97である。発泡層52の厚みは中央部と端部が同等のものであり、ゴム部の摩耗量が少なく、ヘタっていないサンプルである。
【0115】
実施例4の供給ローラ25´は、伸張度が72.6[%/N/mm]、回転応力減衰率が27[%]、回転応力比率が1.09である。中央部よりも端部側の方が発泡層52の厚みがあり、ゴム部の摩耗量が少なく、ヘタっていないサンプルであり、且つトナーの攪拌も良いサンプルである。
実施例5の供給ローラ25´は、伸張度が72.6[%/N/mm]、回転応力減衰率が31[%]、回転応力比率が0.98である。ゴム部の摩耗量が少なく、ヘタっていないサンプルである。
実施例6の供給ローラ25´は、伸張度が75.6[%/N/mm]、回転応力減衰率が31[%]、回転応力比率が1.22である。ゴム部の摩耗量が少なく、ヘタっていないサンプルであり、且つトナーの攪拌も良いサンプルである。
【0116】
比較例1の供給ローラ25´は、伸張度が81.6[%/N/mm]、回転応力減衰率が28[%]、回転応力比率が0.90である。ゴム部の摩耗量が少なく、ヘタっていないサンプルであるが、初期の端部側の応力が低いため、連続印刷経時に端部側で摩耗した際に、供給性が低下するサンプルである。
比較例2の供給ローラ25´は、伸張度が87.0[%/N/mm]、回転応力減衰率が33[%]、回転応力比率が0.90である。伸張度が高く、簡易摩耗試験による外径変化量が0.05[mm]である故、ヘタリ易いサンプルである。
比較例3の供給ローラ25´は、伸張度が65.8[%/N/mm]、回転応力減衰率が26[%]、回転応力比率が1.01である。簡易摩耗試験による外径変化量が0.05[mm]、重量変化量が0.30[g]であり、ゴム部の摩耗量が大きいサンプルである。
【0117】
比較例4の供給ローラ25´は、伸張度が65.8[%/N/mm]、回転応力減衰率が30[%]、回転応力比率が1.10である。簡易摩耗試験による外径変化量が0.07[mm]、重量変化量が0.21[g]であり、ゴム部の摩耗量が大きいサンプルである。
比較例5の供給ローラ25´は、伸張度が69.4[%/N/mm]、回転応力減衰率が33[%]、回転応力比率が1.03である。簡易摩耗試験による外径変化量が0.06[mm]、重量変化量が0.19[g]であり、ゴム部の摩耗量が大きく、且つヘタリ易いサンプルである。
比較例6の供給ローラ25´は、伸張度が65.8[%/N/mm]、回転応力減衰率が24[%]、回転応力比率が1.27である。簡易摩耗試験による外径変化量が0.07[mm]、重量変化量が0.21[g]であり、ゴム部の摩耗量は大きいサンプルである。
比較例7の供給ローラ25´は、伸張度が75.6[%/N/mm]、回転応力減衰率が28[%]、回転応力比率が0.69である。ゴム部の摩耗量が少なく、ヘタっていないサンプルであるが、初期の端部側の応力が低いため、連続印刷経時に端部側で摩耗した際に、供給性が低下するサンプルである。
【0118】
次に、画像評価方法について説明する。ここでの供給ローラ25´の画像評価は、図1に示したプリンタ1と基本的な構成を同じくする画像評価装置(C650dnw 株式会社沖データ製)を使用し、これに試料としての供給ローラ25´を装着して行った。従って、画像評価装置として図1に示すプリンタ1を参照しながら説明する。
【0119】
トナーはマゼンタ(M)を使用した。このトナーは、凝集度が48[%]~56[%]の範囲内、且つブローオフ帯電量75~80[μC/g]であり、トナーカートリッジ3には、予めトナーを約23.0[g]±0.5[g]を充填した。
【0120】
供給ローラ25´の連続印字経時での摩耗によるトナー供給不足で発生するカスレ、及び未現像トナーの掻き取り不足により発生する汚れに対する効果を確認するために、供給ローラ25´を搭載した画像評価装置(プリンタ1)を動作させて、50,000枚の連続印刷試験を行った。
【0121】
連続印刷試験の条件を下記(1)-(5)のように設定する。
(1)印刷速度:A4縦方向35[ppm]
(2)一日の連続印刷枚数:2,500枚(これを20日間行なう)
(3)印字パターン:0.3[%](印刷画像密度)
(4)2,500枚印刷開始前と印刷終了後に、2×2(ハーフトーン)パターン及びベタパターンを印字する。
(5)試験環境:温度20[℃]、相対湿度50[%]
【0122】
画像判定は以下のようにして行った。
2,500枚印刷開始前と印刷終了後に2×2(ハーフトーン)パターン及びベタパターンを印字し、汚れ及びカスレの判定を行なった。汚れの判定は2×2パターンを印字したとき、紙面上端部に本来印字されない部分に余分なトナーが現像されていないかを確認する。カスレの判定はベタパターンを印字したとき、A4紙の縦中央から下端部にかけて白抜けの画像が発生しているかどうかを確認する。この際、端部で部分的に白抜けていた場合も発生したものとしてカウントする。
尚、画像判定では、この汚れとカスレが50,000枚の連続印刷試験中で、どちらか一つ以上発生したものを「×」、どちらも発生しなかったものを「○」と判別した。
【0123】
ここで、2×2(ハーフトーン)パターン印刷、及び印刷画像密度について説明する。図15(a)は、記録用紙10の略全域にわたって2×2(ハーフトーン)パターン印刷を施した際の画像150を模式的に示した図であり、図15(b)は、その部分拡大図である。
【0124】
図15(b)に示すように、例えば600[dpi]の解像度の1ドットの領域を1マスとし、縦4ドット分、横4ドット分の16マスごとに区分けした場合、各区分け領域の、例えば中央部の2×2ドットに相当する4マス分に定着パターンを生成したものである。
【0125】
印刷画像密度において、所定の領域(例えば、感光ドラム1周分や記録用紙1ページ分等)の印刷可能範囲に全面ベタ印刷時の面積率100[%]印刷のことを印刷画像密度100[%]といい、この印刷画像密度100[%]に対して1[%]の面積に相当する印刷を印刷画像密度1[%]という。即ち、印刷画像密度は、次式
印刷画像密度=〔Cm(i)/(Cd×C0)〕×100
で算出される。
Cm(i):感光ドラムがCd回転したときに実際に印刷で用いられたドットの数、即ち露光されたドット数。
C0:感光ドラム1回転当たりのドット数、すなわち、露光の有無に限らず、感光ドラム1回転当たりで(印刷でドットが潜在的に)可能なドットであり、仮に、ベタ画像(ソリッド画像)の場合に用いられるドット数。
Cd×C0は感光ドラムがCd回転したときの(印刷でドットが潜在的に)可能なドット数。
【0126】
次に、トナー攪拌性試験について説明する。ここでの供給ローラ25´のトナー攪拌性試験は、図1に示したプリンタ1と基本的な構成を同じくする画像評価装置(C650dnw 株式会社沖データ製)を使用し、これに試料としての供給ローラ25´を装着して行った。従って、画像評価装置として図1に示すプリンタ1を参照しながら説明する。
【0127】
各供給ローラ25´を実装した現像ユニット2(図2参照)の上端部分全面をくりぬき、現像ユニット両端部から2.5[cm]の範囲にシアン(C)トナーを2.5[g]ずつ(計5g)を投入する。そこからシアントナーに囲まれた領域(中央部)にイエロー(Y)トナー27[g]を投入する。トナーを投入したあとは、くり抜いた部分からトナーが漏れないように、ビニールを敷き、画像評価装置(プリンタ1)に搭載した。
【0128】
連続印字の条件を下記(1)-(5)のように設定する。
(1)印刷速度:A4縦方向35[ppm]
(2)一回の連続印刷枚数:計500枚
(3)印字パターン:0.3[%](印刷画像密度)
(4)連続印刷開始前および100枚目、200枚目を印字したあとに2×2(ハーフトーン)を印字する。
(5)試験環境:温度20[℃]、相対湿度50[%]
【0129】
色攪拌性試験について説明する。連続印刷開始前と200枚目で印字した2×2(ハーフトーン)の端部付近を分校測色計X-Rite528(X-Rite社)を用いて色差ΔE(L*a*b)を測定した。連続開始前の(a,b)と200枚目の(a,b)の2点の傾きをトナー攪拌係数kとして算出した。トナー攪拌係数が高いほど、色彩の変化が起こりやすいため、トナー攪拌係数が高いほど、トナー攪拌性が高いローラといえる。従って、今回トナー攪拌性の指標としてトナー攪拌係数を用いた。
【0130】
図16は、トナー攪拌係数kと回転応力比率(B/A)の関係を示す特性グラフである。同グラフに示すように、トナー攪拌係数kは、回転応力比率(B/A)に応じて変化し、伸張度が72.6[%/N/mm]以上81.6[%/N/mm]以下のグループの平均の場合、回転応力比率(B/A)が、0.97で極小となる曲線を示し、0.97を境にして増加或は減少するにつれてトナー攪拌係数kが増加する。しかしながら回転応力比率(B/A)が0.97未満の場合、前記したようにトナー供給にムラが発生する。
【0131】
また、トナー攪拌係数kは、回転応力比率が0.97超の場合、回転応力比率の増加に伴なって増加する。また同図に示す、伸張度が72.6[%/N/mm]以上81.6[%/N/mm]以下のグループ平均が示す曲線と、伸張度が61.8[%/N/mm]以上65.8[%/N/mm]以下のグループ平均が示す曲線との比較から、伸張度が大きい方が、トナー攪拌係数kが高くなる傾向があることがわかる。
【0132】
試験結果について説明する。
表1に示すように、印字不良が発生しなかった実施例1~6に対し、比較例1~7は、カスレ及び汚れのどちらか一つ以上が発生した。この結果から、回転応力比率が0.97以上1.23以下であり、且つ伸張度が72.6[%/N/mm2]以上81.6[%/N/mm2]以下であり、且つ回転応力減衰率が27%以上31%以下であれば、良好な画像評価結果が得られることがわかった。
【0133】
比較例1の供給ローラ25´は、伸張度及び回転応力減衰率が規定範囲内にあるが、回転応力比率が0.97未満であり、部分カスレが発生した。これは連続経時による摩耗から、初期よりも、端部側で現像剤担持体とのニップ幅が減少することで供給ローラ25´のトナー供給にムラが生じ、十分にトナーが現像ローラ23に供給できなかったためである。
【0134】
比較例2の供給ローラ25´は、伸張度、回転応力減衰率、及び回転応力比率が何れも規定範囲外となっている。伸張度が81.6[%/N/mm]を超えた場合、現像ローラ23とニップさせた状態で回転させたとき供給ローラ25´がヘタリ易くなり、現像ローラ23に対しての応力が低下することで、現像後の現像ローラ23の残トナーを十分に掻きとれなくなるため汚れが発生する。
【0135】
比較例3の供給ローラ25´は、伸張度及び回転応力減衰率が規定範囲外である。伸張度が72.6%[%/N/mm]未満の場合、現像ローラ23との接触回転による経時での摩耗により、現像ローラ23とのニップ幅が減少したことにより、現像後の現像ローラ23の残トナーを十分に掻きとれなくなるため汚れが発生する。比較例3は、回転応力比率が規定範囲内であるが、上記したように摩耗しやすい仕様であるため、ニップ量低下による影響が高く、結果として汚れが発生する。
【0136】
比較例4の供給ローラ25´は、伸張度が規定範囲外である。伸張度が72.6[%/N/mm]未満の場合、比較例3の場合と同様に、現像ローラ23との接触回転による経時での摩耗により、現像ローラ23とのニップ幅が減少したことにより、現像後の現像ローラ23の残トナーを十分に掻きとれなくなるため汚れが発生する。比較例4は、回転応力比率及び回転応力減衰率が規定範囲内であるが、上記したように摩耗しやすい仕様であるため、ニップ量低下による影響が大きく、結果として汚れが発生する。
【0137】
比較例5の供給ローラ25´は、伸張度及び回転応力減衰率が規定範囲外である。伸張度が72.6[%/N/mm]未満の場合、比較例3の場合と同様に、現像ローラ23との接触回転による経時での摩耗により、現像ローラ23とのニップ幅が減少する。更に、回転応力減衰率が31%を超えているため発泡層52の押し込み部の弾力性の回復が鈍いためヘタリ易くなり、現像ローラ23の未現像後のトナーが十分にかき取れず、汚れが発生する。比較例5も、回転応力比率が規定範囲内であるが、上記のように摩耗し易く、ヘタリ易い性質であるため、その2点の影響が大きく、結果として汚れが発生する。
【0138】
比較例6の供給ローラ25´は、伸張度が72.6[%/N/mm]未満、回転応力減衰率が27%以下、回転応力比率が1.23を超え、何れも規定範囲外となっている。故に汚れが発生するだけでなく、感光ドラム21にかかる負荷も増大する。回転応力比率が1.23を超えると供給ローラ25´端部側の圧がより強くなり、感光ドラム21のトルク負荷増大し、他接触部材への負荷もおおきくなり、現像ユニット2自体の耐久性にも悪影響を及ぼす。
【0139】
比較例7の供給ローラ25´は、伸張度及び回転応力減衰率が規定範囲内にあるが、回転応力比率が0.97未満であり、部分カスレが発生した。これは連続経時による摩耗から、初期よりも、端部側で現像剤担持体とのニップ幅が減少することで供給ローラ25´のトナー供給にムラが生じ、十分にトナーが現像ローラ23に供給できなかったためである。
【0140】
比較例1~7に対して、実施例1~6の供給ローラ25´は、画像不良が見られず、画像は良好であった。従って、実施例1~6の供給ローラ25´から、トナー掻き取り性及びトナー供給性を満足することができる、トナー掻き取り性に関係する供給ローラ25´のソリッド時の伸張度、供給ローラ25´の導電性の発泡層52の回転応力減衰率、及びクレイニネスや耐久時のトナー供給性に関係する回転応力比率、及び外径変化量、重量変化量の各数値範囲を前記したような各数値範囲に設定することができる。従って、実施例1~6の供給ローラ25´は、本実施の形態の供給ローラ25に相当する。
【0141】
以上のように、本実施の形態の供給ローラ25は、発泡層52としてシリコーンゴムを使用し、ソリッド時の伸張度を72.6[%/N/mm]以上81.6[%/N/mm]以下、簡易摩耗試験での外径変化量を0.03mm以下、重量変化量を0.07g以下、供給ローラ25がNIP回転したときの6時間後のゴム部の応力の減衰率を27%以上31%以下、及び中央部の回転応力(A)と端部の回転応力(B)との回転応力比率B/Aを0.97%以上1.23以下に設定することにより、ドラムカウント50kまでトナー供給性およびトナー掻き取り性を維持し、汚れ及びカスレの発生を抑制することが可能となる。
【0142】
また、伸張度を72.6[%/N/mm]以上81.6[%/N/mm]以下に設定することにより、供給ローラ摩耗粉の発生、及び供給ローラセル壁のヘタリによる供給ムラの発生によってもたらされる画像品質の低下が抑制され、回転応力比率B/Aを0.97%以上1.23以下に設定することにより、部分カスレが抑制される。
【0143】
更に、簡易摩耗試験による外径変化量を0.03mm以下とすることにより、外径の減少量が大きくてセル壁が寝ている状態、つまり供給ローラのセル壁のヘタリによる供給ムラの発生が抑制され、回転応力比率B/Aを0.97%以上1.23以下に設定することで部分カスレが抑制される。
【0144】
以上のように、本実施の形態の現像ユニットによれば、印刷画像において、汚れやカスレの発生を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0145】
上記した本発明の実施形態による実施の形態1では、カラープリンタとしての画像形成装置に採用した例を示したが、これに限定されるものではなく、複写機、ファクシミリ、MFP等の画像処理装置にも利用可能である。またカラープリンタについて説明したが、モノクロプリンタであってもよい。
【符号の説明】
【0146】
1 プリンタ、 2 現像ユニット、 3 トナーカートリッジ、 4 転写ローラ、 5 露光ユニット、 6 給紙カセット、 7 定着ユニット、 7a 加熱ローラ、 7b加圧ローラ、 8 用紙搬送経路、 9 転写ベルト、 10 記録用紙、 11 ドライブローラ、 12 テンションローラ、 14 転写ユニット、 21 感光ドラム、 22 帯電ローラ、 23 現像ローラ、 24 現像ブレード、 25 供給ローラ、 27 クリーニングブレード、 28 第1搬送部、 29 第2搬送部、 31 トナー貯蔵部、 32 廃棄トナー収容器、 35 トナー供給口、 36 搬送スクリュー、 37 攪拌部材、 38 トナー収容部、 40 トナー 51 芯金、 52 発泡層、 52a 発泡体外層、 52b 内部層、 101 制御部、101a ドットカウンタ、 101b ドラムカウンタ、 101c 算出部、 111 I/F制御部、 112 受信メモリ、 113 画像データ編集メモリ、 114 操作部、 115 センサ群、 121 帯電ローラ用電源、 122 現像ローラ用電源、 123 供給ローラ用電源、 124 転写ローラ用電源、 125 ヒューズ用電源、 126 ヘッド駆動制御部、 127 定着制御部、 128 搬送モータ制御部、 129 駆動制御部、 130 速断ヒューズ、 131 用紙搬送モータ、 132 駆動モータ、 201 回転支持材、 205 圧子、 206 圧子、 206a 金属板、 206b ラッピングフィルム、 209 試験片、 209a 平行部、 209b つかみ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図16