(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】スツール
(51)【国際特許分類】
A47C 9/00 20060101AFI20240820BHJP
A47C 11/00 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
A47C9/00 Z
A47C11/00
(21)【出願番号】P 2020179959
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-07-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2020年4月11日、積水ハウス株式会社が、積水ハウス株式会社の「関東 住まいの夢工場」内の展示住宅「アクティブシニアの家 山本さん家」にて、前原 尚一によって発明された「スツール」について公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】前原 尚一
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-168020(JP,A)
【文献】特公昭59-040445(JP,B2)
【文献】特開平11-042141(JP,A)
【文献】実開平06-013608(JP,U)
【文献】中国実用新案第2657496(CN,Y)
【文献】米国特許第07073756(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 1/00-17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔を開けて立設する一対の脚部材の間に、座面を形成する水平部材を架設してなるスツールであって、
それぞれ、複数の垂直棒材同士を所定間隔開けて連結固定してなる前記一対の脚部材と、
複数の水平棒材同士を前記所定間隔開けて連結固定してなる前記水平部材と、を備え、
前記複数の水平棒材は、それぞれ長さ方向の両端が、前記複数の垂直棒材の上端に留め継ぎ加工で接合され
、
前記複数の垂直棒材に跨って固定され、前記複数の垂直棒材同士を連結する第1連結材と、
前記複数の水平棒材に跨って固定され、前記複数の水平棒材同士を連結する第2連結材と、を備え、
前記第1連結材は、垂直棒材の隣り合う脚部材に相対向する側面に固定され、
前記第2連結材は、水平棒材の下面及び前記垂直棒材の前記側面に跨って固定されることを特徴とするスツール。
【請求項2】
一方の前記脚部材に固定される前記第1連結材と、他方の前記脚部材に固定される前記第1連結材と、の間に設置され、一対の脚部材の強度を補強する補強材を備え、
前記補強材は、前記一対の脚部材のそれぞれの幅方向の各端縁から、一定距離離れた位置に設置されることを特徴とする請求項1に記載のスツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠性及び強度を兼ね備えたスツールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建築物の外構や公園に設置される屋外構造物は、建築物や設置される屋外空間全体の外観の印象を決定付ける重要な要素として知られている。そのため、屋外構造物は意匠性に配慮したものが多く、従来より、外観が良好なベンチなどが提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の発明には、脚部形成部材と座部形成部材とを接合する接合具を、カバー材で被覆して隠蔽するベンチについて記載されている。この発明では、ボルトやナットなど雑多な接合具が表側に露出しないので、ベンチの美観性を良好なものとすることができる。また座面となる部分は、木材からなる複数の桟材同士を僅かに隙間を開けて配置することで形成しており、雨天時に、座面に雨水が溜まらないよう考慮されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、脚部形成部材が天然素材で形成されていないため、草木の多い公園や周囲に植栽が設けられている住宅の主庭などの場合、エクステリア全体のバランスが取りづらい。また、接合具は隠蔽されているものの、カバー材が設置されているため、脚部形成部材及び座部形成部材のみが表側に露出するベンチと比較して部材点数が多く、外観上雑多な印象を与える可能性がある。一方、ベンチのように屋外で使用される腰掛け家具は、風雨に耐えることができるだけの耐候性や強度が必要であり、意匠性だけでなく強度をも兼ね備えた家具とすることが重要となる。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであって、屋外で使用することができ、意匠性と強度とを兼ね備えたスツールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1のスツールは、互いに間隔を開けて立設する一対の脚部材の間に、座面を形成する水平部材を架設してなるスツールであって、それぞれ、複数の垂直棒材同士を所定間隔開けて連結固定してなる前記一対の脚部材と、複数の水平棒材同士を前記所定間隔開けて連結固定してなる前記水平部材と、を備え、前記複数の水平棒材は、それぞれ長さ方向の両端が、前記複数の垂直棒材の上端に留め継ぎ加工で接合され、前記複数の垂直棒材に跨って固定され、前記複数の垂直棒材同士を連結する第1連結材と、前記複数の水平棒材に跨って固定され、前記複数の水平棒材同士を連結する第2連結材と、を備え、前記第1連結材は、垂直棒材の隣り合う脚部材に相対向する側面に固定され、前記第2連結材は、水平棒材の下面及び前記垂直棒材の前記側面に跨って固定されることを特徴としている。
【0009】
本発明の第2のスツールは、一方の前記脚部材に固定される前記第1連結材と、他方の前記脚部材に固定される前記第1連結材と、の間に設置され、前記一対の脚部材の強度を補強する補強材を備え、前記補強材は、前記一対の脚部材のそれぞれの幅方向の各端縁から、一定距離離れた位置に設置されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1のスツールによると、一対の脚部材は、複数の垂直棒材同士を所定間隔開けて連結固定することで形成され、また水平部材は、複数の水平棒材同士を所定間隔開けて連結固定することで形成される。したがって、雨天時、雨水が座面に溜まることを阻止することができる。また複数の水平棒材は、それぞれ長さ方向の両端が、複数の垂直棒材の上端に留め継ぎ加工で接合されるため、垂直棒材及び水平棒材の小口面や、ボルトなどの接合具が露出せず、外観がすっきりとした意匠性の高いスツールとすることができる。
【0011】
本発明の第1のスツールによると、複数の垂直棒材同士を連結する第1連結材は、垂直棒材の隣り合う脚部材に相対向する側面に固定され、複数の水平棒材同士を連結する第2連結材は、水平棒材の下面及び垂直棒材の前記側面に跨って固定される。したがって、第1連結材及び第2連結材が、座面や脚部材の表側の側面など視認されやすい箇所ではなく、外観上視認されにくい位置に設置されるため、意匠性の高いスツールとすることができる。また垂直棒材及び水平棒材は、各連結材の長さを調整することで設置数を増減できるので、スツールの長さを設置場所や使用人数などに応じて容易に調整することができる。
【0012】
本発明の第2のスツールによると、補強材は、一対の脚部材のそれぞれの幅方向の各端縁から一定距離離れた位置に設置されるので、外観上視認されにくく、より意匠性の高いスツールとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図7】複数のスツールを向きを揃えず並列した状態を示す斜視図。
【
図8】複数のスツールを向きを揃えて並列した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のスツールの最良の実施形態について各図を参照しつつ説明する。本願のスツールは、戸建住宅のテラスや主庭に設置される背もたれ無しの腰掛け家具であり、主に屋外構造物として使用されるが、公園や駅の待合室などの他、屋内空間に使用することもできる。なお、本発明における「垂直棒材の隣り合う脚部材に相対向する側面」は、本実施形態においては、第3側面21cが相当する。
【0015】
図1から
図4に示すように、本願のスツール1は、互いに間隔を開けて立設する一対の脚部材2の間に、座面3aを形成する水平部材3を架設してなるコ字型の1人掛け用家具である。また図示するように、一対の脚部材2は、それぞれ複数の垂直棒材21同士を連結固定して形成されており、水平部材3は、複数の水平棒材31同士を互いに連結固定して形成される。この垂直棒材21及び水平棒材31は、同一の部材で形成されており、それぞれ延出する方向が異なっている。
【0016】
図5及び
図6に示すように、垂直棒材21は、垂直方向へ延びる断面視矩形状の木質角材である。この垂直棒材21は、上面21aが第一辺22aから相対向する第二辺22bへ向けて45度傾斜しており、且つ、第二辺22bが第一辺22aよりも下方となるよう形成されている。垂直棒材21の寸法は特に限定されないが、第一辺22a側の長さを28mm~32mm程度、第一辺22aに直交する第1側面21bの幅を38mm~42mm程度で形成することが望ましく、さらに第一辺22a側を30mm、第1側面21bの幅を40mmとすることが好ましい。また、
図3に示す垂直棒材21の高さH1は380mm~420mm程度で形成されており、このような寸法関係であれば、スツール1に座る人を安定的に支持することができる。
【0017】
図4及び
図6に示すように、水平棒材31は、水平方向へ延びる木質角材であり、長手方向の両端面31aが傾斜するように加工されている。両端面31aは、下端側の一辺32aが、上端側の一辺32bよりも水平棒材31の長手方向の中央部側へ位置するよう傾斜しており、その傾斜角度は45度となっている。また水平棒材31は、上端側の一辺32bの長さが垂直棒材21の第一辺22aの長さと同一となっており、上端側の一辺32bに直交する第2側面31bの高さが垂直棒材21の第1側面21bの幅と同一となっている。そして、水平棒材31の長さL1は340mm~380mm程度で形成される。
【0018】
垂直棒材21及び水平棒材31は、耐候性に優れたバラウ材などのハードウッドで形成されており、屋外構造物として使用される場合、経年と共に周囲の植栽や石材などと調和してエクステリア全体のバランスを保持することができる。またこれらの棒材21、31は、上述した寸法及び材質であれば、汎用品を使用してもよく、屋外用フェンス材として一般的に利用される木質ルーバー材を用いてもよい。
【0019】
図3、
図5及び
図6に示すように、それぞれの脚部材2を構成する複数の垂直棒材21は、第一辺22aの向きを揃えて立設するとともに、互いに所定間隔L2を開けて立設する。またこれらの垂直棒材21同士は、各垂直棒材21に跨って固定される第1連結材4によって連結固定される。第1連結材4は、長尺なフラットバーであり、各垂直棒材21の第二辺22b側の第3側面21c、且つ、第3側面21cの下端部に不図示のビスで固定される。このように形成される脚部材2は、
図3に示す幅方向の全体長さL3が、水平棒材31の長さL1と同一となっている。
【0020】
図示するように、一対の脚部材2は、互いに垂直棒材21の第3側面21cを相対向させた状態で間隔を開けて立設され、間に複数の水平棒材31が架設される。
図1及び
図6に示すように、複数の水平棒材31は、長手方向の両端面31aが、一対の脚部材2を構成するそれぞれの垂直棒材21の上面21aに当接するよう配置されるため、互いに所定間隔L2を開けた状態となる。この複数の水平棒材31は、各水平棒材31に跨って固定される第2連結材5によって連結固定される。第2連結材5は、長尺なLアングル材であり、
図2に示すように、角部を水平棒材31の下面31c及び垂直部材21の第3側面21cによって形成される隅部に沿わせて設置され、それぞれの面にビス(図示せず)で固定される。このように各水平棒材31は、長さ方向の両端33をそれぞれの垂直棒材21の上端23に留め継ぎ加工で接合されるため、垂直棒材21との接合部廻りをすっきりとしたものとすることができる。
【0021】
図3及び
図4に示す所定距離L2は、2.5mm~4mm程度であり、3mmとすることが望ましい。このような距離であれば、雨天時、雨水が座面3aに溜まることを効果的に防止することができる。また垂直棒材21同士、水平棒材31同士をそれぞれ間隔を開けて配置することによって、スツール1全体の重量を抑えることができ、スツール1の持ち運びを容易なものとすることができる。このとき複数の垂直棒材21は、各水平棒材31と1つ1つ留め継ぎ加工されているため、各棒材21、31の小口面が表側に露出することはなく、意匠性の高いスツール1とすることができる。
【0022】
また
図2及び
図5に示すように、一方の脚部材2に固定される第1連結材4と、他方の脚部材2に固定される第1連結材4と、の間には、一対の脚部材2の強度を補強する補強材6が設置される。補強材6は、それぞれの第1連結材4の間に設置されるフラットバー61と、フラットバー61及び第1連結材4を接合する2つのアングルピース62と、を有している。この補強材6は、フラットバー61の長手方向の両端を各第1連結材4の第4側面41aに向けるとともに、各アングルピース62の角部を、それぞれ第1連結材4の第4側面41a及びフラットバー61の一方の側面である第5側面61aによって形成される隅部に沿わせ、それぞれの面41a、61aに不図示のビスで固定することにより設置される。
【0023】
図5に示すように、この補強材6は、一対の脚部材2に対して2セット設置され、各補強材6は、一対の脚部材2のそれぞれの幅方向の各端縁24から、一定距離L4以上離れた位置に配置される。この脚部材2の幅方向の各端縁24から補強材6までの距離L4は、90mm~120mm程度以上とすることが望ましく、このような距離であれば、補強材6が外観上視認されにくく、意匠性の高いスツールとすることができる。さらにこのとき、各アングルピース62は、フラットバー61の側面のうち、最も近接する前記端縁24側と反対側の側面に設置されることが望ましい。このようにアングルピース62の設置位置を調整することにより、フラットバー61と第1連結材4との接合部といった雑多な部分を視認されにくいものとすることができ、よりスツール1の美観性を向上させることができる。
【0024】
第1連結材4、第2連結材5、及び補強材6は、厚さ2mm程度のアルミニウムで形成されており、表面に塗装が施されている。この塗装色は、脚部材2及び水平部材3と同一色又は同系色とすることが望ましく、このような色彩にすることにより、スツール1の外観を違和感のないものとすることができる。なお本願において同一色とは、JIS(日本産業規格)に規格化されているそれぞれの表色系において測定値が同一である色彩、又は一般社団法人日本塗料工業会で規定される塗料用標準色の色票番号が同一である色彩の他に、測定値や色票番号が異なる色彩であっても、人が目視して略同一であると知覚する色彩も含むものとする。
【0025】
このように形成されるスツール1は、重量が15kg~20kg程度であり、このような重量あれば、多少の風雨で転倒することなく安定的に立設することができ、また、状況に応じて持ち運ぶことができる。なお本実施形態では、1人掛け用のスツールについて説明しているが、垂直棒材21及び水平棒材31は、各連結材4、5、及び補強材6によって連結固定されているため、容易にスツール1の全長を調整することができる。すなわち、たとえば、スツール1の全長を延ばしたい場合は、第1連結材4及び第2連結材5をより長いものに取替える、又は継ぎ足せば、垂直棒材21及び水平棒材31の設置数を増やすことができ、スツール1の長さを延ばすことができる。このとき、水平棒材31の設置数を増加させても、座面3aとなる水平部材3に継ぎ目が現れないので、美観性が高く、周囲のエクステリアにも調和するスツールを構築することができる。
【0026】
また本願のスツール1は、上述のように全長を延ばさずとも、複数個組み合わせる事によって複数人数が違和感なく座れる家具とすることができる。すなわち、
図7及び
図8に表すように、複数のスツール1同士を距離を置かずに並列すれば、長さのあるベンチのように使用することができる。このとき、脚部材2の向きを揃えたり異ならせたりすることでスツール全体の趣を容易に変えることができる。また、3つのスツール1を距離をおいて並列し、中央のスツール1を挟んで両端のスツール1にそれぞれ人が座れば、中央のスツール1をテーブルとして使用することもできる。
【0027】
さらにまた、材質を合わせたスツール1及びフェンス材を屋外構造物として同時に使用すれば、よりエクステリア全体の調和を保つことができ、統一感のある屋外空間を構築することができる。
【0028】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係るスツールは、戸建住宅の主庭やテラスに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 スツール
2 脚部材
21 垂直棒材
21c 第3側面(垂直棒材の隣り合う脚部材に相対向する側面)
24 脚部材の幅方向の各端縁
3 水平部材
31 水平棒材
31a 水平棒材の長さ方向の両端
31b 水平棒材の下面
3a 座面
4 第1連結材
5 第2連結材
6 補強材
L2 所定間隔
L4 一定間隔