(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 11/06 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B41J11/06
(21)【出願番号】P 2020179971
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100213687
【氏名又は名称】平松 大輝
(72)【発明者】
【氏名】小林 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】玉置 修一
(72)【発明者】
【氏名】高際 豊
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-017555(JP,A)
【文献】特開2017-052207(JP,A)
【文献】特開2007-031888(JP,A)
【文献】特開2013-227089(JP,A)
【文献】特開2018-094768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 2/165-2/20
B41J 2/21-2/215
B41J 11/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体への印刷を行うヘッドと、
前記印刷媒体が載置されるプラテンと、
前記プラテンを支持するプラテン支持部材と、
前記プラテン支持部材に支持された前記プラテンを、水平方向における第1方向において印刷規定位置に位置決めする位置決め部と
を備え、
前記プラテンは、
前記プラテンの下面から下方に突出する係合部を備え、
前記位置決め部は、前記プラテン支持部材に設けられ、前記プラテン支持部材に対して前記第1方向に移動可能であり且つ前記プラテン支持部材によって前記プラテンが支持された状態で前記係合部が係合する部位であって、前記係合部が係合した状態で前記第1方向に移動することで前記プラテンを前記印刷規定位置に位置決めする被係合部を備えたこと
を特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記係合部は、
前記プラテン支持部材に対して前記第1方向に移動可能な第1係合部と、
前記第1係合部に対する前記第1方向の位置が固定された第2係合部と
を備え、
前記位置決め部は、前記第1係合部と前記第2係合部の少なくとも一方が前記被係合部と係合した状態で前記被係合部が前記第1方向に移動することで、前記プラテンを前記印刷規定位置に位置決めすること
を特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記位置決め部は、
前記第1係合部と前記第2係合部の一方が前記被係合部と係合した状態で前記被係合部が前記第1方向に移動することで、前記プラテンを前記印刷規定位置に位置決めし、
前記位置決め部は、
前記プラテン支持部材に設けられ、前記プラテンが前記印刷規定位置に位置決めされた場合に、前記第1係合部と前記第2係合部の他方が係合する基準部を備えたこと
を特徴とする請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記位置決め部は、前記被係合部を前記基準部に向かって付勢する付勢部を備えたこと
を特徴とする請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記プラテンが前記プラテン支持部材から離れた状態で、前記第1方向において、前記被係合部と前記基準部との間の距離は、前記第1係合部と前記第2係合部との間の距離よりも小さく、
前記被係合部は、前記第1方向において前記付勢部の付勢力に抗って前記基準部に対して離れる方向に移動可能に設けられたこと
を特徴とする請求項4に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記位置決め部は、前記第1係合部と前記第2係合部の少なくとも一方が前記被係合部と係合した状態で前記被係合部が前記第1方向に移動することで、水平方向において前記第1方向と直交する第2方向において前記プラテンを前記印刷規定位置に位置決めすること
を特徴とする請求項2から5のいずれか一に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記被係合部と係合する前記第1係合部と前記第2係合部の少なくとも一方である特定係合部は、前記特定係合部から前記被係合部に向かうにつれて前記第2方向の両方に広がりながら開口する形状を有すること
を特徴とする請求項6に記載のプリンタ。
【請求項8】
前記位置決め部は、前記第1係合部と前記第2係合部の少なくとも一方が前記被係合部と係合した状態で前記被係合部が前記第1方向に移動することで、上下方向において前記プラテンを前記印刷規定位置に位置決めすること
を特徴とする請求項2から7のいずれか一に記載のプリンタ。
【請求項9】
水平方向において前記プラテン支持部材に対して前記プラテンが回転することを規制する回転規制部材を備えたこと
を特徴とする請求項1から8のいずれか一に記載のプリンタ。
【請求項10】
前記プラテン支持部材を前記第1方向に搬送する搬送部と、
前記プラテン支持部材が前記搬送部によって前記第1方向に搬送されることを規制可能な移動規制部と
を備えたこと
を特徴とする請求項1から9のいずれか一に記載のプリンタ。
【請求項11】
前記被係合部は、前記プラテン支持部材の上面から上方に突出し、
前記プラテンの下面には、水平方向における対向方向に前記係合部を間にして対向し、且つ下方に延びる一対のガイド部材が設けられ、
前記一対のガイド部材における前記対向方向の間の距離は、前記プラテン支持部材の上面における前記対向方向の長さよりも大きく、
前記一対のガイド部材の下端は、前記プラテン支持部材によって前記プラテンが支持された状態で前記プラテン支持部材の上面よりも下方に位置すること
を特徴とする請求項1から10のいずれか一に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
プラテン上の印刷媒体に印刷を行うプリンタがある。特許文献1に記載のインクジェット捺印装置はセットトレイ上の印刷媒体に印刷を行う。セットトレイは取付けアタッチメントを介して支持部によって支持される。セットトレイには位置決めピンが設けられる。取付けアタッチメントには穴部が形成される。穴部には位置決めピンが上方から嵌まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェット捺印装置では位置決めピンと穴部のはめあい公差の分、セットトレイが支持部に対して移動できる。したがって、インクジェット捺印装置では水平方向において支持部に対してセットトレイを正確に位置決めすることは困難であった。
【0005】
本発明の目的は、プラテンを水平方向において正確に位置決めしやすいプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るプリンタは、印刷媒体への印刷を行うヘッドと、前記印刷媒体が載置されるプラテンと、前記プラテンを支持するプラテン支持部材と、前記プラテン支持部材に支持された前記プラテンを、水平方向における第1方向おいて印刷規定位置に位置決めする位置決め部とを備え、前記プラテンは、係合部を備え、前記位置決め部は、前記プラテン支持部材に設けられ、前記プラテン支持部材に対して前記第1方向に移動可能であり且つ前記プラテン支持部材によって前記プラテンが支持された状態で前記係合部が係合する部位であって、前記係合部が係合した状態で前記第1方向に移動することで前記プラテンを前記印刷規定位置に位置決めする被係合部を備えたことを特徴とする。
【0007】
プラテンが位置決め部によって印刷規定位置に位置決めされる場合に係合部が被係合部に係合する。よって、プリンタはプラテンを印刷規定位置に正確に位置決めできる。
【0008】
前記係合部は、前記プラテン支持部材に対して前記第1方向に移動可能な第1係合部と、前記第1係合部に対する前記第1方向の位置が固定された第2係合部とを備え、前記位置決め部は、前記第1係合部と前記第2係合部の少なくとも一方が前記被係合部と係合した状態で前記被係合部が前記第1方向に移動することで、前記プラテンを前記印刷規定位置に位置決めしてもよい。
【0009】
プラテンが位置決め部によって印刷規定位置に位置決めされる場合に第1係合部と第2係合部の少なくとも一方が被係合部に係合する。よって、プリンタはプラテンを印刷規定位置にさらに正確に位置決めできる。
【0010】
前記位置決め部は、前記第1係合部と前記第2係合部の一方が前記被係合部と係合した状態で前記被係合部が前記第1方向に移動することで、前記プラテンを前記印刷規定位置に位置決めし、前記位置決め部は、前記プラテン支持部材に設けられ、前記プラテンが前記印刷規定位置に位置決めされた場合に、前記第1係合部と前記第2係合部の他方が係合する基準部を備えてもよい。
【0011】
プラテンが位置決め部によって印刷規定位置に位置決めされる場合に第1係合部と第2係合部の一方が被係合部に係合し、他方が基準部に係合する。このように、プラテンはプラテン支持部材に第1方向において2点で係合する。よって、プリンタは水平方向においてプラテン支持部材に対してプラテンが回転することを抑制できる。
【0012】
前記位置決め部は、前記被係合部を前記基準部に向かって付勢する付勢部を備えてもよい。
【0013】
付勢部の付勢力によって第1係合部と第2係合部の少なくとも一方が被係合部に確実に係合する。よって、プリンタはプラテンを印刷規定位置により正確に位置決めできる。
【0014】
前記プラテンが前記プラテン支持部材から離れた状態で、前記第1方向において、前記被係合部と前記基準部との間の距離は、前記第1係合部と前記第2係合部との間の距離よりも小さく、前記被係合部は、前記第1方向において前記付勢部の付勢力に抗って前記基準部に対して離れる方向に移動可能に設けられてもよい。
【0015】
例えばユーザは係合部を付勢部の付勢力に抗って被係合部に押し付けるように、プラテンをプラテン支持部材に取り付ける。このため、ユーザはプラテン5を扱いやすい。
【0016】
前記位置決め部は、前記第1係合部と前記第2係合部の少なくとも一方が前記被係合部と係合した状態で前記被係合部が前記第1方向に移動することで、水平方向において前記第1方向と直交する第2方向において前記プラテンを前記印刷規定位置に位置決めしてもよい。
【0017】
プリンタはプラテンを第1方向において印刷規定位置に位置決めすることに加え、プラテンを第2方向においても印刷規定位置に位置決めできる。
【0018】
前記被係合部と係合する前記第1係合部と前記第2係合部の少なくとも一方である特定係合部は、前記特定係合部から前記被係合部に向かうにつれて前記第2方向の両方に広がりながら開口する形状を有してもよい。
【0019】
プラテンを第1方向において印刷規定位置に位置決めするための機構と、プラテンを第2方向において印刷規定位置に位置決めするための機構とを別々で設ける必要がない。よって、プリンタは簡易な機構でプラテンを第1方向と第2方向において印刷規定位置に位置決めできる。
【0020】
前記位置決め部は、前記第1係合部と前記第2係合部の少なくとも一方が前記被係合部と係合した状態で前記被係合部が前記第1方向に移動することで、上下方向において前記プラテンを前記印刷規定位置に位置決めしてもよい。
【0021】
プリンタはプラテンを第1方向において印刷規定位置に位置決めすることに加え、プラテンを上下方向においても印刷規定位置に位置決めできる。
【0022】
前記プラテンは、水平方向において前記プラテン支持部材に対して前記プラテンが回転することを規制する回転規制部材を備えてもよい。
【0023】
プリンタは水平方向においてプラテン支持部材に対してプラテンが回転することを回転規制部材によって抑制できる。
【0024】
前記プラテンは、前記プラテン支持部材を前記第1方向に搬送する搬送部と、前記プラテン支持部材が前記搬送部によって前記第1方向に搬送されることを規制可能な移動規制部とを備えてもよい。
【0025】
プリンタは、例えばプラテンを印刷規定位置に位置決めする場合にプラテン支持部材が搬送部によって第1方向に搬送されることを規制することで、プラテンの位置決めが困難になることを抑制できる。
【0026】
前記係合部は、前記プラテンの下面に設けられ、前記被係合部は、前記プラテン支持部材の上面から上方に突出し、前記プラテンの下面には、水平方向における対向方向に前記係合部を間にして対向し、且つ下方に延びる一対のガイド部材が設けられ、前記一対のガイド部材における前記対向方向の間の距離は、前記プラテン支持部材の上面における前記対向方向の長さよりも大きく、前記一対のガイド部材の下端は、前記プラテン支持部材によって前記プラテンが支持された状態で前記プラテン支持部材の上面よりも下方に位置してもよい。
【0027】
プラテン支持部材に対してプラテンが取り付けられる場合、プラテン支持部材の上面の対向方向の両側に一対のガイド部材が配置される。この場合、プラテン支持部材に対するプラテンの対向方向の位置がおおよそ決まる。このため、ユーザはプラテンをプラテン支持部材に対して容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】プリンタ1を前右上方から見た斜視図である。
【
図2】筐体2を取り除いたプリンタ1を前右上方から見た斜視図である。
【
図3】プラテン支持部材3を前右上方から見た斜視図である。
【
図4】プラテン支持部材3を前右下方から見た斜視図である。
【
図5】プラテン5を前右下方から見た斜視図である。
【
図6】プリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
【
図8】プラテン5がプラテン支持部材3に取り付けられる場合の説明図である。
【
図9】プラテン5がプラテン支持部材3に取り付けられる場合の
図8に続く説明図である。
【
図10】プラテン5がプラテン支持部材3に取り付けられる場合の
図9に続く説明図である。
【
図12】
図10に示すXII-XII線矢視方向の断面図である。
【
図13】回転規制機構の変形例を説明するためのプラテン支持部材3を前右上方から見た斜視図である。
【
図14】回転規制機構の変形例を説明するためのプラテン5を前右下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係るプリンタ1を説明する。
図1の上方、下方、左下方、右上方、右下方、および左上方が、それぞれ、プリンタ1の上方、下方、前方、後方、右方、および左方である。本実施形態において図面中の機械的要素は、実際のスケールを示す。
【0030】
図1を参照し、プリンタ1の概略構成を説明する。
図1に示すように、プリンタ1は筐体2、搬送部6、プラテン支持部材3、およびプラテン5を備える。筐体2は直方体状である。筐体2には開口部21が形成される。開口部21は筐体2の前面から後面まで延びる。筐体2の前面において開口部21の右側には、入力部46が設けられる。ユーザは入力部46を操作することで各種情報をプリンタ1に入力する。
【0031】
搬送部6は開口部21の下部に設けられ、プラテン支持部材3を前後方向に搬送する。詳細には、搬送部6は
図2に示す一対のレール12を含む。一対のレール12は互いに左右方向に並び、前後方向に延びる。プラテン支持部材3は搬送部6の上方に位置し、一対のレール12によって支持される。プラテン支持部材3の下部には
図3に示す副走査モータ18が設けられる。プラテン支持部材3は副走査モータ18の駆動によって一対のレール12に沿って前後方向に移動できる。
【0032】
プラテン5は水平方向に延びる板状であり、正面視で開口部21内に配置される。プラテン5はプラテン支持部材3によって支持され、プラテン支持部材3とともに前後方向に移動する。すなわち、プリンタ1の前後方向は副走査方向である。プラテン5の上面には印刷媒体(図示略)が載置される。印刷媒体は布帛、紙等であり、例えばTシャツである。
【0033】
図2に示すように、プリンタ1はレール11、ガイドシャフト9、キャリッジ20、およびヘッド100、200を
図1に示す筐体2内に備える。レール11はプリンタ1の上部後方に設けられ、左右方向に延びる。ガイドシャフト9はレール11の前方に設けられ、左右方向に延びる。キャリッジ20はレール11とガイドシャフト9の前後方向の間に位置し、レール11とガイドシャフト9によって支持される。ガイドシャフト9の右端部の右側には主走査モータ19が設けられる。キャリッジ20は主走査モータ19の駆動によってレール11とガイドシャフト9に沿って左右方向に移動できる。
【0034】
ヘッド100、200はキャリッジ20に搭載され、キャリッジ20とともに左右方向に移動する。すなわち、プリンタ1の左右方向は主走査方向である。ヘッド100、200はそれぞれノズル(図示略)を備え、ノズルから下方にインクを吐出する。
【0035】
上記構成によれば、プリンタ1は、プラテン5を前後方向(副走査方向)に移動させ、ヘッド100、200を左右方向(主走査方向)に移動させることで、プラテン5上の印刷媒体をヘッド100、200に対して前後方向および左右方向に搬送する。プリンタ1は、プラテン5上の印刷媒体をヘッド100、200に対して搬送しながらヘッド100、200の各ノズルからプラテン5上の印刷媒体に対してインクを吐出する。これにより、プリンタ1はプラテン5上の印刷媒体に印刷を行う。
【0036】
図3、
図4を参照し、プラテン支持部材3の詳細構造を説明する。
図3に示すように、プラテン支持部材3は上板31と左板32と右板33を備える。上板31は平面視矩形状である。左板32は上板31の左端から下方に延びる。右板33は上板31の右端から下方に延びる。
【0037】
上板31のうち左右方向の中央且つ前後方向の中央よりも前側には孔311が設けられる。孔311は上板31を上下方向に貫通する。孔311の前後方向の長さは、後述の後ローラ82の前後方向の移動範囲よりも大きい。上板31の左前角部と右前角部にはそれぞれ凸部314、315が設けられる。上板31のうち孔311の後側には凸部316が設けられる。凸部314、315、316は上板31の上面から上方に突出する。
【0038】
孔311の前端側には板312が設けられる。板312は上板31から上方に延びる。板312には孔313が設けられる。孔313は板312を左右方向に貫通する。孔313には後述の回転規制部材71が挿入される。
【0039】
プラテン支持部材3には
図5に示すプラテン5を印刷規定位置に位置決めするための位置決め部8が設けられる。印刷規定位置はプラテン支持部材3に対する所定位置であり、プリンタ1による印刷時の基準となる位置である。
【0040】
位置決め部8は前ローラ81と後ローラ82と付勢部83を備える。前ローラ81は孔311よりも前方に設けられ、上板31の上面から上方に突出する。前ローラ81は円柱状であり、上板31によって回転可能に支持される。前ローラ81の回転中心は上下方向に延びる。後ローラ82は平面視で孔311内に設けられ、上板31の上面よりも上方に突出する。後ローラ82は円柱状であり、後述のローラ支持部837によって回転可能に支持される。後ローラ82の回転中心は上下方向に延びる。
【0041】
図4に示すように、付勢部83は上板31の下側に設けられ、軸固定部材831、軸832、833、圧縮バネ834、835、および板836を備える。軸固定部材831は上板31の下面のうち孔311よりも後側に固定される。軸832、833は互いに左右方向に並んで軸固定部材831に固定される。軸832、833はそれぞれ軸固定部材831の前面よりも前側に突出する。圧縮バネ834、835はそれぞれ軸832、833のうち軸固定部材831の前面よりも前側の部位に装着される。圧縮バネ834、835のそれぞれの後端は軸固定部材831の前面に固定される。
【0042】
板836は軸固定部材831の前方において左右方向に延びる。板836の左端部には軸832が貫通する。板836の右端部には軸833が貫通する。板836には圧縮バネ834、835の前端が固定される。したがって、板836は圧縮バネ834、835の弾性力によって、または圧縮バネ834、835の弾性力に抗って軸832、833に沿って前後方向に移動できる。
【0043】
板836の左右方向の中央にはローラ支持部837が設けられる。
図3に示すように、ローラ支持部837は板836から上方に、孔311を介して上板31の上方まで延びる。ローラ支持部837は後ローラ82を回転可能に支持する。
【0044】
上記構成によれば、板836が前後方向に移動することで、後ローラ82はプラテン支持部材3に対して前後方向に移動する。ローラ支持部837が孔311の後端に配置されたとき、後ローラ82は後ローラ82の可動範囲の後端に位置する。後述するように、プラテン5がプラテン支持部材3に取り付けられた場合、付勢部83は圧縮バネ834、835の弾性力によって板836を介して後ローラ82を前ローラ81に向かって前方に付勢する。
【0045】
図5を参照し、プラテン5の詳細構造を説明する。プラテン5の下面には、ブロック50と左ガイド部材53と右ガイド部材54が設けられる。ブロック50は直方体状であり、プラテン5の中央部に固定される。ブロック50の下面には溝501が設けられる。溝501はブロック50の左右方向の中央において前後方向に延びる。以下、ブロック50のうち溝501よりも左側の部位を「左ブロック51」といい、ブロック50のうち溝501よりも右側の部位を「右ブロック52」という。
【0046】
左ブロック51と右ブロック52は互いに左右方向に並び、前後方向に延びる。左ブロック51、右ブロック52のそれぞれの前後方向の中央部には孔511、521が設けられる。孔511は左ブロック51の左面から溝501まで左右方向に延びる。孔521は右ブロック52の右面から溝501まで左右方向に延びる。孔511、521は左右方向に一直線上に並ぶ。孔511、521には後述の回転規制部材71が挿入される。
【0047】
左ブロック51と右ブロック52の後端部には後係合部56が設けられる。後係合部56は斜面561、562によって構成される。斜面561は左ブロック51の後右角部に形成され、底面視で前方から後方に向かうにつれて左方に延びる。斜面562は右ブロック52の後左角部に形成され、底面視で前方から後方に向かうにつれて右方に延びる。したがって、水平面で後係合部56を切った断面形状は、前方から後方に向かうにつれて、すなわち後係合部56から後ローラ82に向かうにつれて、左右方向の両方に広がりながら開口する(
図11参照)。
【0048】
斜面561は背面視で下方から上方に向かうにつれて左方に延びる。斜面562は背面視で下方から上方に向かうにつれて右方に延びる。斜面561は側面視で下方から上方に向かうにつれて前方に延びる(
図8~
図10参照)。同様に、斜面562は側面視で下方から上方に向かうにつれて前方に延びる。したがって、上下左右に延びる平面で後係合部56を切った断面形状は、下方から上方に向かうにつれて左右方向の両方に広がりながら開口する。
【0049】
左ブロック51と右ブロック52の前端部には前係合部55が設けられる。左ブロック51、右ブロック52がいずれもプラテン5に固定されているので、後係合部56に対する前係合部55の前後方向の位置は固定される。
【0050】
前係合部55は斜面551、552によって構成される。斜面551は左ブロック51の前右角部に形成され、底面視で後方から前方に向かうにつれて左方に延びる。斜面552は右ブロック52の前左角部に形成され、底面視で後方から前方に向かうにつれて右方に延びる。したがって、水平面で前係合部55を切った断面形状は、後方から前方に向かうにつれて、すなわち前係合部55から前ローラ81に向かうにつれて、左右方向の両方に広がりながら開口する(
図11参照)。
【0051】
斜面551は正面視で下方から上方に向かうにつれて左方に延びる。斜面552は正面視で下方から上方に向かうにつれて右方に延びる。斜面551は側面視で下方から上方に向かうにつれて後方に延びる(
図8~
図10参照)。同様に、斜面552は側面視で下方から上方に向かうにつれて後方に延びる。したがって、上下左右に延びる平面で前係合部55を切った断面形状は、下方から上方に向かうにつれて左右方向の両方に広がりながら開口する。
【0052】
左ガイド部材53は左ブロック51よりも左側に位置する。右ガイド部材54は右ブロック52よりも右側に位置する。すなわち、左ガイド部材53と右ガイド部材54は左右方向において前係合部55、後係合部56を間にして対向する。左ガイド部材53と右ガイド部材54のそれぞれは板状であり、プラテン5の下面から下方に延び、且つ前後方向に延びる。
【0053】
右ガイド部材54には孔57が設けられる。孔57は右ガイド部材54を左右方向に貫通する。孔57の前後方向の長さは孔511、521の前後方向の長さよりも長い。孔57は孔511、521とともに左右方向に一直線上に並ぶ。孔57には孔511、521とともに後述の回転規制部材71が挿入される。
【0054】
図6を参照し、プリンタ1の電気的構成を説明する。プリンタ1は制御基板10を備える。制御基板10にはCPU41、ROM42、およびRAM43が設けられる。CPU41はROM42およびRAM43と電気的に接続し、プリンタ1の制御を司る。ROM42は、CPU41がプリンタ1の動作を制御するための制御プログラム、各種プログラムの実行時にCPU41が必要な情報等を記憶する。RAM43は、制御プログラムで用いられる各種データ、印刷媒体に印刷を行うための印刷データ等を一時的に記憶する。
【0055】
CPU41には主走査モータ19、副走査モータ18、ヘッド100、200、および入力部46が電気的に接続される。主走査モータ19、副走査モータ18、ヘッド100、200はCPU41による制御によって駆動する。副走査モータ18にはエンコーダ181が設けられる。エンコーダ181は副走査モータ18の回転角度を検出し、検出結果をCPU41に出力する。
【0056】
入力部46は操作に応じた情報をCPU41に出力する。ユーザは入力部46を操作することで、例えばプリンタ1による印刷を開始するための印刷指示、プラテン支持部材3が搬送部6によって前後方向に搬送されることを規制するための規制指示をプリンタ1に入力できる。
【0057】
図7を参照し、メイン処理を説明する。プリンタ1の電源が投入されると、CPU41は、ROM42から制御プログラムを読み出して動作することで、メイン処理を実行する。メイン処理では、ユーザによる入力部46の操作に応じて、後述の規制制御と印刷制御が行われる。
【0058】
CPU41は入力部46の操作に応じて規制指示があるか否かを判断する(S1)。規制指示がない場合(S1:NO)、CPU41は処理をS3へ移行する。ユーザは、プラテン支持部材3に対してプラテン5を取り付ける場合に、入力部46を操作して規制指示をプリンタ1に入力する。規制指示がある場合(S1:YES)、CPU41は規制制御を行う(S2)。規制制御では、エンコーダ181からの検出結果に基づいて副走査モータ18が制御され、プラテン支持部材3が搬送部6によって前後方向に搬送されることが規制される。この状態でユーザはプラテン支持部材3に対してプラテン5を取り付ける。
【0059】
図8~
図12を参照し、プラテン支持部材3へのプラテン5の取り付け方法を説明する。
図8~
図10は、プラテン5がプラテン支持部材3に取り付けられる場合の各状態を、プラテン5およびプラテン支持部材3のそれぞれの左右方向の中心を通る平面で切って右方から見た断面図である。
【0060】
図8に示すように、ユーザはプラテン支持部材3に対して、プラテン5の前端側から後端側に向かうにつれて下方に傾斜するようにプラテン5を持つ。
図12に示すように、左ガイド部材53と右ガイド部材54の左右方向の間の距離D1が、プラテン支持部材3の左右方向の長さ、すなわち上板31の左端から右端までの距離D2よりも大きい。右ガイド部材54がプラテン支持部材3の右面の右側に配置され、且つ左ガイド部材53がプラテン支持部材3の左面の左側に配置されると、後係合部56の左右方向の位置が後ローラ82の左右方向の位置と略一致する。このため、ユーザは、後ローラ82に対する後係合部56の位置関係が見えない状態であっても、プラテン支持部材3に対する左ガイド部材53と右ガイド部材54の左右方向の位置を、プラテン支持部材3に対するプラテン5の左右方向の位置の目安にできる。したがって、ユーザは右ガイド部材54と左ガイド部材53との左右方向の間にプラテン支持部材3が配置されるように、プラテン支持部材3に対して前方から後方に向かうにつれて下方に傾斜するプラテン5の角度を維持しながらプラテン支持部材3に向かってプラテン5を下方に移動させる。
【0061】
プラテン支持部材3に対してプラテン5が支持された状態で、左ガイド部材53の下端と右ガイド部材54の下端が上板31の上面よりも下方に位置する。このため、プラテン支持部材3に向かってプラテン5が下方に移動する途中で、プラテン支持部材3に対してプラテン5が左右方向へ、距離D1と距離D2の差分よりも大きくずれると、左ガイド部材53、右ガイド部材54がプラテン支持部材3と干渉する。このように、左ガイド部材53、右ガイド部材54は、プラテン支持部材3に向かってプラテン5が下方に移動する場合に、プラテン5がプラテン支持部材3に対して左右方向に大きくずれないようにプラテン5を案内する。
【0062】
図8に示すように、ユーザは後ローラ82に後係合部56が前方から係合するように、プラテン支持部材3に対するプラテン5の前後方向の位置を調整しながら、プラテン5をプラテン支持部材3に対してさらに下方に移動させる。プラテン5がプラテン支持部材3から離れた位置にある場合、圧縮バネ834、835には前後方向の力が作用しないので、圧縮バネ834、835の前後方向の長さは圧縮バネ834、835の自然長である。この状態では、
図3に示す後ローラ82と前ローラ81との間の前後方向の距離L2が、
図5に示す後係合部56と前係合部55との間の前後方向の距離L1よりも小さい。このため、前ローラ81が前係合部55よりも後方に位置する。したがって、この状態でユーザがプラテン5の前端側を下方に移動させると、前ローラ81はブロック50に下方から干渉する。なお、
図8は後述のように後ローラ82が付勢部83の付勢力に抗って後方に移動し、後ローラ82の可動範囲の後端にある状態を示す。
【0063】
後ローラ82に後係合部56が係合した状態で、ユーザはプラテン支持部材3に対してプラテン5を後斜め下方に移動させる。プラテン支持部材3に対するプラテン5の後方への移動に伴って、後係合部56によって後ローラ82が後方に押圧される。後ローラ82が付勢部83の付勢力に抗って後方に移動し、プラテン5が後方に移動する。
【0064】
仮にプラテン支持部材3に対してプラテン5が前斜め下方に移動される場合、ユーザはプラテン5をユーザの手前側に引くようにプラテン5を扱う必要がある。この場合、ユーザはプラテン5を扱いにくい。本実施形態では、ユーザは後係合部56を付勢部83の付勢力に抗って後ローラ82に押し付けるように、プラテン5を移動させる。このため、本実施形態ではユーザはプラテン5を扱いやすい。
【0065】
後ローラ82が付勢部83の付勢力に抗って後方に移動し、プラテン5が後方に移動した場合、後方への力が後ローラ82を介してプラテン支持部材3に作用する。これにより、仮にプラテン支持部材3が
図2に示すレール12に沿って後方に移動すると、ユーザはプラテン支持部材3に対してプラテン5を取り付けることが困難となる。
【0066】
本実施形態では、規制制御(S2)によってプラテン支持部材3が搬送部6によって前後方向に搬送されることが規制されているので、後方への力がプラテン支持部材3に作用してもプラテン支持部材3が
図2に示すレール12に沿って後方に移動しない。よって、本実施形態ではユーザはプラテン支持部材3に対してプラテン5を容易に取り付けることができる。
【0067】
後係合部56によって後ローラ82が後方に押圧されると、斜面561と斜面562との左右方向の中心に対して斜面561側(左側)または斜面562側(右側)に後ローラ82がずれた場合には、後ローラ82は斜面561または斜面562に沿って回転しながら移動する。仮に後ローラ82が回転しないと、後ローラ82と斜面561、562との間に後ローラ82が回転する場合よりも大きな摩擦が生じやすい。本実施形態では後ローラ82が回転するので、後ローラ82と斜面561、562との間に大きさ摩擦が生じにくい。よって、プリンタ1は後ローラ82と斜面561、562が摩擦により摩耗することを抑制できる。さらに、後ローラ82と斜面561、562との間の摩擦が小さい分、ユーザは小さい力でプラテン5を後斜め下方に移動させることができる。
【0068】
圧縮バネ834、835が圧縮バネ834、835の自然長よりも小さくなるように弾性変形し、後ローラ82が後ローラ82の可動範囲の後端まで移動すると、前ローラ81が前係合部55よりも前方に位置する。この状態で、
図9に示すように、ユーザはプラテン5の前端側を下方に移動させる。これにより、前ローラ81がブロック50に下方から干渉することなく前係合部55の前側に配置される。この場合、板312は
図5に示す溝501のうち前後方向の中央部よりも前方に配置される。このため、この状態では孔57、521、511は孔313に対して後方に位置する。
【0069】
ユーザによってプラテン5の前端側が下方に移動されると、凸部314、315、316のそれぞれの上端がプラテン5の下面に接触する。これにより、プラテン5がプラテン支持部材3によって支持される。すなわち、凸部314、315、316のそれぞれの上端の上下方向の位置はプラテン支持部材3に対するプラテン5の上下方向における基準の位置となる。なお、ブロック50の下端は上板31の上面から上方へ離れた位置にある。この状態でユーザがプラテン5に対する後方への力を緩めると、付勢部83の付勢力によって後ローラ82が前ローラ81に向かって前方に移動する。
【0070】
図10、
図11に示すように、後係合部56が後ローラ82と係合しているので、後ローラ82の前方への移動に伴って、後係合部56がプラテン支持部材3に対して前方に移動する。これにより、プラテン5がプラテン支持部材3に対して前方に移動する。前係合部55は、後係合部56との間の前後方向の距離を一定に維持しながら前ローラ81に向かって前方に移動する。この場合、斜面551と斜面552との左右方向の中心に対して斜面551側(左側)または斜面552側(右側)に前ローラ81がずれた場合には、前ローラ81は斜面551または斜面552に沿って回転しながら斜面551、552に対して相対的に後方へ移動する。本実施形態では前ローラ81が回転するので、後ローラ82と斜面561、562と同様にして、プリンタ1は前ローラ81と斜面551、552が摩擦により摩耗することを抑制できる。
【0071】
前係合部55が前ローラ81に係合することで、プラテン支持部材3に対するプラテン5の前方への移動が規制される。すなわち、前ローラ81の前後方向の位置はプラテン支持部材3に対するプラテン5の前後方向における基準の位置となる。後ローラ82は付勢部83によって前ローラ81に向かって前方に付勢されているので、後ローラ82の後方への移動は規制される。よって、後係合部56が後ローラ82と係合した状態で後ローラ82がプラテン支持部材3に対して前方に移動することで、位置決め部8によってプラテン5が前後方向において印刷規定位置に位置決めされる。
【0072】
さらに、水平面で前係合部55を切った断面形状は、後方から前方に向かうにつれて左右方向の両方に広がりながら開口する。このため、プラテン5が前後方向に位置決めされた状態では、付勢部83の付勢力によって前ローラ81は前係合部55を左右方向の両方に押圧する。水平面で後係合部56を切った断面形状が、前方から後方に向かうにつれて左右方向の両方に広がりながら開口する。このため、プラテン5が前後方向に位置決めされた状態では、付勢部83の付勢力によって後ローラ82は後係合部56を左右方向の両方に押圧する。このように、前係合部55と前ローラ81との係合、後係合部56と後ローラ82との係合により、前ローラ81および後ローラ82に対してプラテン5が左右方向に移動することが規制される。よって、後係合部56が後ローラ82と係合した状態で後ローラ82がプラテン支持部材3に対して前方に移動することで、位置決め部8によってプラテン5が左右方向において印刷規定位置に位置決めされる。
【0073】
さらに、上下左右に延びる平面で前係合部55を切った断面形状は、下方から上方に向かうにつれて左右方向の両方に広がりながら開口する。このため、プラテン5が前後方向に位置決めされた状態では、付勢部83の付勢力によって前ローラ81は前係合部55を下方に押圧する。上下左右に延びる平面で後係合部56を切った断面形状は、下方から上方に向かうにつれて左右方向の両方に広がりながら開口する。このため、プラテン5が前後方向に位置決めされた状態では、付勢部83の付勢力によって後ローラ82は後係合部56を下方に押圧する。このように、前係合部55と前ローラ81との係合、後係合部56と後ローラ82との係合により、プラテン5の下面が凸部314、315、316に押圧される。このため、プラテン5が凸部314、315、316から浮くことが規制される。よって、後係合部56が後ローラ82と係合した状態で後ローラ82がプラテン支持部材3に対して前方に移動することで、プラテン5が上下方向において印刷規定位置に位置決めされる。
【0074】
以上のように、位置決め部8によってプラテン5が前後左右上下方向において印刷規定位置に位置決めされる。この状態では、圧縮バネ834、835が弾性変形しているので、付勢部83の前方への付勢力が維持される。このため、付勢部83の付勢力によって、前ローラ81と前係合部55の係合、後係合部56と後ローラ82の係合が解除されにくい。よって、プリンタ1は印刷規定位置からプラテン5がずれることを抑制できる。
【0075】
図11に示すように、平面視で、前ローラ81と前係合部55の接触部P1、P2、後ローラ82と後係合部56の接触部P3、P4は、いずれも凸部314、315、316の中心を結んで形成される三角形領域C内に配置される。このため、付勢部83の付勢力によって凸部314、315、316に作用する下方への力が、各凸部314、315、316へ均等に分散しやすい。よって、プラテン5の上下方向における印刷規定位置への位置決めが安定する。
【0076】
さらに、プラテン5がプラテン支持部材3に対して、前ローラ81と前係合部55、後ローラ82と後係合部56の2点で印刷規定位置に位置決めされる。このため、前係合部55を中心にプラテン5が水平方向に回転することが規制され、且つ後係合部56を中心にプラテン5が水平方向に回転することが規制される。さらに、前係合部55を支点としてプラテン5の後端側が浮くことが規制され、且つ後係合部56を支点としてプラテン5の前端側が浮くことが規制される。
【0077】
図11、
図12に示すように、プラテン5がプラテン支持部材3に対して前方に移動することで、プラテン5が印刷規定位置に位置決めされると、板312が溝501の前後方向の中央部に配置される。これにより、プラテン5が印刷規定位置に位置決めされた状態では、孔57、511、313、521が左右方向に一直線上に並ぶ。この状態で、ユーザは回転規制部材71をプラテン5の右方から孔57、521、313、511の順に挿入する。
【0078】
回転規制部材71は水平方向においてプラテン支持部材3に対してプラテン5が回転することを規制するためのピンであり、右ガイド部材54の右側から左ブロック51の左端まで延びる。この場合、水平方向においてプラテン支持部材3に対してプラテン5が回転しようとすると、回転規制部材71が各孔57、521、313、511の壁に係合する。これにより、プラテン5が水平方向においてプラテン支持部材3に対して回転することがさらに規制される。以上により、プラテン支持部材3へのプラテン5の取り付けが完了する。
【0079】
図7の説明に戻る。CPU41は入力部46の操作に応じて印刷指示があるか否かを判断する(S3)。印刷指示がない場合(S3:NO)、CPU41は処理をS1へ戻す。ユーザは、プラテン支持部材3に対するプラテン5の取り付けが完了すると、プラテン5上に印刷媒体を載置する。その後、ユーザは入力部46を操作して印刷指示をプリンタ1に入力する。印刷指示がある場合(S3:YES)、CPU41はプリンタ1による印刷動作を制御する(S4)。すなわち、主走査モータ19、副走査モータ18、ヘッド100、200が制御され、プラテン5上の印刷媒体への印刷が行われる。プラテン5が印刷規定位置に位置決めされているので、プリンタ1はプラテン5上の印刷媒体の目標位置に正確に印刷できる。CPU41は処理をS1へ戻す。
【0080】
以上説明したように、プラテン5が位置決め部8によって印刷規定位置に位置決めされる場合に後係合部56が後ローラ82に係合する。よって、プリンタ1はプラテン5を印刷規定位置に正確に位置決めできる。
【0081】
プラテン5が位置決め部8によって印刷規定位置に位置決めされる場合に後係合部56が後ローラ82に係合し、前係合部55が前ローラ81に係合する。このように、プラテン5はプラテン支持部材3に前後方向において2点で係合する。よって、プリンタ1は水平方向においてプラテン支持部材3に対してプラテン5が回転することを抑制できる。
【0082】
付勢部83は後ローラ82を前ローラ81に向かって付勢する。このため、付勢部83の付勢力によって後係合部56が後ローラ82に確実に係合する。よって、プリンタ1はプラテン5を印刷規定位置にさらに正確に位置決めできる。プラテン5が印刷規定位置に位置決めされた状態で、付勢部83の付勢力が維持される。よって、プリンタ1は印刷規定位置からプラテン5がずれることを抑制できる。
【0083】
プラテン5がプラテン支持部材3から離れた状態で、後ローラ82と前ローラ81との間の前後方向の距離L2が、後係合部56と前係合部55との間の前後方向の距離L1よりも小さい。後ローラ82は前後方向において付勢部83の付勢力に抗って前ローラ81から離れる方向(後方)に移動する。このため、ユーザは後係合部56を付勢部83の付勢力に抗って後ローラ82に押し付けるように、プラテン5をプラテン支持部材3に取り付ける。よって、ユーザはプラテン5を扱いやすい。
【0084】
位置決め部8は、後係合部56が後ローラ82と係合した状態で後ローラ82が前方に移動することで、左右方向においてプラテン5を印刷規定位置に位置決めする。よって、プリンタ1はプラテン5を前後方向において印刷規定位置に位置決めすることに加え、プラテン5を左右方向においても印刷規定位置に位置決めできる。
【0085】
後係合部56は、後係合部56から後ローラ82に向かうにつれて、すなわち前方から後方に向かうにつれて左右方向の両方に広がりながら開口する。このため、プラテン5を前後方向において印刷規定位置に位置決めするための機構と、プラテン5を左右方向において印刷規定位置に位置決めするための機構とを別々で設ける必要がない。よって、プリンタ1は簡易な機構でプラテン5を前後方向と左右方向において印刷規定位置に位置決めできる。
【0086】
位置決め部8は、後係合部56が後ローラ82と係合した状態で後ローラ82が前方に移動することで、上下方向においてプラテン5を印刷規定位置に位置決めする。よって、プリンタ1はプラテン5を前後方向において印刷規定位置に位置決めすることに加え、プラテン5を上下方向においても印刷規定位置に位置決めできる。
【0087】
プリンタ1は回転規制部材71を備える。よって、プリンタ1は水平方向においてプラテン支持部材3に対してプラテン5が回転することを回転規制部材71によってさらに抑制できる。仮にプラテン5に上方への力が作用した場合、回転規制部材71が孔57、521、313、511の壁に係合する。よって、プリンタ1は、プラテン5がプラテン支持部材3から上方に外れることを回転規制部材71によって抑制できる。
【0088】
プリンタ1はCPU41によって規制制御(S2)を実行できる。よって、プリンタ1は、例えばプラテン5を印刷規定位置に位置決めする場合に規制制御を行うことで、プラテン5の位置決めが困難になることを抑制できる。
【0089】
プラテン支持部材3に対してプラテン5が取り付けられる場合、プラテン支持部材3の上面の左右方向の両側に左ガイド部材53、右ガイド部材54が配置される。この場合、プラテン支持部材3に対するプラテン5の左右方向の位置がおおよそ決まる。このため、ユーザはプラテン5をプラテン支持部材3に対して容易に取り付けることができる。
【0090】
上記実施形態において、ヘッド100、200が本発明の「ヘッド」に相当する。プラテン5が本発明の「プラテン」に相当する。プラテン支持部材3が本発明の「プラテン支持部材」に相当する。位置決め部8が本発明の「位置決め部」に相当する。プリンタ1の前後方向(副走査方向)が本発明の「第1方向」に相当する。後係合部56が本発明の「係合部」に相当する。後ローラ82が本発明の「被係合部」に相当する。
【0091】
後係合部56が本発明の「第1係合部」に相当する。前係合部55が本発明の「第2係合部」に相当する。前ローラ81が本発明の「基準部」に相当する。付勢部83が本発明の「付勢部」に相当する。圧縮バネ834、835が本発明の「弾性部材」に相当する。プリンタ1の左右方向(主走査方向)が本発明の「第2方向」に相当する。回転規制部材71が本発明の「回転規制部材」に相当する。搬送部6が本発明の「搬送部」に相当する。
図7のS2を実行するCPU41が本発明の「移動規制部」に相当する。左ガイド部材53、右ガイド部材54が本発明の「一対のガイド部材」に相当する。プリンタ1の左右方向が本発明の「対向方向」に相当する。
【0092】
本発明は上記実施形態から種々変更できる。以下説明する各種変形例は、矛盾が生じない限りそれぞれ組み合わせ可能である。例えば本発明は上記実施形態のようなインクジェットタイプとは異なるタイプのプリンタにも適用できる。
【0093】
上記実施形態において後ローラ82がプラテン支持部材3に対して固定され、前ローラ81がプラテン支持部材3に対して前後方向に移動可能であってもよい。上記実施形態において後ローラ82は前後方向ではなく、例えば左右方向に移動可能であってもよい。この場合、前ローラ81は後ローラ82に対して左側または右側に設けられ、ブロック50は上記実施形態の向きから、自身を中心として水平方向に90°回転した向きでプラテン5に固定されればよい。この場合、プリンタ1の左右方向が本発明の「第1方向」に相当し、プリンタ1の前後方向が本発明の「第2方向」に相当する。左ガイド部材53、右ガイド部材54も上記実施形態の向きから、ブロック50を中心として水平方向に90°回転した向きでプラテン5に設けられてもよい。この場合、プリンタ1の前後方向が本発明の「対向方向」に相当する。
【0094】
上記実施形態において前ローラ81と後ローラ82の一方または両方は回転不能であってもよい。例えば前ローラ81に代えて壁が設けられてもよい。上記実施形態では前ローラ81、後ローラ82は円柱状である。これに対し、前ローラ81と後ローラ82は他の形状、例えば円錐状であってもよい。前ローラ81と後ローラ82は平面視で多角形状でもよく、例えば前係合部55と後係合部56の平面視の形状を有してもよい。前ローラ81と後ローラ82は互いに異なる形状であってもよい。
【0095】
前係合部55、後係合部56の一方または両方は上記実施形態とは異なる形状であってもよい。例えば前係合部55と後係合部56は上下左右に延びる平面であってもよいし、湾曲状であってもよい。水平面で前係合部55を切った形状は、後方から前方に向かうにつれて左右方向の内側に傾斜するテーパ状であってもよい。この場合、水平面で前ローラ81を切った形状は、前係合部55のテーパ状に対応し、前方から後方に向かうにつれて広がるように開口した形状であってもよい。
【0096】
上記実施形態では前係合部55と後係合部56はブロック50によって構成された。これに対し、前係合部55と後係合部56は分割された複数のブロックで構成されてもよい。例えばプラテン5の下面には、斜面551が形成されたブロック、斜面552が形成されたブロック、斜面561が形成されたブロック、斜面562が形成されたブロックの4つのブロックが固定されてもよいし、斜面551、552が形成されたブロック、斜面561、562が形成されたブロックの2つのブロックが固定されてもよい。上記実施形態では、斜面551、552のそれぞれの後端は互いに左右方向に離れる。これに対し、斜面551、552のそれぞれの後端は互いに接続してもよい。同様に、斜面561、562のそれぞれの前端は互いに接続してもよい。
【0097】
上記実施形態において付勢部83はエアシリンダ等でもよいし、圧縮バネ834、835に代えて他の種類のバネ、ゴム、スポンジ等の弾性部材を備えてもよい。圧縮バネ834、835の個数は1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0098】
上記実施形態において付勢部83は後ローラ82を後方から押圧することで、後ローラ82を前ローラ81に向かって付勢する。これに対し、付勢部83は後ローラ82を前方から引くことで、後ローラ82を前ローラ81に向かって付勢してもよい。付勢部83は前ローラ81を後ローラ82に向かって付勢してもよい。
【0099】
上記実施形態ではユーザが回転規制部材71を各孔57、521、313、511に挿入する。これに対し、プリンタ1は回転規制部材71を各孔57、521、313、511に挿入した位置と、回転規制部材71を各孔57、521、313、511から抜いた位置とに移動させるための規制ピン駆動部(例えばロボット)を備えてもよい。この場合、CPU41は規制ピン駆動部を制御し、回転規制部材71の各孔57、521、313、511への抜き差しを行ってもよい。
【0100】
上記実施形態では回転規制部材71が各孔57、521、313、511に挿入されることで、水平方向においてプラテン支持部材3に対してプラテン5が回転することが規制される。回転規制部材71には、ピンとは異なる部材、例えば板、ブロックが採用されてもよい。プリンタ1は他の回転規制機構を採用し、水平方向においてプラテン支持部材3に対してプラテン5が回転することを規制してもよい。プリンタ1は回転規制部材71を省略してもよい。
【0101】
図13、
図14を参照し、他の回転規制機構の一例を説明する。以下では、上記実施形態と同等形状を有する部材については上記実施形態と同一符号を付して説明を省略または簡略化する。
【0102】
図13に示すように、プラテン支持部材3には、
図3に示す板312に代えて板3120が設けられる。板3120は板3121、3122、3123、3124、3125を含む。板3121は上板31の上面のうち後ローラ82の可動範囲の後端よりも後側に固定され、上板31の左端よりも右側の位置と上板31の右端よりも左方の位置との間で左右方向に延びる。板3122は板3121の左端から上方に延びる。板3123は板3122の上端から左方に上板31の左端よりも左側の位置まで延びる。板3134は板3121の右端から上方に延びる。板3125は板3124の上端から右方に上板31の右端よりも右側の位置まで延びる。
【0103】
図14に示すように、プラテン5には
図5に示す左ガイド部材53、右ガイド部材54に代えて左ガイド部材530、右ガイド部材540が設けられる。左ガイド部材530は左ブロック51の左側に設けられ、基部531と延出部532を備える。基部531はプラテン5の下面から下方に延び、前後方向に延びる。延出部532は基部531の後端の下端部から後方に延びる。右ガイド部材540は右ブロック52の右側に設けられ、基部541と延出部542を備える。基部541はプラテン5の下面から下方に延び、前後方向に延びる。延出部542は基部541の後端の下端部から後方に延びる。
【0104】
上記構成によれば、プラテン5は、板3123の下側に延出部532が配置され、且つ板3125の下側に延出部542が配置されるように、プラテン支持部材3に対して取り付けられる。これにより、プラテン5が印刷規定位置に位置決めされた状態で、左ガイド部材530および右ガイド部材540のそれぞれが板3120と係合する。このため、プラテン5が水平方向においてプラテン支持部材3に対して回転することが規制される。この場合、ユーザはプラテン5がプラテン支持部材3に取り付けられた後、回転規制部材71を各孔57、521、313、511に挿入する必要がない。よって、プリンタ1はプラテン支持部材3に対するプラテン5の水平方向の回転を規制するためのユーザの手間を省くことができる。
【0105】
上記実施形態ではユーザが規制指示を入力することで、規制制御(S2)が行われた。これに対し、プリンタ1は例えば所定の取付位置にプラテン支持部材3が配置されたことを検出するためのセンサを備えてもよい。取付位置はプラテン5をプラテン支持部材3に取り付けるための位置であり、例えば搬送部6によるプラテン支持部材3の可動範囲の前端の位置である。この場合、CPU41はセンサからの検出結果に基づいて、プラテン支持部材3が取付位置に配置されたと判断した場合に、規制制御を行ってもよい。
【0106】
上記実施形態ではプリンタ1は規制制御によってプラテン支持部材3が搬送部6によって前後方向に搬送されることを規制した。これに対し、プリンタ1は構造的にプラテン支持部材3が搬送部6によって前後方向に搬送されることを規制可能であってもよい。例えばプラテン支持部材3に移動規制孔が設けられ、移動規制孔に移動規制ピンが挿入されることで、移動規制ピンが搬送部6に係合してもよい。この場合、移動規制ピンが移動規制孔と搬送部6の両方に係合するので、プリンタ1は構造的にプラテン支持部材3が搬送部6によって前後方向に搬送されることを規制できる。ユーザはプラテン支持部材3に対してプラテン5を取り付ける前に移動規制ピンを移動規制孔に挿入し、プラテン支持部材3に対するプラテン5の取り付けが完了した後に移動規制ピンを移動規制孔から抜けばよい。プリンタ1は移動規制ピンを移動規制孔に挿入した位置と移動規制ピンを移動規制孔から抜いた位置とに移動させるための移動規制ピン駆動部(例えばロボット)を備えてもよい。この場合、CPU41は移動規制ピン駆動部を制御し、移動規制ピンの移動規制孔への抜き差しを行ってもよい。
【0107】
上記実施形態において距離D1は距離D2よりも小さくてもよい。この場合、上板31には、左ガイド部材53と右ガイド部材54が挿入されるための2つの孔が設けられればよい。プラテン5には左ガイド部材53と右ガイド部材54のうち一方のみが設けられてもよい。
【0108】
上記実施形態において、接触部P1~P4の一部または全部は平面視で三角形領域C外に配置されてもよい。凸部314、315、316の個数は2つ以下でもよいし、4つ以上でもよい。プリンタ1は凸部314、315、316を省略してもよい。この場合、プラテン5の下面が上板31の上面に接触してもよい。凸部314、315、316はプラテン5の下面に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 プリンタ
3 プラテン支持部材
5 プラテン
6 搬送部
8 位置決め部
41 CPU
53 左ガイド部材
54 右ガイド部材
55 前係合部
56 後係合部
71 回転規制部材
81 前ローラ
82 後ローラ
83 付勢部
100、200 ヘッド
834、835 圧縮バネ