(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】デジタル受信装置
(51)【国際特許分類】
H04L 27/227 20060101AFI20240820BHJP
H04L 7/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H04L27/227 100
H04L7/00 970
(21)【出願番号】P 2020181888
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】宇野 一貴
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-214921(JP,A)
【文献】特開平11-308288(JP,A)
【文献】特開2007-053571(JP,A)
【文献】特開2003-273949(JP,A)
【文献】米国特許第07526056(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/00 - 27/38
H04L 7/00 - 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号を直交検波してI信号及びQ信号に復調する復調部と、
前記復調部で復調された前記I信号及び前記Q信号
に対して正規同期に相当する再生キャリア周波数の補正を行ってデータを復号する第1復号部と、
前記復調部で復調された前記I信号及び前記Q信号に対して擬似同期に相当する再生キャリア周波数の補正を行ってデータを復号する第2復号部と、
前記第1復号部から入力されるデータと前記第2復号部から入力されるデータとのいずれか一方から同期ワードを表すユニークワードを検出する同期検出部と
を備えることを特徴とするデジタル受信装置。
【請求項2】
前記第1復号部は、
ローカル信号の周波数と前記受信信号のキャリア周波数との周波数誤差を基に周波数補正量を算出する周波数補正量算出部と
、
前記周波数補正量算出部から入力される前記周波数補正量に基づいて、前記I信号に基づくIデータ及び前記Q信号に基づくQデータを位相調整するための位相回転量を算出する回転量算出部と
を有すること
を特徴とする請求項1に記載のデジタル受信装置。
【請求項3】
前記第2復号部は、
擬似同期状態におけるキャリア周波数である擬似同期周波数の位相回転量を、前記周波数補正量を基に算出する擬似同期用回転量算出部と
、
前記Iデータ及び前記Qデータを、前記擬似同期用回転量算出部から入力される前記位相回転量だけ位相調整する位相回転部と
を有すること
を特徴とする請求項2に記載のデジタル受信装置。
【請求項4】
前記同期検出部は、前記ユニークワードが含まれる前記受信信号である特定信号が前記復調部で復調されたI信号及びQ信号を基に前記第1復号部で復号された第1データ、及び前記特定信号が前記復調部で復調されたI信号及びQ信号を基に前記第2復号部で復号された第2データのいずれかに含まれる前記ユニークワードを検出して、前記第1復号部又は前記第2復号部のいずれかが同期したことを検出する
請求項3に記載のデジタル受信装置。
【請求項5】
前記同期検出部は、前記第1復号部及び前記第2復号部のうち、同期検出できた方の復号部の同期情報を前記周波数補正量算出部に出力する
請求項4に記載のデジタル受信装置。
【請求項6】
前記周波数補正量算出部は、
前記同期検出部から入力される前記同期情報が前記第1復号部で復号された前記第1データから同期検出した情報の場合には、前記I信号及び前記Q信号に基づく前記周波数誤差を前記周波数補正量として算出し、
前記同期検出部から入力される前記同期情報が前記第2復号部で復号された前記第2データから同期検出した情報の場合には、前記I信号及び前記Q信号に基づく前記周波数誤差を前記擬似同期周波数で補正して前記周波数補正量を算出する
請求項5に記載のデジタル受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに用いられるデジタル受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおける受信機には、送信機が送信する送信波の周波数と、受信周波数とのずれ(周波数誤差)を補正する自動周波数制御(Auto Frequency Control:AFC)機能が搭載されている。デジタル変復調方式の受信機の場合、AFCをデジタル信号処理で実現可能である。AFCをデジタル信号処理で実現する方法として、受信した信号から検出したシンボル位置(以下、「受信シンボル位置」という)と本来検出されるべきシンボル位置(以下、「正規シンボル位置」という)に対する受信シンボル位置のずれから周波数誤差を求めて補正する方法が知られている。
【0003】
デジタル変復調方式として4相位相偏移変調方式における正規シンボル点は、4つの象限(正規シンボル点の位相角45度、135度、225度、315度)のそれぞれに存在する。4相位相偏移変調を用いたAFCでは、正規シンボル位置と受信シンボル位置との位相誤差が45度より大きい場合には、受信シンボルが本来あるべき象限と異なる象限に存在すると判断されて周波数誤差が補正され、その結果、誤った周波数でロックされる擬似同期状態となる場合がある。特許文献1には、この擬似同期を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、擬似同期の状態にある場合、復調データが歪むため同期の確立が困難になる問題がある。
【0006】
本発明の目的は、擬似同期の状態でも同期の確立を容易に行うことができるデジタル受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によるデジタル受信装置は、受信信号を直交検波してI信号及びQ信号に復調する復調部と、前記復調部で復調された前記I信号及び前記Q信号に対して正規同期に相当する再生キャリア周波数の補正を行ってデータを復号する第1復号部と、前記復調部で復調された前記I信号及び前記Q信号に対して擬似同期に相当する再生キャリア周波数の補正を行ってデータを復号する第2復号部と、前記第1復号部から入力されるデータと前記第2復号部から入力されるデータとのいずれか一方から同期ワードを表すユニークワードを検出する同期検出部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、擬似同期の状態でも同期の確立を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態によるデジタル受信装置を説明する図であって、受信シンボル位置と正規シンボル位置との位相誤差が45度以下の場合のQPSKのコンスタレーションを示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるデジタル受信装置を説明する図であって、受信シンボル位置と正規シンボル位置との位相誤差が45度よりも大きい場合のQPSKのコンスタレーションを示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるデジタル受信装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるデジタル受信装置の効果を説明する図であって、復号過程のデータの周波数帯域と、復号部に設けられたローパスフィルタの周波数帯域とを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
本実施形態によるデジタル受信装置1の概略構成を説明する前に、デジタル受信装置1が実行する周波数誤差の補正について、4相位相偏移変調(Quadrature Phase-Shift Keying:QPSK)を例にとって、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、受信シンボル位置と正規シンボル位置との位相誤差が45度以下の場合のQPSKのコンスタレーションを示す図である。ここで、コンスタレーションとは、各シンボルについて同相成分I(In-phase)を横軸、直交成分Q(Quadrature)を縦軸として、シンボルデータを2次元の複素平面上にプロットして表現したものである。
図2は、受信シンボル位置と正規シンボル位置との位相誤差が45度よりも大きい場合のQPSKのコンスタレーションを示す図である。
【0012】
図1に示すように、受信シンボル位置Bと正規シンボル位置Aとの位相誤差が、1シンボル目ではΔθであり(
図1(a)参照)、2シンボル目では2×Δθであり(
図1(b)参照)、3シンボル目では3×Δθであるとする(
図1(c)参照)。この場合、1シンボル時間ごとに位相誤差がΔθだけ増加したことになる。このため、1シンボル時間をTsとすると、周波数誤差Δfは、以下の式(1)で求められる。
Δf=Δθ/(2π×Ts) ・・・(1)
【0013】
本実施形態によるデジタル受信装置1は、式(1)によって求められる周波数誤差Δfに基づいてローカル信号(詳細は後述)の基となる基準発振器(不図示)の発振周波数を制御することにより、デジタル送信装置(不図示)から送信される信号のキャリア信号の周波数とローカル信号の周波数との周波数誤差を補正することができる。以下、キャリア信号の周波数を「キャリア周波数」と称する場合がある。
【0014】
しかしながら、この方法の場合に例えば、
図2に示すように、位相誤差Δθが45度を超えるときに、受信シンボル位置Bが本来の正しい正規シンボル位置Aとは異なる象限に存在していると誤って判定される。
図2(a)に示すように、位相誤差Δθが45度を超えているために、受信シンボル位置Bが正規シンボル位置Cの象限に存在する場合、受信シンボル位置Bの正規シンボル位置は、本来は正規シンボル位置Aであるにもかかわらず、正規シンボル位置Cであると誤って判定される。その結果、
図2(a)に示すように、正規シンボル位置に対する受信シンボル位置Bの位相誤差は、ΔθではなくΔφと判定される。また、
図2(b)に示すように、本来の正規シンボル位置Aに対する受信シンボル位置Bの位相誤差が2×Δθ(>45度)の場合、受信シンボル位置Bの位相誤差は、2×Δφ(≦45度)と判定される。さらに、
図2(c)に示すように、本来の正規シンボル位置Aに対する受信シンボル位置Bの位相誤差が3×Δθ(>45度)の場合、受信シンボル位置Bの位相誤差は、3×Δφ(≦45度)と判定される。
【0015】
デジタル受信装置が、
図2(a)から
図2(c)に例示されているような実際の位相誤差とは異なる誤った位相誤差に基づく誤った周波数補正が行なわれると、その後は1シンボル時間ごとに90度又は-90度ずつずれた誤った位置でシンボルが検出される。デジタル受信装置に設けられた復号部は、この誤った位置で検出されたシンボルに基づいて基準発振器の発振周波数が補正された状態(以下、「擬似同期状態」と称する場合がある)を維持することになる。擬似同期状態における再生キャリア周波数(ローカル信号の周波数)を「擬似同期周波数」と呼ぶ。「擬似同期周波数」に対して、正規シンボル位置に基づいて基準発振器の発振周波数を補正して生成した再生キャリアの周波数を「正規周波数」と呼ぶ。
【0016】
擬似同期状態では、正規シンボル位置に対して、1シンボル時間ごとに受信シンボル位置が90度又は-90度ずつずれた位置で検出される。このため、デジタル受信装置に設けられた復号部は、キャリア周波数に対してシンボル周波数の1/4だけ周波数がずれた擬似同期周波数にロックすることになる。擬似同期周波数は、例えばシンボル周波数が4.8kHzの場合、キャリア周波数に対して±1.2kHz(=±4.8kHz/4)ずれた周波数となる。また、受信シンボル位置は、本来検出されるべきシンボル位置から90度おき(0度、90度、180度、270度(-90度))にずれることになる。このため、デジタル受信装置に設けられた復号部は、送信側のデジタル送信装置から送信される信号を擬似同期状態では正しく復号できない。なお、本実施形態における復号処理は、復調したシンボルのQPSKのコンスタレーション上のマッピング位置から「0」及び「1」のビット系列への変換処理である。
【0017】
このように、本実施形態によるデジタル受信装置1は、送信側から送信されて受信した受信信号を復調して復号する際に、擬似同期状態となり得る。そこで、デジタル受信装置1は、第1復号部12及び第2復号部13(
図3参照、詳細は後述する)を備えている。第1復号部12及び第2復号部13は、同一の受信信号に対して、一方が正規の位相誤差に基づく受信シンボル位置を検出する状態(以下、「正規同期状態」と称する場合がある)にあると、他方が擬似同期状態となるように、互いに異なる状態となるように設定されている。また、第1復号部12は、デジタル受信装置1に接続された後続の装置に出力するデータを復号するように設定されている。デジタル受信装置1は、第1復号部12及び第2復号部13のうちのいずれが正規同期状態であるのかを検出し、第1復号部12が正規同期状態である場合には、そのまま第1復号部12からの復号されたデータを後続の装置に出力し、また、第2復号部13が正規同期状態である場合には、第1復号部12が正規同期状態となるように調整する。これにより、デジタル受信装置1は、正規同期状態で復号されたデータを後続の装置に出力できる。
【0018】
<デジタル受信装置の構成>
本実施形態によるデジタル受信装置の概略構成について
図3を用いて説明する。
図3は、本実施形態によるデジタル受信装置1の概略構成を説明するためのブロック図である。
【0019】
図3に示すように、デジタル受信装置1は、受信信号を直交検波してI信号Si及びQ信号Sqに復調する復調部11を備えている。受信信号は、例えば90度の位相差をもつローカル信号で直交検波される。また、デジタル受信装置1は、復調部11で復調されたI信号Si及びQ信号Sqを基にデータを復号する第1復号部12を備えている。また、デジタル受信装置1は、復調部11で復調されたI信号Si及びQ信号Sqに対して擬似同期に相当する再生キャリア周波数の補正を行ってデータを復号する第2復号部13を備えている。また、デジタル受信装置1は、第1復号部12から入力されるデータと第2復号部13から入力されるデータとのいずれか一方から同期ワードを表すユニークワードを検出する同期検出部14を備えている。さらに、デジタル受信装置1は、第1復号部12から入力されるデータに誤りを検出しない場合には当該データを復号信号として後段に出力し、第1復号部12から入力されるデータに誤りを検出した場合に当該データを無効データとして破棄する誤り訂正復号処理部15を備えている。
【0020】
デジタル受信装置1は、復調部11から出力されてI信号Siに基づくIデータDi及びQ信号Sqに基づくQデータDqを第1復号部12及び第2復号部13の2系統のパスに分けて復号する構成を有している。すなわち、デジタル受信装置1は、第1復号部12である第1受信パスP1と、第2復号部13である第2受信パスP2を有している。デジタル受信装置1では、第1受信パスP1が主要なパス(メインパス)となる。第1受信パスP1の復号データが後段の誤り訂正復号処理部15に出力される。
【0021】
(復調部の構成)
図3に示すように、復調部11は、送信側(例えば不図示のデジタル送信装置)から送信された無線信号を受信するアンテナ111を有している。また、復調部11は、無線信号のキャリア信号の周波数(キャリア周波数)と同じ周波数のローカル信号を発振するローカル発振器112を有している。ローカル発振器112は、ローカル信号を生成するための基準信号を発生する基準発振器(不図示)を含んでいる。この基準発振器の発振周波数を制御することでローカル信号の周波数を可変できる。また、復調部11は、ローカル発振器112が発振するローカル信号の位相を90度(π/2)ずらす90度移相器113を有している。
【0022】
復調部11は、アンテナ111が受信した無線信号である受信信号と、ローカル発振器112が発振するローカル信号とが入力されるミキサ114を有している。ミキサ114は、アンテナ111で受信された受信信号にローカル信号を乗算し、I信号Siを取り出す。また、復調部11は、アンテナ111が受信した無線信号である受信信号と、90度移相器113で基のローカル信号に対して位相が90度シフトされたローカル信号とが入力されるミキサ115を有している。ミキサ115は、アンテナ111で受信された受信信号にローカル信号に対して90度位相がシフトされた信号を乗算し、Q信号Sqを取り出す構成要素である。
【0023】
受信信号は、ミキサ114,115によってベースバンドのI信号Si及びQ信号Sqに変換される。ローカル発振器112は、送信側から送信される無線信号のキャリア信号と同じ周波数のローカル信号を発振するように構成されている。しかしながら、キャリア信号の周波数とローカル信号の周波数とを一致させることは、極めて困難であって通常、異なってしまう。このため、I信号Si及びQ信号Sqはそれぞれ、キャリア信号の周波数とローカル信号の周波数の差分(誤差)だけ周波数がずれる。
【0024】
復調部11は、ミキサ114から出力されるI信号Siをアナログ-デジタル(以下、「A/D」と略記する)変換してIデータDiを生成するA/D変換器116を有している。また、復調部11は、ミキサ115から出力されるQ信号SqをA/D変換してQデータDqを生成するA/D変換器117を有している。A/D変換器116は、デジタルのIデータDiを第1復号部12及び第2復号部13に出力するようになっている。A/D変換器117は、デジタルのQデータDqを第1復号部12及び第2復号部13に出力するようになっている。
【0025】
(第1復号部の構成)
図3に示すように、第1復号部12は、復調部11からIデータDi及びQデータDqが入力される位相回転部121を有している。位相回転部121は、回転量算出部129(詳細は後述)から入力される位相回転量だけIデータDi及びQデータDqの位相を回転する。
【0026】
第1復号部12は、位相回転部121で位相が回転されて出力されるIデータDiが入力されるローパスフィルタ(LPF)122を有している。第1復号部12は、位相回転部121で位相が回転されて出力されるQデータDqが入力されるローパスフィルタ(LPF)123を有している。ローパスフィルタ122,123は、送信側でデジタル変調信号を送信周波数帯にアップコンバートする前に挿入される帯域制限フィルタと合わせてシステム全体でナイキスト特性が得られるように設計される。このため、ローパスフィルタ122,123は、例えばルートナイキストフィルタで構成される。
【0027】
第1復号部12は、ローパスフィルタ122が出力するIデータDiと、ローパスフィルタ123が出力するQデータDqとが入力されるシンボルクロック再生部124を有している。シンボルクロック再生部124は、ベースバンド信号であるIデータDi及びQデータDqの符号の切り替わりタイミング(すなわち、ゼロクロスポイントのタイミング)を示すシンボルクロック信号を再生する。
【0028】
第1復号部12は、ローパスフィルタ122から入力されるIデータDiと、シンボルクロック再生部124から入力されるシンボルクロック信号とに基づいて受信シンボル点Xk1を取り出すシンボル点取出部125を有している。また、第1復号部12は、ローパスフィルタ123から入力されるQデータDqと、シンボルクロック再生部124から入力されるシンボルクロック信号とに基づいて受信シンボル点Yk1を取り出すシンボル点取出部126を有している。これにより、第1復号部12は、例えば
図1に示す受信シンボル位置Bを取得することができる。この例では、受信シンボル位置Bの受信シンボル点は、「Xk1,Yk1」と表すことができる。
【0029】
第1復号部12、シンボル点取出部125から入力される受信シンボル点Xk1と、シンボル点取出部126から入力される受信シンボル点Yk1とに基づいて受信シンボルを復号判定する復号判定部127を有している。復号判定部127は、受信シンボル点(Xk1,Yk1)が存在する象限に設定された正規シンボル位置からビット系列を復号する。第1復号部12は、復号判定部127において復号されたビット系列を第1データD1として同期検出部14及び誤り訂正復号処理部15に出力する。
【0030】
第1復号部12は、ローカル信号の周波数と受信信号のキャリア周波数との周波数誤差を基に周波数補正量を算出する周波数補正量算出部128を有している。周波数補正量算出部128では、検出されたシンボル点の象限から本来検出されるべき位相を求め、求められた位相に対して受信シンボル点に対応する位相のずれの変化量から周波数誤差が求められる。
【0031】
本実施形態では、周波数補正量算出部128は、シンボル点取出部125,126において取り出された受信シンボル点(Xk1,Yk1)から得られる受信シンボル位置と、正規シンボル位置とに基づいて、ローカル信号の周波数と受信信号のキャリア周波数との周波数誤差を検出する。当該周波数誤差は、受信シンボル点(Xk1,Yk1)が存在する象限に設定された正規シンボル位置に対応する位相と、受信シンボル点(Xk1,Yk1)から得られる受信シンボル位置に対応する位相との差(位相のずれ)の単位時間当りの変化量に基づいて検出される。
【0032】
詳細は後述するが、周波数補正量算出部128は、同期検出部14から入力された同期情報Imが第1復号部12で同期検出した情報の場合には、検出した周波数誤差を周波数補正量として回転量算出部129及び擬似同期用回転量算出部139に出力する。一方、周波数補正量算出部128は、同期検出部14から入力された同期情報Imが第2復号部13で同期検出した情報の場合には、擬似同期周波数の位相回転量(本実施形態では90度の回転量)を、検出した周波数誤差に加算又は減算した値を周波数補正量として回転量算出部129及び擬似同期用回転量算出部139に出力する。同期検出部14から出力される同期情報Imは、同期検出部14で第1復号部12及び第2復号部13のうち、同期検出した方の復号部の情報である。したがって、周波数補正量算出部128は、検出した周波数誤差に同期検出部14での検出結果を加味して周波数補正量を算出する。なお、同期検出部14は、同期検出するまで同期情報Imを出力しない。また、周波数補正量算出部128は、同期検出部14からの同期情報Imが入力されない場合、第1復号部12で同期検出したことを想定して周波数補正量を算出する。このように本実施形態では、周波数補正量算出部128で周波数補正量を算出して、その補正量を用いて回転量算出部129及び擬似同期用回転量算出部139で位相回転させる。これは前述の基準発振器の周波数を制御するのと同等のベースバンドでの処理であり、このようなベースバンドの処理をデジタル受信装置1のどの部分で行うかは本実施形態に限定されない。また、ローカル発振器の発振周波数を制御する処理と等価な処理であれば、本発明に含まれる。
【0033】
ここで、i回目(iは2以上の自然数)のデータ復号の際に周波数補正量算出部128で算出される周波数誤差をΔfiとし、擬似同期周波数の位相回転量をαとすると、i回目のデータ復号の際に周波数補正量算出部128で算出される周波数補正量fCiは、以下の式(2)で表すことができる。
fCi=Δfi+α ・・・(2)
【0034】
周波数補正量算出部128は、第1復号部12で同期検出したことを示す同期情報Imが同期検出部14から入力された場合には、αをゼロとして周波数補正量fciを算出する。また、周波数補正量算出部128は、第2復号部13で同期検出したことを示す同期情報Imが同期検出部14から入力され、かつ、算出した周波数誤差Δfiが正の値の場合には、αを負の値として周波数誤差Δfiに加算(すなわち、周波数誤差Δfiからαを減算)する。また、周波数補正量算出部128は、第2復号部13で同期検出したことを示す同期情報Imが同期検出部14から入力され、かつ、算出した周波数誤差Δfiが負の値の場合には、αを正の値として周波数誤差Δfiに加算する。なお、1回目のデータ復号の際は、周波数補正量fCiは、ゼロに設定される。
【0035】
第1復号部12は、周波数補正量算出部128から入力される周波数補正量及び経過時間に基づいて、次の受信シンボル点(Xk1,Yk1)の取り出しのために用いられる位相回転量を算出する回転量算出部129を有している。回転量算出部129は、算出した位相回転量を位相回転部121に出力する。
【0036】
位相回転部121は、復調部11に設けられたA/D変換器116,117から入力されるIデータDi及びQデータDqを、回転量算出部129から入力される位相回転量だけ位相調整する。また、第1復号部12は、回転量算出部129で算出される位相回転量をIデータDi及びQデータDqに累積しながら、復調部11から送信されるIデータDi及びQデータDqの復号を繰り返し、周波数誤差を調整する。1回目のデータ復号の際に位相回転部121に設定される位相回転量をb11とし、1シンボル時間(すなわち受信シンボル点の取り出し時間間隔)をTsとすると、i回目(すなわち2回目以降)のデータ復号の際に算出される位相回転量b1iは、以下の式(3)で表すことができる。なお、1シンボル時間Tsの逆数が送信側から送信される信号(すなわち受信信号)をサンプリングするサンプリング周波数となる。
b1i=b11+2π×ΣfCi-1×Ts ・・・(3)
【0037】
このように、第1復号部12は、i回目の受信シンボル点の取り出しの際(すなわちデータ復号の際)に、1回目のデータ復号の際に設定される位相回転量及び2回目からi-1回目までのデータ復号の際に回転量算出部129で算出された位相回転量を反映させることができる。これにより、デジタル受信装置1は、送信側から送信されたデータの復号の精度を向上させることができる。
【0038】
(第2復号部の構成)
図3に示すように、第2復号部13は、第1復号部12に設けられた位相回転部121から復号判定部127までの構成とほぼ同様の構成を有している。すなわち、第2復号部13に設けられた位相回転部131は、位相回転量ではなく擬似同期用回転量(詳細は後述)を用いてIデータDi及びQデータDqの位相を調整する点を除いて、第1復号部12に設けられた位相回転部121と同様の構成を有し、同様の機能を発揮する。
【0039】
第2復号部13に設けられたローパスフィルタ132は、第1復号部12に設けられたローパスフィルタ122と同様の構成を有し、同様の機能を発揮する。第2復号部13に設けられたローパスフィルタ133は、第1復号部12に設けられたローパスフィルタ123と同様の構成を有し、同様の機能を発揮する。第2復号部13に設けられたシンボルクロック再生部134は、第1復号部12に設けられたシンボルクロック再生部124と同様の構成を有し、同様の機能を発揮する。
【0040】
第2復号部13に設けられたシンボル点取出部135は、周波数補正量算出部128に受信シンボル点を出力しない点を除いて、第1復号部12に設けられたシンボル点取出部125と同様の構成を有し、同様の機能を発揮する。第2復号部13に設けられたシンボル点取出部136は、周波数補正量算出部128に受信シンボル点Yk2を出力しない点を除いて、第1復号部12に設けられたシンボル点取出部126と同様の構成を有し、同様の機能を発揮する。第2復号部13に設けられた復号判定部137は、復号したビット系列を第2データD2として誤り訂正復号処理部15に出力しない点を除いて、第1復号部12に設けられた復号判定部127と同様の構成を有し、同様の機能を発揮する。
【0041】
図3に示すように、第2復号部13は、擬似同期状態におけるキャリア周波数である擬似同期周波数の位相回転量を、周波数補正量を基に算出する擬似同期用回転量算出部139を有している。ここで、以下、「擬似同期状態におけるキャリア周波数である擬似同期周波数の位相回転量」を「擬似同期位相回転量」と称する場合がある。擬似同期用回転量算出部139には、第1復号部12に設けられた周波数補正量算出部128で算出された周波数補正量が入力されるようになっている。擬似同期用回転量算出部139は、周波数補正量算出部128から入力される周波数補正量の正負に応じて異なる擬似同期位相回転量を算出する。擬似同期用回転量算出部139は、周波数補正量算出部128から入力される周波数補正量が例えば正の値の場合には、「-1/(4×Ts)Hz」に相当する値を当該周波数補正量に加算して擬似同期位相回転量を算出する。また、擬似同期用回転量算出部139は、周波数補正量算出部128から入力される周波数補正量が例えば負の値の場合には、「+1/(4×Ts)Hz」に相当する値を当該周波数補正量に加算して擬似同期位相回転量を算出する。
【0042】
位相回転部131は、復調部11に設けられたA/D変換器116,117から入力されるIデータDi及びQデータDqを、擬似同期用回転量算出部139から入力される位相回転量だけ位相調整する。また、第2復号部13は、擬似同期用回転量算出部139で算出される擬似同期位相回転量をIデータDi及びQデータDqに累積しながら、復調部11から入力されるIデータDi及びQデータDqの復号を繰り返し、擬似同期用に周波数誤差を調整する。1回目のデータ復号の際に位相回転部131に設定される擬似同期位相回転量をb21とし、「1/(4×Ts)Hz」に相当する値をβとすると、i回目(すなわち2回目以降)のデータ復号の際に算出される擬似同期位相回転量b2iは、以下の式(4)及び式(5)で表すことができる。
b2i=b21+(2π×ΣfCi-1×Ts)-β ・・・(4)
b2i=b21+(2π×ΣfCi-1×Ts)+β ・・・(5)
【0043】
式(4)は、周波数補正量が例えば正の値の場合の擬似同期位相回転量b2iを算出するための式である。式(5)は、周波数補正量が例えば負の値の場合の擬似同期位相回転量b2iを算出するための式である。
【0044】
したがって、擬似同期用回転量算出部139が算出する擬似同期位相回転量b2iは、回転量算出部129が算出する位相回転量b1iに対して位相が90度または-90度となる。このため、位相回転部131において位相調整されて出力されるIデータDiは、位相回転部121において位相調整されて出力されるIデータDiに対して位相が90度シフトしたデータとなる。同様に、位相回転部131において位相調整されて出力されるQデータDqは、位相回転部121において位相調整されて出力されるQデータDqに対して位相が90度シフトしたデータとなる。
【0045】
また同様に、シンボルクロック再生部134において再生されるシンボルクロック信号は、シンボルクロック再生部124において再生されるシンボルクロック信号に対して位相が90度ずれた信号となる。
【0046】
また同様に、シンボル点取出部135において取り出される受信シンボル点Xk2は、シンボル点取出部125において取り出される受信シンボル点Xk1に対して位相が90度ずれた値となる。同様に、シンボル点取出部136において取り出される受信シンボル点Yk2は、シンボル点取出部126において取り出される受信シンボル点Yk1に対して位相が90度ずれた値となる。したがって、
図1及び
図2に示すQPSKのコンスタレーションにおいて、受信シンボル点(Xk1,Yk1)に基づく受信シンボル位置と、受信シンボル点(Xk2,Yk2)に基づく受信シンボル位置とは、π/2(90度)の位相差を持つ。
【0047】
復号判定部137は、受信シンボル点(Xk1,Yk1)が存在する象限に設定された正規シンボル位置からビット系列を復号する。復号判定部137は、復号したビット系列を第2データD2として同期検出部14に出力する。上述のとおり、受信シンボル点(Xk1,Yk1)は、受信シンボル点(Xk2,Yk2)に対して位相が90度ずれている。このため、復号判定部137から出力される第2データD2は、復号判定部127から出力される第1データD1に対して位相が90度シフトしたデータとなる。
【0048】
また、擬似同期位相回転量b21は、位相回転量b11に対して位相が90度シフトした値に設定される。このため、デジタル受信装置1は、第1復号部12である第1受信パスP1及び第2復号部13である第2受信パスP2において、位相が互いに90度ずれたデータを用いて1回目のデータ復号を実行することができる。
【0049】
(同期検出部の構成)
デジタル受信装置1は、送信側から送信される信号に含まれるユニークワードを用いて、ローカル発振器112が発振するローカル信号の周波数と受信信号のキャリア周波数との周波数誤差を調整するようになっている。また、デジタル受信装置1は、連続して複数回送信されるユニークワードを用いて当該周波数誤差を調整する。
【0050】
同期検出部14は、ユニークワードが含まれる受信信号である特定信号が復調部11で復調されたI信号Si及びQ信号Sqを基に第1復号部12で復号された第1データD1、及び当該特定信号が復調部11で復調されたI信号Si及びQ信号Sqを基に第2復号部13で復号された第2データのいずれかに含まれるユニークワードを検出して、第1復号部12または第2復号部13のいずれかが同期したことを検出するように構成されている。
【0051】
デジタル受信装置1を含むデジタル送受信システムでは、デジタル受信装置1は、送信側から送信されるユニークワードと同一のユニークワードを同期検出部14に記憶している。このため、同期検出部14は、第1復号部12及び第2復号部13で復号されたそれぞれの復号データと、記憶しているユニークワードとを比較してユニークワードとの相関即ち、一致度によって同期したことを検出することができる。ユニークワードは、例えば所定の文字列を複数ビットで表した構成を有している。
【0052】
同期検出部14は、第1復号部12で復号された第1データD1を表すビット系列と、記憶しているユニークワードを表すビット系列とを比較し、その一致度で同期検出の有無を判定する。また、同期検出部14は、第2復号部13で復号された第2データD2を表すビット系列と、記憶しているユニークワードを表すビット系列との一致度で同期検出をしたか否かを判定する。同期検出の有無の判定は、例えば、20ビットのユニークワードならば、そのうち16ビット(8割)以上が一致していれば同期検出したと判定し、それ未満の場合は同期検出していないと判定する。
【0053】
同期検出部14は、第1復号部12及び第2復号部13のうち、同期検出できた方の復号部の同期情報Imを周波数補正量算出部128に出力する。周波数補正量算出部128は、同期検出部14から入力される同期情報Imが第1復号部12で復号された第1データD1から同期検出した情報の場合には、I信号Si及びQ信号Sqに基づく周波数誤差を周波数補正量として算出する。一方、周波数補正量算出部128は、同期検出部から14入力される同期情報Imが第2復号部13で復号された第2データD2から同期検出した情報の場合には、I信号Si及びQ信号Sqに基づく周波数誤差を擬似同期周波数の位相回転量で補正して周波数補正量を算出する。受信シンボル点(Xk1,Yk1)は、I信号Si及びQ信号Sqに所定の処理を施して得られる。つまり、受信シンボル点(Xk1,Yk1)は、I信号Si及びQ信号Sqに基づく信号である。このため、周波数補正量算出部128が受信シンボル点(Xk1,Yk1)を用いて算出する周波数誤差が、I信号Si及びQ信号Sqに基づく周波数誤差を表す。
【0054】
第1復号部12及び第2復号部13で復号された第1データD1及び第2データD2のうち、第1データD1の方がユニークワードとの一致度が高い場合、デジタル受信装置1は、正規同期状態にあり、擬似同期状態ではない。このため、同期検出部14から第1復号部12で同期検出したことを示す同期情報Imが周波数補正量算出部128に出力されると、その後に同期検出部14から第2復号部13で同期検出したことを示す同期情報Imが周波数補正量算出部128に出力されるまで、第1受信パスP1は、正規周波数でロックした状態となる。
【0055】
一方、第1復号部12及び第2復号部13で復号された第1データD1及び第2データD2のうち、第2データD2の方がユニークワードとの一致度が高い場合、デジタル受信装置1は、擬似同期状態にある。このため、同期検出部14から第2復号部13で同期検出したことを示す同期情報Imが周波数補正量算出部128に出力されると、その後に同期検出部14から第1復号部12で同期検出したことを示す同期情報Imが周波数補正量算出部128に出力されるまで、第1受信パスP1は、擬似同期周波数でロックした状態となる。
【0056】
このように、デジタル受信装置1は、第1受信パスP1が正規周波数でロックしている場合には、擬似同期周波数の位相回転量で補正されていない周波数誤差に基づく位相回転量を用いてIデータDi及びQデータDqの位相を回転した後にデータを復号する。一方、デジタル受信装置1は、第1受信パスP1が擬似同期周波数でロックしている場合には、周波数誤差を擬似同期周波数の位相回転量で補正した位相回転量を用いてIデータDi及びQデータDqの位相を回転した後にデータを復号する。このため、デジタル受信装置1は、前回(例えばi-1回目)のデータ復号において第1受信パスP1がロックしている周波数が正規周波数及び擬似同期周波数のいずれであっても、次回(例えばi回目)のデータ復号では第1受信パスP1を正規周波数にロックすることができる。
【0057】
デジタル受信装置1では、前回(例えばi-1回目)のデータ復号において第1受信パスP1が擬似同期周波数でロックしている場合に、次回(例えばi回目)のデータ復号では第1受信パスP1を正規周波数でロックすることができる。しかしながら、デジタル受信装置1には、何らかの不具合によって、次回(例えばi回目)のデータ復号において第1受信パスP1が正規周波数でロックしない場合も生じ得る。この場合、同期検出部14は、第1受信パスP1が正規同期周波数でロックした状態(すなわち第1復号部12が正規同期状態)となるまで、ユニークワードを検出(同期検出)を実行するたびに同期情報Imを周波数補正量算出部128に出力するように構成されている。これにより、デジタル受信装置1は、第1復号部12を擬似同期状態から正規同期状態に最終的に移行できる。
【0058】
デジタル受信装置1における同期検出が完了するまでは、第1復号部12から出力される第1データD1には誤りが含まれる可能性がある。しかしながら、デジタル受信装置1は、第1復号部12の後段の設けられた誤り訂正復号処理部15によって第1データD1に誤りが検出された場合には、当該第1データD1を無効データとして破棄することができる。このため、デジタル受信装置1は、同期検出が完了していない状態において、誤りを含む第1データD1が後段に設けられた所定装置(不図示)に出力されることを防止できる。
【0059】
<デジタル受信装置の動作>
次に、本実施形態によるデジタル受信装置の動作例について
図3を再び用いて説明する。以下、ローカル信号及びキャリア信号の同期検出を例にとってデジタル受信装置1の動作例を説明する。
【0060】
例えば、ユニークワードを含む受信信号のi-1回目のデータ復号において、第1受信パスP1が正規周波数でロックしたとする。この場合、同期検出部14は、復号判定部127から入力される第1データD1の方が復号判定部137から入力される第2データD2よりもユニークワードとの一致度が高いことで同期検出する。このため、同期検出部14は、第1復号部12で同期検出したことを示す同期情報Imを周波数補正量算出部128に出力する。
【0061】
周波数補正量算出部128は、シンボル点取出部125から入力される受信シンボル点Xk1及びシンボル点取出部126から入力される受信シンボル点Yk1から得られる受信シンボル位置と、正規シンボル位置とに基づいて、ローカル信号の周波数と受信信号のキャリア周波数との周波数誤差Δfi-1を検出する。周波数補正量算出部128は、上述の式(2)に基づいて周波数補正量fCi-1を算出する。周波数補正量算出部128は、第1復号部12で同期検出したことを示す同期情報Imを受信しており、式(2)中の擬似同期周波数の位相回転量αはゼロとなるので、検出した当該周波数誤差Δfi-1を周波数補正量fCi-1として回転量算出部129及び擬似同期用回転量算出部139に出力する。
【0062】
回転量算出部129は、上述の式(3)に基づいて、位相回転量b1i-1を算出して位相回転部121に出力する。位相回転部121は、回転量算出部129から入力される位相回転量b1i-1を基に、復調部11から入力されるIデータDi及びQデータDqのそれぞれの位相を調整する。第1復号部12は、位相回転部121で位相調整されたIデータDi及びQデータDqを用いて、i回目のデータ復号を実行する。
【0063】
一方、擬似同期用回転量算出部139は、上述の式(4)及び式(5)に基づいて、擬似同期位相回転量b2i-1を算出して位相回転部131に出力する。位相回転部131は、擬似同期用回転量算出部139から入力される擬似同期位相回転量b2i-1を基に、復調部11から入力されるIデータDi及びQデータDqのそれぞれの位相を調整する。第2復号部13は、位相回転部131で位相調整されたIデータDi及びQデータDqを用いて、i回目のデータ復号を実行する。
【0064】
i回目のデータ復号において、第1データD1の方が第2データD2よりもユニークワードとの一致度が高いことで同期検出部14が同期検出したとする。この場合、デジタル受信装置1は、i-1回目のデータ復号処理と同様に動作する。i回目のデータ復号の際に、第1受信パスP1は、正規周波数でロックしている状態であるため、周波数補正量算出部128において周波数誤差Δfiに擬似同期周波数の位相回転量αの補正が行われない。このため、i+1回目のデータ復号の際も、第1受信パスP1は正規周波数でロックした状態であり、第1復号部12は正規同期状態となる。
【0065】
一方、i回目のデータ復号において、第2データD2の方が第1データD1よりもユニークワードとの一致度が高いことで同期検出部14が同期検出したとする。この場合、同期検出部14は、第2復号部13で同期検出したことを示す同期情報Imを周波数補正量算出部128に出力する。
【0066】
周波数補正量算出部128は、シンボル点取出部125から入力される受信シンボル点Xk1及びシンボル点取出部126から入力される受信シンボル点Yk1から得られる受信シンボル位置と、正規シンボル位置とに基づいて、ローカル信号の周波数と受信信号のキャリア周波数との周波数誤差Δfiを検出する。周波数補正量算出部128は、上述の式(2)に基づいて周波数補正量fCiを算出する。周波数補正量算出部128は、第2復号部13で同期検出したことを示す同期情報Imを受信しており、式(2)中のαは90度の位相に対応する擬似同期周波数の位相回転量αとなる。このため、周波数補正量算出部128は、検出した当該周波数誤差Δfiに位相回転量αを加算又は減算して算出した周波数補正量fCiを回転量算出部129及び擬似同期用回転量算出部139に出力する。
【0067】
回転量算出部129は、上述の式(3)に基づいて、位相回転量b1iを算出して位相回転部121に出力する。位相回転部121は、回転量算出部129から入力される位相回転量b1iを基に、復調部11から入力されるIデータDi及びQデータDqのそれぞれの位相を調整する。第1復号部12は、位相回転部121で位相調整されたIデータDi及びQデータDqを用いて、i+1回目のデータ復号を実行する。i回目のデータ復号の際に、第1受信パスP1は、擬似同期周波数にロックしている状態であるが、周波数補正量算出部128において周波数誤差Δfiに擬似同期周波数の位相回転量αの補正が行われている。このため、i+1回目のデータ復号の際には、第1復号部12正規周波数にロックした状態であり、第1復号部12は正規同期状態となる。
【0068】
一方、擬似同期用回転量算出部139は、上述の式(4)及び式(5)に基づいて、擬似同期位相回転量b2iを算出して位相回転部131に出力する。位相回転部131は、擬似同期用回転量算出部139から入力される擬似同期位相回転量b2iを基に、復調部11から入力されるIデータDi及びQデータDqのそれぞれの位相を調整する。第2復号部13は、位相回転部131で位相調整されたIデータDi及びQデータDqを用いて、i+1回目のデータ復号を実行する。
【0069】
このように、デジタル受信装置1は、i-1回目のデータ復号における第1復号部12(すなわち第1受信パスP1)が正規周波数及び擬似同期周波数のいずれにロックしていたとしても、第1復号部12(すなわち第1受信パスP1)を正規周波数にロックした状態でi回目のデータ復号を実行することができる。
【0070】
<デジタル受信装置の効果>
次に、本実施形態によるデジタル受信装置の効果について、
図3を参照しつつ
図4を用いて説明する。
図4は、デジタル受信装置において復号過程のデータ(位相回転部121,131から出力されたデータに相当する)の周波数帯域FBaと、復号部(第1復号部12及び第2復号部13に相当する)に設けられたローパスフィルタ(ローパスフィルタ122、123,132,133に相当する)の周波数帯域FBbとを模式的に示す図である。
図4(a)は、データの周波数帯域FBaと、ローパスフィルタの周波数帯域FBbとが重なっている状態を模式的に示す図である。
図4(b)は、データの周波数帯域FBaがローパスフィルタの周波数帯域FBbに対して正側にΔfだけずれた状態を模式的に示す図である。
図4(c)は、データの周波数帯域FBaがローパスフィルタの周波数帯域FBbに対して負側にΔfだけずれた状態を模式的に示す図である。
【0071】
本実施形態によるデジタル受信装置1の効果を説明する前に、従来技術の問題点について詳細に説明する。
特許文献1に記載されたデジタル受信装置(以下、「従来のデジタル受信装置」と称すr)は、復号部が正規周波数にロックしている場合は、復号判定部で復号したデータと正規ユニークワードとの相関を取って通常の同期検出を行うことが可能である。一方、従来のデジタル受信装置は、復号部が擬似同期周波数でロックしている場合、復号データと正規ユニークワードとの相関は取れないが、正規ユニークワードが擬似同期状態で変形された擬似同期変形ユニークワードと復号データとの相関が検出される。このため、従来のデジタル受信装置は、周波数誤差を±1/(4Ts)Hzだけ補正することによって正しい周波数補正値へ変換し、復号部を正規周波数にロックさせることが可能となる。
【0072】
従来のデジタル受信装置は、周波数誤差を補正した後にローパスフィルタを通過する構成となっている。本実施形態におけるローパスフィルタ122,123,132,133と同様に、このローパスフィルタは、システム全体でナイキスト特性を得るために、例えばルートナイキストフィルタで構成される。さらに、このローパスフィルタは、周波数帯域外のチャネルや雑音の除去も合わせて達成するために一般に、復号されるデータの信号帯域とほぼ同じ帯域幅で急峻なフィルタ特性になるように設計されている。そのため、デジタル受信装置では、このローパスフィルタの前段で精度よく周波数誤差を補正しておく必要がある。
【0073】
周波数補正後の信号に依然として周波数誤差Δfが含まれる場合、
図4(b)及び
図4(c)に示すように、信号の周波数帯域は、周波数軸上を周波数誤差Δfだけシフトした状態となる。これにより、信号の周波数帯域の中心周波数とローパスフィルタの周波数帯域の中心周波数とが一致しなくなる。信号の周波数帯域のうちのローパスフィルタの周波数帯域に重なっていない帯域の信号成分は、ローパスフィルタで遮断されてしまう。その結果、ローパスフィルタを通過した後の信号は歪んでしまう。
【0074】
図4(a)に示すように、従来のデジタル受信装置は、復号部が正規周波数でロックしている場合には、ローパスフィルタの周波数帯域の中心周波数と、周波数誤差を補正した後の信号の周波数帯域の中心周波数とが一致する。このため、ローパスフィルタを通過した後の信号は、ほとんど歪まない。一方、従来のデジタル受信装置は、復号部が擬似同期周波数にロックしている場合には、周波数誤差を補正した後の信号の周波数帯域の中心周波数が正規周波数の周波数帯域の中心周波数に対して±1/(4Ts)Hzの周波数誤差が含まれている状態となる。このため、
図4(b)及び
図4(c)に示すように、ローパスフィルタの周波数帯域の中心周波数に対して周波数帯域の中心周波数がΔf=±1/(4Ts)Hzずれた信号がローパスフィルタを通過する。このため、ローパスフィルタを通過した後の信号は歪んでしまう。
【0075】
従来のデジタル受信装置は、復号部が正規周波数でロックした状態では、ローパスフィルタを通過してもほとんど歪まない信号に対して同期の検出を行うことになる。一方、従来のデジタル受信装置は、復号部が擬似同期周波数でロックした状態では、ローパスフィルタを通過することによって歪んだ信号に対して擬似同期の検出を行うことになる。このため、従来のデジタル受信装置では、復号部が擬似同期周波数でロックした状態の擬似同期の検出精度は、復号部が正規周波数でロックした状態で同期の検出精度よりも劣化してしまう。このように、従来のデジタル受信装置は、復号部がロックする周波数に応じて同期検出の精度が低下する場合があるという問題を有している。
【0076】
これに対し、本実施形態によるデジタル受信装置1では、第1受信パスP1が正規周波数にロックしている場合、同期検出部14は、第2復号部13から入力される第2データD2よりも第1復号部12から入力される第1データD1の方がユニークワードとの一致度が高く同期検出する。このため、同期検出部14は、第1受信パスP1を同期検出したパスと判断する。この場合、
図4(a)に示すように、第1受信パスP1における周波数補正後(すなわち、位相回転部121において位相回転した後)のIデータDi及びQデータDqのそれぞれの周波数帯域の中心周波数とローパスフィルタ122,123のそれぞれの周波数帯域の中心周波数は、一致している。このため、第1受信パスP1に配置されたローパスフィルタ122を通過した後のIデータDi及びローパスフィルタ123を通過したQデータDqはほとんど歪まない。これにより、デジタル受信装置1は高精度に同期検出を行うことができる。
【0077】
この場合の第2復号部13(すなわち第2受信パスP2)は、擬似同期周波数でロックしている状態になる。このため、同期検出部14は、第2受信パスP2から出力される第2データD2からユニークワードを検出しない。
【0078】
第1受信パスP1が擬似同期周波数でロックしている場合、第2受信パスP2は、擬似同期用回転量算出部139において擬似同期周波数に相当する周波数補正が行われているので、正規周波数でロックしている状態となる。このため、同期検出部14は、第1復号部12から入力される第1データD1よりも第2復号部13から入力される第2データD2の方がユニークワードとの一致度が高いことを検出する。これにより、同期検出部14は、第2受信パスP2を同期検出したパスと判定する。この場合、
図4(a)に示すように、第2受信パスP2における周波数補正後(すなわち、位相回転部131において位相回転した後)のIデータDi及びQデータDqのそれぞれの周波数帯域の中心周波数は、ローパスフィルタ132,133のそれぞれの周波数帯域の中心周波数に一致している。このため、ローパスフィルタ132を通過した後のIデータDi及びローパスフィルタ133を通過した後のQデータDqは、ほとんど歪まない。これにより、デジタル受信装置1は、高精度に同期検出を行うことができる。
【0079】
このように、本実施形態によるデジタル受信装置1は、メインパスである第1受信パスP1が擬似同期周波数でロックしている場合でも、次のデータ復号においては第1受信パスP1が正規周波数でロックした状態でデータを復号することができる。また、デジタル受信装置1は、第1受信パスP1が擬似同期周波数にロックしている場合には、正規周波数でロックしている状態の第2受信パスP2が出力する第2データD2によって、ローカル信号とキャリア信号との同期検出を実行することができる。これにより、デジタル受信装置1は、メインパスである第1受信パスP1が正規周波数及び擬似同期周波数のいずれにロックしていても、ローカル信号とキャリア信号との同期検出を高精度に実行することができる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態によるデジタル受信装置1は、受信信号を直交検波してI信号Si及びQ信号Sqに復調する復調部11と、復調部11で復調されたI信号Si及びQ信号Sqを基にデータを復号する第1復号部12と、復調部11で復調されたI信号Si及びQ信号Sqに対して擬似同期に相当する再生キャリア周波数の補正を行ってデータを復号する第2復号部13と、第1復号部12から入力される第1データD1と第2復号部13から入力される第2データD2とのいずれか一方からユニークワードを検出する同期検出部14とを備えている。
【0081】
このような構成を備えるデジタル受信装置1は、擬似同期の状態でも同期の確立を容易に行うことができる。
【0082】
本発明は、上記実施形態に限らず、種々の変形が可能である。
上記実施形態によるデジタル受信装置1は、RF信号で直交検波してI信号、Q信号を分離しているが、RF信号を中間周波(IF)信号に変換後にA/D変換器し、アンダーサンプリングを行って直交検波を行なう構成でも良い。
【0083】
また、デジタル受信装置1に備えられた同期検出部14は、第1受信パスP1が正規周波数にロックした状態(すなわち第1復号部12が正規同期状態)になった後に、第1受信パスP1が擬似同期周波数でロックした状態(すなわち第1復号部12が擬似同期状態)となるまで、同期情報Imを周波数補正量算出部128に出力しないように構成してもよい。これにより、デジタル受信装置1は、データ復号の処理負荷を低減することができる。
【0084】
また、デジタル受信装置1は、第1受信パスP1が正規同期周波数にロックした状態(すなわち第1復号部12が正規同期状態)となった後は、第1受信パスP1が正規同期状態が解除されるまで、第2復号部13の動作を停止してもよい。この場合例えば、デジタル受信装置1は、第2復号部13の動作を停止した後に、ユニークワードを含む受信信号が復号された第1データD1のユニークワードとの相関が所定の閾値よりも低くなった(すなわち、ユニークワードとの一致度が所定の閾値よりも低くなった)場合に、第2復号部13の動作を再開する。これにより、デジタル受信装置1は、データ復号の処理負荷を低減するとともに、同期検出の検出精度の低下を防止できる。
【0085】
また、上記実施形態では、QPSK変調で説明しているが、本発明は、DQPSK、π/4シフトDQPSK等の4相PSK変調信号に対しも有効である。
【符号の説明】
【0086】
1 デジタル受信装置
11 復調部
12 第1復号部
13 第2復号部
14 同期検出部
15 訂正復号処理部
111 アンテナ
112 ローカル発振器
113 90度移相器
114,115 ミキサ
116,117 A/D変換器
121,131 位相回転部
122,123,132,133 ローパスフィルタ
124,134 シンボルクロック再生部
125,126,135,136 シンボル点取出部
127,137 復号判定部
128 周波数補正量算出部
129 回転量算出部
139 擬似同期用回転量算出部