IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ロボットハンド 図1
  • 特許-ロボットハンド 図2
  • 特許-ロボットハンド 図3
  • 特許-ロボットハンド 図4
  • 特許-ロボットハンド 図5
  • 特許-ロボットハンド 図6
  • 特許-ロボットハンド 図7
  • 特許-ロボットハンド 図8
  • 特許-ロボットハンド 図9
  • 特許-ロボットハンド 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240820BHJP
   B25J 15/00 20060101ALI20240820BHJP
   B25J 15/10 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B25J15/08 P
B25J15/08 C
B25J15/00 F
B25J15/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020187604
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076937
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】藤田 剛也
(72)【発明者】
【氏名】山田 有加
(72)【発明者】
【氏名】駒谷 隆行
(72)【発明者】
【氏名】中村 寿幸
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-198085(JP,A)
【文献】特開2017-189861(JP,A)
【文献】特開平08-336788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を把持するロボットハンドであって、
前記対象物を把持する複数の把持部と、
前記ロボットハンドと前記対象物とを結ぶ第1方向と、前記第1方向に直交する第2方向とに少なくとも移動可能であり、かつ前記複数の把持部によって把持された前記対象物を押さえる複数の押さえ部とを備えており
前記複数の押さえ部の各々は独立して前記第2方向に移動可能である
ロボットハンド。
【請求項2】
前記押さえ部は、前記第1方向および前記第2方向の双方に直交する第3方向にさらに移動可能である、請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
異なる複数の前記押さえ部を備えている、請求項1または2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記複数の把持部および複数の前記押さえ部によって前記対象物を把持する、請求項3に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記対象物を吸着する吸着部をさらに備えている、請求項1~4のいずれか1項に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記押さえ部が前記対象物に当接した状態で、前記押さえ部を前記第1方向にさらに移動させる、請求項1~5のいずれか1項に記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の搬送および組み立てに用いられるロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、何らかの生産品を工場において自動的に生産するために、ロボットハンドを有するロボットが広く活用されている。ロボットは、ロボットハンドを用いて、生産品に組み込まれる部品を把持し、これを指定場所まで搬送したり、あるいは他の部品に組み込んだりする。このようなロボットハンドの一例として、特許文献1に、互いの距離を変更可能に設けられた複数の指部の間で対象物を把持する動作を行うロボットハンドにおいて、前記複数の指部の間には、該複数の指部の根元側と該複数の指部の先端側とを結ぶ方向に沿って移動可能な掌部が設けられていることを特徴とするロボットハンドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-139808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のロボットハンドには、部品を搬送する際の部品の姿勢維持を補助したり、部品の組み立て時に部品が受ける反力を受けたりするための構造が必要になる。このような構造は、押さえ部と呼ばれる。特許文献1のロボットハンドでは、掌部が押さえ部に相当する。部品には様々な形状のものがあるため、部品の搬送または組み立てに用いられる押さえ部を、対象の部品の形状に応じた専用の押さえ部を作製する必要がある。したがって、部品の種類の数だけ、様々なロボットハンドが必要である。これにより、各種ロボットハンドの設計費用、材料費用、および組み立て費用が高額になる問題がある。
【0005】
さらに、ロボットハンドを取り付けるロボットの台数も増加するため、その費用およびスペースも増加する問題がある。なお、システム台数を節約するために、ある時点で用いられるロボットハンドを適宜切り替える装置、いわゆるツールチェンジャーを用いる工夫も可能である。しかし、このような装置を用いた場合、ロボットハンドを切り替えるたびに一定の切り替え時間が発生するため、完成品の生産速度が低下する問題が生じる。
【0006】
本発明の一態様は、異なる形状の対象物を、共通の構造によって把持可能なロボットハンドを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るロボットハンドは、対象物を把持するロボットハンドであって、前記対象物を把持する複数の把持部と、前記ロボットハンドと前記対象物とを結ぶ第1方向と、前記第1方向に直交する第2方向とに少なくとも移動可能であり、かつ前記複数の把持部によって把持された前記対象物を押さえる少なくとも1つの押さえ部とを備えている。
【0008】
前記構成によれば、ロボットハンドは、押さえ部を、対象物に向かう第1方向に移動させると共に、第1方向に直交する第2方向にも移動させることができる。したがって、押さえ部を、第1方向に移動させて対象物に当接させる前に、第2方向に適宜移動させることによって、対象物における押さえ部の当接位置を適宜変更することができる。これにより、対象物の形状に応じた適切な位置に押さえ部を当接させることができるので、異なる形状の複数の対象物を、共通の構造によって安定的に個別に把持することができる。
【0009】
一実施形態において、前記押さえ部は、前記第1方向および前記第2方向の双方に直交する第3方向にさらに移動可能である。
【0010】
前記構成によれば、押さえ部を3次元的に移動させることができるので、対象物において押さえ部を当接させる位置の範囲をさらに広げることができる。したがって、ロボットハンドが対応する対象物の形状を、より広い範囲に広げることができる。
【0011】
一実施形態において、ロボットハンドは、異なる複数の前記押さえ部を備えている。
【0012】
前記構成によれば、対象物における複数の異なる位置に押さえ部をそれぞれ当接することができるので、対象物をより安定的に把持することができる。
【0013】
一実施形態において、ロボットハンドは、前記複数の把持部および複数の前記押さえ部によって前記対象物を把持する。
【0014】
前記構成によれば、異なる4方向から対象物を把持することができるので、対象物をより安定的に把持することができる。
【0015】
一実施形態において、ロボットハンドは、前記対象物を吸着する吸着部をさらに備えている。
【0016】
前記構成によれば、対象物を吸着部に吸着させることができるので、複数の把持部では把持し辛い対象物(例えば薄板)であっても安定的に把持することができる。
【0017】
一実施形態において、ロボットハンドは、前記押さえ部が前記対象物に当接した状態で、前記押さえ部を前記第1方向にさらに移動させる。
【0018】
前記構成によれば、押さえ部を、例えば対象物を穴の奥に押し込むための作業棒として、活用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、異なる形状の対象物を、共通の構造によって把持可能なロボットハンドを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るロボットの構成を示す図である。
図2】ロボットハンドの構成を示す図である。
図3】押さえ部を異なる方向にそれぞれ移動させるための機構を説明する図である。
図4】ロボットハンドによる部品の把持を示す図である。
図5】ロボットハンドによる部品の把持を示す図である。
図6】ロボットハンドによる部品の把持を示す図である。
図7】ロボットハンドの押さえ部を作業棒として活用する例を示す図である。
図8】ロボットハンドによるケーブルの把持を示す図である。
図9】押さえ部を異なる方向にそれぞれ移動させるための機構を説明する図である。
図10】本発明の実施形態2に係るロボットハンドの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。
【0022】
§1 適用例
図2を用いて、本発明が適用される場面の一例について説明する。本実施形態に係るロボットハンドは、図2に示すロボットハンド1として実現される。
【0023】
図2に示すように、ロボットハンド1は、把持部11および12、ならびに押さえ部21および22を備えている。把持部11および12は、ロボットハンド1によって把持される対象物の一例としての部品4を、その側面から把持するために用いられる。押さえ部21および22は、部品4の把持時に部品4を押さえるために用いられる。部品4の把持時に部品4が押さえ部21および22によって押さえられるので、ロボットハンド1は部品4を安定的に把持することができる。
【0024】
押さえ部21および22は、ロボットハンド1と部品4とを結ぶZ方向(第1方向)に移動可能である。Z方向は、例えば、部品4におけるロボットハンド1に対向する表面に対してロボットハンド1から垂直に向かう方向である。押さえ部21および22は、さらに、Z方向に直交するX方向(第2方向)と、Z方向およびX方向の双方に直交するY方向(第3方向)にも移動可能である。これにより、ロボットハンド1は、押さえ部21および22を、部品4に対向する所望の位置まで自在に動かすことができるので、部品4上の適切な位置に押さえ部21および22を当接させることができる。そのため、部品4ごとにその形状に応じた適切な当接位置に、押さえ部21および22を当接させることができる。したがって、ロボットハンド1は、共通の構造によって、形状の異なる複数の部品4を個別に把持することができる。
【0025】
§2 構成例
(ロボットハンド1の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るロボット100の構成を示す図である。ロボット100は、主に工場内で生産品の自動組み立てに用いられる組み立て装置であってよい。図1の例では、ロボット100は、ロボット本体101、ロボットアーム102、およびロボットハンド1を備えている。ロボットアーム102の一端は、ロボット本体101の所定位置に接続されている。ロボットアーム102の他端(先端)に、ロボットハンド1が設けられている。ロボット100は、ロボットハンド1を用いて各種の部品を把持すると共に、把持された部品を所定位置まで搬送したり、把持された部品を用いて生産品を組み立てたりする。
【0026】
図2は、ロボットハンド1の構成を示す図である。この図に示すように、ロボットハンド1は、ハンド本体10、把持部11、把持部12、押さえ部21、および押さえ部22を備えている。把持部11および12ならびに押さえ部21および22は、いずれもロボットハンド1の表面に設けられている。ここでいう表面とは、ロボットハンド1が部品4を把持する際に、当該部品に対向するロボットハンド1の面を意味する。表面は、必ずしも平面である必要はない。
【0027】
把持部11および12は、ロボットハンド1において部品を把持する複数の把持部を構成する。把持部11および12は、メカニカルチャックとも呼ばれる。把持部11および12は、ロボットハンド1の表面の垂線方向(以下、Z方向)と平行な長軸を持つ細長い構造を有している。また、把持部11および12は、把持部11および12の延伸方向と直交する方向に自在に移動可能である。図2には特に図示しないが、ロボットハンド1における把持部11および12との接続箇所には、把持部11および12をロボットハンド1の表面の面方向に移動可能にするための機能が備えられている。ロボットハンド1は、部品4の側面を把持部11および12によって挟むことによって、部品4を把持する。
【0028】
押さえ部21および22は、ロボットハンド1において部品を圧力によって押さえる部分である。押さえ部21および22は、把持部11および12と同様に、ロボットハンド1の表面の垂線方向に沿ってロボットハンド1から離れるように延伸する構造を有している。押さえ部21および22は、さらに、Z方向の前後に移動可能である。すなわち、押さえ部21および22は、部品に近付く方向と、部品から遠ざかる方向の、いずれにも移動することができる。
【0029】
押さえ部21および22は、さらに、Z方向に直交する平面内の異なる2つの方向(以下、X方向およびY方向)にも移動可能である。図では、X方向およびY方向は互いに直交している。X方向およびY方向は、ハンド本体10の面方向に平行な方向でもある。
【0030】
押さえ部21および22は、ロボットハンド1によって把持された部品を搬送する際に、搬送中の部品の姿勢を補助する役割を有する。押さえ部21および22は、さらに、部品4を生産品内の他の部品に取り付ける際に、他の部品から部品4に加えられる反力を受ける役割も有する。
【0031】
図3は、押さえ部21を異なる3方向にそれぞれ移動させるための機構を説明する図である。図3の1010に、押さえ部21等の先端を図中の上側に向けた状態のロボットハンド1を示す。図3の1020に、図3の1010に示すロボットハンド1の詳細な構造を示す。この図に示すように、ロボットハンド1は、リニアガイド31、タイミングベルト32、リニアガイド33、タイミングベルト34、およびボールねじ機構35をさらに備えている。
【0032】
リニアガイド31およびタイミングベルト32は押さえ部21をX方向に移動させる機構であり、リニアガイド33およびタイミングベルト34は押さえ部21をY方向に移動させる機構であり、ボールねじ機構35は押さえ部21をZ方向に移動させる機構である。ロボットハンド1は、タイミングベルト32を用いて押さえ部21をリニアガイド31に沿って移動させることによって、押さえ部21をX方向に移動させる。また、タイミングベルト34を用いて押さえ部21をリニアガイド33に沿って移動させることによって、押さえ部21をY方向に移動させる。また、ボールねじ機構35を用いて押さえ部21を第3のリニアガイド(不図示)に沿って移動させることによって、押さえ部21をZ方向に移動させる。
【0033】
図3では図示を省略しているが、ロボットハンド1は、押さえ部22を異なる3方向に移動させるための機構をも備えている。これらの機構は、リニアガイド31、タイミングベルト32、リニアガイド33、タイミングベルト34、およびボールねじ機構35と同様のものである。
【0034】
(部品4の把持)
図4は、ロボットハンド1による部品4の把持を示す図である。この図の例では、ロボット100は、ロボットハンド1を用いて部品4を把持している。部品4は、ロボット100によって生産される生産物(不図示)を構成する部品の1つである。部品4は、同一の平面に配置されている表面41および42を有する。部品4において、表面41および42は同じ高さに位置する。
【0035】
ロボット100は、まず、部品4の表面41および表面42がハンド本体10に向いた状態で、把持部11および12を用いて部品4をその側面から把持する。さらに、押さえ部21および22を、X方向、Y方向、およびZ方向に移動させることによって、部品4に当接させる。ロボット100には、例えば、ロボットハンド1が部品4を把持する際の、押さえ部21のX方向、Y方向、およびZ方向の各移動量が、予め設定されている。これらの移動量は、部品4の形状に応じて予め決定された値である。ロボット100は、予め設定された各方向の移動量で押さえ部21を移動させることによって、部品4における規定位置に押さえ部21を当接させる。押さえ部22の移動量についてもこれも同様である。
【0036】
図4の例では、押さえ部21を部品4の表面41に当接させることによって、押さえ部21によって部品4を上から押さえる(上押さえする)。さらに、押さえ部22を部品4の表面42に当接させることによって、押さえ部22によって部品4の別の箇所を上から押さえる(上押さえする)。これにより、部品4の把持が完了する。ロボット100は、このようにして把持された部品4を、指定場所に搬送したり、生産物の組み立てに用いたりする。
【0037】
(部品4Aの把持)
図5は、ロボットハンド1による部品4Aの把持を示す図である。この図の例では、ロボット100は、ロボットハンド1を用いて、部品4とは形状が異なる部品4Aを把持している。部品4Aは、部品4と同様に表面41および表面42を有する。しかし、部品4Aの表面42は、表面41よりも高い位置にある。すなわち、ロボットハンド1によって部品4Aが把持される際、表面42は表面41よりもロボットハンド1に近い位置にある。また、部品4Aにおける表面42を有する部分の幅は、ロボットハンド1における表面41を有する部分の幅よりも大きい。
【0038】
ロボット100は、まず、部品4Aの表面41および表面42がハンド本体10に向いた状態で、把持部11および12を用いて部品4Aをその側面から把持する。次に、押さえ部21をX方向およびY方向に移動させることによって、押さえ部21を、表面41に対向する所望の位置に配置させる。この後、押さえ部21をZ方向に移動させることによって、部品4Aの表面41に当接させる。ロボット100は、さらに、押さえ部22をX方向およびY方向に適宜移動させることによって、押さえ部22を、表面42に対向する所望の位置に配置させる。この後、押さえ部22をZ方向に移動させることによって、部品4Aの表面42に当接させる。この当接位置は、ロボットハンド1が部品4を把持する際の押さえ部22の当接位置とは異なる。すなわちロボットハンド1は、部品4Aを把持する際、部品4Aの形状に応じた適切な当接位置に、押さえ部22を当接させるのである。
【0039】
(押さえ部21の役割)
図6は、ロボットハンド1による部品4Aの把持を示す図である。ロボットハンド1が部品4Aを把持すると、把持部11が部品4Aに接触する位置に、部品4Aの回転モーメント中心51が生まれる。また、部品4Aの搬送時に、搬送の加速または減速によって、部品4Aに慣性力52が生ずる。さらには、部品4Aを部品5に取り付ける際、部品4Aは、部品4Aに接触した部品5から反力53を受ける。これらの慣性力52および反力53によって、回転モーメント中心51を中心とした回転力が部品4Aに働くことなる。したがって、部品4Aに他の力が働かないと、部品4Aはその組み立て時に回転してしまうので、安定して部品4Aを組み立てることができない恐れがある。
【0040】
そこでロボットハンド1は、部品4Aを押さえ部22によって押さえることによって、反力53と反対方向に働く力54を部品4Aに与える。この力54によって、反力53を打ち消すことができるので、部品4Aの組み立てる時における部品4Aの回転を防ぐことができる。これにより、部品4Aの組み立てを安定化することができる。説明は省略するが、押さえ部21によっても、押さえ部22による力54と同様な、部品4Aの姿勢を安定化させる力を、部品4Aに与えることができる。
【0041】
図6に示すように、ロボットハンド1は、部品4Aに働く回転モーメントを打ち消す方向に働く力54を部品4Aに与えることができる位置に、押さえ部22を当接させる必要がある。その位置は、部品4Aの形状に応じて異なる。ロボット100は、押さえ部22を、Z方向に直交するX方向およびY方向に適宜移動させることによって、部品4Aにおける押さえ部22を当接させる位置を、部品4Aの形状に応じた適切な位置にすることができる。押さえ部21についても同様である。
【0042】
(主要な作用効果)
本実施形態に係るロボット100は、押さえ部21および22をZ方向、X方向、およびY方向のいずれにも移動させることができるので、異なる形状の部品4および4Aに、1つのロボットハンド1によって対応することができる。すなわち、ロボット100は、共通のロボットハンド1を用いて、異なる形状の部品4および4Aを、個別に搬送したり組み立てたりすることができる。これにより、ロボットハンド1のユーザは、組み立て対象の部品ごとに専用のロボットハンド1を製作する必要がない。したがって、本実施形態に係るロボットハンド1以外の他のロボットハンドは不要になり、さらには当該他のロボットハンドを搭載する周辺設備(他のロボットなど)も不要になる。この結果、ロボットハンド1を用いる工場に要する設備費用を低減することができ、工場内を省スペース化することもできる。さらには、ツールチェンジャーを用いる従来技術とは異なり、ロボットハンド1を他のロボットハンド1に交換する必要がないため、ロボットハンド1の費用低減と共に、生産品の生産能力を向上させることもできる。
【0043】
ロボットハンド1は、部品4および4Aを含む様々な形状の部品に対応した汎用かつ共用のロボットハンド1である。したがって、各種の少量の生産品をロボット100によって自動的に組み立てる際の生産工程を、共通のロボットハンド1を有するロボット100に集約させることができる。すなわち、異なる生産品を混流生産できるロボット100を実現することができる。これにより、工場へのロボット100導入に必要な投資資金の採算性を確保することができる。
【0044】
(作業棒としての押さえ部21の活用)
図7は、ロボットハンド1の押さえ部21を作業棒として活用する例を示す図である。本例では、ロボット100は、生産品を構成する部品7に、ロボットハンド1を用いて部品6を取り付ける。部品7には、部品7の表面から内部に向かって延伸する挿入穴71が形成されている。ロボット100は、ロボットハンド1の押さえ部21を用いて、部品6を部品7の挿入穴71に挿入することによって、部品6を部品7に取り付ける。
【0045】
取り付けの具体的な手順を以下に説明する。ロボット100は、まず、図7の1110に示すように、押さえ部21が当接している部品6を把持したロボットハンド1を、部品6が部品7の挿入穴71に対向するように、部品7の表面に近づける。次に、図7の1120に示すように、ロボットハンド1をさらに部品7に近づけることによって、部品6の一部を挿入穴71に挿入する。最後に、図7の1130に示すように、押さえ部21をZ方向(部品7に向かう方向)に移動させることによって、押さえ部21に当接している部品6を、挿入穴71の奥の方まで押し込む。これにより、部品6が部品7の内部に完全に挿入され、部品6が部品7に取り付けられる。
【0046】
図7の例では、押さえ部21は、押さえ部21の取り付け作業中に押さえ部21を押さえる用途に加えて、部品6を部品7の内部に押し込む用途にも用いられる。したがって、ロボット100は、ロボットハンド1の押さえ部21を、組み立て調整用の作業棒(ピンセット)としても活用することができる。特に図示しないが、押さえ部22も同様に作業棒として活用可能である。ロボット100は、押さえ部21の代わりに、あるいは押さえ部21と共に、押さえ部22を作業棒として活用してもよい。
【0047】
(ケーブル8の把持)
図8は、ロボットハンド1によるケーブル8の把持を示す図である。本例では、ロボット100は、ロボットハンド1を用いて、生産品の部品の一例であるケーブル8を把持する。ロボット100は、ロボットハンド1の押さえ部21および22を、ケーブル8を押さえる用途ではなく、ケーブル8を追加で把持する用途に用いる。
【0048】
図8に示すように、ロボット100は、把持部11および12を用いて、ケーブル8の側面においてケーブル8を挟む形で、ケーブル8を把持する。ロボット100は、さらに、押さえ部21および22を用いて、把持部11および12によるケーブル8の把持位置とは異なる他の側面からケーブル8を挟む形で、ケーブル8を把持する。このようにロボット100は、把持部11および12によってケーブル8を把持すると共に、押さえ部21および22によってもケーブル8を把持する。これにより、把持部11および12の把持力と、押さえ部21および22の把持力とを合算した高い把持力で、把持部11を強力に把持することができる。したがって、ケーブル8のような、把持部11および12のみでは安定して把持し辛く、かつ押さえ部21または22によって押さえることが困難な部品であっても、安定的に把持することができる。
【0049】
(押さえ部21および22の2方向移動機構)
図9は、押さえ部21を異なる2方向にそれぞれ移動させるための機構を説明する図である。図9の1210に、ある角度から見たロボットハンド1の詳細な構造を示す。図9の1220に、別の角度から見たロボットハンド1の詳細な構造を示す。図9に示すロボットハンド1は、リニアガイド81、レバー機構82、ボールねじ機構83をさらに備えている。
【0050】
図9の例では、ロボットハンド1は、押さえ部21および22をX方向およびZ方向の2方向に移動させることができる。リニアガイド81およびレバー機構82は押さえ部21をX方向に移動させる機構であり、ボールねじ機構83は押さえ部21をZ方向に移動させる機構である。ロボットハンド1は、レバー機構82を用いて押さえ部21をリニアガイド81に沿って移動させることによって、押さえ部21をX方向に移動させる。また、ボールねじ機構83を用いて押さえ部21を第2のリニアガイド(不図示)に沿って移動させることによって、押さえ部21をZ方向に移動させる。ロボットハンド1は、押さえ部21をY方向に移動させるための機構を有していないので、押さえ部21をY方向に移動させることはできない。
【0051】
詳細は省略するが、図9のロボットハンド1は、押さえ部22を異なる2方向に移動させるための機構をも備えている。これらの機構は、リニアガイド81、レバー機構82、およびボールねじ機構83と同様のものである。
【0052】
〔実施形態2〕
§2 構成例
図10は、本発明の実施形態2に係るロボットハンド1Aの構成を示す図である。この図に示すように、本実施形態に係るロボットハンド1Aは、実施形態1のロボットハンド1に備えられる各部材を同様に備えている。これらに加えて、ロボットハンド1Aは、さらに吸引ノズル91(吸着部)を備えている。吸引ノズル91は、バキュームチャックとも呼ばれる。本実施形態のロボットハンド1Aは、主に、低剛性の薄板9を把持するために用いられる。薄板9は、低剛性の材料によって構成される薄い形状の部品である。ロボットハンド1Aの把持部11および12によって薄板9を側面から把持したとしても、薄板9が容易に撓んでしまうので、薄板9を安定的に把持することは難しい。そこで、本実施形態のロボットハンド1Aを備えるロボット100は、ロボットハンド1Aの吸引ノズル91を用いて薄板9を把持する。
【0053】
図10の1320に、本発明の実施形態2に係るロボットハンド1Aに備えられる吸引ノズル91の断面を示す。吸引ノズル91は、細長い形状の部材の一例であり、吸引ノズル91の延伸方向を貫通する空洞92がその内部に形成されている。ロボット100は、吸引ノズル91に接続される吸引機(不図示)を用いて、吸引ノズル91の空洞92から空気を吸引する。これにより、吸引ノズル91の先端に薄板9を吸着させることができる。
【0054】
図10の例では、吸引ノズル91は、ロボットハンド1Aにおいて、ハンド本体10の表面の略中心位置に配置されている。ロボット100は、ロボットハンド1Aによって薄板9を把持しようとする際、吸引ノズル91の先端を薄板9の表面に当接させる。そして、吸引ノズル91の空洞92から空気を吸引して空洞92内に真空を形成することによって、薄板9を吸引ノズル91の先端に吸着させる。さらに、押さえ部21および22を異なる3方向に適宜移動させることによって、薄板9の表面にそれぞれ当接させる。このように、ロボットハンド1は、吸引ノズル91による吸着力と、押さえ部21および22による押さえ力とによって、ロボットハンド1Aを用いて薄板9を安定的に把持することができる。したがって、把持部11および12では把持し辛い薄板9であっても、指定場所に搬送したり、生産品の組み立てに用いたりすることができる。
【0055】
〔変形例〕
ロボットハンド1は、押さえ部21および22の双方ではなく、押さえ部21のみ、あるいは押さえ部22のみを備える構成であってもよい。すなわちロボットハンド1は、押さえ部21または22に相当する少なくとも1つの押さえ部を備えればよい。したがって、ロボットハンド1は3つ以上の異なる押さえ部を備えていてもよい。押さえ部の数が2つ以上であれば、部品4の異なる場所を押さえることができるので、ロボットハンド1は部品4をより安定的に把持することができる。
【0056】
図2の例では、ロボットハンド1は、部品4がロボットハンド1よりも下方に配置される状態で、部品4を把持している。しかし、図2は、ロボットハンド1と、ロボットハンド1によって把持される部品4との相対的な位置関係の一例を図示するに過ぎないことを留意すべきである。ロボット100は、ロボットハンド1から離れた任意の位置に部品4が配置される状態で、部品4を把持することもできる。例えば、ロボットハンド1は、ロボットハンド1よりも上方に配置される部品4を、把持部11および押さえ部21等をロボットハンド1の上方に向けた状態で把持することもできる。
【0057】
ロボットハンド1は、部品4に対する押さえ部21の当接を検知する機構を備えていてもよい。本例では、ロボットハンド1は、押さえ部21が部品4に当接したことを検出した場合、Z方向に沿った押さえ部21の移動を停止させる。これにより、押さえ部21を適切な位置において部品4に当接させることができる。また、部品4の形状に応じた押さえ部21のZ方向の移動量を、ロボット100に予め設定する必要はない。
【0058】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1、1A ロボットハンド
4、4A、5、6、7 部品
8 ケーブル
9 薄板
10 ハンド本体
11 把持部
31、32、81 リニアガイド
33、82 機構
41、42 表面
51 回転モーメント中心
52 慣性力
53 反力
71 挿入穴
91 吸引ノズル
92 空洞
100 ロボット
101 ロボット本体
102 ロボットアーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10