(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ナビゲーション装置
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20240820BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20240820BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20240820BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20240820BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G01C21/34
G01C21/26 C
G08G1/0969
G09B29/10 A
G09B29/00 F
(21)【出願番号】P 2020188089
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中神 卓也
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-049156(JP,A)
【文献】特開2008-039547(JP,A)
【文献】特開2019-074111(JP,A)
【文献】特開2019-178926(JP,A)
【文献】特開2006-199273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
G09B 29/10
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のナビゲーション装置であって、
前記車両の走行用エネルギのエネルギ残量を取得するエネルギ残量取得部と、
前記エネルギ残量での前記車両の走行可能距離を取得する走行可能距離取得部と、
前記車両の現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記現在位置から目的地までの第1走行経路を取得する走行経路取得部と、
前記第1走行経路の長さと前記走行可能距離とに基づいて算出される、前記車両が前記目的地に到着する時点での前記エネルギ残量の予測値である予測残量を取得する予測残量取得部と、
前記車両に前記走行用エネルギを補給する設備を有する少なくとも1つの補給施設の営業状況を表す補給施設情報を取得する補給施設情報取得部と、
前記現在位置から前記目的地までの走行経路を提示する走行経路提示部と、
を備え、
前記走行経路提示部は、
前記予測残量が予め定められた条件を満たす前記エネルギ残量である条件残量を超える場合には、前記第1走行経路を提示し、
前記予測残量が前記条件残量以下である場合には、現在または前記車両が前記補給施設に到着する時点での前記営業状況が営業中である前記補給施設を経由する前記現在位置から前記目的地までの第2走行経路を提示し、
前記条件残量は、
前記目的地から、前記ナビゲーション装置が前記目的地での滞在時間を用いて予測した前記目的地から前記補給施設に前記車両が到着する到着時刻での前記営業状況が営業中の前記補給施
設まで
、前記車両が走行可能な前記エネルギ残量である、
ナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置であって、
前記補給施設情報取得部は、複数の前記補給施設の前記営業状況を表す前記補給施設情報を取得し、
前記走行経路提示部は、現在または前記車両が到着する時点での前記営業状況が営業中である複数の前記補給施設が存在する場合には、前記第2走行経路として、営業中の複数の前記補給施設のうち、前記第1走行経路に比べて、走行経路の長さの増加量、または、前記車両が走行経路を走行する時間の増加量が最小となる前記補給施設を経由する走行経路を提示する、ナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のナビゲーション装置であって、
前記車両は、燃料電池車両であり、
前記補給施設は、前記走行用エネルギとして水素を前記燃料電池車両に補給する前記設備を有する水素ステーションである、ナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項3に記載のナビゲーション装置であって、
前記水素ステーションは、予め定められた温度に冷却された前記水素である冷却済水素を前記燃料電池車両に補給する前記設備を有し、
予め定められた量以上の前記冷却済水素が前記水素ステーションの前記設備に貯蔵されている場合、前記補給施設情報には、前記水素ステーションによって提供される特典に関する情報が含まれる、ナビゲーション装置。
【請求項5】
車両のナビゲーション方法であって、
前記車両の走行用エネルギのエネルギ残量を取得するエネルギ残量取得工程と、
前記エネルギ残量での前記車両の走行可能距離を取得する走行可能距離取得工程と、
前記車両の現在位置を取得する現在位置取得工程と、
前記車両に前記走行用エネルギを補給する設備を有する少なくとも1つの補給施設の営業状況を表す補給施設情報を取得する補給施設情報取得工程と、
前記現在位置から目的地までの第1走行経路を取得する走行経路取得工程と、
前記第1走行経路の長さと前記走行可能距離とに基づいて算出される、前記車両が前記目的地に到着する時点での前記エネルギ残量の予測値である予測残量を取得する予測残量取得工程と、
前記現在位置から前記目的地までの走行経路を提示する走行経路提示工程と、
を有し、
前記走行経路提示工程では、
前記予測残量が予め定められた条件を満たす前記エネルギ残量である条件残量を超える場合には、前記第1走行経路を提示し、
前記予測残量が前記条件残量以下である場合には、現在または前記車両が前記補給施設に到着する時点での前記営業状況が営業中である前記補給施設を経由する前記現在位置から前記目的地までの第2走行経路を提示し、
前記条件残量は、
前記目的地から、前記目的地での滞在時間を用いて予測した前記目的地から前記補給施設に前記車両が到着する到着時刻での前記営業状況が営業中の前記補給施
設まで
、前記車両が走行可能な前記エネルギ残量である、
ナビゲーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、現在位置から目的地までの推奨経路を案内する車両のナビゲーション装置が開示されている。このナビゲーション装置では、車両の燃料残量が所定値以下になった場合に、現在位置から所定範囲内に存在する燃料補給施設を経由地として提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のナビゲーション装置では、目的地に到着した時点での車両の燃料残量や、燃料補給施設の営業状況等が考慮されていない。そのため、燃料の補給に関してより利便性の高い経路案内が可能なナビゲーション装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
本開示の一形態によれば、車両のナビゲーション装置が提供される。このナビゲーション装置は、前記車両の走行用エネルギのエネルギ残量を取得するエネルギ残量取得部と、前記エネルギ残量での前記車両の走行可能距離を取得する走行可能距離取得部と、前記車両の現在位置を取得する現在位置取得部と、前記現在位置から目的地までの第1走行経路を取得する走行経路取得部と、前記第1走行経路の長さと前記走行可能距離とに基づいて算出される、前記車両が前記目的地に到着する時点での前記エネルギ残量の予測値である予測残量を取得する予測残量取得部と、前記車両に前記走行用エネルギを補給する設備を有する少なくとも1つの補給施設の営業状況を表す補給施設情報を取得する補給施設情報取得部と、前記現在位置から前記目的地までの走行経路を提示する走行経路提示部と、を備える。前記走行経路提示部は、前記予測残量が予め定められた条件を満たす前記エネルギ残量である条件残量を超える場合には、前記第1走行経路を提示し、前記予測残量が前記条件残量以下である場合には、現在または前記車両が前記補給施設に到着する時点での前記営業状況が営業中である前記補給施設を経由する前記現在位置から前記目的地までの第2走行経路を提示し、前記条件残量は、前記目的地から、前記ナビゲーション装置が前記目的地での滞在時間を用いて予測した前記目的地から前記補給施設に前記車両が到着する到着時刻での前記営業状況が営業中の前記補給施設まで、前記車両が走行可能な前記エネルギ残量である。
なお、本開示は以下の形態としても実現できる。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、車両のナビゲーション装置が提供される。このナビゲーション装置は、前記車両の走行用エネルギのエネルギ残量を取得するエネルギ残量取得部と、前記エネルギ残量での前記車両の走行可能距離を取得する走行可能距離取得部と、前記車両の現在位置を取得する現在位置取得部と、前記現在位置から目的地までの第1走行経路を取得する走行経路取得部と、前記第1走行経路の長さと前記走行可能距離とに基づいて算出される、前記車両が前記目的地に到着する時点での前記エネルギ残量の予測値である予測残量を取得する予測残量取得部と、前記車両に前記走行用エネルギを補給する設備を有する少なくとも1つの補給施設の営業状況を表す補給施設情報を取得する補給施設情報取得部と、前記現在位置から前記目的地までの走行経路を提示する走行経路提示部と、を備える。前記走行経路提示部は、前記予測残量が予め定められた条件を満たす前記エネルギ残量である条件残量を超える場合には、前記第1走行経路を提示し、前記予測残量が前記条件残量以下である場合には、現在または前記車両が前記補給施設に到着する時点での前記営業状況が営業中である前記補給施設を経由する前記現在位置から前記目的地までの第2走行経路を提示する。
この形態のナビゲーション装置によれば、第1走行経路を走行して目的地に到着する時点での予測残量が予め定められた条件を満たす残量以下である場合には、走行経路提示部は、第1走行経路ではなく、現在または車両が補給施設に到着する時点で営業中の補給施設を経由する第2走行経路を提示する。そのため、目的地に到着する時点での車両のエネルギ残量に余裕がなくなることを抑制できる。さらに、走行経路提示部は、現在または車両が補給施設に到着する時点で営業中の補給施設を経由する第2走行経路を提示するので、営業中の補給施設を車両の乗員が探す手間をなくすことができる。
(2)上記形態のナビゲーション装置において、前記条件残量は、前記目的地から現在の前記営業状況が営業中である前記補給施設まで、または、前記目的地から前記車両の保管場所として予め登録された登録地まで、前記車両が走行可能な前記エネルギ残量であってもよい。
この形態のナビゲーション装置によれば、現在営業中の補給施設を経由する第2走行経路を提示するので、車両が補給施設に到着する時刻を予測しなくても、簡単に第2走行経路を提示することができる。
(3)上記形態のナビゲーション装置において、前記条件残量は、前記目的地から前記補給施設に前記車両が到着する時点での前記営業状況が営業中の前記補給施設まで、または、前記目的地から前記車両の保管場所として予め登録された登録地まで、前記車両が走行可能な前記エネルギ残量であってもよい。
この形態のナビゲーション装置によれば、車両が補給施設に到着する時点で営業中の補給施設を経由する第2走行経路を提示するので、車両が補給施設に到着する前に補給施設の営業が終了して、車両がエネルギの補給を受けられなくなる可能性を低減できる。
(4)上記形態のナビゲーション装置において、前記補給施設情報取得部は、複数の前記補給施設の前記営業状況を表す前記補給施設情報を取得し、前記走行経路提示部は、現在または前記車両が到着する時点での前記営業状況が営業中である複数の前記補給施設が存在する場合には、前記第2走行経路として、営業中の複数の前記補給施設のうち、前記第1走行経路に比べて、走行経路の長さの増加量、または、前記車両が走行経路を走行する時間の増加量が最小となる前記補給施設を経由する走行経路を提示してもよい。
この形態のナビゲーション装置によれば、補給施設を経由することによる走行距離の増加量、または、走行時間の増加量を最小限にすることができる。
(5)上記形態のナビゲーション装置において、前記車両は、燃料電池車両であり、前記補給施設は、前記走行用エネルギとして水素を前記燃料電池車両に補給する前記設備を有する水素ステーションであってもよい。
この形態のナビゲーション装置によれば、目的地に到着する時点での燃料電池車両の水素残量に余裕を持たせることができる。さらに、営業中の水素ステーションを車両の乗員が探す手間をなくすことができる。
(6)上記形態のナビゲーション装置において、前記水素ステーションは、予め定められた温度に冷却された前記水素である冷却済水素を前記燃料電池車両に補給する前記設備を有し、予め定められた量以上の前記冷却済水素が前記水素ステーションの前記設備に貯蔵されている場合、前記補給施設情報には、前記水素ステーションによって提供される特典に関する情報が含まれてもよい。
この形態のナビゲーション装置によれば、冷却済水素が貯蔵されている水素ステーションでの燃料電池車両への水素の補給を燃料電池車両の乗員に促すことができるので、水素を冷却するエネルギの無駄を少なくすることができる。
本開示は、ナビゲーション装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、ナビゲーション方法、経路案内システム等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の経路案内システムの概略構成を示す説明図。
【
図2】第1実施形態のナビゲーション装置の概略構成を示す説明図。
【
図4】経路提示処理よって提示される走行経路の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における経路案内システム10の概略構成を示す説明図である。第1実施形態では、経路案内システム10は、車両100と、補給施設200と、管理センタ300とを備えている。
図1に表された補給施設200の数は1つであるが、経路案内システム10は、複数の補給施設200を備えている。
【0009】
本実施形態では、車両100は、水素ガスを燃料にして走行する燃料電池車両である。車両100は、燃料電池110と、燃料タンク112と、圧力センサ113と、走行用モータ115と、車両制御装置120と、オドメータ121と、ナビゲーション装置500と、通信機130とを備えている。なお、車両100は、燃料電池車両に限られず、例えば、ガソリンを燃料にして走行するガソリン車両や、軽油を燃料にして走行するディーゼル車両や、LPG(Liquid Petroleum Gas)を燃料にして走行するLPG車両でもよい。車両100は、自動車でもよいし、オートバイでもよい。車両100は、バッテリに蓄えられた電力によって走行する電気自動車や電動バイクでもよい。
【0010】
燃料電池110は、燃料タンク112に貯蔵された水素ガスと大気から取り込んだ空気とを用いて発電する。燃料タンク112には、燃料タンク112に貯蔵された水素ガスの圧力を計測する圧力センサ113が設けられている。走行用モータ115は、燃料電池110の発電した電力によって駆動されて、車両100を走行させる。
【0011】
車両制御装置120は、ECU(Electronic Control Unit)である。車両制御装置120は、燃料電池110の発電や、走行用モータ115への電力の供給を制御する。
【0012】
車両制御装置120は、燃料タンク112に貯蔵された水素ガスの残量を取得する。例えば、車両制御装置120は、圧力センサ113によって計測される水素ガスの圧力を取得し、圧力センサ113によって計測される水素ガスの圧力と燃料タンク112の水素ガスの残量との関係が表されたマップまたは関数を用いて、燃料タンク112に貯蔵された水素ガスの残量を取得する。
【0013】
車両制御装置120は、車両100の燃費を取得する。例えば、車両制御装置120は、車両100のオドメータ121によって計測される走行距離の増加度合いと、燃料タンク112の水素ガスの残量の減少度合いとに基づいて車両100の燃費を取得する。
【0014】
ナビゲーション装置500は、車両100の乗員に、現在位置から目的地までの車両100の走行経路を案内する。乗員とは、運転者に限られず、同乗者をも含んだ意味である。ナビゲーション装置500は、通信機130を介した無線通信によって、管理センタ300と双方向に通信することができる。なお、ナビゲーション装置500の構成については後述する。
【0015】
補給施設200は、車両100に燃料を補給する設備210と、情報処理装置220と、通信機230とを備えている。本実施形態では、補給施設200は、燃料電池車両である車両100の燃料タンク112に水素ガスを補給する水素ステーションである。なお、車両100が燃料電池車両ではなくガソリン車両やディーゼル車両やLPG車両である場合には、補給施設200は、ガソリン車両やディーゼル車両やLPG車両に用いられる燃料を補給する設備を備えるガスステーションとして構成される。車両100が燃料電池車両ではなく電気自動車や電動バイクである場合には、補給施設200は、電気自動車や電動バイクに搭載されたバッテリに電力を補給する設備を備える充電ステーションとして構成される。
【0016】
本実施形態では、補給施設200は、上述した設備210として、水素製造装置211と、圧縮機212と、蓄圧器213と、冷却機214と、ディスペンサ215とを備えている。水素製造装置211は、例えば、都市ガスやLPGを原料にして水素ガスを製造する。水素製造装置211は、水を電気分解して水素ガスを製造してもよい。水素製造装置211によって製造された水素ガスは、圧縮機212によって、例えば、80MPaに昇圧された後、蓄圧器213に貯蔵される。蓄圧器213に貯蔵された水素ガスは、冷却機214によって摂氏マイナス40度に冷却された後、ディスペンサ215に供給される。ディスペンサ215は、車両100の燃料タンク112に水素ガスを充填する。水素ガスが燃料タンク112に充填される際に、水素ガスの温度は、断熱圧縮によって上昇する。冷却機214によって水素ガスが予め冷却されることによって、水素ガスが燃料タンク112に充填される際の燃料タンク112の温度の過度な上昇が抑制される。冷却機214によって水素ガスが予め冷却されることをプレクール処理と呼ぶ。なお、補給施設200は、上述した水素製造装置211を備えるオンサイト型に限られず、水素製造装置211を備えずに、他の場所から輸送された水素ガスを蓄圧器213に貯蔵するオフサイト型でもよい。
【0017】
情報処理装置220は、CPUと、メモリと、入出力インターフェースとを備えたコンピュータとして構成されている。情報処理装置220は、通信機230を介した有線通信または無線通信によって、管理センタ300と双方向に通信することができる。
【0018】
情報処理装置220には、補給施設200の営業状況を表す情報を含んだ補給施設情報が入力される。本実施形態では、情報処理装置220には、営業状況として、営業中と休業中とメンテナンス中とのうちのいずれか1つの状況が入力される。営業中とは、補給施設200が車両100に水素ガスを補給できる状況である。休業中は、営業時間外や定休日等の理由により、補給施設200が車両100に水素ガスを補給できない状況である。メンテナンス中は、設備210の点検や修理等の理由により、補給施設200が車両100に水素ガスを補給できない状況である。補給施設情報は、通信機230を介して管理センタ300に送信される。
【0019】
管理センタ300は、情報処理装置310と、通信機320とを備えている。情報処理装置310は、CPUと、メモリと、入出力インターフェースとを備えたコンピュータとして構成されている。情報処理装置310は、通信機320を介して、車両100や補給施設200と双方向に通信する。本実施形態では、情報処理装置310は、通信機130を介して、複数の補給施設200から補給施設情報を受信し、複数の補給施設200の補給施設情報を車両100に送信する。
【0020】
図2は、ナビゲーション装置500の概略構成を示す説明図である。ナビゲーション装置500は、制御部510と、表示部530と、操作部540と、音声出力部550と、GNSS受信機560とを備えている。
【0021】
表示部530は、例えば、液晶モニタによって構成されている。操作部540は、例えば、液晶モニタに設けられたタッチパネルや、押しボタン等によって構成されている。音声出力部550は、スピーカである。GNSS受信機560は、車両100の現在位置を取得するための電波をGNSS衛星から受信する。GNSSとは、Global Navigation Satellite Systemの略称である。本実施形態では、GNSS受信機560は、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信する。
【0022】
制御部510は、CPUと、メモリと、入出力インターフェースとを備えたコンピュータとして構成されている。制御部510は、エネルギ残量取得部511と、走行可能距離取得部512と、現在位置取得部513と、走行経路取得部514と、予測残量取得部515と、補給施設情報取得部516と、走行経路提示部517と、経路案内実行部518と、地図情報記憶部521と、登録地記憶部522とを有している。エネルギ残量取得部511、走行可能距離取得部512、現在位置取得部513、走行経路取得部514、予測残量取得部515、補給施設情報取得部516、走行経路提示部517、および、経路案内実行部518とは、CPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することによってソフトウェア的に実現される。地図情報記憶部521、および、登録地記憶部522は、制御部510のメモリに設けられている。
【0023】
エネルギ残量取得部511は、車両100の走行用エネルギのエネルギ残量を取得する。走行用エネルギとは、車両100を走行させるためのエネルギの他に、車両100を走行させるためのエネルギを発生させる燃料をも含んだ意味である。エネルギ残量とは、車両100を走行させるためのエネルギの残量の他に、車両100を走行させるためのエネルギを発生させる燃料の残量をも含んだ意味である。つまり、本実施形態のように、車両100が燃料電池車両である場合には、走行用エネルギは、水素ガスであり、エネルギ残量は、車両100に搭載された水素ガスの残量である。本実施形態では、エネルギ残量取得部511は、車両制御装置120を介して、燃料タンク112に貯蔵された水素ガスの残量を取得する。なお、車両100が燃料電池車両ではなくガソリン車両やディーゼル車両やLPG車両である場合には、走行用エネルギは、ガソリン車両やディーゼル車両やLPG車両に燃料として搭載されるガソリンや軽油やLPGであり、エネルギ残量は、ガソリン車両やディーゼル車両やLPG車両に搭載されたガソリンや軽油やLPGの残量である。車両100が燃料電池車両ではなく電気自動車や電動バイクである場合には、走行用エネルギは、電力であり、エネルギ残量は、電気自動車や電動バイクに搭載されたバッテリに蓄えられた電力の残量である。
【0024】
走行可能距離取得部512は、エネルギ残量取得部511によって取得されたエネルギ残量での車両100の走行可能距離を取得する。走行可能距離とは、車両100が走行用エネルギの補給を受けずに走行することができる残りの距離のことを意味する。本実施形態では、走行可能距離取得部512は、エネルギ残量取得部511によって取得された水素ガスの残量と車両制御装置120から取得した車両100の燃費とに基づいて算出される走行可能距離を取得する。なお、車両100が走行用モータ115によって発電された回生電力を蓄えるバッテリを備え、バッテリに蓄えられた回生電力を用いて走行する場合には、車両100が回生電力によって走行する距離を加味して走行可能距離が算出されてもよい。車両100が電気自動車や電動バイクである場合や、車両100がエンジンの他に走行用モータとバッテリとを備えるハイブリッド車両として構成されたガソリン車両やディーゼル車両やLPG車両である場合にも、車両100が回生電力によって走行する距離を加味して走行可能距離が算出されてもよい。
【0025】
現在位置取得部513は、車両100の現在位置を取得する。本実施形態では、現在位置取得部513は、GNSS受信機560によって受信されたGNSS衛星からの電波を用いて、車両100の現在位置を取得する。
【0026】
走行経路取得部514は、現在位置から目的地までの車両100の走行経路を取得する。本実施形態では、走行経路取得部514は、地図情報記憶部521に記憶された地図情報を用いて走行経路を探索することによって、現在地から目的地までの走行経路を取得する。走行経路取得部514は、例えば、ダイクストラ法や、A-star等を用いて走行経路を探索する。
【0027】
予測残量取得部515は、車両100が目的地に到着する時点でのエネルギ残量の予測値である予測残量を取得する。本実施形態では、予測残量取得部515は、走行経路取得部514によって取得される走行経路の長さと走行可能距離取得部512によって取得される走行可能距離とに基づいて、燃料タンク112の水素ガスの予測残量を取得する。
【0028】
補給施設情報取得部516は、車両100に走行用エネルギを補給する設備を有する少なくとも1つの補給施設200の補給施設情報を取得する。本実施形態では、補給施設情報取得部516は、通信機130を介して、複数の補給施設200の補給施設情報を管理センタ300の情報処理装置310から取得する。
【0029】
走行経路提示部517は、走行経路取得部514によって取得された走行経路を車両100の乗員に提示する。本実施形態では、走行経路提示部517は、表示部530に走行経路を表示させることによって、走行経路を車両100の乗員に提示する。
【0030】
経路案内実行部518は、表示部530に表示させる映像と、音声出力部550に出力させる音声とによって、乗員によって選択された走行経路の経路案内を実行する。
【0031】
地図情報記憶部521には、地図情報が予め記憶されている。地図情報記憶部521に記憶された地図情報は、管理センタ300から車両100に送信される最新版の地図情報に更新されてもよい。
【0032】
登録地記憶部522には、車両100の保管場所として入力された登録地が記憶されている。登録地記憶部522には、例えば、運転者の自宅や会社の所在地が車両100の保管場所として記憶される。
【0033】
図3は、経路提示処理の内容を示すフローチャートである。この処理は、ナビゲーション装置500の操作部540を介して所定の開始命令が入力された場合に制御部510によって実行される。
【0034】
まず、ステップS110にて、制御部510は、エネルギ残量取得部511によって、車両100のエネルギ残量を取得する。次に、ステップS120にて、制御部510は、走行可能距離取得部512によって、車両100の走行可能距離を取得する。なお、ステップS110の処理のことをエネルギ残量取得工程と呼ぶことがある。ステップS120の処理のことを走行可能距離取得工程と呼ぶことがある。
【0035】
ステップS130にて、制御部510は、現在位置取得部513によって、車両100の現在位置を取得する。なお、ステップS130の処理のことを現在位置取得工程と呼ぶことがある。ステップS130の処理は、ステップS110の処理の前に実行されてもよい。
【0036】
ステップS140にて、制御部510は、補給施設情報取得部516によって、少なくとも1つの補給施設200の営業状況を表す補給施設情報を取得する。本実施形態では、補給施設情報取得部516は、通信機130を介して、管理センタ300の情報処理装置310から複数の補給施設200の営業状況を表す補給施設情報を取得する。補給施設情報には、複数の補給施設200の営業状況とともに、複数の補給施設200のうちのプレクール処理が終了した水素ガスを所定量以上貯蔵している補給施設200が提供する特典に関する情報が含まれている。この特典とは、例えば、燃料料金の値引きや、燃料料金の一部返金や、洗車や掃除等の各種サービスの提供や、各種料金の支払いに用いることができるクーポンの提供等である。補給施設情報には、各補給施設200の水素ガスの貯蔵量を表す情報が含まれてもよい。なお、ステップS140の処理のことを補給施設情報取得工程と呼ぶことがある。ステップS140の処理は、ステップS110の処理の前に実行されてもよいし、ステップS120の処理とステップS130の処理との間に実行されてもよい。
【0037】
ステップS150にて、制御部510は、走行経路を探索するか否かを判定する。本実施形態では、制御部510は、目的地が入力された場合に、走行経路を探索すると判断する。走行経路を探索すると判断されなかった場合、制御部510は、この処理を終了する。走行経路を探索すると判断された場合、ステップS160にて、制御部510は、走行経路取得部514によって現在位置から目的地までの第1走行経路を探索し、予測残量取得部515によって、第1走行経路を走行して目的地に到着した時点での車両100のエネルギ残量を予測する。本実施形態では、制御部510は、走行経路の探索が実行されている間、ステップS140において取得された補給施設情報に含まれる特典に関する情報を表示部530に表示させる。制御部510は、例えば、車両100の現在位置から所定距離内の補給施設200の提供する特典に関する情報、あるいは、目的地から所定距離内の補給施設200の提供する特典に関する情報を表示部530に表示させる。なお、ステップS150における車両100の現在位置から目的地までの走行経路を取得する工程のことを走行経路取得工程と呼ぶことがある。ステップS150における目的地に到着した時点での車両100の予測残量を取得する工程のことを予測残量取得工程と呼ぶことがある。
【0038】
ステップS170にて、制御部510は、予測残量取得部515によって予測されたエネルギ残量の予測値である予測残量が所定の条件を満たす値以下であるか否かを判定する。本実施形態では、制御部510は、予測残量が目的地から現在営業中の補給施設200まで車両100が走行可能なエネルギ残量以下である場合、または、予測残量が目的地から登録地記憶部522に車両100の保管場所として予め登録された登録地まで車両100が走行可能なエネルギ残量以下である場合に、予測残量が所定の条件を満たす値以下であると判断する。
【0039】
ステップS170で予測残量が所定の条件を満たす値以下であると判断されなかった場合には、制御部510は、ステップS185にて、ステップS160にて探索された第1走行経路を、走行経路提示部517によって表示部530に表示させる。なお、ステップS180の処理のことを走行経路提示工程と呼ぶことがある。
【0040】
ステップS170で予測残量が所定の条件を満たす値以下であると判断された場合には、制御部510は、ステップS180にて、車両100の走行可能な範囲に存在する補給施設200を経由する第2走行経路を、走行経路提示部517によって表示部530に表示させる。本実施形態では、制御部510は、現在営業中の複数の補給施設200が車両100の走行可能な範囲に存在する場合には、複数の補給施設200のうち、ステップS160にて探索された第1走行経路に比べて、走行経路の長さの増加量、または、車両100が走行経路を走行する時間の増加量が最小となる補給施設200を経由する走行経路を第2走行経路として表示部530に表示させる。走行経路の長さの増加量が最小となる補給施設200を経由する走行経路を第2走行経路として表示部530に表示させるか、車両100が走行経路を走行する時間の増加量が最小となる補給施設200を経由する走行経路を第2走行経路として表示部530に表示させるかについては、車両100の乗員が操作部540を操作することによって切り替えることができる。なお、ステップS185の処理のことを走行経路提示工程と呼ぶことがある。
【0041】
ステップS180またはステップS185の後、制御部510は、この処理を終了する。その後、制御部510は、経路案内実行部518によって、第1走行経路または第2走行経路についての経路案内を開始する。
【0042】
図4は、ナビゲーション装置500によって提示される走行経路の例を示す説明図である。
図4には、車両100の現在位置SPと、目的地GPと、道路RDと、3つの補給施設200A~200Cと、3つの走行経路RT1~RT3が表されている。補給施設200Aおよび補給施設200Bは、営業中である。補給施設200Cは、休業中あるいはメンテナンス中である。
【0043】
補給施設200A~200Cを経由しない場合の目的地に到着する時点での予測値が所定の条件を満たす値を超える場合、制御部510は、補給施設200A~200Cを経由しない走行経路RT1を提示する。補給施設200A~200Cを経由しない場合の目的地に到着する時点での予測残量が所定の条件を満たす値以下である場合、制御部510は、補給施設200Aを経由する走行経路RT2、または、補給施設200Bを経由する走行経路RT3を提示する。走行経路RT2は、補給施設200Aを経由するために、目的地とは逆方向に向かう部分を含んでいる。走行経路RT2では、制限速度の比較的高い道路RDのみを走行する。走行経路RT3での走行距離は、走行経路RT1での走行距離とほぼ同じである。走行経路RT3では、制限速度の比較的低い道路RDを多用して走行する。そのため、走行経路RT1に対して走行時間の増加量が最小となるように設定されている場合には、走行時間の増加量が最小となる走行経路RT2が提示される。走行経路RT1に対して走行時距離の増加量が最小となるように設定されている場合には、走行距離の増加量が最小となる走行経路RT3が提示される。
【0044】
以上で説明した本実施形態におけるナビゲーション装置500によれば、制御部510は、目的地に到着する時点での車両100の燃料の予測残量に余裕がない場合には、補給施設200を経由する走行経路を提示して、走行用エネルギの補給を車両100の乗員に促すことができる。そのため、目的地に到着する時点での車両100の燃料残量に余裕を持たせることができる。さらに、現在または車両100が補給施設200に到着する時点で営業中の補給施設200を経由する走行経路を提示するので、営業中であるか否かを車両100の乗員が調べる手間をなくすことができる。
【0045】
また、本実施形態では、制御部510は、目的地から現在営業中の補給施設200まで、または、目的地から車両100の保管場所として予め登録された登録地まで車両100が走行可能な燃料が確保されない場合に、現在営業中の補給施設200を経由する走行経路を提示する。そのため、車両100が補給施設200に到着する時刻を予測しなくても、簡単に走行経路を提示することができる。
【0046】
また、本実施形態では、補給施設情報取得部516は、複数の補給施設200の営業状況を取得し、走行経路取得部514は、複数の補給施設200が現在または車両100が到着する時点で営業中である場合には、営業中の複数の補給施設200のうち、補給施設200を経由しない走行経路に比べて、走行経路の長さの増加量、または、車両100が走行経路を走行する時間の増加量が最小となる補給施設200を提示する。そのため、現在位置から目的地までの走行距離が増加すること、または、目的地に到着時刻が遅れることを抑制できる。
【0047】
また、本実施形態では、補給施設200である水素ステーションは、予め定められた温度に冷却された水素ガスである冷却済水素ガスを車両100に補給する設備210を有し、予め定められた量以上の冷却済水素ガスが設備210に貯蔵されている場合には、特典に関する情報を車両100の乗員に提供する。そのため、冷却済水素ガスが貯蔵されている補給施設200での車両100への水素の補給を車両100の乗員に促すことができるので、補給施設200における水素ガスを冷却するエネルギの無駄を少なくすることができる。
【0048】
B.他の実施形態:
(B1)上述した第1実施形態の経路案内システム10では、
図3のステップS170にて、車両100に搭載されたナビゲーション装置500の制御部510は、目的地から補給施設200に車両100が到着する時点で営業中の補給施設200まで、または、目的地から車両の保管場所として予め登録された登録地まで、車両100が走行可能なエネルギ残量以下である場合に、予測残量が所定の条件を満たす値以下であると判断してもよい。この場合、車両100が補給施設200に到着する前に補給施設200の営業が終了して、車両100が走行用エネルギの補給を受けられない可能性を低減できる。さらに、目的地での滞在時間、あるいは、目的地を出発する予定時刻が制御部510に入力されて、制御部510は、車両100が補給施設200に到着する時刻を予測し、目的地から補給施設200に車両100が到着する時点で補給施設200が営業中であるか否かを判断してもよい。この場合、車両100が走行用エネルギの補給を受けられない可能性をさらに低減できる。
【0049】
(B2)上述した第1実施形態の経路案内システム10では、車両100に搭載されたナビゲーション装置500の走行経路取得部514が走行経路の探索を実行している。これに対して、エネルギ残量、走行可能距離、現在位置、および、目的地についての情報がナビゲーション装置500から管理センタ300に送信され、管理センタ300の情報処理装置310が走行経路を探索し、走行経路取得部514は、管理センタ300から送信された走行経路を取得してもよい。
【0050】
(B3)上述した第1実施形態の経路案内システム10では、車両100に搭載されたナビゲーション装置500の制御部510は、車両100が走行可能な範囲に、現在営業中の複数の補給施設200が存在する場合には、第1走行経路に比べて、走行経路の長さの増加量、または、車両100が走行経路を走行する時間の増加量が最小となる補給施設200を経由する走行経路を第2走行経路として提示する。これに対して、制御部510は、車両100が走行可能な範囲に、現在営業中の複数の補給施設200が存在する場合に、上述した走行経路とは異なる第2走行経路を提示してもよい。例えば、制御部510は、走行経路の長さの増加量に所定の重み付け係数を乗じた値と、車両100が走行経路を走行する時間の増加量に所定の重み付け係数を乗じた値との合計値が最小となる走行経路を第2走行経路として提示してもよい。この際、制御部510は、2つの走行経路の合計値の差が所定値以下である場合に、より高低差の少ない走行経路を第2走行経路として提示してもよい。
【0051】
(B4)上述した第1実施形態の経路案内システム10では、プレクール処理が終了した水素ガスを所定量貯蔵している補給施設200から車両100の乗員に、特典に関する情報が提供される。これに対して、プレクール処理が終了した水素ガスを所定量貯蔵している補給施設200から車両100の乗員に特典に関する情報が提供されなくてもよい。
【0052】
(B5)上述した第1実施形態の経路案内システム10では、管理センタ300を備えており、補給施設情報は、管理センタ300を介して、補給施設200から車両100に提供される。これに対して、経路案内システム10は、管理センタ300を備えずに、補給施設情報は、補給施設200から車両100に提供されてもよい。
【0053】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細ナビゲーション装置書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
10…経路案内システム、100…車両、110…燃料電池、112…燃料タンク、113…圧力センサ、115…走行用モータ、120…車両制御装置、121…オドメータ、130…通信機、200…補給施設、210…設備、211…水素製造装置、212…圧縮機、213…蓄圧器、214…冷却機、215…ディスペンサ、220…情報処理装置、230…通信機、300…管理センタ、310…情報処理装置、320…通信機、500…ナビゲーション装置、510…制御部、511…エネルギ残量取得部、512…走行可能距離取得部、513…現在位置取得部、514…走行経路取得部、515…予測残量取得部、516…補給施設情報取得部、517…走行経路提示部、521…地図情報記憶部、530…表示部、540…操作部、550…音声出力部、560…GNSS受信機