(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】電磁波遮蔽構造
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240820BHJP
H05K 7/06 20060101ALI20240820BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20240820BHJP
H01M 50/273 20210101ALI20240820BHJP
H01M 50/502 20210101ALI20240820BHJP
D06M 11/83 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H05K9/00 Q
H05K7/06 C
H01M50/249
H01M50/273
H01M50/502
D06M11/83
(21)【出願番号】P 2020201232
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥野 雄紀
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-109740(JP,A)
【文献】特開2009-117149(JP,A)
【文献】特開2018-116805(JP,A)
【文献】特開2015-106536(JP,A)
【文献】特開平11-340674(JP,A)
【文献】特開2010-080911(JP,A)
【文献】特開2017-004803(JP,A)
【文献】米国特許第07176387(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H05K 7/06
H01M 50/20
H01M 50/50
D06M 11/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルから構成される電池スタックと、
前記電池スタックの上面において前記複数の電池セル間を接続するセル間バスバと、
前記電池スタックの少なくとも上側に配設される導電布と、
を備え、
少なくとも、前記セル間バスバの上側に重なり前記電池スタックの上側に配設される前記導電布の厚みを、前記電池スタックの上面の他の部分に配設される前記導電布の厚みと比較して厚く設定する、
電磁波遮蔽構造。
【請求項2】
複数の電池セルから構成される電池スタックと、
前記電池スタックの上面において前記複数の電池セル間を接続するセル間バスバと、
前記電池スタックの少なくとも上側に配設される導電布と、
電磁波を遮蔽できる金属製であって前記複数の電池セルを結束する結束バンド
と、
を備え、
少なくとも、前記結束バンドと重なり前記電池スタックの上側に配設される前記導電布の厚みを、前記電池スタックの上面の他の部分に配設される前記導電布の厚みと比べて薄く設定する、
電磁波遮蔽構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電磁波遮蔽構造であって、
前記導電布の厚みは、前記導電布の重ね合わせる枚数を変化させることで変更される、
電磁波遮蔽構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の電磁波遮蔽構造であって、
前記電池スタックの上面を覆う樹脂基板を有し、
前記導電布は、前記樹脂基板の上面に配置される、
電磁波遮蔽構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池スタックを導電布で覆うことによって、電池スタックから放射される電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両などでは、大容量の電池パックを搭載する。この電池パックは、複数の電池セルを積層して形成した電池スタックを複数個まとめて構成される。電池パックの出力は、駆動モータの駆動電流などに利用され、各電池スタックには、電池パックの出力に応じた電流が流れる。
【0003】
ここで、各電池スタックに流れる電流には、各種の原因で高周波が重畳され、従って電池スタックから電磁波が放射される。電磁波は、各種電化製品などからも放射されているものではあるが、この放射をできるだけ少なくしたいという要求があり、電池パックを金属ケースで覆う場合が多い。
【0004】
ここで、電磁波遮蔽材としては、金属板、金属メッシュの他、電磁波遮蔽機能を持った布も提案されている(特許文献1参照)。布は柔軟であり、その配置の自由度が広がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、電磁波遮蔽機能を有する布を電池スタックの電磁波遮蔽に適用することも考えられるが、その電磁波遮蔽機能は金属ケースとは異なり、さらなる検討が必要と考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電磁波遮蔽構造は、複数の電池セルから構成される電池スタックと、前記電池スタックの上面において前記複数の電池セル間を接続するセル間バスバと、前記電池スタックの少なくとも上側に配設される導電布と、を備え、少なくとも、前記セル間バスバの上側に重なり前記電池スタックの上側に配設される前記導電布の厚みを、前記電池スタックの上面の他の部分に配設される前記導電布の厚みと比較して厚く設定する。
【0008】
本発明に係る電磁波遮蔽構造は、複数の電池セルから構成される電池スタックと、前記電池スタックの上面において前記複数の電池セル間を接続するセル間バスバと、前記電池スタックの少なくとも上側に配設される導電布と、電磁波を遮蔽できる金属製であって前記複数の電池セルを結束する結束バンドと、を備え、少なくとも、前記結束バンドと重なり前記電池スタックの上側に配設される前記導電布の厚みを、前記電池スタックの上面の他の部分に配設される前記導電布の厚みと比べて薄く設定する。
【0009】
前記導電布の厚みは、前記導電布の重ね合わせる枚数を変化させることで変更される、とよい。
【0010】
前記電池スタックの上面を覆う樹脂基板を有し、前記導電布は、前記樹脂基板の上面に配置される、とよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導電布を用いるため、比較的軽量で電池スタックからの電磁波を遮蔽することができ、導電布の厚みを適切に設定しているため、電池スタックの構成に応じた効果的な電磁波遮蔽が行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る電磁波遮蔽構造を有する電池スタックの構成を示す斜視図である。
【
図2】電磁波遮蔽構造を取り除いた状態の電池スタックを示す斜視図である
【
図3】電池スタック10を電池セル12の積層方向から見た正面図である。
【
図4】電磁波の放出状態を、放射磁界(磁界強度)を検出した結果によって示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。
【0014】
「全体構成」
図1は、実施形態に係る電磁波遮蔽構造を有する電池スタックの構成を示す斜視図である。
図2は、電磁波遮蔽構造を取り除いた状態の電磁スタックを示す斜視図である。
【0015】
図2に示すように、電池スタック10は、複数の電池セル12が1列に積層されて構成された積層体を有する。各電池セル12は、厚みが薄い直方体形状であり、厚み方向に積層され、電池スタック10は、細長い直方体形状となっている。
【0016】
各電池セル12は、例えばリチウムイオン電池などの二次電池であり、ケースの上面に正極と負極が設けられている。電池スタック10は、セル間バスバ14によって、複数の電池セル12が並列接続されてセルグループが形成されるとともに、このセルグループが順次直列接続されて構成されている。そして、電池スタック10の一端側に正極側のセル間バスバ14に接続される正極の端子16、他端側に負極側のセル間バスバ14に接続される負極の端子16が設けられ、これら端子16が電池スタック10の出力端子になっている。ここで、並列、直列する電池セル12の個数は1以上の任意の個数にすることができるが、例えば図における手前の端子16が正極であれば、手前の2つの電池セル12は、右側が正極で、左側が負極、次の2つの電池セル12は、左側が正極で右側が負極であり、最も奥の2つの電池セル12は右側が負極であり、これに接続される端子16が負極となる。
【0017】
電池セル12の積層体の前後の端部には、エンドプレート18が配置されており、このエンドプレート18を含め、電池セル12の積層体の前後端を4本の結束バンド20によって固定している。各結束バンド20は、両端の端板20aとバンド本体20bを有し、端板20aが電池セル12の積層体の前後端に位置し、バンド本体20bが上面または底面に位置する。4本の結束バンド20は、それぞれが電池セル12の積層体を積層方向の両端から内側に向けて抑えることで、積層体を一体化する。なお、セル間バスバ14は導電性の金属で構成され、また結束バンド20も所定の弾力を持ち強度の大きな金属から構成される。
【0018】
そして、図示するように、電池スタック10の上面および側面の上部を覆って遮蔽体30が配置されている。この遮蔽体30は、電池スタック10から放射される電磁波を遮蔽する。
【0019】
「遮蔽体30の構成」
図3は、電池スタック10を電池セル12の積層方向から見た正面図である。
図3に示すように、遮蔽体30は、細長の直方体状の電池スタック10の上面および側面上部を覆い下方が開放したU字状断面を有する樹脂基板32と、その上面に配置された導電布34とから構成される。
【0020】
導電布34は、樹脂基板32を全体的に覆う第1導電布34aと、第1導電布34aの上に重ねて配置される第2導電布34bからなっている。そして、第2導電布34bは、セル間バスバ14に重なる部分と、結束バンド20のバンド本体20bの側方に当たる部分に配置された帯状である。そして、この第2導電布34bは、
図3において点線の丸印で示した、結束バンド20のバンド本体20bの上方、2つのセル間バスバ14の間に当たる積層体の中央の上方には配置されていない。なお、導電布34の樹脂基板32への接合、導電布34同士の接合には、樹脂製の接着剤などを用いるとよい。
【0021】
図4は、電磁波の放出状態を、放射磁界の磁界強度を検出した結果によって示す図である。
図4において、(a)は遮蔽体30を設けない場合、(b)は遮蔽体30を設けた場合を示す。なお、図において、放射磁界は、黒に近いほど大きいことを示す。
【0022】
このように、遮蔽体30を設けない場合には、放射磁界が大きく広がるのに対し、遮蔽体30を設けることで、放射磁界が小さくなっていることがわかる。特に、図において点線の丸印で示した部分においては放射磁界が比較的小さいため、導電布34を二重にしなくても十分な放射磁界の減衰効果が得られており、効率的な放射磁界の低減が行われていることがわかる。また、結束バンド20の側方の領域も導電布34を二重にすることで、この方向への放射磁界を効果的に減衰することができる。このように、本実施形態では、導電布34の厚みを適切に設定しているため、電池スタックの構成に応じた効果的な電磁波遮蔽が行える。また、導電布34の厚みの変更は、導電布の枚数の変更によって行っている。従って、その厚みの変更が容易であり、1種類の導電布を用意すればよいため、形成するのが容易であり、また安価となる。もちろん、複数の厚みの導電布を用意して厚みを変更しても構わない。
【0023】
「その他の構成」
本実施形態においては、導電布34を用いた。導電布34としては、導電性の繊維による織布など各種のものを採用できるが、例えば特許文献1に示したようなものの他、金属コーティングを施したポリエステル繊維の織布や、ポリエステル系短繊維から形成される不織布に金属めっき処理を施したものなどを採用することができる。
【0024】
また、導電布34は、車両における電池スタック10の電磁波遮蔽以外にも用いることができる。例えば、電動車両は、複数の電池スタック10から構成される電池パックの出力によりモータを駆動して走行する。本実施形態によれば、各電池スタック10に電磁波を遮蔽する遮蔽体30を配置することで、電池パックのケース(特に、上側を覆うアッパーケース)を金属製とする必要がなく、樹脂製とすることができ、軽量化を図ることができる。さらに、電池パックには、サービスプラグが設けられ、これを引き抜くことによって電池パックの出力を切断することができる。このサービスプラグは、車室側から操作できるように、車室のフロアから突出するように設けられ、ここを覆うように金属カバーが設けられる。このサービスプラグを覆う金属カバーについても、樹脂の表面に導電布を配置した遮蔽体に代えることで軽量化を図ることができる。
【符号の説明】
【0025】
10 電池スタック、12 電池セル、14 セル間バスバ、16 端子、18 エンドプレート、20 結束バンド、20a 端板、20b バンド本体、30 遮蔽体、32 樹脂基板、34 導電布。