(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】覚醒装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
G08G1/16 F
(21)【出願番号】P 2020206063
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 有華里
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】小谷 彩子
(72)【発明者】
【氏名】河合 政治
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113925(JP,A)
【文献】特開2008-206688(JP,A)
【文献】米国特許第09135803(US,B1)
【文献】国際公開第2019/026553(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されているセンサ及びドライバの身体に装着されているセンサの少なくとも何れか一方から、前記ドライバの状態を示す情報を取得するドライバ状態取得部(F1)と、
前記ドライバ状態取得部が取得した前記ドライバの状態を示す情報に基づき、前記ドライバの眠気レベルを判定する眠気レベル判定部(F2)と、
発生させる覚醒刺激の特徴及び強度の少なくとも何れか一方が異なる、予め用意された複数の刺激パターンのうち、前記眠気レベル判定部が判定した前記眠気レベルに応じた前記刺激パターンで、覚醒刺激を発生させる刺激制御部(F3)と、を備え、
前記眠気レベル毎に、刺激の種類が異なる複数の前記刺激パターンが用意されており、
前記刺激制御部は、
基本動作として所定の第1時間の長さを有する周期毎に前記刺激パターンを切り替えるように構成されており、
現在実行中の前記刺激パターンである現行パターンに切り替えてから前記第1時間よりも短い第2時間が経過した時点である中間確認時点での前記眠気レベルと、前記現行パターンの開始時点での前記眠気レベルとを比較し、
前記中間確認時点での前記眠気レベルが前記開始時点の前記眠気レベルから悪化している場合には刺激の強度を上げる一方、前記眠気レベルが変わっていない場合には、刺激の強度は上げずに刺激の種類を変更する、覚醒装置。
【請求項2】
車両に搭載されているセンサ及びドライバの身体に装着されているセンサの少なくとも何れか一方から、前記ドライバの状態を示す情報を取得するドライバ状態取得部(F1)と、
前記ドライバ状態取得部が取得した前記ドライバの状態を示す情報に基づき、前記ドライバの眠気レベルを判定する眠気レベル判定部(F2)と、
発生させる覚醒刺激の特徴及び強度の少なくとも何れか一方が異なる、予め用意された複数の刺激パターンのうち、前記眠気レベル判定部が判定した前記眠気レベルに応じた前記刺激パターンで、覚醒刺激を発生させる刺激制御部(F3)と、を備え、
前記眠気レベル毎に複数の前記刺激パターンが用意されており、
前記刺激制御部は、
基本動作として所定の第1時間の長さを有する周期毎に前記刺激パターンを切り替えるように構成されており、
現在実行中の前記刺激パターンである現行パターンを開始した時の前記ドライバの状態と、前記現行パターンを開始してから前記第1時間よりも短い第2時間が経過したタイミングである中間確認時点での前記ドライバの状態と比較することにより、前記現行パターンが前記ドライバの前記眠気レベルの改善に効果的な前記刺激パターンである有効パターンであるか否かを判定し、
前記有効パターンの継続時間は、前記第1時間よりも所定時間長く
し、
前記ドライバ状態取得部が取得した前記ドライバの状態を示す情報に基づいて、前記現行パターンを開始してから前記第2時間が経過したタイミングにおいて、前記ドライバの前記眠気レベルが改善しているか否かを判定し、
前記眠気レベルが改善していない場合には、前記第1時間の経過を待たずに、前記現行パターンと同じ前記眠気レベルと対応付けられている別の前記刺激パターンに切り替えるように構成されている覚醒装置。
【請求項3】
請求項
1に記載の覚醒装置であって、
前記ドライバ状態取得部は、車室内に設置されたカメラの撮像画像に基づいて定まる、前記ドライバの目の開き度合いを示す開眼度情報を取得するように構成されており、
前記刺激制御部は、
前記ドライバ状態取得部が取得した前記開眼度情報に基づいて、前記現行パターンを開始してから前記第2時間が経過するまでの期間内における、前記ドライバが目を閉じている状態である閉眼状態の合計時間を算出し、
前記閉眼状態の合計時間が所定の閾値以上である場合には、前記第1時間の経過を待たずに、前記刺激パターンを変更するように構成されている覚醒装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の覚醒装置であって、
前記眠気レベル毎に、複数の前記刺激パターンが用意されており、
前記刺激制御部は、前記閉眼状態の合計時間が所定の閾値以上である場合には、より上位の前記眠気レベルに対応付けられている前記刺激パターンに切り替えるように構成されている覚醒装置。
【請求項5】
請求項
1に記載の覚醒装置であって、
前記刺激制御部は、
前記ドライバ状態取得部が取得した前記ドライバの状態を示す情報に基づいて、前記現行パターンを開始してから前記第2時間が経過するまでに、前記ドライバの前記眠気レベルがより上位の前記眠気レベルに上がっていたとしても、前記第1時間が経過するまでは前記現行パターンを維持し、前記第1時間が経過したタイミングで、前記第2時間が経過するまでに観測された前記眠気レベルと対応付けられている別の前記刺激パターンに切り替えるように構成されている覚醒装置。
【請求項6】
請求項1から
5の何れか1項に記載の覚醒装置であって、
前記眠気レベル毎に複数の前記刺激パターンが用意されており、
所定の入力装置から入力される前記ドライバの操作信号、及び、前記ドライバの顔画像の解析結果の少なくとも何れか一方に基づいて、複数の前記刺激パターンのうち、前記ドライバの嗜好に合った前記刺激パターンであるお気に入りパターンを特定するパターン管理部(F7)を備え、
前記刺激制御部は、前記パターン管理部によって前記お気に入りパターンと判定されているか否かに応じて、当該刺激パターンの実行頻度、実行条件、及び前記第1時間としての標準継続時間の少なくとも何れか1つを変更するように構成されている覚醒装置。
【請求項7】
請求項1から
6の何れか1項に記載の覚醒装置であって、
前記眠気レベル毎に複数の前記刺激パターンが用意されており、
前記ドライバ状態取得部が取得した前記ドライバの状態の履歴に基づいて、複数の前記刺激パターンの中から、前記ドライバの前記眠気レベルの改善に効果的な前記刺激パターンである有効パターンを特定するパターン管理部(F7)を備え、
前記刺激制御部は、前記パターン管理部によって前記有効パターンと判定されているか否かに応じて、当該刺激パターンの実行頻度、実行条件、及び前記第1時間としての標準継続時間の少なくとも何れか1つを変更するように構成されている覚醒装置。
【請求項8】
請求項1から
7の何れか1項に記載の覚醒装置であって、
前記眠気レベル毎に複数の前記刺激パターンが用意されており、
前記ドライバ状態取得部が取得した前記ドライバの状態の履歴情報に基づいて、複数の前記刺激パターンの中から、前記ドライバの前記眠気レベルの改善に寄与しない前記刺激パターンである弱効果パターンを判定するパターン管理部(F7)を備え、
前記刺激制御部は、前記パターン管理部によって前記弱効果パターンと判定されているか否かに応じて、当該刺激パターンの実行頻度、実行条件、及び前記第1時間としての標準継続時間の少なくとも何れか1つを変更するように構成されている覚醒装置。
【請求項9】
請求項1から
8の何れか1項に記載の覚醒装置であって、
前記眠気レベル毎に複数の前記刺激パターンが用意されており、
前記現行パターンに対するユーザ操作を受け付ける操作受付部(F6)を備え、
前記操作受付部は、前記ユーザ操作として、前記現行パターンを終了して別の前記刺激パターンに切り替えるためのスキップ操作を受付可能に構成されており、
前記刺激制御部は、
前記眠気レベル判定部によって判定されている前記眠気レベルに対応する複数の前記刺激パターンを巡回的に実行するように構成されており、
前記スキップ操作を受け付けた場合には前記現行パターンを終了して、現在の前記眠気レベルに対応する別の前記刺激パターンに切り替えるとともに、
次回からは、複数の前記刺激パターンのうち、前記スキップ操作が行われた前記刺激パターン以外の前記刺激パターンを巡回的に実行するように構成されている覚醒装置。
【請求項10】
請求項
9に記載の覚醒装置であって、
前記スキップ操作が行われた前記刺激パターンをスキップパターンとして登録するパターン管理部(F7)を備え、
前記パターン管理部は、前記眠気レベル毎に、前記スキップパターンに登録されていない前記刺激パターンの数が2以上となるように前記スキップパターンの登録状態を管理するように構成されている覚醒装置。
【請求項11】
請求項1から
9の何れか1項に記載の覚醒装置であって、
前記眠気レベル毎に複数の前記刺激パターンが用意されており、
複数の前記刺激パターンの中には、車両に搭載された空調装置から空調空気を出力させる空調刺激パターンと、運転席用のドアウインドウを所定量開けることで前記覚醒刺激としての外気を前記ドライバに当てる窓部開放パターンと、が含まれており、
前記現行パターンとして前記空調刺激パターンを実行中に前記ドライバ状態取得部が取得した前記ドライバの状態を示す情報に基づいて、前記空調刺激パターンで前記眠気レベルが改善しているか否かを判定するパターン管理部(F7)を備え、
前記パターン管理部が前記空調刺激パターンでは前記眠気レベルが改善していないと判定したことに基づいて、前記空調刺激パターンの代わりに前記窓部開放パターンを実行するように構成されている覚醒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転席に着座している人物を覚醒させるための覚醒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドライバの眠気を検出した場合に、所定のパターンの振動を発生させる覚醒装置が開示されている。振動は、ドライバを覚醒するための覚醒刺激である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
覚醒装置が覚醒刺激を発生させることによりドライバの眠気レベルが下降することがある。また、所定パターンの覚醒刺激を与えても、眠気レベルが改善しない場合もあり得る。そのような事情を踏まえ、一定時間おきにドライバの眠気レベルを測定し、その測定された眠気レベルに応じたパターンの刺激を与える構成も考えられる。
【0005】
ここで、刺激のパターンを切り替える周期が長すぎると、煩わしさを与える恐れがある。例えば眠気レベルが下降している場合であっても、所定時間経過するまでは従前のパターンが継続されるためである。また、刺激パターンの切替周期を短くしすぎても、頻繁に刺激のパターンが変更されることとなり、ドライバに煩わしさを与える恐れがある。
【0006】
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、ドライバに煩わしさを与えるおそれを低減可能な覚醒装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の覚醒装置は、車両に搭載されているセンサ及びドライバの身体に装着されているセンサの少なくとも何れか一方から、ドライバの状態を示す情報を取得するドライバ状態取得部(F1)と、ドライバ状態取得部が取得したドライバの状態を示す情報に基づき、ドライバの眠気レベルを判定する眠気レベル判定部(F2)と、発生させる覚醒刺激の特徴及び強度の少なくとも何れか一方が異なる、予め用意された複数の刺激パターンのうち、眠気レベル判定部が判定した眠気レベルに応じた刺激パターンで、覚醒刺激を発生させる刺激制御部(F3)と、を備え、眠気レベル毎に、刺激の種類が異なる複数の刺激パターンが用意されており、刺激制御部は、基本動作として所定の第1時間の長さを有する周期毎に刺激パターンを切り替えるように構成されており、現在実行中の刺激パターンである現行パターンに切り替えてから第1時間よりも短い第2時間が経過した時点である中間確認時点での眠気レベルと、現行パターンの開始時での眠気レベルとを比較し、中間確認時点での眠気レベルが開始時点の眠気レベルから悪化している場合には刺激の強度を上げる一方、眠気レベルが変わっていない場合には、刺激の強度は上げずに刺激の種類を変更する。
本開示の第2の覚醒装置は、車両に搭載されているセンサ及びドライバの身体に装着されているセンサの少なくとも何れか一方から、ドライバの状態を示す情報を取得するドライバ状態取得部(F1)と、ドライバ状態取得部が取得したドライバの状態を示す情報に基づき、ドライバの眠気レベルを判定する眠気レベル判定部(F2)と、発生させる覚醒刺激の特徴及び強度の少なくとも何れか一方が異なる、予め用意された複数の刺激パターンのうち、眠気レベル判定部が判定した眠気レベルに応じた刺激パターンで、覚醒刺激を発生させる刺激制御部(F3)と、を備え、眠気レベル毎に複数の刺激パターンが用意されており、刺激制御部は、基本動作として所定の第1時間の長さを有する周期毎に刺激パターンを切り替えるように構成されており、現在実行中の刺激パターンである現行パターンを開始した時のドライバの状態と、現行パターンを開始してから第1時間よりも短い第2時間が経過したタイミングである中間確認時点でのドライバの状態と比較することにより、現行パターンがドライバの眠気レベルの改善に効果的な刺激パターンである有効パターンであるか否かを判定し、有効パターンの継続時間は、第1時間よりも所定時間長くし、ドライバ状態取得部が取得したドライバの状態を示す情報に基づいて、現行パターンを開始してから第2時間が経過したタイミングにおいて、ドライバの眠気レベルが改善しているか否かを判定し、眠気レベルが改善していない場合には、第1時間の経過を待たずに、現行パターンと同じ眠気レベルと対応付けられている別の刺激パターンに切り替えるように構成されている。
【0008】
上記の構成によれば、現在実行中の刺激パターンを開始してからのドライバの状態に基づいて刺激パターンを変更するタイミングを変更する。そのような構成によれば、覚醒刺激を強めたり弱めたり、或いは覚醒刺激の種類を変更したりするタイミングを、ドライバの状態に応じて早めたり遅くしたりすることが可能となる。その結果、ドライバに煩わしさを与える恐れを低減できる。
【0011】
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】作動パターングループの遷移元と遷移先の設定例を示す図である。
【
図6】覚醒装置1の作動を説明するためのフローチャートである。
【
図7】ドライバ操作を受け付けるための表示画面例を示す図である。
【
図8】覚醒装置1が作動パターンを切り替えるタイミングを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図を用いて説明する。
図1は、本開示に係る覚醒装置1の概略的な構成の一例を示す図である。
【0014】
<前置き>
本開示の覚醒装置1は、ドライバを覚醒状態に導くための装置であって、例えば車両Hvに搭載されて使用される。なお、本開示におけるドライバとは、例えば運転席に着座している人物を指す。ドライバとの表現には、実際に運転操作の一部又は全部を実施している人物に限らない。ドライバとの記載は、自動運転中においては、自動運転システムから運転操作の権限を受け取るべき人物を指す。また、車両Hvは車両外部に存在するオペレータによって遠隔操作される遠隔操作車両であってもよい。ここでのオペレータとは、車両の外部から遠隔操作によって車両を制御する権限を有する人物を指す。ドライバとしてオペレータを想定する場合、本開示の覚醒装置1は、オペレータの操作を受け付けるコックピットシステムの一部として使用される。
【0015】
なお、本開示の「自動運転」が指すレベルは、例えば米国自動車技術会(SAE International)が定義するレベル3相当であってもよいし、レベル4以上であってもよい。レベル3は、運行設計領域(ODD:Operational Design Domain)内においてシステムが全ての運転タスクを実行する一方、緊急時にはシステムからユーザに操作権限が移譲されるレベルを指す。ODDは、例えば走行位置が高速道路内であること等の、自動運転を実行可能な条件を規定するものである。レベル3では、システムから運転交代の要求があった場合に、ユーザが迅速に対応可能であることが求められる。運転操作を引き継ぐ人物は、オペレータであってもよい。レベル3は、いわゆる条件付き自動運転に相当する。レベル4は、対応不可能な道路、極限環境等の特定状況下を除き、システムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。レベル5は、あらゆる環境下でシステムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。レベル4以上の自動運転とは、自動運転装置がすべての運転タスクを行うレベル、すなわち、運転席乗員の睡眠が許容される自動化レベルを指す。
【0016】
<覚醒装置1を含むシステム構成について>
図1に示すように覚醒装置1は、ドライバステータスモニタ(以降、DSM:Driver Status Monitor)21などの多様な車載デバイスと接続されて使用される。例えば覚醒装置1は、DSM21、入力装置22、ディスプレイ23、発光装置31、アロマシューター32、対話装置33、空調装置34、及び振動発生器35と接続されている。また、覚醒装置1は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)36、スピーカー37、及びウインドウモータ38などとも直接的又は間接的に接続されて使用されうる。
【0017】
加えて、覚醒装置1は、車両内に構築されている通信ネットワークである車両内ネットワークNwを介して、
図1での図示を省略している多様なセンサ/デバイスとも接続されている。例えば覚醒装置1には、車両内ネットワークNwを介して、多様な車載センサの検出結果等が入力される。車載センサとしては、例えば、車速、加速度、操舵角、子風呂ポジション、アクセルの踏み込み量、ブレーキの踏み込み量等を検出するセンサが挙げられる。また、車載センサにはパーキングブレーキの作動状態や、車両Hvの電源状態を検出するセンサ/スイッチなども含まれる。
【0018】
なお、覚醒装置1と車載デバイスとは専用線で接続されていても良いし、車両内ネットワークNwを介して接続されていてもよい。また、覚醒装置1と車載デバイスとの間にはECU(Electronic Control Unit)が介在していてもよい。
【0019】
DSM21は、ユーザの顔画像に基づいてユーザの状態を逐次検出する装置である。DSM21は、例えば近赤外光源と、近赤外カメラと、これらを制御する制御モジュールと、を含む。DSM21は、近赤外カメラが運転席のヘッドレストが存在する方向に向いた姿勢にて、例えばステアリングコラム部の上面、又はインストゥルメントパネルの上面等に設置されている。DSM21は、近赤外光源によって近赤外光を照射されたドライバの頭部を、近赤外カメラによって撮影する。近赤外カメラによる撮像画像は、制御モジュールによって画像解析される。制御モジュールは、近赤外カメラから入力される撮像画像から、例えばドライバの目の開度など、ドライバの状態を示す情報であるドライバ状態情報を抽出する。DSM21は、ドライバの顔画像から抽出したドライバ状態情報を覚醒装置1に出力する。
【0020】
ドライバ状態情報には、例えばドライバの顔の向きや、視線方向、目の開度、口の開度などを含む。目の開度は、瞼の開き度合いと言い換えることができる。目の開度を示す情報が開眼度情報に相当する。また、DSM21は、目の開度の経時変化や、表情、顔の向きなどに基づいて、DSM21は、いねむり、脇見、病気発生等を検出するように構成されていてもよい。ドライバの状態情報には、いねむり、脇見、体調不良などを含めることができる。加えて、DSM21は、口の開度の経時変化パターンに基づいてあくびを検出しうる。なお、画像解析に基づいてドライバの状態を検出する機能は、覚醒装置1が備えていても良い。その場合、DSM21はドライバの顔部画像を覚醒装置1に出力可能に構成されていればよい。DSM21と覚醒装置1の間における機能配置は適宜変更可能である。
【0021】
入力装置22は、覚醒装置1に対するドライバの指示を受け付けるための操作部材である。入力装置22は、ステアリングホイールのスポーク部に設けられたメカニカルスイッチ(いわゆるステアスイッチ)であってもよいし、ドライバの発話内容を認識する音声入力装置であってもよい。また、入力装置22は、インストゥルメントパネルに設けられたディスプレイ23の表示パネル上に積層されたタッチパネルであってもよい。ディスプレイ23としては、例えばインストゥルメントパネルの車幅方向の中央領域に設けられた、センターディスプレイを採用する事ができる。なお、ディスプレイ23はメータディスプレイであってもよい。さらに、入力装置22はドライバのスマートフォンであっても良い。例えばドライバが所持するスマートフォンのタッチパネル及びディスプレイを入力装置22及びディスプレイ23として援用する事ができる。
【0022】
発光装置31は、ドライバが視認可能な光を発生させるデバイスである。発光装置31は、例えば、光源としてLEDを備える。発光装置31は、例えばステアリングのスポーク部や、インストゥルメントパネルの上面部、運転席前方の天井部など、ドライバの視界に入る位置に設けられている。発光装置31が発生させる光は、視覚に対する覚醒刺激に対応する。
【0023】
覚醒刺激は、ドライバが五感で感じ取れる刺激であって、ドライバを覚醒させる刺激である。発光装置31は、輝度、光の色等を変化させることができる。発光装置31は、輝度を周期的に変化させることができる。発光装置31は、輝度が周期的に変化するとき、周期の長さ、波形、単位時間当たりの輝度の変化量等を調整することができる。
【0024】
アロマシューター32は、香料を車両Hvの車室内に噴射する。ドライバは、噴射された香料の香りを知覚する。アロマシューター32が発生させる香りは、嗅覚に対する覚醒刺激に対応する。アロマシューター32は、香りの種類、香りの強さ等を変化させることができる。なお、アロマシューター32は空調装置34と一体化されていても良い。
【0025】
対話装置33は、ドライバと対話を行う。すなわち、対話装置33は、ドライバが発音する音声を認識すること、ドライバの音声に対する回答を作成すること、及び回答を発音することを行う。対話装置33は、例えば、人工知能を用いて対話を行う。対話装置33が提供する対話は、聴覚に対応する覚醒刺激に対応する。
【0026】
空調装置34は、車両Hvの車室内に空調空気としての冷風を発生させる。冷風は、冷覚や触覚に対する覚醒刺激に対応する。空調装置34は、冷風の温度、風量、及びモードを変化させることができる。モードとして、オートモードと、ドライバ顔モードとがある。オートモードは、冷風の噴き出し方向を、予め設定されたアルゴリズムにより変化させるモードである。ドライバ顔モードは、常にドライバの顔に向けて冷風を吹き出すモードである。
【0027】
振動発生器35は、覚醒装置1からの制御信号に基づき振動を発生させる。振動発生器35は、ドライバシートの着座面や背もたれ部に埋め込まれている。振動は覚醒刺激に対応する。
【0028】
HUD36は、覚醒装置1やナビゲーション装置などから入力される制御信号及び映像データに基づき、フロントガラスの所定領域に画像光を投影することにより、ユーザによって知覚されうる虚像を映し出すデバイスである。HUD36は、車両Hvの前方の風景と重畳した画像を表示する。このようなHUD36は、所定の画像を表示することによって、光刺激を発生させることができる。光刺激は、視覚に対する覚醒刺激に対応する。なお、画像に基づく光刺激を出力する装置はHUD36でなくともよい。メータディスプレイやセンターディスプレイから画像による光刺激を発生させてもよい。
【0029】
また、HUD36は、覚醒装置1の動作状態や、休憩提案、システムが認識しているドライバの状態など、多様な情報を提示する、情報提示装置としての役割を担いうる。覚醒装置1の動作状態に関する情報としては、例えば、覚醒装置1の起動情報、継続情報がある。
【0030】
起動情報は、これから覚醒刺激が起動することをドライバに知らせるための情報であって、例えばテキスト又はアイコン画像によって表現される。起動情報は、覚醒刺激が発生する前に表示される。継続情報は、覚醒刺激が継続しているときに表示される。継続情報は、覚醒刺激が継続していることをドライバに知らせる。継続情報は現在出力中の刺激の概要を示すアイコン画像又はテキストを含んでいても良い。刺激の概要とは、光や音、振動、匂い、空調などといった刺激の種類を含む。その他、継続情報は次のタームで出力される刺激の種類や強度を示す予告情報を含んでいても良い。
【0031】
休憩提案は、ドライバに対し休憩することを提案する内容の表示である。休憩提案は、例えば、HUD36及びディスプレイ23など、複数の表示装置のうちの何れか1つ以上に表示される。HUD36は覚醒装置1の制御のもと、休憩提案として、例えばコーヒーカップを模したアイコン画像や、駐車しての仮眠を促すアイコン画像を表示する。
【0032】
ドライバ状態は、例えば後述する覚醒装置1が認識しているドライバの眠気レベルを示す情報である。例えばHUD36は覚醒装置1の制御のもと、眠気レベルを示すアイコン画像又はテキストを表示する。その他、ドライバ状態には、疲労度や漫然度合いなどを含んでいても良い。各種情報の提示は、HUD36に限らず、メータディスプレイ、又はセンターインフォーメーションディスプレイなどを用いて実施されても良い。
【0033】
スピーカー37は、車両Hvの車室内で音声を発生させる。音声は聴覚に対する覚醒刺激に対応する。音声として、音楽の音声と、アラームの音声とがある。音声との表現には、単なる音も含まれる。
【0034】
ウインドウモータ38は、ドアの窓ガラス(いわゆるドアウインドウ)の開度を変更するためのモータである。ウインドウモータ38は、例えば、運転席用のドアウインドウを開閉するためのモータとすることができる。ウインドウモータ38は、覚醒装置1から入力される制御信号に基づいて運転席用のドアウインドウを開閉する。なお、覚醒装置1とウインドウモータ38との間にはボディECUなどの他のECUが介在していても良い。ウインドウモータ38が運転席用のドアウインドウを開けることで車室外からの風がドライバの顔部に当たる。そのような外部からの風は、ドライバにとっての覚醒刺激となりうる。
【0035】
以降では便宜上、発光装置31やアロマシューター32、対話装置33、空調装置34、振動発生器35、HUD36、スピーカー37、ウインドウモータ38など、直接的に又は間接的にドライバに刺激を与えるデバイスのことを刺激発生装置とも称する。
【0036】
覚醒装置1と通信接続する車載デバイスは以上で例示したものに限定されない。例えばドライバの生体情報をセンシングする生体センサが、覚醒装置1と接続されていてもよい。生体センサは、例えば心拍数を計測する心拍数センサである。血圧、心電位、脈波、発汗量、体温、人体からの放熱量、呼吸のリズム、呼吸の深さを検出対象とするセンサも生体センサに含まれる。生体センサは、ドライバ用のシートに内蔵されていても良いし、ステアリングに設けられていても良い。また、探査波としてのミリ波を運転席に向けて送受信することで、ドライバの心拍数や体動、姿勢を検出するミリ波レーダも生体センサに含めることができる。
【0037】
また、生体センサは、ドライバの例えば手首等に装着されて使用されるウェアラブルデバイス40であっていてもよい。ウェアラブルデバイス40は、リストバンド型、腕時計型、指輪型、メガネ型、イヤホン型など、多様な形状のものを採用可能である。ウェアラブルデバイス40は、車両Hvに搭載されている通信機39を介して覚醒装置1と相互通信可能に構成されている。ウェアラブルデバイス40と通信機39との接続態様は有線接続であっても良いし、無線接続であっても良い。例えば通信機39とウェアラブルデバイス40とはBluetooth(登録商標)や、Wi-Fi(登録商標)などの近距離無線通信規格に準拠した無線通信を実施するように構成されている。なお、通信機39とウェアラブルデバイス40との間には、それぞれとペアリングされているスマートフォンが介在していても良い。
【0038】
<覚醒装置1の構成について>
覚醒装置1は、ドライバの覚醒状態を維持又はドライバを覚醒状態へ導くために、DSM21からの入力信号に基づいて各種刺激発生装置を作動させる装置である。覚醒装置1は、プロセッサ11、RAM(Random Access Memory)12、ストレージ13、通信インターフェース14(図中のI/O)、及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備えた、コンピュータとして構成されている。プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算コアである。プロセッサ11は、RAM12へのアクセスにより、種々の処理を実行する。RAM12は揮発性のメモリである。
【0039】
ストレージ13は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を含む構成である。ストレージ13には、コンピュータを覚醒装置1として機能させるためのプログラムである覚醒刺激制御プログラムが格納されている。プロセッサ11が覚醒刺激制御プログラムを実行することは、覚醒刺激制御プログラムに対応する覚醒刺激制御方法が実行されることに相当する。
【0040】
また、ストレージ13には、覚醒刺激の発生パターンを眠気レベル毎にグループ化した作動パターングループが複数登録されている。複数の作動パターングループのそれぞれは、後述する眠気レベルに応じた覚醒刺激を提供するように設定されている。作動パターングループの詳細については別途後述する。通信インターフェース14は、覚醒装置1が他の装置と通信するための回路である。通信インターフェース14は、アナログ回路素子やICなどを用いて実現されればよい。
【0041】
覚醒装置1は、プロセッサ11がストレージ13に保存されている覚醒刺激制御プログラムを実行することにより
図2に示す各機能部を提供する。すなわち、覚醒装置1は、センサ情報取得部F1、眠気レベル判定部F2、刺激制御部F3、表示処理部F4、終了判断部F5、操作受付部F6、及びパターン管理部F7を備える。刺激制御部F3はより細かい機能部として、変化判断部F31及びパターン選択部F32を備える。
【0042】
センサ情報取得部F1は、DSM21や生体センサとしてのウェアラブルデバイスなどから、ドライバの眠気レベルを判断するための情報(つまり判断材料)を取得する構成である。眠気レベルは、眠気の度合いを表すパラメータである。眠気レベルの判断材料として利用可能な情報としては、例えば、目の開度や、瞬きの実行頻度、瞬きの実施間隔のばらつき度合い、ドライバの顔の向きや、視線方向、姿勢、あくびの頻度、ハンドル角のふらつき度合いなどがある。センサ情報取得部F1は、眠気レベル判定部F2が眠気レベルを判定するための各種情報を、DSM21を含む所定のセンサ群から逐次取得する。眠気レベルの判断材料は、眠気レベルの評価に使用可能なドライバ特徴と呼ぶこともできる。センサ情報取得部F1がドライバ状態取得部に相当する。
【0043】
センサ情報取得部F1は、その他、走行用電源の状態(オン/オフ)や、車速、加速度、操舵角、アクセルの踏み込み量、ブレーキの踏み込み量なども取得しうる。走行用電源は、車両Hvが走行するための電源であって、車両Hvがガソリン車である場合にはイグニッション電源を指す。車両Hvが電気自動車やハイブリッド車である場合、走行用電源とはシステムメインリレーを指す。
【0044】
眠気レベル判定部F2は、センサ情報取得部F1が取得している種々の情報に基づいて、ドライバの眠気レベルを判定する。本実施形態では一例として、眠気レベルを0~5の6段階に区分して判定する場合を例に挙げて説明を行う。眠気レベルは、値が小さいほど覚醒度合いが高い状態に対応する。例えばレベル1は全く眠くない状態に相当し、レベル1は、わずかに眠そうな状態、換言すればドライバ本人は眠気を自覚していないような状態に相当する。レベル2は、やや眠そうであって、ドライバ本人も眠気を自覚しうる状態に相当する。レベル3は眠そうな状態に相当し、レベル4はかなり眠そうな状態に相当する。レベル5は、ほとんど/完全に眠っている状態に相当する。
【0045】
なお、本実施形態では一例として覚醒装置1は、眠気レベル4~5の場合は、眠気レベル3の場合と同様の制御を行うものとする。故に以下では、レベル4~レベル5の場合の記載は省略する。ただし、眠気レベル4~5の場合はレベル3と同様の制御に加えて、例えば車両Hvの走行を制御するECUに対して、MRM(Minimum Risk Maneuver)を実行させるための制御信号を出力しても良い。MRMは、例えば、周囲に警報を発しながら所定の減速度で減速しつつ、走行レーン内または路肩に寄せて停車させる制御である。MRMを実行させるための制御信号は、ドライバが眠っていることを示す信号であっても良い。
【0046】
眠気レベルの判定方法としては、多様な方法を用いることができる。例えば、眠気レベル判定部F2は、開眼度や、開眼度の経時的なゆらぎ度合い、左右の目の開眼度合いの差、視線の移動速度、瞬き(瞬目)の周期や速度、あくびの頻度などを複合的に用いて眠気レベルを判定する。なお、一般的に眠気が強いほど開眼量は小さくなる傾向が有る。そのため眠気レベル判定部F2は開眼量が小さいほど眠気レベルが高いと判定してもよい。また、眠気が強いほど視線の移動速度や、瞬目の速度は低下しうる。故に、眠気レベル判定部F2は、視線の移動速度や瞬目の速度が小さいほど眠気レベルを高く判定しても良い。加えて瞬目の周期は不安定となる傾向がある。故に眠気レベル判定部F2は瞬目の周期の安定度合い、例えば一定時間以内の瞬目周期の分散値に基づいて、眠気レベルを評価しても良い。その他、眠気レベル判定部F2は、ドライバの体からの放熱量や、体表面温度の変化傾向や分布、深呼吸の有無、肩の上下動の有無、顔部が下又は上方向を向いているか否かなどに基づいて眠気レベルを判定しても良い。また、車両Hvの速度変化や操舵角の変化が少ないほど、眠気レベルを高く判定してもよい。
【0047】
刺激制御部F3、変化判断部F31、パターン選択部F32、表示処理部F4、終了判断部F5、操作受付部F6、およびパターン管理部F7の詳細については以降で説明する。その他、覚醒装置1は、所定の時間を計測するタイマー機能を有する。覚醒装置1は、当該タイマー機能を用いて、各作動パターンを開始してからの経過時間や、ドライバが閉眼している状態である閉眼状態の継続時間などを算出する。なお、ここでの閉眼状態とは、例えば開眼度が所定の閾値以下となっている状態を指す。閉眼状態には、完全に目が閉じている状態のほか、目がほとんど閉じている状態など、目が微小量開いている状態を含めることができる。
【0048】
<作動パターングループについて>
本実施形態では一例として、覚醒装置1には、
図3に示すように、作動パターングループG0(A)、G0(B)、G1(A)、G1(B)、G2、G3が用意されている。作動パターングループG0(A)は、何れの覚醒刺激も出力しない状態に対応する作動パターングループである。作動パターングループG0(A)は、眠気レベルが0の場合に設定されうる。例えば作動パターングループG0(A)運転開始直後などに適用される。また、作動パターングループG0(A)は、例えば眠気レベルが1から0に下がってから所定の解除時間、眠気レベルが0の状態が維持された場合に適用される。解除時間は例えば45秒や1分などとすることができる。作動パターングループG0(A)は、不作動グループと呼ぶことができる。また、作動パターングループG0(A)が設定されている状態は、刺激停止モードと呼ぶこともできる。
【0049】
作動パターングループG0(A)以外の作動パターングループ、すなわち、グループG1(A)、G1(B)、G2、G3はそれぞれ、発生させる覚醒刺激の種類や組み合わせが異なる作動パターンを複数含む。すなわち、グループG1(A)、G1(B)、G2、G3は、間欠的に又は連続的に何らかの刺激を発生させる作動パターングループである。故に、グループG1(A)、G1(B)、G2、G3のこと、刺激発生グループと呼ぶことができる。刺激発生グループが選択されている状態は、刺激発生モードと呼ぶことができる。刺激発生グループでは、
図3に示すように、発生させる覚醒刺激の種類が決められている。作動パターンが刺激パターンに相当する。
【0050】
覚醒刺激の種類としては、発光、香り、対話、冷風、振動、及び音声がある。発光は、発光装置31及びHUD36が発生させる光の覚醒刺激である。香りは、アロマシューター32が発生させる覚醒刺激である。対話は、対話装置33が発生させる覚醒刺激である。冷風は、例えば空調装置34が発生させる覚醒刺激である。冷風は、ウインドウモータ38を用いて運転席用のドアウインドウを開けることでドライバに与えてもよい。振動は、振動発生器35が発生させる覚醒刺激である。音声は、スピーカー37が発生させる覚醒刺激である。
【0051】
また、それぞれの作動パターングループでは、覚醒刺激の種類ごとに、覚醒刺激の特徴が決められている。
図3に示すように、発光装置31が発生させる光の覚醒刺激は、発光1~4に区別されている。発光1~4は、互いに異なる特徴を有する。特徴として、例えば、光の色、輝度、発光の作動パターン、光が発生する場所、光を発生させる装置等が挙げられる。刺激の強度、換言すればドライバを覚醒させる効果は、発光1よりも発光2が高く、発光2よりも発光3が高く、発光3よりも発光4が高い。
【0052】
香りの覚醒刺激は、香り1~4に区別されている。香り1~4は、互いに異なる特徴を有する。特徴として、例えば、香りの種類、香りの強さ等が挙げられる。ドライバを覚醒させる効果、すなわち刺激の強度は、香り1よりも香り2が高く、香り2よりも香り3が高く、香り3よりも香り4が高い。
【0053】
冷風の覚醒刺激は、冷風の温度、風量、及びモードの3要素から成る。冷風の温度は、オート又は低温である。オートとは、予め設定されたアルゴリズムにより、温度を設定することである。風量は、オート又は強である。オートとは、予め設定されたアルゴリズムにより、風量を設定することである。モードは、上述したオートモード、又はドライバ顔モードである。なお、冷風の温度、風量、及びモードが全てオートである場合は、冷風の覚醒刺激が発生していない場合である。ドライバを覚醒させる効果は、冷風の温度が低温である場合の方が、冷風の温度がオートである場合よりも高い。ドライバを覚醒させる効果は、冷風の風量が強である場合の方が、冷風の風量がオートである場合よりも高い。ドライバを覚醒させる効果は、ドライバ顔モードである場合の方が、オートモードである場合よりも高い。
【0054】
音声の覚醒刺激は、一例として「オン」と「アラーム」の2種類が用意されている。オンは、覚醒刺激として音楽を出力する状態に相当する。アラームは、覚醒刺激としてアラームを出力する。ドライバを覚醒させる効果は、アラームの方がオンよりも高い。なお、アラームは、その音の大きや周波数に応じてアラーム1、2、3など複数種類用意されていても良い。覚醒刺激としての強度は、アラーム1、2、3の順に高くなるように設定されている。
【0055】
刺激発生グループに相当するグループG0(B)は、作動パターンP00とP01を含む。グループG0(B)が適用されているとき、作動パターンP00の時間帯と、作動パターンP01の時間帯とが、交互に繰り返される。作動パターンP00の時間帯では、覚醒刺激は発生しない。作動パターンP01の時間帯では、例えば発光1と香り1など、
図3において作動パターンP01に関連付けられた覚醒刺激を発生させる。グループG0(B)は、例えば
図4に示すように眠気レベルが1又は2から0に下がった場合に適用される。なお、或る覚醒刺激を発生させるということは、当該覚醒刺激を出力可能な装置を作動させることに相当する。
【0056】
作動パターングループG1(A)は、発生させる覚醒刺激の特徴及び強度の少なくとも何れか一方が異なる作動パターンP10、P11、P12、P13、P14を含む。グループG1(A)が設定されているとき、作動パターンP10の時間帯から、作動パターンP11の時間帯、作動パターンP12の時間帯、及び作動パターンP13の時間帯を順次経て、作動パターンP14の時間帯に順次移行する。作動パターンP14の時間帯が終了すると、再び作動パターンP10の時間帯に戻る。すなわち、グループG1(A)が適用されている間は、作動パターンP11~14が順番に繰り返される。なお、作動パターンP10の時間帯では、覚醒刺激は発生しない。作動パターンP11~P14の時間帯では、
図3においてそれぞれの作動パターンに対応付けられた覚醒刺激が発生する。このようなグループG1(A)は、例えば
図4に示すように眠気レベルが0から1に上がった場合に適用される。
【0057】
作動パターングループG1(B)は、作動パターンP15、P16を含む。グループG0(B)が適用されているとき、作動パターンP15の時間帯と、作動パターンP16の時間帯とが、交互に繰り返される。作動パターンP15の時間帯では、覚醒刺激は発生しない。作動パターンP16の時間帯では、例えばHUD36での画像表示など、
図3において作動パターンP16に関連付けられた覚醒刺激を発生させる。このようなグループG1(B)は、例えば眠気レベルが2から1に下がった場合に適用される。
【0058】
作動パターングループG2は、作動パターンP20、P21、P22、P23を含む。作動パターングループG2が設定されているとき、作動パターンP20の時間帯から、作動パターンP21の時間帯、及び作動パターンP22の時間帯を順次経て、作動パターンP23の時間帯に順次移行する。作動パターンP23の時間帯が終了すると、再び作動パターンP20の時間帯に戻る。作動パターンP20の時間帯では、覚醒刺激は発生しない。作動パターンP21~P23の時間帯では、
図3においてそれぞれの作動パターンに対応付けられた覚醒刺激が発生する。このようなグループG2は、例えば眠気レベルが2と判定された場合に適用される。
【0059】
作動パターングループG3は、作動パターンP30、P31、P32、P33を含む。グループG2が設定されているとき、作動パターンP30の時間帯から、作動パターンP31の時間帯、及び作動パターンP32の時間帯を順次経て、作動パターンP33の時間帯に順次移行する。作動パターンP33の時間帯が終了すると、再び作動パターンP30の時間帯に戻る。作動パターンP30の時間帯では、覚醒刺激は発生しない。作動パターンP31~P33の時間帯では、
図3においてそれぞれの作動パターンに対応付けられた覚醒刺激が発生する。このような作動パターングループG3は、例えば眠気レベルが3と判定された場合に適用される。
【0060】
なお、眠気レベルが一旦レベル3に上昇すると、ドライバの休憩動作を検出するまでは、眠気レベルは3のままとなる。そのため、グループG3から自動的に他のグループに遷移することはない。ドライバの休憩動作としては、車両のシフトポジションがパーキングポジションに設定されたことや、パーキングブレーキがオンに設定されたこと、車両Hvの走行用電源がオフに設定されたことなどを採用することができる。
【0061】
各作動パターンの継続時間である標準継続時間T1は、例えば45秒である。標準継続時間T1は例えば30秒や50秒、60秒、90秒などであっても良い。標準継続時間T1が長すぎると、当該作動パターンで出力される刺激にドライバが慣れてしまい、覚醒効果が得られにくい。また、標準継続時間T1が短すぎると頻繁に刺激の出力態様が変更されることとなり、ドライバに煩わしさを与えかねない。覚醒効果の確保と煩わしさの低減を両立させるため、標準継続時間T1は40秒以上、60秒以下に設定されていることが好ましい。標準継続時間T1が第1時間に相当する。刺激制御部F3は標準継続時間T1に相当する周期で作動パターンを変更することを基本動作として実行する。
【0062】
なお、
図3に示す例では、刺激発生作動パターンの先頭に位置する作動パターンP00、P10、P15、P20、P30を何れも、覚醒刺激を出力しない休止パターンとしているが、これに限らない。
図5に例示するように、各グループの先頭パターンは、何らかの覚醒刺激を出力するように設定されていても良い。なお、休止パターンの標準継続時間T1である休止継続時間は、刺激を発生させる作動パターンの標準継続時間T1である刺激継続時間よりも短く設定されていてもよい。例えば休止継続時間は15秒や20秒、30秒など、休止期間であることをドライバが認識可能であって、かつ、当該期間に眠気が上昇することを抑制可能な長さに設定されうる。例えば休止継続時間は刺激継続時間の半分程度に設定されている。
【0063】
<覚醒装置1の作動について>
ここでは
図6を用いて覚醒装置1が実行する刺激発生制御処理について説明する。刺激発生制御処理は、ドライバの覚醒状態を維持又はドライバを覚醒状態へと導くように各種刺激発生装置の作動を制御する処理である。ここでは一例として刺激発生制御処理は、ステップS100~S113を備えるものとする。もちろん、刺激発生制御処理を構成するステップの数や、処理順序は適宜変更可能である。
図6に示す刺激発生制御処理は、所定の開始イベントが発生したときに開始される。
【0064】
開始イベントとしては、例えば、車両Hvのイグニッションがオンになること、車両の走行が開始されること、ドライバによる開始指示が入力されたこと等が採用することができる。また、車両Hvがレベル4以上の自動運転機能を備える場合には、レベル4以上の自動運転モードから、手動運転モードへと切り替わるタイミングまでの残り時間が所定の閾値未満となったことも開始イベントとして採用可能である。手動運転モードへと切り替わるタイミングまでの残り時間は、例えば高速道路などのODDを退出するまでの残り距離と走行速度の制御計画に基づいて算出されうる。
【0065】
その他、例えば刺激発生制御処理は、眠気レベル判定部F2によってドライバの眠気レベルが0の状態から1以上の状態に遷移した場合に開始されても良い。その場合、ステップS100~S101は省略可能となる。
【0066】
また、刺激装置1が所定の作動パターンを実行している間においては
図6に示す処理フローとは並行して、別途後述の通り、操作受付部F6が、覚醒刺激の発生態様に対するドライバの指示操作を受け付ける処理も随時実行する。
図6に示すフローチャートは、覚醒装置1の作動の概要を示すフローチャートと解することができる。
【0067】
まずステップS100ではセンサ情報取得部F1が、眠気レベルの判断材料としての各種状態量のセンサ値を取得してS101に移る。なお、センサ情報取得部F1は眠気レベルの判断材料を逐次取得する処理は、以降で説明する処理フローとは並行して逐次実行される。ステップS100は、センサ情報取得部F1がドライバの状態を示す情報を取得するステップであるためドライバ状態取得ステップと呼ぶことができる。
【0068】
ステップS101では、眠気レベル判定部F2が、センサ情報取得部F1が取得している種々の情報に基づいて、ドライバの眠気レベルを判定する。そして、表示処理部F4が、その判定した眠気レベルを、HUD36及びディスプレイ23の少なくとも何れか一方に表示してステップS102に移る。このようなステップS101は眠気レベル判定ステップと呼ぶ事ができる。
【0069】
なお、眠気レベル判定部F2は、ステップS101以降においても、例えば5秒や10秒、15秒など、所定の判定周期でドライバの眠気レベルを逐次判定する。眠気レベル判定部F2の判定結果は、例えばRAM12に一定時間保存される。判定時刻が異なる複数の眠気レベルの判定結果は、判定時刻が最新のデータが先頭となるように判定時刻順にソートされて保存されうる。眠気レベルの判定結果の保存期間は例えば2分や5分などとすることができる。
【0070】
ステップS102ではパターン選択部F32が、
図3及び
図4に例示する予め用意された作動パターングループの中から、ステップS101で判定した眠気レベルに応じた作動パターングループを選択する。例えばステップS101で判定した眠気レベルが0であった場合には、パターン選択部F32は、作動パターングループG0(A)を設定する。ステップS101で判定した眠気レベルがレベル1であった場合、パターン選択部F32は、作動パターングループG1(A)を設定する。ステップS101で判定した眠気レベルがレベル2であった場合、パターン選択部F32は、作動パターングループG2を設定する。ステップS101で判定した眠気レベルがレベル3以上であった場合、パターン選択部F32は、作動パターングループG3を設定する。その他、眠気レベルがレベル0であった場合にはパターン選択部F32は作動パターングループG0(A)を選択する。このようなステップS102は刺激パターン選択ステップ或いは作動パターン選択ステップと呼ぶことができる。
【0071】
ステップS104では、刺激制御部F3が、ステップS103で設定された作動パターングループに応じた覚醒刺激の発生を開始する。例えば作動パターングループG1(A)が選択されている場合には、作動パターングループG1(A)を構成する複数の作動パターンのリストの先頭に位置する作動パターンP10に応じた覚醒刺激の出力を開始する。なお、ここでは作動パターンP10を休止パターンとしているが、仮に作動パターンP10が例えば発光2の発生を含む場合には発光装置31に制御信号を出力し、所定作動パターンの発光を発生させ始める。
【0072】
なお、グループG0(A)が選択されている場合は、覚醒刺激の出力は行われない。グループG0(A)以外が選択されている場合、当該選択グループに応じた覚醒刺激の発生は、以降の処理でグループG0(A)が選択されるか、又は、ステップS112、S113で終了タイミングであると判断されるまで継続する。また、ステップS104では刺激制御部F3が、タイマーを起動させて、現在実行中の作動パターンである現行パターンが開始してからの経過時間を計測し始める。さらに、表示処理部F4は、HUD36を用いて、覚醒装置1の作動状態又は休憩提案に関する情報を提示する。提示する情報種別は、
図3の右端欄に示す通り、作動パターンごとに決められている。
【0073】
ステップS105ではタイマーのカウント値を参照し、現行パターンを開始してから所定の中間確認時間T2が経過したか否かを判定する。中間確認時間T2は、標準継続時間T1よりも短い値であればよく、例えば30秒に設定されている。もちろん、中間確認時間T2は、25秒や40秒などであって良い。中間確認時間T2は標準継続時間T1の半分よりも長く設定されていることが好ましい。中間確認時間T2が第2時間に相当する。
【0074】
現行パターンを開始してからの経過時間が中間確認時間T2以上となっている場合には、ステップS105を肯定判定してステップS106に移る。一方、現行パターンを開始してからまだ中間確認時間T2が経過していない場合には、ステップS112で終了条件が充足したかどうかを逐次判定しながらステップS105を繰り返す。
【0075】
終了条件としては例えば、車両Hvの走行用電源がオフになったこと、目的地に到着したこと、ドライバによる終了指示がなされたこと等が挙げられる。終了条件が充足された場合には、本処理は終了する。
【0076】
ステップS106では、現在実施中の作動パターンである現行パターンを開始してから経過時間が中間確認時間T2となった時点において、ドライバの状態が所定の臨時切替条件が充足しているか否かを判定する。現行パターンを開始してからの経過時間は前述のタイマー機能によって測定されうる。以降では、現行パターンを開始してから経過時間が中間確認時間T2となる時点のことを中間確認時点とも記載する。臨時切替条件は、ドライバの状態に応じて臨時的に覚醒刺激の出力態様を変更するための条件である。
【0077】
本実施形態では一例として、臨時切替条件として、グループ切替条件と、グループ内切替条件とが設定されているものとする。グループ切替条件は、より高い眠気レベルに対応する作動パターングループへ急遽切り替える条件である。グループ切り替え条件は、1つの観点において、発生させる覚醒刺激を強める強度変更条件と解することができる。グループ切替条件は、例えば、現行パターンを開始してから中間確認時間T2となるまでの期間における、ドライバが閉眼状態となっている時間の合計値が所定の緊急切替閾値以上の場合とすることができる。つまり、現行パターンを開始してから中間確認時間T2となるまでの期間における閉眼状態の合計時間が緊急切替閾値以上である場合に、グループ切替条件が充足されていると判定される。なお、緊急切替閾値は、5秒や10秒などとすることができる。また、緊急切替閾値は中間確認時間T2の15%~30%などに設定されうる。緊急切替閾値は現在の眠気レベルの判定値に応じて異なる値に設定されても良い。例えば眠気レベルが1の場合の緊急切替閾値は3秒とする一方、眠気レベルが2の場合の緊急切替閾値は5秒などとすることができる。グループ切替条件は、現行パターンがドライバに効いておらず、かつ、眠気レベルが悪化している場合に対応する条件と言える。
【0078】
また、グループ内切替条件は、現在選択されているグループ内において次の作動パターンに切り替えるための条件である。グループ内切替条件は、1つの観点においては、発生させる覚醒刺激の強度は変えずに、覚醒刺激の種類を即座に変更するための種類変更条件と解することができる。グループ内切替条件は、現行パターンが眠気レベルに変化が見られない場合、すなわち、眠気レベルは悪化していないものの、改善もされていない場合に対応する条件と言える。
【0079】
例えば眠気レベルに変化がなく、かつ、中間確認時点における姿勢や開眼度、視線の移動速度、瞬き(瞬目)の周期の安定性、瞬目の速度などが、現行パターン開始時と比べて改善していない場合、グループ内切替条件が充足されていると判定される。なお、開眼度が改善した場合とは開眼度が増加した場合に相当し、姿勢が改善した場合とは、顔の向きが下方向や上方向から正面方向に近づいた場合を指す。これの事象は眠気レベルが改善する予兆を示す。中間確認時点で眠気レベルに変化がなく、かつ、眠気レベルが改善する予兆が検出されていない場合に、グループ内切替条件が充足していると判定することができる。
【0080】
ステップS106において、グループ切替条件及びグループ内切替条件の少なくとも何れか一方が充足されている場合にはステップS107に移る。一方、グループ切替条件及びグループ内切替条件の何れも充足していない場合には、ステップS106を否定判定してステップS108に移る。なお、グループ切替条件及びグループ内切替条件の何れも充足していない場合には、例えば眠気レベルが下がっている場合や、眠気レベルが改善傾向にあるもののレベル値が下がるほどの有意な変化は生じていない場合を指す。
【0081】
ステップS107では充足された臨時切替条件に応じた処理を実行する。例えば、グループ切替条件が充足されている場合には、パターン選択部F32は、現在選択している作動パターングループよりも1段階上の作動パターングループを選択する。1段階上の作動パターングループとは、対応付けられている眠気レベルが1段階上の作動パターングループである。例えば現在選択中の作動パターングループがG1(A)又はG1(B)である場合には、G2を選択する。また、現在選択中の作動パターングループがG2である場合にはG3を選択する。現在選択中の作動パターングループがG0(A)又はG0(B)である場合には、G1(A)を選択する。
【0082】
また、グループ内切替条件が充足されている場合には、パターン選択部F32は、現在選択している作動パターングループ内において、次の作動パターンを選択する。例えば現在選択中の作動パターンがP11である場合には、P12を選択する。また、現在選択中の作動パターンがP21である場合にはP22を選択する。その他の場合も同様である。
【0083】
ステップS107での選択処理が完了するとステップS103に戻り、ステップS107で選択した作動パターングループ及び作動パターンに対応する覚醒刺激の出力を開始する。そしてステップS104以降の処理を順次実行する。つまり、臨時切替条件が充足されている場合には、標準継続時間T1の満了を待たずに、急遽作動パターンを変更する事となる。
【0084】
ステップS108では、タイマーのカウント値を参照し、現行パターンを開始してから標準継続時間T1が経過したか否かを判定する。現行パターンを開始してからの経過時間が標準継続時間T1以上である場合には、ステップS108を肯定判定してステップS109に移る。一方、現行パターンを開始してからまだ標準継続時間T1が経過していない場合には(ステップS108 NO)、ステップS113で終了条件が充足したかどうかを逐次判定しながらステップS108を繰り返す。ステップS113はステップS112と同様の処理である。
【0085】
ステップS109では変化判断部F31が、RAM12に保存されている最新の眠気レベルの判定値に基づいて、眠気レベルの変化を判断する。眠気レベルの変化とは、現行パターン開始時に測定された眠気レベルである開始時眠気レベルに対する、最も新しく判定された眠気レベルである最新眠気レベルの変化である。開始時眠気レベルはステップS103の直後に判定された眠気レベルに相当する。なお、ステップS109等、各判定ステップで使用する眠気レベルは、直近所定時間以内における判定結果の平均値(いわゆる移動平均値)、又は最頻値であってもよい。例えば直近20秒以内の眠気レベルの平均値又は最頻値とすることができる。そのような直近所定時間以内の各時点における眠気レベルを母集団として統計的に定まる眠気レベルを眠気レベルの移動統計値とも称する。眠気レベルに変化が生じたか否かの判定に移動統計値を用いる構成によれば、瞬時的な変化に起因して覚醒刺激を弱めたり、強めたりする恐れを低減できる。
【0086】
眠気レベルの変化の判定作動パターンとしては、上昇、下降、維持がある。上昇とは、最新の眠気レベルが開始時眠気レベルよりも上昇していることを意味する。下降とは、最新の眠気レベルが開始時眠気レベルよりも下降していることを意味する。同一とは、最新の眠気レベルが開始時眠気レベルと同一であることを意味する。
【0087】
最新眠気レベルと開始時眠気レベルとが同一である場合には、ステップS109を否定判定してステップS110に移る。一方、眠気レベルが上昇又は下降している場合には、ステップS111に進む。ステップS110ではパターン選択部F32が、現状の作動パターングループの次の作動パターンを選択してステップS103に戻る。
【0088】
ステップS111ではパターン選択部F32が、最新眠気レベルと眠気レベルの変化方向に基づいて、覚醒刺激の態様、すなわち作動パターングループを選択する。仮に眠気レベルが上昇している場合には、最新眠気レベルに応じた作動パターングループを選択する。具体的には、眠気レベル上昇後の最新の眠気レベルが1である場合には、パターン選択部F32は、作動パターングループG1(A)を設定する。また、眠気レベル上昇後の最新眠気レベルが2である場合、パターン選択部F32は、作動パターングループG2を設定する。最新の眠気レベルがレベル3以上である場合、パターン選択部F32は、作動パターングループG3を設定する。
【0089】
また、仮に眠気レベルが下降している場合には、最新眠気レベルに応じた作動パターングループを選択する。具体的には、眠気レベル下降後の最新の眠気レベルが1である場合には、パターン選択部F32は、作動パターングループG1(B)を設定する。また、眠気レベル下降後の最新の眠気レベルが0である場合には、パターン選択部F32は、作動パターングループG0(B)を設定する。なお、前述の通り、ここでは一例として、眠気レベルが一旦レベル3に上昇すると、その後、眠気レベルの判定結果によらず、眠気レベルはレベル3を維持する。そのため、眠気レベルがレベル3からレベル2に下降することはない。ステップS111でのグループ選択処理が完了するとステップS103に戻る。
【0090】
<ドライバ操作に基づくパターン登録処理について>
本実施形態の覚醒装置1は、入力装置22が検出及び出力するドライバの操作信号に基づいて、現行パターンに対するドライバの意見を取得する操作受付部F6を備える。
【0091】
操作受付部F6は、表示処理部F4と協働して、現行パターンに対するドライバの意見または指示操作を取得する。例えば表示処理部F4がディスプレイ23に
図7に示すように、現行パターンに対するドライバの意見を取得するための種々のボタン画像(B1~B5)を表示する。そして、操作受付部F6が当該ボタン画像に対する選択操作に基づいて、ドライバの意見及び指示を取得する。ボタン画像の選択操作は、各種ボタン画像の表示位置情報と、ディスプレイ23に対するユーザのタッチ位置情報との対応関係に基づき検出可能である。
【0092】
図7に示すボタンB1はスキップボタンであり、次の作動パターンへ切り替えることをドライバが指示するためのボタンに相当する。操作受付部F6がドライバによってスキップボタンB1がタッチ操作されたことを検出した場合、パターン管理部F7が、スキップ操作が行われた作動パターンをスキップパターンとしてRAM12又はストレージ13に登録する。便宜上、スキップボタンB1を選択する操作のことをスキップ操作とも称する。
【0093】
本実施形態の覚醒装置1は、スキップパターンに登録されている作動パターンに関しては、次回からの実行を省略するように構成されている。例えば、作動パターンP12に対してスキップ操作が行われた場合には、グループG1(A)のうち、作動パターンP12以外の作動パターンを巡回的に実行する。具体的には、作動パターンP10、P11、P13、P14の順に順次実行し、作動パターンP14の時間帯が終了すると、再び作動パターンP10の時間帯に戻る。
【0094】
なお、1つのグループに属する複数の作動パターンがスキップパターンとして登録されてもよい。ただし、1つのグループに属する全ての作動パターンをスキップパターンに登録することを許容すると、当該グループは機能しなくなる。また、1つのグループに属する作動パターンのうち、スキップパターンに登録されていないものが1つしか無い状態では、単一の作動パターンが実行され続けることとなる。1つの作動パターンが延々と継続されると、ドライバは当該作動パターンが提供する覚醒刺激に慣れてしまい、覚醒効果が得られにくくなることが懸念される。
【0095】
そのような事情を踏まえ、本開示のパターン管理部F7は、同一グループにおいてスキップパターンに登録されていない作動パターンが2個以下となった場合には、新たなスキップパターンの登録を拒否するものとする。或いは、パターン管理部F7は、同一グループにおいてスキップパターンに登録されていない作動パターンが2個以下となった場合には、最も登録時刻が古いスキップパターンの登録を破棄した上で、新たなスキップパターンを登録しても良い。何れにしてもパターン管理部F7は、少なくとも2つ以上の作動パターンが巡回的に実施されるようにスキップパターンの登録状態を制御する。
【0096】
なお、スキップパターンの登録自体は却下する場合であっても、一時的なスキップ操作自体は受付可能に構成されていても良い。スキップ操作を行わせることにより、ユーザに刺激を与える効果が期待できる。一時的なスキップ操作とは、スキップパターンへの設定はせずに、次の作動パターンに遷移させる操作に相当する。
【0097】
ボタンB2は、現行パターンをお気に入りの作動パターンに登録するためのグッドボタンである。操作受付部F6がドライバによってグッドボタンB2が選択されたことを検出した場合には、パターン管理部F7がその時点で実行されている作動パターンをお気に入りパターンに登録する。お気に入りパターンは高評価作動パターンと呼ぶこともできる。
【0098】
お気に入りパターンに登録されているか否かは、例えば、作動パターンをランダムに実行する場合の出現率を高めるためのパラメータとして使用することができる。また、お気に入りパターンに登録されている作動パターンは、当該作動パターンに対する標準継続時間T1の設定値を通常の値よりも所定量長くしてもよい。延長時間は例えば5秒や10秒などとすることができる。
【0099】
ボタンB3は、現行パターンはドライバの好みではないことを入力するための低評価ボタンである。操作受付部F6がドライバによって低評価ボタンB3が選択されたことを検出した場合には、パターン管理部F7がその時点で実行されている作動パターンを低評価パターンに登録する。低評価ボタンB3は、例えばスキップさせるほどではないが、あまり好きではない、或いは煩わしさを感じる場合に選択されうる。なお、パターン管理部F7は、スキップ操作が行われた作動パターンを低評価パターンとして登録しても良い。スキップボタンB1が低評価ボタンB3としての役割を兼ねていても良い。
【0100】
低評価パターンに登録されているか否かは、例えば、作動パターンをランダムに実行する場合の出現率を下げるためのパラメータとして使用することができる。また、低評価パターンに登録されている作動パターンは、当該作動パターンに対する標準継続時間T1の設定値を通常の値よりも所定量短くしてもよい。短縮量は例えば5秒や10秒などとすることができる。その他、低評価パターンに登録されている作動パターンは、刺激の強度を所定量弱めてもよい。
【0101】
ボタンB4、B5は刺激の強度を調整するためのボタンである。例えばボタンB4は刺激を所定量弱めるためのダウンボタンB4である。刺激を弱めることは、音声であれば音量や周波数を小さくすることに相当する。また、光であれば明るさを小さくしたり、色合いを暗くしたりすることに相当する。振動であれば振動の振幅を小さくしたり、振動間隔を長くしたりすることなどに相当する。また、ボタンB5は刺激を所定量強めるためのアップボタンB5である。
【0102】
なお、一部の指示操作はステアリングスイッチの出力信号に基づいて受付可能に構成されていても良い。例えばスキップ操作やアップ操作は、所定のステアリングスイッチが押下されたことに基づいて検出しても良い。換言ずれば一部のボタン画像に対応するスイッチがステアリングホイールに設けられていてもよい。そのような構成によればドライバの利便性を高めることができる。
【0103】
また、以上ではユーザ操作に基づいて、スキップパターンや、お気に入りパターン、低評価パターンなどへの登録を行う態様を開示したがこれに限らない。ドライバの顔画像を解析することで、快/不快を判定し、当該感情の判定結果に基づいて自動的/半自動的に各種作動パターン登録を行っても良い。刺激の強度調整についても同様とすることができる。例えば快判定された作動パターンを自動的にお気に入りパターンに登録する。また、不快判定された作動パターンを自動的にスキップパターン及び低評価パターンに登録してもよい。なお、ここでの自動的な登録はドライバの許可を問い合わせることなく登録することを指す。半自動的な登録とはドライバに登録するか否かを問い合わせ、ドライバが承諾した場合に登録することを指す。
【0104】
また、快/不快といった覚醒刺激に対するドライバの感情を取得するための材料となる情報は、ドライバの表情に限定されない。ドライバのジェスチャや、発話、眠気レベルの改善度合いに基づいて不快に感じているかどうかを判定してもよい。加えて、眠気レベルの改善度合いに基づいて、眠気レベルの改善に効果的な作動パターンである有効パターンと、あまり効かない作動パターンである弱効果パターンとを特定しても良い。覚醒装置1は、入力装置22から入力されるドライバ操作信号やドライバの顔画像の解析結果に基づいて、各作動パターンに対するドライバの感情(快/不快)を判定し、作動パターンの発現頻度や、実行条件、継続時間、刺激の強度を調整してもよい。なお、顔画像を解析してドライバが不快に感じているか否かを判定する機能は、DSM21が備えていてもよいし、覚醒装置1が備えていても良い。
【0105】
各作動パターンに対する設定情報は、ドライバごと、換言すればユーザごとに区別して保存されることが好ましい。ドライバとしてのユーザは、車両Hvの開錠に使用されたキーの識別情報や、顔画像や、声紋、指紋などに基づいて識別されれば良い。ドライバを特定する方法としては多様な方法を援用可能である。また、車両Hvがカーシェアリングサービスに供される車両である場合には、車両Hvの利用予約情報に基づいてドライバを特定可能である。ユーザ毎のパターン設定情報は、ストレージ13に保存されても良いし、クラウド上のサーバに保存されても良い。
【0106】
<実施形態が奏する効果>
以上の構成の刺激制御部F3は、現行パターンに切り替えてからのドライバの状態に基づいて、刺激パターンを現行パターンから別パターンに切り替えるタイミングを本来予定していた時点から変更しうる。つまり、1つの作動パターンを実行中の所定のタイミングにおけるドライバの状態に応じて、作動パターンを切り替えるかどうかを変更する。具体的には
図8に示すように、或る作動パターンAを実施中において、中間確認時間T2が経過した時点においてドライバの状態が所定の臨時切替条件を充足している場合には、パターンAから所定のパターンBに切り替える。
【0107】
例えば現行パターンを開始してから中間確認時間T2経過するまでの期間における、ドライバの閉眼時間が所定の緊急切替閾値以上である場合には、現行パターンの継続を中断して、1段階上の眠気レベルに対応するグループに切り替える。なお、中間確認時間T2が経過した時点で作動パターンを切り替えることは、現行パターンの終了タイミングを早めることに相当する。
【0108】
このような構成によれば、ドライバの眠気が進行している場合には、速やかにドライバに付与する覚醒刺激の強度を高めることができる。その結果、ドライバの眠気レベルが高まることを抑制することができる。
【0109】
また、上記構成では、グループ内切替条件が充足された場合、つまり、現行パターンを開始してから中間確認時間T2経過したタイミングで、眠気レベルの改善が観測さない場合には、同一グループ内の別の作動パターンに切り替える。当該構成は、現行パターンで効果が得られない場合には途中で中断し、同一グループ内の別の作動パターンの覚醒刺激を出力する構成に相当する。当該構成によれば、覚醒に寄与しない作動パターンが継続する時間を短縮する事ができる。またその結果、ドライバの覚醒に寄与する作動パターンにたどり着くまでの時間を短縮可能となり、ドライバを覚醒状態に導きやすくなる。
【0110】
加えて、中間確認時点において臨時切替条件が充足されていない場合には、標準継続時間T1が経過したタイミングで別の作動パターンに切り替える。故に、各作動パターンが切り替わる周期は、基本的には標準継続時間T1となる。標準継続時間T1は中間確認時間T2よりも相対的に長く設定されているため、作動パターンが頻繁に切り替わることによってドライバに煩わしさを与える恐れを低減できる。
【0111】
その他、作動パターングループG1(A)が設定されているときに、眠気レベルがレベル1からレベル2に上昇すると、覚醒装置1は、作動パターングループG2を新たに設定する。作動パターングループG2は、前グループに含まれない冷風の覚醒刺激を含む。前グループとは遷移前の作動パターングループであって、ここではグループG1(A)を指す。冷風の覚醒刺激は、追加の覚醒刺激に相当する。ドライバは、追加の覚醒刺激を体感し、眠気レベルの上昇に応じて覚醒刺激が変化していることに気付きやすくなる。また、作動パターングループG2は、一部の時間帯において冷風の覚醒刺激を発生させるように設定されている。一時的に冷風を発生させる設定態様によれば、作動パターングループを構成する全ての期間において冷風の覚醒刺激を発生させる場合に比べて、ドライバは、覚醒刺激を煩わしく感じ難い。
【0112】
また、作動パターングループG2が設定されているときに、眠気レベルがレベル2からレベル3に上昇すると、覚醒装置1は、作動パターングループG3を新たに設定する。作動パターングループG3は、追加の覚醒刺激として振動の覚醒刺激を含む。作動パターングループG2は、眠気レベルが上昇する前の態様に対応する。ドライバは、追加の覚醒刺激としての振動を体感することで、眠気レベルの上昇に応じて覚醒刺激が変化していることに気付きやすくなる。
【0113】
また、作動パターングループG2が設定されているときに、眠気レベルがレベル2からレベル1に下降すると、覚醒装置1は、作動パターングループG1(B)を新たに設定する。作動パターングループG1(B)は、作動パターングループG2に含まれる覚醒刺激に代えて、HUD36による光刺激を含む。HUD36による光刺激は、前グループに含まれていない新たな覚醒刺激に対応する。ドライバは、作動パターングループG1(B)が設定されると、覚醒刺激が大きく変化したことを体感し、眠気レベルの下降に応じて覚醒刺激が変化していることに気付く。つまり、システムがドライバの状態変化にある程度追従していることを認識しうる。その結果、眠気レベルが下降した後に覚醒刺激が継続しても、ドライバが煩わしさを感じる恐れを低減できる。
【0114】
ところで、作動パターングループG2は、発光装置31による光刺激を含む。HUD36による光刺激は、発光装置31による光刺激と同じ種類の覚醒刺激ではあるが、見え方や発生位置などといった特徴が異なる覚醒刺激といえる。特徴が異なるため、ドライバは、覚醒刺激の変化を体感することができる。
【0115】
その他、
図3に示す設定例では、作動パターングループG0(A)、G0(B)、G1(A)、G1(B)、G2、G3は、覚醒刺激が発生しない休止作動パターンを含む。休止パターンを含むことにより、他の作動パターンが提供する覚醒刺激が際立ち、煩わしさを与える恐れを低減しつつ、より一層の覚醒効果が期待できる。
【0116】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。例えば以下の補足としての記載する構成も上述した実施形態と組み合わせて実施することができる。
【0117】
<中間確認時点でのドライバ状態に応じたシステム応答の補足>
上述した実施例では、臨時切替条件が充足していることに基づいて中間確認時点で作動パターンを切り替える態様について開示したがこれに限らない。中間確認時点でドライバの眠気レベルが改善している、又は、その予兆が観測されていることに基づいて、現行パターンの継続時間を標準継続時間T1よりも所定時間伸ばしても良い。
【0118】
例えば、パターン管理部F7は、現行パターン開始から中間確認時点までのドライバ状態の履歴情報に基づいて、ドライバの眠気レベルが改善している、又は、その予兆が観測されている場合には、現行パターンを有効パターンとして登録する。そして、刺激制御部F3は、現行パターンが有効パターンに登録された場合、現行パターンをユーザが不快に感じていないことを条件として、現行パターンの終了タイミングを、標準継続時間T1に基づいて定まる当初予定していたタイミングよりも遅くする。
【0119】
有効パターンは、ドライバの覚醒に有効であると判断された作動パターンに相当する。有効パターンか否かは、例えば作動パターンの開始時と終了時の眠気レベルやドライバ状態を比較することで判断されうる。現行パターンがドライバの覚醒に有効であるか否かの判断は、パターン管理部F7の代わりに、刺激制御部F3が実施しても良い。覚醒装置1内の機能配置は適宜変更可能である。
【0120】
また、入力装置22から入力されるドライバ操作信号やドライバの顔画像に基づいて、中間確認時点までに現行パターンがお気に入りパターンに登録された場合にも、現行パターンの継続時間を標準継続時間T1よりも所定時間伸ばしても良い。延長時間は例えば10秒などとすることができる。
【0121】
<臨時切替条件の具体例の補足>
グループ切替条件、及びグループ内切替条件は上述した例示に限定されない。例えば、グループ切替条件は、現行パターンを開始してから中間確認時間T2となるまでの期間における、ドライバがあくびを実行した回数が、例えば3回など、所定の閾値以上の場合とすることができる。つまり、現行パターンを開始してから中間確認時間T2となるまでの期間におけるあくびの実行回数が所定値以上である場合に、グループ切替条件が充足されていると判定される。
【0122】
グループ内切替条件は、現行パターンを開始してから中間確認時間T2となるまでの期間における、眠気レベルの判定値が一定である場合とすることができる。つまり、現行パターンを開始してから中間確認時間T2となるまでの期間における、眠気レベルの判定値が一定である場合に、グループ内切替条件が充足されたと判定される。
【0123】
<作動パターングループの切替タイミングの補足>
現行パターンを開始してから中間確認時間T2経過したタイミングにおいて、ドライバの眠気レベルが上昇していたとしても、標準継続時間T1が経過するまでは現行パターンを維持してもよい。ただし、その場合、標準継続時間T1が経過したタイミングで眠気レベルが当初レベルに戻っていたとしても、途中で観測された最も高い眠気レベルに対応する作動パターングループに切り替える。そのような構成によれば、標準継続時間T1が経過したタイミングで一時的に眠気レベルが低下していたとしても、相対的に強い覚醒刺激を出力することができる。なお、上記の想定シーンは、眠気レベルが上がったり下がったりしている状態に相当する。眠気レベルが上がったり下がったりしている状態は、ドライバの眠気がそれらのレベルの境界付近に位置することを示唆する。そのような境界付近で眠気レベルが推移している場合には相対的に高い方の眠気レベルに対応する覚醒刺激を出力することで、ドライバの眠気レベルを下降させる効果が期待できる。
【0124】
<冷風刺激の変更について>
また、上記の構成は、刺激パターンとして、車両に搭載された空調装置から空調空気を出力させる空調刺激パターンと、運転席用のドアウインドウを開けることで覚醒刺激としての外気をドライバに当てる窓部開放パターンとを採用可能な構成に相当する。刺激制御部F3は、空調刺激パターンを実行中において中間確認時間T2が経過したタイミングで眠気レベルが改善していないと判定されたことに基づいて、次回から空調刺激パターンの代わりに窓部開放パターンを実行するように構成されていてもよい。空調空気とドアウインドウからの風である外部風とでは、ドライバの感じ方は異なりうる。故に、空調空気の刺激が効かない場合には、覚醒刺激として外部風を採用することで、ドライバの眠気レベルが改善することが期待できる。また、ドライバの表情等により空調刺激が苦手と推定される場合には、空調刺激パターンに代えて、窓部開放パターンを採用しても良い。当該構成によれば、空調空気が苦手なドライバにも受け入れやすくなる。
【0125】
なお、窓部開放パターンは、雨天時には自動的に採用されないように制御されることが好ましい。また、花粉や、黄砂、PM2.5などの微粒子が空気中に含まれる量(いわゆる飛散量)が、所定の閾値以上となる季節においては、窓部開放パターンは自動的に選択肢から除外されることが好ましい。なお、気象条件が上記の条件が充足している場合には、窓部開放パターンに関しては、ドライバに実行してもよいか否かの確認画面を提示するように構成されていても良い。窓部開放パターンを自動的に実行してもよいか否かは所定の設定画面を介してドライバによって登録されていても良い。
【0126】
その他、眠気レベル2では空調装置34から覚醒刺激として冷風を出力する一方、眠気レベル3では運転席のドアウインドウを開けることで、ドライバに異なる特徴を有する触覚刺激を付与しても良い。なお、急にドアウインドウが開くとドライバを困惑させる恐れがある。故に、覚醒刺激としてドアウインドウの開放を採用する場合には事前にドライバに通知することが好ましい。
【0127】
<スキップ操作の影響範囲について>
スキップ操作が入力された場合、パターン選択部F32は、グループごとスキップさせてもよい。例えば作動パターングループがG1(A)に設定されている場合に、スキップ操作が行われた場合には、作動パターングループをG1(A)からG2に切り替えても良い。また、操作受付部F6は、作動パターングループそのもの変更するグループスキップ操作と、同一作動パターン内で作動パターンを変更する個別スキップ操作とをそれぞれ受付可能に構成されていても良い。例えばグループスキップ操作に対応するボタン画像と、個別スキップ操作を受け付けるためのボタン画像をそれぞれディスプレイ23に表示し、ユーザのタッチ位置に基づいてそれらの指示操作を検出するように構成されていても良い。なお、グループスキップ操作と個別スキップ操作は音声入力によって検出するように構成されていても良い。
【0128】
<不快判定された覚醒刺激(作動パターン)について>
入力装置22から入力されるドライバ操作信号やドライバの顔画像に基づいて、不快判定された作動パターンに対しては、快判定されている作動パターンとは異なる制御を適用しても良い。例えば刺激制御部F3は、不快判定された作動パターンはドライバが許可を出すまでは実行しないようにしてもよい。また、不快判定された作動パターンの刺激は、強度を抑制した態様で出力させても良い。
【0129】
その他、不快判定された作動パターンについては、眠気レベルが所定値未満である場合には実行せずに、眠気レベルが所定値以上である場合に実行するように構成されていてもよい。ここでの所定値は3や2などとすることができる。例えば、眠気レベルが0~1の場合は、不快判定された作動パターンは実行せずに、眠気レベルが2以上の場合に不快判定された作動パターンを実行しても良い。或る作動パターンの実行/不実行は、作動パターングループを自動/手動編集することで実現されうる。例えば上述した制御は、眠気レベルが0~1に対応する作動パターングループには不快判定された作動パターンは含めない一方、眠気レベルが2以上の作動パターングループには不快判定された作動パターンを含めることに相当する。眠気レベルが高いほど、不快判定された作動パターンの比率が高まるように各作動パターングループは構成されていても良い。
【0130】
眠気レベル3以上に対応する作動パターングループG3は、不快判定された作動パターンだけで構成されていてもよい。そのように眠気レベルが高いほど、不快判定された作動パターンの出現比率を高める構成によれば、ドライバの眠気レベルをより一層下降させる効果が期待できる。
【0131】
<ドライバ操作に対する応答処理について>
覚醒装置1は、覚醒刺激の出力をドライバによる所定操作に基づいて一時的に停止するように構成されていても良い。その場合、覚醒装置1は、ドライバの再開操作を受け付けるか、所定の一時停止解除時間が経過したことに基づいて覚醒刺激の出力を再開する。
【0132】
また、覚醒装置1は、ドライバ操作に基づいて覚醒刺激の強度を一時的に弱めることが可能に構成されていても良い。その場合、覚醒装置1はドライバの復元操作を受け付けるか、眠気レベルの改善が見られないことに基づいて覚醒装置1は覚醒刺激の強度を復元しうる。
【0133】
なお、ドライバの眠気レベルが所定の操作無効閾値以上である場合には、覚醒刺激の出力の停止や強度を弱めるためのドライバ操作はキャンセルするように構成されていることが好ましい。また、ドライバの眠気レベルが操作無効閾値以上である場合には、スキップ操作はキャンセルするように構成されていてもよい。操作無効閾値は例えば3や4などとすることができる。なお、眠気レベルが所定の操作無効閾値以上である場合であっても、刺激強度を強める方向のドライバ操作や、お気に入り登録操作などは受付可能に構成されていても良い。
【0134】
<覚醒刺激の自動変更処理について>
パターン管理部F7は、現行パターンの開始時と終了時の眠気レベルやドライバ状態を比較することにより、覚醒効果が薄い作動パターンである弱効果パターンを特定してもよい。例えば開始時のドライバ状態と終了時のドライバ状態とを比較して、改善方向の有意な変化が観測されない作動パターンを弱効果パターンに登録しうる。ここでのドライバ状態は、眠気レベルの判定値に限らず、姿勢や開眼度、視線の移動速度、瞬き(瞬目)の周期の安定性、瞬目の速度なども含めることができる。
【0135】
刺激制御部F3は、そのような弱効果パターンについては、刺激の強度を上げたり、別の種類の覚醒刺激を組み合わせたりしてもよい。また、刺激制御部F3は弱効果パターンについては、その実行頻度や、実行条件、標準継続時間T1を変更しても良い。例えば刺激制御部F3は、弱効果パターンと判定されている作動パターンについては、他の作動パターンよりも標準継続時間T1を所定量短くしてもよい。また、刺激制御部F3は、弱効果パターンと判定されている作動パターンについては、他の作動パターンよりも採用頻度を少なくしても良い。例えば2周に1回の間隔で実行するように制御しても良い。
【0136】
加えて、実行条件として、現状の作動パターングループが選択されてからの経過時間が所定時間以内であることなどを含めても良い。そのように実行条件として、作動パターングループが選択されてからの経過時間が所定時間以内であることを含めた構成によれば、当該グループ選択後の初期においては弱効果パターンも実行される。一方、当該グループ選択から所定時間が経過した場合には、弱効果パターン以外の作動パターンだけが実行されることとなる。そのような構成によれば、時間が立つにつれて相対的に効果が強い作動パターンだけが実行されることとなり、ドライバの眠気レベルを下降させる効果が期待できる。
【0137】
また、覚醒装置1は、弱効果作動パターンに認定された位置(時間帯)に、ランダムで全く別の作動パターンを配置しても良い。そのように普段使用されない覚醒刺激をランダムに採用することにより、ドライバが覚醒刺激に慣れる恐れを低減できる。また、普段使用されない(つまりイレギュラーな)覚醒刺激をランダムに採用することにより、ドライバの意表をつくことができ、より高い覚醒効果を期待することができる。
【0138】
<刺激の強度調整について>
表示処理部F4は、スキップ操作が行われた場合にはその理由をドライバが入力するための選択肢を提示してもよい。スキップ理由の選択肢としては、刺激種類が嫌い、刺激が弱すぎる、刺激が強すぎるなどが想定される。パターン管理部F7は、ユーザ操作に基づきスキップ理由を取得できた場合には、当該スキップ理由を作動パターンと対応付けて保存する。刺激制御部F3は、スキップ理由として刺激が弱すぎると回答された作動パターンについては、刺激強度を所定量高めた態様で当該作動パターンを実行してもよい。また、刺激制御部F3は、スキップ理由として刺激が強すぎると回答された作動パターンについては、刺激強度を所定量弱めた態様で当該作動パターンを実行してもよい。
【0139】
<グループ毎の作動パターンの構成について>
各グループが備える作動パターンの組み合わせや実行順序は適宜変更することができる。例えば、
図3に示す例では、各グループの先頭に休止パターンを配置しているがこれに限らない。休止パターンはグループの先頭ではなく末尾に配置されていてもよい。なお、休止パターンを先頭に配置した構成によれば、ドライバは、覚醒刺激が発生しない時間を体感することにより、眠気レベル及び態様が変化したことに気付く事が可能となる。
【0140】
隣接する作動パターングループ同士は、重複しない種類の覚醒刺激を含んでいることが好ましい。作動パターングループG1(B)は、作動パターングループG2に含まれない種類の覚醒刺激を含んでいてもよい。異なる種類の覚醒刺激として、例えば、対話の覚醒刺激、振動の覚醒刺激、音声の覚醒刺激等が挙げられる。上記の場合、作動パターングループG1(B)は異なる種類の覚醒刺激を含むため、ドライバは、覚醒刺激の変化を体感することができる。その結果、覚醒刺激に対してドライバが慣れてしまう恐れを低減できる。その結果、下がりかけた眠気レベルが再度上昇する恐れも低減できる。
【0141】
<付言(1)>
本開示に記載の覚醒装置1及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。さらに、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。つまり、覚醒装置1等が提供する手段および/又は機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供できる。例えば覚醒装置1が備える機能の一部又は全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、1つ又は複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。覚醒装置1は、CPUの代わりに、MPUやGPU、DFP(Data Flow Processor)を用いて実現されていてもよい。覚醒装置1は、CPUや、MPU、GPUなど、複数種類の演算処理装置を組み合せて実現されていてもよい。覚醒装置1は、システムオンチップ(SoC:System-on-Chip)として実現されていても良い。さらに、各種処理部は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を用いて実現されていても良い。各種プログラムは、非遷移的実体的記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に格納されていればよい。プログラムの保存媒体としては、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、SD(Secure Digital)カード等、多様な記憶媒体を採用可能である。非遷移的実体的記録媒体には、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)などのROMも含まれる。
【0142】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能は、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。加えて、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0143】
上述した覚醒装置1の他、当該覚醒装置1を構成要素とするシステムなと、種々の形態も本開示の範囲に含まれる。例えば、コンピュータを覚醒装置1として機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体等の形態も本開示の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0144】
1 覚醒装置、11 プロセッサ、12 RAM、13 ストレージ、21 DSM(車載センサ)、40 ウェアラブルデバイス、F1 センサ情報取得部(ドライバ状態取得部)、F2 眠気レベル判定部、F3 刺激制御部、F31 変化判断部、F32 パターン選択部、F4 表示処理部、F5 終了判断部、F6 操作受付部、F7 パターン管理部、T1 標準継続時間(第1時間)、T2 中間確認時間(第2時間)