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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240820BHJP
   B41J 2/18 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14 605
B41J2/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020216686
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102134
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】垣内 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉野 隆晃
(72)【発明者】
【氏名】水野 泰介
(72)【発明者】
【氏名】山本 次郎
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-168759(JP,A)
【文献】特開2020-199734(JP,A)
【文献】特開2020-168736(JP,A)
【文献】特開2016-172381(JP,A)
【文献】特開2018-001507(JP,A)
【文献】特開2020-199695(JP,A)
【文献】特開2020-044726(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0290349(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に配列された、ノズルをそれぞれ含む複数の個別流路と、
前記一方向に延び、前記複数の個別流路と接続され、液体の供給口を有する第1共通流路と、
前記一方向に延び、前記複数の個別流路と接続され、液体の排出口を有する第2共通流路と、
前記第1共通流路と前記第2共通流路とを接続する、前記個別流路とは別のバイパス流路と、を備え、
前記複数の個別流路による流路抵抗Rct、前記バイパス流路の流路抵抗Rbp、前記第1共通流路から前記バイパス流路を経て前記第2共通流路に液体が流れるときの曲がり損失ΔP、及び、前記バイパス流路を流れる液体の流量Qが、
0.5<[Rct/(Rbp+(ΔP/Q))]<2.0
の関係を満たしていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記供給口が、前記第1共通流路の、前記一方向の一方側の端部に設けられ、
前記排出口が、前記第2共通流路の、前記一方向の前記一方側の端部に設けられ、
前記バイパス流路が、前記第1共通流路の前記一方向の他方側の端部と、前記第2共通流路の前記一方向の前記他方側の端部とを接続することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記バイパス流路が、
前記第1共通流路と接続される第1流路部分と、
前記第1流路部分及び前記第2共通流路と接続される第2流路部分と、を有し、
前記第1流路部分と前記第2流路部分との間の折れ曲がり角度が40°以上であることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記一方向が水平な方向であり、
前記第1共通流路と前記第2共通流路とが、鉛直方向に並んでいることを特徴とする請求項2又は3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記複数の個別流路及び前記バイパス流路を介して前記第1共通流路から前記第2共通流路に流れる液体の流量の合計が、前記複数の個別流路全てのノズルから最大限液体を吐出させるときの、単位時間あたりの、前記ノズルからの液体の吐出量の合計よりも大きいことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
液体の粘度が2~14[cps]の範囲にあることを特徴する請求項1~5のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
Qが0.01~0.1[cc/sec]の範囲にあることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
液体の粘度が7.0~8.0[cps]の範囲にあり、
Rctが300~400[kPa/cc/sec]の範囲にあり、
Rbpが200~300[kPa/cc/sec]の範囲にあり、
(ΔP/Q)が10~20[kPa/cc/sec]の範囲にあることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記バイパス流路が、
前記第1共通流路と接続される第1流路部分と、
前記第1流路部分及び前記第2共通流路と接続される第2流路部分と、を有し、
前記第1流路部分と前記第2流路部分との間の折れ曲がり角度θ、ζ=[(0.946×sin2(θ/2))+(2.05×sin4(θ/2))]によって算出される損失係数ζ、液体の流体密度ρ[kg・m3]、重力加速度g[m/s2]、液体の流速u[m/s]、h=ζ×(u2/(2×g))で算出される損失ヘッドh[m]として、
前記曲がり損失ΔPが、ΔP=(ρ×g×h)によって算出される値であることを特徴する請求項1~8のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドの一例として、特許文献1には、ノズルからインクを吐出して記録を行うヘッドユニットが記載されている。特許文献1に記載のヘッドユニットでは、ノズルと接続された複数の圧力室が一方向に配列されている。また、上記一方向と直交する方向における、複数の圧力室の両側に、上記一方向に延びた供給側共通流路及び循環側共通流路が配置されている。複数の圧力室は、それぞれ、インク供給流路を介して供給側共通流路に接続され、インク循環流路を介して循環側共通流路に接続されている。また、供給側共通流路と循環側共通流路とは、バイパス用流路を介して接続されている。
【0003】
これにより、特許文献1のヘッドユニットでは、供給側共通流路から循環側共通流路に、複数の圧力室を介してインクが流れるとともに、バイパス用流路を介してインクが流れる。また、特許文献1では、供給側共通流路から圧力室を経て循環側共通流路に至るまでの流路の流路抵抗rと、同じ供給側共通流路及び循環側共通流路に接続される圧力室の数Nと、バイパス用流路の流路抵抗Rとが、(r/N)<R<rの関係を満たすように流路を形成している。そして、特許文献1では、流路抵抗r,Rがこのような関係を満たしていることにより、複数の圧力室を介して供給側共通流路から循環側共通流路へ流れるインクの流量と、バイパス用流路を介して供給側共通流路から循環側共通流路へ流れるインクの流量とに大きな差が生じないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-214847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1では、流路抵抗rと流路抵抗Rのみに着目して、(r/N)<R<rを満たすように流路を形成している。しかしながら、特許文献1のヘッドユニットでは、供給側共通流路からバイパス流路を経て循環側共通流路にインクが流れるときにインクの流れの方向が大きく変化し、このインクが流れる方向の変化により、圧力損失(曲がり損失)が発生する。そのため、特許文献1に記載されているように、単に、流路抵抗rと流路抵抗Rのみに着目して、(r/N)<R<rを満たすように流路を形成した場合には、上記曲がり損失の影響によって、複数の圧力室を介して供給側共通流路から循環側共通流路へ流れるインクの流量と、バイパス用流路を介して供給側共通流路から循環側共通流路へ流れるインクの流量とに大きな差が生じてしまう虞がある。
【0006】
本発明の目的は、複数の個別流路を介して第1共通流路から第2共通流路に流れる液体の流量と、バイパス流路を介して第1共通流路から第2共通流路に流れる液体の流量とを確実に均等にすることが可能な液体吐出ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出ヘッドは、一方向に配列された、ノズルをそれぞれ含む複数の個別流路と、前記一方向に延び、前記複数の個別流路と接続され、液体の供給口を有する第1共通流路と、前記一方向に延び、前記複数の個別流路と接続され、液体の排出口を有する第2共通流路と、前記第1共通流路と前記第2共通流路とを接続する、前記個別流路とは別のバイパス流路と、を備え、前記複数の個別流路による流路抵抗Rct、前記バイパス流路の流路抵抗Rbp、前記第1共通流路から前記バイパス流路を経て前記第2共通流路に液体が流れるときの曲がり損失ΔP、及び、前記バイパス流路を流れる液体の流量Qが、
0.5<[Rct/(Rbp+(ΔP/Q))]<2.0の関係を満たしている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るプリンタ1の概略構成図である。
図2図1のヘッド11の平面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4図4のIV-IV線断面図である。
図5】変形例1のヘッド101の平面図である。
図6図5のVI-VI線断面図である。
図7】変形例2のヘッド150の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0010】
<プリンタ1の全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ1は、ヘッドユニット2、プラテン3、搬送ローラ対4,5を備えている。
【0011】
ヘッドユニット2は、8つのヘッド11(本発明の「液体吐出ヘッド」)と、ヘッドホルダ12とを有する。8つのヘッド11は、4つずつが、それぞれ、水平な紙幅方向(本発明の「一方向」)に並んでいる。なお、以下では、図1に示すように、紙幅方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0012】
また、8つのヘッド11のうち、紙幅方向に並んだ4つのヘッド11と、紙幅方向に並んだ残り4つのヘッド11とは、水平で且つ紙幅方向と直交する搬送方向に間隔をあけて配置されている。また、8つのヘッド11のうち、搬送方向の下流側に位置する4つのヘッド11は、搬送方向の上流側に位置する4つのヘッド11に対して、紙幅方向の右側にずれて配置されている。
【0013】
また、各ヘッド11は、複数のノズル10を有する。複数のノズル10は、紙幅方向に配列されることによってノズル列9を形成している。また、各ヘッド11は、搬送方向に並んだ4列のノズル列9を有している。そして、複数のノズル10からは、搬送方向の上流側のノズル列9を構成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0014】
また、8つのヘッド11が上記のように配置されていることにより、8つのヘッド11の複数のノズル10が、紙幅方向に記録用紙Sの全長にわたって配置されている。すなわち、ヘッドユニット2は、いわゆるラインヘッドである。ヘッドホルダ12は、紙幅方向を長手方向とする長方形の板状の部材であり、8つのヘッド11を上記位置関係で保持する。
【0015】
プラテン3は、ヘッドユニット2の下方に配置され、8つのヘッド11の複数のノズル10と対向する。プラテン3は、紙幅方向に記録用紙Sの全長にわたって延び、記録用紙Sを下方から支持する。
【0016】
搬送ローラ対4は、ヘッドユニット2及びプラテン3よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ対5は、ヘッドユニット2及びプラテン3よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ対4,5は、それぞれ、水平方向に延び、鉛直方向に並んだ一対のローラによって構成されている。搬送ローラ対4,5は、それぞれ、記録用紙Sを上記一対のローラで挟んで、搬送方向に搬送する。
【0017】
そして、プリンタ1では、搬送ローラ対4,5により記録用紙Sを搬送方向に搬送しながら、ヘッドユニット2を構成する8つのヘッド11の複数のノズル10から記録用紙Sに向けてインクを吐出させることによって、記録用紙Sへの記録を行うことができる。
【0018】
<ヘッド11>
次に、ヘッド11の構造について説明する。図2図4に示すように、ヘッド11は、流路ユニット21と、圧電アクチュエータ22とを備えている。
【0019】
<流路ユニット21>
流路ユニット21は、プレート31~39が下方からこの順に積層されることによって形成されている。プレート31は、例えばポリイミドなどの合成樹脂からなる。プレート32~39は、例えば、ステンレス等の金属材料からなる。
【0020】
また、流路ユニット21は、複数のノズル10と、複数の圧力室41と、複数のディセンダ42と、複数の第1絞り43と、複数の第2絞り44と、4つの第1共通流路45と、4つの第2共通流路46と、バイパス流路47とを有している。
【0021】
複数のノズル10は、プレート31に形成されており、上述の4列のノズル列9を形成している。
【0022】
複数の圧力室41は、プレート39に形成されている。複数の圧力室41は、複数のノズル10に個別のものである。また、圧力室41は、搬送方向を長手方向とする楕円形状である。また、各圧力室41の搬送方向における上流側の端部は、対応するノズル10と鉛直方向に重なっている。
【0023】
複数のディセンダ42は、プレート32~38に形成されている。ディセンダ42は、互いに対応するノズル10と圧力室41との組に対して個別に設けられており、鉛直方向に延びて、対応する圧力室41の搬送方向における上流側の端部とノズル10とを接続する。
【0024】
複数の第1絞り43は、プレート37,38に形成されている。より詳細に説明すると、複数の第1絞り43は、複数の圧力室41に対して個別に設けられている。第1絞り43は、搬送方向に延びている。第1絞り43の搬送方向の上流側の端部は、対応する圧力室41の搬送方向における下流側の端部と鉛直方向に重なっている。また、第1絞り43の搬送方向の上流側の端部は、鉛直方向にプレート38の全長にわたって延び、プレート38の上面に開口している。これにより、第1絞り43の搬送方向における上流側の端部が、対応する圧力室41の搬送方向における下流側の端部に接続されている。また、第1絞り43の搬送方向の下流側の端部は、鉛直方向にプレート32の下側の部分とプレート33の全長とにわたって延び、プレート33の下面に開口している。
【0025】
複数の第2絞り44は、プレート32の下側の部分に形成されている。複数の第2絞り44は、複数のディセンダ42に対して個別に設けられている。第2絞り44は、対応するディセンダ42の下端部の、搬送方向における下流側の端に接続され、ディセンダ42との接続部分から搬送方向の下流側に延びている。
【0026】
そして、流路ユニット21では、互いに対応するノズル10と圧力室41とディセンダ42と第1絞り43と第2絞り44とによって1つの個別流路40が形成されている。また、上述したようにヘッド11が4列のノズル列9を有しているのに対応して、流路ユニット21では、複数の個別流路40が紙幅方向に配列されることによって形成される個別流路列29が、搬送方向に4列に並んでいる。
【0027】
4つの第1共通流路45は、プレート36に形成されている。4つの第1共通流路45は、4列の個別流路列29に対応している。各第1共通流路45は、対応する個別流路列29を構成する複数の個別流路40にわたって紙幅方向に延びている。また、各第1共通流路45の搬送方向における下流側の端部は、対応する個別流路列29を構成する複数の個別流路の第1絞り43の、搬送方向における下流側の端部と鉛直方向に重なっている。これにより、各第1共通流路45が、対応する個別流路列29を構成する複数の個別流路の第1絞り43の、搬送方向における下流側の端部と接続されている。
【0028】
また、各第1共通流路45は、紙幅方向における右端部(本発明の「一方向の一方側の端部」)において、プレート36~39、及び、プレート39の上面に配置される後述する振動板51にわたって鉛直方向に延び、その上端が、振動板51の上面に開口した供給口45aとなっている。
【0029】
4つの第2共通流路46は、プレート32,33に形成されている。4つの第2共通流路46は、4列の個別流路列29に対応している。各第2共通流路46は、対応する個別流路列29を構成する複数の個別流路40にわたって紙幅方向に延びており、同じ個別流路列29に対応する第1共通流路45と鉛直方向に重なっている。そして、各第2共通流路46は、対応する個別流路列29を構成する複数の個別流路40の第2絞り44の、搬送方向における下流側の端と接続されている。
【0030】
また、各第2共通流路46は、紙幅方向において、第1共通流路45の右端よりもさらに右側まで延びている。また、各第2共通流路46は、紙幅方向における右端部において、プレート32~39及び後述する振動板51にわたって鉛直方向に延び、その上端が、振動板51の上面に開口した排出口46aとなっている。
【0031】
また、プレート34,35の第1共通流路45及び第2共通流路46と鉛直方向に重なる部分には、ダンパ室48が形成されている。ダンパ室48は、プレート34の上側の部分に形成された凹部と、プレート35の下側の部分に形成された凹部とによって形成された空間である。そして、プレート35のうち、第1共通流路45とダンパ室48との間に位置する部分が、弾性変形することによって第1共通流路45内のインクの圧力変動を抑えるダンパ35aとなっている。また、プレート34のうち、第2共通流路46とダンパ室48との間に位置する部分が、弾性変形することによって第2共通流路46内のインクの圧力変動を抑えるダンパ34aとなっている。
【0032】
バイパス流路47は、プレート33~36にわたって形成されている。バイパス流路47は、第1流路部分47aと、第2流路部分47bとを有する。
【0033】
第1流路部分47aは、プレート35,36にわたって形成されている。第1流路部分47aは、その上端部が、第1共通流路45の紙幅方向における左端部(本発明の「一方向の他方側の端部」)に接続されている。また、第1流路部分47aは、下方に向かうほど紙幅方向の左側に向かうように、鉛直方向に対して傾いて延びている。
【0034】
第2流路部分47bは、プレート33,34にわたって形成されている。第2流路部分47bは、下方に向かうほど紙幅方向の右側に向かうように、鉛直方向に対して傾いて延び、第1流路部分47aの下端と、第2共通流路46の紙幅方向における左端部(本発明の「一方向の他方側の端部」)とを接続する。
【0035】
これにより、第1共通流路45の紙幅方向における左端部と、第2共通流路46の紙幅方向における左端部とが、バイパス流路47を介して接続されている。また、バイパス流路47において、第1流路部分47aが延びる向きと、第2流路部分47bが延びる向きとのなす角度、すなわち、第1流路部分47aと第2流路部分47bとの間の折れ曲がり角度θが、40°程度となっている。
【0036】
また、4つの第1共通流路45の供給口45aは、図示しないチューブなどを介してポンプ61aに接続されている。ポンプ61aは、インクタンク62に接続されており、インクタンク62から供給口45aに向けてインクを送る。4つの第2共通流路46の排出口46aは、図示しないチューブなどを介してポンプ61bに接続されている。ポンプ61bは、インクタンク62に接続されており、排出口46aからインクタンク62に向けてインクを送る。
【0037】
そして、ポンプ61a,61bを駆動させて上記のようにインクを送ると、インクタンク62内のインクが供給口45aから第1共通流路45に流れ込む。第1共通流路45内のインクは、対応する複数の個別流路40を、第1絞り43、圧力室41、ディセンダ42、第2絞り44の順に流れ、対応する第2共通流路46に流れ込む。また、第1共通流路45内のインクは、バイパス流路47を介しても第2共通流路46に流れ込む。第2共通流路46内のインクは、排出口46aから流れ出て、インクタンク62に戻る。このように、本実施形態では、ヘッド11とインクタンク62との間でインクを循環させることができる。
【0038】
また、本実施形態では、上記のように、供給口45aとインクタンク62との間、及び、排出口46aとインクタンク62との間に、それぞれ、ポンプ61a,61bが設けられているが、ポンプ61a,61bのうち片方のみが設けられていてもよい。この場合でも、この片方のポンプを駆動させることによって、上述したのと同様、ヘッド11とインクタンク62との間でインクを循環させることができる。
【0039】
<圧電アクチュエータ22>
圧電アクチュエータ22は、振動板51と、圧電層52と、共通電極53と、複数の個別電極54とを有する。
【0040】
振動板51は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなる。振動板51、流路ユニット21(プレート39)の上面に配置され、複数の圧力室41を覆っている。また、上述したように、第1共通流路45及び第2共通流路46は、紙幅方向における右端部において、振動板51まで延び、振動板51の上面に、第1共通流路45の供給口45a及び第2共通流路46の排出口46aが開口している。なお、振動板51は、次に説明する圧電層52とは異なり、例えば合成樹脂材料等、圧電材料以外の絶縁性材料からなるものであってもよい。
【0041】
圧電層52は、圧電材料からなり、振動板51の上面に配置され、複数の圧力室41にわたって連続的に延びている。共通電極53は、振動板51と圧電層52との間に、その全域にわたって延びている。共通電極53は、図示しない電源に接続され、グランド電位に保持されている。
【0042】
複数の個別電極54は、圧電層52の上面に配置されている。複数の個別電極54は、複数の圧力室41に対して個別に設けられたものであり、対応する圧力室41の中央部と鉛直方向に重なっている。また、各個別電極54は、搬送方向の下流側に圧力室41と鉛直方向に重ならない位置まで延び、その先端部分が接点部54aとなっている。接点部54aは、図示しない配線部材を介して、図示しないドライバICと接続されている。ドライバICは、個別電極54にグランド電位及び所定の駆動電位(例えば20V程度)のいずれかを選択的に付与する。
【0043】
また、共通電極53及び複数の個別電極54が上記のように配置されているのに対応して、圧電層52の各個別電極54と共通電極53とに挟まれた部分が、鉛直方向に分極された活性部52aとなっている。
【0044】
ここで、圧電アクチュエータ22において、個別電極54にグランド電位が付与されている状態では、個別電極54と共通電極53とに電位差が生じておらず、振動板51及び圧電層52の圧力室41と鉛直方向に重なる部分はフラットな状態となっている。個別電極54に駆動電位が付与されている状態では、個別電極54と共通電極53との電位差により、活性部52aに、分極方向と平行な電界が発生する。この電界により、活性部52aが、分極方向と直交する方向(紙幅方向及び搬送方向)に収縮する。その結果、振動板51及び圧電層52の圧力室41と鉛直方向に重なる部分が、圧力室41側に凸となるように変形する。
【0045】
そして、圧電アクチュエータ22では、個別電極54の電位をグランド電位と駆動電位とで切り換えて、振動板51及び圧電層52の圧力室41と鉛直方向に重なる部分を変形させることによって、圧力室41の容積を変化させて圧力室41内のインクの圧力を変化させる。これにより、圧力室41に連通するノズル10からインクを吐出させることができる。
【0046】
また、本実施形態では、個別電極54の電位をグランド電位と駆動電位とで切り換えるための駆動波形を異ならせることによって、ノズル10から大玉、中玉、小玉の3種類のインクを吐出させることができる。中玉は小玉よりも体積が大きく、大玉は中玉よりも体積が大きい。
【0047】
<流路ユニット21における流路抵抗の関係>
本実施形態では、1組の第1共通流路45と第2共通流路46に接続されている複数の個別流路40による流路抵抗Rct、バイパス流路47の流路抵抗Rbp、第1共通流路45からバイパス流路47を経て第2共通流路46にインクが流れるときの曲がり損失ΔP、及び、バイパス流路47を流れるインクの流量Qが、
0.5<[Rct/(Rbp+(ΔP/Q))]<2.0
の関係を満たしている。
【0048】
ここで、流路抵抗Rctは、1つの個別流路40の流路抵抗Rc、1組の第1共通流路45と第2共通流路46に接続されている個別流路40の数をNとして、Rct=(Rc/N)によって算出される。
【0049】
また、本実施形態では、曲がり損失ΔPは、ζ=[(0.946×sin2(θ/2))+(2.05×sin4(θ/2))]によって算出される損失係数ζ、インクの流体密度ρ[kg・m3]、重力加速度g[m/s2]、液体の流速u[m/s]、h=ζ×(u2/(2×g))で算出される損失ヘッドh[m]として、ΔP=(ρ×g×h)によって算出される。
【0050】
また、本実施形態では、互いに対応する第1共通流路45、第2共通流路46、複数の個別流路40及びバイパス流路47において、それぞれ、複数の個別流路40及びバイパス流路47を介して第1共通流路45から第2共通流路46に流れるインクの流量の合計である総循環流量が、複数の個別流路40を構成するノズル10全てから大玉を吐出(最大限インクを吐出)させたときの、単位時間あたりのノズル10からのインクの吐出量の合計である総単位時間吐出量よりも大きくなるように、ポンプ61a,61bを駆動させている。
【0051】
また、本実施形態では、インクの粘度が7.0~8.0[cps]の範囲にある。これに対して、本実施形態では、流路抵抗Rctが、300~400[kPa/cc/sec]の範囲にある。また、流路抵抗Rbpが、200~300[kPa/cc/sec]の範囲にある。また、流量Qが0.01~0.1[cc/sec]の範囲となるように、ポンプ61a,61bが駆動され、(ΔP/Q)が、10~20[kPa/cc/sec]の範囲にある。
【0052】
<効果>
ここで、本実施形態と異なり、曲がり損失ΔPの影響を考慮せず、流路抵抗Rct及び流路抵抗Rbpのみを考慮して、例えば、0.5<(Rct/Rbp)<2.0の関係を満たすように流路を形成する場合を考える。この場合、曲がり損失ΔPが大きいと、バイパス流路47を介して第1共通流路45から第2共通流路46にインクが流れにくくなる。その結果、複数の個別流路40を介して第1共通流路45から第2共通流路46へ流れるインクの流量と、バイパス流路47を介して第1共通流路45から第2共通流路46へ流れるインクの流量とに大きな差が生じてしまう虞がある。
【0053】
なお、個別流路40においても曲がり損失は存在する。しかしながら、各個別流路40におけるインクの流量は、バイパス流路47におけるインクの流量に比べて十分小さい。そのため、個別流路40における曲がり損失は、バイパス流路47における曲がり損失に比べて無視できる程度に小さい。
【0054】
そこで、本実施形態では、流路抵抗Rct及び流路抵抗Rbpに加えて、曲がり損失ΔPの影響も考慮して、0.5<[Rct/(Rbp+(ΔP/Q))]<2.0の関係を満たすように流路を形成している。これにより、複数の個別流路40を介して第1共通流路45から第2共通流路46へ流れるインクの流量と、バイパス流路47を介して第1共通流路45から第2共通流路46へ流れるインクの流量とを均一にすることができる。
【0055】
また、本実施形態では、第1共通流路45及び第2共通流路46の紙幅方向の右端部に、それぞれ、供給口45a及び排出口46aが設けられ、バイパス流路47が、第1共通流路45の紙幅方向の左端部と、第2共通流路46の紙幅方向の左端部とを接続している。このような構成では、ヘッド11とインクタンク62との間でインクが循環するときに、第1共通流路45と第2共通流路46とでインクの流れの向きが逆になる。そのため、バイパス流路47を介して第1共通流路45から第2共通流路46にインクが流れるときに、インクの流れの方向が大きく変わり、曲がり損失ΔPが大きくなる。したがって、本実施形態では、流路抵抗Rct及び流路抵抗Rbpに加えて、曲がり損失ΔPの影響を考慮して、0.5<[Rct/(Rbp+(ΔP/Q))]<2.0の関係を満たすようにする意義は大きい。
【0056】
また、本実施形態では、バイパス流路47が、第1流路部分47aと第2流路部分47bとを有し、第1流路部分47aと第2流路部分47bとの間における折れ曲がり角度θが40°程度と、第1流路部分47aと第2流路部分47bとの間で比較的大きく折れ曲がっている。この場合、インクがバイパス流路47を流れるときに大きな曲がり損失が生じる。したがって、本実施形態では、流路抵抗Rct及び流路抵抗Rbpに加えて、曲がり損失ΔPの影響を考慮して、0.5<[Rct/(Rbp+(ΔP/Q))]<2.0の関係を満たすようにする意義は大きい。
【0057】
また、本実施形態では、互いに対応する第1共通流路45、第2共通流路46、複数の個別流路40及びバイパス流路47において、それぞれ、総循環流量が総単位時間吐出量よりも大きくなるように、ポンプ61a,61bを駆動させている。そのため、本実施形態では、ノズル10からインクが吐出される際に、バイパス流路47を流れるインクの流量の低下の割合が小さい。これにより、ノズル10からインクが吐出されることによる、バイパス流路47での曲がり損失ΔPの変化を小さくすることができる。
【0058】
また、本実施形態では、インクの粘度が7.0~8.0[cps]の範囲にあり、インクの粘度が比較的小さい。この場合、バイパス流路47における曲がり損失ΔPが、バイパス流路47を介した第1共通流路45から第2共通流路46へのインクの流れやすさに与える影響が大きい。したがって、本実施形態では、流路抵抗Rct及び流路抵抗Rbpに加えて、曲がり損失ΔPの影響を考慮して、0.5<[Rct/(Rbp+(ΔP/Q))]<2.0の関係を満たすようにする意義は大きい。
【0059】
また、本実施形態では、バイパス流路47を流れるインクの流量が0.01~0.1[cc/sec]の範囲にある。インクの流量がこのような範囲である場合、ポンプ61a,61bにより、バイパス流路47におけるインクの流量を所望の流量に調整しやすい。
【0060】
また、本実施形態では、インクの粘度が7.0~8.0[cps]の範囲にある場合において、流路抵抗Rctが300~400[kPa/cc/sec]の範囲にあり、流路抵抗Rbpが200~300[kPa/cc/sec]の範囲にあり、(ΔP/Q)が10~20[kPa/cc/sec]の範囲にある。インクの粘度が7.0~8.0[cps]の範囲にある場合に、Rct,Rbp,(ΔP/Q)をこのような範囲とすれば、0.5<[Rct/(Rbp+(ΔP/Q))]<2.0の関係を満たす。これにより、複数の個別流路40を介して第1共通流路45から第2共通流路46へ流れるインクの流量と、バイパス流路47を介して第1共通流路45から第2共通流路46へ流れるインクの流量とを均一にすることができる。
【0061】
また、本実施形態では、折れ曲がり角度θ、ζ=[(0.946×sin2(θ/2))+(2.05×sin4(θ/2))]によって算出される損失係数ζ、液体の流体密度ρ[kg・m3]、重力加速度g[m/s2]、液体の流速u[m/s]、h=ζ×(u2/(2×g))で算出される損失ヘッドh[m]として、前記曲がり損失ΔPを、ΔP=(ρ×g×h)によって算出される値としている。これにより、曲がり損失ΔPを正確に算出することができる。
【0062】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限られず、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0063】
上述の実施形態では、曲がり損失ΔPが、ΔP=(ρ×g×h)として算出されたものであったが、これには限られない。曲がり損失ΔPは、別の方法で算出されたもの、実験によって得られたもの等であってもよい。
【0064】
また、上述の実施形態では、インクの粘度が7.0~8.0[cps]の範囲にあるのに対して、流路抵抗Rctが300~400[kPa/cc/sec]の範囲にあり、流路抵抗Rbpが200~300[kPa/cc/sec]の範囲にあり、(ΔP/Q)が10~20[kPa/cc/sec]の範囲にあったが、これには限られない。例えば、インクの粘度が7.0~8.0[cps]の範囲にある場合において、0.5<[Rct/(Rbp+(ΔP/Q))]<2.0の関係を満たす範囲であれば、流路抵抗Rct、流路抵抗Rbp及び(ΔP/Q)のうち、少なくとも一部が、上記範囲から外れていてもよい。
【0065】
また、上述の実施形態では、流量Qが0.01~0.1[cc/sec]の範囲となるようにポンプ61a,61bを駆動させたが、これには限られない。流量Qが0.01[cc/sec]未満又は0.1[cc/sec]よりも大きくなるようにポンプ61a,61bを駆動させてもよい。
【0066】
また、上述の実施形態では、インクの粘度が7.0~8.0[cps]の範囲にあったが、これには限られない。インクの粘度は、2~14[cps]の範囲のうち、7.0[cp]未満の粘度、又は、8.0[cps]よりも大きい粘度であってもよい。この場合でもインクの粘度が比較的低いため、上述の実施形態で説明したのと同様、流路抵抗Rct及び流路抵抗Rbpに加えて、曲がり損失ΔPの影響を考慮して、0.5<[Rct/(Rbp+(ΔP/Q))]<2.0の関係を満たすようにする意義は大きい。
【0067】
あるいは、インクの粘度は、2[cps]未満であってもよいし、14[cps]よりも大きくてもよい。
【0068】
また、上述の実施形態では、互いに対応する第1共通流路45、第2共通流路46、複数の個別流路40及びバイパス流路47において、それぞれ、総循環流量が総単位時間吐出量よりも大きくなるように、ポンプ61a,61bを駆動させたが、これには限られない。
【0069】
いずれかの、互いに対応する第1共通流路45、第2共通流路46、複数の個別流路40及びバイパス流路47において、総循環流量が総単位時間吐出量以下となるように、ポンプ61a,61bを駆動させてもよい。
【0070】
また、上述の実施形態では、第1共通流路45と第2共通流路46とが鉛直方向に重なっていたが、これには限られない。
【0071】
変形例1では、図5図6に示すように、ヘッド101が、流路ユニット102と、圧電アクチュエータ103とを有する。
【0072】
流路ユニット102は、プレート111~117が下からこの順に鉛直方向に積層されることによって形成されている。また、流路ユニット102には、複数の個別流路120と、第1共通流路121と、第2共通流路122と、バイパス流路123とが形成されている。
【0073】
複数の個別流路120は、紙幅方向に配列されている。各個別流路120は、ノズル130と圧力室131とディセンダ132と第1絞り133と第2絞り134とによって形成されている。ノズル130、圧力室131、ディセンダ132及び第1絞り133は、それぞれ、上述の実施形態のノズル10、圧力室41、ディセンダ42及び第1絞り43と同様の形状の流路である。ただし、変形例1では、上述の実施形態と異なり、ノズル130がプレート111に形成されている。また、圧力室131がプレート117に形成されている。また、ディセンダ132は、プレート112~116にわたって形成され、ディセンダ42よりも鉛直方向の長さが短くなっている。また、第1絞り133がプレート115,116にわたって形成されている。
【0074】
第2絞り134は、プレート112の下側の部分に形成されている。第2絞り134は、ディセンダ132の下端部の、搬送方向における上流側の端に接続され、ディセンダ132との接続部分から搬送方向の上流側に延びている。
【0075】
第1共通流路121は、プレート113,114にわたって形成されている。第1共通流路121は、上述の実施形態の第1共通流路45と同様、複数の個別流路120にわたって紙幅方向に延び、複数の個別流路120の第1絞り133と接続されている。
【0076】
また、第1共通流路121は、紙幅方向における右端部(本発明の「一方向の一方側の端部」)において、プレート113~117にわたって鉛直方向に延び、その上端が、プレート117の上面に開口した供給口121aとなっている。供給口121aには、ポンプ142aが接続されている。ポンプ142aは、インクタンク143に接続され、インクタンク143から供給口121aに向けてインクを送る。
【0077】
また、プレート112の下側の部分のうち、第1共通流路121と鉛直方向に重なる部分には凹部112aが形成されている。これにより、プレート112の第1共通流路121と凹部112aとの間の部分が、弾性変形して第1共通流路121内のインクの圧力変動を抑えるダンパ112bとなっている。
【0078】
第2共通流路122は、プレート112~114にわたって形成されている。第2共通流路122は、複数の個別流路120よりも、搬送方向における上流側に位置している。第2共通流路122は、複数の個別流路120にわたって紙幅方向に延び、複数の個別流路120の第2絞り134の、搬送方向における上流側の端と接続されている。
【0079】
また、第2共通流路122は、紙幅方向における右端部(本発明の「一方向の一方側の端部」)において、プレート112~117にわたって鉛直方向に延び、その上端が、プレート117の上面に開口した排出口122aとなっている。排出口122aには、ポンプ142bが接続されている。ポンプ142bは、インクタンク143に接続され、排出口122aからインクタンク143に向けてインクを送る。
【0080】
また、プレート115の上側の部分のうち、第2共通流路122と鉛直方向に重なる部分には凹部115aが形成されている。これにより、プレート115の第2共通流路122と凹部115aとの間の部分が、弾性変形して第2共通流路122内のインクの圧力変動を抑えるダンパ115bとなっている。
【0081】
バイパス流路123は、プレート114に形成されている。バイパス流路123は、第1流路部分123aと、第2流路部分123bとを有する。
【0082】
第1流路部分123aは、第1共通流路121の紙幅方向における左端部(本発明の「一方向の他方側の端部」)に接続されている。また、第1流路部分123aは、搬送方向の上流側に向かうほど、紙幅方向の左側に向かうように、搬送方向に対して傾いて延びている。
【0083】
第2流路部分123bは、搬送方向の上流側に向かうほど紙幅方向の右側に向かうように、搬送方向に対して傾いて延び、第1流路部分123aの搬送方向における上流側の端と、第2共通流路122の紙幅方向における左端部(本発明の「一方向の一方側の端部」)とを接続する。
【0084】
これにより、第1共通流路121の紙幅方向における左端部と、第2共通流路122の紙幅方向における左端部とが、バイパス流路123を介して接続されている。また、バイパス流路123において、第1流路部分123aが延びる向きと、第2流路部分123bが延びる向きとのなす角度、すなわち、第1流路部分123aと第2流路部分123bとの間の折れ曲がり角度θが、40°程度となっている。
【0085】
圧電アクチュエータ103は、上述の実施形態の圧電アクチュエータ22のうち、1つの個別流路列29に対応する部分と同様のものである。
【0086】
なお、変形例1に係るヘッド101は、1色のインクを吐出するものであり、ヘッド101によって構成されるヘッドユニットも1色のインクを吐出するものである。上記1色のインクを吐出するヘッドユニットによってプリンタを構成する場合、例えば、ヘッドユニットを搬送方向に4つ並べて配置し、搬送方向の上流側に位置するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクを吐出させるようにする。これにより、プリンタを、4色のインクによって記録を行うものとすることができる。
【0087】
また、上述の実施形態及び変形例1では、バイパス流路の第1流路部分と第2流路部分との間の折れ曲がり角度θが40°程度であったが、これには限られない。例えば、折れ曲がり角度θは40°よりも大きくてもよい。あるいは、折れ曲がり角度θは40°よりも小さくてもよい。
【0088】
また、バイパス流路は、第1流路部分と第2流路部分とを有し、第1流路部分と第2流路部分との間で折れ曲がった流路であることにも限られない。例えば、バイパス流路は、円弧等の曲線に沿って連続的に曲がって延びる流路であってもよい。
【0089】
また、以上の例では、第1共通流路及び第2共通流路の、長さ方向の一方側の端部に、それぞれ、供給口及び排出口が設けられ、バイパス流路が、第1共通流路と第2共通流路の長さ方向の他方側の端部同士を接続している。しかしながら、これには限られない。
【0090】
変形例2では、図7に示すように、ヘッド150の流路ユニット151が、紙幅方向に延びた第1共通流路161と第2共通流路162とを備えている。第1共通流路161と第2共通流路162とは、搬送方向に間隔をあけて配置されており、第2共通流路162が、第1共通流路161よりも搬送方向の上流側に位置している。また、第1共通流路161の紙幅方向の中央部に供給口161aが設けられている。また、第2共通流路162の紙幅方向の中央部に排出口162aが設けられている。
【0091】
供給口161aには、ポンプ171aが接続されている。ポンプ171aは、インクタンク172に接続され、インクタンク172から供給口161aに向けてインクを送る。排出口162aには、ポンプ171bが接続されている。ポンプ171bは、インクタンク172に接続され、排出口162aからインクタンク172に向けてインクを送る。
【0092】
また、流路ユニット151は、2つのバイパス流路163、164を備えている。バイパス流路163は、第1共通流路161の紙幅方向の左端部と、第2共通流路162の紙幅方向の左端部とを接続する。また、バイパス流路163は、変形例1のバイパス流路123と同様の形状の流路である。
【0093】
バイパス流路164は、第1共通流路161の紙幅方向の右端部と、第2共通流路162の紙幅方向の右端部とを接続する。また、バイパス流路164は、搬送方向と平行な軸に対して、バイパス流路163と対称な形状の流路である。
【0094】
また、流路ユニット151の、紙幅方向において、供給口161a及び排出口162aと、バイパス流路163との間の部分に、紙幅方向に配列された複数の個別流路165が設けられている。同様に、紙幅方向において、供給口161a及び排出口162aとバイパス流路164との間の部分に、紙幅方向に配列された複数の個別流路165が設けられている。個別流路165は、変形例1の個別流路120と同様の流路であり、第1共通流路161及び第2共通流路162と接続されている。
【0095】
また、これに対応して、ヘッド150では、流路ユニット151の上面のうち、供給口161a及び排出口162aと、バイパス流路163との間の部分、及び、供給口161a及び排出口162aと、バイパス流路163との間の部分に、それぞれ、圧電アクチュエータ152が配置されている。各圧電アクチュエータ152は、変形例1の圧電アクチュエータ103と同様のものである。
【0096】
そして、変形例2では、供給口161a及び排出口162aと、バイパス流路163との間の複数の個別流路165による流路抵抗Rct1、バイパス流路163の流路抵抗Rbp1、第1共通流路161からバイパス流路163を経て第2共通流路162にインクが流れるときの曲がり損失ΔP1、及び、バイパス流路163を流れるインクの流量Q1が、
0.5<[Rct1/(Rbp1+(ΔP1/Q1))]<2.0
の関係を満たしている。
【0097】
同様に、変形例2では、供給口161a及び排出口162aと、バイパス流路164との間の複数の個別流路165による流路抵抗Rct2、バイパス流路163の流路抵抗Rbp2、第1共通流路161からバイパス流路164を経て第2共通流路162にインクが流れるときの曲がり損失ΔP2、及び、バイパス流路164を流れるインクの流量Q2が、
0.5<[Rct2/(Rbp2+(ΔP2/Q2))]<2.0
の関係を満たしている。
【0098】
また、以上の例では、供給口を有する第1共通流路が、複数の個別流路の第1絞りに接続され、排出口を有する第2共通流路が、複数の個別流路の第2絞りに接続されていたが、これには限られない。例えば、供給口を有する第1共通流路が、複数の個別流路の第2絞りに接続され、排出口を有する第2共通流路が、複数の個別流路の第1絞りに接続されていてもよい。すなわち、以上の例において、ヘッドとインクタンクとの間でインクが循環するときのインクの流れの向きが、上述したのと逆であってもよい。
【0099】
また、以上では、ラインヘッドを構成するヘッドに本発明を適用したが、これには限られない。キャリッジに搭載され、キャリッジとともに移動しながらインクを吐出するシリアル式のヘッドに本発明を適用することも可能である。
【0100】
また、以上では、ノズルからインクを吐出するヘッドに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。インク以外の液体を吐出する液体吐出ヘッドに本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0101】
10 ノズル
11 ヘッド
40 個別流路
45 第1共通流路
45a 供給口
46 第2共通流路
46a 排出口
47 バイパス流路
47a 第1流路部分
47b 第2流路部分
101 ヘッド
120 個別流路
121 第1共通流路
121a 供給口
122 第2共通流路
122a 排出口
123 バイパス流路
123a 第1流路部分
123b 第2流路部分
130 ノズル
150 ヘッド
161 第1共通流路
161a 供給口
162 第2共通流路
162 排出口
163,164 バイパス流路
165 個別流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7