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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】アウターロータ型モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 21/22 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
H02K21/22 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020571865
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2020031142
(87)【国際公開番号】W WO2021033688
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2019152198
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 裕一
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-282500(JP,A)
【文献】特表2006-517126(JP,A)
【文献】特表2008-516581(JP,A)
【文献】特許第6155544(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒状のハウジングを有するロータと、
前記ロータの中心軸に設けられたシャフトと、
を備え、
前記ハウジングは、前記シャフトの一端側において円板部を有し、
前記円板部は、基準面と、それぞれ径方向に延び、かつ前記基準面から軸方向に突出する複数の突出部と、を有し、
前記円板部において、前記複数の突出部の隣接する突出部がなす角度のうち少なくとも1組の異なる角度の組合せが存在するように、前記複数の突出部が設けられ
前記複数の突出部のうち基準とする基準突出部が延びる径方向である基準方向に対して、前記基準方向よりも一方側に位置する複数の突出部と、前記基準方向よりも他方側に位置する複数の突出部とが互いに線対称に配置され、
前記基準方向は1つである、
アウターロータ型モータ。
【請求項2】
前記複数の突出部は、径方向に同じ長さに延びる、
請求項1に記載されたアウターロータ型モータ。
【請求項3】
前記複数の突出部のうち基準とする基準突出部が延びる径方向と、前記複数の突出部のうち前記基準突出部以外の突出部が延びる径方向とが一致しない、
請求項1又は2に記載されたアウターロータ型モータ。
【請求項4】
前記円板部は、隣接する突出部の間において、前記基準面に設けられる貫通孔と、前記基準面から軸方向に突出する冷却用フィンと、を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載されたアウターロータ型モータ。
【請求項5】
前記複数の突出部の数は奇数である、
請求項1から4のいずれか一項に記載されたアウターロータ型モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、アウターロータ型モータに関する。
【背景技術】
【0002】

従来のアウターロータ型モータにおいて、ハウジングにロータが設けられているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたアウターロータ型モータでは、ロータに放熱孔や冷却フィンが形成され、空気の循環をしやすくし、過熱による構成部品の損傷も防止できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】

【文献】日本国公表公報特表2008-521542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】

ところで、例えば回転槽を有するドラム式洗濯機等に搭載されているアウターロータ型モータから発生する騒音を低減させる方策として、回転槽を弾性支持部材で支持することが知られている。

しかし、かかる弾性支持部材はゴム材であり、経年劣化の弊害がある上、防振低減性能が不十分な場合がある。アウターロータ型モータでは、コギングトルクによる回転方向の振動だけでなく、ロータの径方向および回転軸方向にも振動が発生し、1方向にのみ機能する弾性支持部材では十分に防振することができない。アウターロータ型モータから発生する騒音には、コギングトルクに起因する低周波数帯(~300Hz)だけでなく、アウターロータのハウジングからの直接放射音も含む高周波数帯(300~2000Hz)の騒音も含まれる。
【0005】

そこで、本発明は、アウターロータ型モータにおいて動作時の騒音を従来よりも低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】

本願の例示的な第1発明は、有底円筒状のハウジングを有するロータと、前記ロータの中心軸に設けられたシャフトと、を備え、前記ハウジングは、前記シャフトの一端側において円板部を有し、前記円板部は、基準面と、それぞれ径方向に延び、かつ前記基準面から軸方向に突出する複数の突出部と、を有し、前記円板部において、前記複数の突出部の隣接する突出部がなす角度のうち少なくとも1組の異なる角度の組合せが存在するように、前記複数の突出部が設けられる、アウターロータ型モータである。
【発明の効果】
【0007】

本発明によれば、アウターロータ型モータにおいて動作時の騒音を従来よりも低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】

図1】第1の実施形態のアウターロータ型モータの断面図である。
図2】(a)~(d)はそれぞれ、ロータハウジングの固有振動モードを示す図である。
図3】(a),(b)はそれぞれ、ロータハウジングの次元での振動モードを示す図である。
図4】ロータハウジングに働く電磁力による振動モード(電磁力モード)を模式的に示す図である。
図5】(a)は参考として従来のロータハウジングにおけるリブ配置を示す図であり、(b)は第1の実施形態の第1例のロータハウジングにおけるリブ配置を示す図である。
図6】(a)は参考として従来のロータハウジングにおけるリブ配置を示す図であり、(b)は第1の実施形態の第2例のロータハウジングにおけるリブ配置を示す図である。
図7】(a)は参考として従来のロータハウジングにおけるリブ配置を示す図であり、(b)は第1の実施形態の第3例のロータハウジングにおけるリブ配置を示す図である。
図8】(a)は参考として従来のロータハウジングにおけるリブ配置を示す図であり、(b)は第1の実施形態の第4例のロータハウジングにおけるリブ配置を示す図である。
図9】従来と第1の実施形態のアウターロータ型モータにおいて、周波数に対する振動応答レベルを示す図である。
図10】第2の実施形態のアウターロータ型モータにおいてロータハウジングの一例を示す斜視図である。
図11】従来と第2の実施形態のアウターロータ型モータにおいて、周波数に対する音圧レベルを示す図である。
【0009】

以下、本発明のアウターロータ型モータの実施形態について説明する。
【0010】

(1)第1の実施形態

(1-1)第1の実施形態のアウターロータ型モータの概略構成

先ず、本実施形態のアウターロータ型モータの概略構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態のアウターロータ型モータ1の断面図である。

図1に示すように、本実施形態のアウターロータ型モータは、回転軸であるシャフト5を収容する円筒状のスリーブ10を有する。円筒状のスリーブ10の内周側には、軸受2,4が装着されている。軸受2,4により、シャフト5が回転自在に支持される。
【0011】

シャフト5には、ロータ3が圧入固定されている。このロータ3は、有底円筒状のロータハウジング6と、ロータハウジング6の内周側に固定された永久磁石7とを有する。なお、本実施形態のアウターロータ型モータの極対数は如何なる数であってもよい。

ロータハウジング6の中心部には、シャフト5が圧入される。シャフト5は、ロータ3の中心軸に設けられる。
【0012】

ロータハウジング6は、回転軸直交方向に延びる円板部61と、円板部61の外縁部から回転軸方向に延びる円筒状の円筒部62とを備え、有底円筒状になっている。ロータハウジング6は、金属製であってヨークとしても機能する。なお、ロータハウジング6は、樹脂製であってもよい。
【0013】

円筒状のスリーブ10の外周側には、鉄心81にコイル82を巻装したステータ8が固定されている。ステータ8は、ロータハウジング6の円筒部62の内側に配置され、永久磁石7と対峙する。

このように構成されたアウターロータ型モータ1は、コイル82に電力が供給されるとステータ8が電磁力を発生し、回転する電磁力を受けてシャフト5およびロータ3が回転する。
【0014】

ロータハウジング6の円板部61においてステータ8と対向する底面6s(基準面の一例)には、シャフト5の軸方向に突出する複数のリブRb(突出部の一例)が形成されている。この複数のリブRbは、アウターロータ型モータ1から発生する騒音を低減するために設けられている。複数のリブRbの配置については後述する。
【0015】

(1-2)ロータハウジング6のリブ配置の考え方

次に、図2図4を参照してロータハウジングのリブ配置の考え方について説明する。

図2は、ロータハウジングの固有振動モードを示す図である。図3は、ロータハウジングの次元での振動モードを示す図である。図4は、ロータハウジングに働く電磁力による振動モードを模式的に示す図である。
【0016】

ロータハウジング6の円板部61のような円板構造は、固有振動モードを有する。リブを有していない場合の円板構造の固有振動モードの一例を図2および図3に示す。

図2に示すように、円板構造は、その円形の面において直径を節(節線)とする振動モードとなる。節線の数に応じて、図2(a)~(d)に例示する複数の振動モードが存在する。ここで、図2(a)は2つの節線を有する振動モード、図2(b)は3つの節線を有する振動モード、図2(c)は4つの節線を有する振動モード、図2(d)は5つの節線を有する振動モード、をそれぞれ示している。

図3(a),(b)は、図2(a)の2つの節線を有する振動モードを3次元で示している。
【0017】

円板構造における振動モードの節線の数によって共振時の周波数が異なり、節線の数×基本周波数に基づく周波数が共振周波数となる。

図2に示すように、各振動モードでの節線は、円板構造の円形の面を等配分するように構成される。そのため、この円板構造の面にリブを等配分で配置した場合には、その振動モードは図4に例示したものと同一となり、やはり節線の数×基本周波数に基づく周波数が共振周波数となる。
【0018】

図4に示すように、ロータハウジングに対する加振源である電磁力は、回転軸の半径方向(つまりラジアル方向)にロータハウジングを振動させる振動モード(「電磁力モード」という。)を有している。図4(b)は、図4(a)よりも次数が高い振動モードの例である。電磁力モードの次数は偶数となる。
【0019】

電磁力モードの次数(偶数)と、ロータハウジングの円板構造の固有振動モードの次数とが一致した場合に、ロータハウジングから放射される音圧レベルが高くなり、不快に(つまり、喧しく)感じられる騒音となると考えられる。つまり、アウターロータのハウジングは円板構造に起因する固有振動モードを有するが、当該固有振動モードと、ハウジングの加振源である電磁力のラジアル方向の振動モードとで周波数が一致すると、大きな騒音が現れると考えられる。
【0020】

そこで、本実施形態のロータハウジング6では、ロータハウジング6の底面6sにおいて等配分とならないようにリブRbを配置することで、固有振動モードを図2に例示したような節線を有するモードから変化させ、それによって底面6sの変位を抑制するように電磁力を作用させるようにする。つまり、ロータハウジングを、電磁力モードによる加振が行われるときに、固有振動モードによる周期的な変位がし難い円板構造にすることで、特定の周波数に卓越したピークを有する音圧レベルが生じなくなり騒音が低下すると考えられる。
【0021】

(1-3)本実施形態のアウターロータ型モータ1のリブの配置例

本実施形態のアウターロータ型モータ1のロータハウジング6のリブRbの配置例を、図5図8を参照して説明する。

上述したリブ配置の考え方の下、本実施形態のロータハウジング6では、円板部61の底面6sにおいて、複数のリブの隣接するリブがなす角度のうち少なくとも1組の異なる角度の組合せが存在するように、複数のリブが設けられる。つまり、ロータハウジング6の底面6sには、等配分とならないようにリブRbが配置される。
【0022】

図5(a)は参考として従来のロータハウジングにおけるリブ配置を示す図であり、図5(b)は本実施形態の第1例のロータハウジングにおけるリブ配置を示す図である。

図5(a)は、従来のロータハウジングの円板部61Pの円形の底面6sに10本のリブRb1~Rb10が等配分で配置された例を示している。例えば、リブRb1を通る仮想線L1上にリブRb6が配置される。円板部61Pでは、複数のリブの隣接するリブがなす角度がすべて同一(36度)である。
【0023】

それに対して、図5(b)に示すように、本実施形態の第1例のロータハウジング6の円板部61では、底面6sに11本のリブRb1~Rb11が不等配分で配置される。例えば、リブRb1を通る仮想線L1上に他の如何なるリブも配置されない。円板部61では、複数のリブの隣接するリブがなす角度のうち少なくとも1組の異なる角度の組合せが存在する。
【0024】

第1例では、リブRb1を基準として時計回りに見たときの各リブRb1,Rb2,…,Rb11の角度は、0,36,61,100,132,160,200,228,260,299,324度である。各リブの角度は、これに限定されないが、このように角度を設定することにより、以下のリブの組合せで回転バランスがとれた状態となる。

・リブRb1と、リブRb6およびリブRb7との回転バランス

・リブRb2と、リブRb7およびリブRb8との回転バランス

・リブRb3と、リブRb8およびリブRb9との回転バランス

・リブRb4と、リブRb9およびリブRb10との回転バランス

なお、上記角度設定では、リブRb2に対するリブRb7およびリブRb8、リブRb3に対するリブRb8およびリブRb9、リブRb4に対するリブRb9およびリブRb10は、それぞれ、完全には線対称となっていないが、線対称に近い状態となっている。
【0025】

図6(a)は参考として従来のロータハウジングにおけるリブ配置を示す図であり、図6(b)は本実施形態の第2例のロータハウジングにおけるリブ配置を示す図である。

図6(a)は、従来のロータハウジングの円板部61Qの円形の底面6sに8本のリブRb1~Rb8が等配分で配置された例を示している。例えば、リブRb1を通る仮想線L1上にリブRb5が配置される。円板部61Qでは、複数のリブの隣接するリブがなす角度がすべて同一(45度)である。
【0026】

それに対して、図6(b)に示すように、本実施形態の第2例のロータハウジング6の円板部61Aでは、底面6sに8本のリブRb1~Rb8が不等配分で配置される。つまり、円板部61Aでは、複数のリブの隣接するリブがなす角度のうち少なくとも1組の異なる角度の組合せが存在する。
【0027】

第2例では、リブRb1を基準として時計回りに見たときの各リブRb1,Rb2,…,Rb11の角度は、0,38,80,128,180,232,280,322度である。各リブの角度は、これに限定されないが、このように角度を設定することにより、以下のリブの組合せで回転バランスがとれた状態となる。

・リブRb1と、リブRb4,Rb5,Rb6との回転バランス

・リブRb2と、リブRb5,Rb6,Rb7との回転バランス

・リブRb3と、リブRb6,Rb7,Rb8との回転バランス

・リブRb4と、リブRb1,Rb7,Rb8との回転バランス

なお、上記角度設定では、リブRb1~Rb4にそれぞれ対応する3個のリブが、完全には線対称となっていないが、線対称に近い状態となっている。
【0028】

第1例および第2例のいずれの場合でも上述した回転バランスを良好にとる観点から、複数のリブのうち基準とする基準リブが延びる径方向である基準方向に対して、複数のリブのうち基準リブ以外の2つのリブ(第1の突出部と第2の突出部の例)が互いに線対称である径方向に延びるように配置することが好ましい。例えば、第1例(図5(b))では、リブRb1を基準リブとした場合には、リブRb1の基準方向(仮想線L1に沿った方向)に対して、2つのリブRb6,Rb7が互いに線対称である方向に延び、2つのリブRb5,Rb8が互いに線対称である方向に延び、2つのリブRb4,Rb9が互いに線対称である方向に延び、2つのリブRb3,Rb10が互いに線対称である方向に延び、2つのリブRb2,Rb11が互いに線対称である方向に延びることが好ましい。
【0029】

図5(b)の第1例はリブ本数が奇数である場合の例であり、図6(b)の第2例はリブ本数が偶数である場合の例であるが、より好ましいのはリブ本数が奇数の場合である。これは、前述したように、リブの本数を奇数とすれば円板構造のロータハウジング6は、次数が偶数となる固有振動モードが生じ難く、また、電磁力モードの次数が偶数であることから、ロータハウジング6の振動モードが抑制される方向に電磁力が作用するためである。
【0030】

また、リブの本数が偶数又は奇数の如何に関わらず、複数のリブのうち任意の2本のリブが一直線にならないことが好ましい。言い換えれば、複数のリブのうち基準とする基準リブが延びる径方向と、複数のリブのうち基準リブ以外のリブが延びる径方向とが一致しないようにすることが好ましい。それによって、ロータハウジング6について特定の固有振動モードが生じ難くなることから、騒音低減に有利となる。

なお、この場合も、複数のリブのうち如何なるリブも基準リブとなりうる。
【0031】

図7(a)は参考として従来のロータハウジングにおけるリブ配置を示す図であり、図7(b)は本実施形態の第3例のロータハウジングにおけるリブ配置を示す図である。

図7(a)は、従来のロータハウジングの円板部61Rの円形の底面6sに10本のリブRb1~Rb10が等配分で配置された例を示している。例えば、リブRb1を通る仮想線L1上にリブRb6が配置される。円板部61Rでは、複数のリブの隣接するリブがなす角度がすべて同一(36度)である。
【0032】

それに対して、図7(b)に示すように、本実施形態の第3例のロータハウジング6の円板部61Bでは、底面6sに9本のリブRb1~Rb9が不等配分で配置される。例えば、リブRb1を通る仮想線L1上に他の如何なるリブも配置されない。円板部61Bでは、複数のリブの隣接するリブがなす角度のうち少なくとも1組の異なる角度の組合せが存在する。
【0033】

第3例では、リブRb1を基準として時計回りに見たときの各リブRb1,Rb2,…,Rb9の角度 は、0,46,82,115,156,204,245,278,312度であるが、各リブの角度は、これに限定されない。
【0034】

図8(a)は参考として従来のロータハウジングにおけるリブ配置を示す図であり、図8(b)は本実施形態の第4例のロータハウジングにおけるリブ配置を示す図である。

図8(a)は、従来のロータハウジングの円板部61Sの円形の底面6sに8本のリブRb1~Rb8が等配分で配置された例を示している。例えば、リブRb1を通る仮想線L1上にリブRb5が配置される。円板部61Sでは、複数のリブの隣接するリブがなす角度がすべて同一(45度)である。
【0035】

それに対して、図8(b)に示すように、本実施形態の第4例のロータハウジング6の円板部61Cでは、底面6sに7本のリブRb1~Rb7が不等配分で配置される。例えば、リブRb1を通る仮想線L1上に他の如何なるリブも配置されない。円板部61Cでは、複数のリブの隣接するリブがなす角度のうち少なくとも1組の異なる角度の組合せが存在する。
【0036】

第4例では、リブRb1を基準として時計回りに見たときの各リブRb1,Rb2,…,Rb7の角度 は、0,59,99,148,212,261,301度であるが、各リブの角度は、これに限定されない。
【0037】

なお、図1に示した例では、リブRbは、ロータハウジング6の円板部61においてステータ8と対向する底面6sに設けられている例を示しているが、その限りではない。リブRbは、円板部61の底面6sとは反対側の上面(基準面の一例)に設けてもよい。
【0038】

図9に、図5(a)に示した従来のリブ配置と、図5(b)に示した本実施形態の第1例のリブ配置の場合とにおいて、周波数に対する振動応答レベルを示す。

図9に示すように、ロータハウジング6の円板部61の底面6sにリブを不等配分で配置することで、従来のようにリブを等配に配置する場合と比較して、振動応答レベルがピークとなる周波数が分散され、特定の周波数に卓越したピークを有することが回避されたことがわかる。
【0039】

(2)第2の実施形態

次に、第2の実施形態に係るアウターロータ型モータについて、図10および図11を参照して説明する。図10は、貫通孔および冷却用フィンを備えた例示的なロータハウジングの斜視図である。

本実施形態のアウターロータ型モータは、ロータハウジングが第1の実施形態と異なるのみである。したがって、本実施形態においても、ロータハウジングには、円板部の底面にリブが不等配分で配置される。

以下では、ロータハウジングに注目して説明し、他の部位についての重複説明は省略する。
【0040】

図10に示すように、本実施形態のロータハウジング6Cは、第1の実施形態のロータハウジング6と同様に円板構造を有しているが、円板部61Cに貫通孔611および冷却用フィン612が設けられている点で、第1の実施形態のロータハウジング6と異なる。貫通孔611は、ロータハウジング6Cの上面6ts(底面6sとは反対側の面)に、周方向に配列されて形成される。冷却用フィン612は、各貫通孔611に空気を導入するために各貫通孔611において上面6tsから回転軸の方向に突出するように形成される。
【0041】

貫通孔と冷却用フィンを備えたロータハウジングでは、回転に伴い羽根ピッチ音といわれる周期的な騒音が発生する場合がある。羽根ピッチ音が発生する原理は以下のとおりである。

冷却用フィンが回転すると、冷却用フィンの通過に伴って外部の空気が貫通孔からモータ内部に流入する。空気はモータ内部に流入する際に収縮し、モータ内部に入ったときに拡張する。このような空気の収縮と拡張は、各冷却用フィンが通過する時間差だけずれて繰り返し行われる。この空気の収縮と拡張の繰り返しによって羽根ピッチ音が発生する。
【0042】

空気の収縮による空気の圧力変動を音圧P(t)とし、冷却用フィンが通過するときに空気の圧力(すなわち音圧)が最大となると想定する。

ここで、冷却用フィンが上面に等配分で配置されていたならば、音圧P(t)は以下の式(1)で表される周期的なものとなる。



P(t)=cos(ωz・t)…(1)



なお、式(1)において、ωz=2πf×z(f:回転周波数(Hz),z:冷却用フィンの枚数)である。
【0043】

すなわち、図10において、仮に、冷却用フィン612が上面6tsに等配分で配置されていたならば、式(1)で規定される音圧レベルのピークが所定の周波数で発生し、耳障りな騒音となる。

そこで、本実施形態の変形例に係るロータハウジング6Cでは、貫通孔611およびそれに伴う冷却用フィン612を上面6ts(基準面の一例)に不等配分で配置する。具体的には、ロータハウジング6Cの円板部61Cが、隣接するリブの間において、貫通孔611と冷却用フィン612とを有するように構成する。前述したように、円板部61Cの底面6sに複数のリブが不等配分で配置される。そのため、複数のリブの隣接するリブ間に貫通孔611を設け、貫通孔611に冷却用フィン612を配置することで、自ずと円板部61Cの上面6tsには、冷却用フィン612が周方向に亘って不等配分で配置される。このように冷却用フィン612を配置することで、特定の周波数でピークを持つ音圧を発生させることがなく、羽根ピッチ音を低減することができる。
【0044】

図11は、周波数に対する音圧レベルの実測結果を示す図である。図11(a)は、従来のアウターロータ型モータとして、図5(a)に示したリブ配置において隣接するリブ間に貫通孔と冷却用フィンを設けた場合を示す。それに対して、図11(b)は、図5(b)に示したリブ配置において隣接するリブ間に貫通孔と冷却用フィンを設けた場合を示す。

図11に示すように、図11(b)の場合には、図11(a)と比較して音圧レベルのピークが大幅に低下したことがわかる。具体的には、従来のアウターロータ型モータにおいて発生していた270Hz(1次)、540Hz(2次)、810Hz(3次)において生ずる音圧レベルのピークが最大12dB低下したことが確認された。
【0045】

以上、本発明のアウターロータ型モータの実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】

1…アウターロータ型モータ 2,4…軸受 3…ロータ 5…シャフト 6,6C…ロータハウジング 61,61A,61B,61C,61P,61Q…円板部 62…円筒部 6s…底面 6ts…上面 611…貫通孔 612…冷却用フィン 7…永久磁石 8…ステータ 81…鉄心 82…コイル 10…スリーブ L1…仮想線 Rb(Rb1~Rb11)…リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11