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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】引戸
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/06 20060101AFI20240820BHJP
   E06B 7/28 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
E05D15/06 103
E06B7/28 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021013512
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022117035
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 寿美江
(72)【発明者】
【氏名】梶田 秀之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 深雪
(72)【発明者】
【氏名】国吉 真夕
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-041844(JP,U)
【文献】登録実用新案第3213150(JP,U)
【文献】実開昭57-155296(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第111720006(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/00 - 15/58
E06B 7/00 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口を開閉するために走行面上を走行可能な引戸であって、
引戸本体と、
前記引戸本体の下端部に設けられた車輪と、
前記引戸本体に設けられ、前記走行面上の異物を回収するための回収部と、
前記車輪に前記異物を吸着させるための前記車輪の回転領域として予め設定された吸着領域において前記車輪に対して吸着力を与えるとともに、前記異物を前記回収部に対して導くための前記車輪の回転領域として予め設定された解除領域において前記吸着力を解除する吸着機構と、を有する引戸。
【請求項2】
請求項1に記載の引戸において、
前記吸着機構は、前記車輪の外周面に形成された吸着孔と、前記車輪に前記異物を吸着させるための吸着力を付与するように前記吸着孔から空気を吸引する吸引装置と、前記吸着孔から前記吸引装置まで空気を導くための案内機構と、を有する引戸。
【請求項3】
請求項2に記載の引戸において、
前記案内機構は、前記車輪の軸心に沿って形成された中心通路と、前記中心通路から前記吸着孔まで延びる放心通路と、前記解除領域で前記中心通路から前記放心通路を遮断し、前記吸着領域で前記中心通路に対して前記放心通路を開放するように前記車輪の回転に応じて前記放心通路に対して相対変位可能に設けられた遮断部材と、を有する引戸。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の引戸において、
前記解除領域における前記車輪の外周面を覆う第1の面を有するとともに、前記異物を前記車輪の外周面から引き離す引き離し部をさらに備え、
前記解除領域は、前記第1の面により覆われた部分から回転方向の両側に延びる領域を有する、引戸。
【請求項5】
請求項4に記載の引戸において、
前記引き離し部は、前記第1の面の径方向外側で前記第1の面の端部から鋭角を持って前記第1の面の径方向外側に延びるとともに、前記車輪の外周面から引き離された前記異物を前記回収部へ誘導する誘導面と、を有する、引戸。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行面上の異物を回収する引戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引戸の開閉をスムーズに保つために、引用文献1に記載のような戸体走行装置が知られている。この戸体走行装置は、戸体の下端部に設けられた戸車と、戸車の回転に連動して回転する回転ブラシと、この回転ブラシに当接自在なごみ溜ケースと、を有する。
【0003】
戸車が戸車走行面に沿って走行することにより回転ブラシの先端部が戸車走行面に接触し、それにより戸車走行面上のごみが拾い上げられる。拾い上げられたごみは、回転ブラシの先端部から振り落とされてごみ溜ケースに回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭53-41844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の戸体走行装置では、回転ブラシで拾い上げられたごみが回転ブラシに滞留し、ごみ溜ケースに入らないことが想定される。また、ごみが回転ブラシの隙間に侵入した場合、この回転ブラシを手動で掃除する、或いは回転ブラシを取り換える必要があり非常に手間であった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、戸車走行面上の異物を回収することにより当該異物の引戸側への滞留を抑制することができる引戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る引戸は、建物の開口を開閉するために走行面上を走行可能な引戸であって、引戸本体と、前記引戸本体の下端部に設けられた車輪と、前記引戸本体に設けられ、前記走行面上の異物を回収するための回収部と、前記車輪に前記異物を吸着させるための前記車輪の回転領域として予め設定された吸着領域において前記車輪に対して吸着力を与えるとともに、前記異物を前記回収部に対して導くための前記車輪の回転領域として予め設定された解除領域において前記吸着力を解除する吸着機構と、を有する。
【0008】
この引戸によれば、前記吸着領域において前記車輪に対して吸着力を与えるとともに前記解除領域において前記吸着力を解除する吸着機構を有するので、吸着領域において吸着された異物の吸着を解除領域において解除することができる。よって、解除領域における車輪の回転に伴う遠心力により異物を車輪から離間させて回収部に導くことができる。このため、戸車走行面上の異物の引戸側への滞留を抑制した状態で当該異物を回収することができる。
【0009】
前記引戸において、前記吸着機構は、前記車輪の外周面に形成された吸着孔と、前記車輪に前記異物を吸着させるための吸着力を付与するように前記吸着孔から空気を吸引する吸引装置と、前記吸着孔から前記吸引装置まで空気を導くための案内機構と、を有するのが好ましい。
【0010】
この構成によれば、吸着孔付近の空気は、案内機構に導かれて吸引装置に吸引される。このため、車輪の外周面に形成された吸着孔が異物に近付いたときに、この異物を吸引装置により吸引して車輪に吸着させることができる。
【0011】
前記引戸において、前記案内機構は、前記車輪の軸心に沿って形成された中心通路と、前記中心通路から前記吸着孔まで延びる放心通路と、前記解除領域で前記中心通路から前記放心通路を遮断し、前記吸着領域で前記中心通路に対して前記放心通路を開放するように前記車輪の回転に応じて前記放心通路に対して相対変位可能に設けられた遮断部材と、を有するのが好ましい。
【0012】
この構成によれば、案内機構は、車輪の回転に応じて放心通路に対して相対変位可能に設けられた遮断部材を有している。そのため、吸着孔が吸着領域内を回転している状況では、中心通路と放心通路とが連通されることにより異物を車輪に吸着させることができ、吸着孔が解除領域を回転している状況では、中心通路と放心通路とが遮断されることにより、吸着領域で吸着した異物の吸着を解除し、遠心力を用いて異物を車輪から放出することができる。
【0013】
前記引戸は、前記解除領域における前記車輪の外周面を覆う第1の面を有するとともに、前記異物を前記車輪の外周面から引き離す引き離し部をさらに備え、前記解除領域は、前記第1の面により覆われた部分から回転方向の両側に延びる領域を有するのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、車輪の外周面を覆う第1の面を有する引き離し部を備えているため、車輪と第1の面との間を通過し得ない大きさを有する異物を引き離し部によって車輪から引き離すことができる。また、異物が引き離し部により引き離される直前にこの異物の吸着に寄与する吸着孔26が解除領域に入る。よって、異物が引き離し部により引き離されるよりも前に車輪が異物を吸着するための吸着力を解除することができる。このため、吸着力の解除された異物を引き離し部に衝突させることにより異物をスムーズに車輪から引き離すことができ、回収部に確実に回収できる。
【0015】
前記引戸において、前記引き離し部は、前記第1の面の径方向外側で前記第1の面の端部から鋭角を持って前記第1の面の径方向外側に延びるとともに、前記車輪の外周面から引き離された前記異物を前記回収部へ誘導する誘導面と、を有するのが好ましい。
【0016】
この構成によれば、誘導面が第1の面の端部から鋭角をもって第1の面の径方向外側に延びるので、車輪が回転したときに、車輪に吸着された異物を第1の面と誘導面とにより形成される角でかき取ることができる。
【0017】
また、誘導面が第1の面の端部から第1の面の径方向外側に延びるので、前記角によってかき取られた異物を誘導面に沿って第1の面の径方向外側にガイドすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の引戸によれば、戸車走行面上の異物を回収することにより当該異物の引戸側への滞留を抑制することができる引戸を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る引戸の使用状態を表す斜視図である。
図2図1に示す引戸における車輪周辺を表す拡大図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4図3のIV-IV断面図である。
図5】前記車輪の軸部のV-V断面図である。
図6図5のVI-VI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る引戸1について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
引戸1は、図1及び図2に示すように、建物の壁面8に形成された開口を開閉するために、開口幅方向に延びる走行面5上を移動する引戸であり、壁面8の開口が最も開いた状態で、この壁面8の開口に沿って配置された戸袋9に収納される。
【0022】
図3は、引戸1の縦断面図である。以下では、図3の紙面奥側を一方側、紙面手前側を他方側、紙面右側を表側、紙面左側を裏側と呼ぶ。
【0023】
走行面5は、図3に示すように、V溝レールとして形成されている。具体的に、走行面5は、裏側方向に向かうにつれて上方に傾斜する傾斜部5aと、表側方向に向かうにつれて上方に傾斜する傾斜部5bとを有している。これら傾斜部5a,5bは、その下端部において鋭角をなすように接続されている。
【0024】
引戸1は、図3及び図4に示すように、引戸本体3と、引戸本体3の下端部に設けられた車輪10と、車輪10の軸心に沿って車輪10から両側に延びる一対の軸部14a,14bと、引戸本体3に設けられ一方の軸部14aの一端部を回転可能に支持する第1軸受け50と、引戸本体3に設けられ他方の軸部14bの他端部を回転可能に支持する第2軸受け55と、異物7を吸着させるための吸着力を車輪10に与える吸着機構25と、異物7を回収する回収部20と、異物7を車輪10の外周面から引き離す引き離し部40と、を有する。なお、車輪10、軸部14a,14b、第1軸受け50、第2軸受け55、吸着機構25、回収部20、引き離し部40は、それぞれ引戸本体3の一方側及び他方側に設けられるが、引戸本体3は対称の構成を有するので、一方側の構成についてのみ説明し、他方側の構成については説明を省略する。
【0025】
引戸本体3は、上下方向に延びる平面視長方形状の板状部材である。引戸本体3の下端部には、車輪10、軸部14a,14b、第1軸受け50、第2軸受け55、吸着機構25、回収部20及び引き離し部40を収納するための収納部3aが形成されている。
【0026】
収納部3aは、図3及び図4に示すように、引戸本体3の表側を形成する表側壁3Aと、引戸本体3の裏側を形成する裏側壁3Bと、引戸本体3の下面を形成する下壁3Dと、
表側壁3Aと裏側壁3Bとの間に設けられているとともに下壁3Dに対向する上壁3Cと、引戸本体3の他方側の端面を形成する他端壁3Eと、他端壁3Eの一方側に設けられているとともに他端壁3Eに対向する一端壁3Fと、により形成される。
【0027】
表側壁3Aには、回収部20を収納部3aから引戸本体3の外側に取り出すための取り出し部3b(図2参照)と、吸着機構25の吸引装置30(後述)により吸引された空気を排気するための排気部3c(図3参照)と、が設けられている。
【0028】
取り出し部3bは、表側壁3Aの一部に形成された開口と、この開口を開閉可能となるように表側壁3Aに取り付けられた蓋部と、を有する。取り出し部3bの蓋部を開くことにより回収部20を引戸本体3の外側に取り出し、回収部20に回収された異物7を廃棄することができる。
【0029】
排気部3cは、表側壁3Aの一部に形成された開口と、この開口に形成されたルーバーと、を有する。
【0030】
下壁3Dには、図4に示すように、車輪10の下部を通すための孔部3Gが形成されている。
【0031】
車輪10は、図3に示すように、軸部14a,14bがそれぞれ第1軸受け50及び第2軸受け55により軸支されることにより、引戸本体3に対して回転可能に支持されている。また、車輪10は、図4に示すように、下壁3Dの孔部3Gを通じて一部が下壁3Dから突出した状態で引戸本体3の収納部3aに収納されている。
【0032】
車輪10は、この車輪10の外周面と走行面5のV溝の底部とが離間した状態で車輪10が走行面5上を走行可能となるように走行面5のV溝に係合している。具体的に、車輪10は、走行面5の傾斜部5bに接する第2部分10bと、走行面5の傾斜部5aに接する第3部分10cと、第2部分10bと第3部分10cとを軸方向に接続するとともに第
2部分10b及び第3部分10cが傾斜部5b及び傾斜部5aにそれぞれ接した状態でV溝の底部の上に配置される第1部分10aと、を有する。
【0033】
第1軸受け50は、図3に示すように、引戸本体3の裏側壁3Bに固定され、軸部14aを回転可能に支持する。具体的に、第1軸受け50は、図5に示すように、軸部14aを回転可能に支持する円筒形状の支持部50aと、支持部50aを保持する本体部50bと、を有する。
【0034】
支持部50aの内周にはボールベアリング52が設けられており、このボールベアリング52を介して軸部14aが支持されている。
【0035】
本体部50bは、案内機構28の中心通路15(後述)と連通された連通室50cを有する。この連通室50cは、支持部50aと軸部14aとが互いに密着することによって封止されている。
【0036】
第2軸受け55は、図3に示すように、引戸本体3の表側壁3Aに固定され、軸部14bを回転可能に支持する。具体的に、第2軸受け55は、図5に示すように、軸部14bを回転可能に支持する円筒形状の支持部55aと、支持部55aを保持する本体部55bと、本体部55bから吸引装置30のハウジング37(後述)に延びるとともにこのハウジング37に接続された接続部55cと、を有する。支持部55aは、上述したボールベアリング52を有する。
【0037】
第2軸受け55には、中心通路15とハウジング37の吸引孔37aとを接続するように本体部57及び接続部55cに亘って延びるファン通路34が形成されている。ファン通路34は、支持部55aと軸部14bとが互いに密着することによって封止されている。
【0038】
回収部20は、吸着機構25により車輪10に吸着された異物7を回収するための容器であり、車輪10の走行方向の一方側(引戸本体3の収納部3aの一端壁3F側)に設けられている。回収部20は、引戸本体3に設けられた取り出し部3b(図2参照)から取り出すことができるように、引戸本体3の下壁3D上でかつ取り出し部3bと隣接した位置に設けられている。
【0039】
回収部20は、図4に示すように、車輪10から放出された異物7を受け入れるために上向きに開く開口を有する。また、回収部20の開口は、車輪10の上端位置よりも下に位置する。
【0040】
吸着機構25は、車輪10に異物7を吸着させるための車輪10の回転領域として予め設定された吸着領域において車輪10に対して吸着力を与え、異物7を回収部20に対して導くための車輪の回転領域として予め設定された解除領域において車輪10に対する吸着力を解除する。具体的に、吸着機構25は、図3及び図4に示すように、車輪10の外周面に形成された吸着孔26と、吸着孔26に異物7を吸着するように吸着孔26から空気を吸引する吸引装置30と、吸着孔26から吸引装置30まで空気を導くための案内機構28(図4参照)と、を有する。
【0041】
吸着孔26は、車輪10の外周面に沿って等間隔に12箇所設けられている。それぞれの吸着孔26は、車輪10の外周面に異物7を吸着させるための吸着力を車輪10に与えるように吸引装置30の作動に応じて車輪10の外側の空気を吸引する。また、車輪10の外周面には、吸着孔26の内部に異物7が侵入するのを抑制するために吸着孔26を覆うフィルタが設けられている。
【0042】
吸引装置30は、図3及び図4に示すように、引戸本体3の排気部3cに隣接して設けられたファン36と、ファン36を収納するハウジング37と、ファン36を駆動するための電源38と、を有する。ハウジング37は、引戸本体3の表側壁3Aとの間でファン収納部を区画するように表側壁3Aに取り付けられているとともに、表側壁3Aとの間でファン36を回転可能に支持する。ファン36は、引戸本体3の表裏方向に延びる軸回りに回転する。また、ハウジング37には、ファン36の作動に応じて収納部内の空気を吸い込むための吸引孔37aが形成されている。
【0043】
電源38は、ファン36に取り付けられたモーターに通電することにより、ファン36を回転させる。電源38としては、バッテリーやダイナモ等が用いられる。電源38としてバッテリーを用いる場合、常時モーターに通電してもよいが、車輪10の回転時のみファン36を通電することが好ましい。そのための構成として、例えば、モーション起動スイッチを電源38に搭載しても良い。
【0044】
案内機構28は、図5に示すように、ファン通路34に連通されるとともに車輪10の軸部14a,14bに沿ってこの軸部14a,14bの内部に形成された中心通路15と、軸部14a,14bから吸着孔26まで延びる複数(本実施形態では12箇所)の放心通路12と、解除領域で中心通路15と放心通路12とを遮断し吸着領域で中心通路15と放心通路12とを連通する遮断部材60と、を有する。
【0045】
中心通路15は、図5に示すように、軸部14aの裏側の端部から軸部14bの表側の端部に亘って形成されており、引戸本体3の表側方向においてファン通路34と連通されている。
【0046】
遮断部材60は、解除領域で中心通路15から放心通路12を遮断し、吸着領域で中心通路15に対して放心通路12を開放するように、車輪10の回転に応じて放心通路12に対して相対変位可能に設けられている。
【0047】
具体的に、遮断部材60は、図5に示すように、連通室15c内で第1軸受け50に固定された基端部62と、基端部62から引戸本体3の表側方向に延びて中心通路15内で放心通路12を遮断するための遮断部64と、を有する。遮断部64は、中心通路15の内側面に密着可能な形状を有する。また、遮断部64は、車輪10の回転に応じて放心通路12の開口と重なる位置に配置されることにより当該開口を閉じる。これにより、放心通路12が中心通路15から遮断され、車輪10の吸着力が解除される。
【0048】
図6において、α及びβは解除領域を規定するために適宜設定される角度であり、例えば角度αは10~20度、角度βは45~60度の範囲に設定される。遮断部64は、車輪10の外周面から回収部20が設置されている側へ異物7を放出するために、車輪10の軸心を中心とした仮想円上の頂点から図6の時計回り(引戸本体3が一方側に移動する時の車輪10の回転方向)に所定角度α~α+βの範囲(解除領域)に亘って中心通路15の内周面に接触可能な幅を有する。なお、吸着領域は、車輪10の回転領域のうち解除領域以外の領域である。
【0049】
引き離し部40は、図4に示すように、車輪10の一方側に設けられ車輪10の外周面に対向する第1の面42と、第1の面42の径方向外側で第1の面42の他方側の端部から第1の面42の径方向外側に向かって延びる第2の面44と、第1の面42の径方向外側で第1の面42の一方側の端部から第1の面42の径方向外側に向かって延びる第3の面46と、を有する。第2の面44及び第3の面46は、第1の面42の径方向外側で第1の面42の端部から鋭角を持って第1の面42の径方向の外側に延びるとともに車輪10の外周面から引き離された異物7を回収部20へ誘導する誘導面に相当する。
【0050】
第1の面42は、車輪10の外周面との間で、異物7の入り込みを規制する隙間を形成するためのものである。具体的に、第1の面42は、車輪10の外周面から僅かに離間した状態でこの車輪10の外周面を径方向外側から覆う位置に設けられる。
【0051】
第2の面44は、車輪10が時計回りに回転している状態において、車輪10の外周面に吸着された異物7を、かき取るためのものである。具体的に、第2の面44は、第1の面42とのなす角が鋭角となるように第1の面42の他方側の端部から径方向外側に延びている。また、第2の面44は、上側を向いており、上から見て回収部20に重なるように設けられる。さらに、第2の面44は、図4に示すように回収部20の開口に向かって湾曲する形状を有している。そのため、かき取られた異物7は、この湾曲面に沿って回収部20に導かれる。
【0052】
第3の面46は、車輪10が反時計回りに回転している状態において、異物7をかき取るためのものである。具体的に、第3の面46は、第1の面42とのなす角が鋭角となるように第1の面42の一方側の端部から径方向外側に延びている。また、第3の面46は、第2の面44とは反対側(下側)を向いており、回収部20に重なるように設けられる。さらに、第3の面46は、上に凸の曲線を描くように湾曲する形状を有している。そのため、かき取られた異物7は、湾曲面に衝突しこの湾曲面に沿って回収部20に導かれる。
【0053】
このような引き離し部40は、本実施形態では、図6に示すように、双方向において、異物7が引き離し部40にガイドされる直前にこの異物7を吸着孔26から離間させるため、解除領域に対して位置決めされている。具体的に、解除領域は、図6に示すように、第1の面42により覆われた領域から車輪10の回転方向の両側に延びる領域を有する。異物7は、車輪10の外周面に吸着された状態でこの両側に延びる領域に差し掛かった時に車輪10の外周面から離間して引き離し部40にかき取られる。
【0054】
(作用効果)
本実施形態に係る引戸1によれば、吸着領域において車輪10に対して吸着力を与えるとともに解除領域において吸着力を解除する吸着機構25を有するので、吸着領域において吸着された異物7の吸着を解除領域において解除することができる。よって、解除領域における車輪10の回転に伴う遠心力により異物7を車輪10から離間させて回収部20に導くことができる。このため、走行面5上の異物7の引戸1側への滞留を抑制した状態で当該異物7を回収することができる。
【0055】
また、吸着機構25は、車輪10の外周面に形成された吸着孔26と、車輪10に異物7を吸着させるための吸着力を付与するように吸着孔26から空気を吸引する吸引装置30と、吸着孔26から吸引装置30まで空気を導くための案内機構28と、を有する。よって、吸着孔26付近の空気は、案内機構28に導かれて吸引装置30に吸引される。このため、車輪10の外周面に形成された吸着孔26が異物7に近付いたときに、この異物7を吸引装置30により吸引して車輪10に吸着させることができる。
【0056】
また、案内機構28は、車輪10の回転に応じて放心通路に対して相対変位可能に設けられた遮断部材60を有している。そのため、吸着孔26が吸着領域内を回転している状況では、中心通路15と放心通路12とが連通されることにより異物7を車輪10に吸着させることができ、吸着孔26が解除領域を回転している状況では、中心通路15と放心通路12とが遮断されることにより、吸着領域で吸着した異物7の吸着を解除し、遠心力を用いて異物7を車輪10から離間させることができる。
【0057】
また、第2の面44が第1の面42の他方側の端部から鋭角をもって第1の面42の径方向外側に延びるので、引戸1が一方側に移動するように車輪10が回転したときに、車輪10に吸着された異物7を第1の面42と第2の面44とにより形成される角でかき取ることができる。
【0058】
また、第2の面44が第1の面42の他方側の端部から第1の面42の径方向外側に延びるので、角によりかき取られた異物7を第2の面44に載せて第1の面42の径方向外側にガイドすることができる。
【0059】
また、上から見て第2の面44が回収部20に重なるので、第2の面44に載せられた異物7をこの第2の面44に沿ってスムーズに回収部20に導くことができる。
【0060】
また、引き離し部40は、第1の面42の径方向外側で第1の面42の一方側の端部から鋭角をもって第1の面42の径方向外側に向かって延びるとともに上から見て回収部20と重なる第3の面46をさらに有する。第3の面46が第1の面42の一方側の端部から鋭角をもって第1の面42の径方向外側に延びているので、引戸1が他方側に移動するように車輪10が回転したときに、車輪10に吸着された異物7を第1の面42と第3の面46とにより形成される角でかき取ることができる。
【0061】
また、第3の面46が第1の面42の径方向外側に延びているので、前記角によってかき取られた異物7を、遠心力を利用して第3の面46に衝突させることにより第3の面46に沿って第1の面42の径方向外側にガイドすることができる。
【0062】
また、上から見て第3の面46が回収部20に重なるので、上記のように第3の面46に沿って導かれる異物7をスムーズに回収部20に導くことができる。
【0063】
また、第1の面42は、解除領域における車輪10の外周面を覆い、解除領域は、第1の面42により覆われた部分から回転方向の両側に延びる領域を有する。この構成によれば、異物7が引き離し部40に差し掛かる直前にこの異物7の吸着に寄与する吸着孔26が解除領域に差し掛かる。よって、異物7が引き離し部40に差し掛かるよりも前に車輪10が異物7を吸着するための吸着力を解除することができる。このため、遠心力により異物7をスムーズに引き離し部40にかき取ることができ、回収部20に確実に回収できる。
【0064】
(変形例)
上記実施形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0065】
上記実施形態では、走行面5としてV溝レールが形成されたものを用いたが、走行面5はV溝レールが形成されたものに限られず、例えば、平面状のものであっても良い。
【0066】
上記実施形態では、回収部20を車輪10の一方側(引戸本体3の収納部3aの一端壁3F側)に設けたが、回収部20を設ける位置はこれに限られず、車輪10の他方側(引戸本体3の収納部3aの他端壁3E)であっても良い。この場合、車輪10の他方向へ異物7を放出するために、解除領域を車輪10の他方側に設けても良い。つまり、遮断部64は、車輪10の軸心を中心とした仮想円上の頂点から図6の反時計回り(引戸本体3が他方側に移動する時の車輪10の回転方向)に所定角度α~α+βの範囲に亘って中心通路15の内周面に接触可能な幅を有していても良い。
【0067】
また、回収部20は、複数(例えば、車輪10の一方側及び他方側にそれぞれ1個ずつ)設けられていても良い。この場合、解除領域を車輪10の一方側及び他方側に設けても良い。つまり、遮断部64が2個設けられており、これら遮断部64,64が、車輪10の軸心を中心とした仮想円上の頂点から図6の時計回り及び反時計回りにそれぞれ所定角度α~α+βの範囲に亘って中心通路15の内周面に接触可能な幅を有していても良い。
【0068】
上記実施形態では、吸着孔26は、車輪10の外周面に沿って等間隔に12箇所設けられていたが、吸着孔26の設置数は12箇所に限られず、適宜増減される。このことは、放心通路12についても同様である。
【0069】
上記実施形態では、吸引装置30としてファン36を有するものを用いたが、吸引装置30の構成として用いることができるのはファン36に限られない。例えば、ベンチュリ効果によりファン通路34の内部を減圧するアスピレーターをファン36の代わりに用いても良い。
【0070】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の設計変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0071】
1 引戸
5 走行面
7 異物
10 車輪
12 放心通路
14 軸部
15 中心通路
20 回収部
25 吸着機構
26 吸着孔
30 吸引装置
40 引き離し部
42 第1の面
44 第2の面(誘導面)
46 第3の面(誘導面)
60 遮断部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6