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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】遠隔運転装置及び遠隔運転システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/00 20240101AFI20240820BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20240820BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20240820BHJP
   B60T 7/16 20060101ALI20240820BHJP
   B60T 7/06 20060101ALI20240820BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20240820BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
G05D1/00
H04Q9/00 301B
B62D6/00
B60T7/16
B60T7/06 E
B62D101:00
B62D113:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021016847
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119598
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 康佑
(72)【発明者】
【氏名】高島 亨
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 悟
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆史
(72)【発明者】
【氏名】須田 理央
(72)【発明者】
【氏名】浦野 博充
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 翔
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏充
(72)【発明者】
【氏名】鄭 好政
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-077649(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0056105(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/87
H03J 9/00 - 9/06
H04Q 9/00 - 9/16
B62D 6/00 - 6/10
B60T 1/00 - 7/10
B60T 7/12 - 8/1769
B60T 8/32 - 8/96
B62D 101/00
B62D 113/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を遠隔操作する遠隔運転装置であって、
前記車両の遠隔操作のためにオペレータによって操作される遠隔操作器と、
前記遠隔操作器に付与される操作反力を生成する反力ユニットと、
前記車両の車両特性に影響するパラメータを前記車両から受信する受信機と、
受信された前記パラメータに応じた大きさの操作反力を生成するように前記反力ユニットを制御するプロセッサと、
を備え
前記遠隔操作器は、ステアリング、アクセルペダル、及びブレーキペダルであり、
車両走行に関する異常は、前記車両の操舵装置の転舵機構が車輪の転舵のために備える電動機の駆動力の低下、前記車両の駆動装置が発生させる車両駆動力の低下、又は、前記車両の制動装置の制動力の低下であり、
前記プロセッサは、前記異常が前記車両に生じた場合には、前記ステアリング、前記アクセルペダル、及び前記ブレーキペダルのうち、発生した前記異常に関連する遠隔操作器を少なくとも対象として、前記異常が生じていない場合と比べて大きな操作反力を生成するように前記反力ユニットを制御する
ことを特徴とする遠隔運転装置。
【請求項2】
前記パラメータは、前記車両の重量であって、
前記プロセッサは、前記重量が大きい場合には、当該重量が小さい場合と比べて大きな前記操作反力を生成するように前記反力ユニットを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の遠隔運転装置。
【請求項3】
前記パラメータは、前記車両のホイールベースであって、
前記プロセッサは、前記ホイールベースが長い場合には、前記ホイールベースが短い場合と比べて大きな前記操作反力を生成するように前記反力ユニットを制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の遠隔運転装置。
【請求項4】
前記パラメータは、前記車両のトレッドであって、
前記プロセッサは、前記トレッドが長い場合には、前記トレッドが短い場合と比べて大きな前記操作反力を生成するように前記反力ユニットを制御する
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1つに記載の遠隔運転装置。
【請求項5】
前記パラメータは、前記車両の乗車人数であって、
前記プロセッサは、前記乗車人数が多い場合には、前記乗車人数が少ない場合と比べて大きな前記操作反力を生成するように前記反力ユニットを制御する
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1つに記載の遠隔運転装置。
【請求項6】
前記パラメータは、前記車両に積載された荷物の積載重量であって、
前記プロセッサは、前記積載重量が大きい場合には、前記積載重量が小さい場合と比べて大きな前記操作反力を生成するように前記反力ユニットを制御する
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1つに記載の遠隔運転装置。
【請求項7】
車両と、
前記車両を遠隔操作する遠隔運転装置と、
を備える遠隔運転システムであって、
前記車両は、操舵装置と、駆動装置と、制動装置と、前記車両の車両特性に影響するパラメータを前記遠隔運転装置に送信する送信機と、を含み、
前記遠隔運転装置は、
前記車両の遠隔操作のためにオペレータによって操作される遠隔操作器と、
前記遠隔操作器に付与される操作反力を生成する反力ユニットと、
前記パラメータを前記車両から受信する受信機と、
受信された前記パラメータに応じた大きさの操作反力を生成するように前記反力ユニットを制御するプロセッサと、を含み、
前記遠隔操作器は、ステアリング、アクセルペダル、及びブレーキペダルであり、
車両走行に関する異常は、前記操舵装置の転舵機構が車輪の転舵のために備える電動機の駆動力の低下、前記駆動装置が発生させる車両駆動力の低下、又は、前記制動装置の制動力の低下であり、
前記プロセッサは、前記異常が前記車両に生じた場合には、前記ステアリング、前記アクセルペダル、及び前記ブレーキペダルのうち、発生した前記異常に関連する遠隔操作器を少なくとも対象として、前記異常が生じていない場合と比べて大きな操作反力を生成するように前記反力ユニットを制御する
ことを特徴とする遠隔運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用の遠隔運転装置及び遠隔運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動運転車両の遠隔運転システムが開示されている。自動運転車両の遠隔操作のためにオペレータによって用いられる操舵コントローラは、外部入力に応答してステアリングに操舵抵抗力(操作反力)を生じさせるドライビングフォース機能を有する。具体的には、操舵コントローラのステアリングに対し、自動運転車両のステアリングとの操舵角差に応じた操舵抵抗力が付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-155936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、遠隔操作の対象となる車両の重量が異なると、車両特性が変化する。その結果、当該車両を遠隔操作するオペレータの操作感が異なるものとなる。このため、車両重量等の車両特性に影響するパラメータが異なる車両を遠隔操作する際に遠隔操作器に対して付与される操作反力が同じであると、オペレータが車両の操作感を適切に得ることが困難となる場合がある。
【0005】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、遠隔操作対象の車両の違いに関係なく、オペレータが、実際に乗車して運転するときに近い感覚で遠隔運転を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る遠隔運転装置は、車両を遠隔操作するように構成されている。遠隔運転装置は、遠隔操作器と、反力ユニットと、受信機と、プロセッサとを備えている。遠隔操作器は、車両の遠隔操作のためにオペレータによって操作される。反力ユニットは、遠隔操作器に付与される操作反力を生成するように構成されている。受信機は、車両の車両特性に影響するパラメータを車両から受信するように構成されている。プロセッサは、受信されたパラメータに応じた大きさの操作反力を生成するように反力ユニットを制御するように構成されている。遠隔操作器は、ステアリング、アクセルペダル、及びブレーキペダルである。車両走行に関する異常は、車両の操舵装置の転舵機構が車輪の転舵のために備える電動機の駆動力の低下、車両の駆動装置が発生させる車両駆動力の低下、又は、車両の制動装置の制動力の低下である。プロセッサは、上記異常が前記車両に生じた場合には、ステアリング、アクセルペダル、及びブレーキペダルのうち、発生した上記異常に関連する遠隔操作器を少なくとも対象として、上記異常が生じていない場合と比べて大きな操作反力を生成するように反力ユニットを制御する。
【0007】
上記パラメータは、車両の重量であってもよい。そして、プロセッサは、重量が大きい場合には、当該重量が小さい場合と比べて大きな操作反力を生成するように反力ユニットを制御してもよい。
【0008】
上記パラメータは、車両のホイールベースであってもよい。そして、プロセッサは、ホイールベースが長い場合には、ホイールベースが短い場合と比べて大きな操作反力を生成するように反力ユニットを制御してもよい。
【0009】
上記パラメータは、車両のトレッドであってもよい。そして、プロセッサは、トレッドが長い場合には、トレッドが短い場合と比べて大きな操作反力を生成するように反力ユニットを制御してもよい。
【0010】
上記パラメータは、車両の乗車人数であってもよい。そして、プロセッサは、乗車人数が多い場合には、乗車人数が少ない場合と比べて大きな操作反力を生成するように反力ユニットを制御してもよい。
【0011】
上記パラメータは、車両に積載された荷物の積載重量であってもよい。そして、プロセッサは、積載重量が大きい場合には、積載重量が小さい場合と比べて大きな操作反力を生成するように反力ユニットを制御してもよい。
【0014】
本開示に係る遠隔運転システムは、車両と、車両を遠隔操作する遠隔運転装置と、を備えている。車両は、操舵装置と、駆動装置と、制動装置と、車両の車両特性に影響するパラメータを遠隔運転装置に送信する送信機と、を含む。遠隔運転装置は、車両の遠隔操作のためにオペレータによって操作される遠隔操作器と、遠隔操作器に付与される操作反力を生成する反力ユニットと、パラメータを車両から受信する受信機と、受信されたパラメータに応じた大きさの操作反力を生成するように反力ユニットを制御するプロセッサとを含む。遠隔操作器は、ステアリング、アクセルペダル、及びブレーキペダルである。車両走行に関する異常は、操舵装置の転舵機構が車輪の転舵のために備える電動機の駆動力の低下、駆動装置が発生させる車両駆動力の低下、又は、制動装置の制動力の低下である。プロセッサは、上記異常が前記車両に生じた場合には、ステアリング、アクセルペダル、及びブレーキペダルのうち、発生した上記異常に関連する遠隔操作器を少なくとも対象として、上記異常が生じていない場合と比べて大きな操作反力を生成するように反力ユニットを制御する。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る遠隔運転装置又は遠隔運転システムによれば、オペレータが操作する遠隔操作器には、車両特性に影響するパラメータに応じた大きさの操作反力が付与される。このため、オペレータは、遠隔操作対象の車両の違いに関係なく、実際に乗車して運転するときに近い感覚で遠隔運転を行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1に係る遠隔運転システムの構成例を示すブロック図である。
図2図1に示すステアリング、アクセルペダル、及びブレーキペダル周りの具体的な構成例を示す図である。
図3】実施の形態1に係る操作反力の設定に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】操作反力と遠隔車両の重量との関係の一例を表したグラフである。
図5】操作反力と遠隔車両のホイールベースとの関係の一例を表したグラフである。
図6】操作反力と遠隔車両のトレッドとの関係の一例を表したグラフである。
図7】操作反力と遠隔車両の乗車人数との関係の一例を表したグラフである。
図8】操作反力と遠隔車両の積載重量との関係の一例を表したグラフである。
図9】実施の形態2に係る車両異常発生時の操作反力の設定に関する処理の一例を示すフローチャートである。
図10】参考例1において遠隔運転時に選択される出力特性と車両重量との関係を表したグラフである。
図11】参考例2において遠隔運転時に選択される出力特性と車両重量との関係を表したグラフである。
図12】参考例3において遠隔運転時に選択される出力特性と車両重量との関係を表したグラフである。
図13】参考例4において遠隔運転時に選択される出力特性と車両重量との関係を表したグラフである。
図14】参考例5において遠隔運転時に選択される出力特性と車両重量との関係を表したグラフである。
図15】参考例6に係る操舵特性の設定に関する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造やステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【0018】
1.実施の形態1
1-1.遠隔運転システムの構成例
図1は、実施の形態1に係る遠隔運転システム1の構成例を示すブロック図である。遠隔運転システム1は、遠隔操作対象の車両(以下、単に「遠隔車両」と称する)10と、遠隔車両10を遠隔操作する遠隔運転装置30とを備えている。
【0019】
1-1-1.遠隔車両
遠隔車両10は、操舵装置12、駆動装置14、制動装置16、車載電子制御ユニット(車載ECU)18、通信装置20、車両状態センサ22、及び認識センサ24を備えている。遠隔車両10は、一例として自動運転車両である。遠隔車両10は、例えば、様々なサイズ及び重量の自動車(例えば、乗用車、トラック、及びバス)である。
【0020】
操舵装置12は、遠隔車両10の車輪を転舵する。駆動装置14は、遠隔車両10の駆動力を発生させ、例えば内燃機関である。制動装置16は、遠隔車両10の制動力を発生させる。より詳細には、一例として、操舵装置12、駆動装置14、及び制動装置16は、何れもバイワイヤ方式である。このため、操舵装置12は、ステアリングホイールと機械的に切り離された転舵機構(例えば、電動式)を備えている。駆動装置14は、電子制御式スロットルを備えている。バイワイヤ方式の駆動装置14の他の例は車両走行用電動機である。制動装置16は、電子制御ブレーキ(ECB)である。
【0021】
車載ECU18は、遠隔車両10を制御するコンピュータである。具体的には、車載ECU18は、プロセッサ18aと記憶装置18bとを備えている。プロセッサ18aは、各種処理を実行する。記憶装置18bは、各種情報を格納している。記憶装置18bとしては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、及びSSD(Solid State Drive)が例示される。車載ECU18(プロセッサ18a)が各種コンピュータプログラムを実行することにより、車載ECU18による各種処理が実現される。各種プログラムは、記憶装置18bに格納されている、あるいは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されている。なお、プロセッサ18a及び記憶装置18bは複数であってもよい。
【0022】
通信装置20は、無線通信ネットワーク2を介して遠隔運転装置30と通信を行う。車両状態センサ22は、遠隔車両10の状態を検出する。車両状態センサ22としては、車速センサ(車輪速センサ)、操舵角センサ、ヨーレートセンサ、及び横加速度センサが例示される。認識センサ24は、遠隔車両10の周囲の状況を認識(検出)する。認識センサ24としては、カメラ、ライダー(LIDAR: Laser Imaging Detection and Ranging)、及びレーダが例示される。
【0023】
1-1-2.遠隔運転装置
遠隔運転装置30は、遠隔運転端末32、電子制御ユニット(ECU)34、及び通信装置36を備えている。遠隔運転端末32は、遠隔車両10の遠隔操作のためにオペレータによって操作される遠隔操作器として、ステアリング38、アクセルペダル40、及びブレーキペダル42を備えている。
【0024】
遠隔運転端末32は、ステアリング38に操作反力を付与する反力ユニット44を備えている。より詳細には、反力ユニット44は、遠隔操作を行うオペレータがステアリング38を介して遠隔車両10の操作感を得られるようにするために、オペレータによるステアリング38の操作に対して操作反力を付与するように構成されている。遠隔運転端末32は、アクセルペダル40及びブレーキペダル42に対し、同様の反力ユニット46及び48をそれぞれ備えている。
【0025】
図2(A)~図2(C)は、それぞれ、図1に示すステアリング38、アクセルペダル40、及びブレーキペダル42周りの具体的な構成例を示す図である。まず、図2(A)に示すように、ステアリング38の反力ユニット44は、一例として、ステアリングシャフト38aを介してステアリングホイール38bに連結された反力モータ44aを含む。反力モータ44aが生成する操作反力の大きさは、ECU34によって制御される。このため、反力ユニット44は、操作反力(操舵反力)を自在に変更できる。また、ステアリングシャフト38aには、操舵角センサ50が設けられている。操舵角センサ50は、ステアリングホイール38bの回転角、すなわち、操舵角(操作量)に応じた信号を通信装置36に出力する。なお、操舵角センサ50の出力信号(後述のアクセルポジションセンサ52及びブレーキポジションセンサ54も同様)は、ECU34を介して通信装置36に伝達されてもよい。
【0026】
図2(B)に示すように、アクセルペダル40の反力ユニット46は、一例として、リターンスプリング46aと、スライド部材46bと、反力モータ46cとを含む。リターンスプリング46aは、アクセルペダル40のペダルアーム40aとスライド部材46bとの間に介在している。スライド部材46bは、アクセルペダル40の踏力を受け止める土台に相当する。実線で示すアクセルペダル40は、オペレータによって踏み込まれていない基本状態に対応している。これに対し、アクセルペダル40が踏み込まれると、リターンスプリング46aは、圧縮され、踏み込み反力を発生させる。スライド部材46bは、反力モータ46cによって駆動されることにより、上記基本状態におけるリターンスプリング46aの長さを変更するようにスライド可能に構成されている。
【0027】
上記基本状態におけるリターンスプリング46aの長さが短くなると、同じ踏み込み量でアクセルペダル40が踏み込まれたときに生じる操作反力が大きくなる。このため、反力ユニット46によれば、ECU34により制御される反力モータ46cによってリターンスプリング46aの長さを変更することにより、操作反力(踏み込み反力)を自在に変更できる。また、アクセルペダル40には、アクセルポジションセンサ52が設けられている。アクセルポジションセンサ52は、アクセルペダル40の踏み込み量(操作量)に応じた信号を通信装置36に出力する。
【0028】
図2(C)に示すように、ブレーキペダル42の反力ユニット48は、一例として、リターンスプリング48aと、スライド部材48bと、反力モータ48cとを含み、上述の反力ユニット46と同様に構成されている。このため、反力ユニット48によれば、ECU34により制御される反力モータ48cによってリターンスプリング48aの長さを変更することにより、操作反力(踏み込み反力)を自在に変更できる。また、ブレーキペダル42には、ブレーキポジションセンサ54が設けられている。ブレーキポジションセンサ54は、ブレーキペダル42の踏み込み量(操作量)に応じた信号を通信装置36に出力する。
【0029】
また、遠隔運転端末32は、オペレータによる遠隔操作に用いられるディスプレイ56を備えている。ディスプレイ56は、例えば、遠隔車両10のカメラ(認識センサ24)によって撮像された遠隔車両10の前方の画像を表示する。
【0030】
ECU34は、遠隔運転装置30に関する処理を実行するコンピュータである。具体的には、ECU34は、プロセッサ34aと記憶装置34bとを備えている。プロセッサ34aは、遠隔運転端末32による遠隔車両10の遠隔操作に関する各種処理を実行する。記憶装置34bは、各種情報を格納している。記憶装置34bの具体例は、上述の記憶装置18bのそれと同様である。ECU34(プロセッサ34a)が各種コンピュータプログラムを実行することにより、ECU34による各種処理が実現される。各種コンピュータプログラムは、記憶装置34bに格納されている、あるいは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されている。なお、プロセッサ34a及び記憶装置34bは複数であってもよい。
【0031】
ECU34に接続される遠隔運転端末32は複数であってもよい。すなわち、ECU34は、複数台の遠隔運転端末32を管理するサーバとしての機能を有してもよい。
【0032】
通信装置36は、無線通信ネットワーク2を介して遠隔車両10と通信を行う。具体的には、遠隔運転装置30が遠隔車両10を遠隔操作する場合には、通信装置36は、上述のセンサ50、52及び54によって検出された各操作量(操舵角、並びにアクセルペダル40及びブレーキペダル42の踏み込み量)を遠隔車両10に送信する。車載ECU18は、遠隔運転装置30からの各操作量に基づいて、操舵装置12、駆動装置14、及び制動装置16を制御する。また、通信装置36は、遠隔車両10からの各種データを受信する。ここでいう各種データ(各種情報)は、ディスプレイ56に表示されるカメラの画像データ、及び後述の遠隔車両10の「車両特性に影響するパラメータ」に関するデータを含む。
【0033】
1-2.操作反力の設定
遠隔操作の対象となる車両の重量が異なると、車両特性が変化し、その結果、当該車両を遠隔操作するオペレータの操作感が異なるものとなる。この点に鑑み、本実施形態では、遠隔操作器(ステアリング38、アクセルペダル40、及びブレーキペダル42)に付与される操作反力は、「車両特性に影響するパラメータ」の一例である車両重量に応じた大きさとなるように設定される。
【0034】
図3は、実施の形態1に係る操作反力の設定に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、オペレータが遠隔車両10の遠隔操作を開始する条件が成立した場合に、当該遠隔操作の開始に先立って実行される。
【0035】
まず、遠隔車両10側の処理が説明される。ステップS100では、車載ECU18のプロセッサ18aは、通信装置20を用いて、遠隔車両10の重量情報を遠隔運転装置30に送信する。遠隔車両10の重量(より詳細には、例えば、空車重量)は、事前に記憶装置18bに格納されている値である。なお、通信装置20は、本開示に係る「送信機」の一例に相当する。
【0036】
次に、遠隔運転装置30側の処理が説明される。ステップS200では、遠隔側のECU34のプロセッサ34aは、通信装置36が遠隔車両10から重量情報を受信したか否かを判定する。その結果、通信装置36が重量情報を受信した場合には、処理はステップS202に進む。なお、通信装置36は、本開示に係る「受信機」の一例に相当する。
【0037】
ステップS202では、プロセッサ34aは、受信された重量情報に基づいて、遠隔操作器38、40及び42のそれぞれの操作反力を設定する。図4は、操作反力と遠隔車両10の重量との関係の一例を表したグラフである。図4では、操作反力は、車両重量が大きいほど大きくなるように設定されている。より詳細には、同じ車両重量での操作反力の値自体は基本的には遠隔操作器38、40及び42によって異なるものとなる。しかしながら、遠隔操作器38、40及び42の何れにおいても、操作反力は、図4に示すように車両重量が大きいほど大きくなる。このことは、後述の図5図8についても同様である。
【0038】
記憶装置34bは、例えば、図4に示すような操作反力と車両重量との関係を、遠隔操作器38、40及び42毎にマップとして記憶している。プロセッサ34aは、遠隔車両10から受け取った車両重量に応じた操作反力を、そのようなマップから遠隔操作器38、40及び42毎に算出する。プロセッサ34aは、このように算出した操作反力の値を遠隔運転の開始後に用いられる遠隔操作器38、40及び42のそれぞれの操作反力として設定する。これにより、反力ユニット44、46及び48は、遠隔車両10から受け取った車両重量に応じた大きさの操作反力を遠隔操作器38、40及び42に付与することができる。
【0039】
付け加えると、図4に示す例では、操作反力は、車両重量の増加に伴って直線的に増加している。しかしながら、車両重量と操作反力との関係は、車両重量が大きい場合には、それが小さい場合と比べて大きくなるように操作反力が設定されていればよい。したがって、車両重量と操作反力との関係は、例えば、車両重量の増加に伴って操作反力が曲線的に増加するように設定されてもよいし、あるいは、車両重量の増加に伴って任意の段数でステップ的に増加するように設定されてもよい。
【0040】
1-3.効果
以上説明した実施の形態1によれば、遠隔運転装置30は、遠隔車両10から重量情報を受信し、受信した重量情報に基づいて各遠隔操作器38、40及び42の操作反力を設定する。受信した車両重量は車両特性に影響するパラメータの一例である。遠隔操作を行うオペレータは、このように設定される操作反力が付与された遠隔操作器38、40及び42を介して得られる遠隔車両10の操作感から車両特性を推測できるようになる。換言すると、車両重量に応じた操作特性(反力特性)の設定により、オペレータによる遠隔車両10の特性把握を補助できる。このように、実施の形態1によれば、オペレータは、遠隔操作対象の車両の違いに関係なく、実際に乗車して運転するときに近い感覚で遠隔運転を行えるようになる。
【0041】
また、実施の形態1では、操作反力は、遠隔車両10の重量が大きい場合には、それが小さい場合と比べて大きくなるように設定される。これにより、遠隔車両10がトラック等の重量が大きな車両である例では、遠隔操作器38、40及び42の操作特性として、操作反力が大きな操作特性が得られる。このため、オペレータは、重量が大きな車両を遠隔運転していることを認識できる。また、この例では、操作反力が大きな操作特性が与えられていることで、重量が大きな車両へのオペレータからの急な操作要求(すなわち、過度な操作の発生)を抑制できる。逆に、遠隔車両10が軽自動車等の重量が小さな車両である例では、遠隔操作器38、40及び42の操作特性として、操作反力が小さな操作特性が得られる。このため、オペレータは、重量が小さな車両を遠隔運転していることを認識できる。
【0042】
1-4.操作反力の他の設定例
操作反力の設定のために遠隔運転装置30に送信される「車両特性に影響するパラメータ」は、上述の車両重量に限られるものではなく、例えば、以下に説明される遠隔車両10のホイールベース、トレッド、乗車人数、又は積載重量であってもよい。これらのパラメータを利用する例においても、車両重量を利用する例と同様の効果が得られる。また、操作反力は、例えば、車両重量、ホイールベース、トレッド、乗車人数、及び積載重量のうちの複数に基づいて設定されてもよい。
【0043】
図5は、操作反力と遠隔車両10のホイールベースとの関係の一例を表したグラフである。図5に示すように、操作反力は、ホイールベースが長い場合には、それが短い場合と比べて大きくなるように設定されてもよい。この例では、遠隔車両10側の記憶装置18bに格納されているホイールベース情報が遠隔運転装置30に送信される。
【0044】
図6は、操作反力と遠隔車両10のトレッドとの関係の一例を表したグラフである。図6に示すように、操作反力は、トレッドが長い場合には、それが短い場合と比べて大きくなるように設定されてもよい。この例では、遠隔車両10側の記憶装置18bに格納されているトレッド情報が遠隔運転装置30に送信される。付け加えると、遠隔車両10が四輪自動車である例では、トレッド情報は、フロントトレッドとリアトレッドのどちらの情報でもよいし、あるいは、例えば、両者の平均値の情報であってもよい。
【0045】
図7は、操作反力と遠隔車両10の乗車人数との関係の一例を表したグラフである。図7に示すように、操作反力は、乗車人数が多い場合には、それが少ない場合と比べて大きくなるように設定されてもよい。乗車人数の検出は、例えば、遠隔車両10の各座席に設置された着座センサ26を利用する車載ECU18によって行うことができる。あるいは、遠隔車両10の車室内を撮像するカメラを備える例では、車載ECU18は、当該カメラの画像データを利用して乗車人数を検出してもよい。車載ECU18は、検出した乗車人数の情報を、通信装置20を用いて遠隔運転装置30に送信する。また、遠隔車両10が、乗務員が搭乗しているバス等の車両である例では、乗務員によってカウントされた乗車人数がHMI(Human Machine Interface)機器及び通信装置20を介して、遠隔運転装置30に送信されてもよい。
【0046】
図8は、操作反力と遠隔車両10の積載重量との関係の一例を表したグラフである。ここでいう積載重量は、遠隔車両10に積載された荷物の積載重量である。図8に示すように、操作反力は、積載重量が大きい場合には、それが小さい場合と比べて大きくなるように設定されてもよい。積載重量の検出は、例えば、遠隔車両10の荷室に設置された重量センサ28を利用する車載ECU18によって行うことができる。車載ECU18は、検出した積載重量の情報を、通信装置20を用いて遠隔運転装置30に送信する。
【0047】
1-5.遠隔運転装置(遠隔運転端末)の他の構成例
上述した実施の形態1では、「遠隔操作器」としてステアリング38、アクセルペダル40、及びブレーキペダル42のすべてを備える遠隔運転装置30が例示された。このような例に代え、遠隔運転装置(遠隔運転端末)は、ステアリング38、アクセルペダル40、及びブレーキペダル42のうちの何れか1つ又は2つのみを備えていてもよい。
【0048】
また、「車両特性に影響するパラメータ」に応じた操作反力の設定は、ステアリング38、アクセルペダル40、及びブレーキペダルのうちの何れか1つ又は2つに対して適用されてもよい。付け加えると、操舵を遠隔操作するための遠隔操作器は、必ずしもステアリング(ステアリングホイール)に限られず、例えば、ジョイスティックであってもよい。
【0049】
2.実施の形態2
実施の形態2においても、上述した実施の形態1と同様に、「車両特性に影響するパラメータ(例えば、車両重量)」に応じて、遠隔操作器38、40及び42の操作反力が設定される。そのうえで、実施の形態2では、車両走行に関する異常が遠隔車両10に生じた場合には、当該異常が生じていない場合と比べて大きな操作反力が遠隔操作器38、40及び42に対して付与される。
【0050】
図9は、実施の形態2に係る車両異常発生時の操作反力の設定に関する処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、オペレータによる遠隔車両10の遠隔運転の実行中に、例えば、上述の図3に示すフローチャートの処理に付随して実行される。
【0051】
図9では、遠隔運転装置30側のプロセッサ34aは、まず、ステップS300において、車両走行に関する異常が遠隔車両10に生じた否かを判定する。具体的には、車両走行に関する異常が遠隔車両10に生じた場合には、当該異常を検知した遠隔車両10から遠隔運転装置30に異常発生情報が送信される。例えば、プロセッサ34aは、本ステップS300の判定が成立するか否かを、このような異常発生情報を受信したか否かに基づいて行う。
【0052】
車両走行に関する異常とは、例えば、操舵装置12の転舵機構が車輪の転舵のために備える電動機の駆動力の低下である。また、当該異常の他の例は、電子制御式スロットルの不具合等に起因する駆動装置14の車両駆動力の低下、又は、電子制御ブレーキの不具合等に起因する制動装置16の制動力の低下である。
【0053】
ステップS300において異常が生じていない場合には、プロセッサ34aは、今回の処理を終了する。一方、ステップS300において異常が生じた場合には、処理はステップS302に進む。
【0054】
ステップS302では、例えば、プロセッサ34aは、異常が生じていない場合と比べて、各遠隔操作器38、40及び42の操作反力を所定値だけ増大するように反力ユニット44、46及び48を制御する。付け加えると、遠隔車両10の異常発生を受けて操作反力が高められる遠隔操作器は、必ずしも、ステップS302の例のように、すべての遠隔操作器38、40及び42でなくてもよい。すなわち、例えば、発生した異常に関連する遠隔操作器の操作反力のみが高められてもよい。例えば、操舵装置12に異常が生じた場合には、他のアクセルペダル40及びブレーキペダル42の操作反力は変更せずに、ステアリング38の操作反力が増大するように反力ユニット44が制御されてもよい。
【0055】
以上説明したように、実施の形態2によれば、操作反力の設定に対して遠隔車両10の異常が反映される。これにより、遠隔車両10に異常が生じていることを、遠隔操作器38、40及び42の操作感を通じてオペレータに伝達できる。また、異常発生時に操作反力を高めることにより、操作量が不用意に大きくなり過ぎないようにオペレータに注意を促すことができる。
【0056】
3.参考例
以下に説明される参考例は、遠隔操作を行うオペレータが、遠隔操作対象の車両(遠隔車両)の違いによらずに同等の操作特性で個々の遠隔車両を運転可能とするための構成を有する遠隔車両に関する。
【0057】
3-1.参考例1(車両重量)
まず、参考例1では、オペレータが車両重量の違いによらずに同等の操作特性で個々の車両を遠隔運転可能とするための構成を有する車両について説明する。当該車両は、次の技術的特徴を有する。
「遠隔操作器を操作するオペレータによって遠隔操作される車両群に含まれる車両であって、
前記車両である自車両は、操舵装置、駆動装置、及び制動装置を備え、
前記自車両は、操作入力に対する前記操舵装置、前記駆動装置、及び前記制動装置の少なくとも1つの出力特性について、前記オペレータによる遠隔運転時に、前記自車両に搭乗したドライバ又は自動運転システムによる非遠隔運転時と異なる出力特性を選択可能に構成され、
前記遠隔運転時に選択される前記出力特性を前記車両群に含まれる他車両と比較したとき、前記自車両の重量が前記他車両の重量よりも大きい場合には、前記自車両における操作入力に対する前記操舵装置、前記駆動装置、及び前記制動装置の少なくとも1つの出力の比は、前記他車両における操作入力に対する前記操舵装置、前記駆動装置、及び前記制動装置の少なくとも1つの出力の比よりも高い。」
【0058】
次に、上述の技術的特徴を有する車両の具体例を、図1及び図2に示す遠隔運転システム1及びそれが備える遠隔車両10を参照しつつ説明する。
【0059】
参考例1では、遠隔車両10は、遠隔操作器38、40及び42を操作するオペレータによって遠隔操作される車両群に含まれる車両の1つに相当する。遠隔車両10(自車両)は、操舵装置12、駆動装置14、及び制動装置16を備えている。
【0060】
本参考例1では、遠隔車両10(自車両)は、操作入力に対する操舵装置12、駆動装置14、及び制動装置16のそれぞれの出力特性について、オペレータによる遠隔運転時に、遠隔車両10に搭乗したドライバ又は自動運転システムによる非遠隔運転時と異なる出力特性を選択可能に構成されている。
【0061】
図10は、参考例1において遠隔運転時に選択される出力特性と車両重量との関係を表したグラフである。図10は、遠隔車両10(自車両)を含む遠隔操作対象の車両群に関する出力特性(すなわち、操作入力に対する出力の比R)の設定を示している。図10に示す設定によれば、当該車両群のうちで車両重量が大きい車両では、車両重量が小さい車両と比べて、比Rが高くなっている。換言すると、遠隔車両10(自車両)の出力特性を車両群に含まれる他車両と比較したとき、自車両の重量が他車両の重量よりも大きい場合には、自車両における比Rは、他車両における比Rよりも高くなる。
【0062】
具体的には、操舵装置12では、ステアリングホイール38bの回転角(操舵角)に対する車輪(タイヤ)の切れ角の比(ステアリングギヤ比)が、上述の比Rの一例に相当する。このため、車両重量が大きい車両では、それが小さい車両と比べて、オペレータによる同一の操舵角に対して車輪の切れ角が大きく変化する出力特性(いわゆる、クイックな出力特性)が得られる。
【0063】
また、駆動装置14では、アクセルペダル40の踏み込み量に対する駆動装置14の出力(例えば、エンジントルク)の比が、上述の比Rの他の例に相当する。このため、車両重量が大きい車両では、それが小さい車両と比べて、オペレータによる同一のアクセルペダル40の踏み込み量に対してエンジントルクが大きく変化する出力特性が得られる。
【0064】
また、制動装置16では、ブレーキペダル42の踏み込み量に対する制動装置16の出力(例えば、制動力)の比が、上述の比Rの他の例に相当する。このため、車両重量が大きい車両では、それが小さい車両と比べて、オペレータによる同一のブレーキペダル42の踏み込み量に対して制動力が大きく変化する出力特性が得られる。
【0065】
以上説明したように、参考例1によれば、遠隔操作対象となる車両群に含まれる各車両(遠隔車両10)には、図10に示すような車両重量に応じて異なる比R(すなわち、出力特性)が遠隔運転時用の出力特性として設定されている。このため、オペレータは、車両重量の違いに起因する車両特性の違いによらずに、同等の操作特性(操作感)で遠隔操作対象の各車両を遠隔運転することが可能となる。付け加えると、遠隔運転に適した出力特性を得ることが可能となる。
【0066】
なお、上述した例とは異なり、図10に示すような出力特性の設定は、ステアリング38、アクセルペダル40、及びブレーキペダル42のうちの何れか1つ又は2つのみに適用されてもよい。また、上述の車両群を遠隔操作する遠隔運転端末32が複数である例では、各車両における遠隔運転時用の出力特性は、個々の遠隔運転端末32と紐付けられ、遠隔運転端末32毎に異なるように設定されてもよい。また、当該車両群を遠隔操作するオペレータが複数存在する例では、各車両における遠隔運転時用の出力特性は、個々のオペレータと紐付けられ、オペレータ毎に異なるように設定されてもよい。
【0067】
3-2.参考例2~5(ホイールベース、トレッド、乗車人数、及び積載重量)
次に、図11図14を参照して、参考例2~5について説明する。以下の説明は、参考例1との相違点について行われる。
【0068】
参考例2~5では、参考例1の技術的特徴における「前記自車両の重量が前記他車両の重量よりも大きい場合」という文言が、それぞれ、「前記自車両のホイールベースが前記他車両のホイールベースよりも長い場合」、「前記自車両のトレッドが前記他車両のトレッドよりも長い場合」、「前記自車両の乗車人数が前記他車両の乗車人数よりも多い場合」、及び「前記自車両に積載された荷物の積載重量が前記他車両に積載された荷物の積載重量よりも大きい場合」に置き換えられる。
【0069】
図11図14は、それぞれ、参考例2~5において遠隔運転時に選択される出力特性と車両重量との関係を表したグラフである。図11に示す設定によれば、当該車両群のうちでホイールベースが長い車両では、それが短い車両と比べて、比Rが高くなっている。図12に示す設定によれば、当該車両群のうちでトレッドが長い車両では、それが短い車両と比べて、比Rが高くなっている。図13に示す設定によれば、当該車両群のうちで乗車人数が多い車両では、それが少ない車両と比べて、比Rが高くなっている。図14に示す設定によれば、当該車両群のうちで積載重量が大きい車両では、それが小さい車両と比べて、比Rが高くなっている。
【0070】
なお、上述の参考例1~5に代え、遠隔運転時の比R(出力特性)は、例えば、車両重量、ホイールベース、トレッド、乗車人数、及び積載重量のうちの複数に応じて異なるように設定されてもよい。
【0071】
3-3.参考例6
次に、上述した参考例1~5から独立した参考例6について説明する。参考例6は、図1に示す操舵装置12のようにステアリングホイールの回転角(操舵角)に対する車輪の切れ角の比(ステアリングギヤ比)を変更可能な操舵装置を備える遠隔車両(例えば、遠隔車両10)に適用される。当該操舵装置を備える車両では、車両に搭乗したドライバが当該車両を運転する場合には、ステアリングギヤ比を高くすることにより、ステアリングホイールの持ち替え操作を不要としつつ操舵角を大きく変更することが可能である。その一方で、オペレータがディスプレイ56を見ながら遠隔車両10を遠隔運転する場合には、上述のようにステアリングギヤ比が高い設定は、必ずしもオペレータにとって操作性の良いものとは言えない。
【0072】
図15は、参考例6に係る操舵特性の設定に関する処理の一例を示すフローチャートである。上述の課題に鑑み、参考例6では、図15に示すフローチャートの処理によって、遠隔運転時と非遠隔運転時(車両に搭乗したドライバによる運転時)との間で操舵特性が変更される。
【0073】
図15では、車載ECU18のプロセッサ18aは、まず、ステップS400において、遠隔運転の実行中であるか否かを判定する。その結果、遠隔運転の実行中でない場合には、処理はステップS402に進む。ステップS402では、プロセッサ18aは、搭乗ドライバによる運転中であるか否かを判定する。
【0074】
ステップS402の判定結果が否定的である場合(すなわち、自動運転の実行中)には、プロセッサ18aは今回の処理を終了する。一方、ステップS402において搭乗ドライバによる運転中の場合には、処理はステップS404に進む。ステップS404では、プロセッサ18aは、例えば、車速及び操舵角に応じてステアリングギヤ比を変化させるように操舵装置12を制御する。
【0075】
一方、ステップS400において遠隔運転の実行中である場合には、処理はステップS406に進む。ステップS406では、プロセッサ18aは、ステアリングギヤ比の可変機能を有しない一般的な車両と同等の値でステアリングギヤ比が固定されるように操舵装置12を制御する。
【0076】
以上説明した参考例6によれば、搭乗ドライバによる運転中にはステアリングギヤ比を可変とすることで高い操作性を確保しつつ、遠隔運転の実行中には固定されたステアリングギヤ比を利用して遠隔運転に適した操舵特性を実現できる。
【符号の説明】
【0077】
1 遠隔運転システム
2 無線通信ネットワーク
10 遠隔車両
12 操舵装置
14 駆動装置
16 制動装置
18 車載電子制御ユニット(車載ECU)
18a 車載ECUのプロセッサ
20 車両側の通信装置
22 車両状態センサ
24 認識センサ
26 着座センサ
28 重量センサ
30 遠隔運転装置
32 遠隔運転端末
34 遠隔運転装置側の電子制御ユニット(ECU)
34a 遠隔運転装置側のプロセッサ
36 遠隔運転装置側の通信装置
38 ステアリング
40 アクセルペダル
42 ブレーキペダル
44、46、48 反力ユニット
50 操舵角センサ
52 アクセルポジションセンサ
54 ブレーキポジションセンサ
56 ディスプレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15