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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20240820BHJP
   B60N 2/20 20060101ALI20240820BHJP
   B60N 3/06 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/20
B60N3/06
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021023758
(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公開番号】P2022125918
(43)【公開日】2022-08-29
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 光由
(72)【発明者】
【氏名】冨田 浩之
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-001681(JP,A)
【文献】特開2010-035970(JP,A)
【文献】特開2006-159979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-99/00
B60R 22/00-22/48
A47C 7/00-7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシートクッションと、
前記シートクッションのシート後方側にシート前後方向に回動可能に設けられ、乗員の背部を支持するシートバックと、
前記シートクッションのシート前方側に昇降可能に設けられたオットマンと、
少なくとも前記オットマンが上昇位置に配置され、かつ前記シートバックが安楽姿勢を採るときに、前記オットマンの幅方向に架設され、乗員の膝を拘束する拘束部材と、
車両の前面衝突を予知したときに、上昇位置に配置されている前記オットマンを下降位置まで落下させる落下装置と、
を備え
前記落下装置は、
前記オットマンの前記上昇位置でのロックを強制的に解除する解除機構と、
前記解除機構を作動させるマイクロガスジェネレーターと、
前記オットマンを常に前記下降位置へ付勢する付勢部材と、
を含んで構成されている車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前面衝突時に、シートクッション及びオットマンの少なくとも一方に収納したエアバッグを膨張展開することにより、慣性力によって前進移動しようとする乗員の下半身(腰及び下腿部の少なくとも一方)を受け止めて乗員を保護する着座装置は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。この着座装置は、乗員が安楽姿勢を採ったときでも、的確に乗員を保護できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-001681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成では、安楽姿勢を採っている乗員の挙動を的確に抑えるために、エアバッグの内圧を上げたり、固定部材(オットマン等)の強度及び剛性を高めたりする必要性がある。また、エアバッグを膨張展開させる構成であるため、誤作動したときには、その誤作動後にエアバッグを元の状態に復帰させることが困難となる。つまり、このような構成では、製造コストが増加する。
【0005】
そこで、本発明は、製造コストの増加を抑制しつつ、車両の前面衝突時に、安楽姿勢を採っている乗員の挙動を的確に抑えられる車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の車両用シートは、乗員が着座するシートクッションと、前記シートクッションのシート後方側にシート前後方向に回動可能に設けられ、乗員の背部を支持するシートバックと、前記シートクッションのシート前方側に昇降可能に設けられたオットマンと、少なくとも前記オットマンが上昇位置に配置され、かつ前記シートバックが安楽姿勢を採るときに、前記オットマンの幅方向に架設され、乗員の膝を拘束する拘束部材と、車両の前面衝突を予知したときに、上昇位置に配置されている前記オットマンを下降位置まで落下させる落下装置と、を備え、前記落下装置は、前記オットマンの前記上昇位置でのロックを強制的に解除する解除機構と、前記解除機構を作動させるマイクロガスジェネレーターと、前記オットマンを常に前記下降位置へ付勢する付勢部材と、を含んで構成されている
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、車両の前面衝突を予知したときに、上昇位置に配置されているオットマンが下降位置まで落下する。つまり、オットマンの落下に連動して、乗員の下肢が下降する。そのため、衝突の初期段階で膝の角度が直角に近くなり、拘束部材による膝に対する拘束性能が高められる。このように、本発明によれば、オットマンの強度及び剛性を高めたりすることなく、車両の前面衝突時に乗員が適切に拘束される。すなわち、本発明によれば、製造コストの増加を抑制しつつ、車両の前面衝突時に、安楽姿勢を採っている乗員の挙動が的確に抑えられる。なお、安楽姿勢とは、シートバックとシートクッションとで成す角度が所定の角度以上となるように後傾された姿勢のことである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、製造コストの増加を抑制しつつ、車両の前面衝突時に、安楽姿勢を採っている乗員の挙動を的確に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る車両用シートを示す側面図である。
図2】第1実施形態に係る落下装置の構成を拡大して示す側面図である。
図3】第1実施形態に係る落下装置の要部を拡大して示す斜視図である。
図4】第1実施形態に係る車両用シートの作用を示すフローチャートである。
図5】(A)車両の前面衝突時にオットマンが落下したときの乗員の挙動を示す側面図である。(B)車両の前面衝突時にオットマンが落下しないときの乗員の挙動を示す側面図である。
図6】第2実施形態に係る落下装置の構成を拡大して示す側面図である。
図7】第2実施形態に係る車両用シートの作用を示すフローチャートである。
図8】第3実施形態に係る落下装置の構成を拡大して示す側面図である。
図9】第3実施形態に係る車両用シートの作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPを車両用シート10の上方向、矢印FRを車両用シート10の前方向、矢印RHを車両用シート10の右方向とする。また、車両用シート10の左右方向を車両用シート10の幅方向とする。さらに、本実施形態では、右ハンドル車両(図示省略)の助手席に設けられた車両用シート10を例に採る。
【0011】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態に係る車両用シート10について説明する。図1に示されるように、車両用シート10は、乗員Pが着座するシートクッション14と、シートクッション14の後方側に設けられるとともに、リクライニング機構(図示省略)により回動軸15を中心に前後方向に回動可能に構成され、乗員Pの背部を支持するシートバック16と、シートバック16の上方側端部に昇降可能に設けられ、乗員Pの頭部を支持するヘッドレスト18と、を有している。
【0012】
シートクッション14は、左右一対の略矩形平板状のシートフレーム12に支持されており、各シートフレーム12は、前後方向に延在する左右一対のシートレール22にスライド可能に、かつ複数の位置でロック及びロック解除可能に支持されている。これにより、車両用シート10は、シートクッション14に着座した乗員Pにとって、シートレール22上の適切な位置に配置可能になっている。なお、乗員Pが、後述する安楽姿勢を採ったときには、車両用シート10は、主にシートレール22の最後部に配置される(図1参照)。
【0013】
また、車両用シート10は、シートクッション14の前方側で、かつ下方側に設けられ、前端部が上昇することにより、シートクッション14に着座した乗員Pの脚部(ふくらはぎ)を下方から持ち上げて支持するオットマン20と、オットマン20の後端部(シートクッション14側端部)に設けられた回動軸24を中心に、オットマン20の前端部を上下方向に移動(昇降)させる昇降装置としてのリクライナー(図示省略)と、を有している。
【0014】
リクライナーは、回動軸24の少なくとも軸方向一端部側に設けられており、回動軸24を中心に、電動によってオットマン20の前端部を昇降させる公知の装置である。このリクライナーにより、オットマン20は、図1において実線で示される最上部の位置と、図1において仮想線で示される最下部の位置(以下「下降位置」という)とを含む任意の位置で停止可能に構成されている。なお、本実施形態では、オットマン20が下降位置よりも上昇された位置を「上昇位置」といい、オットマン20が最上部の位置にある場合も含まれる。
【0015】
オットマン20を使用する際には、乗員Pがシートクッション14に着座した状態のまま、車両に設けられた操作スイッチ(図示省略)を操作する。すると、リクライナーにより、回動軸24を中心に、オットマン20の前端部が上昇(移動)する。これにより、乗員Pの脚部(ふくらはぎ)がオットマン20によって下方から支持されつつ持ち上げられるようになっている。
【0016】
また、オットマン20には、シートクッション14に着座した乗員Pの膝を含む下肢を拘束可能な拘束部材26が設けられている。拘束部材26は、幅方向が長手方向とされた帯状に形成されており、一端部が回動軸24の軸方向一端部に回動可能に取り付けられ、他端部が回動軸24の軸方向他端部に回動可能に取り付けられている。そして、この拘束部材26は、少なくともオットマン20が上昇位置に配置され、かつシートバック16が安楽姿勢を採るときに、自動的にオットマン20の幅方向に架設されるようになっている。
【0017】
すなわち、拘束部材26は、オットマン20が下降位置にあるときには、そのオットマン20の側面に沿って(側面に対向して)配置されている。そして、オットマン20が上昇すると、拘束部材26は、その動作に連動して回動軸24を中心にオットマン20よりも上方側へ自動的に回動し、次いで、その一端部及び他端部の少なくとも一方が下方側へスライドするなどして、その長さが調整される。これにより、乗員Pの膝を含む下肢が、拘束部材26によって適切に拘束される。
【0018】
なお、本実施形態における「安楽姿勢」とは、シートバック16とシートクッション14とで成す角度θが所定の角度(例えば130度)以上となるように、シートバック16が後傾された姿勢を言い、寝姿勢の場合も含む。また、拘束部材26がオットマン20の幅方向に架設されないと、オットマン20が上昇されず、かつシートバック16が所定の角度以上後傾できないように構成されていてもよい。
【0019】
また、車両用シート10には、車両の前面衝突を予知したときに、上昇位置に配置されているオットマン20を下降位置まで瞬間的に落下させる落下装置30(図2参照)が設けられている。なお、図2及び後述する図6図8においては、拘束部材26の図示を省略する。
【0020】
図2図3に示されるように、落下装置30は、モーター32の駆動によって作動(回転)するアクチュエーター34と、アクチュエーター34に一端部36Aが取り付けられたケーブル36と、ケーブル36の他端部36Bが取り付けられた解除用アーム38と、解除用アーム38の回動によってオットマン20の上昇位置でのロックを強制的に解除する公知の解除機構28と、を有している。
【0021】
具体的に説明すると、シートクッション14の下面で、かつ左右一対のシートフレーム12の間には、モーター32及びアクチュエーター34が設けられている。アクチュエーター34は、円筒状の本体部35を有しており、その本体部35の外周面にケーブル36の一端部36Aが固定されている。
【0022】
そして、車両には、車両に設けられた周辺状況検知装置としての各種センサー(カメラ、レーダーを含む:図示省略)から送信される衝突予知情報(信号)を受信する受信器(図示省略)が設けられており、この受信器とモーター32とが電気的に接続されている。したがって、各種センサーによって車両が前面衝突することを予知すると(受信器が衝突予知情報を受信すると)、モーター32が駆動してアクチュエーター34の本体部35が回転し、ケーブル36を巻き取るようになっている。
【0023】
解除用アーム38は、細長い略矩形平板状に形成されている。解除用アーム38の一端部には貫通孔38Aが形成されており、その貫通孔38Aにケーブル36の他端部36Bが挿通されて取り付けられている。そして、解除用アーム38の他端部が、解除機構28に連動可能に取り付けられている。
【0024】
解除用アーム38の他端部及び解除機構28は、オットマン20の回動軸24に同軸的に設けられており、解除用アーム38が、その他端部を中心に回動すると、オットマン20の任意の上昇位置でのロックを強制的に解除できるように構成されている。つまり、モーター32の駆動によってアクチュエーター34がケーブル36を巻き取ると、解除用アーム38が後方側へ引っ張られて回動し、解除機構28のロックが解除されて(リクライナーが解除されて)、そのオットマン20の前端部が自重で下降位置まで落下する構成になっている。
【0025】
以上のような構成とされた第1実施形態に係る車両用シート10において、次にその作用について説明する。
【0026】
図1に示されるように、車両の走行中において、乗員Pが安楽姿勢を採っているとき、即ちオットマン20が上昇位置に配置され、かつシートバック16がシートクッション14に対して所定の角度以上後傾されているときには、シートクッション14に着座した乗員Pの膝を含む下肢が拘束部材26によって拘束されている。
【0027】
この状態で、図4に示されるように、各種センサーによって車両が前面衝突することを予知すると、その衝突予知情報が受信器によって受信され、モーター32が駆動される。つまり、アクチュエーター34の本体部35が回転(作動)してケーブル36を巻き取る。すると、解除用アーム38の一端部が後方側へ引っ張られるため、解除用アーム38は他端部を中心に回動し、解除機構28のロックを解除する。つまり、リクライナーが解除される。これにより、オットマン20の前端部が自重で瞬間的に落下する。
【0028】
ここで、オットマン20が上昇位置に保持された状態のまま、車両が前面衝突すると、図5(B)に示されるように、乗員Pの爪先側が慣性力によって上方へ向かって大きく跳ね上げられ、膝の角度が大きく(180度近くまで)広がってしまう。膝の角度が大きく広がってしまうと、拘束部材26による膝に対する拘束性能が低下し、慣性力によって前進移動しようとする乗員Pの下半身(腰及び下腿部の少なくとも一方)を受け止め難くなる。すなわち、乗員Pの挙動を的確に抑える(保護する)ことが困難になってしまう。
【0029】
しかしながら、第1実施形態によれば、上記したように、オットマン20が上昇位置に保持された状態で、車両が前面衝突することを予知すると、オットマン20が強制的かつ瞬間的に下降位置まで落下し、そのオットマン20の落下に連動して、乗員Pの下肢が瞬間的に下降する。そのため、図5(A)に示されるように、乗員Pの爪先側が慣性力によって上方へ向かって跳ね上がることが抑制される(下肢の重さにより跳ね上がり量が低減される)。
【0030】
すなわち、この第1実施形態によれば、車両の前面衝突の初期段階において、膝の角度を瞬間的に小さく(直角に近く)することができるため、拘束部材26による膝に対する拘束性能を高めることができる。したがって、車両の前面衝突時に慣性力によって前進移動しようとする乗員Pの下半身(腰及び下腿部の少なくとも一方)を、その拘束部材26によって適切に受け止めることができ、所謂サブマリン現象の発生を抑制又は防止することができる。
【0031】
このように、第1実施形態によれば、車両の前面衝突時において、オットマン20の強度及び剛性を高めたりすることなく、乗員Pを適切に拘束することができる。また、エアバッグが設けられている場合でも、そのエアバッグの内圧を上げる必要性がない。さらに、落下装置30が誤作動してしまっても、その落下装置30を元の状態に容易に復帰させることができる。つまり、この第1実施形態によれば、製造コストの増加を抑制しつつ、車両の前面衝突時に、安楽姿勢を採っている乗員Pの挙動を的確に抑えることができる。
【0032】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、上記第1実施形態と同等の部位には、同じ符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0033】
図6に示されるように、この第2実施形態では、オットマン20の下面(裏面)における高さ方向及び幅方向の中央部と、左右一対のシートフレーム12の所定位置に架設された支持軸13の軸方向中央部との間に、付勢部材としての引っ張りコイルバネ(以下、単に「コイルバネ」という)40が架設されている点だけが、上記第1実施形態と異なっている。
【0034】
すなわち、オットマン20の下面における高さ方向及び幅方向の中央部には、略矩形平板状のブラケット21が突設されており、そのブラケット21には貫通孔21Aが形成されている。そして、その貫通孔21Aにコイルバネ40の一端部40Aが挿通されて取り付けられており、コイルバネ40の他端部40Bが支持軸13の軸方向中央部に巻回されて取り付けられている。これにより、オットマン20は、常に下降位置へ向かって付勢される構成になっている。なお、コイルバネ40の付勢力は、電動によるオットマン20の上昇を妨げない程度の付勢力となっている。
【0035】
以上のような構成とされた第2実施形態に係る車両用シート10において、次にその作用について説明する。なお、上記第1実施形態と共通する作用については適宜省略する。
【0036】
車両の走行中において、乗員Pが安楽姿勢を採っているとき、即ちオットマン20がコイルバネ40の付勢力に抗して上昇位置に配置され、かつシートバック16がシートクッション14に対して所定の角度以上後傾されているときには、シートクッション14に着座した乗員Pの膝を含む下肢が拘束部材26によって拘束されている。
【0037】
この状態で、図7に示されるように、各種センサーによって車両が前面衝突することを予知すると、その衝突予知情報が受信器によって受信され、モーター32が駆動される。つまり、アクチュエーター34の本体部35が回転(作動)してケーブル36を巻き取る。すると、解除用アーム38の一端部が後方側へ引っ張られるため、解除用アーム38は他端部を中心に回動し、解除機構28のロックを解除する。つまり、リクライナーが解除される。これにより、オットマン20の前端部が自重及びコイルバネ40の付勢力によって瞬間的に落下する。
【0038】
このように、第2実施形態に係る車両用シート10によれば、オットマン20が自重だけではなく、コイルバネ40の付勢力によって下降位置へ引っ張られるため、上記第1実施形態よりもすばやく下降位置へ落下させることができる(上記第1実施形態に比べて、オットマン20の落下速度を速めることができる)。したがって、車両の前面衝突時に、慣性力によって前進移動しようとする乗員Pをより早く適切に拘束することができる。
【0039】
<第3実施形態>
最後に、第3実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、上記第1実施形態及び第2実施形態と同等の部位には、同じ符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0040】
図8に示されるように、この第3実施形態に係る車両用シート10では、モーター32の代わりに、マイクロガスジェネレーター(以下「MGG」という)42が設けられ、そのMGG42と受信器とが電気的に接続されている点だけが、上記第2実施形態と異なっている。
【0041】
すなわち、シートクッション14の下面で、かつ左右一対のシートフレーム12の間には、モーター32の代わりにMGG42が設けられており、アクチュエーター34の本体部35は、そのMGG42の作動によって高速で回転するように構成されている。つまり、各種センサーによって車両が前面衝突することを予知すると(受信器が衝突予知情報を受信すると)、MGG42が作動して本体部35が高速で回転し、ケーブル36を瞬時に巻き取るようになっている。
【0042】
以上のような構成とされた第3実施形態に係る車両用シート10において、次にその作用について説明する。なお、上記第2実施形態と共通する作用については適宜省略する。
【0043】
車両の走行中において、乗員Pが安楽姿勢を採っているとき、即ちオットマン20がコイルバネ40の付勢力に抗して上昇位置に配置され、かつシートバック16がシートクッション14に対して所定の角度以上後傾されているときには、シートクッション14に着座した乗員Pの膝を含む下肢が拘束部材26によって拘束されている。
【0044】
この状態で、図9に示されるように、各種センサーによって車両が前面衝突することを予知すると、その衝突予知情報が受信器によって受信され、MGG42が作動する。つまり、アクチュエーター34の本体部35が高速で回転(作動)してケーブル36を巻き取る。
【0045】
すると、解除用アーム38の一端部が後方側へ瞬時に引っ張られるため、解除用アーム38は他端部を中心に瞬時に回動し、解除機構28のロックを瞬時に解除する。つまり、リクライナーが瞬時に解除される。これにより、オットマン20の前端部が自重及びコイルバネ40の付勢力によって瞬間的に落下する。
【0046】
このように、第3実施形態に係る車両用シート10によれば、上記第1実施形態及び第2実施形態に比べて、より速い速度でケーブル36を巻き取ることができ、リクライナーを瞬時に解除することができる。そして、オットマン20が自重だけではなく、コイルバネ40の付勢力によって下降位置へ引っ張られるため、上記第1実施形態よりもすばやく下降位置へ落下させることができる(上記第1実施形態に比べて、オットマン20の落下速度を速めることができる)。したがって、車両の前面衝突時に、慣性力によって前進移動しようとする乗員Pをより早く適切に拘束することができる。
【0047】
以上、本実施形態に係る車両用シート10について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る車両用シート10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、拘束部材26は、自動でオットマン20の幅方向に架設される態様に限定されるものではなく、乗員Pの手動によってオットマン20の幅方向に架設されるように構成されていてもよい。
【0048】
また、落下装置30は、電動機構で構成してもよい。すなわち、オットマン20は、電動で昇降するように構成されているが、例えば上昇位置では常に通電しておき、その通電が遮断されることで、オットマン20が自重で落下するように構成してもよい。また、オットマン20を電動で強制的に下降位置まで回動させる構成にしてもよい。また、この車両用シート10は、車両の助手席に適用される態様に限定されるものではなく、車両の後席や自動運転車両の運転席等にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 車両用シート
14 シートクッション
16 シートバック
20 オットマン
26 拘束部材
30 落下装置
P 乗員
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9