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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】放射線画像撮影装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20240820BHJP
   A61B 6/42 20240101ALI20240820BHJP
【FI】
G01T7/00 A
A61B6/42 500S
A61B6/42 500W
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021027629
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022129074
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 順一朗
(72)【発明者】
【氏名】角 誠
(72)【発明者】
【氏名】石本 一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 知成
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-015628(JP,A)
【文献】特開2017-067564(JP,A)
【文献】特開2012-229940(JP,A)
【文献】特開2012-181101(JP,A)
【文献】特開2015-025682(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0239412(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 7/00
A61B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を電気信号に変換する変換器及び前記変換器を支持する支持体を有する放射線検出器と、
前記放射線検出器を収容する平面視において矩形状の筐体を有し、
前記放射線検出器は、前記筐体の放射線が入射する面の内面に固定されており、
前記筐体の放射線が入射する面とは反対側の面である背面には、少なくとも前記筐体の背面の各辺に沿って凹状の把持部が設けられており、
前記把持部は、前記筐体の放射線が入射する面と平行な方向において、前記把持部の内面と前記支持体が接するように設けられている放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記把持部は、前記筐体の背面の各辺に沿って周状に設けられている請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記把持部の深さは、4mm以上8mm未満である請求項1又は2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記把持部の始端から前記筐体端部までの最短距離は、25mm以内である請求項1から3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記変換器は、可撓性を有する請求項1からのいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記筐体のうち少なくとも把持部は、短繊維を含む炭素繊維強化樹脂により形成されている請求項1からのいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記支持体は、発泡体により形成されている請求項1からのいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記放射線検出器は、前記筐体から取り外し可能である請求項1からのいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記把持部は、長尺撮影を行うために複数の放射線画像撮影装置を重なり合うように並べる際の他の放射線画像撮影装置との重なりがない前記筐体の辺に沿って、前記筐体の角部近傍まで延在して設けられている請求項1からのいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記筐体の側面に外部から給電もしくは外部と通信を行うためのコネクターが設けられ、
前記把持部は、前記コネクターが設けられている辺の対辺に沿って、前記筐体の角部近傍まで延在して設けられている請求項1からのいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パネル状をした可搬型の放射線画像撮影装置は、撮影の度に撮影場所へと持ち運ばれることが多い。このため、可搬型の放射線画像撮影装置には、持ち運びをし易くするため、把持部が設けられている。
【0003】
例えば特許文献1には、放射線検出パネルと、該放射線検出パネルを収容する直方体形状の筐体と、を備える放射線撮影装置について記載されている。さらに、その放射線撮影装置の筐体の放射線が入射する前面とは反対の側に配置された背面の周辺領域には、窪んだ把持部が形成され、把持部は、前面と背面との間の距離の1/2以上の深さを有する、または、把持部は、背面と放射線撮影装置の重心との距離以上の深さを有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-67564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1における放射線撮影装置は、外部から衝撃を受けた場合、放射線撮影装置内部に設けられる内部モジュールの破損防止のために、例えば、筐体の側面とモジュールとの間に緩衝材が設けられることが考えられる構造であった。そのため、把持部の形状や配置に制約があった。
また、近年様々な感染症が流行しており、病院では放射線画像撮影装置を介した院内感染を防止するため、放射線画像撮影装置を感染防止用のビニール袋等に入れて使用し、被験者ごとにビニール袋を交換することが推奨されている。しかしながら、放射線画像撮影装置を感染防止用ビニール袋に入れると滑りを生じ、把持性が悪化する。そこで、特許文献1における放射線画像撮影装置のように凹状の把持部を設けて指がかかるようにすると持ちやすい。しかし、上記した製造上の制約がある場合、どの方向からでも把持しやすい放射線画像撮影装置を製造することは困難であった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、外部から衝撃を受けても破損しにくく、どの方向からでも把持しやすい放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の放射線画像撮影装置は、
放射線を電気信号に変換する変換器及び前記変換器を支持する支持体を有する放射線検出器と、
前記放射線検出器を収容する平面視において矩形状の筐体を有し、
前記放射線検出器は、前記筐体の放射線が入射する面の内面に固定されており、
前記筐体の放射線が入射する面とは反対側の面である背面には、少なくとも前記筐体の背面の各辺に沿って凹状の把持部が設けられており、
前記把持部は、前記筐体の放射線が入射する面と平行な方向において、前記把持部の内面と前記支持体が接するように設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外部から衝撃を受けても破損しにくく、どの方向からでも把持しやすい放射線画像撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の実施形態に係る放射線画像撮影装置の前面と側面の一部を見たときの斜視図である。
図1B】本発明の実施形態に係る放射線画像撮影装置の背面と側面の一部を見たときの斜視図である。
図2図1Aの放射線画像撮影装置のII-II断面図である。
図3図1Aの放射線画像撮影装置のII-IIにおける把持部の断面図を上下逆にした図である。
図4A】放射線画像撮影装置を把持した際の把持力を示す図である。
図4B】把持部の深さに対する把持力の比率とビニール袋の破れの実験結果を示す図である。
図5図2の部分断面図である。
図6】光電変換部の一例を示す平面図である。
図7】背面から見た蓋体がない状態の放射線画像撮影装置を示す図である。
図8】変形例1の内部モジュールを前面部から剥がしている状態の放射線画像撮影装置のII-II断面図を上下逆にした図である。
図9】変形例2に係る放射線画像撮影装置の背面から見た図である。
図10A】1ショット長尺撮影時における変形例3に係る放射線画像撮影装置を側面から見た図である。
図10B】1ショット長尺撮影時における変形例3に係る放射線画像撮影装置を背面から見た図である。
図11A】変形例4に係る回診車に搭載された放射線画像撮影装置100を側面から見た図である。
図11B】変形例4に係る放射線画像撮影装置100を背面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。しかし、本発明は、図面に図示されたものに限定されるものではない。
【0011】
始めに、本実施形態に係る放射線画像撮影装置100の概略構成について説明する。
放射線画像撮影装置100は、受けた放射線に応じた放射線画像を生成するためのものである。
【0012】
[1.筐体]
放射線画像撮影装置100は、平面視において矩形状の筐体110を備えており、図1Aは、筐体110の放射線が入射する前面110a及び側面110cの一部を見たときの斜視図である。図1Bは、筐体110の前面110aとは反対側の背面110b及び側面110cの一部を見たときの斜視図である。
図1Bに示すように、筐体110の背面110bには、背面110bの周辺領域において各辺に沿って、周状に凹状の把持部7が設けられている。背面110bの各辺に沿って把持部7が設けられていることで、放射線画像撮影装置100の様々な向きでの把持を可能とする。また、被検者の下に放射線画像撮影装置100を差し込んで撮影する場合、撮影後に放射線画像撮影装置100を引き抜く際に、放射線画像撮影装置100が見えていなくても、把持部7を把持しやすいので、撮影者の自由度が上がり、撮影負荷を軽減させることができる。
また、筐体110の側面110cには、外部から有線接続で給電したり、外部と通信を行うためのコネクター51を備えている。
【0013】
図2は、図1Aに示す放射線画像撮影装置100のII-II断面図である。
筐体110は、図2に示すように、放射線検出器である内部モジュール120を収容する。
また、筐体110は、箱体1と、蓋体2と、を備えており、矩形のパネル状である。
【0014】
また、筐体110は、放射線の透過を邪魔しない材料で形成されている。
筐体110の材質は、短繊維を含む炭素繊維強化樹脂(Carbon Fiber ReinforcedPlastic:CFRP)である。
こうすることで、把持部7を成形する際に筐体110の材質がよく伸び、把持部7が形成しやすい。
なお、筐体110の材質は、蓋体2のみ、または把持部7のみを短繊維を含む炭素繊維強化樹脂とし、他の部分は別の材質であってもよい。別の材質としては、例えば、ガラス繊維強化樹脂(Glass Fiber Reinforced Plastic:GFRP)、軽金属、又は軽金属を含む合金、炭素繊維強化熱可塑性樹脂(Carbon Fiber RenforcedThermo Plastics:CFRTP)等である。また、筐体110の材質を炭素繊維強化(熱可塑性)樹脂又はガラス繊維強化樹脂とする場合、プリプレグよりも短い繊維を含む材料であるSMC(Sheet Molding Compound)を用いて形成されたものとしてもよい。
軽金属には、アルミニウムやマグネシウムのような相対的に比重が低い金属が含まれる。
こうすることで、筐体110の剛性を保ちつつ筐体110を軽量化することができる。
特に、炭素繊維強化樹脂は、放射線透過率が大きいため、被検者を透過してきた放射線が途中で減衰することなく内部モジュール120へ到達する。このため、放射線画像の画質を、筐体110を他の材質とした場合よりも高くすることができる。
【0015】
また、筐体110は、表面全体又は材料自体に練りこまれた抗菌加工が施されたものであってもよい。
また、筐体110は、角部(前面部11の四隅及び背面部21の四隅のうちの少なくともいずれか)に保護部材が設けられたものであってもよい。
保護部材の材質は、金属であってもよいが、本実施形態に係る放射線画像撮影装置100は軽量で、衝突によって受ける衝撃が小さいため、弾性体(樹脂やゴム、エラストマー等)であってもよい。
なお、少なくとも一つの保護部材は、色及び形状のうちの少なくとも一方が他の保護部材と異なっていてもよい。このようにすれば、色及び形状のうちの少なくとも一方が他と異なる保護部材の位置によって、放射線画像撮影装置100の向きを容易に識別することができる。
【0016】
〔1-1.箱体〕
箱体1は、前面部11と側面部12を有している。
前面部11及び側面部12は一体に形成されている。
なお、前面部11と側面部12とは別部材であってもよい。
【0017】
(1-1-1.前面部)
前面部11は、内部モジュール120が備える後述する撮像面312gと対向するとともに当該撮像面312gと平行に広がっている。
また、前面部11の外側表面が放射線画像撮影装置100(筐体110)の放射線入射面110a(前面)となる。
前面部11は、矩形の板状に形成されている。
また、放射線入射面110aには、変換器であるセンサーパネル31(図5参照)の有効画像領域(複数の半導体素子312b(図6参照)が配列された領域)の範囲が図示しない枠で示されている。
【0018】
(1-1-2.側面部)
側面部12は、前面部11の周縁部から、放射線入射面110aと直交する方向であって背面部21が存在する方向に延設されている。
また、側面部12の外側表面が放射線画像撮影装置100(筐体110)の側面110cとなる。
【0019】
〔1-2.蓋体〕
蓋体2は、背面部21を有している。
本実施形態に係る蓋体2は、全体が背面部21となっている。
背面部21は、内部モジュール120を挟んで箱体1の前面部11と対向するとともに当該前面部11と平行に広がっており、凹状の把持部7が設けられている。
また、背面部21の外側表面が放射線画像撮影装置100(筐体110)の背面110bとなる。
【0020】
(1-2-1.把持部)
図3は、図1に示す放射線画像撮影装置100のII-IIにおける把持部7の断面図を上下逆にした図である。
図3に、把持部7の位置、形状の例を示す。図3に示す例では、筐体110の側面110cである筐体110端部から把持部7の始端までの領域(B領域)の長さを25mm以内とする。B領域の寸法を25mm以内とすることで、被検者の下に放射線画像撮影装置100を差し入れて撮影する場合、撮影後に放射線画像撮影装置100を引き抜く際に深く手を入れる必要がなく、引き抜きやすい。
また、把持部7の始端と終端との間の領域(C領域)の長さは、指が入る程度の長さであればよく、例えば、15~30mmである。
図3に示す例において、把持部7の深さをDとする。
【0021】
ここで、図4Aは把持部7を把持した際の把持力を示す図である。また、図4Bに、放射線画像撮影装置100を感染防止用のビニール袋に入れずに把持した場合の把持部7の深さDに対する図4Aに示す把持力の比率と、ビニール袋に入れて把持した場合の把持部7の深さDに対する図4Aに示す把持力の比率と、ビニール袋に入れて把持した場合のビニール袋の破れの有無の実験結果を示す。
図4Bに示す実験結果の実験では、大きさ(縦、横、厚さ)が約460mm×380mm×15mmであり、重さが約2.6kgである放射線画像撮影装置100を使用した。また、厚さが0.02mmであり、材質が低密度ポリエチレンである一般的な業務用ビニール袋を使用した。
図4Bの実験結果において、把持部7の深さDが0mmであり、ビニール袋なしの場合の把持力の比率を100とする。
把持部7の深さDが0mmの場合、ビニール袋なしの把持力の比率は100であり、ビニール袋ありの把持力の比率は199である。ビニール袋による滑りが生じ、ビニール袋ありの場合の把持力の比率が、把持部7の深さDが0mmでありビニール袋なしの場合の把持力の比率より大きい。そのため、放射線画像撮影装置100を把持するためにより大きい把持力が必要となる。また、把持部7の深さDが0mmの場合、ビニール袋の破れはない。
また、把持部7の深さDが2mmの場合、ビニール袋なしの把持力の比率は81であり、ビニール袋ありの把持力の比率は115である。把持部7の深さDが0mmの場合と同様に、ビニール袋ありの場合の把持力の比率が、把持部7の深さDが0mmでありビニール袋なしの場合の把持力の比率より大きい。そのため、放射線画像撮影装置100を把持するためにより大きい把持力が必要となる。また、把持部7の深さDが2mmの場合、ビニール袋の破れはない。
また、把持部7の深さDが4mmの場合、ビニール袋なしの把持力の比率は55であり、ビニール袋ありの把持力の比率は75である。ビニール袋ありの場合の把持力の比率が、把持部7の深さDが0mmでありビニール袋なしの場合の把持力の比率より小さい。そのため、この場合に放射線画像撮影装置100を把持するために必要な把持力は、把持部7の深さDが0mmでありビニール袋なしの場合より小さい。また、把持部7の深さDが4mmの場合、ビニール袋の破れはない。
また、把持部7の深さDが6mmの場合、ビニール袋なしの把持力の比率は39であり、ビニール袋ありの把持力の比率は51である。把持部7の深さDが4mmの場合と同様に、ビニール袋ありの場合の把持力の比率が、把持部7の深さDが0mmでありビニール袋なしの場合の把持力の比率より小さい。そのため、この場合に放射線画像撮影装置100を把持するために必要な把持力は、把持部7の深さDが0mmでありビニール袋なしの場合より小さい。また、把持部7の深さDが6mmの場合、ビニール袋の破れはない。
また、把持部7の深さDが8mmの場合、ビニール袋なしの把持力の比率は29であり、ビニール袋ありの把持力の比率は、被験者の爪の形状によりビニール袋が破れてしまうものが発生したため計測不可である。
以上の結果より、把持部7の深さDは、4mm以上8mm未満とする。こうすることで、放射線画像撮影装置100が感染防止用のビニール袋に覆われている場合でも、把持部7が深すぎてビニール袋が破れたり、把持部7が浅すぎて滑ったりすることがなく、適切に把持部7を把持することができる。
【0022】
また、蓋体2(背面部21)は、箱体1の側面部12に当接するとともに側面部12に取り付けられる。
これにより、側面部12は、前面部11と背面部21とをつなぐことになる。
本実施形態に係る蓋体2は、箱体1にネジ止めされる。
このため、放射線画像撮影装置100を修理したりメンテナンスしたりする場合に、ネジを緩めて取り外すだけで背面部21を前面部11と側面部12から分離することができる。すなわち、放射線画像撮影装置100をメンテナンスする人は、前面部11と側面部12により収納された内部モジュール120に容易にアクセスすることができる。
また、蓋体2と箱体1の間にパッキンを挟んでネジ止め、あるいは接着することにより、防水構造としてもよい。水分が浸入しないことで、発泡体が吸水してセンサーパネルや電気部品に影響することを防止できる。
【0023】
〔1-3.その他〕
なお、図2には、側面部12が前面部11と一体形成された筐体110(箱体1)を例示したが、筐体110は、側面部12が背面部21と一体になったものであってもよいし、前面部11、側面部12及び背面部21がそれぞれ別々の部材となっているものであってもよい。
また、前面部11と背面部21の両方が側面部を備えたものであってもよい。
また、図2には、箱体1と蓋体2とを備える筐体110を例示したが、前面部11と、背面部21と、前面部11の両端と背面部21の両端とをそれぞれつなぐ一対の側面部12と、を有し筒状に形成された筒体と、筒体の開口部を閉塞する蓋体と、を備えたものであってもよい。
【0024】
[2.内部モジュール]
内部モジュール120は、筐体110の前面部11、背面部21及び側面部12のうちの少なくともいずれかの内面に固定されている。
本実施形態に係る内部モジュール120は、図2に示したように、前面部11の内面に固定されている。
内部モジュール120の筐体110への固定方法には、接着剤を用いた接着、粘着テープを用いた粘着、内面に形成された凹部又は凸部への嵌合、内面に形成された係合部への係合等が含まれる。
こうすることで、放射線画像撮影装置100の側面110cと略直交する方向から衝撃を受けたときに、内部モジュール120が移動してしまうことを抑制し、内部モジュール120の破損を防ぐことができる。また、側面部12の内面近傍に側面緩衝材とそれを補強する補強部を設ける必要がなく、放射線画像撮影装置100内部に把持部7を設ける空間を確保することができる。
【0025】
なお、内部モジュール120は、背面部21の内面又は側面部12の内面に固定されていてもよい。
また、内部モジュール120は、前面部11の内面と背面部21の内面、前面部11の内面と側面部12の内面、側面部12の内面と背面部21の内面とにそれぞれ固定されていてもよい。
また、内部モジュール120は、前面部11の内面、側面部12の内面及び背面部21の内面にそれぞれ固定されていてもよい。
【0026】
また、本実施形態に係る内部モジュール120は、図2に示すように、側面部12の内面と所定距離d以上離間している。すなわち、内部モジュール120と側面部12との間には幅がd以上の空隙が存在する。
こうすることで、放射線画像撮影装置100は、放射線画像撮影装置100の側面110cと略直交する方向から衝撃を受けたときに、内部モジュール120が側面部12に衝突して破損してしまうことを防ぐことができる。
【0027】
内部モジュール120は、放射線検出部3と、支持体である支持部材4と、電気部品5を備えている。なお、内部モジュール120に後述する固定層6を含めてもよい。
【0028】
〔2-1.放射線検出部〕
放射線検出部3は、図2に示すように、筐体110の前面部11と支持部材4との間に設けられている。
本実施形態に係る放射線検出部3は、固定層6を介して前面部11と支持部材4との間に設けられている。
放射線検出部3は、図5に示すように、センサーパネル31と、放射線遮蔽層32と、電磁界シールド層33を備えている。
【0029】
(2-1-1.センサーパネル)
本実施形態に係るセンサーパネル31は、放射線遮蔽層32と電磁界シールド層33との間に設けられている。
また、本実施形態に係るセンサーパネル31は、波長変換部311と、光電変換部312と、を備えている。
【0030】
波長変換部311は、放射線を可視光などに変換するためのものである。
本実施形態に係る波長変換部311は、電磁界シールド層33と光電変換部312との間に設けられている。
また、本実施形態に係る波長変換部311は、筐体110の放射線入射面110aと平行に広がるように配置されている。
また、本実施形態に係る波長変換部311は、図示しない支持層と、蛍光体層と、を有している。
【0031】
支持層は、可撓性材料でフィルム状(薄い板状)に形成されている。
可撓性材料には、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、アラミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はこれらのうちの少なくとも二種以上を混合させた複合材料が含まれる。
特に、上記材料のうち、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、PTFE、又はこれらの複合材料とするのが、耐熱性を向上させる観点から好ましい。
また、本実施形態に係る支持層は、矩形に形成されている。
【0032】
蛍光体層は、支持層の表面に蛍光体で形成されている。
蛍光体は、α線、γ線、X線等の電離放射線が照射されたときに原子が励起されることにより発光する物質のことである。すなわち、蛍光体は、放射線を紫外線や可視光に変換するものである。
蛍光体には、例えばヨウ化セシウム(CsI)の柱状結晶等を用いることができる。
【0033】
本実施形態に係る蛍光体層は、支持層における光電変換部312と対向する面全体に形成されている。
すなわち、波長変換部311は、矩形に形成されていることになる。
また、本実施形態に係る蛍光体層は、支持層が撓んだときに共に撓む(弾性変形する)ことが可能な厚さとなっている。
【0034】
このように構成された波長変換部311は、可撓性を有する板状をなし、放射線を受けた領域が、受けた放射線の線量に応じた強度で発光する。
【0035】
光電変換部312は、光を電気信号に変換するためのものである。
本実施形態に係る光電変換部312は、波長変換部311と放射線遮蔽層32との間に設けられている。
また、本実施形態に係る光電変換部312は、波長変換部311と平行に広がるように配置されている。
光電変換部312は、波長変換部311に貼り合わされている。
光電変換部312は、図6に示すように、基板312aと、複数の半導体素子312bと、複数の走査線312cと、複数の信号線312dと、複数のスイッチ素子312eと、複数のバイアス線312fと、有している。
【0036】
基板312aは、可撓性材料でフィルム状(薄い板状)に形成されている。
本実施形態に係る基板312aの正面視形状は、波長変換部311と略等しい矩形となっている。
本実施形態に係る基板312aは、上記波長変換部311の支持層と同じ材料で形成されている。
すなわち、本実施形態に係る基板312aは可撓性を有しており、その熱膨張率及び熱収縮率は、支持層の熱膨張率及び熱収縮率と等しくなっている。
このため、光電変換部312が熱膨張する際、波長変換部311も一緒に熱膨張するため、光電変換部312と波長変換部311の積層体が反りにくくなる。その結果、波長変換部311のある発光位置と対向する半導体素子312bとがずれなくなり、放射線画像の画質が低下するのを防ぐことができる。
なお、基板312aを、熱膨張率及び熱収縮率が上記支持層と同じで、且つ上記支持層とは異なる材料で形成するようにしてもよい。
【0037】
複数の半導体素子312bは、それぞれ受けた光の強度に応じた量の電荷を発生させるようになっている。
また、複数の半導体素子312bは、基板312aの表面に二次元状に分布するように形成されている。
具体的には、複数の半導体素子312bは、基板312aにおける、波長変換部311と接する(貼り合わされる)面にマトリクス(行列状)に配列されている。
本実施形態に係る複数の半導体素子312bは、撮像面312gの中央部に、マトリクス(行列)状に配列されている。具体的には、基板312aの表面における、等間隔且つ互いに平行に伸びるように形成された図示しない複数の走査線312cと、等間隔且つ走査線と直交するように形成された図示しない複数の信号線312dと、によって囲まれる複数の矩形領域(放射線画像の各画素に対応)内にそれぞれ配置されている。
また、各矩形領域内には、スイッチ素子312eがそれぞれ設けられている。スイッチ素子312eは、例えばTFTで構成されており、各スイッチ素子312eのゲートは走査線312cに、ソースは信号線312dに、ドレインは半導体素子312bに、それぞれ接続されている。
【0038】
以下、基板312aにおける半導体素子312bが形成されている面を撮像面312gと称する。
このように構成された光電変換部312は、可撓性を有し、半導体素子312bが形成された撮像面312gが波長変換部311の方を向くように配置されている。
【0039】
また、上記のように波長変換部311と光電変換部312から構成されるセンサーパネル31を可撓性材料で形成することによって、放射線画像撮影装置100が衝撃を受けても、センサーパネル31は破損しにくく、またセンサーパネル31を軽量化することができる。
【0040】
(2-1-2.放射線遮蔽層)
放射線遮蔽層32は、散乱線が電気回路52へ到達するのを防ぐためのものである。
本実施形態に係る放射線遮蔽層32は、図5に示したように、センサーパネル31(光電変換部312)と電磁界シールド層33との間に設けられている。
また、本実施形態に係る放射線遮蔽層32は、図示しない取り付け部によってセンサーパネル31を固定している。
【0041】
(2-1-3.電磁界シールド層33)
電磁界シールド層33は、ノイズをシールドするためのものである。
電磁界シールド層33は、放射線検出部3の撮像面312g、及び撮像面312gと反対側の面のうちの少なくとも一方の面側に設けられている。
本実施形態に係る電磁界シールド層33は、図5に示すように、撮像面312g側と反対側の面側の両方にそれぞれ設けられている。
なお、撮像面312g側の電磁界シールド層33は、固定層6により前面部11の内面に貼り付けられ、撮像面312gと反対側の面側の電磁界シールド層33は、固定層6により支持部材4に貼りつけられている。
【0042】
電磁界シールド層33は、一部に導電性材料を含む層状部材である。
本実施形態に係る電磁界シールド層33には、樹脂フィルムの表面に金属層が形成されたもの、透明導電材料(例えば酸化インジウムスズ(ITO)等)で形成されたフィルム等が含まれる。
金属には、例えば、アルミ、銅等が含まれる。
金属層の形成方法には、例えば、金属箔を貼りつける方法、金属を蒸着する方法等が含まれる。
電磁界シールド層33には、アルペット(登録商標、パナック株式会社)のようなフィルムが好適である。
電磁界シールド層33は、一の面に少なくとも1層以上設けられている。
【0043】
撮像面312g側に電磁界シールド層33が設けられていれば、前面部11側から入り込む外部ノイズをシールドすることができる。
一方、撮像面312gと反対側に電磁界シールド層33が設けられれば、電気回路52が発生させるノイズをシールドすることができる。
【0044】
なお、電磁界シールド層33は、例えばグランド(GND)と接続されていてもよい。このようにすれば、電磁界シールド層33の電位が一定に保たれ、ノイズのシールド効果をより高めることができる。
また、この場合、アルミや銅とのイオン化傾向の差が小さい金属(例えば、ニッケル)を介在させるようにするのが好ましい。
イオン化傾向の差が小さい金属は、例えば、イオン化傾向の差が小さい金属でメッキされた中間部材や、イオン化傾向の差が小さい金属を導電フィラーとして含む導電テープの形で介在させる。
イオン化傾向の差が大きい金属同士(例えば、アルミと銅)が接触すると、電食が起きてしまう場合があるが、このようにすれば、電食を防止することができる。
【0045】
(2-1-4.固定層)
固定層6は、図5に示すように、接着層61と緩衝材62を備える。
接着層61は、接着剤や粘着テープ等で構成される。
緩衝材62は、接着層61の間に設けられており、外部からの荷重や衝撃を吸収するためのものである。
固定層6は、筐体110の前面部11と電磁界シールド層33との間に設けられている。
こうすることで、前面部11側から受けた荷重や衝撃がセンサーパネル31に伝わってしまうのを防ぐことができる。
また、固定層6は、電磁界シールド層33と支持部材4との間に設けられている。
こうすることで、背面部21側から受けた荷重や衝撃がセンサーパネル31に伝わってしまうのを防ぐことができる。
【0046】
〔2-2.支持部材〕
支持部材4は、放射線検出部3を支持するものである。
この「支持する」には、前面部11側から受けた荷重に対し放射線検出部3を支えることだけではなく、支持部材4上に放射線検出部3が設けられていることも含まれる。
支持部材4は、図2に示したように、放射線検出部3と背面部21との間に設けられている。
こうすることで、筐体110が外部から受けた荷重を支持部材4が分散させるため、放射線検出部3(センサーパネル31)が撓むのを抑制することができる。
【0047】
支持部材4は、発泡体で形成されている。
このようにすることで、金属や発砲でない樹脂で形成する場合に比べ、支持部材4を含む内部モジュール120を軽量化することができるため、放射線画像撮影装置100が外部から衝撃を受けても、固定層6にかかる負荷を軽減することができる。
発泡体の材質には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリウレタン、アクリル、エポキシのうちのいずれか一つが含まれる。
一般に、軟質樹脂は、硬質樹脂に比べて剛性が低い。一方、軟質樹脂からなる発泡体は、発泡倍率が低いほど剛性が高いことが知られている。このため、発泡体を製造する際の発泡倍率を調整することにより必要な剛性を得ることができる。
発泡倍率は、例えば30倍以下とすることが好ましい。このようにすれば、支持部材4の一部(例えば表層部)に発泡体よりも剛性の高い材料(例えば繊維強化樹脂や金属)を用いることなく必要な剛性を得つつ、支持部材4を軽量化することができる。
【0048】
なお、支持部材4は、熱膨張率がセンサーパネル31と同じ又は差が所定以下の樹脂で形成されたものであってもよい。
また、支持部材4は、弾性を有したものであってもよい。
センサーパネル31は、従来のガラス基板を備えたものに比べて熱膨張率が大きい。しかし、上述したようにすれば、センサーパネル31が膨張しても、支持部材4も同程度に膨張する、又は弾性変形してセンサーパネル31の膨張を吸収するため、センサーパネル31だけが膨張してセンサーパネル31にしわができてしまうのを防ぐことができる。
【0049】
支持部材4は、図2図7に示すように、面状支持部4aと、3つの脚状支持部4bとを有している。
【0050】
(2-2-1.面状支持部)
面状支持部4aは、センサーパネル31の光電変換部312における撮像面312gと反対側の面(光電変換部312の撮像面312gと反対側の面側にある電磁界シールド層33の表面又は固定層6の表面)に沿って隙間なく設けられている。
面状支持部4aは、撮像面312gと反対側の面と直交する方向に所定の厚さを有し、当該面と平行に広がる板状をなしている。このようにすることで、筐体110が外部から受けた荷重を支持部材4がより一層分散させるため、放射線検出部3のたわみを更に抑制することができる。
【0051】
面状支持部4aは、一方の面が放射線検出部3に接し、他方の面が電気回路52に接する。
以下、面状支持部4aにおける放射線検出部3に接する一方の面を支持面41aと称する。
本実施形態に係る支持面41aは、センサーパネル31と同じ又はそれよりも一回り大きくなっている。このため、面状支持部4aは、センサーパネル31全体を支持することができる。
面状支持部4aの厚さ(支持面41aとその反対側の面との距離)は、2~5mmの範囲内となっていることが好ましい。このようにすることで、面状支持部4aの剛性を確保しつつ、後述する電気回路52を実装するための空間を確保することができる。
【0052】
なお、図2には、厚さ(支持面41aと直交する方向の幅)が均一の面状支持部4aを例示したが、面状支持部4aは、支持面41aに沿う方向の周縁部が中央部より厚くなっていてもよい。このようにすれば、荷重や衝撃に対する剛性を更に高めることができる。
また、面状支持部4aは、中央部が周縁部より厚くなっていてもよい。
【0053】
(2-2-2.脚状支持部)
図7に放射線画像撮影装置100の背面110bから見た蓋体2がない状態の放射線画像撮影装置100を示す。図7において、把持部7の位置を破線で示す。
脚状支持部4bは、図2に示すように、面状支持部4aの支持面41aの反対面41bから背面部21に向かって当接するまで突出して設けられている。
脚状支持部4bは、図7に示すように、把持部7の周内において、把持部7の内周面と当接する筒状の第1脚状支持部4b1を備える。これにより、筐体110が側面110c側から衝撃を受けた場合に、内部モジュール120の位置がずれることを防ぐことができる。また、筐体110が外部から受けた荷重を支持部材4がより一層分散させるため、放射線検出部3の撓みを更に抑制することができる。
また、この第1脚状支持部4b1により囲まれた領域が凹部4cを構成している。
脚状支持部4bは、凹部4cを短手方向に二分する第2脚状支持部4b2と、二分された凹部4cのうち、大きい方を更に長手方向に二分する第3脚状支持部4b3と、を備える。これにより、凹部4cは3分割される。分割された凹部4cには、それぞれ電気回路52が収容される。
なお、凹部4cの幅、奥行き及び深さは、電気回路52を収容することが可能な大きさであればよい。
【0054】
(2-2-3.支持部材その他)
支持部材4は、面状支持部4aと脚状支持部4bとが単一の発泡体で一体成形される。
その場合、凹部4cは、凹部4cとする予定箇所を切削することで形成してもよいし、部分プレスすることで形成してもよいが、部分プレスで形成することが好ましい。
支持部材4における凹部4cの形成箇所は、それ以外の部分(脚状支持部4b)よりも薄い(支持面41aと直交する方向の幅が小さい)。しかし、凹部4cを部分プレスで形成した場合、凹部4cの表面は発泡倍率が低下し強度が向上する。このため、凹部4cにおける支持部材4の剛性を脚状支持部4bと同等にすることができる。
また、支持部材4は、シート状に形成された発泡体を複数枚積層することで作製されたものであってもよい。
【0055】
〔2-3.電気部品〕
電気部品5は、図1に示すコネクター51と、図2に示す電気回路52と、配線53と、図示しない熱拡散シートと、を備えている。
【0056】
コネクター51は、外部装置から有線接続で給電したり、外部装置と通信を行うための外部のコネクターと接続することが可能となっている。また、コネクター51は、図示しない配線で電気回路52に接続されており、外部からの電力や通信信号を電気回路52に出力する。
電気回路52は、支持部材4に取り付け部材、接着剤又は粘着テープにより取り付けられている。接着剤又は粘着テープにより取り付ける場合、端子間を例えば導電テープを用いた配線等で接続するようにしてもよい。
すなわち、放射線検出部3、支持部材4及び電気回路52は、互いに固定された内部モジュール120を構成している。
【0057】
(2-3-1.電気回路)
電気回路52は、支持部材4における反対面41bに配置されている。
電気回路52は、支持部材4の凹部4c(脚状支持部4bと脚状支持部4bとの間)に収容されている。
電気回路52と筐体110の背面部21とは離間している。こうすることで、筐体110が外部から受けた荷重が電気回路52に伝わってしまうのを抑制することができる。
【0058】
電気回路52には、走査回路、読み出し回路、無線通信回路、制御回路、電源回路、バッテリー等が含まれる。
走査回路は、各スイッチ素子を制御する回路である。
読み出し回路は、電荷を信号値として読み出す回路である。
無線通信回路は、他の装置と無線通信するための回路である。
制御回路は、各回路を制御して画像データを生成する回路である。
電源回路は、半導体素子に電圧を印加したり、上記回路へ電力を供給したりするための回路である。
【0059】
(2-3-2.配線)
配線53は、例えばフレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuits)で構成され、光電変換部312と、各種電気回路52と、を接続している。
具体的には、光電変換部312の各走査線(スイッチ素子)の端子と走査回路、各信号線(半導体素子312b)の端子と読み出し回路、各バイアス線の各端子と電源回路、をそれぞれ接続している。
【0060】
(2-3-3.熱拡散シート)
熱拡散シートは、電気回路52を構成する素子のうち電気回路52の動作時に発熱する素子と対向する位置に設けられている。
素子と対向する位置には、例えば、電気回路52の裏面、支持部材4、筐体110等が含まれる。
このようにすることで、素子が発生させた熱を熱拡散シートが拡散することにより、素子が過度に高温になりその機能が低下してしまうのを防ぐことができる。
また、素子と対向する領域にヒートスポットができてしまうのを防ぐことができる。
なお、熱拡散シートは、伝熱部材を介して素子と対向配置されていてもよい。
【0061】
<変形例1>
次に、本発明の変形例1について説明する。なお、変形例1においては、上記実施形態と同様の構成に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
上記実施形態において、内部モジュール120は、図2に示すように、固定層6により前面部11の内面に固定されているとした。しかし、放射線画像撮影装置100の生産時や使用時の不具合等で、内部モジュール120を取り外して修理をする場合があるため、固定層6は取り外し可能にしてもよい。再剥離可能な接着層61として、具体的には、微粘着テープや微粘着接着剤、あるいは加熱することで剥離可能なホットメルトなどが用いられる。また、引き伸ばすことでテープ自体が剥がれるTESA製704シリーズや、気泡部が吸盤のように働いて微粘着テープのように固定できるイノアック製ピュアセルのような材料を用いてもよい。
【0063】
しかし、前面部11から内部モジュール120を取り外す場合、内部モジュール120と前面部11の隙間は狭く、指が入りづらいので取り外すのが困難である。そのため、放射線検出部3と前面部11の間に設けられた固定層6に、図8に示す突出部6aを設けることが好ましい。
図8に内部モジュール120を前面部11から剥がしている状態の図1に示す放射線画像撮影装置100のII-II断面図の上下逆にした図を示す。なお、図8においては脚状支持部4bと電気部品5は省略されている。
固定層6に突出部6aを設けることで、突出部6aを保持して、内部モジュール120を持ち上げることができるため、内部モジュール120を前面部11から取り外すことが容易になる。
突出部6aは、接着層61を構成する粘着テープ等の一部が突出するようにしてもよいし、薄くて引っ張りに強い樹脂フィルム片を固定層6に設けて、突出部6aとしても良い。
【0064】
<変形例2>
次に、本発明の変形例2について説明する。なお、変形例2においては、上記実施形態と同様の構成に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
図9は、変形例2に係る放射線画像撮影装置100の背面110bを示す図である。図9に示すように、筐体110の背面110bには、背面110bの周辺領域において各辺に沿って、互いに繋がっていない凹状の把持部7Aが設けられている。背面110bの各辺に沿って把持部7Aが設けられていることで、放射線画像撮影装置100の様々な向きでの把持を可能とする。また、被検者の下に放射線画像撮影装置100を差し込んで撮影する場合、撮影後に放射線画像撮影装置100を引き抜く際に、放射線画像撮影装置100が見えていなくても、把持部7を把持しやすいので、撮影者の自由度が上がり、撮影負荷を軽減させることができる。
把持部7Aの位置と形状は、周状でないこと以外は上記実施形態の把持部7の位置、形状と同様である。
【0066】
<変形例3>
次に、本発明の変形例3について説明する。なお、変形例3においては、上記実施形態及び変形例2と同様の構成に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
図10A図10Bに、患者の上半身や下半身等の比較的広い範囲を撮影する方法である1ショット長尺撮影における放射線画像撮影装置100の例を示す。1ショット長尺撮影では、複数の放射線画像撮影装置100を被写体の体軸の方向に、重なりができるように並べて配置する。
図10Aは、1ショット長尺撮影時における変形例3に係る放射線画像撮影装置100を側面110c側から見た図の例である。図10Aに示す例において、3つの放射線画像撮影装置100が重なり領域aができるように、ホルダー200内に並べて設置されている。
図10Bは、1ショット長尺撮影時における変形例3に係る放射線画像撮影装置100を背面110bから見た図の例である。図10Bに示す例において、放射線画像撮影装置100の背面110bには、把持部7Aと、他の放射線画像撮影装置100との重なり領域aがない背面110bの辺に沿って、筐体110の角部近傍まで延びる把持部7Bが設けられている。
このようにすることで、ホルダー200に放射線画像撮影装置100を出し入れする場合に、放射線画像撮影装置100を設置する位置が高い位置や低い位置であっても、把持部7Bを把持しやすく、放射線画像撮影装置100を出し入れしやすい。
把持部7Bの位置と形状は、周状でないこと及び他の放射線画像撮影装置100との重なり領域aがない背面110bの辺に沿って、筐体110の角部近傍まで延びること以外は上記実施形態の把持部7の位置、形状と同様である。
【0068】
<変形例4>
次に、本発明の変形例4について説明する。なお、変形例4においては、上記実施形態及び変形例2と同様の構成に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
図11A図11Bに、放射線画像撮影装置100を回診車300に搭載する例を示す。
図11Aは、回診車300内部に放射線画像撮影装置100を挿入した状態を側面110c側から見た図である。
図11Aに示す例において、放射線画像撮影装置100は、回診車300の内部であるビン320に設置される。また、回診車300は、コネクター51と接続し、放射線画像撮影装置100に給電したり、放射線画像撮影装置100と通信を行うためのコネクター310を有する。
また、放射線画像撮影装置100の背面110bには、把持部7Aと、コネクター51が設けられている辺の対辺に沿って、筐体110の角部近傍まで延びる把持部7Cが設けられている。
図11Bは、放射線画像撮影装置100を背面110b側から見た図である。図11Bに示すように、回診車300から放射線画像撮影装置100を取り外す場合、把持部7Cを把持し、コネクター51が設けられている辺と反対側に引っ張ることで、放射線画像撮影装置100を取り外すことができる。
放射線画像撮影装置100の背面110bに、コネクター51が設けられている辺の対辺に沿って、筐体110の角部近傍まで延びる把持部7Cを設けることで、放射線画像撮影装置100を容易に回診車300から取り外すことができる。
把持部7Cの位置と形状は、周状でないこと及びコネクター51が設けられている辺の対辺に沿って、筐体110の角部近傍まで延びること以外は上記実施形態の把持部7の位置、形状と同様である。
【0070】
以上のように、本実施形態の放射線画像撮影装置100は、放射線を電気信号に変換する変換器(センサーパネル31)及び変換器を支持する支持体(支持部材4)を有する放射線検出器(内部モジュール120)と、放射線検出器を収容する平面視において矩形状の筐体110を有し、放射線検出器は、筐体110内面に固定されており、筐体110の放射線が入射する面とは反対側の面である背面110bには、少なくとも筐体110の背面110bの各辺に沿って凹状の把持部7、7A、7B、7Cが設けられている。
従って、外部から衝撃を受けても破損しにくく、どの方向からでも把持しやすい放射線画像撮影装置を提供することができる。
また、内部モジュール120は、筐体110の内面に固定されているので、内部モジュール120と筐体110の側面との間に緩衝材を設ける必要がなくなることとなって、把持部7、7A、7B、7Cの位置、形状を、比較的自由に設計することができる。
【0071】
また、本実施形態の放射線画像撮影装置100において、把持部7は、筐体110の背面110bの各辺に沿って周状に設けられている。
従って、どの方向からでも把持しやすい放射線画像撮影装置を提供することができる。
【0072】
また、本実施形態の放射線画像撮影装置100において、把持部7、7A、7B、7Cの深さは、4mm以上8mm未満である。
従って、感染防止用のビニール袋等に入れて使用しても把持性が保たれる放射線画像撮影装置を提供することができる。
【0073】
また、本実施形態の放射線画像撮影装置100において、把持部7、7A、7B、7Cの始端から筐体110端部までの最短距離は、25mm以内である。
従って、被験者の下に放射線画像撮影装置100を差し入れて撮影する場合、撮影後に放射線画像撮影装置100を引き抜く際に深く手を入れる必要がなく、引き抜きやすい。
【0074】
また、本実施形態の放射線画像撮影装置100において、把持部7、7A、7B、7Cは、筐体110の放射線が入射する面(放射線入射面110a)と垂直な方向において、把持部7、7A、7B、7Cの内面と支持体(支持部材4)が接するように設けられている。
従って、筐体110が側面110c側から衝撃を受けた場合に、内部モジュール120の位置がずれることを防ぐことができる。
【0075】
また、本実施形態の放射線画像撮影装置100において、変換器(センサーパネル31)は、可撓性を有する。
従って、放射線画像撮影装置100が衝撃を受けても、変換器(センサーパネル31)は破損しにくい。
【0076】
また、本実施形態の放射線画像撮影装置100において、筐体110のうち少なくとも把持部は、短繊維を含む炭素繊維強化樹脂により形成されている。
従って、把持部7、7A、7B、7Cを成形する際に筐体110の材質がよく伸び、把持部7、7A、7B、7Cが成形しやすい。
【0077】
また、本実施形態の放射線画像撮影装置100において、支持体(支持部材4)は、発泡体により形成されている。
従って、金属や発砲でない樹脂で形成する場合に比べ、内部モジュール120を軽量化することができるため、放射線画像撮影装置100が外部から衝撃を受けても、固定層6にかかる負荷を軽減することができる。
【0078】
また、本実施形態の放射線画像撮影装置100において、放射線検出器(内部モジュール120)は、筐体110から取り外し可能である。
従って、放射線画像撮影装置100の生産時や使用時に不具合等が生じた場合に、放射線検出器(内部モジュール120)を取り外して修理をし、修理済みの放射線検出器を再度取り付けることが可能になる。
【0079】
また、本実施形態の放射線画像撮影装置100において、把持部7Bは、長尺撮影を行うために複数の放射線画像撮影装置を重なり合うように並べる際の他の放射線画像撮影装置との重なりがない筐体110の辺に沿って、筐体110の角部近傍まで延在して設けられている。
従って、1ショット長尺撮影の際、ホルダー200に放射線画像撮影装置100を出し入れする場合に、放射線画像撮影装置100を設置する位置が高い位置や低い位置であっても、把持部7Bを把持しやすく、放射線画像撮影装置100を出し入れしやすい。
【0080】
また、本実施形態の放射線画像撮影装置100において、筐体110の側面110cに外部から給電もしくは外部と通信を行うためのコネクター51が設けられ、把持部7Cは、コネクター51が設けられている辺の対辺に沿って、筐体110の角部近傍まで延在して設けられている。
従って、放射線画像撮影装置100を容易に回診車300から取り外すことができる。
【0081】
なお、本発明は、上記実施の形態及び変形例に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、図7に示すように、把持部7の周内において、把持部7の内周面と当接する筒状の第1脚状支持部4b1を備えるとしたがこれに限らない。さらに、把持部7の周外において、把持部7の外周面と当接する筒状の脚状支持部を設けてもよい。
【0082】
また、上記実施の形態及び変形例において、支持部材4は、面状支持部4aと脚状支持部4bとが単一の発泡体で一体成形されるとしたがこれに限らない。面状支持部4aと脚状支持部4bとで別の材質の発泡体を用いて形成してもよいし、面状支持部4aと脚状支持部4bとを別々に成形し、成形後の面状支持部4aと脚状支持部4bを貼り合わせてもよい。
【0083】
また、上記実施の形態及び変形例において、凹部4cは第2脚状支持部4b2及び第3脚状支持部4b3によって3分割されるとしたがこれに限らない。電気回路52の数に合わせて複数の脚状支持部4bにより、凹部4cを分割してもよい。
【0084】
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、動作の内容や手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0085】
100 放射線画像撮影装置
110 筐体
110a 放射線入射面(前面)
110b 背面
110c 側面
1 箱体
11 前面部
12 側面部
2 蓋体
21 背面部
120 内部モジュール(放射線検出器)
3 放射線検出部
31 センサーパネル(変換器)
311 波長変換部
312 光電変換部
312a 基板
312b 半導体素子
312c 走査線
312d 信号線
312e スイッチ素子
312f バイアス線
312g 撮像面
32 放射線遮蔽層
33 電磁界シールド層
4 支持部材(支持体)
4a 面状支持部
4b 脚状支持部
4c 凹部
41a 支持面
5 電気部品
51 コネクター
52 電気回路
53 配線
6 固定層
61 接着層
62 緩衝材
6a 突出部
7,7A、7B、7C 把持部
200 ホルダー
300 回診車
310 コネクター
320 ビン
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B