(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】光学モジュール及び頭部装着型表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240820BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
(21)【出願番号】P 2021029757
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山口 論人
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-020693(JP,A)
【文献】特開2020-112714(JP,A)
【文献】特開2007-079031(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0097277(US,A1)
【文献】特開2001-228388(JP,A)
【文献】特開2017-116773(JP,A)
【文献】特表2015-504616(JP,A)
【文献】特開2004-287278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 - 27/02
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像光を出射する映像素子と、
前記映像素子から出射された前記映像光を出射面から出射させる第1光学部材と、
前記第1光学部材から出射された前記映像光を、入射面から入射させ、内反射面で反射させ、出射面から出射させる第2光学部材と、
前記第2光学部材から出射された前記映像光を瞳位置に向けて反射するコンバイナーと、
前記映像光の一部を遮光し、前記第2光学部材の前記入射面及び前記第1光学部材の前記出射面のうち少なくとも一方の光学部材に支持される遮光部材と、を備え、
前記第2光学部材の前記入射面に入射する前記映像光の光軸と前記第2光学部材の出射面から出射される前記映像光の光軸とを含む仮想平面の法線と平行な方向から見て、前記第2光学部材の前記入射面の一部は、前記遮光部材から前記第1光学部材の前記出射面に向けて突出
し、
前記仮想平面の法線と平行な方向から見て、前記遮光部材は、前記第1光学部材の前記出射面よりも外側に突出している、光学モジュール。
【請求項2】
前記第2光学部材の前記入射面に入射する前記映像光の光軸と平行な方向から見て、前記遮光部材は、前記一方の光学部材に設けられた前記第1光学部材と前記第2光学部材とを位置決めする一対の嵌合部材の間に配置される、請求項1に記載の光学モジュール。
【請求項3】
映像光を出射する映像素子と、
前記映像素子から出射された前記映像光を出射面から出射させる第1光学部材と、
前記第1光学部材から出射された前記映像光を、入射面から入射させ、内反射面で反射させ、出射面から出射させる第2光学部材と、
前記第2光学部材から出射された前記映像光を瞳位置に向けて反射するコンバイナーと、
前記映像光の一部を遮光し、前記第2光学部材の前記入射面及び前記第1光学部材の前記出射面のうち少なくとも一方の光学部材に支持される遮光部材と、を備え、
前記第2光学部材の前記入射面に入射する前記映像光の光軸と平行な方向から見て、前記遮光部材は、前記一方の光学部材に設けられた前記第1光学部材と前記第2光学部材とを位置決めする一対の嵌合部材の間に配置される、光学モジュール。
【請求項4】
前記遮光部材に設けられた開口は、一対の辺を有し、一方の辺は、他方の辺よりも短い、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学モジュール。
【請求項5】
前記遮光部材は、前記第1光学部材の前記出射面から出射される映像光の光軸に対して、垂直である、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学モジュール。
【請求項6】
前記遮光部材は、前記第1光学部材の前記出射面から出射される映像光の光軸に対して、垂直な状態に対して傾斜している、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学モジュール。
【請求項7】
前記第2光学部材の前記入射面に入射する前記映像光の光軸と前記第2光学部材の出射面から出射される前記映像光の光軸とを含む仮想平面の法線と平行な方向から見て、前記遮光部材は曲率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学モジュール。
【請求項8】
前記遮光部材の厚みは、20μm以上300μm以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の光学モジュール。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の前記光学モジュールと、
前記映像素子に表示動作を行わせる制御装置とを備える、頭部装着型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚像の観察を可能にする光学モジュール及びこれを備える頭部装着型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
頭部装着型表示装置に組み込まれて虚像の観察を可能にする光学エンジンとして、映像光の光軸方向を変更するプリズムと、映像光を出射してプリズムに入射させるリレー光学系とを備えるものが公知となっている(特許文献1参照)。この光学エンジンでは、投射レンズを構成する複数のレンズ間に余分な映像光を遮光する遮光部材を配置することで、ゴーストの発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の装置では、遮光部材を用いて映像光を遮光している。このような遮光部材をレンズとプリズムとの間に設ける場合、レンズとプリズムとの距離を短くすることが困難になる。そのため、レンズとプリズムとの距離が長くなり、レンズとプリズムとの間の空間を介して入射する迷光によって、光学モジュールの光学性能が劣化してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面における光学モジュール又は頭部装着型表示装置は、映像光を出射する映像素子と、前記映像素子から出射された前記映像光を出射面から出射させる第1光学部材と、前記第1光学部材から出射された前記映像光を、入射面から入射させ、内反射面で反射させ、出射面から出射させる第2光学部材と、前記第2光学部材から出射された前記映像光を瞳位置に向けて反射するコンバイナーと、前記映像光の一部を遮光し、前記第2光学部材の前記入射面及び前記第1光学部材の前記出射面のうち少なくとも一方の光学部材に支持される遮光部材と、を備え、前記第2光学部材の前記入射面に入射する前記映像光の光軸と前記第2光学部材の出射面から出射される前記映像光の光軸とを含む仮想平面の法線と平行な方向から見て、前記第2光学部材の前記入射面の一部は、前記遮光部材から前記第1光学部材の前記出射面に向けて突出し、前記仮想平面の法線と平行な方向から見て、前記遮光部材は、前記第1光学部材の前記出射面よりも外側に突出している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態のHMDの装着状態を説明する外観斜視図である。
【
図2】HMD本体の斜視図と、外装部材を外した内部の斜視図とを示す。
【
図3】光学モジュールの平面図及び左側面図を示す。
【
図4】HMDの内部の光学系を説明する概念的な側断面図である。
【
図6】プリズムミラーに対する投射レンズの位置決めを説明する図である。
【
図7】プリズムミラーと第2レンズとの接続を説明する側断面図である。
【
図8】第2レンズに対する遮光部材の取り付け状態を説明する図である。
【
図9】遮光部材の下端の周辺を示す拡大側断面図である。
【
図10】第2レンズに対する遮光部材の取付状態の変形例を説明する図である。
【
図11】第2実施形態のHMDにおける遮光部材を説明する側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明に係る光学モジュール及び頭部装着型表示装置の第1実施形態について説明する。
【0008】
図1は、画像表示装置200の装着状態を説明する図である。画像表示装置200は、頭部装着型表示装置すなわちヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDとも称する。)201であり、これを装着する観察者又は装着者USに虚像としての映像を認識させる。
図1等において、X、Y、及びZは、直交座標系であり、+X方向は、画像表示装置200又はHMD201を装着した観察者又は装着者USの両眼EYの並ぶ横方向に対応し、+Y方向は、装着者USにとっての両眼EYの並ぶ横方向に直交する上方向に相当し、+Z方向は、装着者USにとっての前方向又は正面方向に相当する。±Y方向は、鉛直軸又は鉛直方向に平行になっている。
【0009】
画像表示装置200は、装着者USの眼前を覆うように配置される本体200aと、本体200aを支持するテンプル状の一対の支持装置200bとを備える。本体200aは、機能的に見た場合、右眼用の第1表示装置100aと、左眼用の第2表示装置100bとを含む。第1表示装置100aは、上部に配置される第1表示駆動部102aと、メガネレンズ状で眼前を覆う第1コンバイナー103aとで構成される。第2表示装置100bも同様に、上部に配置される第2表示駆動部102bと、メガネレンズ状で眼前を覆う第2コンバイナー103bとで構成される。
【0010】
図2を参照して、画像表示装置200の本体200aの構造等について説明する。
図2中で、領域AR1は、本体200aの外観斜視図であり、領域AR2は、本体200aの上部を露出させた斜視図である。
【0011】
本体200aのうち、+Y側すなわち上側に配置される一対の表示駆動部102a,102bは、連結されて一体化されており、横方向に細長くしたドーム状の上外装部材107aと、平坦な板状の下外装部材107bとによって覆われている。第1コンバイナー103a及び第2コンバイナー103bは、前方すなわち+Z方向に突起した半球の上部をカットしたような形状を有し、下外装部材107bから下方に突き出すように配置されている。
【0012】
右眼用の第1表示装置100aは、第1映像素子11aと、第1光学系12aと、第1フレーム61aと、第1コンバイナー103aとを備える。第1光学系12aは、内カバーである第1カバー部材71aに覆われ、第1映像素子11aは、第1カバー部材71aの開口71oを塞ぐように配置され、矩形枠状の第1ホルダー72aを介して第1光学系12aに固定されている。
【0013】
左眼用の第2表示装置100bは、第2映像素子11bと、第2光学系12bと、第2フレーム61bと、第2コンバイナー103bとを備える。第2光学系12bは、内カバーである第2カバー部材71bに覆われ、第2映像素子11bは、第2カバー部材71bの開口71oを塞ぐように配置され、矩形枠状の第2ホルダー72bを介して第2光学系12bに固定されている。左眼用の第2表示装置100bは、右眼用の第1表示装置100aと同一の構造及び機能を有する。つまり、第2映像素子11bは、第1映像素子11aと同様のものであり、第2光学系12bは、第1光学系12aと同様のものであり、第2コンバイナー103bは、第1コンバイナー103aと同様のものである。
【0014】
第1表示装置100aと第2表示装置100bとは、内部において固定部材78を介して連結され固定されている。つまり、固定部材78は、一対の表示装置100a,100bに組み込まれた一対のフレーム61a,61bを中央で支持し、第1表示装置100aと第2表示装置100bとが相対的に位置決めされた状態を維持している。具体的には、第1フレーム61aは、第2フレーム61b寄りの内側端部において、棒状の固定部材78の一端に接続され、第2フレーム61bは、第1フレーム61a寄りの内側端部において、棒状の固定部材78の他端に接続されている。第1フレーム61aと第2フレーム61bとは、半円板状の金属部材であり、例えばマグネシウム合金で形成される。固定部材78も、例えばマグネシウム合金で形成される。第1フレーム61a及び第2フレーム61bをマグネシウム合金のような放熱性の高い材料で形成することにより、映像素子11a等が発生する熱の放熱効率を高めることができる。固定部材78をマグネシウム合金のような放熱性の高い材料で形成することにより、第1フレーム61aや第2フレーム61bを放熱によって冷却する効果を持たせることができる。
【0015】
固定部材78の上方であって左右の表示装置100a,100bの間には、矩形板状の回路基板91が配置されている。回路基板91は、第1映像素子11a及び第2映像素子11bの表示動作を制御する制御装置92を含む。制御装置92は、左右の映像素子11a,11bに対して表示画像に対応する駆動信号を出力し左右の映像素子11a,11bの表示動作を制御する。制御装置92は、例えばIF回路、信号処理回路等を備え、外部から受け取った画像データ又は画像信号に応じて、左右の映像素子11a,11bに2次元的な画像表示を行わせる。制御装置92は、図示を省略するが、第1表示装置100aの動作と第2表示装置100bの動作とを統括するメイン基板を含む。メイン基板は、例えば不図示の外部装置との間で通信し当該外部装置から受信した信号に対して信号変換を行うインターフェース機能や、第1表示装置100aの表示動作と第2表示装置100bの表示動作とを連携させる統合機能を有するものとすることができる。
【0016】
図3は、第1表示装置100aを構成する光学モジュール100を示している。
図3中で、領域BR1は、光学モジュール100の平面図であり、領域BR2は、光学モジュール100の側面図である。第1光学系12aは、板状の第1フレーム61aの上面に接着等によって固定され、第1コンバイナー103aは、その上端で第1フレーム61aの周囲のうち前半分に接着等によって固定されている。第1光学系12aは、光学要素を支持するバレル31を含む。バレル31は、プリズムミラー22と第1コンバイナー103aとの間に配置される支持部材であり、+Y側の上部においてプリズムミラー22を支持し、下部において楔型光学素子28を介して第1フレーム61aに固定されている。第2光学部材であるプリズムミラー22は、後方すなわち-Z側において第1光学部材である投射レンズ21を支持し、投射レンズ21は、プリズムミラー22の反対側の端部において第1ホルダー72aを介して第1映像素子11aを支持している。
【0017】
図4は、第1表示装置100aの光学的構造を説明する側方断面図である。第1表示装置100aは、第1映像素子11aと結像光学系20とを備える。結像光学系20は、投射レンズ21と、プリズムミラー22と、楔型光学素子28と、シースルーミラー23とを備える。投射レンズ21とプリズムミラー22との間には、遮光部材17が配置されている。結像光学系20のうち、投射レンズ21とプリズムミラー22と楔型光学素子28とは、
図3等に示す第1光学系12aに対応し、シースルーミラー23は、第1コンバイナー103aに対応する。第1映像素子11aの本体、投射レンズ21、プリズムミラー22、及び楔型光学素子28は、相互に位置決めされた状態で第1フレーム61aに固定され、第1映像素子11a、投射レンズ21、及びプリズムミラー22は、第1カバー部材71aと第1フレーム61aとに挟まれた空間SP1内に収納されている。楔型光学素子28は、第1フレーム61aの光学開口OAに形成された段差に嵌め込むように配置され、光学開口OAの周囲が気密な状態に保たれている。
【0018】
第1映像素子11aは、自発光型の表示デバイスである。第1映像素子11aは、例えば有機EL(有機エレクトロルミネッセンス、Organic Electro-Luminescence)ディスプレイであり、2次元の表示面11dにカラーの静止画又は動画を形成する。第1映像素子11aは、XY面に対してX軸のまわりに若干回転して傾いたxy面に沿って配置されている。第1映像素子11aは、回路基板91に駆動されて表示動作を行う。第1映像素子11aは、有機ELディスプレイに限らず、マイクロLEDディスプレイ、又は無機EL、有機LED、レーザーアレイ、量子ドット発光型素子等を用いた表示デバイスに置き換えることができる。第1映像素子11aは、自発光型の画像光生成装置に限らず、LCDその他の光変調素子で構成され、当該光変調素子をバックライトのような光源によって照明することによって画像を形成するものであってもよい。第1映像素子11aとして、LCDに代えて、LCOS(Liquid crystal on silicon, LCoSは登録商標)や、デジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。
【0019】
投射レンズ21は、第1レンズ21p及び第2レンズ21qを含む。第1レンズ21pは、入射面21aと出射面21bとを有し、第2レンズ21qは、入射面21cと出射面21dとを有する。投射レンズ21は、第1映像素子11aから出射された映像光MLを受けて、プリズムミラー22に入射させる。投射レンズ21は、第1映像素子11aから出射された映像光MLを平行光束に近い状態に集光する。プリズムミラー22は、入射面22aと、内反射面22bと、出射面22cとを有する。プリズムミラー22は、前方から入射する映像光MLを、入射方向を反転させた方向(プリズムミラー22から見た光源の方向)に対して傾斜した方向に折り返すように出射する。楔型光学素子28は、第1面28aと第2面28bとを有し、プリズムミラー22から出射されシースルーミラー23に向かう画像光MLを通過させる。シースルーミラー23は、反射面23aと外側面23oとを有する。シースルーミラー23は、プリズムミラー22の光出射側に形成された中間像を拡大する。
【0020】
結像光学系20は、シースルーミラー23が凹面鏡であること等に起因して、軸外し光学系OSとなっている。本実施形態の場合、投射レンズ21、プリズムミラー22、及びシースルーミラー23は、非軸対称に配置され、非軸対称な光学面を有する。結像光学系20が軸外し光学系OSであるとは、結像光学系20を構成する光学要素21,22,28,23において、複数の反射面又は屈折面への光線の入射の前後で光路が全体として折れ曲がることを意味する。この結像光学系20つまり軸外し光学系OSでは、紙面に対応する軸外し面(YZ面に平行な面)に沿って光軸AXが延びるように光軸AXの折り曲げが行われ、かかる軸外し面に沿って光学要素21,22,28,23が配列されている。光軸AXは、YZ面に平行な横断面で見た場合、反射面の前後で互いに傾斜する複数の光軸部分AX1,AX2,AX3によって、Z字状の配置となっている。つまり、YZ面に平行な軸外し面において、投射レンズ21から内反射面22bまでの光路P1と、内反射面22bからシースルーミラー23までの光路P2と、シースルーミラー23から瞳位置PPまでの光路P3とが、Z字状に2段階で折り返される配置となっている。基準面である軸外し面(YZ面に平行な面)は、縦のY方向に平行に延びる。この場合、第1表示装置100aを構成する光学要素21,22,28,23が縦方向に高さ位置を変えて配列されることになり、第1表示装置100aの横幅の増大を防止することができる。
【0021】
結像光学系20のうち、投射レンズ21から内反射面22bまでの光路P1は、後方に向かって斜め上方向に延びている。つまり、光路P1において、光軸部分AX1は、-Z方向と+Y方向との中間に近い方向に延びている。内反射面22bからシースルーミラー23までの光路P2は、前方に向かって斜め下方向に延びている。つまり、光路P2において、光軸部分AX2は、+Z方向と-Y方向との中間に近い方向に延びている。ただし、水面方向(XZ面)を基準とした場合、光路P2の傾斜が光路P1の傾斜よりも大きくなっている。シースルーミラー23から瞳位置PPまでの光路P3は、Z方向に平行に近い状態となっているが、図示の例では、光軸部分AX3は、+Z方向に向かって、下向きを負として、-10°程度となっている。つまり、光軸部分AX3を延長した出射光軸EXは、前方の+Z方向に平行な中心軸HXに対して10°程度下向きに傾いて延びている。これは、人間の視線が水平方向より下側に約10°傾いた若干の伏し目状態で安定するからである。
【0022】
投射レンズ(第1光学部材)21を構成する第1レンズ21pの入射面21aと出射面21bとは、YZ面に平行で光軸AXと交差する縦方向に関して、光軸AXを挟んで非対称性を有し、横方向又はX方向に関して光軸AXを挟んで対称性を有する。投射レンズ21を構成する第2レンズ21qの入射面21cと出射面21dとは、YZ面に平行で光軸AXと交差する縦方向に関して、光軸AXを挟んで非対称性を有し、横方向又はX方向に関して光軸AXを挟んで対称性を有する。第1レンズ21p及び第2レンズ21qは、例えば樹脂で形成されるが、ガラス製とすることもできる。第1レンズ21pの入射面21aと出射面21bとは、例えば自由曲面である。入射面21aと出射面21bとは、自由曲面に限らず、非球面とすることもできる。第2レンズ21qの入射面21cと出射面21dとは、例えば自由曲面である。入射面21cと出射面21dとは、自由曲面に限らず、非球面とすることもできる。入射面21a,21c又は出射面21b,21dを自由曲面又は非球面とすることで、収差低減を図ることができ、特に自由曲面を用いた場合、偏芯系の光学性能を高めることが容易となるので、非共軸の軸外し光学系OSである結像光学系20の収差を低減することが容易になる。詳細な図示は省略するが、入射面21a,21c及び出射面21b,21d上には、反射防止膜が形成されている。
【0023】
プリズムミラー(第2光学部材)22は、ミラーとレンズとを複合させた機能を有する屈折反射光学部材であり、投射レンズ21からの映像光MLを屈折させつつ反射する。プリズムミラー22は、映像光MLを入射面22aを介して内部に入射させ、入射した映像光MLを内反射面22bによって非正面方向に全反射させ、入射した映像光MLを出射面22cを介して外部に出射させる。入射面22aと出射面22cとは、曲面からなる光学面であり、反射面のみの場合又はこれらを平面とした場合に比較して解像度向上に寄与する。プリズムミラー22を構成する光学面である入射面22aと内反射面22bと出射面22cとは、YZ面に平行で光軸AXと交差する縦方向に関して、光軸AXを挟んで非対称性を有し、横方向又はX方向に関して光軸AXを挟んで対称性を有する。プリズムミラー22は、例えば樹脂で形成されるが、ガラス製とすることもできる。プリズムミラー22の本体の屈折率は、映像光MLの反射角も参酌して内面での全反射が達成されるような値に設定される。プリズムミラー22の光学面、つまり入射面22aと内反射面22bと出射面22cとは、例えば自由曲面である。入射面22aと内反射面22bと出射面22cとは、自由曲面に限らず、非球面とすることもできる。プリズムミラー22において、光学面22a,22b,22cを自由曲面又は非球面とすることで、収差低減を図ることができ、特に自由曲面を用いた場合、偏芯系の光学性能を高めることが容易となる。内反射面22bについては、全反射によって映像光MLを反射するものに限らず、金属膜又は誘電体多層膜からなる反射面とすることもできる。この場合、内反射面22b上に、例えばAl、Agのような金属で形成された単層膜又は多層膜からなる反射膜を蒸着等によって成膜し、或いは金属で形成されたシート状の反射膜を貼り付ける。詳細な図示は省略するが、入射面22a及び出射面22c上には、反射防止膜が形成されている。
【0024】
プリズムミラー22と投射レンズ21との間には遮光部材17が配置されている。遮光部材17は、映像光MLが全体として絞られる開口瞳に近い位置に配置されるが、結像光学系20が軸外し光学系OSであることから、縦のY方向や横のX方向に関して開口瞳の位置が異なっており、厳密な意味での開口絞りとはなっていない。遮光部材17は、プリズムミラー22において映像光MLが入射する入射面22aと、投射レンズ21において映像光MLが出射する出射面21dとのうち、少なくとも一方の周囲に支持されている。ここで、入射面22aや出射面21dについて、周囲とは、入射面22aや出射面21dの外縁に限らず、入射面22aや出射面21dの外側形成されるフランジ部(不図示)を含むものとする。具体的な実施例では、後述するように第2レンズ21qのフランジ部に遮光部材17が支持され固定されている。プリズムミラー22の入射面22aに入射する映像光MLの光軸部分AX1に垂直な方向から見て、例えば±X方向から見て、プリズムミラー22の入射面22aの一部は、遮光部材17から投射レンズ21の出射面21dに向けて突出している。つまり、遮光部材17の開口17aを介してプリズムミラー22の入射面22aが投射レンズ21の出射面21d側にはみ出している。このように、プリズムミラー22の入射面22aが遮光部材17の開口17aを介して投射レンズ21の出射面21d側にはみ出すことによって、遮光部材17がプリズムミラー22のフランジ部に近づくことになり、投射レンズ21とプリズムミラー22との位置決めの自由度が高まり、投射レンズ21とプリズムミラー22とを近づけて配置することが容易になり、結像光学系20の小型化を容易にするだけでなく、投射レンズ21とプリズムミラー22との隙間に意図しない光が侵入したり、投射レンズ21とプリズムミラー22との隙間から意図しない光が漏れ出したりすることを低減することができる。
【0025】
なお、図示を省略しているが、投射レンズ21を構成する第1レンズ21pと第2レンズ21qとの間において、上記遮光部材17のような遮光部材を配置することができる。また、プリズムミラー22と楔型光学素子28との間において、プリズムミラー22の近傍に、上記遮光部材17のような遮光部材、つまりプリズムミラー22の出射面22cの周囲に支持され、出射面22cが開口からはみ出すような遮光部材を配置することができる。
【0026】
楔型光学素子28は、プリズムミラー22とシースルーミラー23との間に配置され、光透過性を有する。楔型光学素子28は、結像状態を改善する役割を有する。楔型光学素子28の入射側に設けられている第1面28aは、平坦であるが自由曲面となっており、YZ面に平行な縦方向に関して光軸AXを挟んで非対称性を有し、YZ面に垂直なX方向すなわち横方向に関して光軸AXを挟んで対称性を有する。第1面28aには反射防止膜が形成されている。楔型光学素子28の出射側に設けられている第2面28bは、平面であり、反射防止膜が形成されている。楔型光学素子28は、前側である+Z側で厚みが増している。これにより、プリズムミラー22等に起因する歪曲収差の発生を抑制することができる。楔型光学素子28の屈折率は、プリズムミラー22の屈折率と異なる。これにより、楔型光学素子28とプリズムミラー22等との間で屈折や分散の程度を調整することができ、例えば色消しの達成が容易になる。
【0027】
シースルーミラー23は、凹の表面ミラーとして機能する湾曲した板状の光学部材であり、プリズムミラー22からの映像光MLを反射する。つまり、シースルーミラー23は、第1光学系12aからの映像光MLを瞳位置PPに向けて反射する。シースルーミラー23は、眼EY又は瞳孔が配置される瞳位置PPを覆うとともに瞳位置PPに向かって凹形状を有し、外界に向かって凸形状を有する。シースルーミラー23は、視界のうち画面の有効領域の全体をカバーする凹面透過ミラーである。シースルーミラー23は、収束機能を有するコリメーターであり、表示面11dの各点から出射された映像光MLの主光線であって、第1光学系12aの出射領域の近傍で結像によって一旦広がった映像光MLの主光線を瞳位置PPに向けて反射し瞳位置PPに収束させる。シースルーミラー23は、板状体23bの表面又は裏面上に透過性を有するミラー膜23cを形成した構造を有するミラー板である。シースルーミラー23や反射面23aは、YZ面に平行で光軸AXと交差する縦方向に関して、光軸AXを挟んで非対称性を有し、横方向又はX方向に関して光軸AXを挟んで対称性を有する。シースルーミラー23の反射面23aは、例えば自由曲面である。反射面23aは、自由曲面に限らず、非球面とすることもできる。シースルーミラー23を自由曲面又は非球面とすることで、収差低減を図ることができ、特に自由曲面を用いた場合、軸外し光学系又は非共軸光学系である結像光学系20の収差を低減することが容易になる。
【0028】
シースルーミラー23は、反射に際して一部の光を透過させる透過型の反射素子であり、シースルーミラー23の反射面23a又はミラー膜23cは、半透過性を有する反射層によって形成されている。これにより、外界光OLがシースルーミラー23を通過するので、外界のシースルー視が可能になり、外界像に虚像を重ねることができる。この際、ミラー膜23cを支持する板状体23bが数mm程度以下に薄ければ、外界像の倍率変化を小さく抑えることができる。ミラー膜23cの映像光MLや外界光OLに対する反射率は、映像光MLの輝度確保や、シースルーによる外界像の観察を容易にする観点で、想定される映像光MLの入射角範囲において10%以上50%以下とする。シースルーミラー23の基材である板状体23bは、例えば樹脂で形成されるが、ガラス製とすることもできる。板状体23bは、これを周囲から支持する支持板83と同一の材料で形成され、支持板83と同一の厚みを有する。ミラー膜23cは、例えば膜厚を調整した複数の誘電体層からなる誘電体多層膜で形成される。ミラー膜23cは、膜厚を調整したAl、Ag等の金属の単層膜又は多層膜であってもよい。ミラー膜23cは、積層によって形成できるが、シート状の反射膜を貼り付けることによっても形成できる。板状体23bの外側面23oには、反射防止膜が形成されている。
【0029】
光路について説明すると、第1映像素子11aからの映像光MLは、投射レンズ21に入射して略コリメートされた状態で投射レンズ21から出射される。投射レンズ21を通過した映像光MLは、プリズムミラー22に入射して入射面22aを屈折されつつ通過し、内反射面22bによって100%に近い高い反射率で反射され、再度出射面22cで屈折される。プリズムミラー22からの映像光MLは、楔型光学素子28を介してシースルーミラー23に入射し、反射面23aによって50%程度以下の反射率で反射される。シースルーミラー23で反射された映像光MLは、装着者USの眼EY又は瞳孔が配置される瞳位置PPに入射する。瞳位置PPには、シースルーミラー23やその周囲の支持板83を通過した外界光OLも入射する。つまり、第1表示装置100aを装着した装着者USは、外界像に重ねて、映像光MLによる虚像を観察することができる。
【0030】
図5に示すように、第1映像素子11aの表示面11dに形成する表示像を予め台形歪のような歪を持たせた修正画像DA1とする。つまり、結像光学系20が軸外し光学系OSであることから、光学系自体で台形歪のようなディストーションを取りきることは容易でない。よって、第1映像素子11aに表示される画像を、投射レンズ21、プリズムミラー22、楔型光学素子28、及びシースルーミラー23によって形成される歪を相殺する逆の歪を有するものとすることで、結像光学系20を経て瞳位置PPで観察される虚像の投影像IG1の画素配列を、元の表示像DA0に対応する格子パターンとすることができ輪郭を矩形とすることができる。つまり、第1映像素子11aは、投射レンズ21、プリズムミラー22、楔型光学素子28、及びシースルーミラー23によって形成されるディストーションを補正する。結果的に、シースルーミラー23等で発生するディストーションを許容しつつ第1映像素子11aを含めた全体として収差を抑えることができる。これにより、プリズムミラー22等の光学要素の配置やサイズの自由度が高まり、第1表示装置100aの小型化を達成しつつ、第1表示装置100aの光学性能の確保を容易にすることができる。
【0031】
図6を参照して、プリズムミラー22に対する投射レンズ21の固定について説明する。
図6中で、領域CR1は、バレル31にプリズムミラー22等を組付けた光学ブロック30の正面図であり、領域CR2は、光学ブロック30の側面図であり、領域CR3は、光学ブロック30の斜視図であり、領域CR4は、投射レンズ21の斜視図である。投射レンズ21は、光学ブロック30のプリズムミラー22に対して直接固定される。この際、投射レンズ21は、プリズムミラー22に対して、嵌合と片寄とを用いて位置決めされた状態で固定される。
【0032】
プリズムミラー22は、投射レンズ21に面する位置において、一対の切欠き22wを有し、一対の切欠き22wは、第1仮想平面VP1に平行な一対の制限面54a,54bを有する。ここで、第1仮想平面VP1は、プリズムミラー22の入射面22aに入射する映像光MLの光軸部分AX1(
図4参照)と出射面22cから出射する映像光MLの光軸部分AX2(
図4参照)とを含む平面であり、軸外し光学系OSの軸外し面と一致する。一方、投射レンズ21のうち後段の第2レンズ21qは、フランジ部21fにおいて、一対の嵌合部材として一対の爪21yを有する。一対の爪21yは、第1仮想平面VP1に平行な一対の内側面21gを有する。プリズムミラー22に投射レンズ21を固定する際には、プリズムミラー22の一対の爪21yをプリズムミラー22に形成された一対の切欠き22wに挿入し、光軸部分AX1に平行な方向から見て一対の爪21yが一対の切欠き22wを挟むような状態とする。この結果、プリズムミラー22に設けられた一対の制限面54a,54bと、投射レンズ21に設けられた内側面21gとが対向し、第1仮想平面VP1に垂直なX方向の位置決めを可能にする。以上により、投射レンズ21がプリズムミラー22すなわち光学ブロック30に対して横のX方向に関して位置決めされる。
【0033】
プリズムミラー22に設けられた一対の切欠き22wは、第1仮想平面VP1に垂直で略鉛直方向に延びる平面(つまり、XY面に略平行な第2仮想平面VP2)に平行に延びる一対の第1位置決め面55a,55bと、第1仮想平面VP1及び第2仮想平面VP2に垂直で略水平に延びる平面(つまり、XZ面に略平行な平面)に平行に延びる一対の第2位置決め面55c,55dを有する。一方、第2レンズ21qの一対の爪21yは、プリズムミラー22の一対の切欠き22wに設けられた一対の第1位置決め面55a,55bと当接する一対の基準面21h,21iを有する。また、第2レンズ21qの一対の爪21yは、プリズムミラー22の一対の切欠き22wに設けられた第2位置決め面55c,55dと当接する一対の基準面21j,21kを有する。以上により、投射レンズ21がプリズムミラー22に対してX方向及びY方向に関して高精度で位置決めされる。
【0034】
以上において、一対の第1位置決め面55a,55bは、一対の帯状の平面であり、映像光MLの光軸AXを挟んでX方向に離間しており、Y方向に略平行に延びる。一対の第1位置決め面55a,55bがY方向に略平行に延びることによって、X方向に平行な軸αの周りに関する第2レンズ21q或いは投射レンズ21の回転を規制することができる。また、一対の第1位置決め面55a,55bが光軸AXを挟んでX方向に離間することによって、Y方向に略平行な軸βの周りに関する第2レンズ21q或いは投射レンズ21の回転を規制することができる。さらに、第2位置決め面55c,55dは、映像光MLの光軸AXを挟んでX方向に離間している一対の平面である。これにより、第2位置決め面55c,55dによってZ方向に略平行な軸γの周りに関する第2レンズ21q或いは投射レンズ21の回転を規制することができる。以上により、交差する3軸α,β,γに関して、投射レンズ21の回転姿勢を適正に設定することができる。
【0035】
以上のように、投射レンズ21は、プリズムミラー22のフランジ部22fに対して、(1)第1制限面54aと第1制限面54bとによって挟む嵌合と、(2)第1位置決め面55a,55bと第2位置決め面55c,55dとに対する片寄と、を利用することによって位置決めされた状態とされ、この位置決め状態を維持しつつ光硬化型の接着材や超音波融着法等を用いてプリズムミラー22に固定される。
【0036】
図7を参照して、投射レンズ21の第2レンズ21qに設けられたフランジ部21fの端面には、遮光部材17が固定されている。遮光部材17は、矩形枠状の輪郭を有する縁部分17oの内側に開口17aを形成したものである。遮光部材17は、第2レンズ21qの出射面21dから出射される映像光MLの周辺部分をカットし、縁部分17oに囲まれた開口17aを介して出射面21dの有効領域内を通過する映像光MLのみをプリズムミラー22の入射面22aに選択的に入射させる。ここで、映像光MLの光軸部分AX1に垂直なX方向から見て、投射レンズ21の出射面21dの頂点21xやその周辺が、遮光部材17から投射レンズ21の出射面21dに向けて突出ている。つまり、出射面21dの頂点21xやその周辺は、遮光部材17の開口17aを超えて投射レンズ21側に延びている。遮光部材17は、例えばSUSその他の金属板で形成され、その表面は、光吸収性を有する材料(具体的には黒色材料)で塗装され、光吸収性を有する材料でめっきされ、或いは光吸収性を有する材料の蒸着がなされている。遮光部材17の厚みは、例えば数10μm~数100μm程度であり、より具体的には、例えば20μm以上300μm以下である。遮光部材17がこの程度の厚みを有する場合、投射レンズ21とプリズムミラー22との間に配置するためのフランジ部21f,22fの形状設計が容易になる。
【0037】
図8は、第2レンズ21qに対する遮光部材17の取付け状態を光軸AX方向から見た図である。
図8中で、領域DR1は、第2レンズ21qに遮光部材17を取り付けた状態を示し、領域DR2は、第2レンズ21qから遮光部材17を取り外した状態を示す。遮光部材17は、第2レンズ21qのフランジ部22fに設けられた一対の爪21yに把持されている。つまり、遮光部材17は、一対の爪21yの間に配置されて位置決めされている。より詳細に説明すると、遮光部材17の縁部分17oは、第2レンズ21qのフランジ部22fに設けられた一対の爪21yに挟まれた状態で、フランジ部22fに接着され固定されている。この際、遮光部材17の縁部分17oの裏面がフランジ部22fの上面21uに当接するだけでなく、縁部分17oの一対の外縁17eが一対の爪21yの内側面21gに挟まれ、縁部分17oに形成された一対の切欠き17tが一対の爪21yの根元に形成された突起21rと嵌合する。これにより、第2レンズ21qに対する遮光部材17の並進移動や回転が規制され、第2レンズ21qに対して遮光部材17を位置決めすることができる。つまり、遮光部材17の第2レンズ21qを基準としたX方向、Y方向、及びZ方向に関する配置が適正に設定され、遮光部材17の第2レンズ21qを基準としたX方軸、Y軸、及びZ軸の周りの回転姿勢が適正に設定される。
【0038】
遮光部材17の開口17aは、台形状又はD型の輪郭を有する。開口17aの+Y側の上辺17iと開口17aの-Y側の下辺17jとを比較すると、一方の辺である上辺17iは、他方の辺である下辺17jよりも短くなっている。この差に対応して、上辺17iと下辺17jとをつなぐ一対の側辺17nにおいて、-Y側つまり図面の下に向けて広がる斜辺17kが形成されている。このように、遮光部材17の開口17aを上側で狭く下側で広くしているのは、第2レンズ21qの出射面21dから出射される映像光MLの光束断面の非対称性を考慮したものである。すなわち、映像光MLの光束断面は、結像光学系20が軸外し光学系OSであることに起因して、YZに平行で光軸部分AX1に垂直な縦方向よりも横のX方向に相対的に長く、かつ、+Y側よりも-Y側で広がる非対称性を有している。このように非対称性を有する映像光MLの光束断面に適合するように、遮光部材17の開口17aの形状が設定されている。
【0039】
図9に拡大して示すように、横のX方向から見て、遮光部材17の下端部17yは、第2レンズ21q又は投射レンズ21の出射面21dの下枠21vよりも外側に突出している。ここで、横のX方向は、プリズムミラー22の入射面22aに入射する映像光MLの光軸部分AX1とプリズムミラー22の出射面22cから出射する映像光MLの光軸部分AX2とを含む平面(
図6の第1仮想平面VP1に相当)の法線に平行な方向に相当する。また、図示の例では、第2レンズ21qの出射面21dの下枠21vが出射面21dの下端となっており、遮光部材17の下端部17yは、出射面21dの下枠21vよりも外側に突出している。出射面21dの外側にフランジ部21fが広がる場合、遮光部材17の下端部17yは、フランジ部21fの外側面21zの延長面よりも外側に突出させることができる。遮光部材17の下端部17yの突出方向は、-Y方向と+Z方向との間になっている。このように、遮光部材17の下端部17yを第2レンズ21qの出射面21dの下枠21vよりも外側に突出させることにより、第2レンズ21qの出射面21dから出射する映像光MLがプリズムミラー22の入射面22aの外側からプリズムミラー22内に入射して迷光となることを回避することができる。遮光部材17の下端部17yが十分に突出していない場合、出射面21dから出射した映像光MLが、プリズムミラー22の入射面22aと出射面22cとの間に形成された段差状の接続面22jを介してプリズムミラー22の内部に入射する可能性がある。なお、遮光部材17の下端部17yは、横のX方向に沿った全体に亘って第2レンズ21qの出射面21dの下枠21vよりも外側に突出する必要はなく、下枠21vの要所に対して外側に突出するものであってもよい。
【0040】
図7に戻って、遮光部材17は、第2レンズ21q又は投射レンズ21の出射面21dから出射される映像光MLの光軸部分AX1に垂直な状態ではなく傾斜して支持されている。つまり、投射レンズ21の出射面21dから出射される映像光MLの光軸部分AX1に垂直な平面Pvに対して、遮光部材17は、角度θだけ傾斜している。このように、遮光部材17を光軸部分AX1に垂直な平面Pvに対して傾斜させることにより、映像光MLに対する遮光部材17の姿勢を適切にすることができ、遮光部材17と第2レンズ21qとの隙間を利用した遮光部材17の配置を無理のないものとすることができ、遮光部材17を支持する構造を簡易化することができる。
【0041】
図10は、遮光部材17の配置の変形例を示しており、遮光部材17は、第2レンズ21q又は投射レンズ21の出射面21dから出射される映像光MLの光軸部分AX1に対して垂直に支持されている。この場合も、投射レンズ21の出射面21dの一部が、遮光部材17から投射レンズ21の出射面21dに向けて突出している。
【0042】
なお、遮光部材17は、第2レンズ21qに固定されるものに限らず、プリズムミラー22に固定されるものであってもよい。また、以上の説明では、第2レンズ21qに一対の爪21yを設け、プリズムミラー22に一対の切欠き22wを設けて、第2レンズ21qをプリズムミラー22に固定しているが、プリズムミラー22に一対の爪状の突起を設けるとともに第2レンズ21qに一対の切欠きを設けて上記一対の爪状の突起を受ける嵌合構造とすることができ、この場合にも、第2レンズ21qをプリズムミラー22に対して位置決めしつつ固定することができる。
【0043】
遮光部材17の配置は、投射レンズ21の出射面21dの一部が遮光部材17から投射レンズ21の出射面21dに向けて突出するようなものに限らず、投射レンズ21の出射面21dの全体が遮光部材17から投射レンズ21の出射面21dに向けて突出するようなものであってもよく、投射レンズ21の出射面21dの全体が遮光部材17から投射レンズ21の出射面21dに向けて突出しないようなものであってもよい。さらに、光学設計によっては、投射レンズ21の出射面21dが凸面となる場合もあり、このような場合、投射レンズ21の出射面21dの少なくとも一部が遮光部材17から投射レンズ21の出射面21dに向けて突出するようなものであってもよい。
【0044】
以上で説明した第1実施形態の画像表示装置200又はHMD201の光学モジュール100は、第1映像素子11aと、第1映像素子11aから入射した映像光MLを出射面21dから出射させる第1光学部材である投射レンズ21と、投射レンズ21からの映像光MLを入射面22aから入射させる第2光学部材であるプリズムミラー22と、プリズムミラー22からの映像光MLを瞳位置PPに向けて反射する第1コンバイナー103aと、プリズムミラー22の入射面22a及び投射レンズ21の出射面21dのうち少なくとも一方の周囲に支持される遮光部材17とを備え、プリズムミラー22の入射面22aに入射する映像光MLの光軸AXに垂直な方向から見て、プリズムミラー22の入射面22aの少なくとも一部は、遮光部材17から投射レンズ21の出射面21dに向けて突出している。このように、プリズムミラー(第2光学部材)22の入射面22aの少なくとも一部が遮光部材17から投射レンズ(第1光学部材)21の出射面21dに向けて突出していることにより、遮光部材17をプリズムミラー22に近づけることができ、投射レンズ21とプリズムミラー22との距離が長くなることによって発生する迷光を低減することができる。
【0045】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態に係るHMD又は光学モジュールについて説明する。なお、第2実施形態のHMD等は、第1実施形態のHMD等を部分的に変更したものであり、共通部分については説明を省略する。
【0046】
図11は、第2実施形態のHMD201又は光学モジュール100において、投射レンズ21と第2レンズ21qとの間に配置される遮光部材17の形状を説明する断面図である。この場合、遮光部材17は、曲面CSに沿った形状を有し、遮光部材17の開口17aを囲む縁部分17oは、湾曲した曲面形状を有している。つまり、遮光部材17は、第1仮想平面VP1(
図6参照)に垂直なX方向から見て曲率を有し、第1仮想平面VP1に平行で光軸部分AX1に垂直な方向(近似的にはY方向)から見ても曲率を有する。曲面CSは、球面であってもよいが、楕円面、トロイダル面等であってもよい。この場合も、映像光MLの光軸部分AX1に垂直なX方向から見て、投射レンズ21の出射面21dが、遮光部材17から投射レンズ21の出射面21dに向けて突出ている。つまり、投射レンズ21の出射面21dは、遮光部材17の縁部分17oの上辺17iと下辺17jとをつなぐ線分SLを超えて投射レンズ21の出射面21d側に延びている。なお、図示を省略するが、投射レンズ21の出射面21dは、遮光部材17の一対の側辺をつなぐ線分を超えて投射レンズ21の出射面21d側に延びるものであるが、かかる線分を超えないものであってもよい。結像光学系20が軸外し光学系OSであることに起因して、遮光部材17の開口17aを通過する光束は、断面が非対称でその非対称性も光軸AXに沿って変化する。よって、遮光部材17の縁部分17oを湾曲させることで、より無駄のない適切な遮光が可能になる。湾曲した遮光部材17は、例えば板金加工によって簡易に作製することができる。
【0047】
〔変形例その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0048】
第1表示装置100aに組み込む結像光学系20は、図示のものに限らず、様々な構成とすることができる。具体的には、上記結像光学系20は、Y方向又は縦方向に非対称性を持たせた軸外し光学系OSであるとしたが、X方向又は横方向に非対称性を持たせた軸外し光学系とすることもできる。結像光学系20を構成する光学要素についても、
図4に示すものは単なる例示であり、レンズの枚数を増減させる、ミラーを追記する、導光部材を追加するといった変更が可能である。
【0049】
コンバイナー103a,103bの外界側には、コンバイナー103a,103bの透過光を制限することで調光を行う調光デバイスを取り付けることができる。調光デバイスは、例えば電動で透過率を調整する。調光デバイスとして、ミラー液晶、電子シェード等を用いることができる。調光デバイスは、外光照度に応じて透過率を調整するものであってもよい。
【0050】
コンバイナー103a,103bは、遮光性を有するミラーに置き換えることもできる。この場合、外界像の直接観察を前提としない非シースルー形の光学系となる。
【0051】
具体的な態様における第1の光学モジュールは、映像光を出射する映像素子と、映像素子から出射された映像光を出射面から出射させる第1光学部材と、第1光学部材から出射された映像光を、入射面から入射させ、内反射面で反射させ、出射面から出射させる第2光学部材と、第2光学部材から出射された映像光を瞳位置に向けて反射するコンバイナーと、第2光学部材の入射面及び第1光学部材の出射面のうち少なくとも一方の光学部材に支持される遮光部材とを備え、第2光学部材の入射面に入射する映像光の光軸と第2光学部材の出射面から出射される映像光の光軸とを含む仮想平面の法線と平行な方向から見て、第2光学部材の入射面の一部は、遮光部材から第1光学部材の出射面に向けて突出している。
【0052】
上記光学モジュールでは、第2光学部材の入射面の少なくとも一部が遮光部材から第1光学部材の出射面に向けて突出しているので、遮光部材を第2光学部材に近づけることができ、第1光学部材と第2光学部材との距離が長くなることによって発生する迷光を低減することができる。
【0053】
具体的な側面において、第2光学部材の入射面に入射する映像光の光軸と平行な方向から見て、遮光部材は、一方の光学部材に設けられた第1光学部材と第2光学部材とを位置決めする一対の嵌合部材の間に配置される。
【0054】
具体的な態様における第2の光学モジュールは、映像光を出射する映像素子と、映像素子から出射された映像光を出射面から出射させる第1光学部材と、第1光学部材から出射された映像光を、入射面から入射させ、内反射面で反射させ、出射面から出射させる第2光学部材と、第2光学部材から出射された映像光を瞳位置に向けて反射するコンバイナーと、第2光学部材の入射面及び第1光学部材の出射面のうち少なくとも一方の光学部材に支持される遮光部材とを備え、第2光学部材の入射面に入射する映像光の光軸と平行な方向から見て、遮光部材は、一方の光学部材に設けられた第1光学部材と第2光学部材とを位置決めする一対の嵌合部材の間に配置される。
【0055】
上記光学モジュールでは、遮光部材が第1光学部材と第2光学部材とを位置決めする一対の嵌合部材の間に配置されて位置決めされるので、遮光部材を第1光学部材又は第2光学部材に近づけることができ、第1光学部材と第2光学部材との距離が長くなることによって発生する迷光を低減することができる。
【0056】
具体的な側面において、遮光部材に設けられた開口は、一対の辺を有し、一方辺は、他方の辺よりも短い。この場合、光軸に垂直な特定方向、具体的には一対の辺と直交する方向において、光束断面が非対称性を有していても、効率的な遮光が可能になる。
【0057】
具体的な側面において、遮光部材は、第1光学部材の出射面から出射される映像光の光軸に対して、垂直である。
【0058】
具体的な側面において、遮光部材は、第1光学部材の出射面から出射される映像光の光軸に対して、垂直な状態に対して傾斜している。この場合、光軸に垂直な特定方向に関して光束断面が非対称性を有していても、この特定方向に遮光部材の傾斜の生じさせる方向を合わせることで、効率的な遮光が可能になる。
【0059】
具体的な側面において、第2光学部材の入射面に入射する映像光の光軸と第2光学部材の出射面から出射される映像光の光軸とを含む仮想平面の法線と平行な方向から見て、遮光部材は曲率を有する。この場合、光軸に垂直で直交する2方向に関して遮光部材の光軸に沿った適正な配置が異なる場合に対処することができる。
【0060】
具体的な側面において、遮光部材の厚みは、20μm以上300μm以下である。
【0061】
具体的な側面において、第2光学部材の入射面に入射する映像光の光軸と第2光学部材の出射面から出射する映像光の光軸とを含む平面の法線に平行な方向から見て、遮光部材は、第1光学部材の出射面の枠よりも外側に突出している。この場合、第1光学部材の出射面から出射する映像光が第2光学部材の入射面の外側から第2光学部材内に入射して迷光となることを回避することができる。
【0062】
具体的な態様における頭部装着型表示装置は、上述した光学モジュールと、映像素子に表示動作を行わせる制御装置とを備える。
【符号の説明】
【0063】
11a,11b…映像素子、11d…表示面、17…遮光部材、17a…開口、17e…外縁、17i…上辺、17j…下辺、17k…斜辺、17m…側辺部、17o…縁部分、17t…切欠き、17y…下端部、20…結像光学系、21…投射レンズ(第1光学部材)、21a,21c…入射面、21b,21d…出射面、21f…フランジ部、21g…内側面、21h,21i…基準面、21j,21k…基準面、21r…突起、21u…上面、21v…下枠、21x…頂点、21y…爪、21z…外側面、22…プリズムミラー(第2光学部材)、22a…入射面、22b…内反射面、22c…出射面、22f…フランジ部、22j…接続面、22w…切欠き、23…シースルーミラー、23a…反射面、23b…板状体、23c…ミラー膜、23o…外側面、28…楔型光学素子、30…光学ブロック、31…バレル、54a,54b…制限面、55a,55b…位置決め面、55c,55d…位置決め面、61…支持板、61a,61b…フレーム、71o…開口、78…固定部材、100…光学モジュール、100a,100b…表示装置、103a,103b…コンバイナー、200…画像表示装置、AX…光軸、AX1,AX2,AX3…光軸部分、EY…眼、ML…映像光、OL…外界光、OS…軸外し光学系、P1,P2,P3…光路、PP…瞳位置、US…装着者