(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】シフト装置
(51)【国際特許分類】
B60K 20/02 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B60K20/02 Z
B60K20/02 F
(21)【出願番号】P 2021031524
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 耕平
(72)【発明者】
【氏名】前森 隆年
(72)【発明者】
【氏名】内山 達司
(72)【発明者】
【氏名】猪原 弘泰
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-52377(JP,A)
【文献】特開2013-56591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトシャフトの回転に応じて変速装置にシフトチェンジさせる鞍乗型車両のシフト装置であって、
シフト操作を受け付ける操作部が設けられたシフトレバーと、
前記シフトシャフトに一体回転可能に設けられたシフトセンサと、
前記シフトレバーと前記シフトセンサを連結するシフトロッドと、を備え、
前記シフトセンサには、前記シフトシャフトが嵌合する嵌合穴が形成された保持部と、ボルトによって前記嵌合穴に前記シフトシャフトを保持させる締付ボスと、が設けられ、
前記締付ボスが前記シフトセンサの下端まで延びており、前記締付ボスに下側から前記ボルトが締付可能なことを特徴とするシフト装置。
【請求項2】
車両側面視にて、車両に対する前記シフトレバーの取付部よりも前方に前記シフトセンサが位置付けられており、
前記締付ボスが前記シフトセンサの前側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシフト装置。
【請求項3】
前記シフトセンサの下端の前側が後側よりも上方になるように前記シフトセンサが傾けられていることを特徴とする請求項2に記載のシフト装置。
【請求項4】
前記操作部が前記シフトセンサの後方に位置付けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシフト装置。
【請求項5】
前記操作部が前記シフトセンサの下端以上の高さに位置付けられていることを特徴とする請求項4に記載のシフト装置。
【請求項6】
前記シフトロッドは、前記シフトシャフトよりも上方で前記シフトセンサの上部に連結されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両のシフト装置として、運転者によるシフト操作を検出して、クラッチ操作を行うことなくシフトチェンジ可能なクイックシフトを採用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のシフト装置は、クランクケースの上部側面からシフトシャフトの一端が突出し、クランクケースの下部側面から後方にシフトレバーが延びている。シフトシャフトの一端にリンクアームを介してシフトロッドの上端が連結され、シフトレバーの中間位置にシフトロッドの下端が連結されている。この上下に長いシフトロッドにシフトセンサが一体に設けられ、シフトロッドに作用する操作荷重に応じてシフト操作が検出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シフトロッドにシフトセンサを一体に設けるためには、シフトロッドの長さを十分に確保しなければならない。また、このようなシフト装置では、シフトセンサの組付け性の向上が求められている。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、シフトロッドの長さを十分に確保できないレイアウトであってもシフトセンサを配置すると共に、シフトセンサの組付け性を向上させることができるシフト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のシフト装置は、シフトシャフトの回転に応じて変速装置にシフトチェンジさせる鞍乗型車両のシフト装置であって、シフト操作を受け付ける操作部が設けられたシフトレバーと、前記シフトシャフトに一体回転可能に設けられたシフトセンサと、前記シフトレバーと前記シフトセンサを連結するシフトロッドと、を備え、前記シフトセンサには、前記シフトシャフトが嵌合する嵌合穴が形成された保持部と、ボルトによって前記嵌合穴に前記シフトシャフトを保持させる締付ボスと、が設けられ、前記締付ボスが前記シフトセンサの下端まで延びており、締付ボスに下側からボルトが締付可能であることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のシフト装置によれば、シフトセンサがシフト操作を検出する機能に加えて、シフトセンサがシフトシャフトとシフトロッドを連結するリンクアームとして機能している。シフトロッドの長さが十分に確保できないレイアウトであっても、シフト装置にシフトセンサを設けることができる。また、シフトセンサの下端からボルトの頭部が突き出すため、目視しながらボルトを締付ボスに締め付けることができる。ツールによって車両の下方からボルトが締め付けられるため、他部品のレイアウトに影響を与えずにツールラインを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のシフト装置では、鞍乗型車両のシフトシャフトの回転に応じて変速装置にシフトチェンジを実施させる。シフトレバーにはシフト操作を受け付ける操作部が設けられ、シフトシャフトにはシフトセンサが一体回転可能に設けられ、シフトレバーとシフトセンサがシフトロッドを介して連結されている。シフトセンサがシフトシャフトとシフトロッドを連結するリンクアームとして機能しており、シフトロッドの長さが十分に確保できないレイアウトであっても、シフト装置にシフトセンサを設けることができる。シフトセンサには保持部と締付ボスが設けられ、保持部にはシフトシャフトが嵌合する嵌合穴が形成され、ボルトが締付ボスに下側から締め付けられることで嵌合穴にシフトシャフトが保持される。締付ボスがシフトセンサの下端まで延びており、シフトセンサの下端からボルトの頭部が突き出すため、目視しながらボルトを締付ボスに締め付けることができる。ツールによって車両の下方からボルトが締め付けられるため、他部品のレイアウトに影響を与えずにツールラインを確保できる。
【実施例】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。
図1は本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。
図2は比較例のシフト装置の左側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、アルミ鋳造によって形成されるツインスパー型の車体フレーム10に、エンジン30や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10はヘッドパイプ11から左右に分岐して後方に延びる一対のメインフレーム12と、ヘッドパイプ11から左右に分岐して下方に延びる一対のダウンフレーム13とを有している。一対のメインフレーム12によってエンジン30の後部が支持され、一対のダウンフレーム13によってエンジン30の前部が支持されている。エンジン30が車体フレーム10に支持されることで車両全体の剛性が確保されている。
【0012】
メインフレーム12の前側部分はエンジン30の上方に位置するタンクレール14になっており、タンクレール14によって燃料タンク16が支持されている。メインフレーム12の後側部分はエンジン30の後方に位置するボディフレーム15になっており、ボディフレーム15の上下方向の略中間位置にスイングアーム17が揺動可能に支持されている。スイングアーム17はリンクプレート18及びリアサスペンション19を介してボディフレーム15の上部に連結されている。ボディフレーム15の上部からはシートレール21とバックステー22が後方に向かって延びており、シートレール21上にライダーシート23が支持されている。
【0013】
ヘッドパイプ11には一対のフロントフォーク24が支持されており、フロントフォーク24の下端には前輪25が回転可能に支持されている。スイングアーム17はボディフレーム15から後方に延びており、スイングアーム17の後端には後輪26が回転可能に支持されている。後輪26にはチェーンドライブ式の変速機構を介してエンジン30が連結されており、変速機構を介してエンジン30からの動力が後輪26に伝達されている。また、ボディフレーム15にはフートレストブラケット27を介してフートレスト28が設けられている。エンジン30の下部と左側のフートレスト28の間にシフト装置50が設けられている。
【0014】
ところで、
図2(A)に示すように、比較例のシフト装置90は、シフトロッド91にシフトセンサ92が取り付けられている。このシフト装置90では、シフトロッド91の後端にシフトレバー93が連結され、シフトロッド91の前端にリンクアーム94を介してシフトシャフト95が連結される。シフトレバー93のシフト操作がシフトシャフト95に伝えられ、シフトシャフト95が回転されることで変速機構がシフトチェンジされる。しかしながら、シフトロッド91が長く確保できないレイアウトでは、シフトロッド91にシフトセンサ92を取り付けることはできない。
【0015】
図2(B)に示すように、リンクアーム94をリンクアーム形状のシフトセンサ96に置き換えることで、シフトロッド91が短いレイアウトであっても、シフトセンサ96を設けることができる。この場合、シフトセンサ96のセレーション(不図示)にシフトシャフト95が挿し込まれて、ボルトの締付によってセレーションにシフトシャフトが保持されるが、ボルトが目視し難くなって組付け性が悪化する。そこで、本実施例では、シフトセンサ60(
図5参照)の下端からボルトの頭部をはみ出させることで、目視しながらボルトを締め付け易くしている。
【0016】
図3及び
図4を参照して、シフト装置の配置構成について説明する。
図3は本実施例のエンジン周辺の左側面図である。
図4は本実施例のエンジン周辺の下面図である。なお、
図3及び
図4では、エンジンからスプロケットカバーを取り外した状態を示している。
【0017】
図3及び
図4に示すように、エンジン30は、アッパケース32及びロアケース33から成る上下割構造のクランクケース31を有している。アッパケース32はシリンダと一体化しており、アッパケース32の上部にはシリンダヘッド34及びシリンダヘッドカバー(不図示)が取り付けられている。シリンダヘッド34及びシリンダヘッドカバーの内側には吸排気バルブを作動させる動弁装置(不図示)が収容されている。ロアケース33の下部には潤滑及び冷却用のオイルを貯留するオイルパン35が取り付けられている。クランクケース31の左側面にはマグネト(不図示)を側方から覆うマグネトカバー36が取り付けられている。
【0018】
マグネトカバー36の内側にはクランク軸41が配置され、クランク軸41の後方にはクランク軸41と平行にカウンタ軸42及びドライブ軸43が配置されている。このように、クランク軸41、カウンタ軸42、ドライブ軸43が前後方向に並んで配置されている。カウンタ軸42の下方にはウォータポンプ44が配置され、ドライブ軸43の下方にはドライブ軸43と平行にシフトカム45が配置されている。さらに、シフトカム45の後方にはシフトカム45と平行にシフトシャフト51が配置され、ロアケース33の左側面から突出したシフトシャフト51の一端にはシフトセンサ60が一体回転可能に取り付けられている。
【0019】
シフトセンサ60は、ドライブ軸43の下方でウォータポンプ44とボディフレーム15の間に配置されている。また、シフトセンサ60はウォータポンプ44の下端よりも上方で、マグネトカバー36よりも車幅方向の内側に位置している(特に
図4参照)。ウォータポンプ44がシフトセンサ60を前方から覆うように配置されているため、ウォータポンプ44によって前方からの飛び石等の飛来物からシフトセンサ60が効果的に保護されている。シフトセンサ60の前面からリード線74が斜め上方に延びており、シフトセンサ60の後方のシフトレバー52の操作部56にリード線74が絡まることがない。
【0020】
ボディフレーム15の後縁にはフートレストブラケット27が取り付けられ、フートレストブラケット27にはフートレスト28と同軸にシフトレバー52が取り付けられている。シフトレバー52は、ロングアーム53とショートアーム54によって側面視略L字状に形成されている。シフトレバー52の屈曲部分には、フートレストブラケット27に揺動可能に支持される取付部55(
図5参照)が形成されている。取付部55から前方に向かって斜め下方にロングアーム53が延びており、ロングアーム53の先端にはシフト操作を受け付ける操作部56が設けられている。ロングアーム53の先端側は車両側面視でボディフレーム15に重なっている。
【0021】
取付部55から略下方にショートアーム54が延びており、ショートアーム54の先端にはジョイント58を介してシフトロッド57の後端が連結されている。シフトロッド57はジョイント58から前方に向かって斜め上方に延びており、ボディフレーム15の車幅方向外側を横切っている。シフトロッド57の前端にはジョイント59を介してシフトセンサ60の上部が連結されている。シフトセンサ60、シフトレバー52、シフトロッド57はドライブ軸43及びスイングアーム17よりも下方で、ウォータポンプ44の下端よりも上方に位置している。このように、車両下方にシフト装置50の各部材がコンパクトに配置されている。
【0022】
シフト装置50では、運転者によってシフトレバー52が操作されると、シフトロッド57を介してシフトセンサ60と共にシフトシャフト51が一体的に所定角度だけ回転される。シフトシャフト51の回転がシフトカム45に伝達されて、シフトカム45が所定角度だけ回転されることで、シフトフォーク(不図示)によってカウンタ軸42とドライブ軸43の変速ギアの組み合わせが変わってシフトチェンジが実行される。このとき、シフトセンサ60によってシフトロッド57の動きに応じてシフトレバー52に対するシフト操作が検出され、クラッチ操作を行うことなくシフトチェンジが可能になっている。
【0023】
図5から
図7を参照して、シフト装置の詳細構成について説明する。
図5は本実施例のシフト装置の左側面図である。
図6は本実施例のシフト装置の右側面図である。
図7は本実施例のシフトシャフトの前面図である。
【0024】
図5及び
図6に示すように、シフトレバー52は、揺動支点となる取付部55から前方に向かって斜め下方にロングアーム53が延びており、この取付部55から略下方にショートアーム54が延びている。ロングアーム53は、シフトセンサ60の下端に向かって延びており、ロングアーム53の先端の操作部56がシフトセンサ60の後方に位置付けられている。ショートアーム54の先端のジョイント58からシフトセンサ60の上部のジョイント59までシフトロッド57が延びている。ロングアーム53がシフトロッド57の車幅方向外側を横切って、ロングアーム53とシフトロッド57が斜めに交差している。
【0025】
シフトレバー52の非操作状態で、ショートアーム54の傾きがシフトセンサ60の傾きに略一致している。ショートアーム54及びシフトセンサ60の傾きに直交する方向にシフトロッド57が延びており、シフトロッド57の延在方向にてシフトセンサ60の前端から操作部56の前端までの距離L1がシフトロッド57の長さL2の半分以下になっている。これにより、シフトセンサ60に操作部56が近づけられて、シフト装置50の前後長が抑えられている。シフト装置50の前後長が抑えられることで、ステップ位置が前後方向に偏って配置されることなく、運転者のライディングポジションが損なわれることがない。
【0026】
車両側面視にて、シフトロッド57の下方に操作部56とシフトセンサ60が設けられ、操作部56及びシフトセンサ60の下部が同じ高さに位置付けられている。これにより、操作部56が低くなり過ぎず、バンク角を容易に確保することができる。また、シフトロッド57の下方にシフトセンサ60が配置されることで、シフトセンサ60と一体回転するシフトシャフト51が変速装置のドライブ軸43(
図3参照)から離される。このため、変速装置の軸配置の自由度が向上すると共に、ドライブチェーンからシフト装置50が離されてスプロケットカバー29(
図1参照)の配置も容易になる。
【0027】
車両側面視にて、シフトロッド57の上方にシフトレバー52の取付部55が設けられ、取付部55及びシフトセンサ60の上部が同じ高さに位置付けられている。また、シフトロッド57の前端よりも後端が下方に位置しており、シフトロッド57の後端のジョイント58がシフトセンサ60の下部及び操作部56と同じ高さに位置付けられている。シフトセンサ60の上部から下部までの範囲にシフトレバー52及びシフトロッド57が収まるため、シフト装置50の高さが抑えられている。また、ロングアーム53が取付部55から操作部56に向かって斜めに延びて、シフトレバー52の長さが十分に確保されている。
【0028】
このように、シフトレバー52とシフトロッド57が交差するようにコンパクトに配置されることで、シフト装置50の前後長及び高さが抑えられて、シフト装置50の小型化が図られている。なお、操作部56、シフトセンサ60の下部、シフトロッド57の後端のジョイント58が完全に同じ高さに位置付けられている必要はなく、これらの高さが同じであると見做せる程度に僅かなズレが生じていてもよい。同様に、取付部55及びシフトセンサ60の上部は完全に同じ高さに位置付けられている必要はなく、これらの高さが同じであると見做せる程度に僅かなズレが生じていてもよい。
【0029】
シフトセンサ60は、下側のボルト73によってシフトシャフト51に取り付けられている。シフトセンサ60のセンサ本体61は、側面視角丸三角形状に形成されている。センサ本体61の車幅方向外側の外側面62には、検出部としてのホールIC(Integrated Circuit)63が設けられると共に、このホールIC63を上下から挟むようにして一対の保護部64、65が設けられている。ホールIC63は、シフトレバー52に対するシフト操作に応じたシフトロッド57の動きを検出している。ホールIC63の前端から制御装置(不図示)に向けてリード線74が延びている。
【0030】
一対の保護部64、65は、上方及び下方からの外力からホールIC63を保護している。ホールIC63はセンサ本体61の外側面62から車幅方向外側に突出しており、一対の保護部64、65はセンサ本体61の上部及び下部からホールIC63に近づくにしたがって車幅方向外側への突出量を増やしている。すなわち、上側の保護部64の外面が車幅方向外側に向かって下向きに傾斜し、下側の保護部65の外面が車幅方向外側に向かって上向きに傾斜している。運転者の足によって上方又は下方から保護部64、65に外力が作用しても、外力が車幅方向外側に逸らされてホールIC63が効果的に保護されている。
【0031】
図6及び
図7に示すように、センサ本体61の車幅方向内側の内側面視には、シフトシャフト51を保持する保持部67と、保持部67の前側に連なる締付ボス68とが設けられている。車両側面視にて保持部67にはセンサ本体61の略中央位置に開口が形成されており、この開口に雌型セレーション69が取り付けられている。雌型セレーション69の嵌合穴から径方向外側に向かって締付ボス68を分断するようにスリット71が形成されている。スリット71上の直線Sを挟んで、保持部67と締付ボス68の下側部分はセンサ本体61の内側面66に連なり、保持部67と締付ボス68の上側部分はセンサ本体61の内側面66から離間している。
【0032】
雌型セレーション69にはシフトシャフト51の雄型セレーションが挿し込まれて、シフトシャフト51の先端がセンサ本体61の当接面72に突き当てられて位置決めされている。このセンサ本体61の当接面72は、センサ本体61の内側面66よりも一段高くなっている。締付ボス68はセンサ本体61の下端まで延びており、締付ボス68の下側からボルト73が締め付けられる。ボルト73が締付ボス68に締め付けられることで、スリット幅が狭められて保持部67の雌型セレーション69にシフトシャフト51が保持される。これにより、シフトシャフト51にシフトセンサ60が一体回転可能に取り付けられる。
【0033】
ツールによって車両の下方からボルト73が締め付けられるため、ウォータポンプ44等の他部品のレイアウトに影響を与えずにツールラインが確保される。シフト装置50(シフトレバー52)の非操作状態で、シフトセンサ60の下端の前側が後側によりも上方になるようにシフトセンサ60が傾けられている。すなわち、シフトシャフト51を中心にして、シフトセンサ60が僅かに後方に傾けられている。上記したように、締付ボス68はシフトセンサ60の前側に形成されているため、前方からボルト73の頭部が目視し易くなって、締付ボス68に対してボルト73が締め付け易くなっている。
【0034】
車両側面視にて、シフトセンサ60が車両に対するシフトレバー52の取付部55よりも前方に位置付けられ、締付ボス68がシフトセンサ60の前側に形成されている。シフトセンサ60の後方にシフト装置50の大半が配置されるため、シフトセンサ60の前方に作業スペースが確保されてボルト73が締め付け易くなる。シフトセンサ60の後方かつシフトセンサ60の下端以上の高さに操作部56が位置付けられ、ボルト73の締付が操作部56やシフトレバー52に邪魔されることがない。シフトロッド57は、シフトシャフト51よりも上方でシフトセンサ60の上部に連結されているため、ボルト73の締付がシフトロッド57に邪魔されることがない。
【0035】
センサ本体61の上部にはジョイント59を介してシフトロッド57の前端が連結されている。このように、センサ本体61の略中央にシフトシャフト51が保持され、センサ本体61の上部にシフトロッド57が連結されて、センサ本体61がシフトシャフト51とシフトロッド57を連結するリンクアームとして機能している。シフトロッド57上にシフトセンサ60を設ける構成ではないため、シフトセンサ60を取り付けるためにシフトロッド57を長く確保する必要がない。リンクアームの代わりにシフトセンサ60が用いられるため、部品点数の増加が抑えられると共にシフトセンサ60が容易に取り付けられる。
【0036】
以上、本実施例によれば、シフトセンサ60がシフト操作を検出する機能に加えて、シフトセンサ60がシフトシャフト51とシフトロッド57を連結するリンクアームとして機能している。シフトロッド57の長さが十分に確保できないレイアウトであっても、シフト装置50にシフトセンサ60を設けることができる。また、シフトセンサ60の下端からボルト73の頭部が突き出すため、目視しながらボルト73を締付ボス68に締め付けることができる。ツールによって車両の下方からボルト73が締め付けられるため、他部品のレイアウトに影響を与えずにツールラインを確保できる。
【0037】
なお、本実施例では、シフトロッドの下方に操作部及びシフトセンサが位置付けられたが、操作部及びシフトセンサはシフトロッドを挟んで同じ側に位置付けられていればよい。例えば、シフトロッドの上方に操作部及びシフトセンサが位置付けられてもよい。
【0038】
また、本実施例では、センサ部としてホールICを用いたが、センサ部はホールICに限定されない。センサ部はシフトロッドの動きを検出可能であればよく、例えばAMR(Anisotropic Magneto Resistive)センサでもよい。
【0039】
また、本実施例では、上方及び下方からの外力からセンサ部を保護する一対の保護部がシフトセンサに設けられているが、上方及び下方の少なくとも一方向からの外力からセンサ部を保護するようにシフトセンサに1つの保護部が設けられていてもよい。また、シフトセンサには保護部が設けられていなくてもよい。
【0040】
また、本実施例では、シフトセンサの下端の前側が後側によりも上方になるようにシフトセンサが後方に傾けられているが、シフトセンサが傾けられていなくてもよいし、シフトセンサが前方に傾けられていてもよい。
【0041】
また、本実施例では、シフトセンサの前側に締付ボスが設けられたが、締付ボスがシフトセンサの下端まで延びるように形成されていれば、シフトセンサの後側に締付ボスが設けられていてもよい。
【0042】
また、本実施例では、シフトロッドの延在方向にてシフトセンサの前端から操作部の前端までの距離がシフトロッドの長さの半分以下であるが、シフトセンサの前端から操作部の前端までの距離は特に限定されない。シフトレバーの長さが確保可能であれば、シフトセンサの前端から操作部の前端までの距離がシフトロッドの長さの半分よりも大きくてもよい。
【0043】
また、本実施例では、シフトシャフトにシフトセンサが一体回転可能に設けられているが、一体回転可能とはシフトシャフトからシフトセンサに遊びなく回転が伝達される構成に限られない。一体回転可能とはシフトシャフトからシフトセンサに所定回転量の遊びを持って回転が伝達されてもよい。
【0044】
また、シフト装置は、図示の鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車する小型のスクータタイプの車両も含んでいる。
【0045】
以上の通り、本実施例のシフト装置(50)は、シフトシャフト(51)の回転に応じて変速装置にシフトチェンジさせる鞍乗型車両のシフト装置であって、シフト操作を受け付ける操作部(56)が設けられたシフトレバー(52)と、シフトシャフトに一体回転可能に設けられたシフトセンサ(60)と、シフトレバーとシフトセンサを連結するシフトロッド(57)と、を備え、シフトセンサには、シフトシャフトが嵌合する嵌合穴が形成された保持部(67)と、ボルト(73)によって嵌合穴にシフトシャフトを保持させる締付ボス(68)と、が設けられ、締付ボスがシフトセンサの下端まで延びており、締付ボスに下側からボルトが締付可能である。この構成によれば、シフトセンサがシフト操作を検出する機能に加えて、シフトセンサがシフトシャフトとシフトロッドを連結するリンクアームとして機能している。シフトロッドの長さが十分に確保できないレイアウトであっても、シフト装置にシフトセンサを設けることができる。また、シフトセンサの下端からボルトの頭部が突き出すため、目視しながらボルトを締付ボスに締め付けることができる。ツールによって車両の下方からボルトが締め付けられるため、他部品のレイアウトに影響を与えずにツールラインを確保できる。
【0046】
本実施例のシフト装置において、車両側面視にて、車両に対するシフトレバーの取付部(55)よりも前方にシフトセンサが位置付けられており、締付ボスがシフトセンサの前側に形成されている。この構成によれば、シフトセンサの後方にシフト装置の大半が配置されるため、シフトセンサの前方に作業スペースが確保されてボルトが締め付け易くなる。
【0047】
本実施例のシフト装置において、シフトセンサの下端の前側が後側よりも上方になるようにシフトセンサが傾けられている。この構成によれば、前方からボルトの頭部が目視し易くなって、締付ボスに対してボルトが締め付けやすくなる。
【0048】
本実施例のシフト装置において、操作部がシフトセンサの後方に位置付けられている。この構成によれば、操作部やシフトレバーに邪魔されることなく、締付ボスにボルトを締め付けることができる。
【0049】
本実施例のシフト装置において、操作部がシフトセンサの下端以上の高さに位置付けられている。この構成によれば、操作部に邪魔されることなく、締付ボスにボルトを締め付けることができる。
【0050】
本実施例のシフト装置において、シフトロッドは、シフトシャフトよりも上方でシフトセンサの上部に連結されている。この構成によれば、シフトロッドに邪魔されることなく、締付ボスにボルトを締め付けることができる。
【0051】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0052】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0053】
1 :鞍乗型車両
50 :シフト装置
51 :シフトシャフト
52 :シフトレバー
55 :取付部
56 :操作部
57 :シフトロッド
60 :シフトセンサ
67 :保持部
68 :締付ボス
73 :ボルト