(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法及び車両制御用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240820BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/10
(21)【出願番号】P 2021047731
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】菊池 卓郎
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-223933(JP,A)
【文献】特開2017-084137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に設けられた個々の車線及び車線間に設けられる車線区画線の種別を表す地図情報を記憶する記憶部と、
車両に搭載されたセンサにより生成された、車両周囲の状況を表すセンサ信号から、前記車両が走行中の自車線を区画する車線区画線の種別を検出する検出部と、
前記自車線と隣接する隣接車線への車線変更が要求された場合において、前記地図情報に表された、前記車両の現在位置における、前記自車線と前記隣接車線との間の車線区画線の種別と、前記検出された車線区画線の種別とが一致するか否か判定し、前記地図情報に表された前記車線区画線の種別と前記検出された車線区画線の種別とが一致する場合、隣接車線への車線変更を開始するよう車両を制御する制御部と、
を有する車両制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記地図情報に表された前記車線区画線の種別と前記検出された車線区画線の種別とが異なる場合、前記車両が前記自車線の走行を継続するよう、前記車両を制御する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
車両に搭載されたセンサにより生成された、車両周囲の状況を表すセンサ信号から、前記車両が走行中の自車線を区画する車線区画線の種別を検出し、
前記自車線と隣接する隣接車線への車線変更が要求された場合において、道路に設けられた個々の車線及び車線間に設けられる車線区画線の種別を表す地図情報に表された、前記車両の現在位置における、前記自車線と前記隣接車線との間の車線区画線の種別と、前記検出された車線区画線の種別とが一致するか否か判定し、
前記地図情報に表された前記車線区画線の種別と前記検出された車線区画線の種別とが一致する場合、隣接車線への車線変更を開始するよう車両を制御する、
ことを含む車両制御方法。
【請求項4】
車両に搭載されたセンサにより生成された、車両周囲の状況を表すセンサ信号から、前記車両が走行中の自車線を区画する車線区画線の種別を検出し、
前記自車線と隣接する隣接車線への車線変更が要求された場合において、道路に設けられた個々の車線及び車線間に設けられる車線区画線の種別を表す地図情報に表された、前記車両の現在位置における、前記自車線と前記隣接車線との間の車線区画線の種別と、前記検出された車線区画線の種別とが一致するか否か判定し、
前記地図情報に表された前記車線区画線の種別と前記検出された車線区画線の種別とが一致する場合、隣接車線への車線変更を開始するよう車両を制御する、
ことをプロセッサに実行させるための車両制御用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法及び車両制御用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を自動運転し、あるいは、車両のドライバの運転を支援する技術が研究されている。特に、車両が走行中の自車線から自車線に隣接する隣接車線に車両を自動で車線変更させ、あるいは、その車線変更を支援する技術が提案されている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【0003】
特許文献1に記載された情報処理装置は、走行中車線及び走行中車線と隣接する隣接車線を少なくとも含む複数の車線を検出し、その検出結果に応じた走行中車線と隣接車線との位置関係を示す情報を、車両の搭乗者に情報を提示可能な情報提示手段に提示させる。
【0004】
また、特許文献2に開示された目標経路生成装置は、取得した地図情報に基づき車線変更箇所が有るか否か判断し、車線変更箇所が有ると判断した場合、車線変更箇所の付近に障害物が有るか否かを判断する。そしてこの目標経路生成装置は、障害物が有ると判断された場合に車線変更箇所の車両の走行が、障害物が無いと判断された場合の車線変更箇所の車両の走行と異なるように、車両の目標経路を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-177622号公報
【文献】国際公開第2016/110732号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両が車線変更を実施する位置を決定するために、車両周囲の環境を表す画像、または、車両周囲の道路の構造を表す地図情報が参照される。しかし、地図情報が車両周囲の道路の最新の構造を常に表しているとは限らない。車両が車線変更のために利用する地図情報が生成された後に、その車線変更を実施しようとする地点近傍において工事が行われたなどの理由により、地図情報に表された道路の構造と実際の道路の構造とが異なることがある。
【0007】
そこで、本発明は、適切な位置で車両に車線変更を実施させることができる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの実施形態によれば、車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、道路に設けられた個々の車線及び車線間に設けられる車線区画線の種別を表す地図情報を記憶する記憶部と、車両に搭載されたセンサにより生成された、車両周囲の状況を表すセンサ信号から、車両が走行中の自車線を区画する車線区画線の種別を検出する検出部と、自車線と隣接する隣接車線への車線変更が要求された場合において、地図情報に表された、車両の現在位置における、自車線と隣接車線との間の車線区画線の種別と、検出された車線区画線の種別とが一致するか否か判定し、地図情報に表された車線区画線の種別と検出された車線区画線の種別とが一致する場合、隣接車線への車線変更を開始するよう車両を制御する制御部とを有する。
【0009】
この車両制御装置において、制御部は、地図情報に表された車線区画線の種別と検出された車線区画線の種別とが異なる場合、車両が自車線の走行を継続するよう、車両を制御することが好ましい。
【0010】
他の形態によれば、車両制御方法が提供される。この車両制御方法は、車両に搭載されたセンサにより生成された、車両周囲の状況を表すセンサ信号から、車両が走行中の自車線を区画する車線区画線の種別を検出し、自車線と隣接する隣接車線への車線変更が要求された場合において、道路に設けられた個々の車線及び車線間に設けられる車線区画線の種別を表す地図情報に表された、車両の現在位置における、自車線と隣接車線との間の車線区画線の種別と、検出された車線区画線の種別とが一致するか否か判定し、地図情報に表された車線区画線の種別と検出された車線区画線の種別とが一致する場合、隣接車線への車線変更を開始するよう車両を制御する、ことを含む。
【0011】
さらに他の形態によれば、車両制御用コンピュータプログラムが提供される。この車両制御用コンピュータプログラムは、車両に搭載されたセンサにより生成された、車両周囲の状況を表すセンサ信号から、車両が走行中の自車線を区画する車線区画線の種別を検出し、自車線と隣接する隣接車線への車線変更が要求された場合において、道路に設けられた個々の車線及び車線間に設けられる車線区画線の種別を表す地図情報に表された、車両の現在位置における、自車線と隣接車線との間の車線区画線の種別と、検出された車線区画線の種別とが一致するか否か判定し、地図情報に表された車線区画線の種別と検出された車線区画線の種別とが一致する場合、隣接車線への車線変更を開始するよう車両を制御する、ことをプロセッサに実行させるための命令を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る走行車両制御装置は、適切な位置で車両に車線変更を実施させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】車両制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。
【
図2】車両制御装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。
【
図3】車両制御処理に関する、電子制御装置のプロセッサの機能ブロック図である。
【
図4】本実施形態による車両制御の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照しつつ、車両制御装置及び車両制御装置において実施される車両制御方法ならびに車両制御用コンピュータプログラムについて説明する。この車両制御装置は、車両に搭載されたセンサにより生成された、車両周囲の状況を表すセンサ信号から、車両が走行中の車線(以下、自車線と呼ぶ)を区画する車線区画線の種別を検出する。すなわち、この車両制御装置は、自車線と自車線に隣接する道路上の領域(以下、隣接エリアと呼ぶ)との間の車線区画線の種別を検出する。なお、隣接エリアは、例えば、自車線に隣接する車線(以下、隣接車線と呼ぶ)、路肩または路側帯である。また、自車線を区画する車線区画線は、自車線と隣接車線との間に設けられるものだけでなく、自車線と隣接車線以外の隣接エリア(例えば、路肩または路側帯)との間に設けられるものも含む。さらに、この車両制御装置は、左右何れかの隣接車線への車線変更が要求された場合に、地図情報に表された、車両の現在位置における自車線とその隣接車線間の車線区画線の種別を特定する。そしてこの車両制御装置は、地図情報に表された車線区画線の種別と、自車線に対して車線変更先となる側において実際に検出された車線区画線の種別とが一致するか否か判定する。そしてこの車両制御装置は、地図情報に表された車線区画線の種別と検出された車線区画線の種別とが一致する場合、自車線に対して車線変更先となる側に実際に車線変更可能な隣接車線が存在すると判定し、隣接車線への車線変更を開始するよう車両を制御する。一方、地図情報に表された車線区画線の種別と検出された車線区画線の種別とが異なる場合、車線変更先となる側の隣接エリアは路肩または路側帯といった車線以外の領域であるか、あるいは車線変更先の隣接車線への車線変更が禁止されていると想定される。そこでこの場合には、車両制御装置は、車線変更を開始しない。これにより、この車両制御装置は、地図情報だけでなく、センサ信号に表された車両周囲の実際の道路構造を参照して車線変更を開始するか否かを判定するので、適切な位置で車線変更を実施することができる。その結果として、この車両制御装置は、地図情報が車両の現在位置周辺における最新の道路構造を反映していないために実際には隣接車線への変更ができない位置で隣接車線への車線変更を実施することを防止できる。
【0015】
図1は、車両制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。また
図2は、車両制御装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。本実施形態では、車両10に搭載され、かつ、車両10を制御する車両制御システム1は、GPS受信機2と、カメラ3と、ストレージ装置4と、車両制御装置の一例である電子制御装置(ECU)5とを有する。GPS受信機2、カメラ3及びストレージ装置4とECU5とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。なお、車両制御システム1は、LiDARあるいはレーダといった、車両10から車両10の周囲に存在する物体までの距離を測定する距離センサ(図示せず)をさらに有していてもよい。さらに、車両制御システム1は、目的地までの走行予定ルートを探索するためのナビゲーション装置(図示せず)を有していてもよい。さらにまた、車両制御システム1は、他の機器と無線通信するための無線通信器(図示せず)を有していてもよい。
【0016】
GPS受信機2は、位置測定部の一例であり、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両10の自己位置を測位する。そしてGPS受信機2は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両10の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介してECU5へ出力する。なお、車両10はGPS受信機2以外の衛星測位システムに準拠した受信機を有していてもよい。この場合、その受信機が車両10の自己位置を測位すればよい。
【0017】
カメラ3は、車両10の周囲の状況を表すセンサ信号を生成するセンサの一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。そしてカメラ3は、例えば、車両10の前方を向くように、例えば、車両10の車室内に取り付けられる。そしてカメラ3は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに車両10の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ3により得られた画像は、センサ信号の一例であり、カラー画像であってもよく、あるいは、グレー画像であってもよい。なお、車両10には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラが設けられてもよい。
【0018】
カメラ3は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してECU5へ出力する。
【0019】
ストレージ装置4は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置、不揮発性の半導体メモリ、または光記録媒体及びそのアクセス装置の少なくとも何れかを有する。そしてストレージ装置4は、地図情報の一例である高精度地図を記憶する。高精度地図には、例えば、その高精度地図に表される所定の領域に含まれる道路の各地点における個々の車線、及び、個々の車線を区画する車線区画線の有無及び各車線区画線の種別を表す情報が含まれる。
【0020】
さらに、ストレージ装置4は、高精度地図の更新処理、及び、ECU5からの高精度地図の読出し要求に関する処理などを実行するためのプロセッサを有していてもよい。この場合、ストレージ装置4は、例えば、車両10が所定距離だけ移動する度に、無線通信器(図示せず)を介して地図サーバへ、高精度地図の取得要求を車両10の現在位置とともに送信する。そしてストレージ装置4は、地図サーバから無線通信器を介して車両10の現在位置の周囲の所定の領域についての高精度地図を受信する。また、ストレージ装置4は、ECU5からの高精度地図の読出し要求を受信すると、記憶している高精度地図から、車両10の現在位置を含み、上記の所定の領域よりも相対的に狭い範囲を表す高精度地図を切り出して、車内ネットワークを介してECU5へ出力する。
【0021】
ECU5は、車両10を自動運転するよう、車両10の走行を制御する。
【0022】
図2に示されるように、ECU5は、通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。通信インターフェース21、メモリ22及びプロセッサ23は、それぞれ、別個の回路として構成されてもよく、あるいは、一つの集積回路として一体的に構成されてもよい。
【0023】
通信インターフェース21は、ECU5を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース21は、GPS受信機2から測位情報を受信する度に、その測位情報をプロセッサ23へわたす。また、通信インターフェース21は、カメラ3から画像を受信する度に、受信した画像をプロセッサ23へわたす。さらにまた、通信インターフェース21は、ストレージ装置4から読み込んだ高精度地図をプロセッサ23へわたす。
【0024】
メモリ22は、記憶部の他の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ22は、ECU5のプロセッサ23により実行される車両制御処理において使用される各種のデータを記憶する。例えば、メモリ22は、車両10の周囲の画像、自己位置の測位結果、高精度地図、カメラ3の焦点距離、画角、撮影方向及び取り付け位置などを表す内部パラメータ、及び、車線区画線などの検出に利用される識別器を特定するためのパラメータセットなどを記憶する。さらに、メモリ22は、車両制御処理の途中で生成される各種のデータを一時的に記憶する。
【0025】
プロセッサ23は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ23は、所定の周期ごとに、車両10に対する車両制御処理を実行する。
【0026】
図3は、車両制御処理に関する、プロセッサ23の機能ブロック図である。プロセッサ23は、検出部31と、車線変更要否判定部32と、制御部33とを有する。プロセッサ23が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ23上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ23が有するこれらの各部は、プロセッサ23に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0027】
検出部31は、ECU5がカメラ3から取得した画像に基づいて、自車線の左右に位置する、自車線を区画するための車線区画線の種別、すなわち、自車線と左右それぞれの隣接エリア間の車線区画線の種別を検出する。例えば、検出部31は、画像から車線区画線及び検出するとともに検出した車線区画線の種別を判定するように予め学習された識別器に、最新の画像を入力することで、その最新の画像に表された車線区画線を検出し、検出した車線区画線の種別を判定する。検出部31は、そのような識別器として、例えば、Single Shot MultiBox Detector(SSD)、または、Faster R-CNNといった、コンボリューショナルニューラルネットワーク型(CNN)のアーキテクチャを持つ、物体検出用のディープニューラルネットワーク(DNN)を用いることができる。あるいは、検出部31は、識別器として、fully convolution network(FCN)あるいはU-netといった、画素ごとにその画素に表された物体の種別を識別するセマンティックセグメンテーション用のDNNを用いてもよい。このような識別器は、車線区画線が表された画像を含む、多数の教師画像を用いて、誤差逆伝搬法といった所定の学習手法に従って予め学習される。
【0028】
検出部31は、検出された車線区画線のうち、画像上で車両10自身の進行方向に相当する基準位置(例えば、水平方向における画像の下端の中点)よりも右側に位置し、かつ基準位置に最も近い車線区画線を、自車線の右側の車線区画線と判定する。そして検出部31は、自車線の右側の車線区画線について、識別器が出力した車線区画線の種別を、自車線の右側の車線区画線の種別とする。同様に、検出部31は、検出された車線区画線のうち、基準位置よりも左側に位置し、かつ基準位置に最も近い車線区画線を、自車線の左側の車線区画線と判定する。そして検出部31は、自車線の左側の車線区画線について、識別器が出力した車線区画線の種別を、自車線の左側の車線区画線の種別とする。
【0029】
検出部31は、他の手法に従って画像から車線区画線を検出するとともに、検出した車線区画線の種別を判定してもよい。例えば、検出部31は、車線区画線の種別ごとに予め用意されたテンプレートと画像とのテンプレートマッチングにより、車線区画線を検出してもよい。この場合、検出部31は、何れかの種別のテンプレートとの一致度合が所定の閾値以上となる領域に、その種別の車線区画線が表されていると判定すればよい。この場合、検出部31は、テンプレートと画像上の対応領域との一致度合として、テンプレートとその対応領域間の正規化相互相関値を算出すればよい。
【0030】
検出部31は、自車線の右側及び左側の車線区画線の種別を制御部33へ通知する。
【0031】
車線変更要否判定部32は、自車線から左右何れかの隣接車線へ車両10を車線変更させる必要があるか否か判定する。例えば、車線変更要否判定部32は、高精度地図を参照して、車両10の現在位置から所定距離先までの区間内に、車両10が現在走行中の道路が分岐する分岐点が含まれるか否か判定する。そしてその区間内に分岐点が存在する場合、車線変更要否判定部32は、車両10に搭載されたナビゲーション装置(図示せず)から受信した、車両10の目的地へ向かうルートを参照して、分岐点において車両10が目的地へ向かうために進行すべき車線を特定する。さらに、車線変更要否判定部32は、特定した車線と、自車線とが異なる場合、特定した車線へ車両10を車線変更させる必要があると判定する。
【0032】
この場合、自車線を特定するために、車線変更要否判定部32は、GPS受信機2から得られた最新の測位情報に表される車両10の現在位置と高精度地図とを参照する。そして車線変更要否判定部32は、高精度地図に表された個々の車線のうち、車両10の現在位置が含まれる車線を自車線として特定する。
【0033】
あるいは、車線変更要否判定部32は、カメラ3により得られた最新の画像と高精度地図とを照合することで、自車線を検出してもよい。この場合、車線変更要否判定部32は、例えば、画像を識別器に入力することで、画像に表された道路上または道路周辺の地物を検出する。そのような識別器として、車線変更要否判定部32は、例えば、検出部31において説明したような、CNN型のアーキテクチャを持つDNNを用いることができる。あるいは、検出部31において使用される、車線区画線検出用の識別器が、車線区画線だけでなく、その他の地物も検出するように予め学習されてもよい。そして車線変更要否判定部32は、車両10の位置及び姿勢を仮定して、画像から検出された地物をカメラ3の内部パラメータを参照して高精度地図上に投影するか、あるいは、高精度地図上の車両10の周囲の道路上または道路周辺の地物を画像上に投影する。車線変更要否判定部32は、画像から検出された地物と高精度地図上に表された地物とが最も一致するときの車両10の位置及び姿勢を、車両10の現在位置及び姿勢として推定する。そして車線変更要否判定部32は、高精度地図に表された個々の車線のうち、推定した車両10の現在位置を含む車線を、自車線として検出すればよい。
【0034】
あるいは、車線変更要否判定部32は、車両10の車室内に設けられた方向指示器(図示せず)をドライバが操作すると、その操作に応じた方向指示器からの操作信号により指定された方向の隣接車線へ車両10を車線変更させる必要があると判定してもよい。
【0035】
車線変更要否判定部32は、車線変更の必要があると判定すると、車線変更を実施する要求が有ること、及び、車線変更すべき方向(自車線に対して左側または右側)を制御部33へ通知する。さらに、車線変更要否判定部32は、車両10が目的地へ向かうための車線変更が要求される場合、その車線変更が完了していることが求められる地点(例えば、自車線と目的地へ向かう隣接車線とが分岐する地点)を制御部33へ通知する。
【0036】
制御部33は、左右何れかの隣接車線への車線変更が要求された場合に、高精度地図に表された、車両の現在位置における自車線とその隣接車線間の車線区画線の種別(以下、地図上区画線種別と呼ぶ)をメモリ22から読み込む。そして制御部33は、地図上区画線種別と、自車線の左右それぞれの車線区画線のうち、車線変更先となる側に位置する、実際に検出された車線区画線の種別とが一致するか否か判定する。制御部33は、地図上区画線種別と検出された車線区画線の種別とが一致する場合、車線変更先となる側に実際に車線変更可能な隣接車線が存在すると判定する。そして制御部33は、その隣接車線への車線変更を開始するよう車両10を制御する。一方、地図上区画線種別と検出された車線区画線の種別とが異なる場合、車線変更先となる側には実際には車線が無く、路肩または路側帯といった車線以外の領域となっているか、あるいは車線変更先となる側の隣接車線への車線変更が禁止されていると想定される。そこでこの場合には、制御部33は、車線変更を開始せず、車両10が自車線の走行を継続するよう、車両10を制御する。また、制御部33は、車両10の車室内に設けられた表示装置あるいはスピーカといった通知機器を介して、車線変更を開始しないこと、及びその理由(車線区画線の種別の不一致)をドライバへ通知してもよい。
【0037】
図4は、本実施形態による車両制御の概要を示す図である。
図4の左側には、車両10周辺の実際の道路の構造400が示され、一方、
図4の右側には、高精度地図に表された、構造400に相当する領域を表す高精度地
図401が示される。この例では、車両10は、走行中の車線410から左側へ分岐する車線411へ車線変更することが要求されているものとする。また、高精度地
図401が車両10に配信された後に、道路構造400において、車線411が車線410から分岐する位置が、地点Aから地点Bに変更されている。すなわち、高精度地
図401には、分岐位置の変更が反映されていないものとする。
【0038】
地点A付近の領域430において、高精度地
図401上では、車線410と車線411間の車線区画線421の種別は点線となっている。これに対して、実際の道路の構造400の対応領域431では、地点A付近ではまだ車線411が分岐していないため、車線410の左側の車線区画線422の種別は実線となっている。そのため、車両10が地点A付近を走行している場合、カメラ3により生成された画像から検出される、車線410の左側の車線区画線422の種別と、高精度地
図401における、その対応位置における車線410と車線411間の車線区画線421の種別は異なる。そのため、制御部33は、車線変更を実施しない。
【0039】
一方、地点B付近では、実際の道路の構造400においても車線411が車線410から分岐しているため、車線410の左側の車線区画線、すなわち、車線410と車線411間の車線区画線422の種別も点線となっている。そのため、車両10が地点B付近を走行している場合、カメラ3により生成された画像から検出される、車線410の左側の車線区画線422の種別と、高精度地
図401における、その対応位置における車線410と車線411間の車線区画線421の種別は同一となる。そのため、制御部33は、車線変更を開始するよう、車両10を制御する。
【0040】
このように、制御部33は、検出された車線区画線の種別と地図上の対応する車線区画線の種別とが一致する場合に限り、車線変更を開始するよう車両10を制御する。そのため、制御部33は、実際には隣接車線への変更ができない位置で隣接車線への車線変更を実施することを防止できる。
【0041】
制御部33は、車線変更を実施する場合、自車線から隣接車線へ車両10が移動するように、車両10の走行予定経路を設定する。その際、制御部33は、車両10が隣接車線へ移動したときに、車両10と隣接車線を走行する他の車両との間隔が所定距離以上となるように、走行予定経路を設定する。そのために、制御部33は、例えば、カメラ3により生成された時系列の一連の画像、あるいは、車両10の設けられた測距センサ(図示せず)により生成された時系列の一連の測距信号に基づいて隣接車線を走行する他の車両を検出する。その際、制御部33は、検出部31において説明したような識別器に画像または測距信号を入力することで、他の車両を検出するとともに、自車線の左右の車線区画線と検出された他の車両との位置関係により、他の車両が隣接車線を走行しているか否かを判定すればよい。そして制御部33は、検出した他の車両を追跡することで得られた直近の所定期間における他の車両の走行軌跡に対して所定の予測フィルタを適用することで、現在から所定時間先までの他の車両の走行軌跡を予測する。制御部33は、その予測した他の車両の走行軌跡を参照して、隣接車線において他の車両と車両10とが所定距離以上となるように走行予定経路を設定すればよい。
【0042】
制御部33は、走行予定経路を設定すると、その走行予定経路に沿って車両10が走行するように車両10を自動運転制御する。例えば、制御部33は、車両10の現在位置及び走行予定経路を参照して、車両10が走行予定経路に沿って走行するための操舵角を求め、その操舵角に応じた制御信号を、車両10の操舵輪を制御するアクチュエータ(図示せず)へ出力する。また、制御部33は、車両10の目標速度、及び、車速センサ(図示せず)により測定された車両10の現在の車速に従って、車両10の目標加速度を求め、その目標加速度となるようにアクセル開度またはブレーキ量を設定する。そして制御部33は、設定されたアクセル開度に従って燃料噴射量を求め、その燃料噴射量に応じた制御信号を車両10のエンジンの燃料噴射装置へ出力する。あるいは、制御部33は、設定されたアクセル開度に従って車両10のモータへ供給する電力を求め、その電力に応じた制御信号を、モータの駆動装置へ出力する。さらに、制御部33は、設定されたブレーキ量に応じた制御信号を車両10のブレーキへ出力する。
【0043】
図5は、プロセッサ23により実行される、車両制御処理の動作フローチャートである。プロセッサ23は、所定の周期ごとに、以下の動作フローチャートに従って車両制御処理を実行すればよい。
【0044】
プロセッサ23の検出部31は、ECU5がカメラ3から取得した画像に基づいて自車線と、自車線を区画する、自車線の左右それぞれの車線区画線の種別を検出する(ステップS101)。
【0045】
プロセッサ23の車線変更要否判定部32は、自車線から左右何れかの隣接車線へ車両10を車線変更させる必要があるか否か判定する(ステップS102)。
【0046】
車線変更の必要が無い場合(ステップS102-No)、プロセッサ23は、車両制御処理を終了する。一方、車線変更の必要がある場合(ステップS102-Yes)、プロセッサ23の制御部33は、自車線の左右の車線区画線のうち、車線変更先となる側において検出された車線区画線の種別を特定する。そして制御部33は、特定した車線区画線の種別と、高精度地図に表された対応する車線区画線の種別(すなわち、地図上区画線種別)とが一致するか否か判定する(ステップS103)。
【0047】
地図上区画線種別と検出された車線区画線の種別とが一致する場合(ステップS103-Yes)、制御部33は、車線変更先となる側に実際に車線変更可能な隣接車線が存在すると判定する。そして制御部33は、その隣接車線への車線変更を開始するよう車両10を制御する(ステップS104)。
【0048】
一方、地図上区画線種別と検出された車線区画線の種別とが異なる場合(ステップS103-No)、制御部33は、車線変更を開始せず、車両10が自車線の走行を継続するよう、車両10を制御する(ステップS105)。ステップS104またはステップS105の後、プロセッサ23は、車両制御処理を終了する。
【0049】
以上に説明してきたように、この車両制御装置は、車両周囲の状況を表すセンサ信号から自車線を区画する車線区画線の種別を検出する。さらに、この車両制御装置は、自車線から左右何れかの隣接車線への車線変更が要求された場合に、自車線に対して車線変更先となる側の車線区画線についての検出された種別と、地図情報に表された対応する車線区画線の種別が一致するか否か判定する。そしてこの車両制御装置は、地図情報に表された車線区画線の種別と検出された車線区画線の種別とが一致する場合、車線変更先となる側に実際に車線変更可能な隣接車線が存在すると判定し、隣接車線への車線変更を開始するよう車両を制御する。一方、地図情報に表された車線区画線の種別と検出された車線区画線の種別とが異なる場合、車両制御装置は、車線変更を開始しない。これにより、この車両制御装置は、地図情報だけでなく、センサ信号に表された車両周囲の実際の道路構造を参照して車線変更を開始するか否かを判定するので、適切な位置で車線変更を実施することができる。その結果として、この車両制御装置は、地図情報が車両の現在位置周辺における最新の道路構造を反映していないために実際には隣接車線への変更ができない位置で隣接車線への車線変更を実施することを防止できる。
【0050】
変形例によれば、検出部31は、制御部33と同様に、車線変更要否判定部32により車線変更の必要があると判定された場合に限り、自車線と隣接エリア間の車線区画線の種別を判定してもよい。これにより、車線変更の必要が無い場合には、検出部31の処理は実行されなくてもよいので、車両制御処理全体の演算量が削減される。
【0051】
また、検出部31は、カメラ3以外の車両10に搭載されたセンサにより生成された、車両10の周囲の状況を表すセンサ信号に基づいて、自車線の左右それぞれの車線区画線の種別を検出してもよい。この場合も、上記の実施形態と同様に、検出部31は、そのセンサ信号から車線区画線を検出するとともに車線区画線の種別を判定するように予め学習された識別器にそのセンサ信号を入力することで、自車線の左右それぞれの車線区画線の種別を検出すればよい。そのようなセンサとして、センサ信号上で車線区画線の種別ごとに異なる特徴が表れるもの、例えば、FOTカメラが利用可能である。
【0052】
他の変形例によれば、制御部33は、要求された車線変更において目標となる隣接車線(以下、目標車線と呼ぶ)が、車両10の現在位置から所定距離以内において自車線から分岐した車線である場合にのみ、上記の実施形態と同様の処理を実行してもよい。すなわち、制御部33は、高精度地図及び車両10の現在位置を参照して、目標車線が、車両10の現在位置から所定距離以内において自車線から分岐した車線か否か判定する。そして制御部33は、目標車線が、車両10の現在位置から所定距離以内において自車線から分岐した車線でなければ、自車線と目標車線間の車線区画線の種別が検出されたものと高精度地図に表されたものとで一致するか否かを判定しない。すなわち、制御部33は、その車線区画線の種別が検出されたものと高精度地図に表されたものとで異なっていても、車線変更を開始するように車両10を制御する。これにより、制御部33は、ドライバが自車線上の障害物を見つけて、その障害物を回避するために車線変更を指示した場合のように、安全上の理由で車線変更の実施が要求されたときに車線変更が実施されなくなることを防止できる。
【0053】
また、上記の実施形態または変形例による、ECU5のプロセッサ23の機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。
【0054】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
1 車両制御システム
10 車両
2 GPS受信機
3 カメラ
4 ストレージ装置
5 電子制御装置(ECU)
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
31 検出部
32 車線変更要否判定部
33 制御部