(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】走行制御装置、走行制御方法、および走行制御用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240820BHJP
B60W 30/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60W30/00
(21)【出願番号】P 2021052077
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100122116
【氏名又は名称】井上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】近藤 鈴華
(72)【発明者】
【氏名】北川 栄来
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祥太
(72)【発明者】
【氏名】岡田 悠
(72)【発明者】
【氏名】金子 拓央
(72)【発明者】
【氏名】吉野 聡一
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/190212(WO,A1)
【文献】特開2020-163907(JP,A)
【文献】特開2009-151522(JP,A)
【文献】特開2020-067711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるセンサが前記車両の周辺状況に応じて出力する周辺データから、前記車両が走行する道路を区画する車線区画線、および、前記車両の後方を走行する後方車両を検出する検出部と
、
前記車線区画線に従って前記車両の走行を制御する走行制御部と、
前記車両と前記後方車両との間隔が間隔閾値よりも大きい場合に、前記車両に、予定された車線変更の実
行を含む第1の動作を実行させ、前記間隔が前記間隔閾値よりも小さい場合に、前記車両に、前記予定された車線変更の中
止を含む第2の動作を実行させる動作制御部と、
前記周辺データから検出される周辺状況、地図情報を記憶する記憶装置から取得する前記車両の現在位置の周辺状況、および前記車両における車線変更の予定のうち少なくとも1つを含む前記車両の走行状況が、前記間隔の縮小を生じ得る所定の間隔縮小条件を満足しない場合、前記間隔閾値を第1の値に設定し、前記車両の走行状況が前記間隔縮小条件を満足する場合、前記間隔閾値を前記第1の値よりも小さい第2の値に設定する設定部と、
を備える走行制御装置。
【請求項2】
前記間隔縮小条件は、前記車両が走行している自車線の前方で前記自車線から分岐する分岐車線に前記車両が車線変更予定であることを含み、
前記第1の動作は前記車線変更の実行を含み、前記第2の動作は前記車線変更の中止を含む、請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
車両に搭載されるセンサが前記車両の周辺状況に応じて出力する周辺データから、前記車両の周辺を走行する後方車両を検出し、
検出された前記後方車両から所定以上の間隔を保つように前記車両の走行を制御し、
前記車両と前記後方車両との間隔が間隔閾値よりも大きい場合に、前記車両に、予定された車線変更の実
行を含む第1の動作を実行させ、前記間隔が前記間隔閾値よりも小さい場合に、前記車両に、前記予定された車線変更の中
止を含む第2の動作を実行させ、
前記周辺データから検出される周辺状況、地図情報を記憶する記憶装置から取得する前記車両の現在位置の周辺状況、および前記車両における車線変更の予定のうち少なくとも1つを含む前記車両の走行状況が、前記間隔の縮小を生じ得る所定の間隔縮小条件を満足しない場合、前記間隔閾値を第1の値に設定し、前記車両の走行状況が前記間隔縮小条件を満足する場合、前記間隔閾値を前記第1の値よりも小さい第2の値に設定する、
ことを含む走行制御方法。
【請求項4】
車両に搭載されるセンサが前記車両の周辺状況に応じて出力する周辺データから、前記車両の周辺を走行する後方車両を検出することと、
検出された前記後方車両から所定以上の間隔を保つように前記車両の走行を制御することと、
前記車両と前記後方車両との間隔が間隔閾値よりも大きい場合に、前記車両に、予定された車線変更の実
行を含む第1の動作を実行させ、前記間隔が前記間隔閾値よりも小さい場合に、前記車両に、前記予定された車線変更の中
止を含む第2の動作を実行させることと、
前記周辺データから検出される周辺状況、地図情報を記憶する記憶装置から取得する前記車両の現在位置の周辺状況、および前記車両における車線変更の予定のうち少なくとも1つを含む前記車両の走行状況が、前記間隔の縮小を生じ得る所定の間隔縮小条件を満足しない場合、前記間隔閾値を第1の値に設定し、前記車両の走行状況が前記間隔縮小条件を満足する場合、前記間隔閾値を前記第1の値よりも小さい第2の値に設定することと、
をプロセッサに実行させる走行制御用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行を制御する走行制御装置、走行制御方法、および走行制御用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたカメラにより生成された周辺画像に基づいて車両の走行を自動的に制御する走行制御装置は、周辺画像から後方車両を検出し、後方車両から所定以上の間隔を保つように車両の走行を制御する。
【0003】
特許文献1には、自動運転による走行の難度が高い高難度地点の手前で後続車両が自車両から所定範囲に存在する場合、自動運転から手動運転への走行状態の切り替えを案内する走行制御装置が記載されている。特許文献1に記載の走行制御装置によると、運転者は後続車両が接近する前に高難度地点を手動運転により通過することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自車両の走行制御を行う状況によっては、後続車両との間隔の縮小が想定される場合がある。例えば、自車両が走行車線から分岐する分岐車線に車線変更する場合、分岐車線の方が走行車線よりも制限速度が低いため、走行制御装置は車線変更前に自車両の速度を低下させる必要がある。走行車線において自車両の後方を走行する後続車両が一定の速度で走行している場合、速度の低下する自車両と一定の速度で走行する後続車両との間隔は短くなる。
【0006】
自車両と後続車両との間隔がある程度縮小されたとしても、自車両はその後分岐車線に車線変更するため、走行車線を走行する後続車両に対して危険な状況になるわけではない。しかし、自車両と後続車両との間隔が走行車線を走行中の安全を維持するために設定された安全距離を下回ることにより、走行制御装置は、安全を担保するために自動運転による車線変更を中止といった安全に寄与する動作を車両に行わせる。この動作により、走行制御装置は、走行車線の走行の継続、運転者への手動運転への交代要求等を行うこととなり、自動運転による分岐車線への車線変更が適切に行われないため、走行制御装置の可用性が低下する。また、自車両の挙動が変更されることにより、後続車両も挙動を変更する必要が生じる。
【0007】
本発明は、車両の周辺状況に応じて適切に車両に動作を実行させることができる走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる走行制御装置は、車両に搭載されるセンサが車両の周辺状況に応じて出力する周辺データから、車両の周辺を走行する後方車両を検出する検出部と、検出された後方車両から所定以上の間隔を保つように車両の走行を制御する走行制御部と、車両と後方車両との間隔が間隔閾値よりも大きい場合に、車両に第1の動作を実行させ、間隔が間隔閾値よりも小さい場合に、車両に第1の動作よりも車両の安全走行への寄与の大きい第2の動作を実行させる動作制御部と、周辺データから検出される周辺状況、地図情報を記憶する記憶装置から取得する車両の現在位置の周辺状況、および車両における車線変更の予定のうち少なくとも1つを含む車両の走行状況が、間隔の縮小を生じ得る所定の間隔縮小条件を満足しない場合、間隔閾値を第1の値に設定し、車両の走行状況が間隔縮小条件を満足する場合、間隔閾値を第1の値よりも小さい第2の値に設定する設定部と、を備える。
【0009】
本発明にかかる走行制御装置において、間隔縮小条件は、車両が走行している自車線の前方で自車線から分岐する分岐車線に車両が車線変更予定であることを含み、第1の動作は車線変更の実行を含み、第2の動作は車線変更の中止を含むことが好ましい。
【0010】
本発明にかかる走行制御装置において、間隔縮小条件は、車両が走行している車線の前方で制限速度が低下することを含み、第1の動作は車線の走行の継続を含み、第2の動作は車線から車線以外の車線への車線変更を含むことが好ましい。
【0011】
本発明にかかる走行制御装置において、第1の動作は第1の態様による車両の運転者への通知を含み、第2の動作は第1の態様よりも強度の高い第2の態様による運転者への通知を含むことが好ましい。
【0012】
本発明にかかる走行制御方法は、車両に搭載されるセンサが車両の周辺状況に応じて出力する周辺データから、車両の周辺を走行する後方車両を検出し、検出された後方車両から所定以上の間隔を保つように車両の走行を制御し、車両と後方車両との間隔が間隔閾値よりも大きい場合に、車両に第1の動作を実行させ、間隔が間隔閾値よりも小さい場合に、車両に第1の動作よりも車両の安全走行への寄与の大きい第2の動作を実行させ、周辺データから検出される周辺状況、地図情報を記憶する記憶装置から取得する車両の現在位置の周辺状況、および車両における車線変更の予定のうち少なくとも1つを含む車両の走行状況が、間隔の縮小を生じ得る所定の間隔縮小条件を満足しない場合、間隔閾値を第1の値に設定し、車両の走行状況が間隔縮小条件を満足する場合、間隔閾値を第1の値よりも小さい第2の値に設定する、ことを含む。
【0013】
本発明にかかる走行制御用コンピュータプログラムは、車両に搭載されるセンサが車両の周辺状況に応じて出力する周辺データから、車両の周辺を走行する後方車両を検出することと、検出された後方車両から所定以上の間隔を保つように車両の走行を制御することと、車両と後方車両との間隔が間隔閾値よりも大きい場合に、車両に第1の動作を実行させ、間隔が間隔閾値よりも小さい場合に、車両に第1の動作よりも車両の安全走行への寄与の大きい第2の動作を実行させることと、周辺データから検出される周辺状況、地図情報を記憶する記憶装置から取得する車両の現在位置の周辺状況、および車両における車線変更の予定のうち少なくとも1つを含む車両の走行状況が、間隔の縮小を生じ得る所定の間隔縮小条件を満足しない場合、間隔閾値を第1の値に設定し、車両の走行状況が間隔縮小条件を満足する場合、間隔閾値を第1の値よりも小さい第2の値に設定することと、をプロセッサに実行させる。
【0014】
本発明にかかる走行制御装置によれば、車両の周辺状況に応じて適切に車両に動作を実行させることができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】走行制御装置が実装される車両の概略構成図である。
【
図3】走行制御装置が有するプロセッサの機能ブロック図である。
【
図4】間隔縮小条件の第1の例を説明する図である。
【
図5】間隔縮小条件の第2の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、車両の周辺状況に応じて適切に車両に動作を実行させることができる走行制御装置について詳細に説明する。走行制御装置は、車両に搭載されるセンサが車両の周辺状況に応じて出力する周辺データから、車両が走行する車線を区画する車線区画線、および、車両の後方を走行する後方車両を検出する。走行制御装置は、車線区画線に従って車両の走行を制御する。また、走行制御装置は、車両と後方車両との間隔が間隔閾値よりも大きい場合に、車両に第1の動作を実行させ、間隔が間隔閾値よりも小さい場合に、車両に第1の動作よりも車両の安全走行への寄与の大きい第2の動作を実行させる。そして、走行制御装置は、車両の走行状況が間隔の縮小を生じ得る所定の間隔縮小条件を満足しない場合、間隔閾値を第1の値に設定し、車両の走行状況が間隔縮小条件を満足する場合、間隔閾値を第1の値よりも小さい第2の値に設定する。車両の走行状況は、周辺データから検出される周辺状況、地図情報を記憶する記憶装置から取得する車両の現在位置の周辺状況、および車両における車線変更の予定のうち少なくとも1つを含む。
【0017】
図1は、走行制御装置が実装される車両の概略構成図である。
【0018】
車両1は、周辺カメラ2と、メーターディスプレイ3と、GNSS受信機4と、ストレージ装置5と、走行制御装置6とを有する。周辺カメラ2、メーターディスプレイ3、GNSS受信機4、およびストレージ装置5と、走行制御装置6とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。
【0019】
周辺カメラ2は、車両1の周辺状況に応じた周辺データを生成するためのセンサの一例である。周辺カメラ2は、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上の撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系とを有する。周辺カメラ2は、前方周辺カメラ2-1および後方周辺カメラ2-2を有する。前方周辺カメラ2-1は、例えば車室内の前方上部に、前方を向けて配置され、後方周辺カメラ2-2は、例えば車室内の後方上部に、後方を向けて配置される。周辺カメラ2は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとにフロントガラスまたはリヤガラスを介して車両1の周辺の状況を撮影し、周辺の状況が表された周辺画像を周辺データとして出力する。
【0020】
メーターディスプレイ3は、通知装置の一例であり、例えば液晶ディスプレイを有する。メーターディスプレイ3は、車内ネットワークを介して走行制御装置6から受け取った信号に従って、所定の行動を運転者に要求する画面を表示する。
【0021】
GNSS受信機4は、所定の周期ごとにGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号を受信し、受信したGNSS信号に基づいて車両1の自己位置を測位する。GNSS受信機4は、所定の周期ごとに、GNSS信号に基づく車両1の自己位置の測位結果を表す測位信号を、車内ネットワークを介して走行制御装置6へ出力する。
【0022】
ストレージ装置5は、記憶装置の一例であり、例えば、ハードディスク装置、または不揮発性の半導体メモリを有する。ストレージ装置5は、高精度地図を記憶する。高精度地図には、例えば、その高精度地図に表される所定の領域に含まれる各道路についての分岐車線および制限速度を表す情報が含まれる。
【0023】
走行制御装置6は、通信インタフェースと、メモリと、プロセッサとを備えるECU(Electronic Control Unit)である。走行制御装置6は、通信インタフェースを介して周辺カメラ2から受信する周辺画像から車線区画線および後方車両を検出し、車線区画線に従って車両1の走行を制御する。また、走行制御装置6は、車両1と後方車両との間隔に応じて、車両1の所定の動作を実行させる。
【0024】
図4は、走行制御装置6のハードウェア模式図である。
【0025】
通信インタフェース61は、通信部の一例であり、走行制御装置6を車内ネットワークへ接続するための通信インタフェース回路を有する。通信インタフェース61は、受信したデータをプロセッサ63に供給する。また、通信インタフェース61は、プロセッサ63から供給されたデータを外部に出力する。
【0026】
メモリ62は、記憶部の一例であり、揮発性の半導体メモリおよび不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ62は、プロセッサ63による処理に用いられる各種データを保存する。メモリ62に記憶されるデータは、例えば、周辺画像から後方車両を識別する識別器として用いられるニューラルネットワークのパラメータ、車両1と後方車両との間隔に応じて車両1に実行させる動作、車両1と後方車両との間隔に応じて車両1に実行させる動作を特定するための間隔閾値として用いられる値、後方車両との間隔の縮小を生じ得る走行状況を判定するための間隔縮小条件などである。また、メモリ62は、各種アプリケーションプログラム、例えば走行制御処理を実行する走行制御用コンピュータプログラム等を保存する。
【0027】
プロセッサ63は、制御部の一例であり、1以上のプロセッサおよびその周辺回路を有する。プロセッサ63は、論理演算ユニット、数値演算ユニット、またはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。
【0028】
図3は、走行制御装置6が有するプロセッサ63の機能ブロック図である。
【0029】
走行制御装置6のプロセッサ63は、機能ブロックとして、検出部631と、走行制御部632と、動作制御部633と、設定部634とを有する。プロセッサ63が有するこれらの各部は、プロセッサ63上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。プロセッサ63の各部の機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。あるいは、プロセッサ63が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、またはファームウェアとして走行制御装置6に実装されてもよい。
【0030】
検出部631は、周辺カメラ2が出力する周辺画像から、車両1の周辺を走行する後方車両を検出する。
【0031】
検出部631は、通信インタフェース61を介して周辺カメラ2から受信する周辺画像を、車両が表された領域を検出するように予め学習された識別器に入力することにより、車両1の周辺を走行する後方車両の位置を特定する。
【0032】
また、検出部631は、周辺画像を、車線区画線が表された領域を検出するように予め学習された識別器に入力することにより、車両1の周辺における車線区画線の位置を特定する。
【0033】
識別器は、例えば、入力側から出力側に向けて直列に接続された複数の畳み込み層を有する畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とすることができる。予め車両および車線区画線が表された画像を教師データとして用いてCNNに入力し、学習を行うことにより、CNNは画像から車両が表された領域および車線区画線が表された領域を識別する識別器として動作する。
【0034】
走行制御部632は、検出部631により検出された車線区画線に従って車両1の走行を制御する。
【0035】
走行制御部632は、検出された車線区画線に従って、車線区画線により区画された車線のうち現在走行している車線を維持するように、通信インタフェース61を介して車両1の走行機構(不図示)に制御信号を出力する。走行機構には、例えば車両1に動力を供給するエンジンまたはモータ、車両1の走行速度を減少させるブレーキ、および車両1を操舵するステアリング機構が含まれる。
【0036】
また、走行制御部632は、検出された車線区画線に従って、現在走行している車線から予め設定された目的地に向かうことのできる車線への車線変更を行うように、通信インタフェース61を介して車両1の走行機構(不図示)に制御信号を出力する。
【0037】
動作制御部633は、車両1と後方車両との間隔に応じて、車両1の所定の動作を実行させる。
【0038】
動作制御部633は、車両1と後方車両との間隔を算出する。例えば、動作制御部633は、後方車両をはさむ一対の車線区画線の位置を特定する。また、動作制御部633は、地図情報を保存するストレージ装置5から、車両1の現在位置に対応する車線の幅を表す幅情報を取得する。周辺カメラ2の焦点距離は既知であるので、周辺画像において後方車両をはさむ一対の車線区画線の間隔および幅情報により、車両1と後方車両との間隔を推定することができる。
【0039】
車両1と後方車両との間隔がメモリ62に記憶された間隔閾値よりも大きい場合、動作制御部633は、メモリ62に記憶された複数の動作に含まれる第1の動作を車両1に実行させる。車両1と後方車両との間隔がメモリ62に記憶された間隔閾値よりも小さい場合、動作制御部633は、メモリ62に記憶された複数の動作に含まれる第2の動作を車両1に実行させる。第2の動作は、第1の動作よりも車両の安全走行への寄与の大きい動作である。動作制御部633は車両1と後方車両との間隔が間隔閾値よりも小さい場合に、安全走行への寄与がより大きい第2の動作を実行することで、車両1の走行をより安全にする。
【0040】
例えば、動作制御部633は、車線変更が予定されている状況において車両1と後方車両との間隔がメモリ62に記憶された間隔閾値よりも大きい場合、第1の動作として、車両1に予定されていた車線変更を実行させる。また、動作制御部633は、車線変更が予定されている状況において車両1と後方車両との間隔がメモリ62に記憶された間隔閾値よりも小さい場合、第2の動作として、車両1に予定されていた車線変更を中止させる。車線変更の中止は、不安定な状態となり得る車線変更に代えて、より安定した状態となる車線維持を行うため、車線変更の実行よりも安全走行への寄与が大きい動作である。
【0041】
例えば、動作制御部633は、車両1と後方車両との間隔がメモリ62に記憶された間隔閾値よりも大きい場合、第1の動作として、車両1に走行中の車線の走行を継続させる。また、動作制御部633は、車両1が車線を走行している状況において車両1と後方車両との間隔がメモリ62に記憶された間隔閾値よりも小さい場合、第2の動作として、車両1に他の車線への車線変更を実行させる。他の車線への車線変更は、後方から接近する後方車両を回避することができるため、走行中の車線の走行の継続よりも安全走行への寄与が大きい動作である。
【0042】
例えば、動作制御部633は、車両1と後方車両との間隔がメモリ62に記憶された間隔閾値よりも大きい場合、第1の動作として、車両1に第1の態様による車両1の運転者への通知を実行させる。また、動作制御部633は、車両1と後方車両との間隔がメモリ62に記憶された間隔閾値よりも小さい場合、第2の動作として、車両1に、第1の態様よりも強度の高い第2の態様による運転者への通知を実行させる。例えば、色温度の高い色(青、白など)による表示、ビープ音の単発鳴動、小音量の音声などが第1の態様として用いられる。このとき、色温度の低い色(赤、黄など)による表示、ビープ音の断続鳴動、大音量の音声、シートベルトによる体感警報の作動などが、第1の態様よりも強度の高い第2の態様として用いられる。第2の態様は、第1の態様よりも強く運転者の注意を喚起する態様である。強度の高い第2の態様による運転者への通知は、運転者の注意をより強く喚起するため、第1の態様による運転者への通知よりも安全走行への寄与が大きい動作である。
【0043】
設定部634は、車両1の走行状況が、メモリ62に記憶された間隔縮小条件を満足するか否かを判定する。車両1の走行状況は、通信インタフェース61を介して周辺カメラ2から受信する周辺画像から検出される周辺状況、地図情報を記憶するストレージ装置5から取得する車両1の現在位置の周辺状況、および車両1における車線変更の予定のうち少なくとも1つを含む。間隔縮小条件は、後方車両との間隔の縮小を生じ得る走行状況を判定するための条件である。
【0044】
間隔縮小条件は、車両1が走行している自車線の前方で自車線から分岐する分岐車線に車両1が車線変更予定であることを含む。分岐車線への車線変更時には、減速が求められる。車両1が分岐車線への車線変更のために減速することにより、減速を行わない後方車両との間隔の縮小が生じ得る。
【0045】
図4は、間隔縮小条件の第1の例を説明する図である。
【0046】
設定部634は、GNSS受信機4から受信する測位信号により特定される現在位置の周辺状況を、高精度地図を記憶するストレージ装置5から取得し、車両1が走行している車線の前方での車線分岐の有無を判定する。また、設定部634は、分岐車線への車線変更予定の有無を走行制御部632から取得する。設定部634は、ストレージ装置5かた取得した現在位置の周辺状況を含む車両1の走行状況が、間隔縮小条件を満足するか否かを判定する。設定部は、通信インタフェース61を介して周辺カメラ2から受信する周辺画像から検出される周辺状況における車線区画線の構成に基づいて、車両1が走行している車線の前方での車線分岐の有無を判定してもよい。
【0047】
間隔縮小条件の第1の例において、車両1は、車線区画線LL11およびLL12に区画された車線L11を走行している。車線L11は、車線区画線LL12およびLL13に区画された車線L12に隣接している。車両1が走行している車線L11の前方で、車線L11から、車線区画線LL14およびLL15に区画された分岐車線L13が分岐している。車両1は、分岐車線L13に車線変更予定である。したがって、間隔縮小条件の第1の例は、間隔縮小条件「車両1が走行している自車線の前方で自車線から分岐する分岐車線に車両1が車線変更予定であること」を満足する。
【0048】
車両1の走行状況が間隔縮小条件を満足しないと判定された場合、設定部634は、間隔閾値を第1の値(例えば100m)に設定する。一方、車両1の走行状況が間隔縮小条件を満足すると判定された場合、設定部634は、間隔閾値を第2の値(例えば80m)に設定する。
【0049】
図4の例における車両1の走行条件は間隔縮小条件を満足するため、設定部634は間隔閾値を第2の値TH2に設定する。
図4の例において、車両1と後方車両20との間の間隔D1は、第1の値TH1よりも小さく、第2の値TH2よりも大きい。動作制御部633は、後方車両との間隔が第2の値TH2よりも大きいと判定し、車両1に第1の動作を実行させる。
【0050】
また、間隔縮小条件は、車両が走行している車線の前方で制限速度が低下することを含む。車両1が低下する制限速度に適合するように減速することにより、まだ減速を行っていない後方車両との間隔の縮小が生じ得る。
【0051】
図5は、間隔縮小条件の第2の例を説明する図である。
【0052】
設定部634は、GNSS受信機4から受信する測位信号により特定される現在位置の周辺状況を、高精度地図を記憶するストレージ装置5から取得し、車両1が走行している車線の前方での制限速度の変更の有無を判定する。設定部634は、ストレージ装置5かた取得した現在位置の周辺状況を含む車両1の走行状況が、間隔縮小条件を満足するか否かを判定する。設定部は、通信インタフェース61を介して周辺カメラ2から受信する周辺画像から検出される周辺状況における速度標識基づいて、車両1が走行している車線の前方での制限速度の変更の有無を判定してもよい。
【0053】
車両1は、車線区画線LL22およびLL23に区画された車線L22を走行している。車線L22は、車線区画線LL21およびLL22に区画された車線L21に隣接している。車両1が走行している車線L22の前方で、制限速度が100km/hから80km/hに低下する。したがって、間隔縮小条件の第2の例は、間隔縮小条件「車両が走行している車線の前方で制限速度が低下すること」を満足する。
【0054】
車両1の走行状況が間隔縮小条件を満足しないと判定された場合、設定部634は、間隔閾値を第1の値(例えば100m)に設定する。一方、車両1の走行状況が間隔縮小条件を満足すると判定された場合、設定部634は、間隔閾値を第2の値(例えば80m)に設定する。
【0055】
図5の例における車両1の走行条件は間隔縮小条件を満足するため、設定部634は間隔閾値を第2の値TH2に設定する。
図5の例において、車両1と後方車両20との間の間隔D1は、第1の値TH1よりも小さく、第2の値TH2よりも大きい。動作制御部633は、後方車両との間隔が第2の値TH2よりも大きいと判定し、車両1に第1の動作を実行させる。
【0056】
図6は、走行制御処理のフローチャートである。走行制御装置6は、車両1が自動運転制御による走行を行う間、
図6に示す処理を所定の時間間隔(例えば1秒間隔)で繰り返し実行する実行する。
【0057】
まず、検出部631は、周辺カメラ2が出力する周辺画像から、車両1の周辺を走行する後方車両を検出する(ステップS1)。
【0058】
次に、走行制御部632は、検出部631により検出された車線区画線に従って車両1の走行を制御する(ステップS2)。
【0059】
次に、設定部634は、車両1の走行状況が、メモリ62に記憶された間隔縮小条件を満足するか否かを判定する(ステップS3)。
【0060】
車両1の走行状況が間隔縮小条件を満足しないと判定された場合(ステップS3:N)、設定部634は、間隔閾値を第1の値に設定し(ステップS4)、後述するステップS6に進む。
【0061】
車両1の走行状況が間隔縮小条件を満足すると判定された場合(ステップS3:Y)、設定部634は、間隔閾値を第2の値に設定し(ステップS5)、後述するステップS6に進む。
【0062】
ステップS4またはステップS5に続いて、動作制御部633は、車両1と後方車両との間隔がメモリ62に記憶された間隔閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS6)。
【0063】
車両1と後方車両との間隔が間隔閾値よりも大きいと判定された場合(ステップS6:Y)、動作制御部633は、第1の動作を車両1に実行させ(ステップS7)、走行制御処理を終了する。
【0064】
車両1と後方車両との間隔が間隔閾値よりも小さいと判定された場合(ステップS6:N)、動作制御部633は、第2の動作を車両1に実行させ(ステップS8)、走行制御処理を終了する。
【0065】
このように走行制御処理を実行することにより、走行制御装置6は、車両1の周辺状況に応じて適切に車両1に動作を実行させることができることができる。
【0066】
変形例によれば、車両1は、周辺センサとして、車両1の周辺の距離画像を生成するLiDAR(Light Detection And Ranging)センサを有してもよい。動作制御部633は、LiDARセンサが周辺データとして出力する距離画像において後方車両に対応する領域に表された距離を、車両1と後方車両との間隔として用いることができる。
【0067】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、種々の変更、置換および修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0068】
1 車両
6 走行制御装置
631 検出部
632 走行制御部
633 動作制御部
634 設定部