(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240820BHJP
G07C 5/02 20060101ALI20240820BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20240820BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20240820BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20240820BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G07C5/02
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/20
(21)【出願番号】P 2021063874
(22)【出願日】2021-04-05
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 忠昭
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/072305(WO,A1)
【文献】特開2004-280160(JP,A)
【文献】特開2011-131728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G07C 5/02
G16Y 10/40
G16Y 20/20
G16Y 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転履歴を記録可能な車両であって且つ一定時間分の運転履歴が記録される度に運転履歴の記録を上書きする車両と通信する、情報処理装置であって、
前記車両のイグニッションスイッチがオンにされたときに、
前記イグニッションスイッチがオンにされた時点で前記車両に記録されている運転履歴の記録期間に関する期間情報を、前記車両から受信することと、
受信した前記期間情報を、前記情報処理装置の記憶装置に格納することと、
を実行し、
特定の日時における前記車両の運転履歴を取得する要求が発生したときに、
前記記憶装置に記憶されている期間情報に基づいて、前記特定の日時の運転履歴の記録が車両に保持されているかを判定することと、
前記特定の日時の運転履歴の記録が前記車両に保持されていると判定された場合には前記車両に対して運転履歴の記録を要求する指令を送信し、前記特定の日時の運転履歴の記録が前記車両に保持されていないと判定された場合には前記車両に対して運転履歴の記録を要求する指令を送信しないことと、
を実行する、制御部を備える、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両を管理する情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される機器の故障が検出された場合に、故障検出日時と故障内容を示す情報とを関連付けたデータを、車両の記憶装置に記憶させるシステムにおいて、イグニッションスイッチがオンにされた時刻とイグニッションスイッチがオフにされた時刻と、を車両の記憶装置に記憶させる技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、故障検出日時と故障内容を示す情報とを含むダイアグノーシス情報を車両の記憶装置に記憶させるシステムにおいて、同じ故障が検出された日時のうちで最古の検出日時とダイアグノーシス情報とを、サーバ装置へ送信する技術が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5195472号公報
【文献】特許第4511587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、車両を管理する際の効率を高めることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、運転履歴を記録可能な車両であって且つ一定時間分の運転履歴が記録される度に運転履歴の記録を上書きする車両と通信する、情報処理装置として捉えることができる。その場合の情報処理装置は、例えば、
前記車両のイグニッションスイッチがオンにされたときに、
前記イグニッションスイッチがオンにされた時点で前記車両に記録されている運転履歴の記録期間に関する期間情報を、前記車両から受信することと、
受信した前記期間情報を、前記情報処理装置の記憶装置に格納することと、
を実行し、
特定の日時における前記車両の運転履歴を取得する要求が発生したときに、
前記記憶装置に記憶されている期間情報に基づいて、前記特定の日時の運転履歴の記録が車両に保持されているかを判定することと、
前記特定の日時の運転履歴の記録が前記車両に保持されていると判定された場合には前記車両に対して運転履歴の記録を要求する指令を送信し、前記特定の日時の運転履歴の記録が前記車両に保持されていないと判定された場合には前記車両に対して運転履歴の記録を要求する指令を送信しないことと、
を実行する、制御部を備えるようにしてもよい。
【0007】
なお、本開示は、上記した処理をコンピュータが実行する情報処理方法として捉えてもよく、該情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして捉えてもよく、又は該プログラムを格納する非一時的記憶媒体として捉えてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、車両を管理する際の効率を高めることができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】車両管理システムに含まれる車載システム及びサーバ装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】サーバ装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図4】車載システムからの期間情報を受信したことをトリガにして、サーバ装置で行われる処理ルーチンを示すフローチャートである。
【
図5】取得要求が発生したことをトリガにして、サーバ装置で行われる処理ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
近年、イグニッションスイッチがオン状態にあるときの車両の状態を示す情報(例えば、車載機器のダイアグノーシス(自己診断結果)、車載センサの検出値、及び車載機器の制御値等)の履歴(運転履歴)を、時系列に記録する車両が知られている。斯様な車両で不具合等が発生した場合、メーカー等の管理下にあるサーバ装置が無線通信を通じて当該車両から運転履歴の記録を取得することで、不具合等の発生当時における車両の状態をメーカー側で再現させることが可能となる。
【0011】
ところで、車両に搭載される記憶装置の記憶容量が比較的小さいため、長時間の運転履歴を記録することは難しい。そのため、予め定められた一定時間分(例えば、80時間分)の運転履歴が車両の記憶装置に記録される度に、運転履歴の記録が上書き方式で更新される。よって、不具合等の発生当時における運転履歴の記録が車両の記憶装置に保持されているとは限らない。
【0012】
しかしながら、従来では、不具合等の発生当時における運転履歴を取得する必要が生じた場合に、サーバ装置が、車両から運転履歴の記録を取得し、取得された記録の中に不具合等の発生当時における運転履歴が含まれているかを判定していた。すなわち、従来では、不具合等の発生当時における運転履歴の記録が車両に保持されているか否かにかかわらず、サーバ装置が、車両から運転履歴の記録を取得し、取得した記録の中に不具合等の発生当時における運転履歴が含まれているかを判定していた。これにより、車両とサーバ装置との間で送受信されるデータ量が不要に大きくなる可能性があるとともに、サーバ装置の負荷が不要に大きくなる可能性があった。よって、車両を管理する際の効率を高めることが望まれていた。
【0013】
そこで、本開示では、車両のイグニッションスイッチがオンにされたとき(イグニッションスイッチがオフからオンへ切り替えられたとき)に、情報処理装置の制御部が、イグニッションスイッチがオンにされた時点で車両に記録されている運転履歴(車両の記憶装置に記録が保持されている運転履歴)の記録期間に関する期間情報を、車両から受信する。制御部は、車両から受信した期間情報を、情報処理装置の記憶装置に記憶させる。ここでいう期間情報は、例えば、イグニッションスイッチがオンにされた時点で車両に保持されている運転履歴の記録が開始された日時(以下、「記録開始日時」と記す場合もある。)を示す情報である。なお、期間情報は、イグニッションスイッチがオンにされた時点で車両に保持されているの運転履歴の記録時間長(以下、「記録済み記録時間長」と記す場合もある。)を示す情報でもよい。また、期間情報は、イグニッションスイッチがオンにされた時点で車両に保持されている運転履歴の記録時間長を上記の一定時間から差し引いた時間長(以下、「残り記録時間長」と記す場合もある。)を示す情報でもよい。
【0014】
また、本開示では、特定の日時における車両の運転履歴を取得する要求が発生したときに、情報処理装置の制御部が、情報処理装置の記憶装置に記憶されている期間情報に基づいて、特定の日時における運転履歴の記録が車両に保持されているかを判定する。特定の日時における運転履歴の記録が車両に保持されていると判定された場合は、制御部は、車両に対して運転履歴の記録を要求する指令を送信する。一方、特定の日時における運転履歴の記録が車両に保持されていないと判定された場合は、制御部は、車両に対して運転履歴の記録を要求する指令を送信しない。
【0015】
上記した情報処理装置は、例えば、前述のサーバ装置に適用される。これにより、特定の日時における運転履歴の記録が車両に保持されていないと判定された場合には、比較的データ量の大きな運転履歴の記録が車両からサーバ装置へ送信されなくなるとともに、サーバ装置の負荷が不要に大きくなることを抑制することができる。その結果、車両を管理する際の効率を高めることができる。
【0016】
<実施形態>
以下、本開示の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0017】
(システムの概要)
本開示を適用する車両管理システムについて、
図1に基づいて説明する。
図1は、車両管理システムの概要を示す図である。本実施形態における車両管理システムは、車両1に搭載される車載システム10と、サーバ装置2と、を含んで構成される。車載システム10とサーバ装置2とは、ネットワークを通じて相互に接続される。
図1に示す例では、サーバ装置2の管理下にある車両1が1台のみ図示されているが、複数台でもよい。
【0018】
車載システム10は、後述のイグニッションスイッチ(IGスイッチ)104がオン状態にあるときに、一定時間分(例えば、80時間分)の運転履歴を記録する。運転履歴の記録時間長が一定時間に達した場合、車載システム10は、それまで記録していた運転履歴に上書きする形で、新たな運転履歴を記録する。すなわち、車載システム10では、一定時間分の運転履歴が記録される度に、それまで記録されていた運転履歴が消去されて、新たな運転履歴の記録が開始される。なお、車載システム10に記録される運転履歴には、例えば、車両1に搭載される機器(車載機器)のダイアグノーシス、及び車両1の状態を示す種々の情報等が含まれる。
【0019】
本例における車載システム10は、IGスイッチ104がオンにされたとき(IGスイッチ104がオフからオンへ切り替えられたとき)に、期間情報をサーバ装置2へ送信する機能も有する。本例における期間情報は、IGスイッチ104がオンにされた時点で当該車載システム10に保持されている運転履歴の記録が開始された日時(記録開始日時)を示す情報である。なお、期間情報は、IGスイッチ104がオンされた時点で車載システム10に保持されている運転履歴の記録時間長(記録済み記録時間長)でもよい。例えば、IGスイッチ104がオンにされた時点で70時間分の運転履歴が車載システム10に記録済みであれば、期間情報は70時間を示す情報となる。また、期間情報は、IGスイッチ104がオンにされた時点で車載システム10に保持されている運転履歴の記録時間長を一定時間から差し引いた時間長(残り記録時間長)でもよい。例えば、上記した一定時間が80時間であり、且つIGスイッチ104がオンされた時点で70時間分の運転履歴が車載システム10に記録済みであれば、期間情報は10時間を示す情報となる。
【0020】
本例における車載システム10は、サーバ装置2からの履歴要求を受信したときに、履歴情報をサーバ装置2へ送信する機能も有する。履歴要求は、運転履歴の記録をサーバ装置2へ送信することを要求する指令である。履歴情報は、履歴要求を受信した時点で車載
システム10に保持されている運転履歴の記録を含む情報である。
【0021】
次に、サーバ装置2は、車両1の状態を管理するための情報処理装置であり、車両1のメーカー又は当該メーカーの委託を受けた会社等に設置される。サーバ装置2は、車載システム10と通信することで、車両1の品質管理に関わる各種の処理を行う。
【0022】
本例のサーバ装置2は、車両1のIGスイッチ104がオンにされたタイミングで車載システム10から送信されてくる期間情報を受信し、受信した期間情報を記憶する機能を有する。また、本例のサーバ装置2は、特定の日時における運転履歴を取得する要求(以下、「取得要求」と記す場合もある。)が発生したときに、特定の日時における運転履歴の記録が車載システム10に保持されているかを判定する機能も有する。特定の日時における運転履歴の記録が保持されていると判定された場合には、サーバ装置2は、履歴要求を車載システム10へ送信する。一方、特定の日時における運転履歴の記録が保持されていないと判定された場合には、サーバ装置2は、履歴要求を車載システム10へ送信しない。なお、「取得要求が発生したとき」とは、当該取得要求がオペレータによってサーバ装置2へ入力されたとき、又は当該取得要求を他のサーバ装置(例えば、車両1の品質管理を行う会社等に設置されるサーバ装置等)から受信したとき等である。
【0023】
(ハードウェア構成)
図2は、車両管理システムに含まれる車載システム10とサーバ装置2との各々のハードウェア構成例を示す図である。
【0024】
車載システム10は、
図2に示すように、ECU(Electronic Control Unit)101
、履歴管理ECU102、通信端末103、及びIGスイッチ104等を含む。ECU101、履歴管理ECU102、及び通信端末103は、CAN(Controller Area Network)規格の車内ネットワーク(CAN-BUS)等を介して相互に接続されている。車載
システム10のハードウェア構成は、
図2に示す例に限られず、適宜構成要素の省略、置換、又は追加が行われてもよい。
【0025】
ECU101は、車両1の車載機器を制御するためのECUであり、車載機器の系統別に複数のECUを含んで構成される。例えば、ECU101は、車両1の駆動用モータを制御するモータECU、及び車両1の制動装置(ブレーキ)を制御するブレーキECU等を含む。ECU101は、駆動用モータ、駆動モータの補機、駆動モータに付随するセンサ、制動装置、制動装置の補機、及び制動装置に付随するセンサ等の多様な車載機器を制御したり、それら車載機器の故障の有無に関する自己診断を行ったりする。
【0026】
履歴管理ECU102は、IGスイッチ104がオン状態にある期間中に、ECU101を通じて運転履歴を取得し、取得された運転履歴を時系列で記録する。履歴管理ECU102がECU101を通じて取得する運転履歴には、ECU101が行った自己診断の結果(ダイアグノーシス)、ECU101が各種センサから取得した情報(例えば、車速、操舵角、アクセル操作量、ブレーキ操作量、前後加速度、左右加速度、上下加速度、駆動用モータの温度、及び駆動用モータの回転速度等)、及びECU101による各車載機器の制御値(例えば、駆動用モータの駆動電圧、及び制動装置の電動油圧ポンプの駆動電圧等)等が含まれる。履歴管理ECU102によって記録される運転履歴は、前述したように、一定時間分の運転履歴が記録される度に上書き方式で更新される。そのため、運転履歴の記録開始日時からの積算運転時間(IGスイッチ104がオン状態にある時間の積算値)が一定時間に達すると、その時点までに履歴管理ECU102で保持されていた運転履歴の記録が消去されて、その後の運転履歴の記録が開始される。
【0027】
履歴管理ECU102は、IGスイッチ104がオンにされる都度、期間情報をサーバ
装置2へ送信する。期間情報は、前述したように、IGスイッチ104がオンにされた時点で当該履歴管理ECU102に保持されている運転履歴の記録が開始された日時(記録開始日時)を示す情報であり、積算運転時間(運転履歴の記録時間長)が一定時間に達する度に更新される。なお、期間情報のサーバ装置2への送信は、後述の通信端末103を通じて行われる。
【0028】
また、通信端末103がサーバ装置2からの履歴要求を受信したときに、履歴管理ECU102は、履歴情報をサーバ装置2へ送信する。履歴情報は、履歴要求を受信した時点で履歴管理ECU102に記録されている運転履歴を含む情報である。履歴情報の送信は、期間情報の送信と同様に、通信端末103を通じて行われる。
【0029】
通信端末103は、車載システム10を車外ネットワークに接続するためのインタフェースである。例えば、通信端末103は、無線通信網を利用して車外ネットワークに接続し、車外ネットワークを通じてサーバ装置2と通信する。無線通信網は、例えば、5G(5th-Generation)若しくはLTE(Long Term Evolution)等の移動体通信網、又はWi
-Fi等である。車外ネットワークは、例えば、インターネット等の世界規模の公衆通信網であるWAN(Wide Area Network)、又はその他の通信網である。
【0030】
本例の通信端末103は、履歴管理ECU102から車内ネットワークを通じて受信した期間情報を、車外ネットワークを通じてサーバ装置2へ送信する。また、通信端末103は、車外ネットワークを通じてサーバ装置2から受信した履歴要求を、車内ネットワークを通じて履歴管理ECU102へ送信する。さらに、通信端末103は、履歴管理ECU102から車内ネットワークを通じて受信した履歴情報を、車外ネットワークを通じてサーバ装置2へ送信する。
【0031】
IGスイッチ104は、車両1の原動機を起動又は停止させる際に、車両1の乗員によって操作されるスイッチである。すなわち、IGスイッチ104は、車両1の原動機を起動させる際にオンにされ、車両1の原動機を停止させる際にオフにされるスイッチである。IGスイッチ104がオン又はオフに操作されると、オン信号/オフ信号がECU101及び履歴管理ECU102へ入力される。
【0032】
次に、サーバ装置2は、
図2に示すように、一般的なコンピュータの構成を有する。すなわち、サーバ装置2は、プロセッサ201、主記憶部202、補助記憶部203、及び通信部204等を含んで構成される。プロセッサ201と主記憶部202と補助記憶部203と通信部204とは、互いにバスによって接続される。サーバ装置2は、プロセッサ201が補助記憶部203に格納されているプログラムを主記憶部202の作業領域にロードして実行することにより、所定の目的に合致した機能を実現する。なお、サーバ装置2で実行される一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。また、サーバ装置2のハードウェア構成は、
図2に示す例に限られず、適宜構成要素の省略、置換、又は追加が行われてもよい。
【0033】
プロセッサ201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)である。プロセッサ201は、様々な情報処理の演算を行うこと
で、サーバ装置2を制御する。
【0034】
主記憶部202は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。主記憶部202は、例えば、補助記憶部203に格納されているプログラムをロードするための記憶領域として用いられたり、又はプロセッサ201の演算結果等を一時的に記憶するためのバッファとして用いられたりする記憶装置である。主記憶部202は、例えば、RAM(Random
Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を含む。
【0035】
補助記憶部203は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。補助記憶部203は、プロセッサに実行させるための各種のプログラム、及び各種のプログラムをプロセッサが実行する際に使用される各種のデータ等を格納する。補助記憶部203は、例えば、EPROM(Erasable Programmable ROM)、又はHDD(Hard Disk Drive)等を含む。補助記憶部203は、リムーバブルメディア、即ち可搬記録媒体を含むことができる。リムーバブルメディアは、例えば、CD(Compact Disc)若しくはDVD(Digital Versatile Disc)等のようなディスク記録媒体でもよく、又はUSB(Universal Serial Bus)メモリでもよい。なお、補助記憶部203に格納されるプログラムには、OS(Operating System)に加え、車両1の運転履歴の取得に関連する機能を実現するためのプログラムが含まれる。なお、補助記憶部203に格納されている情報の一部又は全部は、主記憶部202に格納されてもよい。
【0036】
通信部204は、サーバ装置2をネットワークに接続するための通信インタフェースである。例えば、通信部204は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、又はWi-Fi(登録商標)等の通信網を利用してネットワークに接続し、ネ
ットワーク経由で車載システム10と通信する。ここでいうネットワークには、前述の車外ネットワークが含まれる。
【0037】
(サーバ装置の機能構成)
次に、サーバ装置2の機能構成について、
図3に基づいて説明する。本例のサーバ装置2は、
図3に示すように、その機能構成要素として、受信部F210、判定部F220、要求部F230、及び格納部D210を有する。受信部F210と判定部F220と要求部F230とは、プロセッサ201が、補助記憶部203に格納されているプログラムを主記憶部202にロードして実行することにより実現される。なお、受信部F210と判定部F220と要求部F230とのうちの一部又は全部の機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路により実現されてもよい。
【0038】
格納部D210は、補助記憶部203に設定される記憶領域であり、車載システム10から受信した期間情報を格納する。なお、サーバ装置2の管理下にある車両1が複数台である場合は、格納部D210は、車両別に期間情報を格納する。また、格納部D210は、期間情報を受信する度に、受信した期間情報を追加する方式で期間情報を格納してもよく、又は期間情報を受信する度に上書きする方式で期間情報を格納してもよい。本例では、格納部D210は、車載システム10から期間情報を受信する度に上書きする方式で期間情報を格納する。
【0039】
受信部F210は、車載システム10から送信される期間情報を、通信部204を通じて受信する。受信部F210は、受信した期間情報を、格納部D210に格納する。その際、受信部F210は、前述したように、格納部D210に格納されていた期間情報を、今回受信した最新の期間情報で上書きする。
【0040】
判定部F220は、特定の日時における運転履歴を取得する要求(取得要求)が発生したことをトリガにして、特定の日時における運転履歴の記録が車載システム10に保持されているかを判定する。斯様な判定は、期間情報が示す記録開始日時と特定の日時とを比較する方法で行われてもよい。すなわち、特定の日時が記録開始日時以降の日時であれば、特定の日時における運転履歴の記録が車載システム10に保持されていると判定される一方で、特定の日時が記録開始日時より前の日時であれば、特定の日時における運転履歴の記録が車載システム10に保持されていないと判定されてもよい。ただし、IGスイッチ104がオンにされてから取得要求が発生するまでの期間に、記録開始日時からの積算
運転時間が一定時間に達してしまう場合も想定し得る。そのような場合、特定の日時が記録開始日時以降であっても、特定の日時における運転履歴の記録が車載システム10に保持されていないことになる。そこで、本例の判定部F220は、記録開始日時よりも所定の時間長(例えば、10時間程度)だけ後の日時(以下、「判定基準日時」と記す場合もある。)と特定の日時とを比較することで、上記の判定を行うものとする。すなわち、本例では、特定の日時が判定基準日時以降の日時であれば、特定の日時における運転履歴の記録が車載システム10に保持されていると判定される一方で、特定の日時が判定基準日時より前の日時であれば、特定の日時における運転履歴の記録が車載システム10に保持されていないと判定される。斯様な判定結果は、判定部F220から要求部F230へ渡される。
【0041】
なお、特定の日時における運転履歴の記録が車載システム10に保持されているかを判定する別の方法として、IGスイッチ104がオンにされてから取得要求が発生するまでの経過時間長が残り記録時間長よりも長ければ、特定の日時が記録開始日時以降の日時であるか否かに関わらず、特定の日時における運転履歴の記録が車載システム10に保持されていないと判定される方法を用いることもできる。ただし、上記経過時間長が残り記録時間長より短い場合は、特定の日時と記録開始日時とを比較することで、上記の判定が行われればよい。斯様な方法を採用する場合は、記録開始日時を示す情報に加え、残り記録時間長を示す情報が期間情報に含められるようにすればよい。
【0042】
要求部F230は、判定部F220による判定結果に応じた処理を行う。すなわち、特定の日時における運転履歴の記録が車載システム10に保持されていると判定部F220が判定した場合、要求部F230は、通信部204を通じて、履歴要求を車載システム10へ送信する。一方、特定の日時における運転履歴の記録が車載システム10に保持されていないと判定部F220が判定した場合、要求部F230は、履歴要求を車載システム10へ送信しない。
【0043】
要求部F230によって履歴要求が車載システム10へ送信された場合、それに応答する形で、車載システム10からサーバ装置2へ履歴情報が送信されることになる。その場合、サーバ装置2は、該サーバ装置2のオペレータに履歴情報を提示してもよく、又は別のサーバ装置へ転送してもよい。
【0044】
(処理の流れ)
本実施形態におけるサーバ装置2で実行される処理の流れについて、
図4及び
図5に基づいて説明する。
図4は、車載システム10からの期間情報を受信したことをトリガにして、サーバ装置2で行われる処理ルーチンを示すフローチャートである。
図5は、取得要求が発生したことをトリガにして、サーバ装置2で行われる処理ルーチンを示すフローチャートである。なお、
図4及び
図5に示す処理の実行主体はサーバ装置2のプロセッサ201であるが、ここではサーバ装置2の機能構成要素を主体として説明する。
【0045】
図4に示すように、車載システム10からの期間情報がサーバ装置2の通信部204で受信されると(ステップS101)、期間情報が通信部204から受信部F210へ渡される。その場合、受信部F210は、ステップS102の処理を実行する。
【0046】
ステップS102では、受信部F210が、通信部204を通じて受信した期間情報を、格納部D210に格納する。これにより、期間情報がサーバ装置2の補助記憶部203に記憶される。ステップS102の処理が実行された後は、本処理ルーチンの実行が終了される。
【0047】
次に、取得要求が発生した場合には、
図5に示すように、サーバ装置2の判定部F22
0が、取得要求を受け付ける(ステップS201)。具体的には、オペレータがサーバ装置2へ入力した取得要求を、判定部F220が受け付ける。または、別のサーバ装置から送信される取得要求を、判定部F220が通信部204を通じて受け付ける。取得要求は、前述したように、特定の日時における運転履歴を取得する要求である。判定部F220は、ステップS201の処理を実行し終えると、ステップS202の処理を実行する。
【0048】
ステップS202では、判定部F220が、格納部D210に格納されている期間情報を読み出す。本例における期間情報は、前述したように、記録開始日時を示す情報である。判定部F220は、ステップS202の処理を実行し終えると、ステップS203の処理を実行する。
【0049】
ステップS203では、判定部F220が、ステップS202で読み出された期間情報に基づいて、判定基準日時を演算する。具体的には、判定部F220は、ステップS202で読み出された期間情報が示す記録開始日時に、所定の時間長を加算することで、記録開始日時よりも所定の時間長だけ後の日時である判定基準日時を演算する。判定部F220は、ステップS203の処理を実行し終えると、ステップS204の処理を実行する。
【0050】
ステップS204では、判定部F220は、取得要求で指定されている特定の日時がステップS203で演算された判定基準日時以降の日時であるかを判定する。判定部F220は、ステップS204の処理を実行し終えると、ステップS205の処理を実行する。
【0051】
ステップS205では、判定部F220は、ステップS204の判定結果に基づいて、特定の日時における運転履歴の記録が車載システム10に保持されているかを判定する。その際、ステップS204において特定の日時が判定基準日時以降の日時であると判定されていれば、判定部F220は、特定の日時における運転履歴の記録が車載システム10に保持されていると判定する(ステップS205で肯定判定)。一方、ステップS204において特定の日時が判定基準日時より前の日時であると判定されていれば、判定部F220は、特定の日時における運転履歴の記録が車載システム10に保持されていないと判定する(ステップS205で否定判定)。判定部F220による判定結果は、判定部F220から要求部F230へ渡される。
【0052】
判定部F220による判定結果が肯定判定(特定の日時における運転履歴の記録が車載システム10に保持されているとの判定)である場合、要求部F230が、ステップS206の処理を実行する。ステップS206では、要求部F230が、通信部204を通じて、履歴要求を車載システム10へ送信する。ステップS206の処理が実行された後は、本処理ルーチンの実行が終了される。一方、判定部F220による判定結果が否定判定(特定の日時における運転履歴の記録が車載システム10に保持されていないとの判定)である場合、要求部F230による履歴要求の車載システム10への送信が行われずに、本処理ルーチンの実行が終了される。
【0053】
図4及び
図5の処理ルーチンによれば、特定の日時における運転履歴の記録が車載システム10に保持されていないと判定された場合には、比較的データ量の大きな履歴情報が車載システム10からサーバ装置2へ送信されなくなる。これにより、車載システム10とサーバ装置2との間で送受信されるデータ量が不要に大きくなることを抑制することができるとともに、サーバ装置2の負荷が不要に大きくなることを抑制することができる。その結果、車両1の品質等を管理する際の効率を高めることができる。
【0054】
<その他>
上記した実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。また、上記した実施形態で説明した処理及び構成は、技術的な
矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。さらに、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。また、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成で実現するかは柔軟に変更可能である。
【0055】
また、本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよく、又はネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、データ及びプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、又は化学的な作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体である。斯様な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、又はハードディスクドライブ(HDD)等)、又は光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、又はブルーレイディスク等)等の任意のタイプのディスクである。また、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、又はSSD(Solid State Drive)等の媒体でもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
10 車載システム
101 ECU
102 履歴管理ECU
103 通信端末
104 IGスイッチ
2 サーバ装置
201 プロセッサ
202 主記憶部
203 補助記憶部
204 通信部
D210 格納部
F210 受信部
F220 判定部
F230 要求部