(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240820BHJP
B60W 30/16 20200101ALI20240820BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20240820BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20240820BHJP
B60K 31/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/16
B60W30/09
B60T7/12 C
B60K31/00 Z
(21)【出願番号】P 2021067703
(22)【出願日】2021-04-13
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】衣川 尚臣
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】楠本 直紀
(72)【発明者】
【氏名】手塚 雄貴
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-104015(JP,A)
【文献】特開2009-003795(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0249546(US,A1)
【文献】特開2002-316552(JP,A)
【文献】特開2007-001383(JP,A)
【文献】特開2020-135677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 30/16
B60W 30/09
B60T 7/12
B60K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両(100)の車両進行方向前側を監視する監視センサ(50)と、前記自車両を制動させるブレーキ装置(20)と、を備える車両に適用される車両用制御装置であって、
前記自車両の前記車両進行方向前側に位置する先行車(101)に対して前記車両進行方向前側に、先先行車(102)が存在するか否かを判定する車両判定部(S130、S140)と、
前記先行車に対して前記車両進行方向前側に、前記先先行車が存在すると前記車両判定部が判定した場合に、前記監視センサが前記先行車を監視した監視結果に基づいた、前記先行車に前記自車両を追従走行させるために必要な減速度である第1要求減速度と、前記監視センサが前記先先行車を監視した監視結果に基づいた、前記先先行車に前記自車両
を追従走行させるために必要な減速度である第2要求減速度と、を比較し、前記第2要求減速度の方が前記第1要求減速度よりも大きいとき、前記第2要求減速度に前記自車両の減速度を近づけるように前記ブレーキ装置を制御する追従制御部(S150)と、
前記先行車の前記車両進行方向前側に物体を検出したか否を判定する物体判定部(S100)と、
前記ブレーキ装置を制御するプレフィル制御部(S110)と、を備え、
前記車両判定部は、前記先行車に対して前記車両進行方向前側に前記先先行車が存在するか否かを判定することにより、前記物体が前記先先行車であるか否かを判定し、
前記ブレーキ装置は、ブレーキ液を圧縮して吐出するポンプ(21c)と、前記ポンプから吐出される前記ブレーキ液の圧力によって前記自車両の複数の車輪(38a、38b、38c、38d)を制動する複数のブレーキ(70、71、72、73)と、を備え、
前記プレフィル制御部は、前記物体を検出したと前記物体判定部が判定してから前記物体が前記先先行車であると前記車両判定部が判定する迄、前記ポンプによって前記ブレーキ液を圧縮させて前記複数のブレーキ側に吐出させるように前記ポンプを制御し、
前記物体を検出したと前記物体判定部が判定し、かつ前記物体が前記先先行車であると前記車両判定部が判定したとき、前記追従制御部は、前記ポンプから前記複数のブレーキ側に吐出させる前記ブレーキ液の圧力を更に上昇させるように前記ポンプを制御することにより、前記第2要求減速度に前記自車両の減速度を近づけるように前記ブレーキ装置を制御する車両用制御装置。
【請求項2】
前記自車両の速度が閾値未満であるか否か判定する速度判定部(S105)と、
前記物体を検出したと前記物体判定部が判定し、かつ前記自車両の速度が前記閾値未満であると前記速度判定部が判定したとき、前記プレフィル制御部を実行させることを禁止する速度判定禁止部(S115)と、
を備える請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記物体に対する前記自車両の相対速度が閾値未満であるか否かを判定する相対速度判定部(S105a)と、
前記物体を検出したと前記物体判定部が判定し、かつ前記相対速度が前記閾値未満であると前記相対速度判定部が判定したとき、前記プレフィル制御部を実行させることを禁止する相対速度判定禁止部(S115)と、
を備える請求項1または2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記自車両が前記物体に衝突するのに要すると推定される衝突推定時間が閾値以上であるか否かを判定する時間判定部(S105b)と、
前記物体を検出したと前記物体判定部が判定し、かつ前記衝突推定時間が閾値以上であると前記時間判定部が判定したとき、前記プレフィル制御部を実行させることを禁止する時間判定禁止部(S115)と、
を備える請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用制御装置。
【請求項5】
自車両(100)の車両進行方向前側を監視する監視センサ(50)と、前記自車両を制動させるブレーキ装置(20)とを備える車両に適用される車両用制御装置であって、
前記自車両の前記車両進行方向前側に位置する先行車(101)に対して前記車両進行方向前側に、先先行車(102)が存在するか否かを判定する車両判定部(S130、S140)と、
前記先行車に対して前記車両進行方向前側に、前記先先行車が存在すると前記車両判定部が判定した場合に、前記監視センサが前記先行車を監視した監視結果に基づいた、前記先行車に前記自車両を追従走行させるために必要な減速度である第1要求減速度と、前記監視センサが前記先先行車を監視した監視結果に基づいた、前記先先行車に前記自車両
を追従走行させるために必要な減速度である第2要求減速度と、を比較し、前記第2要求減速度の方が前記第1要求減速度よりも大きいとき、前記第2要求減速度に前記自車両の減速度を近づけるように前記ブレーキ装置を制御する追従制御部(S150)と、
前記先行車に対して車両進行方向前側に物体を検出したか否を判定する物体判定部(S100)と、
前記自車両の走行用エンジン(40)を制御するエンジン制御部(S110)と、を備え、
前記エンジン制御部は、前記物体を検出したと前記物体判定部が判定してから前記物体が前記先先行車であると前記車両判定部が判定するまで、前記走行用エンジンによりエンジンブレーキを発生させ、
前記物体を検出したと前記物体判定部が判定し、かつ前記物体が前記先先行車であると前記車両判定部が判定したとき、前記追従制御部は、前記第2要求減速度に前記自車両の減速度を近づけるように前記ブレーキ装置を制御する車両用制御装置。
【請求項6】
前記自車両の速度が閾値未満であるか否か判定する速度判定部(S105)と、
前記物体を検出したと前記物体判定部が判定し、かつ前記自車両の速度が前記閾値未満であると前記速度判定部が判定したとき、前記エンジン制御部が前記走行用エンジンによりエンジンブレーキを発生させることを禁止する速度判定禁止部(S115)と、
を備える請求項5に記載の車両用制御装置。
【請求項7】
前記物体に対する前記自車両の相対速度が閾値未満であるか否かを判定する相対速度判定部(S105a)と、
前記物体を検出したと前記物体判定部が判定し、かつ前記相対速度が前記閾値未満であると前記相対速度判定部が判定したとき、前記エンジン制御部が前記走行用エンジンによりエンジンブレーキを発生させることを禁止する相対速度判定禁止部(S115)と、
を備える請求項5または6に記載の車両用制御装置。
【請求項8】
前記自車両が前記物体に衝突するのに要すると推定される衝突推定時間が閾値以上であるか否かを判定する時間判定部(S105b)と、
前記物体を検出したと前記物体判定部が判定し、かつ前記衝突推定時間が前記閾値以上であると前記時間判定部が判定したとき、前記エンジン制御部が前記走行用エンジンによりエンジンブレーキを発生させることを禁止する時間判定禁止部(S115)と、
を備える請求項5ないし7のいずれか1つに記載の車両用制御装置。
【請求項9】
前記自車両に向けて赤信号を表示している信号機(80)が前記自車両の車両進行方向前側に存在するか否かを判定する赤信号判定部(S120)を備え、
前記自車両の前記車両進行方向前側に前記信号機が存在すると前記赤信号判定部が判定した場合には、前記自車両の前記車両進行方向前側に前記信号機が存在しないと前記赤信号判定部が判定した場合に比べて、前記車両判定部の判定基準を緩和する請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用制御装置。
【請求項10】
自車両(100)の周辺を監視する監視センサ(50)、および前記自車両を操舵する操舵装置(30)を備える車両に適用される車両用制御装置であって、
前記自車両の車両進行方向前側を走行する先行車を前記監視センサが監視した結果に基づいて、前記先行車に対して前記自車両を追従走行させる追従走行制御部(S200)と、
前記自車両の前記車両進行方向前側に位置する対象物(102)に対して前記自車両を操舵回避させる回避スペースが存在するか否かを判定する第1スペース判定部(S210)と、
前記対象物に対して前記自車両が前記操舵回避せずに減速により衝突することを回避することが不可能であるか否かを判定する衝突回避判定部(S220)と、
前記自車両を前記操舵回避のために減速させた場合に前記回避スペースが継続して存在するか否かを判定する第2スペース判定部(S230)と、
前記回避スペースが継続して存在すると前記第2スペース判定部が判定したときには、前記自車両を前記先行車に対して追従走行させるために前記自車両を減速させる追従減速制御部(S170)と、
前記操舵装置を自動的に制御して前記自車両を前記対象物に対して操舵回避させる操舵制御部(S260)と、
前記自車両が前記対象物に対して前記操舵回避するために、前記追従走行制御部が前記自車両を前記先行車に対して追従走行するために減速させることを前記追従減速制御部に比べて制限する減速制限部(S250)と、を備え、
前記対象物に対して前記自車両が前記操舵回避せずに減速により衝突することを回避することが不可能であると前記衝突回避判定部が判定し、かつ前記回避スペースが存在すると前記第1スペース判定部が判定し、さらに前記自車両を前記操舵回避のために減速させた場合には前記回避スペースが継続して存在しないと前記第2スペース判定部が判定したとき、前記追従走行制御部が前記自車両を減速させることを前記追従減速制御部に比べて前記減速制限部が制限し、かつ前記操舵制御部が前記操舵装置を自動的に制御して前記自車両を前記対象物に対して操舵回避させる車両用制御装置。
【請求項11】
前記先行車(101)の前記車両進行方向前側に前記対象物が位置する場合に、前記第1スペース判定部は、前記監視センサが前記先行車を監視した監視結果に基づいて、前記先行車が車線変更して前記対象物を操舵回避する前記先行車の走行軌跡の有無によって、前記回避スペースが存在するか否かを判定する請求項
10に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用制御装置において、レーダ波を用いて自車両の前方を走行する先行車を検出するとともに、先行車の下側を通過するレーダ波を用いて先行車の前方を走行する先先行車を検出するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この車両用制御装置は、レーダ波による先行車および先先行車の検出に応じて、先行車、或いは先先行車に対して自車両を追従走行させる追従走行制御を実行する。
【0004】
特許文献2の車両用制御装置では、先行車に対して自車両を追従走行させる追従走行制御と、自車両が先行車等に衝突することを避けるための衝突回避減速制御とが提案されている。
【0005】
追従走行制御は、自車両に対して減速制御、或いは加速制御を実行することにより、先行車に対して自車両を追従するように走行させる。
【0006】
衝突回避減速制御は、自車両が先行車に衝突するのに要すると予測される衝突予測時間を算出し、衝突予測時間が閾値未満であるか否かを判定することにより、自車両に制動力を付与する減速制御の実行条件が成立したか否かを判定する。
【0007】
例えば、車両用制御装置は、追従走行制御による減速制御を実行している場合において、減速制御の実行条件が成立したと判定すると、追従走行制御をキャンセルして、衝突回避減速制御による減速制御を実行する。
【0008】
特許文献2の車両用制御装置では、追従走行制御による減速制御を実行中に、減速制御の実行条件が成立して、追従走行制御をキャンセルした場合に、衝突回避減速制御による減速制御に代えて、自車両を先先行車に対して操舵回避することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-061274号公報
【文献】特開2018-165085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、上記特許文献1を参考にして、追従走行制御によって自車両を先行車に対して追従走行させるときに、先行車によって遮蔽されて自車両から画像センサや目視で認知できない先先行車が先行車の前方に静止している状況について検討した。
【0011】
この状況において、上記特許文献1の車両用制御装置では、先行車の下側を通過するレーダ波を用いている。このため、先先行車が静止していると、先先行車が、実際には、衝突回避すべき対象である車両であるのか、或いは衝突回避すべき対象ではない路上構造物であるのかを判定することができない。
【0012】
したがって、先行車が先先行車に対して操舵回避を開始する際に、先先行車を画像センサで検出した際に、早期に自車両を減速させる制御が必要となる。このため、先先行車に対する追従走行制御の要求減速度の方が、先行車に対する追従走行制御の要求減速度よりも大きいと判定されたとき、先先行車に対応して自車両への減速制御を開始する制御が必要となる。
【0013】
このとき、先行車が先先行車に対する操舵回避を開始するタイミングが遅いとき、或いは自車両および先先行車の間の相対速度が大きいシーンでは、追従走行制御では、減速度が不足する。
【0014】
一般的に、追従走行制御の要求減速度の最大値に比べて、衝突回避減速制御の要求減速度の最大値の方が大きい。衝突回避減速制御では、先先行車に対する自車両の衝突推定時間が所定値以下のとき、零よりも大きい要求減速度が求められる。このため、先先行車に対して自車両が接近すると、追従走行制御の要求減速度に比べて、衝突回避減速制御の要求減速度の方が大きくなる。
【0015】
したがって、上記シーンでは、追従走行制御から衝突回避減速制御に移行することが必要になる。このため、追従走行制御の要求減速度よりも衝突回避減速制御の要求減速度の方が大きくなったときに、衝突回避減速制御を開始する制御が必要となる。
【0016】
しかし、上述の特許文献2の車両用制御装置には、追従走行制御の要求減速度よりも衝突回避減速制御の要求減速度の方が大きくなったときに、衝突回避減速制御を開始する制御について記載されていない。
【0017】
なお、減速度とは、速度が減速する場合において単位時間あたりの速度の変化率を示す値であり、正値で表される。減速度は、自車両に作用する制動力が大きくなるほど、大きくなる。要求減速度は、衝突回避減速制御、或いは追従走行制御に必要となる自車両の減速度の目標値である。
【0018】
さらに、特許文献2の車両用制御装置では、自車両の前側の先行車(すなわち、対象物)を自車両が操舵回避する場合に、操舵回避に先だって追従走行制御が大きい減速度を自車両に発生させると、自車両の速度が低下し過ぎる場合がある。この場合、自車両に後続車両が衝突するリスクが大きくなる。
【0019】
本発明は上記点に鑑みて、先先行車に対する追従走行制御の要求減速度の方が、先行車に対する追従走行制御の要求減速度よりも大きいと判定したとき、先先行車に対応して自車両への減速制御を開始する車両用制御装置を提供することを第1目的とする。
【0021】
本発明は、自車両が対象物を安全に操舵回避するようにした車両用制御装置を提供することを第2目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車両用制御装置において、自車両(100)の車両進行方向前側を監視する監視センサ(50)と、自車両を制動させるブレーキ装置(20)とを備える車両に適用される車両用制御装置であって、
自車両の車両進行方向前側に位置する先行車(101)に対して車両進行方向前側に、先先行車(102)が存在するか否かを判定する車両判定部(S130、S140)と、
先行車に対して車両進行方向前側に、先先行車が存在すると車両判定部が判定した場合に、監視センサが先行車を監視した監視結果に基づいた、先行車に自車両を追従走行させるために必要な減速度である第1要求減速度と、監視センサが先先行車を監視した監視結果に基づいた、先先行車に自車両を追従走行させるために必要な減速度である第2要求減速度と、を比較し、第2要求減速度の方が第1要求減速度よりも大きいとき、第2要求減速度に自車両の減速度を近づけるようにブレーキ装置を制御する追従制御部(S150)と、
先行車の車両進行方向前側に物体を検出したか否を判定する物体判定部(S100)と、
ブレーキ装置を制御するプレフィル制御部(S110)と、を備え、
車両判定部は、先行車に対して車両進行方向前側に先先行車が存在するか否かを判定することにより、物体が先先行車であるか否かを判定し、
ブレーキ装置は、ブレーキ液を圧縮して吐出するポンプ(21c)と、ポンプから吐出されるブレーキ液の圧力によって自車両の複数の車輪(38a、38b、38c、38d)を制動する複数のブレーキ(70、71、72、73)と、を備え、
プレフィル制御部は、物体を検出したと物体判定部が判定してから物体が先先行車であると車両判定部が判定する迄、ポンプによってブレーキ液を圧縮させて複数のブレーキ側に吐出させるようにポンプを制御し、
物体を検出したと物体判定部が判定し、かつ物体が先先行車であると車両判定部が判定したとき、追従制御部は、ポンプから複数のブレーキ側に吐出させるブレーキ液の圧力を更に上昇させるようにポンプを制御することにより、第2要求減速度に自車両の減速度を近づけるようにブレーキ装置を制御する。
【0023】
したがって、先先行車に対する追従走行制御の要求減速度の方が、先行車に対する追従走行制御の要求減速度よりも大きいと判定したとき、先先行車に対応して自車両への減速制御を開始することができる。
【0026】
請求項10に記載の発明では、車両用制御装置において、自車両(100)の周辺を監視する監視センサ(50)、および自車両を操舵する操舵装置(30)を備える車両に適用される車両用制御装置であって、
自車両の車両進行方向前側を走行する先行車を監視センサが監視した結果に基づいて、先行車に対して自車両を追従走行させる追従走行制御部(S200)と、
自車両の車両進行方向前側に位置する対象物(102)に対して自車両を操舵回避させる回避スペースが存在するか否かを判定する第1スペース判定部(S210)と、
対象物に対して自車両が操舵回避せずに減速により衝突することを回避することが不可能であるか否かを判定する衝突回避判定部(S220)と、
自車両を操舵回避のために減速させた場合に回避スペースが継続して存在するか否かを判定する第2スペース判定部(S230)と、
回避スペースが継続して存在すると第2スペース判定部が判定したときには、自車両を先行車に対して追従走行させるために自車両を減速させる追従減速制御部(S170)と、
操舵装置を自動的に制御して自車両を対象物に対して操舵回避させる操舵制御部(S260)と、
自車両が対象物に対して操舵回避するために、追従走行制御部が自車両を先行車に対して追従走行するために減速させることを追従減速制御部に比べて制限する減速制限部(S250)と、を備え、
対象物に対して自車両が操舵回避せずに減速により衝突することを回避することが不可能であると衝突回避判定部が判定し、かつ回避スペースが存在すると第1スペース判定部が判定し、さらに自車両を操舵回避のために減速させた場合には回避スペースが継続して存在しないと第2スペース判定部が判定したとき、追従走行制御部が自車両を減速させることを追従減速制御部に比べて減速制限部が制限し、かつ操舵制御部が操舵装置を自動的に制御して自車両を対象物に対して操舵回避させる。
【0027】
したがって、追従走行制御部が自車両を減速させることを追従減速制御部に比べて減速制限部が制限するため、自車両への後方車の衝突を回避しつつ、自車両が対象物を操舵回避することができる。よって、自車両が対象物を安全に操舵回避することができる。
【0028】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1実施形態における車両用制御装置が適用される車両用制御システムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図1のブレーキ装置のデスクブレーキの概略構成を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態において自車両の車両進行方向前側に先行車が走行し、先行車の車両進行方向前側に先先行車が静止している具体例を示す図である。
【
図4】
図1の車両用制御装置の演算制御部により実行される自動運転制御処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態において先行車が先先行車を操舵回避する途中の状態を示す図である。
【
図6】第1実施形態において先行車が先先行車を操舵回避する途中において先行車の後部および先先行車の後部を自車両側から視た図であり、先先行車の後部の一部が自車両側に露呈されている具体例を示している図である。
【
図7】第1実施形態において先行車が先先行車を操舵回避してる途中の状態を示す図である。
【
図8】第1実施形態において先行車が先先行車を操舵回避している途中において、先行車の後部、および先先行車の後部を自車両側から視た図であり、
図4の自動運転制御処理において物体が車両であるか否かの判定の説明を補助するために用いられる。
【
図9】第1実施形態において、自車両の前側に赤信号を表示する信号機が存在する具体例を図であり、
図4の自動運転制御処理において、自車両の車両進行方向前側に赤信号を表示する信号機が存在するか否かの判定の説明を補助するために用いられる。
【
図10】第1実施形態において先行車が、先先行車を操舵回避する途中に、先行車の後部、および先先行車の後部を自車両側から視た図であり、先先行車の後部のうち半分以上を自車両側に露呈する具体例を示している図である。
【
図11】第2実施形態の演算制御部により実行される自動運転制御処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図12】第2実施形態において、
図11の自動運転制御処理において自車両を減速させても先先行車に対して操舵回避する回避スペースが継続して存在するか否かを判定の説明を補助するために用いられる図である。
【
図13】第3実施形態の演算制御部により実行される自動運転制御処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図14】第4実施形態の演算制御部により実行される自動運転制御処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図15】第5実施形態の演算制御部により実行される自動運転制御処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0031】
(第1実施形態)
本第1実施形態の車両用制御装置10は、自動車に搭載される車両用制御システム1に用いられる。この車両用制御システム1は、自動車の自動運転を実施する。まず、この車両用制御システム1について説明する。本明細書では、説明の便宜上、車両用制御システム1が搭載されている自動車を自車両という。
【0032】
図1に示すように、車両用制御システム1は、車両用制御装置10、ブレーキ装置20、操舵装置30、走行用エンジン40、監視センサ50、および車速センサ55を備える。車両用制御装置10は、演算処理部11、メモリ12等によって構成されている。
【0033】
演算処理部11は、マイクロコンピュータ等によって構成され、
図4のコンピュータプログラムにしたがって、自動運転制御処理を実行する。演算処理部11は、自動運転制御処理の実行に伴って、監視センサ50の出力信号、車速センサ55の出力信号に基づいて、ブレーキ装置20、操舵装置30、および走行用エンジン40を制御する。なお、自動運転制御処理の詳細の説明については後述する。
【0034】
メモリ12は、ROM、RAM、フラッシュメモリ等から構成されている。フラッシュメモリは、演算処理部11が実行するコンピュータプログラム、ACCマップデータ、PCSマップデータなどが記録される書き込み可能な非遷移的実体的記録媒体である。
【0035】
ACCマップデータは、車間距離、対象車両の速度、自車両の速度、要求減速度が1対1対1対1で特定されるように複数の車間距離、対象車両の複数の速度、自車両の複数の要求減速度を有して構成されている。
【0036】
車間距離は、追従走行制御の対象車両および自車両の間の距離であり、要求減速度は、自車両に追従走行制御を実施するのに必要となる減速度である。減速度とは、車両の速度が減速する場合において単位時間あたりの速度の変化率を示す値であり、正値で表される。この減速度は、車両に作用する制動力が大きくなるほど、大きくなる。
【0037】
PCSマップデータは、車間距離、対象車両の速度、自車両の速度、要求減速度が1対1対1対1で特定されるように複数の車間距離、対象車両の複数の速度、自車両の複数の速度、複数の要求減速度を有して構成されている。要求減速度は、自車両に衝突回避減速制御を実施する際に必要となる減速度である。
【0038】
追従走行制御とは、自車両の車両進行方向前方の対象車両に自車両を追従走行させるために自車両を加速、或いは減速させる追従走行制御である。衝突回避減速制御は、自車両を減速させて自車両の車両進行方向前方の対象車両に衝突することを回避させる制御である。
【0039】
RAMは、演算処理部11が作業領域として用いる書き込み可能な揮発性記録媒体である。ROMは、演算処理部11によって実行されるコンピュータプログラム等が記録された書き込み不可能な非遷移的実体的記録媒体である。
【0040】
監視センサ50は、自車両の周囲を監視するセンサである。監視センサ50は、画像センサ、レーダ、超音波センサ等によって構成されている。
【0041】
画像センサは、自車両の周辺を撮像して撮像データをセンサ信号として出力するカメラである。レーダは、光や電波を用いて自車両の周囲に位置する車両等の対象物および自車両の間の距離、対象物および自車両の間の相対速度を求めるために用いられる。超音波センサは、超音波を用いて、レーダと同様に、対象物および自車両の間の距離、対象物および自車両の間の相対速度を求めるために用いられる。車速センサ55は、自車両の速度を検出するセンサである。車速センサ55は、自車両の駆動輪の回転数を検出する回転数センサによって構成されている。
【0042】
ブレーキ装置20は、
図1および
図2に示すように、圧力制御部21、22、および電子制御装置23を備え、右側前輪38a、左側前輪38b、右側後輪38c、左側後輪38dを制動する。圧力制御部21は、リザーバ21a、電動モータ21b、およびブレーキポンプ21cを備える。
【0043】
リザーバ21aは、ブレーキ液を貯める。電動モータ21bは、電子制御装置23からの駆動信号に基づいて回転駆動して回転力をブレーキポンプ21cに伝達する。ブレーキポンプ21cは、電動モータ21bから出力される回転力によって、リザーバ21aに貯められるブレーキ液を圧縮してホイールシリンダ60、61、62、63側に吐出する。
【0044】
圧力制御部22は、ブレーキポンプ21cからホイールシリンダ60、61、62、63を介してピストン60a、60b、60c、60dへ与えられるブレーキ液の圧力を制御する制御弁を構成する。
【0045】
図2のピストン60aは、圧力制御部22から与えられるブレーキ液の圧力によってブレーキパッド70a、70bを駆動する。ブレーキパッド70a、70bは、ブレーキデスク70cに押圧して右側前輪38aを制動するデスクブレーキ70を構成する。
【0046】
ピストン60bは、圧力制御部22から与えられるブレーキ液の圧力によってブレーキパッド71a、71bを駆動する。ブレーキパッド71a、71bは、ブレーキデスク71cに押圧して左側前輪38bを制動するデスクブレーキ71を構成する。
【0047】
ピストン60cは、圧力制御部22から与えられるブレーキ液の圧力によってブレーキパッド72a、72bを駆動する。ブレーキパッド72a、72bは、ブレーキデスク72cに押圧して右側後輪38cを制動するデスクブレーキ72を構成する。
【0048】
ピストン60dは、圧力制御部22から与えられるブレーキ液の圧力によってブレーキパッド73a、73bを駆動する。ブレーキパッド73a、73bは、ブレーキデスク73cに押圧して左側後輪38dを制動するデスクブレーキ73を構成する。
【0049】
電子制御装置23は、マイクロコンピュータやメモリ等によって構成され、演算処理部11からの制御信号に基づいて、電動モータ21bおよび圧力制御部22を制御する。
【0050】
操舵装置30は、自車両100の操舵輪となる前輪38a、38bの舵角を調整する。舵角とは、前輪38a、38bが直進する場合の方向である直進方向と、実際の前輪38a、38bの進行方向との間に形成される切れ角のことである。前輪38a、38bは、右側前輪38a、左側前輪38bを纏めたものである。
【0051】
走行用エンジン40は、走行用駆動源であって、ガソリン、軽油等の燃料の燃焼によって駆動輪である右側前輪38a,左側前輪38bに回転力を出力する内燃機関である。
【0052】
なお、走行用エンジン40によって走行用駆動源を構成する場合に限らず、走行用エンジン40および走行用電動モータによって走行用駆動源を構成してもよい。或いは、走行用エンジン40および走行用電動モータのうち走行用電動モータのみによって走行用駆動源を構成してもよい。
【0053】
次に、本実施形態の演算処理部11による自動運転制御処理について
図3~
図10を参照して説明する。以下、説明の便宜上、
図3に示すように、自車両100に対して車両進行方向前側に走行する車両を先行車101とし、先行車101に対して車両進行方向前側に静止する車両を先先行車102とする。
【0054】
演算処理部11は、
図4のフローチャートにしたがって、自動運転制御処理を実行する。
【0055】
まず、演算処理部11は、ステップS100において、物体判定部として、監視センサ50の出力信号に基づいて、先行車の車両進行方向前側の路上に、物体が存在するか否かを判定する。
【0056】
このとき、
図5の矢印Smに示すように、先行車101が先先行車102を操舵回避する途中で、
図6に示すように、先先行車102の後部の一部が自車両100側に露呈される。これに伴い、先先行車102の後部の一部が監視センサ50によって監視される。
【0057】
このため、演算処理部11は、ステップS100において、監視センサ50が先先行車102の後部の一部を監視した監視結果に基づいて、先行車101に対して車両進行方向前側の路上に物体が存在するとして、YESと判定する。
【0058】
このとき、物体が実際に静止した先先行車102である場合、先行車101や先先行車102に対して自車両100が衝突することを回避するために自車両100を減速させることが必要になる。
【0059】
そこで、演算処理部11は、ステップS110において、ブレーキ装置20にプレフィル制御を実行させるプレフィル制御信号を電子制御装置23に出力するとともに、走行用エンジン40にエンジンブレーキを発生させるブレーキ制御信号を出力する。なお、ステップS110は、プレフィル制御部、エンジン制御部を構成する。
【0060】
電子制御装置23は、演算処理部11からのプレフィル制御信号に基づいて、電動モータ21bを介してブレーキポンプ21cを制御する。これにより、ブレーキポンプ21cは、リザーバ21a内のブレーキ液を圧縮して圧力制御部22、ホイールシリンダ60、61、62、63に吐出する。
【0061】
このため、ホイールシリンダ60、61、62、63内のブレーキ液の圧力が予め上昇する。このとき、ブレーキパッド70a、70b、71a、72b、73a、73b、74a、74bは、それぞれ、ブレーキデスク70c、71c、73c、74cに対して非接触状態となる。
【0062】
走行用エンジン40は、演算処理部11からのブレーキ制御信号に基づいて、エンジンブレーキを発生させる。このため、車輪38a、38b、38c、38dが制動されて減速する。
【0063】
次に、演算処理部11は、ステップS120において、赤信号判定部として、監視センサ50の出力信号に基づいて、自車両100に向けて赤信号を表示する信号機80が自車両100に対して車両進行方向前側に存在するか否かを判定する。
【0064】
このとき、演算処理部11は、ステップS120において、赤信号を表示する信号機80が自車両に対して車両進行方向前側に存在しないときに、NOと判定する。
【0065】
これに伴い、演算処理部11は、ステップS140において、監視センサ50の出力信号に基づいて、物体が車両(すなわち、先先行車102)であるか否かについて判定する。
【0066】
具体的には、演算処理部11は、ステップS140において、車両判定部として、例えば車両の後部全体の画像データを用いたパターン認識、人工知能によって、物体が車両であるか否かについて判定する。
【0067】
このとき、物体が先先行車102である場合に、
図7の矢印Sbに示すように、先行車101が先先行車102を操舵回避する途中に、
図8に示すように、先先行車102の後部の全体が自車両100側に露呈される。
【0068】
これに伴い、先先行車102の後部の全体が監視センサ50によって監視される。このため、演算処理部11は、ステップS140において、監視センサ50が先先行車102を監視した監視結果に基づいて、物体が車両であるとして、YESと判定する。
【0069】
また、
図9に示すように、自車両100に向けて赤信号を表示する信号機80が自車両に対して車両進行方向前側に存在するときに、演算処理部11は、上述のステップS120において、YESと判定する。
【0070】
この場合、今後自車両100が信号機80に向かって走行すると、信号機80の赤信号に従って停止することが必要になる。そこで、本実施形態では、信号機80の赤信号に予め備えて、次のステップS130では、上述のステップS140に比べて、判定基準を緩和して、短時間で物体の車両判定を行う。
【0071】
具体的には、演算処理部11は、ステップS130において、上述のステップS140に比べて、物体が車両であるか否かについて緩い判定基準で判定する。例えば、演算処理部11は、車両判定部として、先先行車102の後部のうち半分を示す画像データを用いたパターン認識、人工知能等によって、物体が車両であるか否かについて判定する。
【0072】
このとき、
図10に示すように、先先行車102の後部のうち半分が自車両100側に露呈されると、先先行車102の後部のうち半分が監視センサ50によって監視される。
【0073】
このため、演算処理部11は、ステップS130において、物体が車両(すなわち、先先行車)であるとして、YESと判定する。
【0074】
このように、演算処理部11は、ステップS140、S130のうちいずれか一方でYESと判定する。
【0075】
ここで、先先行車や先行車への自車両の衝突を回避するため、先行車に対する追従走行制御の要求減速度Ga1と先先行車に対する追従走行制御の要求減速度Ga2とのうち大きい方の要求減速度Gxに対して自車両の減速度を近づけることが必要になる。
【0076】
そこで、演算処理部11は、ステップS150において、監視センサ50の出力信号、車速センサ55の出力信号に基づいて、ブレーキ装置20による追従走行制御の減速制御を実行する。なお、ステップS150は、第1減速度算出部、第2減速度算出部、減速判定部、および追従制御部を構成する。
【0077】
具体的には、演算処理部11は、次の(a)(b)において要求減速度Ga1、Ga2を求める。
【0078】
(a)演算処理部11は、先行車の速度、自車両の速度、先行車および自車両の車間距離を求め、先行車の速度、自車両の速度、車間距離によって特定される要求減速度Ga1をACCマップデータによって求める。要求減速度Ga1は、第1要求減速度に相当する。
【0079】
(b)演算処理部11は、先先行車の速度、自車両の速度、先先行車および自車両の車間距離を求め、先先行車の速度、自車両の速度、車間距離によって特定される要求減速度Ga2をACCマップデータによって求める。要求減速度Ga2は、第2要求減速度に相当する。
【0080】
このとき、演算処理部11は、要求減速度Ga1、Ga2のうち大きい方の値である要求減速度Gxを選択し、この選択された要求減速度Gxに自車両の減速度を近づけるための制御信号を電子制御装置23に出力する。
【0081】
このとき、電子制御装置23は、演算処理部11からの制御信号に基づいて電動モータ21bを介してブレーキポンプ21cを制御する。すると、ブレーキポンプ21cがリザーバ21a内のブレーキ液を圧縮して圧力制御部22、ホイールシリンダ60、61、62、63を通してピストン60a、61a、62a、63aに吐出する。
【0082】
したがって、ホイールシリンダ60、61、62、63内のブレーキ液の圧力は、更に高くなる。このため、ピストン60a、61a、62a、63aは、それぞれ、ホイールシリンダ60、61、62、63内のブレーキ液の圧力によって、デスクブレーキ70、71、72、73を駆動して車輪38a、38b、38c、38dを制動する。これにより、自車両100の減速度が要求減速度Gxに近づく。
【0083】
このため、要求減速度Ga2よりも要求減速度Ga1の方が大きい場合には、自車両が先行車に対して追従走行するために減速する。要求減速度Ga1よりも要求減速度Ga2の方が大きいときには、自車両が先先行車に対して追従走行するために減速する。
【0084】
なお、デスクブレーキ70、71、72、73が複数のブレーキに相当し、車輪38a、38b、38c、38dが複数の車輪に相当する。
【0085】
ここで、先行車が先先行車に対する操舵回避を開始するタイミングが遅いとき、或いは自車両および先先行車の間の相対速度が大きい場合には、先先行車への自車両の衝突を回避するため、追従走行制御から衝突回避減速制御に移行することが必要になる。
【0086】
そこで、演算処理部11は、ステップS160において、監視センサ50の出力信号、車速センサ55の出力信号に基づいて、追従走行制御の要求減速度の方が、衝突回避減速制御の要求減速度に比べて大きいか否かを判定する。
【0087】
具体的には、演算処理部11は、追従走行制御の要求減速度(すなわち、第1要求減速度)を上述の(a)と同様に求める。要求減速度は、先先行車を対象車両とする追従走行制御に必要となる減速度である。
【0088】
演算処理部11は、先先行車の速度、自車両の速度、先先行車および自車両の間の車間距離を求め、先先行車の速度、自車両の速度、車間距離によって特定される要求減速度(すなわち、第2要求減速度)をPCSマップデータによって求める。
【0089】
演算処理部11は、ステップS160において、追従走行制御の要求減速度の方が、衝突回避減速制御の要求減速度に比べて大きいときには、YESと判定する。
【0090】
次に、演算処理部11は、ステップS170において、先先行車を対象車両とする追従走行制御を継続するために、自車両の減速度を追従走行制御の要求減速度に近づけるための制御信号を電子制御装置23に出力する。
【0091】
このため、電子制御装置23は、ブレーキポンプ21c、ピストン60a、60b、60c、60d、デスクブレーキ70、71、72、73が上述と同様に作動して車輪38a、38b、38c、38dを制動する。これにより、自車両の減速度が追従走行制御の要求減速度に近づく。
【0092】
なお、ステップS160は、第1減速度算出部、第2減速度算出部、減速度判定部を構成する。ステップ170は減速制御部を構成する。
【0093】
また、演算処理部11は、ステップS160において、追従走行制御の要求減速度に比べて衝突回避減速制御の要求減速度の方が大きい場合には、NOと判定する。
【0094】
これに伴い、演算処理部11は、ステップS180において、追従走行制御をキャンセルして、自車両の減速度を衝突回避減速制御の要求減速度に近づけるための制御信号を電子制御装置23に出力する。
【0095】
このため、電子制御装置23、ブレーキポンプ21c、ピストン60a、60b、60c、60d、デスクブレーキ70、71、72、73が上述と同様に作動して車輪38a、38b、38c、38dを制動する。これにより、自車両の減速度が衝突回避減速制御の要求減速度に近づく。
【0096】
また、演算処理部11は、ステップS100において、先行車に対して車両進行方向前側に物体が存在しないとき、NOと判定する。
【0097】
また、演算処理部11は、ステップS130、S140のうちいずれか一方において、物体が車両以外の路上構造物であるとき、NOと判定する。
【0098】
さらに、
図6に示すように、実際には物体が先先行車102である場合であっても、先先行車102の後部のうち半分以上が先行車101によって覆われている場合には、演算処理部11は、物体が車両であるか否かを判定することができない。このため、演算処理部11は、ステップS130、S140のいずれにおいても、物体が車両ではないとして、NOと判定する。
【0099】
図10に示すように、先先行車102の後部のうち先行車101によって覆われている領域が半分以下であるときでも、演算処理部11は、ステップS140において、厳しい判定基準で、物体が車両であるか否かについて判定する。このため、演算処理部11は、ステップS140において、物体が車両ではないとして、NOと判定する。
【0100】
このように、演算処理部11は、ステップS100、S130、S140のうちいずれか1つのステップにおいてNOと判定すると、次のステップS190に移行する。演算処理部11は、走行用エンジン40、ブレーキ装置20を制御して、自車両を先行車101に追従走行させるために加速、或いは減速させる。
【0101】
以上説明した本実施形態によれば、車両用制御装置10の演算処理部11は、監視センサ50が先行車を監視した監視結果に基づいて、先行車を追従走行させるために必要である要求減速度Ga1を求める。
【0102】
演算処理部11は、先行車の車進行方向前側に静止している先先行車を監視センサ50が監視した監視結果に基づいて、先先行車に自車両を追従走行させるために必要である要求減速度Ga2を求める。
【0103】
演算処理部11は、要求減速度Ga2の方が要求減速度Ga1よりも大きいと判定したとき、要求減速度Ga2に自車両の減速度を近づけるようにブレーキ装置20を制御して先先行車を対象車両とする追従走行制御を行う。
【0104】
したがって、先行車の車進行方向前側に静止している先先行車を先行車が操舵回避する場合に、監視センサ50で先先行車を監視することを開始してから、早急に自車両への減速制御を開始することができる。よって、先先行車に自車両が衝突することを回避することができる。
【0105】
本実施形態では、演算処理部11は、追従走行制御の要求減速度よりも衝突回避減速制御の要求減速度の方が大きいと判定したとき、衝突回避減速制御の要求減速度に自車両100の減速度を近づけるようにブレーキ装置20を制御する。
【0106】
したがって、先行車が先先行車を操舵回避するタイミングが遅くて、自車両および先先行車の間の車間距離が短いとき、或いは、自車両および先先行車の間の相対速度が大きいときに、自車両が先先行車に衝突することを回避することができる。
【0107】
また、一般的に、衝突回避減速制御は、先先行車に対して自車両が接近しているシーンでは、追従走行制御に比較して、大きな要求減速度が算出される。
【0108】
したがって、先行車が先先行車を操舵回避するシーンでは、先先行車に対して自車両が接近していなく、「追従走行制御の要求減速度」の方が「衝突回避減速制御の要求減速度」よりも大きくなるタイミングが生じる場合がある。
【0109】
しかし、上述の特許文献2の車両用制御装置のように、衝突回避減速制御による減速制御の実行条件が成立して追従走行制御による減速制御をキャンセルすると、自車両の制動力が一時的に減少する。
【0110】
これに対して、本実施形態では、上述の如く、追従走行制御の要求減速度よりも衝突回避減速制御の要求減速度の方が大きいと判定したとき、衝突回避減速制御の要求減速度に自車両の減速度を近づけるようにブレーキ装置20を制御する。このため、自車両の制動力が一時的に減少することもない。
【0111】
以上説明した本実施形態によれば、次の(1)(2)(3)の効果が得られる。
(1)演算処理部11は、先行車の車両進行方向前側の路上に物体が存在すると判定してから物体が車両であると判定する迄、プレフィル制御を実行する。このため、プレフィル制御の実行後に、演算処理部11がブレーキ装置20を制御する際に、要求減速度Gに自車両100の減速度を短時間で近づけることができる。
(2)演算処理部11は、先行車の車両進行方向前側の路上に物体が存在すると判定してから物体が車両であると判定する迄、走行用エンジン40によりエンジンブレーキを発生させる。このため、先行車や先先行車に対して自車両が衝突することを回避するために、ブレーキ装置20を用いることなく、自車両を予め減速させることができる。
(3)演算処理部11は、ステップS130において、ステップS140に比べて、物体が車両であるかを否かについて緩い判定基準によって判定する。このため、演算処理部11は、ステップS130において、ステップS140に比べて、物体が車両であるかを否かについて短時間で判定することができる。
【0112】
したがって、赤信号の信号機80が自車両の車両進行方向前側に存在する場合には、誤ってブレーキ装置20により減速させること抑えつつ、追従走行制御により減速させることを早いタイミングで行うことができる。
【0113】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、自車両が衝突回避するために先行車或いは先先行車に対して追従走行制御による減速制御を行う例について説明した。しかし、これに代えて、本第2実施形態では、衝突回避するために自車両が先行車に対して操舵回避する例について説明する。
【0114】
本実施形態と上記第1実施形態とでは、自車両100の車両用制御装置10のハードウエア構成が共通であり、演算処理部11により実行される自動制御処理が互いに相違する。
【0115】
そこで、以下、主に、演算処理部11における自動制御処理について
図11、
図12を参照して説明する。
図11は、本実施形態の自動制御処理の詳細を示すフローチャートである。
図11において、
図4と同一符号は、同一ステップを示し、その説明を簡素化する。演算処理部11は、
図11のフローチャートにしたがって、自動制御処理を実行する。
【0116】
まず、演算処理部11は、ステップS200において、追従走行制御部として、監視センサ50の出力信号に基づいて走行用エンジン40、ブレーキ装置20を制御して自車両の車両進行方向前側を走行する先行車に追従して走行させる。
【0117】
次に、演算処理部11は、ステップS210において、監視センサ50により取得される周辺情報に基づいて、先行車の車両進行方向前側に静止する先先行車(すなわち、対象物)に対して自車両が操舵回避する回避スペースが存在するか否かを判定する。ステップS210は、第1スペース判定部に相当する。
【0118】
具体的には、演算処理部11は、先行車が走行車線を変更して先先行車に対して操舵回避する走行軌跡の有無によって回避スペースが存在するか否かを判定する。
【0119】
ここで、
図12中の矢印SKのように、先行車101の走行車線を車線400から追い越し車線401に変更して先先行車102に対して操舵回避する走行軌跡が存在する場合には、演算処理部11は、ステップS210において、YESと判定する。
【0120】
次に、演算処理部11は、ステップS220において、衝突回避判定部として、追従走行制御および衝突回避減速制御を連携して自車両が操舵回避せずに減速させても自車両が先先行車に衝突することを回避することが可能であるか否かを判定する。
【0121】
具体的には、演算処理部11は、上記第1実施形態のステップS160と同様に、先先行車を対象車両とする衝突回避減速制御に必要となる要求減速度を求め、要求減速度が所定値以上であるか否かを判定する。
【0122】
演算処理部11は、ステップS220にて、要求減速度が所定値以上であるときには、追従走行制御および衝突回避減速制御を連携して自車両が操舵回避せずに減速させても自車両が先先行車に衝突することを回避することが不可能であるとしてNOと判定する。
【0123】
次に、演算処理部11は、ステップS230において、監視センサ50により取得される自車両の周辺情報に基づいて、自車両を操舵回避のために減速させても先先行車に対して操舵回避する回避スペースが継続して存在するか否かを判定する。ステップS230は第2スペース判定部に相当する。
【0124】
このとき、演算処理部11は、ステップS230において、自車両の車両進行方向および自車両の側方に他の車両が存在していないときには、自車両を操舵回避のために減速させても回避スペースが継続して存在するとしてYESと判定する。
【0125】
次に、演算処理部11は、ステップS240において、監視センサ50の出力信号に基づいて、上述の如く、先行車を対象車両とする追従走行制御の要求減速度を求め、要求減速度に自車両の減速度を近づけるようにブレーキ装置20を制御する。これにより、先先行車に対して自車両が操舵回避するため、自車両を先行車に対して追従走行させるために減速させる。ステップS240は、追従減速制御部に相当する。
【0126】
次に、演算処理部11は、ステップS260において、上記ステップS210で求められる走行軌跡に沿って自車両を走行させるように操舵装置30を自動的に制御することにより、自車両を先先行車に対して操舵回避させる。その後、演算処理部11は、上記第1実施形態と同様に、ステップS160以降の処理を実行する。
【0127】
また、
図12に示すように、自車両100が走行する車線400に隣接する追い越し車線401において自車両100の車両進行方向後側に後方車両103が現れる場合がある。この場合、演算処理部11は、ステップS230において、先先行車に対して自車両を操舵回避させるために自車両を減速させた場合には回避スペースが継続して存在しないとしてNOと判定する。
【0128】
次に、演算処理部11は、ステップS250において、自車両が先先行車に対して操舵回避するために追従走行制御によって自車両を減速させることを上述のステップS240の減速制御処理に比べて制限する。
【0129】
次に、演算処理部11は、ステップS260において、上記走行軌跡に沿って自車両を走行させるように操舵装置30を自動的に制御して、自車両を先先行車に対して操舵回避させる。
【0130】
その後、演算処理部11は、ステップS160以降の処理を実行する。なお、ステップS250は、減速制限部であり、ステップS260は、操舵制御部である。
【0131】
また、演算処理部11は、ステップS210において、先行車が走行車線を変更して先先行車に対して操舵回避する走行軌跡が求められない場合には、回避スペースが存在しないとしてNOと判定する。
【0132】
さらに、演算処理部11は、ステップS220において、衝突回避減速制御の要求減速度が所定値未満であるとき、YESと判定する。これにより、追従走行制御および衝突回避減速制御を連携して自車両を減速させれば演算処理部11によって自車両が先先行車に衝突することを回避することが可能であると判定される。
【0133】
演算処理部11は、ステップS220、S210のうち一方でNOと判定すると、ステップS270、S280において、追従走行制御および衝突回避減速制御を連携して実行する。これにより、自車両がブレーキ装置20を駆動して減速させる。
【0134】
以上説明した本実施形態によれば、演算処理部11は、次の(e)(f)(g)の条件を満たすとき、ステップS250にて、追従走行制御によって自車両を減速させることをステップS240の減速制御処理に比べて制限する。これに加えて、演算処理部11は、操舵装置30を自動的に制御して自車両を先先行車に対して操舵回避させる。
【0135】
(e)演算処理部11は、自車両が先先行車を操舵回避する回避スペースが存在すると判定する。(f)演算処理部11は、先先行車に対する衝突を自車両が操舵回避せずに減速によって回避することが不可能であると判定する。(g)演算処理部11は、自車両が先先行車を操舵回避するために自車両を減速させた場合には、自車両が先先行車に対して操舵回避する回避スペースが継続して存在しないと判定する。
【0136】
以上により、操舵回避のために自車両を減速させた場合に自車両の回避スペースが継続して存在しない場合でも、自車両への後方車の衝突を回避しつつ、自車両が対象物を操舵回避することができる。よって、自車両が対象物を安全に操舵回避することができる。
【0137】
以上説明した本実施形態によれば、次の(4)の効果が得られる。
(4)演算処理部11は、監視センサ50が先行車を監視された監視結果に基づいて、先行車の走行車線を変更して先先行車を操舵回避する走行軌跡の有無によって、回避スペースが存在するか否かを判定する。これにより、回避スペースが存在するか否かについて高精度に判定することができる。
【0138】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、演算処理部11は、先行車の車両進行方向前側に物体が存在すると判定した場合に、プレフィル制御、エンジンブレーキを実行させる例について説明した。
【0139】
しかし、これに代えて、本第3実施形態では、自車両の速度が閾値未満であるときには、プレフィル制御、エンジンブレーキを実行することを禁止する例について
図13を参照して説明する。
【0140】
図13は、本実施形態の自動制御処理の詳細を示すフローチャートである。
図13のフローチャートは、
図4のフローチャートに、ステップS105、S115を追加したものである。ステップS105は、ステップS100、S110の間に配置されている。ステップS115は、ステップS105、S120の間に配置されている。
【0141】
演算処理部11は、
図4に代わる
図13のフローチャートにしたがって、自動制御処理を実行する。
【0142】
まず、演算処理部11は、ステップS100において、先行車の車両進行方向前側に物体が存在するときには、YESと判定する。
【0143】
そこで、演算処理部11は、ステップS105において、速度判定部として、車速センサ55の出力信号に基づいて、自車両100の速度が閾値以上であるか否かを判定する。
【0144】
このとき、演算処理部11は、自車両100の速度が閾値以上であるときには、ステップS105において、YESと判定する。これに伴い、演算処理部11は、ステップS110において、プレフィル制御、エンジンブレーキ制御を実行させてから、次のステップS120に移行する。
【0145】
また、演算処理部11は、自車両100の速度が閾値未満であるときには、ステップS105において、NOと判定する。これに伴い、演算処理部11は、ステップS115において、プレフィル制御、エンジンブレーキを実行させることを禁止してからステップS120に移行する。以降、演算処理部11は上記第1実施形態と同様に自動運転制御処理を実行する。ステップS115は、速度判定禁止部を構成する。
【0146】
以上説明した本実施形態によれば、演算処理部11は、自車両の速度が閾値未満であるときには、プレフィル制御、エンジンブレーキを実行させることを禁止する。このため、自車両の速度が閾値未満である場合には、必要が無いプレフィル制御、エンジンブレーキを実行させることを未然に防ぐことができる。
(第4実施形態)
上記第3実施形態では、演算処理部11は自車両の速度が閾値以上であるか否かを判定することにより、プレフィル制御、エンジンブレーキを実行させるか否かを判定した例について説明した。
【0147】
これに代えて、本第4実施形態では、演算処理部11は、自車両および物体の間の相対速度が所定速度以上であるか否かを判定することにより、プレフィル制御、エンジンブレーキを実行させるか否かを判定する例ついて
図14を参照して説明する。
【0148】
図14は、
図13のフローチャートにおいて、ステップS105に代わるステップS105aを備える。
図14のフローチャートのうちステップS105a以外のステップは、
図13のフローチャートと同一である。
【0149】
演算処理部11は、
図13に代わる
図14のフローチャートにしたがって、自動制御処理を実行する。
【0150】
そこで、演算処理部11は、ステップS105aにおいて、相対速度判定部として、車速センサ55の出力信号、監視センサ50の出力信号に基づいて、物体および自車両の間の相対速度を求め、相対速度が閾値以上であるか否かを判定する。
【0151】
このとき、演算処理部11は、相対速度が閾値以上であるときには、ステップS105aにおいて、YESと判定する。これに伴い、演算処理部11は、ステップS110において、プレフィル制御、エンジンブレーキを実行させてから、次のステップS120に移行する。
【0152】
また、演算処理部11は、相対速度が閾値未満であるときには、ステップS105aにおいて、NOと判定する。これに伴い、演算処理部11は、ステップS115において、プレフィル制御、エンジンブレーキを実行させることを禁止してからステップS120に移行する。以降、演算処理部11は上記第1実施形態と同様に自動運転制御処理を実行する。ステップS115は、相対速度判定禁止部を構成する。
【0153】
以上説明した本実施形態によれば、演算処理部11は、相対速度が閾値未満であるときには、プレフィル制御、エンジンブレーキを実行させることを禁止する。このため、物体および自車両の間の相対速度が閾値未満である場合に、不必要であるプレフィル制御、エンジンブレーキを実行させることを未然に防ぐことができる。
【0154】
(第5実施形態)
上記第4実施形態では、演算処理部11は、相対速度が閾値以上であるか否かを判定することにより、プレフィル制御、エンジンブレーキを実行させるか否かを判定した例について説明した。
【0155】
これに代えて、本第5実施形態では、演算処理部11は、衝突推定時間が閾値以上であるか否かを判定することにより、プレフィル制御、エンジンブレーキを実行させるか否かを判定する例ついて
図15を参照して説明する。衝突推定時間は、Time-To-Collisionを示すものであり、自車両が物体に衝突するのに要する予測される衝突予測時間である。
【0156】
図15は、
図14のフローチャートにおいて、ステップS105aに代わるステップS105bを備える。
図15のフローチャートのうちステップS105b以外のステップは、
図14のフローチャートと同一である。
【0157】
演算処理部11は、
図14に代わる
図15のフローチャートにしたがって、自動制御処理を実行する。
【0158】
演算処理部11は、ステップS105bにおいて、時間判定部として、車速センサ55の出力信号、監視センサ50の出力信号に基づいて、衝突推定時間が閾値未満であるか否かを判定する。衝突推定時間は、「自車両および物体の間の距離」を「自車両および物体の間の相対速度」で徐算することにより求められる。
【0159】
このとき、演算処理部11は、衝突推定時間が閾値未満であるときには、ステップS105bにおいて、YESと判定する。これに伴い、演算処理部11は、ステップS110において、プレフィル制御とエンジンブレーキとを実行させてから、次のステップS120に移行する。
【0160】
また、演算処理部11は、衝突推定時間が閾値以上であるときには、ステップS105bにおいて、NOと判定する。これに伴い、演算処理部11は、ステップS115において、プレフィル制御、エンジンブレーキを実行させることを禁止してからステップS120に移行する。以降、演算処理部11は上記第1実施形態と同様に自動運転制御処理を実行する。なお、ステップS115は、時間判定禁止部を構成する。
【0161】
以上説明した本実施形態によれば、演算処理部11は、衝突推定時間が閾値以上であるときには、プレフィル制御、エンジンブレーキを実行させることを禁止する。このため、衝突推定時間が所定時間以上である場合に、不必要なプレフィル制御、エンジンブレーキを実行させることを未然に防ぐことができる。
【0162】
(他の実施形態)
(1)上記第1~第5実施形態では、演算処理部11がコンピュータプログラムを用いたソフトウエアで自動運転制御処理を構成した例について説明したが、演算処理部11において自動運転制御処理をハードウエアで構成してもよい。
(2)上記第1~第5実施形態では、車輪38a、38b、38c、38dのブレーキをデスクブレーキ70、71、72、73によって構成した例について説明した。しかし、これに限らず、車輪38a、38b、38c、38dのうちいずれかの車輪、或いは全車輪のブレーキをドラムブレーキで構成してもよい。
(3)上記第1~第5実施形態では、プレフィル制御として、デスクブレーキ70、71、72、73においてそれぞれのブレーキパッドがブレーキデスクに対して非接触状態になるようにした例について説明した。
【0163】
しかし、これに代えて、プレフィル制御として、ブレーキパッド70a、70b、71a、72b、73a、73b、74a、74bがブレーキデスク70c、71c、73c、74cに対して若干、接触した状態になるようにしてもよい。
(4)上記第2実施形態では、演算処理部11が、ステップS260において、自車両が先行車に対して操舵回避する例について説明した。しかし、これに代えて、自車両が路上の落下物等の物体に対して操舵回避するようにしてもよい。
(5)上記第1、第3、第4、第5実施形態では、演算処理部11がステップS110において、プレフィル制御、エンジンブレーキを実行する例について説明した。しかし、これに代えて、プレフィル制御、エンジンブレーキを実行するステップS110を削除してもよい。或いは、ステップS110において、プレフィル制御、エンジンブレーキのうち一方のみを実行してもよい。
(6)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記第1、第2、第3、第4、第5実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
【0164】
例えば、上記第3実施形態のステップS105、上記第4実施形態のステップS105a、および上記第5実施形態のステップS105bのうち2つの以上を組み合わせて自動運転制御処理を構成してもよい。
【符号の説明】
【0165】
10 車両用制御装置
11 演算制御部
20 ブレーキ装置
50 監視センサ
100 自車両
101 先行車
102 先先行車