(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】自動車
(51)【国際特許分類】
G08G 1/0969 20060101AFI20240820BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240820BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G08G1/0969
G08G1/09 F
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2021139022
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】青木 優和
(72)【発明者】
【氏名】橋本 洋介
(72)【発明者】
【氏名】小川 友希
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-346286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の車両との通信により車両の現在地および車速を含む走行車両情報を取得すると共に前記走行車両情報を用いて得られる道路上の交通を妨げる障害に関する交通障害情報を含む交通情報を管理する交通情報管理センターから自車両の周囲の交通障害情報である周囲交通障害情報を含む交通情報を取得する交通情報取得装置と、
自車両の周囲の地図を含む周囲地図情報を自車両の現在地を示すマークと共に表示する表示装置と、
前記周囲交通障害情報に基づく加飾画像を前記周囲地図情報に反映して前記表示装置に表示する制御装置と、
を備える自動車であって、
前記制御装置は、前記加飾画像に係る交通情報
の生成に関与した走行車両情報の車両の台数である関与台数に関する関与台数画像を前記加飾画像に関連して前記表示装置に表示する、
ことを特徴とする自動車。
【請求項2】
請求項1記載の自動車であって、
前記関与台数画像は、前記関与台数を示す数値の画像または前記関与台数に応じた指標の画像である、
自動車。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動車であって、
前記制御装置は、前記周囲交通障害情報に関与した前記関与台数に応じた距離のマージン画像を、前記周囲交通障害情報に係る加飾画像の自車両に最も近い端部から自車両側に向けて前記表示装置に表示する、
自動車。
【請求項4】
請求項3記載の自動車であって、
前記マージン画像は、前記関与台数が多いほど距離が短くなる傾向の画像である、
自動車。
【請求項5】
請求項3または4記載の自動車であって、
前記制御装置は、前記マージン画像の自車両側の端部から自車両を適度な減速度を用いて低減して徐行する状態とするのに必要な減速制御距離だけ自車両側に近い位置を減速制御開始位置として設定し、自車両が前記減速制御開始位置に至ったときに減速制御を開始する、
自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に関し、詳しくは、走行中の他車両の情報を取得する可能な自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、会員車両の現在位置周辺に対して渋滞の度合いを複数段階に分類すると共にその確立を含めて予測した渋滞区間を会員車両に送信する情報提供サーバーが提案されている(例えば特許文献1参照)。また、情報提供サーバーは、予測されたデータに基づき会員車両のディスプレイに表示される表示データを生成し、会員車両に送信する。会員車両のディスプレイでは、地図情報、会員車両の現在位置、渋滞区間が重畳表示される。また、渋滞度合いが異なる境界部分は、各度合いの渋滞の発生する確率に基づき、渋滞度合いが道路に沿って徐々に変化する形態で表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の技術では、会員車両の運転者は、渋滞区間や渋滞の発生確率については認識できるが、渋滞やその発生確率がどのようなデータに基づいて得られているのかについては知ることができず、渋滞やその発生確率に対してより適正に対応することが困難となる。
【0005】
本発明の自動車は、走行経路上や自車両の周囲で生じた交通を妨げる障害に関与する情報の根拠の少なくとも一部を運転者に通知することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の自動車は、
走行中の車両との通信により車両の現在地および車速を含む走行車両情報を取得すると共に前記走行車両情報を用いて得られる道路上の交通を妨げる障害に関する交通障害情報を含む交通情報を管理する交通情報管理センターから自車両の周囲の交通障害情報である周囲交通障害情報を含む交通情報を取得する交通情報取得装置と、
自車両の周囲の地図を含む周囲地図情報を自車両の現在地を示すマークと共に表示する表示装置と、
前記周囲交通障害情報に基づく加飾画像を前記周囲地図情報に反映して前記表示装置に表示する制御装置と、
を備える自動車であって、
前記制御装置は、前記加飾画像に係る交通情報に関与した走行車両情報の車両の台数である関与台数に関する関与台数画像を前記加飾画像に関連して前記表示装置に表示する、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の自動車では、交通情報取得装置は、走行中の車両との通信により車両の現在地および車速を含む走行車両情報を取得すると共に走行車両情報を用いて得られる道路上の交通を妨げる障害に関する交通障害情報を含む交通情報を管理する交通情報管理センターと通信し、交通情報管理センターから自車両の周囲の交通障害情報である周囲交通障害情報を含む交通情報を取得する。また、自車両の周囲の地図を含む周囲地図情報を自車両の現在地を示すマークと共に表示装置に表示する際に、周囲交通障害情報に基づく加飾画像を周囲地図情報に反映して表示装置に表示する。これにより、周囲交通障害情報を加飾画像として周囲地図情報に反映して表示装置に表示することができる。そして、加飾画像に係る交通情報に関与した走行車両情報の車両の台数である関与台数に関する関与台数画像を加飾画像に関連して表示装置に表示する。これにより、自車両の周囲で生じた交通を妨げる障害に関与する情報の根拠の少なくとも一部を運転者に通知することができ、運転者は加飾画像に係る周囲交通障害情報に関与した走行車両情報の車両の台数(関与台数)を把握することができる。なお、関与台数画像としては、関与台数を示す数値の画像としてよく、関与台数に応じた指標の画像としてもよい。例えば、関与台数が多くなるほど長さが長くなる棒グラフの本数が増える画像などとしてもよい。
【0009】
本発明の自動車において、前記制御装置は、前記周囲交通障害情報に関与した前記関与台数に応じた距離のマージン画像を、前記周囲交通障害情報に係る加飾画像の自車両に最も近い端部から自車両側に向けて前記表示装置に表示するものとしてもよい。こうすれば、周囲交通障害情報の適正性(確からしさ)をマージン画像により運転者に知らせることができる。この場合、前記マージン画像は、前記関与台数が多いほど距離が短くなる傾向の画像であるものとしてもよい。
【0010】
本発明の自動車において、前記制御装置は、前記マージン画像の自車両側の端部から自車両を適度な減速度を用いて低減して徐行する状態とするのに必要な減速制御距離だけ自車両側に近い位置を減速制御開始位置として設定し、自車両が前記減速制御開始位置に至ったときに減速制御を開始するものとしてもよい。こうすれば、交通を妨げる障害に起因する渋滞などに対してより適正に減速することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例としての自動車20の構成の一例をメイン電子制御ユニット30を中心にブロックとして示すブロック図である。
【
図2】メイン電子制御ユニット30により実行される交通障害表示処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】センターディスプレイ72にナビゲーション用の地図情報と共にマージンαと関与台数に関する情報とを表示した画面の一例を示す説明図である。
【
図4】交通障害としての渋滞とマージンαとマージンβの一例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例としての自動車20の構成の一例をメイン電子制御ユニット(以下、メインECUという。)30を中心にブロックとして示すブロック図である。実施例の自動車20は、図示するように、図示しない駆動輪に駆動力を出力する駆動装置62と、駆動装置62を駆動制御するための駆動用電子制御ユニット(以下、駆動ECUという)60とを備える。
【0014】
駆動装置62としては、エンジンと自動変速装置とを有するものや、エンジンとモータとバッテリとを有するハイブリッドシステム、燃料電池とバッテリとモータとを有する燃料電池駆動システム、バッテリとモータとを有する電動システムなどを用いることができる。
【0015】
駆動ECU60は、図示しないがCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他にROMやRAM、フラッシュメモリ、入力ポート、出力ポート、通信ポートなどを備える。駆動ECU60は、メインECU30からの駆動制御信号に基づいて駆動装置62を駆動制御する。
【0016】
実施例の自動車20は、駆動装置62や駆動ECU60の他に、イグニッションスイッチ32、シフトポジションセンサ34、アクセルポジションセンサ36、ブレーキポジションセンサ38、車速センサ40、加速度センサ42、勾配センサ44、ヨーレートセンサ46、自動運転スイッチ48、アクティブクルーズコントロールスイッチ(以下、ACCスイッチという。)50、周辺認識用電子制御ユニット(以下、周辺認識ECUという。)52、周辺認識装置54、室内カメラ55、空調装置用電子制御ユニット(以下、エアコンECUという。)56、空調装置58、ブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという。)64、ブレーキ装置66、操舵用電子制御ユニット(以下、操舵ECUという。)68、操舵装置70、センターディスプレイ72、ヘッドアップディスプレイ74、メーター76、GPS(Global Positioning System, Global Positioning Satellite)78、ナビゲーションシステム80、DCM(Data Communication Module)86などを備える。
【0017】
シフトポジションセンサ34は、シフトレバーのポジションを検出する。アクセルポジションセンサ36は、運転者のアクセルペダルの踏み込み量に応じたアクセル開度などを検出する。ブレーキポジションセンサ38は、運転者のブレーキペダルの踏み込み量としてのブレーキポジションなどを検出する。
【0018】
車速センサ30は、車輪速などに基づいて車両の車速を検出する。加速度センサ28は、例えば、車両の前後方向の加速度を検出する。勾配センサ44は、路面勾配を検出する。ヨーレートセンサ46は、旋回運動による左右方向の横加速度(ヨーレート)を検出する。
【0019】
自動運転スイッチ48は、運転支援制御の1つとしての自動運転を行なうか否かの選択用のスイッチである。ACCスイッチ50は、運転支援装置の1つとしてのアクティブクルーズコントロールを行なうか否かの選択用のスイッチである。自動運転スイッチ48やACCスイッチ50は、ステアリングや運転席の前方のインストールパネル或いはその近傍に取り付けられている。自動運転スイッチ48およびACCスイッチ50は、前方車両との車間距離の設定や車速の設定などの種々の設定を行なうスイッチも兼ねている。
【0020】
周辺認識ECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM、入出力ポート、通信ポートを備える。周辺認識ECU52には、周辺認識装置54からの自車やその周囲の情報(例えば、自車の前方や後方の他車との車間距離D1,D2や他社の車速、路面の車線における自車の走行位置など)が入力ポートを介して入力されている。周辺認識装置54としては、前方カメラや後方カメラ、ミリ波レーダー、準ミリ波レーダー、赤外線レーザーレーダー、ソナーなどを挙げることができる。室内カメラ55は、運転席前方に配置されて運転者および乗員室内を撮影する。
【0021】
エアコンECU56は、図示しないがCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他にROMやRAM、フラッシュメモリ、入力ポート、出力ポート、通信ポートなどを備える。エアコンECU56は、乗員室を空気調和する空調装置58に組み込まれており、乗員室の温度が設定された温度となるように空調装置におけるエアコン用コンプレッサなどを駆動制御する。
【0022】
ブレーキECU64は、図示しないがCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他にROMやRAM、フラッシュメモリ、入力ポート、出力ポート、通信ポートなどを備える。ブレーキECU64は油圧駆動の周知のブレーキ装置66を駆動制御する。ブレーキ装置66は、ブレーキペダルを踏み込むことによるブレーキ踏力に起因する制動力と油圧調整に起因する制動力とが行なえるように構成されている。
【0023】
操舵ECU68は、図示しないがCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他にROMやRAM、フラッシュメモリ、入力ポート、出力ポート、通信ポートなどを備える。操舵ECU68は、図示しないステリングと駆動輪とがステアリングシャフトを介して機械的に接続された操舵装置28のアクチュエータを駆動制御する。操舵装置28は、運転者のステアリング操作に基づいて駆動輪を操舵すると共に、メイン電子制御ユニット30からの操舵制御信号に基づいて操舵ECU68によるアクチュエータの駆動により駆動輪を操舵する。
【0024】
センターディスプレイ72は、運転席および助手席の前方の中央に配置され、タッチパネルとしても機能し、車両の各種設定やオーディオや各種メディアのアプリケーションを実行したり、ナビゲーションシステムの表示部84として機能して地図ナビゲーションを行なったりする。なお、センターディスプレイ72には、スピーカーなどが付属している。
【0025】
ヘッドアップディスプレイ74は、フロントガラスに運転者向けの情報の(無限遠の点に結像するような)画像を提供するものであり、例えば、速度表示やナビゲーションガイド表示を行なう。メーター76は、例えば運転席前方のインストールパネルに組み込まれている。
【0026】
GPS78は、複数のGPS衛星から送信される信号に基づいて車両の位置を検出する装置である。
【0027】
ナビゲーションシステム80は、自車両を設定した目的地に誘導するシステムであり、地図情報82と表示部84とを備える。ナビゲーションシステム80は、交通情報管理センター100とDCM(Data Communication Module)86を介して通信しており、道路交通情報を取得したり、必要に応じて地図情報を取得して地図情報82を更新したりする。。ナビゲーションシステム80は、目的地が設定されると、目的地の情報とGPS78により取得した現在地(現在の自車両の位置)の情報と地図情報82とに基づいて経路を設定する。
【0028】
DCM(Data Communication Module)86は、自車両の情報を交通情報管理センター100に送信したり、交通情報管理センター100から他車両の情報や道路交通情報を受信したりする。自車両の情報としては、例えば、自車両の諸元や現在地、車速、走行パワー、走行モードなどを挙げることができる。他車両の情報としては、自車両の情報と同様に、他車両の諸元や現在地、車速、走行パワー、走行モードなどを挙げることができる。なお、自車両や他車両の諸元は、車両形態(電動車やハイブリッド車、燃料電池車など)やサイズ(車長、車幅、車高)などを挙げることができる。道路交通情報としては、例えば、現在や将来の渋滞に関する情報(渋滞の始点や終点の情報を含む)、事故に関する情報、落下物に関する情報、路面状態に関する情報(スリップしやすいか否かの情報を含む)、交通規制に関する情報、天候に関する情報、地図に関する情報、渋滞や事故,落下物などの交通を妨げる障害の発生位置から自車両までの間の他車両の情報などを挙げることができる。なお、交通情報管理センター100は、道路上で走行している全ての車両からの情報を得ているわけではなく、交通情報管理センター100と通信可能な装置を有すると共に交通情報管理センター100との車両の情報や道路交通情報の送受信を行なう契約を締結しているユーザの車両のみから情報を得ている。道路交通情報は、道路上に設置した各種センサやカメラなどから得られる情報や気象情報、過去の交通情報、走行中の車両から得られる情報に基づいて生成されている。DCM86は、要求に応じて又は所定間隔毎(例えば、30秒毎や1分毎、2分毎など)に交通情報管理センター100と通信している。
【0029】
メイン電子制御ユニット30は、図示しないがCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他にROMやRAM、フラッシュメモリ、入力ポート、出力ポート、通信ポートなどを備える。メイン電子制御ユニット30には入力ポートを介して各種信号が入力されている。入力ポートを介して入力される情報としては、例えば、イグニッションスイッチ32からのイグニッションスイッチ信号や、シフトポジションセンサ34からシフトポジション、アクセルポジションセンサ36からのアクセル開度、ブレーキポジションセンサ38からのブレーキポジションなどを挙げることができる。また、車速センサ40からの車速Vや加速度センサ42からの加速度、勾配センサ44からの勾配、ヨーレートセンサ46からのヨーレートなども挙げることができる。更に、自動運転スイッチ48からの自動運転指示信号、ACCスイッチ50からのACC指示信号なども挙げることができる。メイン電子制御ユニット30からは出力ポートを介して各種信号が出力されている。出力ポートを介して出力される情報としては、例えば、センターディスプレイ72への表示制御信号や、ヘッドアップディスプレイ74への表示制御信号、メーター76への表示信号などを挙げることができる。
【0030】
メイン電子制御ユニット30は、周辺認識ECU52やエアコンECU56,駆動UECU60、ブレーキUEC64、操舵ECU68、ナビゲーションシステム80と通信しており、各種情報のやりとりを行なっている。
【0031】
メイン電子制御ユニット30は、アクセルポジションセンサ36からのアクセル開度や車速センサ40からの車速に基づいて要求駆動力や要求パワーを設定し、車両に要求駆動力や要求パワーが駆動装置62から出力されるように駆動ECU60に駆動制御信号を送信する。
【0032】
メイン電子制御ユニット30は、自動運転スイッチ48により自動運転の実行が指示されると、運転者嗜好モードが選択され、設定された前方車両との車間距離、加減速程度、車線変更程度、走行車線に基づいて自動運転が行なわれる。例えば、周辺認識装置54により第1所定距離(例えば200mや300mなど)内に前方車両が確認されていないときには、法定速度内の車速で走行するように駆動ECU60、ブレーキECU64、操舵ECU68に制御信号を送信し、周辺認識装置54により第1所定距離内に前方車両が確認されているときには、設定した車速の範囲内で前方車両との車間距離で走行したり、前方車両を車線変更して追い越したりするように駆動ECU60、ブレーキECU64、操舵ECU68に制御信号を送信する。
【0033】
メイン電子制御ユニット30は、ACCスイッチ50によりアクティブクルーズコントロールの実行が指示されると、設定された車速や前方車両との車間距離等に基づいてアクティブクルーズコントロールが行なわれる。例えば、周辺認識装置54により第1所定距離(例えば200mや300mなど)内に前方車両が確認されていないときには、ACCスイッチ50により設定された車速で走行するように駆動ECU60およびブレーキECU64に制御信号を送信し、周辺認識装置54により第1所定距離内に前方車両が確認されているときには、ACCスイッチ50により設定された車速の範囲内で設定された前方車両との車間距離で前方車両に追従するように駆動ECU60およびブレーキECU64に制御信号を送信する。
【0034】
次に、こうして構成された自動車20の動作、特に走行経路上や自車両の周囲に交通を妨げる障害が発生したときの動作について説明する。なお、走行経路としては、目的地が設定されているときには現在地から目的地までの経路が該当し、目的地が設定されていないときには車両の進行方向での右左折を含む一定の範囲(例えば5kmや10kmなど)までの経路も該当する。
図2は、メイン電子制御ユニット30により実行される交通障害表示処理の一例を示すフローチャートである。
【0035】
交通障害表示処理が実行されると、メイン電子制御ユニット30は、まず、DCM86を介して交通情報管理センタ-100から走行経路上や自車両の周囲の道路交通情報と他車両の情報とを受信する(ステップS100)。続いて、受信した道路交通情報に基づいて走行経路上や自車両の周囲に交通を妨げる障害が生じているか否かを判定する(ステップS110)。交通を妨げる障害としては、渋滞や事故、落下物、交通規制、スリップしやすい路面状態などを挙げることができる。走行経路上や自車両の周囲に交通を妨げる障害が生じていないと判定したときには、障害の表示等は不要であるから本処理を終了する。
【0036】
ステップS110で走行経路上や自車両の周囲に交通を妨げる障害が生じていると判定したときには、その障害の発生に関する道路交通情報(交通障害情報)と他車両の情報とに基づいてその交通障害情報の生成に関与した他車両の情報に係る他車両の台数(関与台数)を取得する(ステップS120)。続いて、関与台数に基づいて交通障害に起因する渋滞の末尾位置に対するマージンαを設定する(ステップS130)。マージンαは、関与台数に基づく渋滞の末尾位置の適正性(確からしさ)を距離として示すものであり、実際の渋滞の末尾位置として交通障害情報による渋滞の末尾位置からその値(マージンαの距離)を加えた範囲内となる範囲を与えるものである。このため、マージンαは、関与台数が多いほど小さな距離となるように、逆に関与台数が少ないほど大きな距離となるように設定される。即ち、関与台数が多いときには交通障害情報の生成には多くの他車両の情報が用いられていることから交通障害情報の適正性は高いと判断され、交通障害に起因する渋滞の末尾位置も適正性が高いと判断されてマージンαは小さな距離として設定される。一方、関与台数が少ないときには交通障害情報の生成には少しの他車両の情報しか用いていないことから交通障害情報の適正性は低いと判断され、交通障害に起因する渋滞の末尾位置も適正性が低いと判断されてマージンαは大きな距離として設定されるのである。
【0037】
こうしてマージンαを設定すると、交通障害に起因する渋滞の末尾位置からマージンαだけの距離を渋滞の加飾画像(例えば赤い太実線の画像)に対して異なる加飾画像(例えば赤い太破線の画像)としてセンターディスプレイ72に表示すると共に交通障害に起因する渋滞の加飾画像の近傍に関与台数に関する情報(関与台数画像)をセンターディスプレイ72に表示する(ステップS140)。
図3は、センターディスプレイ72にナビゲーション用の地図情報の画像と共に渋滞の加飾画像とマージンαの加飾画像と関与台数画像とを表示した画面の一例を示す説明図である。図中、破線の円に囲まれた鏃印は自車両マーク110であり、自車両マーク110の進行方向前方の道路上の太実線(例えば赤色の太実線)は渋滞の加飾画像120であり、渋滞の加飾画像120の末尾から自車両マーク110側に延出する太破線(例えば赤色の太破線)はマージンαの加飾画像122であり、加飾画像120および加飾画像122の近傍に表示された数値は関与台数画像124である。このように、ナビゲーション用の地図情報の画像に渋滞の加飾画像120とマージンαの加飾画像122と関与台数画像124とを表示することにより、走行経路や自車両の周囲で生じた交通を妨げる障害に関する情報(交通障害情報)の生成に関与した他車両の台数を情報の根拠の一部として運転者に知らせることができ、運転者に交通障害情報に関与した他車両の台数(関与台数)を把握させることができる。
【0038】
続いて、自車両を適度な減速度を用いて低減して直ちに停止できる程度の徐行の状態とするのに必要な距離(減速制御距離)をマージンβとして計算し(ステップS150)、渋滞の末尾位置からマージンαの距離とマージンβの距離を自車両側に加えた位置を減速制御開始位置として設定し(ステップS160)、本処理を終了する。マージンβは、その道路の法定速度に応じて設定するものとしたり、自車両の車速が大きいほど長くなるように設定するものとしてもよい。
図4は、交通障害としての渋滞とマージンαとマージンβの一例を模式的に示す説明図である。図中、自車両の自動車20と2台の他車両112は自車両の情報や他車両の情報を交通情報管理センター100と通信により授受する車両であり、他の複数台の他車両114は自車両の情報や他車両の情報については交通情報管理センター100と通信していない車両である。この場合、関与台数は2台となり、この関与台数に応じてマージンαが設定される。また、自車両の車速や法定速度などからマージンβが設定され、渋滞の末尾位置からマージンαの距離とマージンβの距離を自車両側に加えた位置を減速制御開始位置として設定する。なお、ステップS160で減速制御開始位置が設定されると、自車両が減速制御開始位置に至ったときに減速制御が開始される。減速制御は、適度な減速力により自動車20が減速するように駆動ECU62による駆動装置62の駆動制御とブレーキECU64によるブレーキ装置66の駆動制御とにより実現することができる。
【0039】
以上説明した実施例の自動車20では、走行経路上や自車両の周囲に交通を妨げる障害が生じているときには、その障害の発生に関する交通障害情報と他車両の情報とに基づいてその交通障害情報の生成に関与した他車両の情報に係る他車両の台数(関与台数)の画像(関与台数画像124)をセンターディスプレイ72にナビゲーション用の地図情報の画像に渋滞の加飾画像120と共に渋滞の加飾画像120の近傍となるように表示する。これにより、走行経路や自車両の周囲で生じた交通を妨げる障害に関する情報(交通障害情報)の生成に関与した他車両の台数を情報の根拠の一部として運転者に知らせることができる。
【0040】
実施例の自動車20では、交通障害情報の生成に関与した他車両の情報に係る他車両の台数(関与台数)に応じてマージンαを設定し、交通障害に起因する渋滞の末尾位置からマージンαだけの距離を渋滞の加飾画像120に対して点線など異なる加飾画像122としてセンターディスプレイ72に表示する。これにより、渋滞の末尾位置に対する適正性(確からしさ)をマージンαの加飾画像122により運転者に知らせることができる。
【0041】
実施例の自動車20では、自車両を適度な減速度を用いて低減して直ちに停止できる程度の徐行の状態とするのに必要な距離(減速制御距離)をマージンβとして計算し、渋滞の末尾位置からマージンαの距離とマージンβの距離を自車両側に加えた位置を減速制御開始位置として設定し、自動車20が減速制御開始位置に至ったときに減速制御を開始する。これにより、渋滞の末尾位置からマージンαの距離までに、自車両を適度な減速度を用いて低減して直ちに停止できる程度の徐行の状態とすることができる。この結果、交通を妨げる障害に起因する渋滞などに対してより適正に減速することができる。
【0042】
実施例の自動車20では、関与台数画像として関与台数(その数値)を渋滞の加飾画像120の近傍となるように表示するものとした。しかし、関与台数画像は、関与台数に応じて指示的な画像でもよく、例えば関与台数が多くなるほど長さが長くなる棒グラフの本数が増える画像などとしてもよい。
【0043】
実施例の自動車20では、メイン電子制御ユニット30や周辺認識ECU52、駆動ECU60、ブレーキECU64、操舵ECU68などの複数の電子制御ユニットにより各装置を制御するものとしたが、単一の電子制御ユニットで各装置を制御するものとしたり、これらの一部を兼ねる複数の電子制御ユニットを用いて各装置を制御するものとしてもよい。
【0044】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、交通情報管理センター100が「交通情報管理センター」に相当し、メイン電子制御ユニット30やナビゲーションシステム80、DCM86が「交通情報取得装置」に相当し、センターディスプレイ72が「表示装置」に相当し、メイン電子制御ユニット30が「制御装置」に相当する。
【0045】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0046】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
20 自動車、30 メイン電子制御ユニット、32 イグニッションスイッチ、34 シフトポジションセンサ、36 アクセルポジションセンサ、38 ブレーキポジションセンサ、40 車速センサ、42 加速度センサ、44 勾配センサ、46 ヨーレートセンサ、48 自動運転スイッチ、50、アクティブクルーズコントロールスイッチ(ACCスイッチ)、52 周辺認識用電子制御ユニット(周辺認識ECU)、54 周辺認識装置、55 室内カメラ、56 空調装置用電子制御ユニット(エアコンECU)、58 空調装置、60 駆動装置用電子制御ユニット(駆動ECU)、62 駆動装置、64 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、66 ブレーキ装置、68 操舵用電子制御ユニット(操舵ECU)、70 操舵装置、72 センターディスプレイ、74 ヘッドアップディスプレイ、76 メーター、78 GPS、80 ナビゲーションシステム、82 地図情報、84 表示部、86 DCM、90 停止予定位置、100 交通情報管理センター、110 自車両のマーク、112 他車両、114 他車両、120 渋滞の加飾画像、122 マージンαの加飾画像、124 関与台数画像。