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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】レーザ発光装置および光測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/484 20060101AFI20240820BHJP
   H01S 5/042 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G01S7/484
H01S5/042 630
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021140693
(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公開番号】P2023034444
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 正人
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/068837(WO,A1)
【文献】特開平05-160485(JP,A)
【文献】特開2019-068528(JP,A)
【文献】特開2021-019194(JP,A)
【文献】特開2016-127214(JP,A)
【文献】特表2020-506399(JP,A)
【文献】米国特許第09368936(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51,
G01S 17/00-17/95,
H01S 5/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源(V1)により供給される直流電圧を昇圧する昇圧回路(11)であって、コイル(L1)と第1ダイオード(D1)とが直列に接続された第1直列接続体(DC1)と、前記コイルの通電・非通電を切り替えるための第1スイッチ(Q1)と、コンデンサ(C1)と、を有する昇圧回路と、
前記昇圧回路により昇圧された電圧が供給されるレーザダイオード(LD)と、前記レーザダイオードの通電・非通電を切り替えるための第2スイッチ(Q2)と、を有する駆動回路(12)と、
前記第1スイッチと直列に接続される第2ダイオード(D2)であって、前記直流電源に対して順方向接続される第2ダイオードと、
前記昇圧回路と前記駆動回路とを制御する発光駆動部(13)と、を備え、
前記第1直列接続体の一端は前記直流電源の正極に接続されており、前記第1ダイオードは前記直流電源に対して順方向接続されており、
前記第1直列接続体の他端と、前記直流電源の負極との間に、前記第1スイッチと前記第2ダイオードとが接続されている、レーザ発光装置(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ発光装置であって
記発光駆動部は、
前記コンデンサを充電するための第1ステップ(S1)であって、前記第2スイッチに駆動オフ信号(SDF)を出力している期間に、前記第1スイッチに第1昇圧オン信号(SBN1)を出力した後、第1昇圧オフ信号(SBF1)を出力する第1ステップと、
前記レーザダイオードを発光させるための第2ステップ(S2)であって、前記第1スイッチに第2昇圧オフ信号(SBF2)を出力している期間に、前記第2スイッチに第1駆動オン信号(SDN1)を出力する第2ステップと、を単位期間(UP)内に、それぞれ1回実行する、レーザ発光装置。
【請求項3】
直流電源(V1)により供給される直流電圧を昇圧する昇圧回路(11)であって、コイル(L1)と、前記コイルの通電・非通電を切り替えるための第1スイッチ(Q1)と、前記直流電源に対して順方向接続される第1ダイオード(D1)と、コンデンサ(C1)と、を有する昇圧回路と、
前記昇圧回路により昇圧された電圧が供給されるレーザダイオード(LD)と、前記レーザダイオードの通電・非通電を切り替えるための第2スイッチ(Q2)と、を有する駆動回路(12)と、
前記第1スイッチと直列に接続される第2ダイオード(D2)であって、前記直流電源に対して順方向接続される第2ダイオードと、
前記昇圧回路と前記駆動回路とを制御する発光駆動部(13)と、を備え、
前記コイルと前記第1ダイオードのアノードとの接続点と、前記直流電源の負極との間に、前記第1スイッチと前記第2ダイオードとが接続されており、
前記発光駆動部は、
前記コンデンサを充電するための第1ステップ(S1)であって、前記第2スイッチに駆動オフ信号(SDF)を出力している期間に、前記第1スイッチに第1昇圧オン信号(SBN1)を出力した後、第1昇圧オフ信号(SBF1)を出力する第1ステップを単位期間(UP)内に少なくとも1回実行し、
前記レーザダイオードを発光させるための第2ステップ(S2)であって、前記第1スイッチに第2昇圧オフ信号(SBF2)を出力している期間に、前記第2スイッチに第1駆動オン信号(SDN1)を出力する第2ステップを前記単位期間内に1回実行する、レーザ発光装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のレーザ発光装置であって、さらに、
前記レーザダイオードに並列接続される第2直列接続体(DC2)であって、前記レーザダイオードのカソードからアノードに向けて電流を流す整流作用を有する整流部(D3)と、抵抗(R1)とが直列に接続された第2直列接続体を有する、レーザ発光装置。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ発光装置であって、
前記整流部は、トランジスタの逆導通部である、レーザ発光装置。
【請求項6】
直流電源(V1)により供給される直流電圧を昇圧する昇圧回路(11)であって、コイル(L1)と第1ダイオード(D1)とが直列に接続された第1直列接続体(DC1)と、前記コイルの通電・非通電を切り替えるための第1スイッチ(Q1)と、コンデンサ(C1)と、を有する昇圧回路と、前記昇圧回路により昇圧された電圧が供給されるレーザダイオード(LD)と、前記レーザダイオードの通電・非通電を切り替えるための第2スイッチ(Q2)と、を有する駆動回路(12)と、前記第1スイッチと直列に接続される第2ダイオード(D2)であって、前記直流電源に対して順方向接続される第2ダイオードと、前記昇圧回路と前記駆動回路とを制御する発光駆動部(13)と、を備え、前記第1直列接続体の一端は前記直流電源の正極に接続されており、前記第1ダイオードは前記直流電源に対して順方向接続されており、前記第1直列接続体の他端と、前記直流電源の負極との間に、前記第1スイッチと前記第2ダイオードとが接続されている、レーザ発光装置(10)と、
前記レーザダイオードから発光されたレーザ光(IL)が対象物(OB)により反射された反射光(RL)を受光する受光部(30)と、
前記レーザ光が発光されてから前記反射光が受光されるまでの時間を用いて前記対象物までの距離を算出する算出部(62)と、を備える、光測距装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ発光装置および光測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を対象物に向けて照射して、対象物からの反射光を受光し、照射から受光までの時間を計測することで、対象物までの距離を測定する測距装置が知られている。測距性能を向上させるためには、高出力のレーザ光を照射することが求められる。そして、高出力のレーザ光を照射させるためには、レーザ光を発光するレーザダイオードに高い電圧を印加する必要がある。レーザダイオードに高い電圧を印加するために、昇圧回路を用いることが考えられる。特許文献1には、チョッパ昇圧回路を備えるレーザ発光装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-114338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザダイオードに短時間で大電流を流すと、配線の寄生インダクタンスにより、レーザダイオードが目標とする発光の後に、意図せず発光する場合がある。チョッパ昇圧回路が有するコイルの通電・非通電を切り替えるためのスイッチ用トランジスタのボディダイオードにより、レーザダイオードに電流が流れる経路が形成されるためである。レーザダイオードが意図せず発光すると測距精度が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の第1の形態によれば、レーザ発光装置(10)が提供される。このレーザ発光装置は、直流電源(V1)により供給される直流電圧を昇圧する昇圧回路(11)であって、コイル(L1)と第1ダイオード(D1)とが直列に接続された第1直列接続体(DC1)と、前記コイルの通電・非通電を切り替えるための第1スイッチ(Q1)と、コンデンサ(C1)と、を有する昇圧回路と、前記昇圧回路により昇圧された電圧が供給されるレーザダイオード(LD)と、前記レーザダイオードの通電・非通電を切り替えるための第2スイッチ(Q2)と、を有する駆動回路(12)と、前記第1スイッチと直列に接続される第2ダイオード(D2)であって、前記直流電源に対して順方向接続される第2ダイオードと、前記昇圧回路と前記駆動回路とを制御する発光駆動部(13)と、を備え、前記第1直列接続体の一端は前記直流電源の正極に接続されており、前記第1ダイオードは前記直流電源に対して順方向接続されており、前記第1直列接続体の他端と、前記直流電源の負極との間に、前記第1スイッチと前記第2ダイオードとが接続されている。
【0007】
この形態のレーザ発光装置によれば、レーザ発光装置において、配線の寄生インダクタンスにより発生する、目標の発光の後に、意図せず発光する場合の電流経路の電流の流れる向きに対して、第2ダイオードは、逆方向に接続されている。このため、第2ダイオードにより、電流経路における電流の流れは遮られるため、レーザダイオードの意図しない発光を抑制することができる。よって、測距精度の低下を抑制することができる。
【0008】
本開示の第2の形態によれば、光測距装置(100)が提供される。この光測距装置は、直流電源(V1)により供給される直流電圧を昇圧する昇圧回路(11)であって、コイル(L1)と第1ダイオード(D1)とが直列に接続された第1直列接続体(DC1)と、前記コイルの通電・非通電を切り替えるための第1スイッチ(Q1)と、コンデンサ(C1)と、を有する昇圧回路と、前記昇圧回路により昇圧された電圧が供給されるレーザダイオード(LD)と、前記レーザダイオードの通電・非通電を切り替えるための第2スイッチ(Q2)と、を有する駆動回路(12)と、前記第1スイッチと直列に接続される第2ダイオード(D2)であって、前記直流電源に対して順方向接続される第2ダイオードと、前記昇圧回路と前記駆動回路とを制御する発光駆動部(13)と、を備え、前記第1直列接続体の一端は前記直流電源の正極に接続されており、前記第1ダイオードは前記直流電源に対して順方向接続されており、前記第1直列接続体の他端と、前記直流電源の負極との間に、前記第1スイッチと前記第2ダイオードとが接続されている、レーザ発光装置(10)と、前記レーザダイオードから発光されたレーザ光(IL)が対象物(OB)により反射された反射光(RL)を受光する受光部(30)と、前記レーザ光が発光されてから前記反射光が受光されるまでの時間を用いて前記対象物までの距離を算出する算出部(62)と、を備える。
【0009】
この形態の光測距装置によれば、レーザダイオードの意図しない発光が抑制されたレーザ発光装置を用いることにより、測距精度が向上した光測距装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】光測距装置の構成を示す図。
図2】レーザ発光装置の回路構成を示す図。
図3】2次発光を説明するための昇圧回路および駆動回路の等価回路図。
図4】発光処理のタイミングチャート。
図5】第2実施形態に係るレーザ発光装置の回路構成を示す図。
図6】第3実施形態に係るレーザ発光装置の回路構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.第1実施形態:
A1.光測距装置の構成:
図1に示す光測距装置100は、レーザ光ILを発光し、対象物OBによって反射された反射光RLを受光することによって、対象物OBまでの距離を検出する。光測距装置100は、例えば、車両に搭載されて用いられる。本実施形態において、光測距装置100は、LiDAR(Light Detection And Ranging)である。光測距装置100は、レーザ発光装置10と、走査部20と、受光部30と、制御部60とを備える。レーザ発光装置10は、測距のためのレーザ光ILを発光する。
【0012】
制御部60は、CPUおよびメモリを備えるコンピュータとして構成されている。制御部60は、レーザ発光装置10と、走査部20と、受光部30との動作を制御する。制御部60は、さらに、算出部62を備える。算出部62は、対象物OBまでの距離を算出する。算出部62は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することにより実現されてもよく、電子回路により実現されてもよい。
【0013】
レーザ発光装置10は、パルス状のレーザ光ILを発光する後述のレーザダイオードLDを備える。レーザダイオードLDから発せられたレーザ光ILは、図示しないコリメートレンズにより平行光にされ、走査部20に入る。
【0014】
走査部20は、予め定められた測定範囲MR内でレーザ光ILを走査する。走査部20は、レーザ光ILを反射するミラー21と、ミラー21を駆動する図示しないロータリソレノイドとを備える。ロータリソレノイドが、予め定められた角度範囲内で正転および逆転を繰り返すことにより、レーザ光ILは、測定範囲MR内で走査される。
【0015】
受光部30は、レーザダイオードLDから発光されたレーザ光ILが対象物OBにより反射された反射光RLを受光する。受光部30は、受光した光の強度に応じた検出信号を算出部62に出力する。
【0016】
算出部62は、受光部30から入力された検出信号を用いて、対象物OBまでの距離を算出する。具体的には、算出部62は、レーザ光ILが発光されてから反射光RLが受光されるまでの時間である飛行時間(TOF:Time of Flight)を用いて、対象物OBまでの距離を算出する。
【0017】
A2.レーザ発光装置の回路構成:
図2に示すように、レーザ発光装置10は、直流電源V1と、昇圧回路11と、駆動回路12と、第2ダイオードD2と、発光駆動部13とを有する。昇圧回路11は、直流電源V1により供給される直流電圧を昇圧する。昇圧回路11は、コイルL1と、第1ダイオードD1と、第1スイッチQ1と、コンデンサC1とを有する。第1スイッチQ1は、コイルL1の通電・非通電を切り替える。第1ダイオードD1は、直流電源V1に対して順方向接続されている。本実施形態では、コイルL1と第1ダイオードD1とが直列に接続されて、第1直列接続体DC1を構成している。本実施形態では、コイルL1および第1ダイオードD1は、直流電源V1の正極から負極に向かってコイルL1、第1ダイオードD1の順に接続されている。第1直列接続体DC1の一端は、直流電源V1の正極に接続されている。第1直列接続体DC1の他端と、直流電源V1の負極との間に、コンデンサC1が接続されている。
【0018】
第2ダイオードD2は、第1スイッチQ1と直列に接続されると共に、直流電源V1に対して順方向接続されている。本実施形態では、第2ダイオードD2と、第1スイッチQ1とが直列に接続された接続体が、コンデンサC1に並列接続されている。つまり、第1直列接続体DC1の他端と、直流電源V1の負極との間に、第2ダイオードD2と第1スイッチQ1とが接続されている。本実施形態では、第2ダイオードD2および第1スイッチQ1は、直流電源V1の正極から負極に向かって、第2ダイオードD2、第1スイッチQ1の順に接続されている。
【0019】
駆動回路12は、昇圧回路11により昇圧された電圧が供給されるレーザダイオードLDと、レーザダイオードLDの通電・非通電を切り替えるための第2スイッチQ2とを有する。具体的には、レーザダイオードLDと、第2スイッチQ2とが直列に接続された接続体が、コンデンサC1に並列接続されている。本実施形態では、第2スイッチQ2およびレーザダイオードLDは、直流電源V1の正極から負極に向かって第2スイッチQ2、レーザダイオードLDの順に接続されている。直流電源V1の負極は、グランドに接続されている。発光駆動部13は、電子回路により実現されており、昇圧回路11と駆動回路12とを制御する。
【0020】
本実施形態において、第2スイッチQ2および第1スイッチQ1は、NチャネルIGFET(Insulated Gate Field Effect Transistor)である。第1スイッチQ1のゲートには、発光駆動部13から出力される第1ゲート信号SG1が入力される。第2スイッチQ2のゲートには、発光駆動部13から出力される第2ゲート信号SG2が入力される。
【0021】
後述するように、第1スイッチQ1により、コイルL1の導通・非導通が切り替えられることにより、コンデンサC1の電圧であるコンデンサ電圧VCは、直流電源V1の直流電圧よりも高くなる。そして、第2スイッチQ2がオン状態となることにより、コンデンサC1に蓄積された電荷がレーザダイオードLDに供給され、レーザダイオードLDは発光する。
【0022】
他の実施形態として、コイルL1および第1ダイオードD1は、直流電源V1の正極から負極に向かって第1ダイオードD1、コイルL1の順に接続されてもよい。第2スイッチQ2およびレーザダイオードLDは、直流電源V1の正極から負極に向かってレーザダイオードLD、第2スイッチQ2の順に接続されてもよい。第2ダイオードD2および第1スイッチQ1は、直流電源V1の正極から負極に向かって、第1スイッチQ1、第2ダイオードD2の順に接続されてもよい。第2スイッチQ2および第1スイッチQ1は、IGFET以外のFET(Field Effect Transistor)でもよい。IGFET以外のFETとして、例えば、窒化ガリウム(GaN)を用いたHEMT(High Electron Mobility Transistor)を挙げることができる。なお、HEMTは、HFET(Heterostructure Field-Effect Transistor)とも呼ばれる。さらに、第1スイッチQ1および第2スイッチQ2は、バイポーラトランジスタでもよく、集積回路により構成されてもよい。第1スイッチQ1および第2スイッチQ2は、PチャネルIGFETでもよい。なお、第1スイッチQ1がPチャネルIGFETの場合、第2ダイオードD2および第1スイッチQ1は、直流電源V1の正極から負極に向かって、第1スイッチQ1、第2ダイオードD2の順に接続するとよい。
【0023】
図3に示すように、レーザ発光装置10の各素子を接続する配線には、寄生インダクタンスLpがある。また、第2スイッチQ2および第1スイッチQ1は、IGFETであるためボディダイオードDbが形成されている。このため、レーザ発光装置10が第2ダイオードD2を有さない場合には、レーザダイオードLD、第1スイッチQ1のボディダイオードDb、オン状態の第2スイッチQ2を通る電流経路CPが形成される。したがって、レーザダイオードLDを発光させるために第2スイッチQ2がオン状態となった後、コンデンサC1に蓄積されていた電荷が無くなるのに伴い、レーザダイオードLDを通る電流の流れが無くなると、急激な電流変化に伴い、寄生インダクタンスLpの電磁誘導により、電流経路CPに電流が流れる。電流経路CPに電流が流れると、目標の発光の後に、意図しない発光が行われる。目標の発光を1次発光とも呼ぶのに対して、この意図しない発光を2次発光とも呼ぶ。2次発光は、1次発光に対してレーザダイオードLDに流れる電流は小さい。そこで、本実施形態では、電流経路CPに、レーザダイオードLDが発光する電流の流れとは逆向きに第2ダイオードD2が挿入されている。これにより、2次発光を抑制することができる。なお、2次発光を抑制するために、電流経路CPにダンピング抵抗を挿入する方法も考えられる。しかし、この場合、昇圧動作において流れる電流が大きいため、以下の課題が生じ得る。例えば、ダンピング抵抗による発熱が課題となる。電流値に応じて、複数のダンピング抵抗を配置する必要が生じ、体格が大きくなってしまう点が課題となる。ダンピング抵抗が焼損した場合には、キックバックにより第1スイッチQ1が波及故障する課題がある。この点、本実施形態によれば、ダンピング抵抗を挿入することによる課題を回避することができる。
【0024】
A3.レーザ発光装置の駆動方法:
発光駆動部13は、制御部60が行う対象物OBまでの距離を測定する測距処理に合わせて、図4に示す発光処理を行う。発光駆動部13は、第1ステップS1にて、第2スイッチQ2に、駆動オフ信号SDFを出力している期間に、第1スイッチQ1に第1昇圧オン信号SBN1を出力した後、第1スイッチQ1に第1昇圧オフ信号SBF1を出力する。
【0025】
第1ステップS1では、具体的には、第2スイッチQ2のゲートには、時刻t1から時刻t3まで、駆動オフ信号SDFとしてのロウレベルLの第1ゲート信号SG1が入力される。そして、第1スイッチQ1のゲートには、時刻t1から時刻t2まで、第1昇圧オン信号SBN1としてのハイレベルHの第2ゲート信号SG2が入力された後、時刻t2から時刻t3まで、第1昇圧オフ信号SBF1としてのロウレベルLの第2ゲート信号SG2が入力される。
【0026】
時刻t1から時刻t2までの期間では、第1スイッチQ1はオン状態となるため、コイルL1に電流が流れる。そして、時刻t2で、第1スイッチQ1がオフ状態となると、第1スイッチQ1を通る電流経路は遮断されるため、コイルL1のインダクタンスに応じて、コイルL1に電流が流れる。また、コンデンサC1には、コイルL1を流れる電流により電荷が蓄積されるため、コンデンサ電圧VCは、直流電源V1の直流電圧よりも高い目標電圧Vaまで上昇する。
【0027】
発光駆動部13は、第2ステップS2にて、第1スイッチQ1に第2昇圧オフ信号SBF2を出力している期間に、第2スイッチQ2に第1駆動オン信号SDN1を出力する。
【0028】
第2ステップS2では、具体的には、時刻t3から時刻t4まで、第1スイッチQ1には、第2昇圧オフ信号SBF2としてのロウレベルLの第1ゲート信号SG1が出力される。そして、第2スイッチQ2には、第1駆動オン信号SDN1としてのハイレベルHの第2ゲート信号SG2が出力される。時刻t3にて、第2スイッチQ2がオン状態となると、レーザダイオードLDには、目標電圧Vaに応じた電圧が印加される。
【0029】
コンデンサC1に蓄積された電荷は、オン状態の第2スイッチQ2およびレーザダイオードLDを介してグランドに流れる。これに伴い、レーザダイオードLDは、コンデンサC1に蓄積された電荷に応じた期間、発光する。これにより、レーザダイオードLDは、パルス状のレーザ光ILを発光する。コンデンサC1は、放電され、コンデンサ電圧VCは、0Vとなる。レーザダイオードLDに流れる電流は、10A以上、100A以下程度である。パルス幅は、1ns以上10ns以下程度である。光出力は、数10W以上、数100W以下程度である。
【0030】
第3ステップS3では、発光駆動部13は、時刻t4から時刻t5まで、第1スイッチQ1のゲートにハイレベルHの第1ゲート信号SG1を出力すると共に、第2スイッチQ2にハイレベルHの第2ゲート信号SG2が出力される。これにより、第2スイッチQ2および第1スイッチQ1は共にオン状態となる。第1ステップS1から第3ステップS3までが、単位期間UP内に行われる。制御部60が測距処理を終了するまで、第1ステップS1~第3ステップS3が繰り返し行われる。単位期間UPは、数μs程度である。
【0031】
以上説明した第1実施形態によれば、レーザ発光装置10は、昇圧回路11と、昇圧回路11により昇圧された電圧が供給されるレーザダイオードLDを有する駆動回路12と、第2ダイオードD2と、昇圧回路11と駆動回路12とを制御する発光駆動部13とを備える。第2ダイオードD2は、昇圧回路11が有する第1スイッチQ1に直列に接続されている。レーザ発光装置10の配線の寄生インダクタンスLpにより発生する、目標の発光の後に発光する2次発光の電流経路CPにおける電流の流れる向きに対して、第2ダイオードD2は、逆方向に接続されている。このため、2次発光を生じさせる電流経路CPにおける電流の流れは第2ダイオードD2により遮られるため、レーザダイオードLDのニ次発光を抑制することができる。よって、レーザ発光装置10の測距性能を向上させることができる。
【0032】
第1スイッチQ1と第2ダイオードD2とは、コイルL1と第1ダイオードD1とが直列に接続された第1直列接続体DC1の他端と、直流電源V1の負極との間に接続されている。発光駆動部13は、コンデンサC1を充電するための第1ステップS1と、レーザダイオードLDを発光させるための第2ステップS2とを単位期間UP内に、それぞれ1回実行する。第1ステップS1にて、発光駆動部13は、第2スイッチQ2に駆動オフ信号SDFを出力している期間に、第1スイッチQ1に第1昇圧オン信号SBN1を出力した後、第1昇圧オフ信号SBF1を出力する。第2ステップS2では、発光駆動部13は、第1スイッチQ1に第2昇圧オフ信号SBF2を出力している期間に、第2スイッチQ2に第1駆動オン信号SDN1を出力する。これにより、第1ステップS1により、コンデンサ電圧VCを昇圧させることができる。そして、第2ステップS2では、第2スイッチQ2がオン状態とされることにより、コンデンサC1の電荷はレーザダイオードLDに流れ、レーザダイオードLDを発光させることができる。
【0033】
光測距装置100は、レーザダイオードLDから発光されたレーザ光ILが対象物OBにより反射された反射光RLを受光する受光部30と、レーザ光ILが発光されてから反射光RLが受光されるまでの時間を用いて対象物OBまでの距離を算出する算出部62とを備える。2次発光を抑制したレーザ発光装置10を用いることにより、測距精度が向上した光測距装置100を提供することができる。
【0034】
B.第2実施形態:
図5に示すように、第2実施形態に係るレーザ発光装置10では、第1スイッチQ1および第2ダイオードD2の接続位置が、第1実施形態とは異なる。具体的には、第1スイッチQ1と第2ダイオードD2は、コイルL1と第1ダイオードD1との接続点と、直流電源V1の負極との間に接続されている。その他の回路構成は、第1実施形態と同様であるため、同じ構成には同じ符号を付し、説明は省略する。
【0035】
他の実施形態として、第2スイッチQ2およびレーザダイオードLDは、直流電源V1の正極から負極に向かってレーザダイオードLD、第2スイッチQ2の順に接続されてもよい。第2ダイオードD2および第1スイッチQ1は、直流電源V1の正極から負極に向かって、第1スイッチQ1、第2ダイオードD2の順に接続されてもよい。
【0036】
本実施形態でも、レーザ発光装置10は、第1実施形態に係る駆動方法と同じ駆動方法により駆動される。他の実施形態として、単位期間UPにおいて、第1ステップS1が複数回実行された後に、第2ステップS2が実行されてもよい。この場合、複数の第1ステップS1の実行により、コンデンサ電圧VCは、目標電圧Vaにまで昇圧される。
【0037】
以上説明した第2実施形態によれば、第1スイッチQ1と第2ダイオードD2とは、昇圧回路11のコイルL1と昇圧回路11の第1ダイオードD1との接続点と、直流電源V1の負極との間に接続されている。発光駆動部13は、単位期間UP内に、コンデンサC1を充電するための第1ステップS1を少なくとも1回実行し、レーザダイオードLDを発光させるための第2ステップS2を1回実行する。これにより、第1ステップS1により、コンデンサ電圧VCを昇圧させることができる。そして、第2ステップS2では、第2スイッチQ2がオン状態とされることにより、コンデンサC1の電荷はレーザダイオードLDに流れ、レーザダイオードLDを発光させることができる。
【0038】
C.第3実施形態:
図6に示すように、第3実施形態に係るレーザ発光装置10は、レーザダイオードLDに並列接続される第2直列接続体DC2を有する点が第1実施形態に係るレーザ発光装置10と異なる。その他の回路構成は、第1実施形態と同様であるため、同じ構成には同じ符号を付し、説明は省略する。第2直列接続体DC2は、整流部としての第3ダイオードD3と、抵抗R1とが直列に接続されて構成されている。本実施形態では、レーザダイオードLDのアノードに抵抗R1の一端が接続されている。抵抗R1の他端に第3ダイオードD3のカソードが接続されている。第3ダイオードD3のアノードは、レーザダイオードLDのカソードと接続されている。第3ダイオードD3は、レーザダイオードLDのカソードからアノードに向けて電流を流す整流作用を有する。第2直列接続体DC2を有することにより、レーザダイオードLDの2次発光の抑制効果を向上させることができる。
【0039】
上記の様に、レーザダイオードLDを発光させるために第2スイッチQ2がオン状態となった後、コンデンサC1に蓄積されていた電荷が無くなるのに伴い、レーザダイオードLDを通る電流の流れが無くなると、寄生インダクタンスLpによりレーザダイオードLDのカソードにサージ電圧が発生する場合がある。そこで、レーザダイオードLDと並列に、かつ逆方向に第3ダイオードD3が接続されていることにより、レーザダイオードLDのカソードへのサージ電圧の印加を回避することができる。さらに、抵抗R1が接続されていることにより、第3ダイオードD3を流れる電流の電流値は制限されるため、レーザダイオードLDの2次発光を抑制することができる。仮に、レーザ発光装置10が抵抗R1を有さない場合、サージ電圧により、第3ダイオードD3およびオン状態の第2スイッチQ2を介して流れた電流により、コンデンサC1が充電されてしまう。そして、コンデンサC1のレーザダイオードLDを介した放電に伴い、レーザダイオードLDが2次発光してしまう。この点、本実施形態では、抵抗R1により、サージ電圧の発生に伴う第3ダイオードD3を通る電流の電流値は制限される。これにより、コンデンサC1の充電は抑制されるため、レーザダイオードLDの2次発光を抑制することができる。
【0040】
他の実施形態として、第3ダイオードD3に代えて、トランジスタに形成された逆導通部が、整流部として用いられてもよい。具体的には、IGFETの場合には、逆導通部として、IGFETのボディダイオートを用いてもよい。また、窒化ガリウム(GaN)を用いたHEMTの場合では、ソースからドレインに電流が流れる内部構造を、逆導通部として用いてもよい。第3ダイオードD3に代えて接続されるトランジスタは、発光駆動部13または制御部60を構成するトランジスタでもよい。
【0041】
以上説明した第3実施形態によれば、レーザ発光装置10は、レーザダイオードLDに並列接続される第2直列接続体DC2を有する。第2直列接続体DC2は、逆方向接続される第3ダイオードD3と、抵抗R1とが直列に接続されて構成されている。よって、第3ダイオードD3が接続されていることにより、寄生インダクタンスLpにより発生するサージ電圧のレーザダイオードLDのカソードへの印加を抑制することができる。さらに、抵抗R1により、サージ電圧によるコンデンサC1の充電は抑制されるため、2次発光を抑制することができる。
【0042】
D.他の実施形態:
本開示は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10…レーザ発光装置、11…昇圧回路、12…駆動回路、13…発光駆動部、30…受光部、62…算出部、100…光測距装置、C1…コンデンサ、D1…第1ダイオード、D2…第2ダイオード、IL…レーザ光、L1…コイル、LD…レーザダイオード、OB…対象物、Q1…第1スイッチ、Q2…第2スイッチ、RL…反射光、V1…直流電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6