(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】材料試験機
(51)【国際特許分類】
G01N 3/04 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
G01N3/04 H
(21)【出願番号】P 2021144733
(22)【出願日】2021-09-06
【審査請求日】2023-12-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的新構造材料等研究開発/熱可塑性CFRPの開発及び構造設計・加工基盤技術の開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 文彬
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-173966(JP,A)
【文献】特開平6-74881(JP,A)
【文献】特開平8-152390(JP,A)
【文献】特開2004-191227(JP,A)
【文献】特開2013-142698(JP,A)
【文献】特開2012-149943(JP,A)
【文献】特開2000-314690(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/174665(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00-3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片の両端部を把持する第1、第2のつかみ具を有する試験機本体を備え、前記第1のつかみ具を駆動して、前記試験片に試験荷重をかける材料試験機であって、
前記試験機本体は、前記第1のつかみ具の外周部に拘束機構を備え、
前記拘束機構は、低摩擦部を備えると共に、前記低摩擦部を前記第1のつかみ具の外周部に接触させて、前記第1のつかみ具の軸ずれを抑制する材料試験機。
【請求項2】
前記第1のつかみ具は、つかみ具本体と、前記つかみ具本体の外周部に螺合されるグリップと、を備え、
前記拘束機構は、前記グリップの外周部に配置される請求項1に記載の材料試験機。
【請求項3】
前記拘束機構は、支持部材を備え、
前記支持部材は、前記第2のつかみ具を固定するテーブルに固定される請求項1または2に記載の材料試験機。
【請求項4】
前記支持部材は、門型である請求項3に記載の材料試験機。
【請求項5】
前記支持部材は、支柱と、前記拘束機構を支持する支持ブロックと、を備え、
前記支持ブロックは、前記支柱に対する支持位置が調節可能に構成される請求項3または4に記載の材料試験機。
【請求項6】
前記試験機本体は、高速引張試験用の助走機構を備える請求項1から5のいずれかに記載の材料試験機。
【請求項7】
前記低摩擦部は、複数の鋼球を備えるリニアブッシュである請求項1から6のいずれかに記載の材料試験機。
【請求項8】
試験片の両端部を把持する第1、第2のつかみ具を有する試験機本体を備え、前記第1のつかみ具を駆動して、前記試験片に試験荷重をかける材料試験機であって、
前記試験機本体は、前記第1のつかみ具が接続された内側ロッドを有する高速引張試験用の助走機構を備え、
前記内側ロッドの外周部に拘束機構を備え、
前記拘束機構は、低摩擦部を備えると共に、前記低摩擦部を前記内側ロッドの外周部に接触させて、前記内側ロッドの軸ずれを抑制する材料試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試験片の両端部を把持する一対のつかみ具を備える材料試験機が知られている(例えば、特許文献1または2参照)。
この種のものでは、一方のつかみ具を駆動して、試験片に引っ張りまたは圧縮の試験荷重をかけて試験を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-94867号公報
【文献】特開2004-191227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、一方のつかみ具を駆動する際に、試験荷重の作用軸が試験片の軸線に対しずれる可能性がある。仮に、作用軸の軸ずれが生じると、再現性の良い試験が困難になるという課題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、再現性の良い試験を可能とする材料試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、試験片の両端部を把持する第1、第2のつかみ具を有する試験機本体を備え、前記第1のつかみ具を駆動して、前記試験片に試験荷重をかける材料試験機であって、前記試験機本体は、前記第1のつかみ具の外周部に拘束機構を備え、前記拘束機構は、低摩擦部を備えると共に、前記低摩擦部を前記第1のつかみ具の外周部に接触させて、前記第1のつかみ具の軸ずれを抑制する材料試験機に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第1のつかみ具の軸ずれを抑制できて、再現性の良い試験を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、材料試験機1の構成を示す。
材料試験機1は、試験機本体2を備える。試験機本体2は、試験対象(例えば、試験片)TPに負荷を与えて材料試験を行う。
試験片TPは、所定の規格に基づいて作成される。
試験対象TPは、各種材料や工業製品の部品又は部材などを含む。
【0009】
試験機本体2は、第1、第2のつかみ具3、4を備える。第1、第2のつかみ具3、4は、試験片TPの両端部を把持する。
第1つかみ具3は、開閉するつかみ歯3a、3bを備える。第2のつかみ具4は、開閉するつかみ歯4a、4bを備える。
【0010】
第2のつかみ具4は、固定具5を介して、テーブル6に固定される。
第1のつかみ具3は、負荷機構により駆動される。
負荷機構としては、電気信号を、物理的運動に変換するボールねじ機構などの機械要素、或いは、油圧式の負荷機構などであってもよい。
【0011】
第1、第2のつかみ具3、4により試験片TPの両端部を把持した後に、第1のつかみ具3が駆動されると、試験片TPに試験荷重が負荷される。
例えば、第1のつかみ具3が、試験片TPを引っ張る方向に駆動されると、試験片TPには、引っ張り試験荷重が負荷される。第1のつかみ具3が、試験片TPを圧縮する方向に駆動されると、試験片TPには、圧縮試験荷重が負荷される。
【0012】
試験機本体2は、試験片TPに負荷された試験荷重を検出する荷重センサ、試験片TPの変位を検出する変位センサなど、各種のセンサを備える。
【0013】
材料試験機1は、制御ユニットを備える。
制御ユニットは、材料試験の試験条件など、各種パラメータの設定操作や、材料試験の実行指示などのユーザ操作を受け付ける。
制御ユニットは、各種情報を表示するディスプレイなどの表示部を備える。
【0014】
制御ユニットは、試験機本体2との間で信号を送受信する機能を備える。
送受信される信号は、試験荷重の検出信号、試験片TPの変位の検出信号、試験プログラムの実行に要する信号など、である。
【0015】
制御ユニットは、コンピュータを備える。
コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリデバイスと、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージ装置と、各種の周辺機器などを接続するためのインターフェース回路と、を備える。
【0016】
プロセッサは、メモリデバイス、または、ストレージ装置に記憶された材料試験の試験プログラムなどを実行する。
【0017】
本実施形態では、第1のつかみ具3が、油圧式の負荷機構7により駆動される。
材料試験機1は、試験片TPの弾性率を測定する引張試験機である。
試験片TPは、樹脂又は金属で構成される。
【0018】
負荷機構7は、シリンダ8と、シリンダ8内を摺動自在なピストン9と、ピストン9に固定されたピストンロッド10と、を備える。
シリンダ8の第1の室8aには、第1油路11が接続されている。
第1油路11には、油圧ポンプ12と、窒素ガスが封入された蓄圧式のアキュムレーター13とが接続されている。
【0019】
シリンダ8の第2の室8bには、第2油路14が接続されている。
第2油路14には、高速サーボ弁15が接続されている。
高速サーボ弁15は、バッファータンク16に接続され、バッファータンク16は、メインタンク17に接続されている。
シリンダ8の上部には、振動、衝撃に強い変位検出機構18が配置されている。
変位検出機構18は、ピストンロッド10を電極とした、容量形変位検出器である。変位検出機構18の出力に基づいて、高速サーボ弁15を制御し、ピストンロッド10の速度制御が可能である。
【0020】
ピストンロッド10の下端には、高速引張試験に適する助走機構20が連結されている。助走機構20には、第1のつかみ具3が連結されている。
助走機構20は、棒状の内側ロッド21と、筒状の外側ロッド22と、を備えている。
外側ロッド22は、ピストンロッド10の下端に固定されている。
【0021】
図2は、試験機本体2の要部を示す図である。
図3は、
図2の第1のつかみ具3の拡大図である。
第1のつかみ具3は、つかみ具本体35と、つかみ具本体35の外周部に螺合されるグリップ31と、を備えている。
グリップ31の内周部には、歯押しねじ33が螺合される。歯押しねじ33の上端には、六角の穴33a(
図3参照)が設けられている。歯押しねじ33とグリップ31との間には、一対のつかみ歯3a、3bが保持されている。
つかみ具本体35は、連結具23により、内側ロッド21の下端部に螺合される。
グリップ31の上部には、試験片TPの変位を検出する上記変位センサ(変位計)51が配置されている。変位センサ51は、導電体からなるパイプ52と、細い棒状の磁性体に巻回されたコイル53とを備える。
【0022】
第2のつかみ具4は、
図2に示すように、つかみ具本体45と、つかみ具本体45の外周部に螺合されるグリップ46と、を備えている。
そして、グリップ46と、つかみ具本体45との間に、一対のつかみ歯4a、4bが保持されている。
つかみ具本体45は、固定具5により、テーブル6に固定されている。
固定具5には、試験片TPに負荷された試験荷重を検出する上記荷重センサ(ロードセル)61が内蔵されている。
【0023】
図1又は
図2に示すように、ピストンロッド10及び外側ロッド22は中空である。ピストンロッド10及び外側ロッド22の内部には、内側ロッド21が配置されている。
内側ロッド21は、各ロッド10、22の中空内を上下方向に摺動自在である。
外側ロッド22の下方域には、下狭まりのテーパ部22aが形成される。また、内側ロッド21の上方域には、上広がりのテーパ部21aが形成される。
【0024】
ピストンロッド10が所定位置まで上昇すると、外側ロッド22のテーパ部22aと、内側ロッド21のテーパ部21aとが係合する。
ピストンロッド10の上昇過程において、外側ロッド22のテーパ部22aと、内側ロッド21のテーパ部21aとが、係合するまでの区間を助走区間Lとする。
【0025】
本実施形態では、第1のつかみ具3の外周部に、拘束機構25が配置されている。
拘束機構25は、第1のつかみ具3のグリップ31の外周部に配置される。
グリップ31は、下方域に真直部31aを備える。拘束機構25は、グリップ31の真直部31aの外周部に配置される。そして、拘束機構25は、真直部31aの外表面に接触して、グリップ31の軸方向以外の移動を拘束し、グリップ31の軸ずれを抑制する。
拘束機構25は、内側ロッド21の上下方向への摺動時に、第1のつかみ具3のグリップ31の軸が前後左右等(グリップ31の径方向)にずれないようにグリップ31を保持する。
【0026】
拘束機構25は、リニアブッシュ26と、リニアブッシュ26を支持する支持部材27とを備える。リニアブッシュ26は、低摩擦部の一例である。
支持部材27は、門型に構成される。
支持部材27は、一対の支柱28と、一対の支柱28の上部を連結する支持ブロック29と、を備える。
したがって、作業性を確保しつつ、リニアブッシュ26の両側からバランスよくリニアブッシュ26を支持することできる。
【0027】
支持ブロック29には、
図3に示すように、開口部29aが形成されている。開口部29aは、上部に段部29bを備えている。開口部29aには、下方から、リニアブッシュ26の上端が、段部29bに当接するまで嵌合されている。
【0028】
リニアブッシュ26は、グリップ31の真直部31aの外径に合わせた内径を備えている。換言すれば、真直部31aの外径は、リニアブッシュ26の内径に合うように形成されている。真直部31aは軸線L0の方向に延びる直円筒状である。
リニアブッシュ26は、外筒26aと、保持器26bと、シール26cと、保持器26bに保持された複数の鋼球26dとを備える。
鋼球26dはグリップ31の真直部31aの外表面に接触し、グリップ31が上下方向に移動する際には、鋼球26dが低摩擦の状態で転がる。
【0029】
本実施形態では、拘束機構25がリニアブッシュ26を備えるため、第1のつかみ具3の側に、リニアブッシュ26のような軸ずれを抑制するための部材を設ける場合に比べて、第1のつかみ具3の構成が簡素化され、第1のつかみ具3が軽量化される。特に、グリップ31はつかみ歯3a、3bを保持する部材であり、グリップ31の外周部に他の部材を介することなく、リニアブッシュ26で拘束する構成であり、第1のつかみ具3の構成が簡素化されている。
したがって、外側ロッド22が高速引張試験の助走区間Lを移動して内側のロッド21に係合する際や、第1のつかみ具3が、ピストン9と共に高速度で移動し試験片TPに引張荷重が作用する際にも、拘束機構25が、軽量化された第1のつかみ具3を高い精度で拘束でき、第1のつかみ具3の軸ずれを効果的に抑制できる。よって、弾性率測定においては、拘束機構25のリニアブッシュ26により、引張荷重が試験片TPに作用し始めた試験初期の軸ずれは、効果的に抑制される。
【0030】
図4は、
図2のIV方向に見た図である。
開口部29aの下部には、ストッパ30がビス止めされる。ストッパ30は、
図4に示すように、第1ストッパ30aと、第2ストッパ30bとを備える。
第1ストッパ30aの開口30a1は、グリップ31の外径よりも小径に形成され、グリップ31を保持する。第2ストッパ30bの開口30b1は、グリップ31の外径よりも大径に形成され、リニアブッシュ26を保持する。
【0031】
第1ストッパ30aと、第2ストッパ30bとにより、リニアブッシュ26を支持ブロック29の開口部29a内に保持できる。また、第1のつかみ具3を、第1ストッパ30aにより支持ブロック29の開口部29a内に保持できる。
本実施形態では、第1のつかみ具3を支持ブロック29の下方に抜き出す場合、第1ストッパ30aを取り外すだけで、簡単に抜き出すことができる。
このとき、第2ストッパ30bを取り外さなければ、リニアブッシュ26を、支持ブロック29の開口部29a内に保持したままの状態にできる。
【0032】
一対の支柱28には、上下方向に延びる長孔(不図示)が形成され、長孔にボルト41を挿通して、支持ブロック29が締結されている。そのため、長孔の長さの範囲で、支持ブロック29の高さ(軸方向の位置)を、容易に調節できる。
本実施形態では、試験片TPの長さに応じて、支持ブロック29の位置を調節できる。
一対の支柱28は、第2のつかみ具4が固定されたテーブル6に固定されている。
本実施形態では、第1のつかみ具3を設置する場合において、一対の支柱28がテーブル6に固定されるため、拘束機構25により、第1のつかみ具3と、テーブル6に固定された第2のつかみ具4と、の芯合わせを容易にできる。すなわち、第2のつかみ具4に対する第1のつかみ具3の軸ずれを抑制し易くできる。
【0033】
次に、高速引張試験について説明する。
第1、第2のつかみ具3、4の間に、試験片TPを保持する。
第1のつかみ具3に、試験片TPを保持する際には、まず、
図2および
図3を参照し、つかみ具本体35からグリップ31を取り外し、グリップ31の開放端から、歯押しねじ33の六角穴33aに工具を挿入し、工具を回転させる。
【0034】
歯押しねじ33を後退させると、一対のつかみ歯3a、3bが開放される。この状態で、つかみ歯3a、3bの間に、試験片TPを挿入する。
歯押しねじ33を前進させると、歯押しねじ33とグリップ31との協働により、一対のつかみ歯3a、3bの間に、試験片TPが保持される。
ついで、つかみ具本体35とグリップ31とを連結する。
【0035】
第2のつかみ具4においては、グリップ46を緩める方向に回転させると、一対のつかみ歯4a、4bが開放される。
この状態で、つかみ歯4a、4bの間に、試験片TPを挿入する。
そして、グリップ46を逆方向に回転させると、一対のつかみ歯4a、4bの間に、試験片TPが保持される。第1のつかみ具3と第2のつかみ具4とは軸線L0(
図1参照)上に配置され、試験片TPが軸線L0上に保持される。
【0036】
第1、第2のつかみ具3、4により、
図1に示すように、試験片TPの両端部を把持した状態で、油圧ポンプ12を駆動する。
油圧ポンプ12を駆動すると、アキュムレーター13に蓄圧される。
この状態で、高速サーボ弁15に開く信号が出力されると、高速サーボ弁15が開き、アキュムレーター13に蓄圧された油圧により、ピストン9が高速度で上昇する。
ピストン9の速度は、高速サーボ弁15によりコントロールされる。
【0037】
ピストン9は、外側ロッド22のテーパ部22aが、内側ロッド21のテーパ部21aに係合するまで、の助走区間Lを所定の高速度になるまで上昇する。
テーパ部21aとテーパ部22aとが係合すると、助走区間Lで得た高速の初速度を受けて、ピストン9が上昇し、試験片TPに高速引張荷重が負荷される。
【0038】
高速引張荷重が負荷されると、試験片TPが伸びて、試験片TPの伸びに応じ、第1のつかみ具3が上方に移動する。
このとき、変位計51により、試験片TPの伸びが検出される。また、高速引張荷重が負荷されると、ロードセル61により、試験荷重が検出される。変位計51及びロードセル61が検出した検出信号は、制御ユニットに出力される。
変位計51により計測された試験片TPの伸びと、ロードセル61により検出された試験荷重と、により、試験片TPの弾性率が算出される。
【0039】
助走機構20は、内側ロッド21と外側ロッド22との間にギャップがある。
高速引張荷重が負荷される場合、上記ギャップに起因して、助走機構20の内側ロッド21に、軸ずれを起こす力が作用する。
【0040】
本実施形態では、第1のつかみ具3のグリップ31の外周部に、拘束機構25が配置されるため、内側ロッド21の上下方向への摺動時に、グリップ31の軸が前後左右等にずれることがなくなり、第1のつかみ具3の軸ずれが抑制される。
【0041】
本実施形態では、リニアブッシュ26が、グリップ31の外周部を保持することで、試験軸の位置を一定に保ちつつ、グリップ31との摺動抵抗を小さくする。リニアブッシュ26により、軸方向以外の移動を拘束することが可能となり、摺動抵抗も小さくなるため、高速引張試験の試験結果への影響を小さくできる。
【0042】
図5は、時間-ひずみ線図である。
試験片TPの両面(第1面TP1、第2面TP2)に、ひずみゲージ62、63(
図2参照)を張り付けて、高速引張試験を行った。試験片TPの長さは30[mm]である。また、高速引張試験の設定速度は、3[m/s]である。
図5において、横軸が時間を示し、縦軸が各面TP1、TP2のひずみである。
図5では、実線は第1面TP1のひずみを示し、破線は第2面TP2のひずみを示す。
【0043】
第1のつかみ具3の外周に、拘束機構25が無い場合、ひずみゲージ62、63の出力には、有意な差異が認められた(不図示)。出力の差異の原因は、内側ロッド21に僅かな軸ずれが起きるためである。
【0044】
第1のつかみ具3の外周に、拘束機構25が有る場合、
図5に示すように、時間T0、T1、T2と変化する段階で、ひずみゲージ62、63の出力はほぼ一致して、ひずみ0からひずみε1に変化する。ひずみゲージ62、63の出力ほぼ一致しており、出力に差異は認められない。
本実施形態では、第1のつかみ具3の軸ずれを抑制できる。
なお、時間T0は高速引張試験を開始してから所定時間経過した時間である。時間T1は、助走機構20の外側ロッド22と内側ロッド21が係合した時間であり、試験片TPに引張荷重が作用し始める時間である。時間T2は、試験片TPが破断した時間である。
【0045】
また、材料試験機1において、試験片TPの弾性率を測定する高速引張試験を行った。この高速引張試験では、一定の規格に基づいて作成された10個の試験片TPを用いた。この場合、材料試験機1において拘束機構25が無い場合、算出された試験片TPの弾性率の変動係数は、2%から3%であったが、拘束機構25が有る場合、試験片TPの弾性率の変動係数は、1%程度まで改善された。
本実施形態では、再現性の良い試験が可能となる。
【0046】
[2.変形例]
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示するものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、および応用が可能である。
【0047】
上述した実施形態において、ピストンロッド10の下端には、高速引張試験に適する助走機構20を介して、第1のつかみ具3を連結し、第1のつかみ具3の外周部に、拘束機構25を配置する構成を説明したが、本発明は、この構成に限定されない。
例えば、ピストンロッド10の下端に、助走機構20を連結せずに、第1のつかみ具3を直接に連結して、この直接連結した第1のつかみ具3の外周部に、拘束機構25を配置する構成としてもよい。また、上述した油圧式の負荷機構7の代わりに、ボールねじ機構などの機械要素による負荷機構を用いた試験機本体2においても、第1のつかみ具3の外周部に、拘束機構25を配置する構成としてもよい。
【0048】
上述した実施形態において、拘束機構25のリニアブッシュ26を第1のつかみ具3の外周部に配置する構成を説明したが、これに代えて、拘束機構25のリニアブッシュ26を内側ロッド21の外周部に配置してもよい。
この場合には、第1のつかみ具3が接続された内側ロッド21において、軸方向以外の移動を拘束できるため、第1のつかみ具3の軸ずれを抑制でき、再現性の良い試験を可能とすることができる。
【0049】
上述した実施形態において、低摩擦部の一例としてリニアブッシュ26の構成を説明したが、低摩擦部は、リニアブッシュ26に限定されない。例えば、低摩擦部としては、第1のつかみ具3や内側ロッド21の外周部の周方向に等間隔に配置されたリニアガイドでもよい。低摩擦部としては、試験の再現性に影響がない程度に、第1のつかみ具3の外周部または内側ロッド21の外周部を、摺動抵抗を小さくして拘束可能であればよい。
【0050】
上述した例示的な実施形態、及び変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0051】
(第1項)
一態様に係る材料試験機は、試験片の両端部を把持する第1、第2のつかみ具を有する試験機本体を備え、前記第1のつかみ具を駆動して、前記試験片に試験荷重をかける材料試験機であって、前記試験機本体は、前記第1のつかみ具の外周部に拘束機構を備え、前記拘束機構は、低摩擦部を備えると共に、前記低摩擦部を前記第1のつかみ具の外周部に接触させて、前記第1のつかみ具の軸ずれを抑制してもよい。
【0052】
第1項に記載の材料試験機によれば、第1のつかみ具の軸ずれを抑制できて、再現性の良い試験を可能とすることができる。
【0053】
(第2項)
第1項に記載の材料試験機において、前記第1のつかみ具は、つかみ具本体と、前記つかみ具本体の外周部に螺合されるグリップと、を備え、前記拘束機構は、前記グリップの外周部に配置されてもよい。
【0054】
第2項に記載の材料試験機によれば、拘束機構がグリップに直接接触可能であるため、第1のつかみ具の構成が軽量化されており、軽量化されない場合に比べて、第1のつかみ具を精度よく拘束できる。
【0055】
また、第2項に記載の材料試験機において、前記グリップは、真直部を備え、前記真直部は前記低摩擦部の内径にあうように外径が形成されていてもよい。
これによれば、低摩擦部により摺動抵抗を少なくしながら、第1のつかみ具の軸ずれを精度よく抑制できる。
【0056】
(第3項)
第1項または第2項に記載の材料試験機において、前記拘束機構は、支持部材を備え、前記支持部材により、前記低摩擦部が前記第2のつかみ具を固定するテーブルに固定されてもよい。
【0057】
第3項に記載の材料試験機によれば、拘束機構が第2のつかみ具と一体的であり、第1のつかみ具を拘束する位置を第2のつかみ具の位置に合わせ易くできる。
【0058】
(第4項)
第3項に記載の材料試験機において、前記支持部材は、門型であってもよい。
【0059】
第4項に記載の材料試験機によれば、作業性を確保しつつ、両側からバランスよく低摩擦部を支持することできる。
【0060】
(第5項)
第3項または第4項に記載の材料試験機において、前記支持部材は、支柱と、前記拘束機構を支持する支持ブロックと、を備え、前記支持ブロックは、前記支柱に対する支持位置が調節可能に構成されてもよい。
【0061】
第5項に記載の材料試験機によれば、試験片の軸方向の長さに応じて、低摩擦部の位置を調整できる。
【0062】
(第6項)
第1項から第5項のいずれかに記載の材料試験機において、前記試験機本体は、高速引張試験用の助走機構を備えてもよい。
【0063】
第6項に記載の材料試験機によれば、軸ずれが生じやすい高速引張試験用の助走機構を備える場合に、好適に、第1のつかみ具の軸ずれを抑制できて、再現性の良い試験を可能とすることができる。
【0064】
(第7項)
第1項から第6項のいずれかに記載の材料試験機において、前記低摩擦部は、複数の鋼球を備えるリニアブッシュであってもよい。
【0065】
第7項に記載の材料試験機によれば、簡易な構成で、第1のつかみ具の軸ずれを抑制できて、再現性の良い試験を可能とすることができる。
【0066】
(第8項)
一態様に係る材料試験機は、試験片の両端部を把持する第1、第2のつかみ具を有する試験機本体を備え、前記第1のつかみ具を駆動して、前記試験片に試験荷重をかける材料試験機であって、前記試験機本体は、前記第1のつかみ具が接続された内側ロッドを有する高速引張試験用の助走機構を備え、前記内側ロッドの外周部に拘束機構を備え、前記拘束機構は、低摩擦部を備えると共に、前記低摩擦部を前記内側ロッドの外周部に接触させて、前記内側ロッドの軸ずれを抑制してもよい。
【0067】
第8項に記載の材料試験機によれば、第1のつかみ具が接続された内側ロッドについて軸方向以外の移動を拘束できるため、内側ロッドの軸ずれを抑制できて第1のつかみ具の軸ずれも抑制でき、再現性の良い試験を可能とすることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 材料試験機
2 試験機本体
3 第1のつかみ具
4 第2のつかみ具
6 テーブル
20 助走機構
21 内側ロッド
25 拘束機構
26 リニアブッシュ(低摩擦部)
26d 鋼球
27 支持部材
28 支柱
29 支持ブロック
31 グリップ
35 つかみ具本体
TP 試験片