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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20240820BHJP
   H02K 15/085 20060101ALI20240820BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H02K3/34 D
H02K15/085
H02K15/04 F
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021146990
(22)【出願日】2021-09-09
(65)【公開番号】P2023039728
(43)【公開日】2023-03-22
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 正宜
(72)【発明者】
【氏名】平尾 泰之
【審査官】北川 大地
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-161212(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0307362(US,A1)
【文献】特開2004-064989(JP,A)
【文献】特開2019-193354(JP,A)
【文献】特開2009-011151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/34
H02K 15/085
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1セグメントコイルと第2セグメントコイルとを含む複数のセグメントコイルを備えるステータの製造方法であって、
複数のセグメントコイル線材を取得する取得工程と、
取得した前記複数のセグメントコイル線材をU字状に成形することによって前記複数のセグメントコイルを作製する作製工程であって、前記複数のセグメントコイルの各々は、同一の方向に延びる第1脚部及び第2脚部と、前記第1脚部及び前記第2脚部を接続している接続部とを有する、前記作製工程と、
作製された前記複数のセグメントコイルをステータコアに組み付ける組み付け工程と、を含み、
前記第1セグメントコイルを作製する前記作製工程は、
前記セグメントコイル線材をプレスするプレス工程であって、型の往復動を行う一度のプレスにおいて、前記往復動の方向にステップ状に変位したクランク形状を有するように前記セグメントコイル線材の中央部を折り曲げることによって屈曲部を形成するとともに、前記中央部の表面に前記型を押し付けることによって前記表面の一部を前記往復動の方向に隆起させた凸部へと形成する、プレス工程と、
前記セグメントコイル線材を曲げる曲げ工程であって、前記凸部が形成される前記表面に対して平行な同一の方向に、前記セグメントコイル線材の2つの端部を折り曲げることによって、前記2つの端部を前記第1脚部及び前記第2脚部へと形成し、前記セグメントコイル線材における前記2つの端部の間の部分である前記中央部を前記接続部へと形成する、前記曲げ工程と、を含み、
前記組み付け工程は、前記第1脚部及び前記第2脚部が前記ステータコアの軸方向に沿い、かつ、前記接続部が前記ステータコアの周方向に延びるように、前記複数のセグメントコイルの各々を前記ステータコアに配置することを含み、前記第1セグメントコイルの前記接続部と、前記第2セグメントコイルの前記接続部とが、前記ステータコアの径方向において見て交差した状態で前記ステータコアの軸方向において重なり合っており、前記ステータコアの軸方向における前記接続部同士の重なりの順序が、前記屈曲部を経て反転しており、かつ、前記第1セグメントコイルに形成されている前記凸部と、前記第2セグメントコイルが、前記ステータコアの径方向において対向し、前記接続部は、前記第1脚部に連続する第1斜行部と、前記第2脚部に連続する第2斜行部と、を有し、前記第1斜行部と前記ステータコアの中心軸線との距離と、前記第2斜行部と前記ステータコアの前記中心軸線との距離とは互いに異なり、前記第1斜行部と、前記第2斜行部とが、前記ステータコアの軸方向において見てクランク形状に屈曲している前記屈曲部を介して接続されている、
ステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、回転電機に設けられるステータを開示している。ステータは、ステータコアと、ステータコアに収容される複数のセグメントコイルとを備えている。ステータは、U字状のセグメントコイルをステータコアに差し込んで組み立てられる。セグメントコイルは、金属の導体を絶縁性の被膜で覆った被覆部を有している。そして、セグメントコイルの両端は、被膜が設けられていない導通部になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-052536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
U字状のセグメントコイルにおいて屈曲部を設けることが考えられる。
ステータを小型化するために、あるセグメントコイルが、隣接するセグメントコイルに跨がるように、複数のセグメントコイルを配置することがある。この場合、セグメントコイルを例えば、クランク形状に屈曲させることが考えられる。
【0005】
こうした屈曲部は、曲げが急峻であり、被覆部の被覆が延ばされて薄くなる。
セグメントコイルの屈曲部を形成するとき、被覆部の被膜が延ばされて薄くなる。詳細には、折り曲げられた部分では、その部分の曲率中心から見て、外側の部位の被膜が薄くなる。すなわち、屈曲部における被覆部は、屈曲部以外の部位における被覆部よりも被膜が薄い。
【0006】
このため、セグメントコイルの屈曲部と、隣接するセグメントコイルとの間における絶縁耐圧が低下する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する
【0012】
本開示の一態様によれば、第1セグメントコイルと第2セグメントコイルとを含む複数のセグメントコイルを備えるステータの製造方法であって、複数のセグメントコイル線材を取得する取得工程と、取得した前記複数のセグメントコイル線材をU字状に成形することによって前記複数のセグメントコイルを作製する作製工程であって、前記複数のセグメントコイルの各々は、同一の方向に延びる第1脚部及び第2脚部と、前記第1脚部及び前記第2脚部を接続している接続部とを有する、前記作製工程と、作製された前記複数のセグメントコイルをステータコアに組み付ける組み付け工程と、を含み、前記第1セグメントコイルを作製する前記作製工程は、前記セグメントコイル線材をプレスするプレス工程であって、型の往復動を行う一度のプレスにおいて、前記往復動の方向にステップ状に変位したクランク形状を有するように前記セグメントコイル線材の中央部を折り曲げることによって屈曲部を形成するとともに、前記中央部の表面に前記型を押し付けることによって前記表面の一部を前記往復動の方向に隆起させた凸部へと形成する、プレス工程と、前記セグメントコイル線材を曲げる曲げ工程であって、前記凸部が形成される前記表面に対して平行な同一の方向に、前記セグメントコイル線材の2つの端部を折り曲げることによって、前記2つの端部を前記第1脚部及び前記第2脚部へと形成し、前記セグメントコイル線材における前記2つの端部の間の部分である前記中央部を前記接続部へと形成する、前記曲げ工程と、を含み、前記組み付け工程は、前記第1脚部及び前記第2脚部が前記ステータコアの軸方向に沿い、かつ、前記接続部が前記ステータコアの周方向に延びるように、前記複数のセグメントコイルの各々を前記ステータコアに配置することを含み、前記第1セグメントコイルの前記接続部と、前記第2セグメントコイルの前記接続部とが、前記ステータコアの径方向において見て交差した状態で前記ステータコアの軸方向において重なり合っており、前記ステータコアの軸方向における前記接続部同士の重なりの順序が、前記屈曲部を経て反転しており、かつ、前記第1セグメントコイルに形成されている前記凸部と、前記第2セグメントコイルが、前記ステータコアの径方向において対向し、前記接続部は、前記第1脚部に連続する第1斜行部と、前記第2脚部に連続する第2斜行部と、を有し、前記第1斜行部と前記ステータコアの中心軸線との距離と、前記第2斜行部と前記ステータコアの前記中心軸線との距離とは互いに異なり、前記第1斜行部と、前記第2斜行部とが、前記ステータコアの軸方向において見てクランク形状に屈曲している前記屈曲部を介して接続されている、ステータの製造方法が提供される。
【0013】
上記構成によれば、凸部と屈曲部とを同時に形成できる。このため、上記ステータに用いる第1セグメントコイルを容易に製造することができる。したがって、上記ステータを容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係るステータの斜視図である。
図2図1のステータが備えるステータコアに組み付けられるセグメントコイルを示す斜視図である。
図3図2のセグメントコイルの拡大図である。
図4図3のセグメントコイルを、ステータコアの径方向において見た図である。
図5】互いに組み合わされた2つのセグメントコイルを示す斜視図である。
図6図5に示す互いに組み合わされた2つのセグメントコイルの上面図である。
図7図1のステータの製造方法を示すフローチャートである。
図8】比較例のステータにおける、互いに組み合わされた2つのセグメントコイルを示す斜視図である。
図9図8に示す互いに組み合わされた2つのセグメントコイルの上面図である。
図10】第2実施形態に係るステータにおける、互いに組み合わされた2つのセグメントコイルを示す正面図である。
図11図10に示す2つのセグメントコイルの各々から突起を除去した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係るステータ10及びステータ10の製造方法について、図面を参照して説明する。
【0016】
<ステータ10の全体構成>
図1に示すように、ステータ10は、円筒状のステータコア20と、複数のセグメントコイル30と、を備えている。複数のセグメントコイル30は、複数種類のセグメントコイル30を含んでいてもよい。ステータコア20の中心軸線が、一点鎖線により示されている。以下、ステータコア20の中心軸線をz軸とする円筒座標系を用いる。以下、図1に示す半径r方向を、ステータコア20の径方向と称する。角度θ方向を、ステータコア20の周方向と称する。軸z方向を、ステータコア20の軸方向と称する。
【0017】
複数のセグメントコイル30のうちのいくつかは、ある半径の仮想円周上においてずらして配置されている。すなわち、複数のセグメントコイル30は、ステータコア20の周方向に位置をずらして配置されてステータコア20の中心軸線を中心にした円を形成するように配置されている。同一の半径の仮想円周上においてずらして配置された複数のセグメントコイル30を、同層の複数のセグメントコイル30と称する。同層の複数のセグメントコイル30は、同一の形状を有している。また、複数のセグメントコイル30のうちのいくつかは、別の半径の仮想円周上においてずらして配置されている。すなわち、複数のセグメントコイル30は、ステータコア20の径方向において層をなすように配置されている。これにより、ステータコア20には、複数のセグメントコイル30がステータコア20の中心軸線を中心にした同心円を描くように配置されている。
【0018】
<セグメントコイル30の構成>
図2は、複数のセグメントコイル30のうちの1つを示している。複数のセグメントコイル30の各々は、第1脚部33と、第2脚部34と、第1脚部33及び第2脚部34を互いに接続する接続部36とを有する。図1に示すように、接続部36は、ステータコア20の周方向に延びている。図1に示すように、第1脚部33及び第2脚部34は、接続部36の2つの端部からステータコア20の軸方向にそれぞれ延びている。
【0019】
図3は、図2のセグメントコイル30を拡大して示す図である。接続部36は、第1脚部33に連続する第1斜行部38と、第2脚部34に連続する第2斜行部42と、を有する。第1斜行部38は、第1脚部33に対して斜めに、第1脚部33から延びている。第2斜行部42は、第2脚部34に対して斜めに、第2脚部34から延びている。さらに、接続部36は、第1斜行部38と第2斜行部42とに連続する屈曲部40を有する。屈曲部40は、セグメントコイル30の他の部分よりも曲げの度合いが大きくなっている。すなわち、ステータコア20の軸方向において見た屈曲部40の曲率半径は、セグメントコイル30の他の部分の曲率半径よりも小さい。
【0020】
図3に示すように、第1斜行部38は、第1脚部33に対して斜めに延びる円弧部38aと、円弧部38a及び屈曲部40に連続する湾曲部38bとを有している。円弧部38aは、ステータコア20の軸方向において見て円弧状である。湾曲部38bは、円弧部38aを基準にして、上方に向かって曲がっている。なお、図4に示すように、第1斜行部38の湾曲部38bは、第1凸部位38c及び第2凸部位38dを有する。湾曲部38bの第1凸部位38cは、下に凸の形状となっている。湾曲部38bの第2凸部位38dは、上に凸の形状となっている。すなわち、湾曲部38bは、S字状に湾曲している。
【0021】
また、第2斜行部42は、第2脚部34に対して斜めに延びる円弧部42aと、円弧部42a及び屈曲部40に連続する湾曲部42bとを有している。円弧部42aは、ステータコア20の軸方向において見て円弧状である。湾曲部42bは、円弧部42aを基準にして、上方に向かって曲がっている。なお、図4に示すように、第2斜行部42の湾曲部42bは、第1凸部位42c及び第2凸部位42dを有する。湾曲部42bの第1凸部位42cは、下に凸の形状となっている。湾曲部42bの第2凸部位42dは、上に凸の形状となっている。すなわち、湾曲部42bは、S字状に湾曲している。
【0022】
さらに、図3に示すセグメントコイル30は、凸部44を有する。凸部44は、第1斜行部38に設けられている。詳細には、凸部44は、湾曲部38bに設けられている。
<互いに組み合わされた2つのセグメントコイル30の関係>
図5及び図6は、互いに組み合わされた2つのセグメントコイル30を示している。図5は、互いに組み合わされた2つのセグメントコイル30を、ステータコア20の径方向内側から見た図である。図6は、図5に示す互いに組み合わされた2つのセグメントコイル30の上面図である。
【0023】
図5に示すように、奥にあるセグメントコイル30を第1セグメントコイル31と称する。また、手前にあるセグメントコイル30を第2セグメントコイル32と称する。図1に示すように、第1セグメントコイル31及び第2セグメントコイル32は、ステータコア20の周方向においてずらして配置されている。
【0024】
本実施形態では、第1セグメントコイル31は凸部44を有する。同様に、第2セグメントコイル32は凸部44を有する。
図6に示すように、接続部36は、ステータコア20の軸方向において見て屈曲している屈曲部40を有している。接続部36は、第1脚部33に連続する第1斜行部38と、第2脚部34に連続する第2斜行部42と、を有している。第1斜行部38とステータコア20の中心軸線と距離と、第2斜行部42とステータコア20の中心軸線との距離とは互いに異なる。第1斜行部38と、第2斜行部42とが、ステータコア20の軸方向において見てクランク形状に屈曲している屈曲部40を介して接続されている。
【0025】
図5及び図6に示すように、第1セグメントコイル31の接続部36と、第2セグメントコイル32の接続部36とは、ステータコア20の径方向において見て交差した状態でステータコア20の軸方向において重なり合っている。図6に示すように、第1斜行部38は、第2斜行部42よりもステータコア20の径方向において外側にある。第2セグメントコイル32の第1斜行部38は、ステータコア20の軸方向において、第1セグメントコイル31の第1斜行部38に対し上から重なっている。第1セグメントコイル31の第2斜行部42は、ステータコア20の軸方向において、第2セグメントコイル32の第2斜行部42に対し上から重なっている。すなわち、ステータコア20の軸方向における接続部36同士の重なりの順序が、屈曲部40を経て反転している。
【0026】
図5及び図6に示すように第1セグメントコイル31及び第2セグメントコイル32は、ステータコア20の径方向において対向し合っている対向面を有している。図6に示すように第1セグメントコイル31の対向面は、第2セグメントコイル32の対向面に向かって突出している凸部44を有する。
【0027】
<ステータ10の製造方法>
図7は、第1セグメントコイル31と第2セグメントコイル32とを含む複数のセグメントコイル30を備えるステータ10の製造方法のフローチャートである。
【0028】
製造方法は、ステップS600として複数のセグメントコイル線材を取得する取得工程を含む。ステップS600の取得工程では、電線を巻き取ったボビンから電線を弾き出し、弾き出した電線を所定の長さに切断する。こうして、直線状のセグメントコイル線材を取得する。なお、電線は、主に銅からなる線材に、絶縁層が被覆されている。
【0029】
製造方法は、ステップS602として剥離工程を含む。この製造方法では、ステップS600の工程に続いてステップS602の剥離工程を実行する。この剥離工程では、ステップS600の取得工程において取得したセグメントコイル線材の両端部の表面を削り取ることによって被覆を剥離させる。そして、被覆を削り取ることによってむき出しになり、鋭利になっている線材の角を面取りする。
【0030】
製造方法は、ステップS604として、作製工程を含む。この製造方法では、ステップS602の剥離工程に続いてステップS604の作製工程を実行する。この作製工程では、取得した複数のセグメントコイル線材をU字状に成形することによって複数のセグメントコイル30を作製する。
【0031】
図7に示すように、複数のセグメントコイル30を作製する作製工程は、ステップS604aのプレス工程と、ステップS604bの曲げ工程とを含む。ステップS604aのプレス工程では、複数のセグメントコイル線材をプレスする。具体的には、このプレス工程では、型の往復動を行う一度のプレスにおいて、屈曲部40と凸部44との両方を形成する。屈曲部40は、このプレス工程において往復動の方向にステップ状に変位したクランク形状を有するようにセグメントコイル線材の中央部を折り曲げることによって形成される。また、この型には、凸部44を形成するための穴又は凹みが設けられている。凸部44は、当該中央部の表面に型を押し付けることによって表面の一部を往復動の方向に隆起させることによって形成される。なお、図6における白抜き矢印は、このプレス工程における型の往復動の方向を示している。
【0032】
ステップS604aのプレス工程に続いて実行されるステップS604bの曲げ工程では、凸部44が形成される表面に対して平行な同一の方向に、セグメントコイル線材の2つの端部を折り曲げる。これによって、2つの端部が、第1脚部33及び第2脚部34へと形成される。また、セグメントコイル線材における2つの端部の間の部分である中央部が、接続部36へと形成される。
【0033】
こうしてステップS604の作製工程を経て、複数のセグメントコイル30が作製される。複数のセグメントコイル30の各々は、上述したように、同一の方向に延びる第1脚部33及び第2脚部34と、第1脚部33及び第2脚部34を接続している接続部36とを有する。
【0034】
製造方法は、ステップS606として組み付け工程を含む。この製造方法では、ステップS606の組み付け工程において、ステップS604の作製工程を経て作製された複数のセグメントコイル30をステータコア20に組み付ける。
【0035】
具体的には、組み付け工程では、第1脚部33及び第2脚部34がステータコア20の軸方向に沿い、かつ、接続部36がステータコア20の周方向に延びるように、複数のセグメントコイル30の各々をステータコア20に配置する。このとき、接続部36同士が、ステータコア20の径方向において見て交差した状態でステータコア20の軸方向において重なり合うように、複数のセグメントコイル30を配置する。こうして配置された状態では、図6を参照して説明したように、ステータコア20の軸方向における接続部36同士の重なりの順序が、屈曲部40を経て反転している。そして、凸部44と、第2セグメントコイル32が、ステータコア20の径方向において対向している。
【0036】
製造方法は、ステップS608として複数のセグメントコイル30同士を接続する接続工程を含む。この製造方法では、ステップS606の組み付け工程に続いてステップS608の接続工程を実行する。具体的には、接続工程では、図1に示すようにステータコア20からはみ出した第1脚部33及び第2脚部34を折り曲げて複数のセグメントコイル30をステータコア20に固定する。そして、被覆が剥離されて線材が露出している導通部同士を溶接して複数のセグメントコイル30を接続する。
【0037】
<第1実施形態の作用>
図8及び図9を参照し、本実施形態に係るステータ10と比較例に係るステータ10とを対比して本実施形態の作用を説明する。
【0038】
図5及び図6に示すように、本実施形態では、セグメントコイル30は凸部44を有する。これに対し、図8及び図9に示すように、比較例では、セグメントコイル30は凸部44を有していない。
【0039】
本実施形態では、第1セグメントコイル31の対向面は、第2セグメントコイル32の対向面に向かって突出している凸部44を有する。このため、第1セグメントコイル31と第2セグメントコイル32が近づくと、第1セグメントコイル31の凸部44が第2セグメントコイル32に干渉する。
【0040】
したがって、図6に示す本実施形態では、図9に示す比較例と対比して、第1セグメントコイル31の屈曲部40と、第2セグメントコイル32との重なりが凸部44によって規制されている。
【0041】
<第1実施形態の効果>
(1-1)第1セグメントコイル31の屈曲部40は、被膜が延ばされて薄くなっているため、絶縁性が低い。詳細には、屈曲部40は、第1凸部位40a及び第2凸部位40bにおいて、絶縁性が低くなっている。このことについて次に詳述する。
【0042】
図6に示すように、屈曲部40は、第1凸部位40a及び第2凸部位40bを有する。屈曲部40は、ステータコア20の周方向に延びている第2斜行部42から、ステータコア20の径方向外側に向かって延びている。次いで、屈曲部40は、ステータコア20の周方向に延びている第1斜行部38に接続している。このため、屈曲部40は、ステータコア20の径方向内側に位置し、かつ、第2斜行部42に近接する第1凸部位40aを有する。さらに、屈曲部40は、ステータコア20の径方向外側に位置し、かつ、第1斜行部38に近接する第2凸部位40bを有する。第1凸部位40a及び第2凸部位40bにおいては、被膜が延ばされて薄くなっている。このため、屈曲部40は、第1凸部位40a及び第2凸部位40bにおいて、絶縁性が低くなっている。
【0043】
図6に示すように、第1セグメントコイル31の第1凸部位40aは、ステータコア20の軸方向から見て、第2セグメントコイル32と重なっている。
第1セグメントコイル31及び第2セグメントコイル32は、ステータコア20の径方向において対向し合っている対向面を有しており、第1セグメントコイル31の対向面は、第2セグメントコイル32の対向面に向かって突出している凸部44を有する。第1セグメントコイル31と第2セグメントコイル32が近づくと、第1セグメントコイル31の凸部44が第2セグメントコイル32に当接する。このため、軸方向において見た、第1セグメントコイル31の屈曲部40と、第2セグメントコイル32との重なりが凸部44によって規制されている。詳細には、軸方向において見た、第1セグメントコイル31の第1凸部位40aと、第2セグメントコイル32との重なりが凸部44によって規制されている。このため、絶縁性が低い屈曲部40と第2セグメントコイル32との軸方向において見た重なりを小さくできる。したがって、絶縁耐性が確保できるため、ステータ10に加えることができる電圧が大きくなる。
【0044】
図8及び図9を参照し、第1セグメントコイル31が凸部44を有さない比較例を上述した。比較例では、絶縁耐性を確保するために、第1セグメントコイル31と第2セグメントコイル32との間に余裕を持たせつつ隙間を設ける必要がある。これに対し、第1セグメントコイル31が凸部44を有する本実施形態では、第1セグメントコイル31と第2セグメントコイル32との間に必要な隙間が確保されている。このため、絶縁耐性を確保する一方で、可能な限り第1セグメントコイル31と第2セグメントコイル32とを互いにステータコア20の径方向において近づけることができる。
【0045】
(1-2)本実施形態に係るステータ10の製造方法によれば、凸部44と屈曲部40とを同時に形成できる。このため、上記ステータ10に用いる第1セグメントコイル31を容易に製造することができる。したがって、上記ステータ10を容易に製造できる。
【0046】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るステータ10は、セグメントコイル30がさらに突起46を有している点において、第1実施形態に係るステータ10と相違する。第1実施形態と第2実施形態とで共通する構成については説明を省略する。
【0047】
第1セグメントコイル31及び第2セグメントコイル32は、ステータコア20の軸方向において対向し合っている第2対向面を有している。図10に示すように、第1セグメントコイル31の第2斜行部42が、ステータコア20の軸方向において第2セグメントコイル32と対向している。
【0048】
図10に示すように、第1セグメントコイル31の第2対向面は、第2セグメントコイル32の第2対向面に向かって突出している突起46を有する。
図11は、図10に示す第1セグメントコイル31及び第2セグメントコイル32の各々から突起46を除去した図である。図10に示す本実施形態に係るステータ10では、第1セグメントコイル31は、突起46を有する。このため、図11に示す構成と比較して、第1セグメントコイル31と第2セグメントコイル32とが軸方向において近づくことが抑制されている。
【0049】
<第2実施形態の効果>
第2実施形態のステータ10によれば、(1-1)の効果に加えて以下の効果が得られる。
【0050】
(2-1)第1セグメントコイル31と第2セグメントコイル32とが軸方向において近づくと、第1セグメントコイル31の突起46が第2セグメントコイル32に当接する。このため、絶縁性が低い屈曲部40と第2セグメントコイル32との軸方向における距離が確保される。したがって、絶縁耐性が確保できるため、ステータ10に加えることができる電圧が大きくなる。このため、絶縁耐性を確保する一方で、可能な限り第1セグメントコイル31と第2セグメントコイル32とを互いにステータコア20の軸方向において近づけることができる。
【0051】
(変更例)
上記第1及び第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。第1及び第2実施形態並びに以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0052】
・上記第1及び第2実施形態では、同層の複数のセグメントコイル30は、同一の形状を有している。例えば、第1セグメントコイル31及び第2セグメントコイル32の各々は、凸部44を有する。しかしながら、これは例示に過ぎない。例えば、第2セグメントコイル32は凸部44を有していなくてもよい。この場合、同層の複数のセグメントコイル30は、2種類の複数のセグメントコイル30から構成される。
【0053】
・当該変更例に関連して、凸部44を有していない第2セグメントコイル32を作製する作製工程について説明する。第2セグメントコイル32を作製する作製工程は、ステップS604aのプレス工程と異なるプレス工程を含む。変更例のプレス工程では、型の往復動を行う一度のプレスにおいて、屈曲部40を形成する。なお、変更例のプレス工程で用いる型には、凸部44を形成するための穴又は凹みが設けられていない。そのため、変更例のプレス工程を経て屈曲部40が形成されたセグメントコイル線材には凸部44は形成されない。第2セグメントコイル32を作製する作製工程では、凸部44を形成していないセグメントコイル線材に対して、上記のステップS604bと同様の曲げ工程を実行する。これにより、セグメントコイル線材における2つの端部が、第1脚部33及び第2脚部34へと形成される。また、セグメントコイル線材における2つの端部の間の部分である中央部が、接続部36へと形成される。
【0054】
・上記第1及び第2実施形態では、第1セグメントコイル31の対向面は、第2セグメントコイル32の対向面に向かって突出している凸部44を有する。これに代えて、若しくはこれに加えて、第2セグメントコイル32の対向面は、第1セグメントコイル31の対向面に向かって突出している凸部を有していてもよい。
【0055】
・第2実施形態では、同層の複数のセグメントコイル30は、同一の形状を有している。例えば、第1セグメントコイル31及び第2セグメントコイル32の各々は、突起46を有する。しかしながら、これは例示に過ぎない。例えば、第2セグメントコイル32の突起46を省略してもよい。
【0056】
・上記第1及び第2実施形態では、凸部44の形状は、円柱状である。しかしながら、凸部44の形状は、四角柱状でもよい。すなわち、凸部44の形状は、適宜変更可能である。
【0057】
・上記第1実施形態では、凸部44は、穴又は凹みを有する型をセグメントコイル線材に押し付けることによって形成する。これに加えて、凸形状を有する型をセグメントコイル線材に反対側から押付けてもよい。
【0058】
・上記第2実施形態では、突起46の形状は、円柱状である。しかしながら、突起46の形状は、四角柱状でもよい。すなわち、突起46の形状は、適宜変更可能である。
・上記第1実施形態では、ステップS604aのプレス工程の後にステップS604bの曲げ工程が実行される。しかしながら、これは例示に過ぎない。ステップS604aのプレス工程の前にステップS604bの曲げ工程が実行されてもよい。ステップS604aのプレス工程と同時にステップS604bの曲げ工程が実行されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…ステータ
20…ステータコア
31…第1セグメントコイル
32…第2セグメントコイル
33…第1脚部
34…第2脚部
36…接続部
40…屈曲部
44…凸部
46…突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11