IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-雌端子及び端子接続構造 図1
  • 特許-雌端子及び端子接続構造 図2
  • 特許-雌端子及び端子接続構造 図3
  • 特許-雌端子及び端子接続構造 図4
  • 特許-雌端子及び端子接続構造 図5
  • 特許-雌端子及び端子接続構造 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】雌端子及び端子接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/533 20060101AFI20240820BHJP
   H01R 13/10 20060101ALI20240820BHJP
   B60L 53/16 20190101ALN20240820BHJP
【FI】
H01R13/533 A
H01R13/10 Z
B60L53/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021152196
(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公開番号】P2023044266
(43)【公開日】2023-03-30
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川原 寿人
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-197641(JP,A)
【文献】特開2019-192446(JP,A)
【文献】実開平04-034759(JP,U)
【文献】特開2013-143186(JP,A)
【文献】特開2015-005401(JP,A)
【文献】特開2021-110655(JP,A)
【文献】特開2018-041547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
H01R 13/10-13/14
H01R 13/40-13/533
H01R 24/00-24/86
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄端子に接続可能な雌端子であって、
前記雄端子は、冷却液によって冷却可能であり、
前記雌端子は、
前記雄端子に電気的に接続可能な雌端子本体と、
前記冷却液の冷熱を伝達する熱伝達部材と、を備え、
前記雌端子本体は、
前記雄端子を受け入れる受入空間を形成する空間形成部と、
前記受入空間の内側に向かって前記空間形成部から突出するとともに、前記雄端子に電気的に接触する接触部と、を有し、
前記熱伝達部材は、電気絶縁性を有するとともに前記受入空間内に配置されており、前記受入空間に挿入された前記雄端子が前記接触部及び当該熱伝達部材に接触した状態において前記雄端子及び前記雌端子間に通電されたときに前記冷却液の冷熱を前記雌端子本体に伝達する、雌端子。
【請求項2】
前記熱伝達部材は、
前記雄端子に接触する内側部材と、
前記内側部材と前記空間形成部との間に介在する外側部材と、を有し、
前記外側部材は、電気絶縁性材料からなる、請求項1に記載の雌端子。
【請求項3】
前記雌端子本体は、前記空間形成部につながっており、ケーブルと接続される接続部をさらに有し、
前記外側部材は、
前記雄端子と前記接続部との間に配置された底壁と、
前記底壁の周縁部につながっており、前記内側部材を包囲する周壁と、を有する、請求項2に記載の雌端子。
【請求項4】
前記底壁は、前記接続部に固定されている、請求項3に記載の雌端子。
【請求項5】
前記熱伝達部材を介した前記雄端子及び前記空間形成部間の接触抵抗は、前記熱伝達部材を介していない前記雄端子及び前記雌端子本体間の接触抵抗の100倍以上である、請求項1から4のいずれかに記載の雌端子。
【請求項6】
雄端子と前記雄端子に接続可能な雌端子とを備える端子接続構造であって、
前記雄端子は、冷却液によって冷却可能であり、
前記雌端子は、
前記雄端子に電気的に接続可能な雌端子本体と、
前記冷却液の冷熱を伝達する熱伝達部材と、を備え、
前記雌端子本体は、
前記雄端子を受け入れる受入空間を形成する空間形成部と、
前記受入空間の内側に向かって前記空間形成部から突出するとともに、前記雄端子に電気的に接触する接触部と、を有し、
前記熱伝達部材は、電気絶縁性を有するとともに前記受入空間内に配置されており、前記受入空間に挿入された前記雄端子が前記接触部及び当該熱伝達部材に接触した状態において前記雄端子及び前記雌端子間に通電されたときに前記冷却液の冷熱を前記雌端子本体に伝達する、端子接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、雌端子及び端子接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
設備側の充電コネクタと車両側の充電インレットとの接続部は、通電時に接触抵抗に起因して発熱する。このことは、大電流(例えば400A)によって急速充電が行われる場合に特に顕著となる。このため、充電コネクタ又は充電インレットが水等の冷却液によって冷却されることがある。例えば、特開2019-192446号公報には、冷却機構を備える雌端子を有するコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-192446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2019-192446号公報に見られるようなコネクタでは、高い冷却性能を有していることが望ましい。このことは、充電インレット及び充電コネクタ間の通電時に限られず、雄端子及び雌端子の接続構造において広く妥当する。
【0005】
本開示の目的は、冷却性能を高めることが可能な雌端子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面に従った雌端子は、雄端子に接続可能な雌端子であって、前記雄端子及び前記雌端子の少なくとも一方は、冷却液によって冷却可能であり、前記雌端子は、前記雄端子に電気的に接続可能な雌端子本体と、前記冷却液の冷熱を伝達する熱伝達部材と、を備え、前記雌端子本体は、前記雄端子を受け入れる受入空間を形成する空間形成部と、前記受入空間の内側に向かって前記空間形成部から突出するとともに、前記雄端子に電気的に接触する接触部と、を有し、前記熱伝達部材は、電気絶縁性を有するとともに前記受入空間内に配置されており、前記受入空間に前記雄端子が挿入されたときに前記雄端子及び前記空間形成部に熱的に接触する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、冷却性能を高めることが可能な雌端子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両に充電している状態を概略的に示す図である。
図2】雄端子と雌端子との接続構造を概略的に示す断面図である。
図3図2におけるIII-III線での断面図である。
図4】熱伝達部材の正面図である。
図5図4におけるV-V線での断面図である。
図6】雌端子の変形例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0010】
図1は、車両に充電している状態を概略的に示す図である。なお、車両1は、例えば電気自動車である。
【0011】
車両1は、蓄電装置2と、充電インレット4と、を有している。蓄電装置2は、複数の蓄電セルを含んでいる。充電インレット4は、ケーブル3を介して蓄電装置2と接続されている。充電インレット4は、一対の雌端子20と、一対の雌端子20を保持するケーシング(図示略)と、有している。
【0012】
この車両1の充電インレット4に対し、充電スタンド等の設備5にケーブル6を介して接続された充電コネクタ7が接続されることにより、蓄電装置2への充電が可能となる。充電コネクタ7は、一対の雄端子10と、一対の雄端子10を保持するハウジング(図示略)と、を有している。
【0013】
充電インレット4の雌端子20及び充電コネクタ7の雄端子10の少なくとも一方は、冷却液(冷却水等)によって冷却可能である。本実施形態では、雄端子10が冷却可能に構成されている。つまり、充電コネクタ7は、いわゆる液冷式充電コネクタである。なお、冷却液は、ケーブル6を介して設備5及び充電コネクタ7間を流れる。
【0014】
図2は、雄端子と雌端子との接続構造を概略的に示す断面図である。雄端子10は、円柱状に形成されている。なお、図2には、雄端子10内を流れる冷却液が矢印で示されている。充電コネクタ7は、チャオジー(ChaoJi)規格に基づいていてもよい。
【0015】
雌端子20は、雄端子10に接続可能である。雌端子20は、雌端子本体100と、熱伝達部材200と、を有している。
【0016】
雌端子本体100は、雄端子10に電気的に接続可能である。雌端子本体100は、雄端子10に接続された状態において、電流の経路を構成する。雌端子本体100は、接続部110と、空間形成部120と、接触部130と、を有している。
【0017】
接続部110は、ケーブル3に接続される部位である。接続部110は、円柱状に形成されている。ただし、接続部110の形状は、円柱状に限られない。
【0018】
空間形成部120は、雄端子10を受け入れる受入空間Sを形成している。空間形成部120は、接続部110につながっている。具体的に、空間形成部120は、接続部110から接続部110の中心軸AXと平行な方向に沿って延びている。図3に示されるように、空間形成部120は、中心軸AXまわりに間隔を置いて配置された複数の接触片122を有している。本実施形態では、空間形成部120は、中心軸AXまわりに等間隔に配置された5つの接触片122を有している。ただし、接触片122の数は、5に限られない。各接触片122は、雄端子10に接触可能である。各接触片122は、その基端部(接触片122と接続部110との接続部)に対してその先端部が中心軸AXを中心とする円の径方向に変位するように弾性変形可能である。
【0019】
接触部130は、雄端子10に接触する部位である。接触部130は、受入空間Sの内側に向かって空間形成部120から突出している。図3に示されるように、前記径方向における接触部130の内側の縁部は、中心軸AXに向かって凸となる用に湾曲する形状を有している。
【0020】
熱伝達部材200は、冷却液の冷熱を相手側端子(本実施形態では雌端子本体100)に伝達するための部材である。より詳細には、熱伝達部材200は、雄端子10への接触箇所を増やすことにより、雄端子10及び雌端子本体100間の通電時に冷却液の冷熱を雌端子本体100に伝達するための部材である。熱伝達部材200は、受入空間S内に配置されている。熱伝達部材200は、雄端子10及び雌端子本体100に熱的に接触可能である。熱伝達部材200は、電気絶縁性を有している。熱伝達部材200は、受入空間Sに雄端子10が挿入されたときに雄端子10及び空間形成部120に熱的に接触する。熱伝達部材200は、内側部材210と、外側部材220と、を有している。
【0021】
内側部材210は、雄端子10に接触する。内側部材210は、金属からなる。内側部材210は、環状部212と、複数の可撓片214と、接点部216と、を有している。
【0022】
環状部212は、円環状に形成されている。環状部212の外径は、空間形成部120の内径よりも小さい。
【0023】
複数の可撓片214は、環状部212から環状部212の中心軸と平行な方向に沿って延びている。図4に示されるように、複数の可撓片214は、前記中心軸まわりに間隔を置いて配置されている。本実施形態では、複数の可撓片214は、中心軸まわりに等間隔に配置された4つの可撓片214を有している。ただし、可撓片214の数は、4に限られない。各可撓片214は、その基端部(可撓片214と環状部212との接続部)に対してその先端部が中心軸を中心とする円の径方向に変位するように弾性変形可能である。図5に示されるように、各可撓片214の内側に雄端子10が挿入されていない状態では、各可撓片214の先端部は、当該可撓片214の基端部よりも中心軸の近くに位置している。
【0024】
接点部216は、各可撓片214の先端部から環状部212の中心軸に向かって突出している。接点部216は、雄端子10に接触する部位である。
【0025】
外側部材220は、内側部材210と空間形成部120との間に介在する。外側部材220は、内側部材210と空間形成部120との接触を防止している。外側部材220は、電気絶縁性材料(ポリブチレンテレフタレートやセラミックス等)からなる。外側部材220は、底壁222と、周壁224と、を有している。
【0026】
底壁222は、円板状に形成されている。底壁222は、雄端子10と接続部110との間に配置されている。本実施形態では、底壁222は、接続部110に固定されている。
【0027】
周壁224は、底壁222の周縁部につながっている。周壁224は、底壁222の周縁部から底壁222の中心軸と平行な方向に接続部110から離間する向きに延びる形状を有している。周壁224は、円筒状に形成されている。周壁224は、内側部材210を周方向の全域にわたって包囲している。周壁224の外周面は、空間形成部120の内側面に接している。
【0028】
熱伝達部材200を介した雄端子10及び空間形成部120間の接触抵抗は、熱伝達部材200を介していない雄端子10及び接触部130間の接触抵抗の100倍以上である。このため、通電時、実質的に雄端子10及び接触部130のみを通じて電流が流れる。なお、熱伝達部材200を介した雄端子10及び空間形成部120間の接触抵抗は、熱伝達部材200の材料や厚みで調整される。
【0029】
以上に説明したように、本実施形態の雌端子20は、雄端子10及び空間形成部120に熱的に接触する熱伝達部材200を備えているため、雄端子10及び雌端子本体100間の通電時に冷却液の冷熱が熱伝達部材200を通じて相手側端子に伝達される。つまり、通電時に雄端子10及び接触部130において発生した熱は、矢印AR1で示されるように、接触部130から雄端子10に伝達されるとともに、矢印AR2で示されるように、熱伝達部材200を介して空間形成部120から雄端子10に伝達される。よって、冷却性能が高まる。
【0030】
上記実施形態において、図6に示されるように、底壁222が接続部110から離間した位置となるように熱伝達部材200が受入空間Sに配置されていてもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、雄端子10が冷却可能に構成された例が示されたが、雌端子20が冷却可能に構成されていてもよい。
【0032】
また、上記実施形態における雄端子10及び雌端子20の接続構造は、充電インレット4及び充電コネクタ7の接続構造に限られない。
【0033】
以上に説明した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例である。
【0034】
上記実施形態における雌端子は、雄端子に接続可能な雌端子であって、前記雄端子及び前記雌端子の少なくとも一方は、冷却液によって冷却可能であり、前記雌端子は、前記雄端子に電気的に接続可能な雌端子本体と、前記冷却液の冷熱を伝達する熱伝達部材と、を備え、前記雌端子本体は、前記雄端子を受け入れる受入空間を形成する空間形成部と、前記受入空間の内側に向かって前記空間形成部から突出するとともに、前記雄端子に電気的に接触する接触部と、を有し、前記熱伝達部材は、電気絶縁性を有するとともに前記受入空間内に配置されており、前記受入空間に前記雄端子が挿入されたときに前記雄端子及び前記空間形成部に熱的に接触する。
【0035】
この雌端子は、雄端子及び空間形成部に熱的に接触する熱伝達部材を備えているため、雄端子及び雌端子本体間の通電時に冷却液の冷熱が熱伝達部材を通じて相手側端子に伝達される。よって、冷却性能が高まる。
【0036】
また、前記熱伝達部材は、前記雄端子に接触する内側部材と、前記内側部材と前記空間形成部との間に介在する外側部材と、を有していてもよい。この場合において、前記外側部材は、電気絶縁性材料からなることが好ましい。
【0037】
また、前記雌端子本体は、前記空間形成部につながっており、ケーブルと接続される接続部をさらに有していてもよい。前記外側部材は、前記雄端子と前記接続部との間に配置された底壁と、前記底壁の周縁部につながっており、前記内側部材を包囲する周壁と、を有していてもよい。
【0038】
この場合において、前記底壁は、前記接続部に固定されていることが好ましい。
【0039】
このようにすれば、雌端子本体に対する熱伝達部材の位置が決定される。
【0040】
また、前記熱伝達部材を介した前記雄端子及び前記空間形成部間の接触抵抗は、前記熱伝達部材を介していない前記雄端子及び前記雌端子本体間の接触抵抗の100倍以上であることが好ましい。
【0041】
このようにすれば、通電時、実質的に雄端子及び接触部のみを通じて電流が流れる。
【0042】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 車両、2 蓄電装置、3 ケーブル、4 充電インレット、5 設備、6 ケーブル、7 充電コネクタ、10 雄端子、20 雌端子、100 雌端子本体、110 接続部、120 空間形成部、122 接触片、130 接触部、200 熱伝達部材、210 内側部材、212 環状部、214 可撓片、216 接点部、220 外側部材、222 底壁、224 周壁、AX 中心軸、S 受入空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6