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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】誤発進抑制装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20240820BHJP
   B60T 7/20 20060101ALI20240820BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
F02D29/02 311
B60T7/20
B60T7/12 B
B60T7/12 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021174644
(22)【出願日】2021-10-26
(65)【公開番号】P2023064387
(43)【公開日】2023-05-11
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 雄佑
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-196714(JP,A)
【文献】特開2016-135021(JP,A)
【文献】特開2014-156140(JP,A)
【文献】特開2012-026393(JP,A)
【文献】特開2020-045787(JP,A)
【文献】特開2014-113955(JP,A)
【文献】特開2013-129228(JP,A)
【文献】後付け踏み間違い加速抑制アシスト 取扱説明書,GENUINE PARTS 日産純正部品,日本,日産自動車株式会社,2020年06月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00
B60R 21/00
B60W 30/00 - 60/00
B60T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動力を発生する駆動装置を制御する制御ユニットを備え、前記制御ユニットは、運転者のアクセル操作が誤操作であるか否かを所定の判定条件が成立しているか否かにより判定し、運転者のアクセル操作が誤操作であると判定したときには、前記駆動装置により発生される駆動力を制限するよう構成された誤発進抑制装置において、
前記制御ユニットは、前記車両が被牽引車両を牽引しているか否かを判定し、前記車両が被牽引車両を牽引していると判定したときには、成立していると判定され難くなるように前記所定の判定条件を変更するよう構成された誤発進抑制装置。
【請求項2】
請求項1に記載の誤発進抑制装置において、
前記所定の判定条件は、アクセル開度が第一の基準開度以上であり且つアクセル開度速度が基準開度速度以上であることを含み、
更に、前記制御ユニットは、前記車両が被牽引車両を牽引していると判定したときには、前記第一の基準開度及び前記基準開度速度の少なくとも一方を大きくなるように変更するよう構成された誤発進抑制装置。
【請求項3】
請求項1に記載の誤発進抑制装置において、
前記所定の判定条件は、前記車両の車速が基準値以下であり且つアクセル開度が第二の基準開度以上であることを含み、
更に、前記制御ユニットは、前記車両が被牽引車両を牽引していると判定したときには、前記第二の基準開度を大きくなるように変更するよう構成された誤発進抑制装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つに記載の誤発進抑制装置において、
前記制御ユニットは、運転者のアクセル操作が誤操作であると判定したときには、前記駆動装置により発生される駆動力を制限上限値に制限するよう構成され、
更に、前記制御ユニットは、前記車両が被牽引車両を牽引していると判定したときには、前記車両が被牽引車両を牽引していないと判定したときに比して、前記制限上限値を大きくするよう構成された誤発進抑制装置。
【請求項5】
請求項4に記載の誤発進抑制装置において、前記制御ユニットは、前記車両の総重量の情報を取得し、前記車両の総重量が大きいほど前記制限上限値が大きくなるように、前記車両の総重量に応じて前記制限上限値を可変設定するよう構成された誤発進抑制装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の誤発進抑制装置において、前記制御ユニットは、前記車両の前方に障害物があると判定し且つ運転者のアクセル操作が誤操作であると判定したときに、前記駆動装置により発生される駆動力を制限上限値に制限するよう構成された誤発進抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両の誤発進抑制装置に係る。
【背景技術】
【0002】
運転支援装置の一つとして、例えば下記の特許文献1に記載されているように、所定の判定条件が成立することにより運転者のアクセル操作が誤操作であると判定したときには、車両の駆動力を制限するよう構成された誤発進抑制装置が知られている。この種の運転支援装置によれば、運転者のアクセル操作が誤操作であることに起因する車両の誤発進を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-129228号公報
【発明の概要】
【0004】
〔発明が解決しようとする課題〕
自動車などの車両がトラクタとして被牽引車両(トレーラー)を牽引することがある。車両が被牽引車両を牽引する場合には、車両が被牽引車両を牽引していない場合に比して、車両の総重量、即ち車両の重量及び被牽引車両の重量の和が大きい値になる。そのため、車両を駆動するために必要な駆動力も大きくなるので、運転者のアクセル操作量も大きくなる。特に、車両の発進時には、運転者のアクセル操作量の大きさ及び増大速度の何れも大きくなる。
【0005】
しかるに、上記特許文献1に記載された車両制御装置のような従来の誤発進抑制装置においては、車両が被牽引車両を牽引しているか否かによって車両を駆動するために必要な駆動力が異なり、運転者のアクセル操作量も異なることが考慮されない。そのため、車両が被牽引車両を牽引する場合に、運転者のアクセル操作が誤操作ではないにも拘らず、アクセルの誤操作であると誤って判定されることに起因して、車両の駆動力が不必要に制限されることがある。
【0006】
本発明の主要な課題は、車両が被牽引車両を牽引する状況において、アクセルの誤操作であると誤って判定されることに起因して、車両の駆動力が不必要に制限される虞が低減されるよう改良された誤発進抑制装置を提供することである。
【0007】
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
本発明によれば、車両(60)の駆動力を発生する駆動装置(24)を制御する制御ユニット(10、20)を備え、制御ユニットは、運転者のアクセル操作が誤操作であるか否かを所定の判定条件が成立しているか否かにより判定し(S60)、運転者のアクセル操作が誤操作であると判定したときには、駆動装置により発生される駆動力を制限する(S100、S130)よう構成された誤発進抑制装置(100)が提供される。
【0008】
制御ユニットは、車両が被牽引車両を牽引しているか否かを判定し(S10)、車両が被牽引車両を牽引していると判定したときには、成立していると判定され難くなるように所定の判定条件を変更する(S50)よう構成される。
【0009】
上記の構成によれば、車両が被牽引車両を牽引しているか否かが判定され、車両が被牽引車両を牽引していると判定されたときには、成立していると判定され難くなるように所定の判定条件が変更される。
【0010】
よって、車両が被牽引車両を牽引する状況において、所定の判定条件が成立していると判定され難くなるので、アクセルの誤操作であると誤って判定されることに起因して、車両の駆動力が不必要に制限される虞を低減することができる。
【0011】
〔発明の態様〕
本発明の一つの態様においては、所定の判定条件は、アクセル開度(Acc)が第一の基準開度(基準値Accp)以上であり且つアクセル開度速度(Accd)が基準開度速度(基準値Accdp)以上であることを含み(S64)、更に、制御ユニットは、車両が被牽引車両を牽引していると判定したときには、第一の基準開度及び基準開度速度の少なくとも一方を大きくなるように変更する(S50)よう構成される。
【0012】
上記態様によれば、アクセル開度が第一の基準開度以上であり且つアクセル開度速度が基準開度速度以上であることを含む所定の条件が成立しているか否かの判定により、運転者のアクセル操作が誤操作であるか否かが判定される。更に、車両が被牽引車両を牽引していると判定されたときには、第一の基準開度及び基準開度速度の少なくとも一方が大きくなるように変更される。
【0013】
よって、車両が被牽引車両を牽引していても、第一の基準開度及び基準開度速度の何れも大きくなるように変更されない場合に比して、成立していると判定され難くなるように所定の判定条件を変更することができる。
【0014】
本発明の一つの態様においては、所定の判定条件は、車両(60)の車速(V)が基準値(Vb)以下であり且つアクセル開度(Acc)が第二の基準開度(基準値Accc)以上であることを含み(S74)、更に、制御ユニットは、車両が被牽引車両を牽引していると判定したときには、第二の基準開度を大きくなるように変更する(S50)よう構成される。
【0015】
運転者のアクセルの誤操作に起因して誤発進が発生するのは、車両が停止又は極低速にて走行する状況において運転者のアクセル操作量が過大になる場合である。よって、車速及びアクセル操作量の両方が判定される必要がある。
【0016】
上記態様によれば、車両の車速が基準値以下であり且つアクセル開度が第二の基準開度以上であること含む所定の条件が成立しているか否かの判定により、運転者のアクセル操作が誤操作であるか否かが判定される。更に、車両が被牽引車両を牽引していると判定されたときには、第二の基準開度が大きくなるように変更される。
【0017】
よって、車両が被牽引車両を牽引していても、第二の基準開度が大きくなるように変更されない場合に比して、成立していると判定され難くなるように所定の判定条件を変更することができる。また、車速が判定されるので、運転者のアクセルの誤操作に起因して誤発進が発生する状況であるか否かを判定することができる。
【0018】
本発明の他の一つの態様においては、制御ユニット(10、20)は、運転者のアクセル操作が誤操作であると判定したときには(S60)、駆動装置(24)により発生される駆動力を制限上限値に制限する(S100、S130)よう構成され、更に、制御ユニットは、車両(60)が被牽引車両を牽引していると判定したときには(S10)、車両が被牽引車両を牽引していないと判定したときに比して、制限上限値を大きくする(S102~S120)よう構成される。
【0019】
上記態様によれば、運転者のアクセル操作が誤操作であると判定されたときには、駆動装置により発生される駆動力が制限上限値に制限される。更に、車両が被牽引車両を牽引していると判定されたときには、車両が被牽引車両を牽引していないと判定されたときに比して、制限上限値が大きくされる。
【0020】
よって、車両が被牽引車両を牽引していると判定されても、制限上限値が大きくされない場合に比して、駆動装置により発生される駆動力が不足することに起因して車両の発進が円滑に行われなくなる虞を低減することができる。
【0021】
更に、本発明の他の一つの態様においては、制御ユニット(10、20)は、車両(60)の総重量(W)の情報を取得し、車両の総重量が大きいほど制限上限値が大きくなるように、車両の総重量に応じて制限上限値を可変設定する(S102~S120)よう構成される。
【0022】
車両が被牽引車両を牽引して登坂する状況においては、坂道の傾斜角をθとすると、車両及び被牽引車両にはそれらの重量の和である総重量にsinθを乗算した力が坂道に沿って下り方向に作用する。この下り方向の力は、総重量が大きいほど大きくなるので、車両の駆動力が不足すると、車両及び被牽引車両の発進が阻害されるだけでなく、車両及び被牽引車両が坂道に沿ってずり下がってしまう。
【0023】
上記態様によれば、車両の総重量が大きいほど制限上限値が大きくなるように、車両の総重量に応じて制限上限値が可変設定される。よって、制限上限値が上述のように車両の総重量に応じて可変設定されない場合に比して、車両が被牽引車両を牽引して登坂する状況において、車両の駆動力が不足することに起因して、車両及び被牽引車両の発進が阻害されたり車両及び被牽引車両が坂道に沿ってずり下がったりする虞を低減することができる。
【0024】
更に、本発明の他の一つの態様においては、制御ユニット(10、20)は、車両(60)の前方に障害物があると判定し且つ運転者のアクセル操作が誤操作であると判定したときに(S82)、駆動装置により発生される駆動力を制限上限値に制限する(S100、S130)よう構成される。
【0025】
運転者のアクセルの誤操作に起因する誤発進が発生した場合に車両の駆動力が制限される必要があるのは、車両の前方に障害物があり、車両が障害物に衝突する虞がある場合である。よって、車両の前方に障害物があるか否かが判定される必要がある。
【0026】
上記態様によれば、車両の前方に障害物があると判定され且つ運転者のアクセル操作が誤操作であると判定されたときに、駆動装置により発生される駆動力が制限上限値に制限される。よって、車両の前方に障害物が存在しない状況において、駆動力が不必要に制限されることを回避しつつ、誤発進すると車両が障害物に衝突する虞がある状況において、駆動力を制限し、誤発進を抑制することができる。
【0027】
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いられる名称及び/又は符号が括弧書きで添えられている。しかし、本発明の各構成要素は、括弧書きで添えられた名称及び/又は符号に対応する実施形態の構成要素に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による誤発進抑制装置の実施形態を示す概略構成図である。
図2】車両がトレーラを牽引している状況を示す図である。
図3】実施形態における駆動力抑制の指令制御ルーチンを示すフローチャートである。
図4】誤発進抑制の要否判定制御のサブルーチンを示すフローチャートである。
図5】駆動力抑制のための要求加速度の設定制御のサブルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付の図を参照して、本発明の実施形態にかかる誤発進抑制装置について詳細に説明する。
【0030】
<構成>
図1に示されているように、実施形態にかかる誤発進抑制装置100は、車両60に適用され、運転支援ECU10を含んでいる。車両60は、駆動ECU20、制動ECU30及びメータECU40を備えている。以下の説明においては、車両60を先行車両のような他車両と区別するため、必要に応じて自車両と指称する。
【0031】
各ECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える電子制御装置(Electronic Control Unit)であり、CAN(Controller Area Network)52を介して相互に情報を送受信可能に接続されている。各ECUのマイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェースなどを含んでいる。CPUは、ROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現するようになっている。これらのECUは、幾つか又は全部が一つのECUに統合されてもよい。
【0032】
後に詳細に説明するように、運転支援ECU10のROMは、図3乃至図5に示されたフローチャートに対応する誤発進抑制制御プログラムを記憶しており、CPUは、該プログラムに従って誤発進抑制制御を実行する。後に詳細に説明するように、CPUは、運転者のアクセル操作が誤操作であり、誤発進が抑制されるべきであるか否かを所定の判定条件が成立しているか否かにより判定する。CPUは、運転者のアクセル操作が誤操作であると判定したときには、要求加速度Gxdrを示す信号を駆動ECU20へ出力することにより、車両60の駆動力を制限する。
【0033】
CPUは、車両60が被牽引車両を牽引しているか否かを判定し、車両が被牽引車両を牽引していると判定したときには、成立していると判定され難くなるように所定の判定条件を変更する。更に、CPUは、車両60が被牽引車両を牽引していると判定したときには、車両が被牽引車両を牽引していないと判定したときに比して、要求加速度Gxdrを大きい値に設定する。
【0034】
また、運転支援ECU10のROMは、図には示されていない衝突回避支援制御プログラムを記憶しており、CPUは、該プログラムに従って衝突回避支援制御を実行する。即ち、運転支援ECU10のCPUは、自車両60の前方に障害物が検出されると、警報装置56によって運転者に対し警報を発し、衝突の可能性が更に高くなると、自動ブレーキ制御によって自車両が障害物に衝突することを回避する。衝突回避支援制御は、一般に、PCS制御(プリクラッシュセーフティ制御)と呼ばれているので、衝突回避支援制御をPCS制御と呼ぶ。
【0035】
図1に示されているように、運転支援ECU10には、カメラセンサ12、レーダーセンサ14、車速センサ16、前後加速度センサ18、牽引センサ54及び警報装置56が接続されている。なお、カメラセンサ12、レーダーセンサ14、車速センサ16、前後加速度センサ18、牽引センサ54及び警報装置56の少なくとも一つがCAN52に接続されていてもよい。
【0036】
カメラセンサ12は、図には示されていないが、カメラ部と、カメラ部によって撮影して得られた画像データを解析して道路の白線、先行する他車両、停止している他車両などの物標を認識する認識部とを備えている。カメラセンサ12のカメラ部は、車両60の前方の風景を撮影する。カメラセンサ12の認識部は、認識した物標に関する情報を所定時間の経過毎に運転支援ECU10に供給する。
【0037】
レーダーセンサ14は、レーダ送受信部及び信号処理部(図示せず)を備えており、レーダ送受信部が、ミリ波帯の電波(以下、「ミリ波」と称呼する)を放射し、放射範囲内に存在する立体物(例えば、他車両両、自転車、ガードレールなど)によって反射されたミリ波(即ち、反射波)を受信する。信号処理部は、送信したミリ波と受信した反射波との位相差、反射波の減衰レベル及びミリ波を送信してから反射波を受信するまでの時間などに基づいて、自車両両と立体物との距離、自車両両と立体物との相対速度、自車両両に対する立体物の相対位置(方向)などを表す情報(以下、周辺情報と呼ぶ)を所定時間の経過毎に取得して運転支援ECU10に供給する。
【0038】
ECU20は、カメラセンサ12から供給される物標情報とレーダーセンサ14から供給される立体物情報とを合成して、精度の高い立体物情報を取得する。よって、カメラセンサ12及びレーダーセンサ14は、車両12の前方の障害物を検出する障害物検出装置として機能する。なお、カメラセンサ12に代えて、LiDAR(Light Detection And Ranging)が使用されてもよい。
【0039】
車速センサ16は、車両60の各車輪の車輪速度を検出することにより車速Vを検出し、車速Vを示す信号を運転支援ECU10に供給する。前後加速度センサ18は、車両60の前後加速度Gxを検出し、前後加速度Gxを示す信号を運転支援ECU10に供給する。牽引センサ54は、車両60が図2に示されているように被牽引車両(トレーラ)102を牽引しているか否かを検出し、検出結果を示す信号を運転支援ECU10に供給する。
【0040】
駆動ECU20には、アクセル開度センサ22及び車両60の駆動力を発生する駆動装置24が接続されている。アクセル開度センサ22は、運転者によるアクセルペダル22Aの踏込み量、即ち運転者の駆動操作量を示すアクセル開度Accを検出し、アクセル開度Accを示す信号を運転支援ECU10に供給する。駆動装置24は、エンジンアクチュエータ26及びエンジン28を含んでいる。
【0041】
エンジンアクチュエータ26は、エンジン28の運転状態を変更するためのアクチュエータであり、例えばスロットル弁の開度を変更するスロットル弁アクチュエータを含んでいる。駆動ECU20は、アクセル開度センサ22によって検出されたアクセル開度Accに基づいて車両の目標加速度Gdtを演算し、車両60の駆動力が目標加速度Gdtに対応する駆動力になるようにエンジンアクチュエータ26の作動を制御する。
【0042】
駆動ECU20は、運転支援ECU10から駆動力抑制指令としての要求加速度Gxdrを示す信号を受信したときには、車両60の駆動力が要求加速度Gxdrに対応する駆動力になるようにエンジンアクチュエータ26の作動を制御する。即ち、駆動ECU20は、エンジン28が発生する出力トルク(車両60の駆動力)を抑制するようにエンジンアクチュエータ26の作動を制御する。
【0043】
なお、車両60が電気自動車の場合には、エンジンアクチュエータ26は電動モータの駆動装置であり、車両がハイブリッド車両である場合には、エンジンアクチュエータ26は上記エンジンアクチュエータ及び電動モータの駆動装置である。また、車両60は、駆動輪が左右の前輪である前輪駆動車、駆動輪が左右の後輪である後輪駆動車、駆動輪が左右の前輪及び左右の後輪である四輪駆動車の何れであってもよい。
【0044】
制動ECU30には、圧力センサ32及び車両60の制動力を発生する制動装置34が接続されている。圧力センサ32は、運転者の制動操作量を示すマスタシリンダ圧力Pmを検出し、マスタシリンダ圧力Pmを示す信号を運転支援ECU10に供給する。制動装置34は、ブレーキアクチュエータ36及び摩擦ブレーキ機構38を含んでいる。
【0045】
ブレーキアクチュエータ32は、ブレーキペダルの踏力によって作動油を加圧する図示しないマスタシリンダと、左右前輪64FL、64FR及び左右後輪64RL、64RR(図2参照)に設けられた摩擦ブレーキ機構38との間の油圧回路に設けられている。摩擦ブレーキ機構38は、対応する車輪と共に回転するブレーキディスク38aと、車体(図示せず)により支持されたブレーキキャリパ38bとを備えている。ブレーキアクチュエータ32は、制動ECU30からの指示に応じてブレーキキャリパ38bに内蔵されたホイールシリンダに供給される油圧を調整し、その油圧によってブレーキパッド(図示せず)をブレーキディスク38aに押し付けることにより摩擦制動力を発生させる。
【0046】
制動ECU30は、圧力センサ32によって検出されたマスタシリンダ圧力Pmに基づいて車両60の目標減速度を演算し、車両の減速度が目標減速度になるようにブレーキアクチュエータ32の作動を制御する。また、制動ECU30は、運転支援ECU10からPCS制御などの制動指令を受信したときには、制動指令に含まれる要求減速度にて車両60が減速するようにブレーキアクチュエータ32の作動を制御する。
【0047】
メータECU40には、表示器42が接続されている。メータECU40は、運転支援ECU10からの駆動力抑制指令が出力されているときには(後述の誤発進抑制フラグFcが1であり、駆動力が抑制されているときには)、駆動力が抑制されている旨を表示器42に表示する。表示器42は、例えばヘッドアップディスプレイ或いはメータ類及び各種の情報が表示されるマルチインフォーメーションディスプレイである。
【0048】
なお、実施形態においては、運転支援ECU10のCPUは、車両60の制動時に、前後加速度センサ18により検出された車両60の前後加速度Gxと制動ECU30から供給される車両の制動力Fvbとの関係に基づいて、車両60の総重量Wを取得し、RAMに記憶する。総重量Wは、車両60が被牽引車両を牽引している場合には、車両60の重量と被牽引車両の重量との和である。また、総重量Wは、車両60の駆動時に、前後加速度センサ18により検出された車両60の前後加速度Gxと駆動ECU20から供給される車両の駆動力Fvdとの関係に基づいて推定されてもよい。更に、総重量Wは、運転支援ECU10以外のECUにより推定されてもよい。
【0049】
図2に示されているように、車両60の後端ブラケット60Bには、ジョイント100によって被牽引車両102の前端ブラケット102Bが連結され得るようになっている。よって、車両60は必要に応じて被牽引車両102を牽引するトラクタとして機能する。
【0050】
図2に示されているように、車両12及び被牽引車両102が直進状態にあるときには、車両60の長手方向中心線60A及び被牽引車両102の長手方向中心線102Aは互いに整合し、ジョイント100の中心は、これらの長手方向中心線上に位置する。また、図には示されていないが、車両12及び被牽引車両102が旋回状態にあるときには、車両60の長手方向中心線60A及び被牽引車両102の長手方向中心線102Aは互いに交差し、ジョイント100の中心は、これらの長手方向中心線の交点上に位置する。
【0051】
被牽引車両102には、制動ECU104が搭載されており、制動ECU104は、図1に示されているように、コネクタ106及びCAN52を介して運転支援ECU10と電気的に接続されるようになっている。牽引センサ54は、運転支援ECU10及び制動ECU104がコネクタ106により電気的に接続されるとオンになるスイッチであってよい。
【0052】
制動ECU104には、ブレーキアクチュエータ108が接続されている。ブレーキアクチュエータ108は、高圧の作動油を供給する油圧源(図示せず)と、左輪110L及び右輪110Rに設けられた摩擦ブレーキ機構112との間の油圧回路に設けられている。摩擦ブレーキ機構112は、摩擦ブレーキ機構38と同様に構成され、運転者の要求減速度又はPCS制御の要求減速度に対応する摩擦制動力が発生するよう、制動ECU104により制御される。
【0053】
<駆動力抑制の指令制御ルーチン>
次に、図3に示されたフローチャートを参照して実施形態における駆動力抑制の指令制御ルーチンについて説明する。図3に示されたフローチャートによる駆動力抑制の指令制御は、図1には示されていない運転支援スイッチがオンであるときに、所定の制御周期にて繰返し運転支援ECU10のCPUにより実行される。
【0054】
なお、以下の説明においては、駆動力抑制の指令制御を単に「指令制御」と指称する。また、以下の指令制御の説明においては、CPUは、運転支援ECU10のCPUである。更に、駆動力抑制の指令制御の開始時に、全てのフラグFt、Fa、Fb及びFcが0に初期化される。
【0055】
まず、ステップS10においては、CPUは、牽引センサ54により車両60が牽引している被牽引車両が検出されているか否かの判定により、車両60が被牽引車両を牽引しているか否かを判定する。CPUは、肯定判定したときには、指令制御をステップS40へ進め、否定判定をしたときには、指令制御をステップS20へ進める。
【0056】
ステップS20においては、CPUは、フラグFtを0に設定する。なお、フラグFtが0であることは、車両60が被牽引車両を牽引していないことを意味し、フラグFtが1であることは、車両60が被牽引車両を牽引していることを意味する。
【0057】
ステップS30においては、CPUは、アクセル開度Accに関する判定の基準値Accp及びAcccをそれぞれ標準の値Accpn及びAcccnに設定し、アクセル開度速度Accdに関する判定の基準値Accdpを標準の値Accdpnに設定する。なお、Accpn及びAcccnはそれぞれ例えば70%、90%であってよく、Accdpnは例えば100%/secであってよい。
【0058】
ステップS40においては、CPUは、フラグFtを1に設定する。ステップS50においては、CPUは、アクセル開度Accに関する判定の基準値Accp及びAcccをそれぞれ牽引時の値Accph及びAccchに設定し、アクセル開度速度Accdに関する判定の基準値Accdpを牽引時の値Accdphに設定する。なお、Accph及びAccchはそれぞれAccpn及びAcccnよりも大きい例えば85%、95%であってよく、AccdphはAccdpnよりも大きい例えば120%/secであってよい。
【0059】
ステップS60においては、CPUは、図4に示されたフローチャートに従って、運転者のアクセル操作が誤操作であり、誤発進の抑制が必要であるか否かを所定の判定条件が成立しているか否かにより判定する。CPUは、否定判定したときには、指令制御を一旦終了し、肯定判定をしたときには、指令制御をステップS100へ進める。
【0060】
ステップS100においては、CPUは、図5に示されたフローチャートに従って、車両60の駆動力を抑制するための要求加速度Gxdrを設定する。後に詳細に説明するように、要求加速度Gxdrは、車両60が被牽引車両を牽引しているときには、車両60が被牽引車両を牽引していないときに比して、大きい値に設定される。
【0061】
ステップS130においては、CPUは、駆動力抑制指令としての要求加速度Gxdrを示す信号を駆動ECU20へ出力する。よって、車両60の駆動力は要求加速度Gxdrに対応する駆動力になるように制御される。
【0062】
<誤発進抑制の要否判定制御のサブルーチン>
次に、図4に示されたフローチャートを参照して、上記ステップ60において実行される誤発進抑制の要否判定制御のサブルーチンについて説明する。なお、以下の説明においては、誤発進抑制の要否判定制御を単に要否判定制御と呼称する。
【0063】
まず、ステップS62においては、CPUは、フラグFaが1であるか否か、即ち後述のステップS64において既に肯定判定が行なわれたか否かを判定する。CPUは、肯定判定をしたときには、要否判定制御をステップS68へ進め、否定判定をしたときには、要否判定制御をステップS64へ進める。
【0064】
ステップS64においては、CPUは、アクセル開度Accが基準値Accp以上であり且つアクセル開度速度Accdが基準値Accdp以上であるか否かの判定により、運転者のアクセル操作が誤操作であると認定するための前提条件が成立しているか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、要否判定制御をステップS90へ進め、肯定判定をしたときには、ステップS66においてフラグFaを1に設定した後、要否判定制御をステップS70へ進める。なお、基準値Accpは、車両60が被牽引車両を牽引していないときには、Accpnであり、車両60が被牽引車両を牽引しているときには、Accphである。基準値Accdpは、車両60が被牽引車両を牽引していないときには、Accdpnであり、車両60が被牽引車両を牽引しているときには、Accdphである。
【0065】
ステップS68においては、CPUは、アクセル開度Accが終了基準値Accpe(例えば30%)以下であるか、又はステップS64において肯定判定をした時点から基準時間tp(例えば0.5秒)以上経過しているか否かの判定により、前提条件の成立が終了したか否かを判定する。CPUは、肯定判定をしたときには、要否判定制御をステップS72へ進め、否定判定をしたときには、要否判定制御をステップS70へ進める。
【0066】
ステップS70においては、CPUは、フラグFbが1であるか否か、即ち後述のステップS74において既に肯定判定が行なわれたか否かを判定する。CPUは、肯定判定をしたときには、要否判定制御をステップS78へ進め、否定判定をしたときには、要否判定制御をステップS74へ進める。
【0067】
ステップS72においては、CPUは、ステップS70と同様に、フラグFbが1であるか否かを判定する。CPUは、肯定判定をしたときには、要否判定制御をステップS78へ進め、否定判定をしたときには、要否判定制御をステップS90へ進める。
【0068】
ステップS74においては、CPUは、上記前提条件が成立している(Fa=1)ことを前提に、下記の三つの条件の全てが成立しているか否かの判定により、誤操作認定の条件が成立しているか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、要否判定制御をステップS90へ進め、肯定判定をしたときには、ステップS76においてフラグFbを1に設定した後、要否判定制御をステップS80へ進める。なお、下記の基準値Acccは、車両60が被牽引車両を牽引していないときには、Acccnであり、車両60が被牽引車両を牽引しているときには、Accchである。
PCS制御による制動中でない
車速Vが基準値Vb(例えば15km/h)以下である
アクセル開度Accが基準値Accc以上である
【0069】
ステップS78においては、CPUは、アクセル開度Accが終了基準値Acce(例えば30%)以下であるか否かの判定により、誤操作認定条件の成立が終了したか否かを判定する。CPUは、肯定判定をしたときには、要否判定制御をステップS90へ進め、否定判定をしたときには、要否判定制御をステップS80へ進める。
【0070】
ステップS80においては、CPUは、フラグFcが1であるか否か、即ち後述のステップS82において既に肯定判定が行なわれたか否かを判定する。CPUは、肯定判定をしたときには、要否判定制御をステップS88へ進め、否定判定をしたときには、要否判定制御をステップS82へ進める。
【0071】
ステップS82においては、CPUは、上記誤操作認定条件が成立している(Fb=1)ことを前提に、下記の二つの条件の全てが成立しているか否かの判定により、誤発進抑制の条件が成立しているか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、要否判定制御をステップS90へ進め、肯定判定をしたときには、ステップS84においてフラグFcを1に設定し、ステップS86において誤発進の抑制が必要であると判定する。
車両60の前方の所定の距離の範囲内に障害物(図示せず)が存在する
車速Vが基準値Vc(例えば10km/h)以下である
【0072】
ステップS88においては、CPUは、障害物との衝突の虞がないか否かの判定により、誤発進の抑制条件の成立が終了したか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、要否判定制御をステップS86へ進め、肯定判定をしたときには、要否判定制御をステップS90へ進める。
【0073】
ステップS90においては、CPUは、フラグFa、Fb及びFcを0にリセットし、ステップS92においては、CPUは、誤発進の抑制が不要であると判定する。
【0074】
<要求加速度の設定制御のサブルーチン>
次に、図5に示されたフローチャートを参照して、上記ステップ100において実行される駆動力抑制のための要求加速度の設定制御のサブルーチンについて説明する。なお、以下の説明においては、要求加速度の設定制御を単に設定制御と呼称する。
【0075】
まず、ステップS102においては、CPUは、フラグFtが1であるか否か、即ち車両60が被牽引車両を牽引しているか否かを判定する。CPUは、肯定判定をしたときには、設定制御をステップS108へ進め、否定判定をしたときには、設定制御をステップS104へ進める。
【0076】
ステップS104においては、CPUは、車速Vが基準値Vr(例えば5km/h)未満であるか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、設定制御をステップS110へ進め、肯定判定をしたときには、ステップS106において要求加速度GxdrをGxdr5(例えば0.3km/h)に設定する。
【0077】
ステップS108においては、CPUは、ステップS104と同様に、車速Vが基準値Vr未満であるか否かを判定する。CPUは、肯定判定をしたときには、設定制御をステップS112へ進め、否定判定をしたときには、ステップS110において要求加速度GxdrをGxdr1(例えば2.0km/h)に設定する。
【0078】
ステップS112においては、CPUは、車両60の総重量Wが第一の基準値W1(例えば6000kg)を越えているか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、設定制御をステップS116へ進め、肯定判定をしたときには、ステップS114において要求加速度GxdrをGxdr2(例えば1.5km/h)に設定する。
【0079】
ステップS116においては、CPUは、車両60の総重量Wが第一の基準値W1よりも小さい第二の基準値W2(例えば4000kg)を越えているか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、ステップS118において要求加速度GxdrをGxdr4(例えば0.5km/h)に設定し、肯定判定をしたときには、ステップS120において要求加速度GxdrをGxdr3(例えば0.8km/h)に設定する。
【0080】
なお、要求加速度Gxdrは駆動力の制限上限値に対応する値である。要求加速度Gxdr1~Gxdr5は、この順に小さくなるので、要求加速度Gxdr1~Gxdr5に対応する駆動力の制限上限値は、この順に小さくなる。例えば、要求加速度Gxdr4に対応する駆動力の制限上限値は、要求加速度Gxdr3に対応する駆動力の制限上限値よりも小さい。
【0081】
特に、車両60が被牽引車両を牽引しているときの要求加速度Gxdr2~Gxdr4、車両60が被牽引車両を牽引していないときの要求加速度Gxdr5よりも大きく、車速Vが基準値Vr以上であるときの要求加速度Gxdr1よりも小さい。更に、要求加速度Gxdr2~Gxdr4に対応する駆動力の制限上限値は、ステップS74の判別におけるアクセル開度Accの基準値Accchに対応する車両の加速度Gxdよりも小さい。要求加速度Gxdr5に対応する駆動力の制限上限値は、ステップS74の判別におけるアクセル開度Accの基準値Acccnに対応する車両の加速度Gxdよりも小さい。
【0082】
以上の説明から解るように、実施形態によれば、車両60が被牽引車両を牽引しているか否かが判定され(S10)、車両が被牽引車両を牽引していると判定されたときには、成立していると判定され難くなるように所定の判定条件(アクセル開度Accの基準値Accp、Accc及びアクセル開度速度Accdの基準値Accdp)が大きくなるよう変更される(S50)。
【0083】
よって、車両60が被牽引車両を牽引する状況において、所定の判定条件が成立していると判定され難くなるので、アクセルの誤操作であると誤って判定されることに起因して、車両60の駆動力が不必要に制限される虞を低減することができる。
【0084】
特に、実施形態によれば、前提条件の成立判定(S64)において、アクセル開度Accが第一の基準値Accp以上であり且つアクセル開度速度Accdが基準値Accdp以上であるか否かにより、運転者のアクセル操作が誤操作であるか否かが判定される。更に、車両60が被牽引車両を牽引していると判定されたときには(S10)、アクセル開度の第一の基準値Accp及びアクセル開度速度の基準値Accdpの両方が大きくなるように変更される(S50)。
【0085】
よって、車両60が被牽引車両を牽引していても、第一の基準値Accp及び基準値Accdpの何れも大きくなるように変更されない場合に比して、成立していると判定され難くなるように所定の判定条件を変更することができる。
【0086】
また、実施形態によれば、アクセルの誤操作の判定において、車両60の車速Vが基準値Vb以下であり且つアクセル開度Accが第二の基準値Accc以上であるか否かにより、運転者のアクセル操作が誤操作であるか否かが判定される。更に、車両60が被牽引車両を牽引していると判定されたときには、第二の基準値Acccが大きくなるように変更される。
【0087】
よって、車両60が被牽引車両を牽引していても、第二の基準値Acccが大きくなるように変更されない場合に比して、成立していると判定され難くなるように所定の判定条件を変更することができる。また、車速Vが基準値Vb以下であるか否かが判定されるので、運転者のアクセルの誤操作に起因して誤発進が発生する状況であるか否かを判定することができる。
【0088】
また、実施形態によれば、運転者のアクセル操作が誤操作であると判定されたときには(S60)、駆動装置24により発生される駆動力が制限上限値に制限される(S100、S130)。更に、車両60が被牽引車両を牽引していると判定されたときには(S10)、車両が被牽引車両を牽引していないと判定されたときに比して、制限上限値が大きくされる(S102~S120)。
【0089】
よって、車両60が被牽引車両を牽引していると判定されても、制限上限値が大きくされない場合に比して、駆動装置24により発生される駆動力が不足することに起因して車両60の発進が円滑に行われなくなる虞を低減することができる。
【0090】
更に、実施形態によれば、車両60の総重量Wが大きいほど制限上限値が大きくなるように、車両の総重量に応じて制限上限値が可変設定される(S102~S120)。よって、制限上限値が上述のように車両60の総重量Wに応じて可変設定されない場合に比して、車両が被牽引車両を牽引して登坂する状況において、車両の駆動力が不足することに起因して、車両及び被牽引車両の発進が阻害されたり車両及び被牽引車両が坂道に沿ってずり下がったりする虞を低減することができる。
【0091】
更に、実施形態によれば、車両60の前方に障害物があると判定され且つ運転者のアクセル操作が誤操作であると判定されたときに(S82)、駆動装置24により発生される駆動力が制限上限値に制限される(S100、S130)。よって、車両60の前方に障害物が存在しない状況において、駆動力が不必要に制限されることを回避しつつ、誤発進すると車両が障害物に衝突する虞がある状況において、駆動力を制限し、誤発進を抑制することができる。
【0092】
以上においては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0093】
例えば、上述の実施形態においては、車両60が被牽引車両を牽引しているときには(S10)、アクセル開度Acc及びアクセル開度速度Accdに関する判定の基準値が、標準の値よりも大きい牽引時の値に設定される(S50)。しかし、標準の値よりも大きい牽引時の値に設定されるのは、アクセル開度Accに関する判定の基準値及びアクセル開度速度Accdに関する判定の基準値の一方のみであってもよい。
【0094】
また、上述の実施形態においては、車両60は牽引センサ54を有し、ステップS10において、牽引センサ54の検出結果に基づいて車両60が被牽引車両を牽引しているか否かが判定される。しかし、車両が被牽引車両を牽引しているか否かの判定は、バックカメラが撮影する車両後方の情報に基づいて判定されてもよく、車両の制動力と減速度との関係に基づいて車両の重量が推定され、推定された重量が車両単独の重量よりも大きいか否かにより判定されてもよい。更に、これらの判定が組み合わされてもよい。
【0095】
また、上述の実施形態においては、車両60の総重量Wが推定され、図5に示されたフローチャートに従って実行される要求加速度の設定制御において、要求加速度Gxdrは総重量Wが大きいほど大きくなるよう可変設定される。しかし、車両60の総重量Wの推定が省略され、要求加速度Gxdrは総重量Wに関係なく一定の値に設定されてもよい。
【0096】
また、上述の実施形態においては、車両60が登坂する状況であるか否かは判定されない。しかし、車両60が登坂する状況であるときに、図5に示されたフローチャートに従って実行される要求加速度の設定制御が実行され、車両60が登坂する状況でないときには、要求加速度Gxdrは登坂時よりも小さい一定の値に設定されてもよい。
【0097】
更に、上述の実施形態においては、車両60が登坂する道路の傾斜角は判定されない。しかし、要求加速度Gxdrは、道路の傾斜角が大きいほど大きくなるよう可変設定されてもよい。
【0098】
更に、上述の実施形態においては、被牽引車両102は制動ECU104、ブレーキアクチュエータ108及び摩擦ブレーキ機構112を備えている。しかし、本発明の誤発進抑制装置は、制動ECU104などを備えていない被牽引車両を牽引する車両に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0099】
10…運転支援ECU、12…カメラセンサ、14…レーダーセンサ、16…車速センサ、18…前後加速度センサ、20…駆動ECU、22…アクセル開度センサ、24…駆動装置、28…エンジン、30…制動ECU、38…制動機構、40…メータECU、60…車両、54…牽引センサ、100…誤発進抑制装置、102…被牽引車両
図1
図2
図3
図4
図5