(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 41/16 20060101AFI20240820BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
F02D41/16
F02D29/06 F
(21)【出願番号】P 2021176533
(22)【出願日】2021-10-28
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】溝口 紘晶
(72)【発明者】
【氏名】尾田 真一
(72)【発明者】
【氏名】村上 恭章
(72)【発明者】
【氏名】加地 雅広
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-069734(JP,A)
【文献】特開2010-138877(JP,A)
【文献】特開平10-327599(JP,A)
【文献】特開昭59-155547(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0102892(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00 - 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関の駆動力に基づき発電する発電機と、
前記発電機が発電した電力により充電されるバッテリと、
前記バッテリから供給される電力を使用し、車両の乗員によってオンオフが切り替え可能な複数の電気機器と、
を備えている前記車両の制御装置であって、
前記複数の電気機器は、前記複数の電気機器の数よりも少ない複数のグループに、前記電気機器の使用電力の大きさに応じて分けられており、
複数の前記グループ毎に、異なる補正量を予め記憶しており、
同一の前記グループに属する前記電気機器のうち、動作している前記電気機器の数が予め定められた規定数以上のときに、前記規定数以上の前記グループに対応する前記補正量の分、前記内燃機関の機関回転速度を増大させる増大処理、を実行可能であ
り、
前記複数のグループは、
前記使用電力が予め定められた閾値未満の前記電気機器が属する第1グループと、
前記使用電力が前記閾値以上の前記電気機器が属する第2グループと、であり、
前記第1グループに対応する前記補正量である第1補正量は、前記第2グループに対応する前記補正量である第2補正量よりも小さく、且つ、前記第1グループに属する全ての前記電気機器の前記使用電力の合計値以上の電力を前記発電機が発電可能な値として設定されており、
前記第2補正量は、前記第2グループに属する全ての前記電気機器の前記使用電力の合計値以上の電力を前記発電機が発電可能な値として設定されている
車両の制御装置。
【請求項2】
前記増大処理では、
前記第2グループに属する前記電気機器のうち、動作している前記電気機器の数が前記規定数以上のとき、前記第1補正量に基づく前記機関回転速度の変更を行わずに、前記第2補正量の分、前記機関回転速度を増大させる
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記増大処理は、前記車両のアクセル操作量がゼロであり、且つ前記車両の車速が予め定められた規定車速以下であることを条件に行う
請求項1又は請求項2に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の車両は、内燃機関と、オルタネータと、バッテリと、複数の電気機器と、制御装置とを備えている。オルタネータは、内燃機関の駆動力に基づき発電する。バッテリは、オルタネータが発電した電力により充電される。複数の電気機器は、バッテリから供給される電力を使用する。制御装置は、バッテリに蓄えられた電力が予め定められた基準判定値よりも低いか否かを判定する。そして、制御装置は、バッテリに蓄えられた電力が基準判定値よりも低い場合に、内燃機関のアイドル回転速度を増大させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような車両では、車両の乗員による電気機器のオンオフ操作、及びアクセルペダルの操作に拘わらず、内燃機関のアイドル回転速度が変更される。このように、乗員の各種操作とは無関係にアイドル回転速度が変更されると、乗員が違和感を覚えるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための車両の制御装置は、内燃機関と、前記内燃機関の駆動力に基づき発電する発電機と、前記発電機が発電した電力により充電されるバッテリと、前記バッテリから供給される電力を使用し、車両の乗員によってオンオフが切り替え可能な複数の電気機器と、を備えている前記車両の制御装置であって、前記複数の電気機器は、前記複数の電気機器の数よりも少ない複数のグループに、前記電気機器の使用電力の大きさに応じて分けられており、複数の前記グループ毎に、異なる補正量を予め記憶しており、同一の前記グループに属する前記電気機器のうち、動作している前記電気機器の数が予め定められた規定数以上のときに、前記規定数以上の前記グループに対応する前記補正量の分、前記内燃機関の機関回転速度を増大させる増大処理、を実行可能である。
【0006】
上記構成によれば、乗員の電気機器のオンオフ操作に拠らずに機関回転速度が変化することが抑制される。したがって、自らの操作に拠らずに機関回転速度が変化して、乗員が違和感を覚えることを防げる。
【0007】
また、グループ内で動作している電気機器の数に応じてグループの状況毎に機関回転速度を変化させるので、各電気機器のオンオフを切り替える度に機関回転速度が変化することを抑制できる。すなわち、頻繁に機関回転速度が変化することに伴い、乗員が違和感を覚えることも防げる。
【0008】
上記構成において、前記複数のグループは、前記使用電力が予め定められた閾値未満の前記電気機器が属する第1グループと、前記使用電力が前記閾値以上の前記電気機器が属する第2グループと、であり、前記第1グループに対応する前記補正量である第1補正量は、前記第2グループに対応する前記補正量である第2補正量よりも小さくなっていてもよい。
【0009】
上記構成によれば、各グループに属する電気機器の使用電力の大小に応じて機関回転速度を調整できる。また、グループの数が2つであるため、機関回転速度の変更が頻繁に行われることがない。
【0010】
上記構成において、前記増大処理では、前記第2グループに属する前記電気機器のうち、動作している前記電気機器の数が前記規定数以上のとき、前記第1補正量に基づく前記機関回転速度の変更を行わずに、前記第2補正量の分、前記機関回転速度を増大させてもよい。
【0011】
上記構成によれば、機関回転速度は、第1補正量及び第2補正量のいずれも増大されていない状態、第1補正量のみが増大されている状態、第2補正量のみが増大されている状態、という3つの状態をとる。このような3段階での機関回転速度の調整であれば、乗員が違和感を覚える可能性は低減できる。また、第1グループに属する電気機器の使用電力は、第2グループに属する電気機器の使用電力に比較して小さいため、第2補正量の分、機関回転速度を増大させておけば、バッテリの電力が不足する可能性は低い。
【0012】
上記構成において、前記第1補正量は、前記第1グループに属する全ての前記電気機器の前記使用電力の合計値以上の電力を前記発電機が発電可能な値として設定されており、前記第2補正量は、前記第2グループに属する全ての前記電気機器の前記使用電力の合計値以上の電力を前記発電機が発電可能な値として設定されていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、各グループに属する全ての電気機器が動作する場合であっても、十分な電力が確保される。これにより、同じグループに属する電気機器であれば、動作する電気機器の数が変更されても、発電量の確保のために機関回転速度を変化させる必要はない。
【0014】
上記構成において、前記増大処理は、前記車両のアクセル操作量がゼロであり、且つ前記車両の車速が予め定められた規定車速以下であることを条件に行ってもよい。
上記構成では、車両の走行に伴う音が発生しにくくて車両の乗員に機関回転速度の変化に伴う音が知覚されやすい状況で機関回転速度が増大される。こうした機関回転速度の変化を知覚されやすい状況で、上記の増大処理に関する技術を適用することは特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
<車両の概略構成>
以下、一実施形態を
図1~
図2にしたがって説明する。先ず、車両100の概略構成について説明する。
【0017】
図1に示すように、車両100は、内燃機関10、トルクコンバータ20、自動変速機30、ディファレンシャル41、及び複数の駆動輪42を備えている。
内燃機関10は、クランクシャフト11を備えている。クランクシャフト11は、図示しない気筒における燃料と吸気との混合気の燃焼により回転する。クランクシャフト11の第1端は、トルクコンバータ20、自動変速機30、及びディファレンシャル41を介して左右の駆動輪42に連結している。トルクコンバータ20は、クランクシャフト11から入力されるトルクを変換して出力する。自動変速機30は、車両100の走行状態に応じて、複数の変速段のうちから1つの変速段を選択する。自動変速機30は、トルクコンバータ20から入力されるトルクを、選択した変速段に応じた比率で変速して出力する。ディファレンシャル41は、左右の駆動輪42に、回転速度の差が生じることを許容する。このように、車両100は、内燃機関10の駆動力により走行可能である。
【0018】
車両100は、ベルト50、オルタネータ51、及びバッテリ52を備えている。オルタネータ51は、ベルト50を介してクランクシャフト11の第2端に連結している。したがって、オルタネータ51は、内燃機関10の駆動力に基づき発電可能である。オルタネータ51が発電する電力は、クランクシャフト11の回転速度である機関回転速度NEが高くなるほど大きくなる。本実施形態において、オルタネータ51は、発電機の一例である。バッテリ52は、オルタネータ51と電気的に接続している。バッテリ52は、オルタネータ51が発電した電力により充電される。
【0019】
車両100は、複数の電気機器として、リアデフォッガ61、テールランプ62、全面デアイサ63、及びシートヒータ64を備えている。リアデフォッガ61は、車両100のリアウィンドウガラスの一部に取り付けられている。リアデフォッガ61は、図示しない電熱線を備えており、その電熱線が通電されることによりリアウィンドウガラスを温める。テールランプ62は、車両100の後方に取り付けられている。テールランプ62は、通電されることにより点灯する。全面デアイサ63は、車両100のフロントウィンドウガラスの全域に取り付けられている。全面デアイサ63は、図示しない電熱線を備えており、その電熱線が通電されることによりフロントウィンドウガラスを温める。シートヒータ64は、車両100のシートに取り付けられている。シートヒータ64は、図示しない電熱線を備えており、その電熱線が通電されることによりシートを温める。リアデフォッガ61、テールランプ62、全面デアイサ63、及びシートヒータ64は、バッテリ52から供給される電力を使用することにより動作する。
【0020】
リアデフォッガ61及びテールランプ62のそれぞれの使用電力は、予め定められた閾値未満である。すなわち、リアデフォッガ61及びテールランプ62は、使用電力が閾値未満のグループである第1グループに属している。全面デアイサ63及びシートヒータ64のそれぞれの使用電力は、予め定められた閾値以上である。すなわち、全面デアイサ63及びシートヒータ64は、使用電力が閾値以上のグループである第2グループに属している。したがって、リアデフォッガ61、テールランプ62、全面デアイサ63、及びシートヒータ64は、使用電力の大きさに応じて、電気機器の数である4つよりも少ない2つのグループに分けられている。なお、上記閾値の一例は、10A/秒である。
【0021】
車両100は、アクセル操作センサ71、車速センサ72、及びクランク角センサ73を備えている。アクセル操作センサ71は、車両100の運転者が操作するアクセルペダルの操作量であるアクセル操作量ACCを検出する。ここで、車両100の運転者のアクセルペダルの操作量が大きいほど、アクセル操作量ACCが大きな値になる。また、車両100の運転者がアクセルペダルを操作していない場合には、アクセル操作量ACCがゼロである。車速センサ72は、車両100の速度である車速SPを検出する。クランク角センサ73は、クランクシャフト11の近傍に位置している。クランク角センサ73は、クランクシャフト11の角度位置であるクランク角SCを検出する。
【0022】
車両100は、制御装置90を備えている。制御装置90は、アクセル操作量ACCを示す信号をアクセル操作センサ71から取得する。制御装置90は、車速SPを示す信号を車速センサ72から取得する。制御装置90は、クランク角SCを示す信号をクランク角センサ73から取得する。制御装置90は、クランク角SCに基づいて、クランクシャフト11の回転速度である機関回転速度NEを算出する。
【0023】
制御装置90は、アクセル操作量ACC及び車速SPに基づいて、車両100が走行するために必要な出力の要求値である車両要求出力を算出する。制御装置90は、車両要求出力に基づいた制御信号を内燃機関10に出力することにより、内燃機関10を制御する。
【0024】
制御装置90は、リアデフォッガ61、テールランプ62、全面デアイサ63、及びシートヒータ64のオンオフを切り替える。具体的には、制御装置90は、車両100の乗員によるリアデフォッガ61用の図示しないスイッチの操作に応じて、リアデフォッガ61のオンオフを切り替える。制御装置90は、車両100の乗員によるテールランプ62用の図示しないスイッチの操作に応じて、テールランプ62のオンオフを切り替える。制御装置90は、車両100の乗員による全面デアイサ63用の図示しないスイッチの操作に応じて、全面デアイサ63のオンオフを切り替える。制御装置90は、車両100の乗員によるシートヒータ64用の図示しないスイッチの操作に応じて、シートヒータ64のオンオフを切り替える。
【0025】
また、制御装置90は、後述する増大制御にあたって、第1グループに対応する補正量である第1補正量B1、及び第2グループに対応する補正量である第2補正量B2を予め記憶している。なお、第1補正量B1及び第2補正量B2の詳細は後述する。
【0026】
なお、制御装置90は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサを含む回路(circuitry)として構成し得る。制御装置90は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、又はそれらの組み合わせを含む回路として構成してもよい。プロセッサは、CPU及び、RAM並びにROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる媒体を含む。
【0027】
上記のうち、リアデフォッガ61、テールランプ62、全面デアイサ63、及びシートヒータ64は、車両100の乗員によってオンオフが切り替え可能な電気機器である。一方、制御装置90、アクセル操作センサ71、車速センサ72、及びクランク角センサ73は、電気機器ではあるものの、車両100が駆動している限りオン状態が維持される。すなわち、これらは、車両100の乗員によって、車両100の駆動中に任意にオンオフが切り替えることのできない電気機器である。
【0028】
<増大制御>
次に、制御装置90が行う増大制御について説明する。制御装置90は、内燃機関10が始動してから停止するまで、増大制御を繰り返し実行する。
【0029】
図2に示すように、制御装置90は、増大制御を開始すると、ステップS11の処理を進める。ステップS11において、制御装置90は、内燃機関10がアイドル運転中であるか否かを判定する。具体的には、制御装置90は、アクセル操作量ACCがゼロであり、且つ、車速SPが規定車速以下である場合に、内燃機関10がアイドル運転中であると判定する。規定車速は、例えば時速0~5kmの範囲内の値として予め定められている。ステップS11において、制御装置90は、内燃機関10がアイドル運転中でないと判定する場合(S11:NO)、今回の増大制御を終了し、処理を再びステップS11に進める。一方、ステップS11において、制御装置90は、内燃機関10がアイドル運転中であると判定する場合(S11:YES)、処理をステップS21に進める。
【0030】
ステップS21において、制御装置90は、電気機器が動作しているか否かを判定する。具体的には、制御装置90は、リアデフォッガ61、テールランプ62、全面デアイサ63、及びシートヒータ64のうち、動作している電気機器の数が1つ以上のときに、電気機器が動作していると判定する。ステップS21において、制御装置90は、電気機器が1つも動作していないと判定する場合(S21:NO)、処理をステップS51に進める。
【0031】
ステップS51において、制御装置90は、内燃機関10がアイドル運転中であるときの機関回転速度NEの目標値として、予め定められた初期値Aを設定する。ここで、初期値Aの一例は、数百rpmである。その後、制御装置90は、今回の増大制御を終了し、処理を再びステップS11に進める。
【0032】
一方、ステップS21において、制御装置90は、電気機器が動作していると判定する場合(S21:YES)、処理をステップS22に進める。
ステップS22において、制御装置90は、第2グループに属する電気機器が動作しているか否かを判定する。具体的には、制御装置90は、第2グループに属する全面デアイサ63及びシートヒータ64のうち、動作している電気機器の数が1つ以上のときに、第2グループに属する電気機器が動作していると判定する。したがって、本実施形態において、規定数は、「1」である。ステップS22において、制御装置90は、第2グループに属する電気機器が動作していないと判定する場合(S22:NO)、処理をステップS41に進める。すなわち、制御装置90は、第1グループに属する電気機器が1つ以上動作しており、且つ、第2グループに属する電気機器が1つも動作していない場合に、処理をステップS41に進める。
【0033】
ステップS41において、制御装置90は、内燃機関10がアイドル運転中であるときの機関回転速度NEの目標値として、初期値Aに、第1グループに対応する補正量である第1補正量B1を加算した値を設定する。その結果、初期値Aが設定される場合に比べて、機関回転速度NEが増大される。すなわち、ステップS41の処理は、増大処理の一例である。ここで、第1補正量B1は、例えば以下のように定めている。先ず、第1グループに属する全ての電気機器、すなわちリアデフォッガ61及びテールランプ62の使用電力の合計値を実験等により求める。また、上記の合計値をオルタネータ51により発電するために必要な機関回転速度NEの最低値を実験等により求める。そして、上記の必要な機関回転速度NEの最低値から初期値Aを減算した値を、第1補正量B1として定めている。したがって、第1補正量B1は、第1グループに属する全ての電気機器の使用電力の合計値以上の電力をオルタネータ51が発電可能な値として設定されている。なお、ステップS41において、制御装置90は、第2補正量B2に基づく機関回転速度NEの変更を行わない。その後、制御装置90は、今回の増大制御を終了し、処理を再びステップS11に進める。
【0034】
一方、ステップS22において、制御装置90は、第2グループに属する電気機器が動作していると判定する場合(S22:YES)、処理をステップS31に進める。
ステップS31において、制御装置90は、内燃機関10がアイドル運転中であるときの機関回転速度NEの目標値として、初期値Aに、第2グループに対応する補正量である第2補正量B2を加算した値を設定する。その結果、初期値Aが設定される場合に比べて、機関回転速度NEが増大される。すなわち、ステップS31の処理は、増大処理の一例である。ここで、第2補正量B2は、例えば以下のように定めている。先ず、第2グループに属する全ての電気機器、すなわち全面デアイサ63及びシートヒータ64の使用電力の合計値を実験等により求める。また、上記の合計値をオルタネータ51により発電するために必要な機関回転速度NEの最低値を実験等により求める。そして、上記の必要な機関回転速度NEの最低値から初期値Aを減算した値を、第2補正量B2として定めている。したがって、第2補正量B2は、第2グループに属する全ての電気機器の使用電力の合計値以上の電力をオルタネータ51が発電可能な値として設定されている。本実施形態において、第2補正量B2は、第1補正量B1よりも大きな値である。すなわち、第1補正量B1及び第2補正量B2は異なる。
【0035】
なお、ステップS31において、制御装置90は、第1補正量B1に基づく機関回転速度NEの変更を行わない。すなわち、制御装置90は、第2グループに属する電気機器が動作しており、且つ、第1グループに属する電気機器が動作していると判定する場合であっても、第1補正量B1に基づく機関回転速度NEの変更を行わない。その後、制御装置90は、今回の増大制御を終了し、処理を再びステップS11に進める。
【0036】
<本実施形態の作用>
例えば、内燃機関10がアイドル運転中であり、リアデフォッガ61、テールランプ62、全面デアイサ63、及びシートヒータ64が動作していないものとする。このとき、機関回転速度NEは、初期値Aで一定である。そして、その後に、車両100の乗員によるスイッチのオン操作により、複数の電気機器のうち全面デアイサ63が動作を開始したとする。この場合、仮に、機関回転速度NEが一定に維持されていると、バッテリ52から全面デアイサ63へと供給される電力が不足したり、バッテリ52の電力が減少したりすることがある。そのため、機関回転速度NEを増大させることにより、オルタネータ51が発電する電力を大きくする。具体的には、制御装置90は、機関回転速度NEの目標値として、初期値Aに第2補正量B2を加算した値を設定する。
【0037】
一方、リアデフォッガ61、テールランプ62、全面デアイサ63、及びシートヒータ64が動作していない状態で、例えば、車両100の乗員によるスイッチのオン操作により、リアデフォッガ61が動作を開始したとする。この場合、制御装置90は、機関回転速度NEの目標値として、初期値Aに第1補正量B1を加算した値を設定する。
【0038】
<本実施形態の効果>
(1)本実施形態では、車両100の乗員により全面デアイサ63が動作すると、機関回転速度NEが、初期値Aに第2補正量B2を加算した値に制御される。すなわち、車両100の乗員によるスイッチのオンオフ操作のタイミングで機関回転速度NEが変化する。これにより、車両100の乗員によるスイッチのオンオフ操作に拠らずに機関回転速度NEが変化することが抑制される。その結果、自らの操作に拠らずに機関回転速度NEが変化することで違和感を覚えることは抑制できる。
【0039】
(2)また、仮に、リアデフォッガ61、テールランプ62、全面デアイサ63、及びシートヒータ64の動作状況が変化する度に、機関回転速度NEを変化させたとする。この場合、頻繁に機関回転速度NEが変化することに伴い、車両100の乗員が違和感を覚えることがある。
【0040】
本実施形態では、リアデフォッガ61、テールランプ62、全面デアイサ63、及びシートヒータ64は、使用電力の大きさに応じて、電気機器の数である4つよりも少ない2つのグループに分けられている。そして、各グループ内で動作している電気機器の数に応じたグループの状況毎に機関回転速度NEを変化させるので、各電気機器の動作状況が変化する度に機関回転速度NEが変化することを抑制できる。すなわち、頻繁に機関回転速度NEが変化することに伴い、車両100の乗員が違和感を覚えることも抑制できる。
【0041】
(3)本実施形態では、第2補正量B2は、第1補正量B1よりも大きな値である。そのため、各グループに属する電気機器の使用電力の大小に応じて機関回転速度NEを調整できる。
【0042】
(4)本実施形態では、機関回転速度NEを変更するためのグループの数が2つである。そのため、例えばグループの数が3つ以上の場合と比べて、機関回転速度NEの変更が頻繁に行われることはない。
【0043】
(5)本実施形態において、制御装置90は、第2グループに属する電気機器のうち、動作している電気機器の数が1つ以上のとき、第1補正量B1に基づく機関回転速度NEの変更を行わずに、第2補正量B2のみに基づいて機関回転速度NEを増大させる。一方、制御装置90は、第2グループに属する電気機器のうち、動作している電気機器の数がゼロであり、且つ、第1グループに属する電気機器のうち、動作している電気機器の数が1つ以上のときに、第2補正量B2に基づく機関回転速度NEの変更を行わない。この場合、制御装置90は、第1補正量B1のみに基づいて機関回転速度NEを増大させる。したがって、機関回転速度NEは、第1補正量B1及び第2補正量B2のいずれも増大されていない初期値Aの状態、初期値Aに第1補正量B1のみを加算した値の状態、初期値Aに第2補正量B2のみを加算した値の状態、という3つの状態をとる。このような3段階での機関回転速度NEの調整であれば、車両100の乗員が違和感を覚える可能性は低減できる。また、第1グループに属する電気機器の使用電力は、第2グループに属する電気機器の使用電力に比べて小さい。そのため、例えば、第2グループに属する電気機器のみが動作している状況から、加えて第1グループに属する電気機器が動作しても、第2補正量B2に基づいて機関回転速度NEを増大させておけば、バッテリ52の電力が不足する可能性は低い。
【0044】
(6)本実施形態において、第1補正量B1は、第1グループに属する全ての電気機器の使用電力の合計値以上の電力をオルタネータ51が発電可能な値として設定されている。また、第2補正量B2は、第2グループに属する全ての電気機器の使用電力の合計値以上の電力をオルタネータ51が発電可能な値として設定されている。そのため、各グループに属する全ての電気機器が動作する場合であっても、オルタネータ51により十分な電力が発電される。これにより、同じグループに属する電気機器であれば、動作する電気機器の数が変更されても、発電量の確保のために機関回転速度NEを変更する必要はない。
【0045】
(7)本実施形態において、ステップS31及びステップS41の増大処理は、アクセル操作量ACCがゼロであり、且つ、車速SPが規定車速以下であることを条件に実行される。換言すると、車両100の走行に伴う音が発生しにくくて、車両100の乗員に機関回転速度NEの変化に伴う音が知覚されやすい状況で機関回転速度NEが増大される。このように機関回転速度NEの変化が音の変化として乗員に知覚されやすい状況下で、上記の増大処理に関する技術を適用することは特に好適である。
【0046】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0047】
・上記実施形態において、電気機器の種類は変更してもよい。
例えば、車両100は、バッテリ52の直流電力を交流電力に変換するインバータ、及びその交流電力のアウトレットを備えていることがある。この車両100では、インバータが動作すると、アウトレットから外部の機器に交流電力を供給可能である。こうした車両100では、乗員の操作によりアウトレットに外部の機器が接続され、これによりインバータが電力を出力する。したがって、上記のインバータは、乗員によってオンオフが切り替え可能な電気機器に該当する。このように、乗員がスイッチにより直接的にオンオフを切り替え可能な電気機器だけでなく、間接的にオンオフを切り替え可能な電気機器であってもよい。
【0048】
・上記実施形態において、グループ分けするための使用電力の閾値は変更してもよい。
例えば、閾値は、オルタネータ51の発電能力及びバッテリ52の蓄電能力等に応じて適宜変更できる。
【0049】
・上記実施形態において、グループに属する電気機器の数は変更してもよい。
例えば、閾値の値によっては、テールランプ62の使用電力が閾値未満になり、リアデフォッガ61の使用電力が閾値以上になることがある。この場合、テールランプ62は、第1グループに属し、リアデフォッガ61、全面デアイサ63、及びシートヒータ64は、第2グループに属す。すなわち、第1グループ又は第2グループに属する電気機器の数は、1以上であれば適宜変更してもよい。ただし、いずれかのグループに属する電気機器の数は複数でなければならない。
【0050】
・上記実施形態において、グループの数は変更してもよい。
例えば、第1グループ及び第2グループに加えて、第3グループを備えていてもよい。すなわち、グループの数は、2つ以上、且つ、電気機器の数未満であれば、変更してもよい。
【0051】
・上記実施形態では、第2グループに属する電気機器のうち1つでも動作していれば、第2補正量B2を初期値Aに加算したが、これを変更してもよい。
例えば、ステップS22において、制御装置90は、第2グループに属する全面デアイサ63及びシートヒータ64のうち、動作している電気機器の数が2つ以上のときに、第2グループに属する電気機器が動作していると判定してもよい。すなわち、規定数は、1以上、且つ、グループに属する電気機器の数以下の範囲で変更してもよい。この点、第1グループについても同様である。
【0052】
・上記実施形態において、補正量は変更してもよい。
例えば、第2補正量B2は、第1グループ及び第2グループに属する全ての電気機器の使用電力の合計値以上の電力をオルタネータ51が発電可能な値として設定されていてもよい。
【0053】
・また、例えば、第2補正量B2は、第2グループに属する全面デアイサ63のみの使用電力をオルタネータ51が発電可能な値として設定されていてもよい。同様に、第1補正量B1は、第1グループに属するリアデフォッガ61のみの使用電力をオルタネータ51が発電可能として設定されていてもよい。
【0054】
・上記実施形態において、補正量を用いる条件は変更してもよい。
例えば、制御装置90は、第2グループに属する電気機器が動作しており、且つ、第1グループに属する電気機器が動作していると判定する場合に、第1補正量B1及び第2補正量B2の双方を用いてもよい。具体的には、制御装置90は、内燃機関10がアイドル運転中であるときの機関回転速度NEの目標値として、初期値Aに、第1補正量B1及び第2補正量B2を加算した値を設定してもよい。
【0055】
・上記実施形態における初期値Aは、固定値に限らず、変動値であってもよい。内燃機関10がアイドル運転中のときであっても、例えばバッテリ52の蓄電量、内燃機関10の温度などに応じて、目標とするべき機関回転速度NEは変化する。そこで、初期値Aは、電気機器が動作しているか否かを除いた車両100の各種パラメータに応じて定められる変動値であってもよい。この場合も、予め定められたマップ及び関係式に基づき求められるのであれば、予め定められた初期値Aといえる。
【0056】
・上記実施形態において、増大処理を実行する条件は変更してもよい。
例えば、ステップS11における規定車速は、時速5kmを超えていてもよい。
・また、例えば、ステップS11の処理を省略してもよい。すなわち、制御装置90は、アイドル運転中に限らず、ステップS21以降の処理を実行してもよい。なお、この変更例の場合の初期値Aは、アクセル操作量ACCなどに応じた変動値となる。
【0057】
・上記実施形態において、車両100の構成は変更してもよい。
例えば、車両100は、駆動源としてモータジェネレータを備えていてもよい。この構成において、モータジェネレータが内燃機関10のクランクシャフト11に連結しており、内燃機関10の駆動力に基づき発電可能であれば、そのモータジェネレータが発電機に該当し得る。なお、この場合、オルタネータ51を省略してもよい。
【符号の説明】
【0058】
A…初期値
ACC…アクセル操作量
B1…第1補正量
B2…第2補正量
NE…機関回転速度
SC…クランク角
SP…車速
10…内燃機関
11…クランクシャフト
20…トルクコンバータ
30…自動変速機
41…ディファレンシャル
42…駆動輪
50…ベルト
51…オルタネータ
52…バッテリ
61…リアデフォッガ
62…テールランプ
63…全面デアイサ
64…シートヒータ
71…アクセル操作センサ
72…車速センサ
73…クランク角センサ
90…制御装置
100…車両