(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】自己位置推定システム、自己位置推定方法、プログラム、及び地図生成装置
(51)【国際特許分類】
G01C 21/28 20060101AFI20240820BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20240820BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20240820BHJP
G05D 1/246 20240101ALI20240820BHJP
【FI】
G01C21/28
G09B29/10 A
G09B29/00 A
G05D1/246
(21)【出願番号】P 2021201874
(22)【出願日】2021-12-13
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】松野 喜幸
(72)【発明者】
【氏名】川田 福和
(72)【発明者】
【氏名】田中 和仁
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-159520(JP,A)
【文献】特開2020-021257(JP,A)
【文献】特開2021-047099(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0283905(US,A1)
【文献】国際公開第2020/129247(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G09B 29/00 - 29/14
G05D 1/00 - 1/87
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる時間帯における
地図データであって、地図作成のための
該地図データを取得する第1データ取得手段と、
前記第1データ取得手段により取得された地図データに基づいて地図を夫々作成し、該作成した各地図を組み合わせることで、複数の合成地図候補を作成する候補作成手段と、
前記候補作成手段により作成された各合成地図候補の性能値を算出する性能算出手段と、
前記性能算出手段により算出された合成地図候補の性能値に基づいて、複数の合成地図候補の中から1つの合成地図候補を選択する候補選択手段と、
前記候補選択手段により選択された合成地図候補に基づいて、移動体の自己位置推定を行う自己位置推定手段と、
を備える自己位置推定システム。
【請求項2】
請求項1記載の自己位置推定システムであって、
(1)前記候補作成手段は、N個ずつ地図を組み合わせることで、複数の合成地図候補を作成し、
(2)前記性能算出手段は、前記候補作成手段により作成された各合成地図候補の性能値を算出し、
(3)前記候補選択手段は、前記作成された複数の合成地図候補の中から性能値が最も高い合成地図候補を選択し、該選択した合成地図候補の性能値が所定値以下であるか否かを判定し、
前記候補選択手段は、前記合成地図候補の性能値が所定値以下であると判定した場合、N=N+1とし、
前記候補作成手段、前記性能算出手段、及び前記候補選択手段は、夫々、前記(1)、(2)及び(3)の処理を繰り返し、
前記候補選択手段は、前記合成地図候補の性能値が所定値より大きいと判定した場合、該合成地図候補の各地図を合成し、該合成した合成地図候補を前記自己位置推定手段に出力する、
自己位置推定システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の自己位置推定システムであって、
前記性能算出手段は、
前記各合成地図候補の前記各時間帯に対する性能値を夫々算出し、該算出した性能値の平均値を算出し、
前記候補選択手段は、前記性能算出手段により算出された合成地図候補の性能値の平均値に基づいて、複数の合成地図候補の中から1つの合成地図候補を選択する、
自己位置推定システム。
【請求項4】
請求項3記載の自己位置推定システムであって、
前記性能算出手段は、前記各時間帯に対する合成地図候補の性能値のうち、所定の時間帯に対する性能値に重み付け係数を乗算し、前記性能値の平均値を算出する、
自己位置推定システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1項記載の自己位置推定システムであって、
前記性能算出手段は、前記合成地図候補を作成する際に組み合わせる地図の性能値のうち良い方を、該合成地図候補の性能値とする、
自己位置推定システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか1項記載の自己位置推定システムであって、
前記性能算出手段は、前記各
合成地図候補の性能値として前記移動体の移動中の自己位置トラッキング率又は自己位置推定精度を算出する、
自己位置推定システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1項記載の自己位置推定システムであって、
前記第1データ取得手段は、複数の異なる時間帯及び場所における地図作成のための地図データを取得する、
自己位置推定システム。
【請求項8】
複数の異なる時間帯における
地図データであって、地図作成のための
該地図データを取得するステップと、
前記取得した地図データに基づいて地図を夫々作成し、該作成した各地図を組み合わせることで、複数の合成地図候補を作成するステップと、
前記作成した各合成地図候補の性能値を算出するステップと、
前記算出した合成地図候補の性能値に基づいて、複数の合成地図候補の中から1つの合成地図候補を選択するステップと、
前記選択した合成地図候補に基づいて、移動体の自己位置推定を行うステップと、
を含む、自己位置推定方法。
【請求項9】
複数の異なる時間帯における
地図データであって、地図作成のための
該地図データを取得する処理と、
前記取得した地図データに基づいて地図を夫々作成し、該作成した各地図を組み合わせることで、複数の合成地図候補を作成する処理と、
前記作成した各合成地図候補の性能値を算出する処理と、
前記算出した合成地図候補の性能値に基づいて、複数の合成地図候補の中から1つの合成地図候補を選択する処理と、
前記選択した合成地図候補に基づいて、移動体の自己位置推定を行う処理と、
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【請求項10】
複数の異なる時間帯における
地図データであって、地図作成のための
該地図データを取得する第1データ取得手段と、
前記第1データ取得手段により取得された地図データに基づいて地図を夫々作成し、該作成した各地図を組み合わせることで、複数の合成地図候補を作成する候補作成手段と、
前記候補作成手段により作成された各合成地図候補の性能値を算出する性能算出手段と、
前記性能算出手段により算出された合成地図候補の性能値に基づいて、複数の合成地図候補の中から1つの合成地図候補を選択する候補選択手段と、
を備える地図生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の自己位置を推定する自己位置推定システム、自己位置推定方法、プログラム、及び地図生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の地図に予め環境情報を紐付けており、その複数の地図の中から、現在の環境情報に近い環境情報が紐付けられた地図を選択し、選択した地図に基づいて移動体の自己位置推定を行う自己位置推定システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記自己位置推定システムにおいては、環境によっては環境情報による地図精度に対する影響を予測し難く、紐付ける環境情報の選定が困難となり得る。このため、選定する環境情報によっては自己位置推定精度も低下する虞がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、自己位置推定精度を向上させることができる自己位置推定システム、自己位置推定方法、プログラム、及び地図生成装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
複数の異なる時間帯における地図作成のための地図データを取得する第1データ取得手段と、
前記第1データ取得手段により取得された地図データに基づいて地図を夫々作成し、該作成した各地図を組み合わせることで、複数の合成地図候補を作成する候補作成手段と、
前記候補作成手段により作成された各合成地図候補の性能値を算出する性能算出手段と、
前記性能算出手段により算出された合成地図候補の性能値に基づいて、複数の合成地図候補の中から1つの合成地図候補を選択する候補選択手段と、
前記候補選択手段により選択された合成地図候補に基づいて、移動体の自己位置推定を行う自己位置推定手段と、
を備える自己位置推定システム
である。
この一態様において、(1)前記候補作成手段は、N個ずつ地図を組み合わせることで、複数の合成地図候補を作成し、(2)前記性能算出手段は、前記候補作成手段により作成された各合成地図候補の性能値を算出し、(3)前記候補選択手段は、前記作成された複数の合成地図候補の中から性能値が最も高い合成地図候補を選択し、該選択した合成地図候補の性能値が所定値以下であるか否かを判定し、前記候補選択手段は、前記合成地図候補の性能値が所定値以下であると判定した場合、N=N+1とし、前記候補作成手段、前記性能算出手段、及び前記候補選択手段は、夫々、前記(1)、(2)及び(3)の処理を繰り返し、前記候補選択手段は、前記合成地図候補の性能値が所定値より大きいと判定した場合、該合成地図候補の各地図を合成し、該合成した合成地図候補を前記自己位置推定手段に出力してもよい。
この一態様において、前記性能算出手段は、前記各時間帯に対する合成地図候補の性能値を夫々算出し、該算出した性能値の平均値を算出し、前記候補選択手段は、前記性能算出手段により算出された合成地図候補の性能値の平均値に基づいて、複数の合成地図候補の中から1つの合成地図候補を選択してもよい。
この一態様において、前記性能算出手段は、前記各時間帯に対する合成地図候補の性能値のうち、所定の時間帯に対する性能値に重み付け係数を乗算し、前記性能値の平均値を算出してもよい。
この一態様において、前記性能算出手段は、前記合成地図候補を作成する際に組み合わせる地図の性能値のうち良い方を、該合成地図候補の性能値としてもよい。
この一態様において、前記性能算出手段は、前記各地図候補の性能値として前記移動体の移動中の自己位置トラッキング率又は自己位置推定精度を算出してもよい。
この一態様において、前記第1データ取得手段は、複数の異なる時間帯及び場所における地図作成のための地図データを取得してもよい。
この一態様において、前記性能値を算出するための性能用データを取得する第2データ取得手段を更に備え、前記性能算出手段は、前記第2データ取得手段により取得された性能用データに基づいて、前記各地図候補の性能値を算出してもよい。
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
複数の異なる時間帯における地図作成のための地図データを取得するステップと、
前記取得した地図データに基づいて地図を夫々作成し、該作成した各地図を組み合わせることで、複数の合成地図候補を作成するステップと、
前記作成した各合成地図候補の性能値を算出するステップと、
前記算出した合成地図候補の性能値に基づいて、複数の合成地図候補の中から1つの合成地図候補を選択するステップと、
前記選択した合成地図候補に基づいて、移動体の自己位置推定を行うステップと、
を含む、自己位置推定方法
であってもよい。
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
複数の異なる時間帯における地図作成のための地図データを取得する処理と、
前記取得した地図データに基づいて地図を夫々作成し、該作成した各地図を組み合わせることで、複数の合成地図候補を作成する処理と、
前記作成した各合成地図候補の性能値を算出する処理と、
前記算出した合成地図候補の性能値に基づいて、複数の合成地図候補の中から1つの合成地図候補を選択する処理と、
前記選択した合成地図候補に基づいて、移動体の自己位置推定を行う処理と、
をコンピュータに実行させる、プログラム
であってもよい。
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
複数の異なる時間帯における地図作成のための地図データを取得する第1データ取得手段と、
前記第1データ取得手段により取得された地図データに基づいて地図を夫々作成し、該作成した各地図を組み合わせることで、複数の合成地図候補を作成する候補作成手段と、
前記候補作成手段により作成された各合成地図候補の性能値を算出する性能算出手段と、
前記性能算出手段により算出された合成地図候補の性能値に基づいて、複数の合成地図候補の中から1つの合成地図候補を選択する候補選択手段と、
を備える地図生成装置
であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自己位置推定精度を向上させることができる自己位置推定システム、自己位置推定方法、プログラム、及び地図生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る自己位置推定システムの概略的なシステム構成を示すブロック図である。
【
図3】自己位置推定部が移動体に設けられ地図生成装置は移動体以外に設けられた構成を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る地図生成装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。
【
図5】各時間帯データ1~Nに対する地図iと地図jとを合成した合成地図候補のトラッキング率の平均値の算出方法を示す図である。
【
図6】各時間帯1~4に対する地
図1と地
図2とを合成した合成地図候補のトラッキング率の平均値の算出方法の一具体例を示す図である。
【
図7】合成地図候補の生成方法のフローを示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態に係る自己位置推定方法のフローを示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態に係る自己位置推定システムによる自己位置推定精度の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る自己位置推定システムの概略的なシステム構成を示すブロック図である。
図2は、本実施形態に係る移動体を示す図である。
【0010】
本実施形態に係る自己位置推定システム1は、
図2に示す如く、移動体10に搭載されていてもよい。移動体10は、例えば、自律的に移動を行う自律移動型ロボットとして構成されている。自己位置推定システム1は、カメラなどのセンサ11により検出されたセンサ情報に基づいて自己位置推定を行う。
【0011】
自己位置推定システム1は、
図1に示す如く、環境地図を生成する地図生成装置2と、環境地図に基づいて自己位置を推定する自己位置推定部3と、を備えている。
【0012】
なお、自己位置推定システム1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの内部メモリと、HDD(Hard Disk Drive)やSDD(Solid State Drive)などのストレージデバイスと、ディスプレイなどの周辺機器を接続するための入出力I/Fと、装置外部の機器と通信を行う通信I/Fと、を備えた通常のコンピュータのハードウェア構成を有する。
【0013】
地図生成装置2及び自己位置推定部3は、移動体10に搭載される構成であるが、これに限定されない。地図生成装置2及び自己位置推定部3のうち少なくとも一方が移動体10以外に設けられる構成であってもよい。
【0014】
例えば、
図3に示す如く、自己位置推定部3が移動体10に設けられ、地図生成装置2は移動体10以外に設けられていてもよい。この場合、地図生成装置2は、生成した環境地図を、無線通信などを用いて、移動体10の自己位置推定部3に対し送信してもよい。
【0015】
本実施形態に係る地図生成装置2は、後述の如く、オフラインで合成地図候補を環境地図として生成する。なお、地図生成装置2は、オンラインで合成地図候補を環境地図として生成してもよい。
【0016】
本実施形態に係る自己位置推定システム1は、時刻による日照条件の変化に対応した地図を生成し、その生成した地図に基づいて、より高精度な自己位置推定を行う。このため、自己位置推定システム1は、後述の如く、異なる時間帯で作成した地図の組合せのうち、トラッキング率などの性能が最も良くなる地図の組合せを選択し、その選択した組み合わせた地図の合成を行う。
【0017】
これにより、時刻による日照条件の変化に対応した高精度な地図を生成でき、その生成した地図に基づいてより高精度な自己位置推定を行うことができる。
【0018】
図4は、本実施形態に係る地図生成装置の概略的なシステム構成を示すブロック図である。本実施形態に係る地図生成装置2は、地図データを取得する第1データ取得部21と、性能用データを取得する第2データ取得部22と、合成地図候補を作成する候補作成部23と、合成地図候補の性能値を算出する性能算出部24と、合成地図候補を選択する候補選択部25と、を備えている。
【0019】
第1データ取得部21は、第1データ取得手段の一具体例である。第1データ取得部21は、複数の異なる時間帯における地図作成のための地図データを取得する。これにより、時刻による日照条件の変化に対応した地図データを取得できる。
【0020】
第1データ取得部21は、例えば、7時~9時、9時~11時、11時~13時などの異なる時間帯における地図データを取得する。第1データ取得部21は、複数の異なる時間帯及び場所における地図作成のための地図データを取得してもよい。これにより、時刻による日照条件の変化だけでなく、場所の変化に対応した地図データを取得できる。
【0021】
第1データ取得部21は、ストレージデバイスなどに予め記憶された地図データを取得してもよい。また、ユーザなどにより地図データが第1データ取得部21に入力されてもよく、予め第1データ取得部21に記憶されていてもよい。第1データ取得部21は、取得した地図データを候補作成部23に出力する。
【0022】
第2データ取得部22は、第2データ取得手段の一具体例である。第2データ取得部22は、後述のトラッキング率や位置誤差などの合成地図候補の性能値を算出するための性能用データを取得する。第2データ取得部22は、例えば、異なる時間帯における性能用データ(時間帯データ1、時間帯データ2、・・・・・など)を夫々取得する。
【0023】
第2データ取得部22は、ストレージデバイスなどに予め記憶された性能用データを取得してもよい。また、ユーザにより性能用データが第2データ取得部22に入力されてもよく、予め第2データ取得部22に記憶されていてもよい。第2データ取得部22は、取得した性能用データを性能算出部24に出力する。
【0024】
候補作成部23は、候補作成手段の一具体例である。候補作成部23は、第1データ取得部21により取得された地図データに基づいて地図を夫々作成する。候補作成部23は、作成した各地図を組み合わせることで、複数の合成地図候補を作成する。
【0025】
例えば、候補作成部23は、異なる時間帯における、地図データ1、地図データ2、地図データ3、・・・に基づいて、地
図1、地
図2、地
図3・・・を作成する。そして、候補作成部23は、作成した地
図1と地
図2を組み合わせ、地
図2と地
図3とを組み合わせ、・・・・、合成地図候補(地
図1+地
図2)1、合成地図候補(地
図2+地
図3)2、・・・を作成する。
【0026】
なお、上記組み合わせパターンは一例であり、候補作成部23は、任意のパターンで複数の地図を組み合わせてもよい。例えば、候補作成部23は、3つ以上の地図を組み合わせて合成地図候補を作成してもよい。候補作成部23は、作成した合成地図候補を性能算出部24に出力する。
【0027】
性能算出部24は、性能算出手段の一具体例である。性能算出部24は、第2データ取得部22により取得された性能用データに基づいて、候補作成部23により作成された各合成地図候補の性能値を予測値として算出する。性能算出部24は、各合成地図候補の性能値として、移動体10の移動中の自己位置トラッキング率又は自己位置推定精度を算出しているが、これに限定されない。性能算出部24は、各合成地図候補の性能値として、他の統計量などを算出してもよい。以下、各合成地図候補の性能値が移動体10のトラッキング率である場合の一例について説明する。
【0028】
性能算出部24は、性能用データとして、異なる時間帯におけるトラッキング率を算出するために必要なデータ(以下、時間帯データ)を用いる。性能算出部24は、各時間帯データに対する合成地図候補のトラッキング率を夫々算出する。
【0029】
例えば、性能算出部24は、合成地図候補を構成する各地図のトラッキング率を夫々算出し、算出したトラッキング率のうちより高く良い方を、その合成地図候補のトラッキング率とする。なお、性能算出部24は、合成地図候補の各時間帯データに対するトラッキング率の平均値を、その合成地図候補のトラッキング率としてもよい。
【0030】
性能算出部24は、算出した各時間帯に対する合成地図候補のトラッキング率の平均値を算出する。
【0031】
図5は、各時間帯データ1~Nに対する地図iと地図jとを合成した合成地図候補(地図i+地図j)のトラッキング率の平均値の算出方法を示す図である。
性能算出部24は、下記式を用いて、各時間帯1~Nに対する合成地図候補(地図i+地図j)のトラッキング率の平均値が最大となる地図の組み合わせ{i
*, j*}を算出する。
【数1】
【0032】
なお、性能算出部24は、下記式を用いて、各時間帯に対する合成地図候補のトラッキング率のうち、所定の時間帯データに対するトラッキング率に重み付け係数λ
nを乗算し、合成地図候補のトラッキング率の平均値が最大となる地図の組み合わせ{i
*, j*}を算出してもよい。
【数2】
【0033】
例えば、夜時間帯など所定の時間帯において確実に自己位置推定できるようにしたい場合がある。その場合、上述の如く、その所定の時間帯に対するトラッキング率に重み付け係数を乗算し重み付けを行うことで、所定の時間帯においてより確実に自己位置推定を行うことができる。
【0034】
図6は、各時間帯データ1~4に対する地
図1と地
図2とを合成した合成地図候補(地
図1+地
図2)のトラッキング率の平均値の算出方法の一具体例を示す図である。
【0035】
例えば、性能算出部24は、時間帯データ1に対して、地
図1のトラッキング率を60%、地
図2のトラッキング率を90%として算出する。性能算出部24は、算出したトラッキング率のうちより高く良い方である地
図2のトラッキング率90%を、その合成地図候補のトラッキング率とする。
【0036】
性能算出部24は、同様にして、時間帯データ2~4に対する、合成地図候補のトラッキング率85%、80%、75%を、夫々算出する。性能算出部24は、算出した時間帯データ1~4に対するトラッキング率90%、85%、80%、75%の平均値を82.50として算出する。性能算出部24は、各時間帯データ1~4に対する他の合成地図候補(地図i+地図j)のトラッキング率の平均値についても上記同様に算出する。
【0037】
候補選択部25は、候補選択手段の一具体例である。候補選択部25は、性能算出部24により算出された合成地図候補のトラッキング率の平均値に基づいて、複数の合成地図候補の中から1つの合成地図候補を選択する。候補選択部25は、例えば、複数の合成地図候補の中から、トラッキング率の平均値が最も高い合成地図候補を選択する。
【0038】
候補選択部25は、選択した合成地図候補を構成する各地図を重ね合わせ各地図の合成を行う。なお、候補作成部23は、任意の合成方法で合成地図候補の各地図を合成してもよい。候補選択部25は、合成後の合成地図候補を自己位置推定部3に出力する。
【0039】
ところで、候補作成部23は、上述の如く、作成した各地図を任意に組み合わせ、合成地図候補を作成した場合、組み合わる地図の数が増加するに従って、組み合わせ数が増加し計算量も増加する。
【0040】
これに対し、本実施形態において、候補作成部23は、以下のように、地図の組み合わせ数を2(N=2)から開始して徐々に増加させ、候補選択部25は合成地図候補のトラッキング率(性能値)の平均値が所定値に到達すると、その到達した合成地図候補を自己位置推定部3に出力する。これにより、所定値以上の性能を満たした合成地図候補に基づいて高精度に自己位置推定を行いつつ、その計算量を効果的に抑制できる。
いる。
【0041】
図7は、上述した合成地図候補の生成方法のフローを示すフローチャートである。Nの初期値を2とする(N=2)。
【0042】
(1)候補作成部23は、N個ずつ地図を組み合わせることで、複数の合成地図候補を作成する(ステップS101)。
【0043】
(2)性能算出部24は、候補作成部23により作成された各合成地図候補のトラッキング率の平均値を算出する(ステップS102)。
【0044】
(3)候補選択部25は、作成された複数の合成地図候補の中からトラッキング率の平均値が最も高い合成地図候補を選択する(ステップS103)。候補選択部25は、選択した合成地図候補のトラッキング率の平均値が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS104)。
【0045】
候補選択部25は、合成地図候補のトラッキング率の平均値が所定値以下であると判定した場合(ステップS104のYES)、N=N+1として、上記(ステップS101)の処理に戻る。
【0046】
一方で、候補選択部25は、合成地図候補のトラッキング率の平均値が所定値より大きいと判定した場合(ステップS104のNO)、選択した合成地図候補の各地図を合成し、その合成後の合成地図候補を自己位置推定部3に出力する(ステップS105)。
【0047】
自己位置推定システム1は、例えば、移動体10のセンサ情報から地図生成と自己位置推定を同時に行うSLAM (Simultaneous Localization and Mapping)を実行する。自己位置推定システム1は、カメラなどを用いて、VSLAM(Visual Simultaneous Localization and Mapping) を実行してもよい。
【0048】
自己位置推定部3は、自己位置推定手段の一具体例である。自己位置推定部3は、地図生成装置2の候補選択部25により選択された合成地図候補に基づいて、移動体10の自己位置推定を行う。
【0049】
自己位置推定部3は、移動体10のセンサ情報と、候補選択部25により選択された合成地図候補と、に基づいて、両データの点群同士をマッチングすることで、点群位置の三次元変換値を算出する。自己位置推定部3は、算出した位置の三次元変換値に基づいて、移動体10の自己位置を推定する。
【0050】
移動体10は、自己位置推定部3により推定された自己位置に基づいて、自律的に移動する。
【0051】
続いて、本実施形態に係る自己位置推定方法のフローについて説明する。
図8は、本実施形態に係る自己位置推定方法のフローを示すフローチャートである。
【0052】
第1データ取得部21は、複数の異なる時間帯における地図を作成するための地図データを取得する(ステップS201)。
【0053】
第2データ取得部22は、合成地図候補のトラッキング率を算出するための性能用データを取得する(ステップS202)。
【0054】
候補作成部23は、第1データ取得部21により取得された地図データに基づいて地図を夫々作成し、該作成した各地図を組み合わせることで、複数の合成地図候補を作成する(ステップS203)。
【0055】
性能算出部24は、第2データ取得部22により取得された性能用データに基づいて、候補作成部23により作成された各合成地図候補のトラッキング率を算出する(ステップS204)。
【0056】
候補選択部25は、性能算出部24により算出された合成地図候補のトラッキング率に基づいて、複数の合成地図候補の中から1つの合成地図候補を選択する(ステップS205)。
【0057】
自己位置推定部3は、候補選択部25により選択された合成地図候補に基づいて、移動体10の自己位置推定を行う(ステップS206)。
【0058】
続いて、本実施形態に係る自己位置推定システム1による自己位置推定精度の評価を以下のように行い、その結果を説明する。本評価では、朝から夜にかけ時間帯を変えながらマッピング用とテスト用それぞれのデータセットを計測し、照明条件の変化に対する自己位置推定精度の評価を行っている。
【0059】
上記
図6に示す地図の合成をマッピング用データセットから作成した地図群に対して行った結果、8時台と17時台に計測した地図の組み合わせが最適な組み合わせとして選択された。地図の合成の元となった時間に計測された合成地図候補と、合成した合成地図候補とに各時刻のデータセットを流した際の自己位置推定誤差の最大値は
図9のようになった。
【0060】
合成前の地図では、地図作成時の時刻とテスト時の時刻が異なると自己位置推定精度が悪くなる傾向がある。一方、合成を行った地図に対しては、どの時間帯でも自己位置推定精度が良好に維持されている。これらの結果により、様々な日照条件でも安定した自己位置推定を行うことができる自己位置推定システム1を構築することができたと確認できる。
【0061】
以上、本実施形態に係る自己位置推定システム1によれば、時刻による日照条件の変化に対応した高精度な地図を生成でき、その生成した地図に基づいてより高精度な自己位置推定を行うことができる。すなわち、地図精度を向上させ、自己位置推定精度を向上させることができる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0063】
本発明は、例えば、
図7及び
図8に示す処理を、プロセッサにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0064】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。
【0065】
プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0066】
上述した各実施形態に係る自己位置推定システム1を構成する各部は、プログラムにより実現するだけでなく、その一部または全部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェアにより実現することもできる。
【符号の説明】
【0067】
1 自己位置推定システム、2 地図生成装置、3 自己位置推定部、10 移動体、11 センサ、21 第1データ取得部、22 第2データ取得部、23 候補作成部、24 性能算出部、25 候補選択部