(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】樹脂組成物、光ファイバのセカンダリ被覆材料、光ファイバ及び光ファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 25/104 20180101AFI20240820BHJP
C03C 25/47 20180101ALI20240820BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C03C25/104
C03C25/47
G02B6/44 301A
G02B6/44 331
G02B6/44 301B
(21)【出願番号】P 2021527573
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2020022125
(87)【国際公開番号】W WO2020255734
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2019113482
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】浜窪 勝史
(72)【発明者】
【氏名】徳田 千明
(72)【発明者】
【氏名】岩口 矩章
(72)【発明者】
【氏名】徳田 一弥
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-217011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0321265(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/00
C08F 2/00
C08F 290/00
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、無機酸化物粒子と、を含む樹脂組成物であり、
前記無機酸化物粒子が、
粒径が10nm以上20nm以下であるA粒子群、粒径が40nm以上60nm以下であるB粒子群、及び粒径が80nm以上130nm以下であるC粒子群からなる群より選択される少なくとも2種の粒子群を含み、
それぞれの粒子群の割合が、前記無機酸化物粒子の全質量を基準として20質量%以上である、光ファイバ被覆用の樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機酸化物粒子が、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む粒子である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機酸化物粒子が疎水性である、請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、光ファイバのセカンダリ被覆材料。
【請求項5】
コア及びクラッドを含むガラスファイバと、
前記ガラスファイバに接して前記ガラスファイバを被覆するプライマリ樹脂層と、
前記プライマリ樹脂層を被覆するセカンダリ樹脂層と、を備え、
前記セカンダリ樹脂層が、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物からなる、光ファイバ。
【請求項6】
コア及びクラッドを含むガラスファイバと、
前記ガラスファイバに接して前記ガラスファイバを被覆するプライマリ樹脂層と、
前記プライマリ樹脂層を被覆するセカンダリ樹脂層と、を備え、
前記セカンダリ樹脂層が無機酸化物粒子を含み、
前記無機酸化物粒子が、
粒径が10nm以上20nm以下であるA粒子群、粒径が40nm以上60nm以下であるB粒子群、及び粒径が80nm以上130nm以下であるC粒子群からなる群より選択される少なくとも2種の粒子群を含み、
それぞれの粒子群の割合が、前記無機酸化物粒子の全質量を基準として20質量%以上である、光ファイバ。
【請求項7】
コア及びクラッドを含むガラスファイバの外周に、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後に紫外線を照射することにより前記樹脂組成物を硬化させる硬化工程と、
を含む、光ファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物、光ファイバのセカンダリ被覆材料、光ファイバ及び光ファイバの製造方法に関する。本出願は、2019年6月19日出願の日本出願第2019-113482号に基づく優先権を主張し、当該日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、光ファイバは、光伝送体であるガラスファイバを保護するための被覆樹脂層を有している。被覆樹脂層は、通常プライマリ樹脂層及びセカンダリ樹脂層を備えている。
【0003】
光ファイバは、光ファイバに側圧が付与された際に発生する微小な曲げにより誘起される伝送損失の増加を小さくするために、側圧特性に優れることが求められている。例えば、特許文献1では、合成石英を原料とするフィラーを含有する紫外線硬化型樹脂組成物を用いてセカンダリ樹脂層を形成することで、光ファイバの側圧特性を改善することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係る樹脂組成物は、オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、無機酸化物粒子と、を含む樹脂組成物であり、上記無機酸化物粒子が、異なる体積平均粒径を有する複数の粒子群を含み、上記体積平均粒径がX線小角散乱によって測定される、光ファイバ被覆用の樹脂組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る光ファイバの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
樹脂組成物へのフィラーの導入は、樹脂組成物の塗布性を低下させる要因となる。
【0008】
本開示は、セカンダリ樹脂層に求められる高い側圧特性を実現できると共に、塗布性にも優れる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0009】
[本開示の効果]
本開示によれば、セカンダリ樹脂層に求められる高い側圧特性を実現できると共に、塗布性にも優れる樹脂組成物を提供することができる。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。本開示の一態様に係る樹脂組成物は、オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、無機酸化物粒子と、を含む樹脂組成物であり、上記無機酸化物粒子が、異なる体積平均粒径を有する複数の粒子群を含み、上記体積平均粒径がX線小角散乱によって測定される、光ファイバ被覆用の樹脂組成物である。上記樹脂組成物は、光ファイバ被覆用の紫外線硬化性樹脂組成物として好適に用いることができる。
【0011】
無機酸化物粒子として、異なる体積平均粒径を有する複数の粒子群を用いることで、セカンダリ樹脂層に求められる高い側圧特性を実現できると共に、塗布性にも優れる樹脂組成物とすることができる。また、得られる光ファイバの耐油性が向上する。
【0012】
一態様において、無機酸化物粒子は、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む粒子であってよい。これらの粒子は、樹脂組成物中での分散性に優れ、ヤング率を調整し易い。
【0013】
一態様において、無機酸化物粒子は疎水性であってよい。疎水性の基が導入された無機酸化物粒子は、樹脂組成物中での分散性に優れる。
【0014】
一態様において、無機酸化物粒子は、体積平均粒径が5nm以上35nm以下であるA粒子群、体積平均粒径が35nm超70nm以下であるB粒子群、及び体積平均粒径が70nm超150nm以下であるC粒子群からなる群より選択される少なくとも2種を含んでよい。これにより、セカンダリ樹脂層に求められる高い側圧特性をより実現し易く、また塗布性にもより優れる樹脂組成物とすることができる。
【0015】
本開示の一態様に係る光ファイバのセカンダリ被覆材料は、上記樹脂組成物を含む。上記樹脂組成物を用いてセカンダリ樹脂層を形成することで、側圧特性に優れる光ファイバを得ることができる。
【0016】
本開示の一態様に係る光ファイバは、コア及びクラッドを含むガラスファイバと、ガラスファイバに接して該ガラスファイバを被覆するプライマリ樹脂層と、プライマリ樹脂層を被覆するセカンダリ樹脂層と、を備え、セカンダリ樹脂層が、上記樹脂組成物の硬化物からなる。このような光ファイバは側圧特性に優れる。
【0017】
本開示の一態様に係る光ファイバは、コア及びクラッドを含むガラスファイバと、ガラスファイバに接して該ガラスファイバを被覆するプライマリ樹脂層と、プライマリ樹脂層を被覆するセカンダリ樹脂層と、を備え、セカンダリ樹脂層が無機酸化物粒子を含み、無機酸化物粒子が、異なる体積平均粒径を有する複数の粒子群を含み、体積平均粒径がX線小角散乱によって測定される、光ファイバである。このような光ファイバは側圧特性に優れる。
【0018】
本開示の一態様に係る光ファイバの製造方法は、コア及びクラッドから構成されるガラスファイバの外周に、上記樹脂組成物を塗布する塗布工程と、塗布工程の後に紫外線を照射することにより樹脂組成物を硬化させる硬化工程と、を含む。これにより、側圧特性に優れる光ファイバを作製することができる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る樹脂組成物及び光ファイバの具体例を、必要により図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されず、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
<樹脂組成物>
本実施形態に係る樹脂組成物は、オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、無機酸化物粒子とを含む。
【0021】
(無機酸化物粒子)
無機酸化物粒子としては特に制限されないが、樹脂組成物中での分散性に優れ、ヤング率を調製し易いという観点から、二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化チタン(チタニア)、酸化スズ及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む粒子であることが好ましい。廉価である、表面処理がし易い、紫外線透過性を有する、樹脂層に適度な硬さを付与し易い等の観点から、本実施形態に係る無機酸化物粒子として、シリカ粒子を用いることがより好ましい。
【0022】
無機酸化物粒子は疎水性であることが好ましい。具体的には、無機酸化物粒子の表面は、シラン化合物で疎水処理されていることが好ましい。ここで疎水処理とは、無機酸化物粒子の表面に疎水性の基を導入することを言う。疎水性の基が導入された無機酸化物粒子は、樹脂組成物中での分散性に優れる。疎水性の基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の紫外線硬化性の反応性基、又は、炭化水素基(例えば、アルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基)等の非反応性基であってもよい。無機酸化物粒子が反応性基を有する場合、ヤング率が高い樹脂層を形成し易くなる。
【0023】
反応性基を有するシラン化合物としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、8-アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、7-オクテニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシラン等のシラン化合物が挙げられる。
【0024】
アルキル基を有するシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン及びオクチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0025】
無機酸化物粒子は、樹脂組成物への添加時に、分散媒に分散されていてよい。分散媒に分散された無機酸化物粒子を用いることで、樹脂組成物中に無機酸化物粒子を均一に分散でき、樹脂組成物の保存安定性を向上することができる。分散媒としては、樹脂組成物の硬化を阻害しなければ、特に限定されない。分散媒は、反応性であっても、非反応性であってもよい。
【0026】
反応性の分散媒として、(メタ)アクリロイル化合物、エポキシ化合物等のモノマーを用いてもよい。(メタ)アクリロイル化合物としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、及びグリセリンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。分散媒として、後述するモノマーで例示する(メタ)アクリロイル化合物を用いてもよい。
【0027】
非反応性の分散媒として、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン系溶媒、メタノール(MeOH)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のアルコール系溶媒、又は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル系溶媒を用いてもよい。非反応性の分散媒の場合、ベース樹脂と分散媒に分散された無機酸化物粒子とを混合した後、分散媒の一部を除去して樹脂組成物を調製してもよい。
【0028】
無機酸化物粒子は、異なる体積平均粒径を有する複数の粒子群を含む。単一の体積平均粒径を有する一種の粒子群を含む樹脂組成物と比して、優れた塗布性を維持しつつ、硬化後に高い側圧特性や耐油性を実現することができる。無機酸化物粒子は、異なる体積平均粒径を有する2種の粒子群を含んでいてもよく、3種の粒子群を含んでいてもよい。ただし、複数の粒子群を含めることの効果が飽和すること、また製造方法の簡略化と言う観点から、当該粒子群の種類は4種以下とすることができる。各粒子群に含まれる粒子の体積平均粒径は、樹脂組成物をX線小角散乱法で分析することで測定されるものである。
【0029】
無機酸化物粒子は、体積平均粒径が5nm以上35nm以下であるA粒子群、体積平均粒径が35nm超70nm以下であるB粒子群、及び体積平均粒径が70nm超150nm以下であるC粒子群からなる群より選択される少なくとも2種を含むことができる。これにより、優れた塗布性を維持しつつ、硬化後に高い側圧特性を実現することがより容易となる。この観点から、A粒子群の体積平均粒径は10nm以上35nm以下であってよく、10nm以上30nm以下であってよく、また、B粒子群の体積平均粒径は35nm超60nm以下であってよく、40nm以上60nm以下であってよく、C粒子群の体積平均粒径は80nm以上150nm以下であってよく、80nm以上140nm以下であってよい。
【0030】
異なる体積平均粒径を有する複数の粒子群を含めることによる効果を得易い観点から、それぞれの粒子群の割合は、無機酸化物粒子の全質量を基準として少なくとも5質量%以上であってよく、10質量%以上であってよい。
【0031】
樹脂組成物中における無機酸化物粒子の体積平均粒径は、原料として使用される無機酸化物粒子の平均粒径、当該粒径の粒度分布、無機酸化物粒子の表面状態(表面の水酸基量、官能基の種類等)を調整することにより、変動させることができる。
【0032】
X線小角散乱法は、散乱角5°以下で得られるX線散乱強度を解析して、散乱体の形状、分布等を定量化する手法である。体積平均粒径は、X線の散乱強度プロファイルから求めることができる。すなわち、測定したX線の散乱強度と、粒子径及び粒子径分布の関数で示される理論式から計算したX線散乱強度とが近似するように、非線形最小2乗法によってフィッティングを行うことで、体積平均粒径を求めることができる。
【0033】
このようなX線の散乱強度プロファイルを解析して、微小な散乱体の粒度分布を求めることは公知であり、その解析方法としては、例えば、Schmidtらによる公知の解析方法、例えばI.S.Fedorova and P.Schmidt:J.Appl.Cryst.11、405、1978に記載の方法を用いることができる。
【0034】
無機酸化物粒子の含有量は、オリゴマー、モノマー及び無機酸化物粒子の総量を基準として5質量%以上60質量%以下が好ましいが、5質量%以上50質量%以下であってもよく、10質量%以上40質量%以下であってもよい。無機酸化物粒子の含有量が5質量%以上であると、側圧特性に優れる(ヤング率に優れる)樹脂層を形成し易くなる。無機酸化物粒子の含有量が60質量%以下であると、樹脂組成物の塗布性を向上し易くなり、強靱な樹脂層を形成することができる。
【0035】
(ベース樹脂)
本実施形態に係るベース樹脂は、オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有する。
【0036】
オリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有することが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させて得られるオリゴマーを用いることができる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリル酸についても同様である。
【0037】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びビスフェノールA・エチレンオキサイド付加ジオールが挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナートが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0038】
樹脂層のヤング率を調整する観点から、ポリオール化合物の数平均分子量(Mn)は、300以上3000以下であってもよい。
【0039】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを合成する際の触媒として、一般に有機スズ化合物が使用される。有機スズ化合物としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸2-エチルヘキシル)、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチル)及びジブチルスズオキシドが挙げられる。易入手性又は触媒性能の点から、触媒としてジブチルスズジラウレート又はジブチルスズジアセテートを使用することが好ましい。
【0040】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー合成時に炭素数5以下の低級アルコールを使用してもよい。低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール及び2,2-ジメチル-1-プロパノールが挙げられる。
【0041】
オリゴマーは、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを更に含有してもよい。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、グリシジル基を2以上有するエポキシ樹脂に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて得られるオリゴマーを用いることができる。
【0042】
モノマーとしては、重合性基を1つ有する単官能モノマー、重合性基を2つ以上有する多官能モノマーを用いることができる。モノマーは、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシベンジルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキサノールアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有モノマー;N-アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン、3-(3-ピリジン)プロピル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート等の複素環含有(メタ)アクリレート;マレイミド、N-シクロへキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等のN-置換アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマーが挙げられる。
【0044】
多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,20-エイコサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソペンチルジオールジ(メタ)アクリレート、3-エチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリプロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレートが挙げられる。
【0045】
光重合開始剤としては、公知のラジカル光重合開始剤の中から適宜選択して使用することができる。光重合開始剤として、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM Resins社製)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン(Omnirad 907、IGM Resins社製)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Omnirad TPO、IGM Resins社製)及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(Omnirad 819、IGM Resins社製)が挙げられる。
【0046】
樹脂組成物は、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、増感剤等を更に含有してもよい。
【0047】
シランカップリング剤としては、樹脂組成物の硬化の妨げにならなければ、特に限定されない。シランカップリング剤として、例えば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシ-エトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド及びγ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドが挙げられる。
【0048】
樹脂組成物の粘度は、45℃で300mPa・s以上3500mPa・s以下であることが好ましく、300mPa・s以上2500mPa・s以下であることがより好ましく、300mPa・s以上2000mPa・s以下であることが更に好ましい。樹脂組成物の粘度が高すぎると塗布性が低下し、樹脂層を形成する際の被覆径が安定せずに光ファイバが断線し易くなる。一方、樹脂組成物の粘度が低すぎると、自己調芯力が働きにくく、偏肉が発生し易くなる。
【0049】
樹脂組成物は、光ファイバのセカンダリ被覆材料として好適に用いることができる。本実施形態に係る樹脂組成物をセカンダリ樹脂層に用いることで、側圧特性に優れる光ファイバを作製することができる。
【0050】
<光ファイバ>
図1は、本実施形態に係る光ファイバの一例を示す概略断面図である。光ファイバ10は、コア11及びクラッド12を含むガラスファイバ13と、ガラスファイバ13の外周に設けられたプライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15を含む被覆樹脂層16とを備えている。当該光ファイバ10において、セカンダリ樹脂層15は、上記の樹脂組成物の硬化物からなる。
【0051】
クラッド12はコア11を取り囲んでいる。コア11及びクラッド12は石英ガラス等のガラスを主に含み、例えば、コア11にはゲルマニウムを添加した石英ガラス、又は、純石英ガラスを用いることができ、クラッド12には純石英ガラス、又は、フッ素が添加された石英ガラスを用いることができる。
【0052】
図1において、例えば、ガラスファイバ13の外径(D2)は100μm以上125μm以下程度であり、ガラスファイバ13を構成するコア11の直径(D1)は、7μm以上15μm以下程度である。被覆樹脂層16の厚さは、通常、22μm以上70μm以下程度である。プライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15の各層の厚さは、5μm以上50μm以下程度であってもよい。
【0053】
ガラスファイバ13の外径(D2)が125μm程度で、被覆樹脂層16の厚さが60μm以上70μm以下の場合、プライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15の各層の厚さは、10μm以上50μm以下程度であってよく、例えば、プライマリ樹脂層14の厚さが35μmで、セカンダリ樹脂層15の厚さが25μmであってよい。光ファイバ10の外径は、245μm以上265μm以下程度であってよい。
【0054】
ガラスファイバ13の外径(D2)が125μm程度で、被覆樹脂層16の厚さが27μm以上48μm以下の場合、プライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15の各層の厚さは、10μm以上38μm以下程度であってよく、例えば、プライマリ樹脂層14の厚さが25μmで、セカンダリ樹脂層15の厚さが10μmであってよい。光ファイバ10の外径は、179μm以上221μm以下程度であってよい。
【0055】
ガラスファイバ13の外径(D2)が100μm程度で、被覆樹脂層16の厚さが22μm以上37μm以下の場合、プライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15の各層の厚さは、5μm以上32μm以下程度であってよく、例えば、プライマリ樹脂層14の厚さが25μmで、セカンダリ樹脂層15の厚さが10μmであってよい。光ファイバ10の外径は、144μm以上174μm以下程度であってよい。
【0056】
本実施形態に係る樹脂組成物は、セカンダリ樹脂層に適用することができる。セカンダリ樹脂層は、上記無機酸化物粒子とベース樹脂とを含む樹脂組成物を硬化させて形成することができる。これにより、光ファイバの側圧特性を向上することができる。
【0057】
本実施形態に係る光ファイバの製造方法は、コア及びクラッドから構成されるガラスファイバの外周に、上記樹脂組成物を塗布する塗布工程と、塗布工程の後に紫外線を照射することにより樹脂組成物を硬化させる硬化工程と、を含む。
【0058】
セカンダリ樹脂層のヤング率は、23℃で1300MPa以上が好ましく、1300MPa以上3600MPa以下がより好ましく、1400MPa以上3000MPa以下が更に好ましい。セカンダリ樹脂層のヤング率が1300MPa以上であると、側圧特性を向上し易く、3600MPa以下であると、セカンダリ樹脂層に適度な靱性を付与できるため、セカンダリ樹脂層に割れ等が発生し難くなる。
【0059】
なお、光ファイバを複数本並列し、リボン用樹脂で一体化して光ファイバリボンとする場合があるが、本開示の樹脂組成物はリボン用樹脂として使用することもできる。これにより、光ファイバと同様に光ファイバリボンの側圧特性を向上することができると共に、塗布性にも優れるリボン用樹脂とすることができる。
【0060】
分散媒に分散された無機酸化物粒子は、樹脂層の硬化後も樹脂層中に分散した状態で存在する。反応性の分散媒を使用した場合、無機酸化物粒子は樹脂組成物に分散媒ごと混合され、分散状態が維持されたまま樹脂層中に取り込まれる。非反応性の分散媒を使用した場合、分散媒は少なくともその一部が樹脂組成物から揮発して無くなるが、無機酸化物粒子は分散状態のまま樹脂組成物中に残り、硬化後の樹脂層にも分散した状態で存在する。樹脂層中に存在する無機酸化物粒子は、電子顕微鏡で観察した場合に、一次粒子が分散した状態で観察される。したがって、硬化後の樹脂層(例えばセカンダリ樹脂層)をX線小角散乱法で分析した場合においても、樹脂組成物の場合と同様に、無機酸化物粒子が、異なる体積平均粒径を有する複数の粒子群を含むことが観察される。すなわち、本実施形態に係る光ファイバは、コア及びクラッドを含むガラスファイバと、ガラスファイバに接して該ガラスファイバを被覆するプライマリ樹脂層と、プライマリ樹脂層を被覆するセカンダリ樹脂層と、を備え、セカンダリ樹脂層が無機酸化物粒子を含み、無機酸化物粒子が、異なる体積平均粒径を有する複数の粒子群を含み、体積平均粒径がX線小角散乱によって測定される、光ファイバということができる。
【0061】
プライマリ樹脂層14は、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー、光重合開始剤及びシランカップリング剤を含む樹脂組成物を硬化させて形成することができる。プライマリ樹脂層用の樹脂組成物は、従来公知の技術を用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー、光重合開始剤及びシランカップリング剤としては、上記ベース樹脂で例示した化合物から適宜、選択してもよい。ただし、プライマリ樹脂層を形成する樹脂組成物は、セカンダリ樹脂層を形成するベース樹脂とは異なる組成を有している。
【実施例】
【0062】
以下、本開示に係る実施例及び比較例を用いた評価試験の結果を示し、本開示を更に詳細に説明する。なお、本開示はこれら実施例に限定されない。
【0063】
[セカンダリ樹脂層用の樹脂組成物]
(オリゴマー)
オリゴマーとして、分子量600のポリプロピレングリコール、2,4-トリレンジイソシアネート及び2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させることにより得られたウレタンアクリレートオリゴマー(UA)と、エポキシアクリレートオリゴマー(EA)とを準備した。
【0064】
(モノマー)
モノマーとして、イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社の商品名「IBXA」)、トリプロピレングリコールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社の商品名「TPGDA」)及び2-フェノキシエチルアクリレート(共栄社化学株式会社の商品名「ライトアクリレートPO-A」)を準備した。
【0065】
(光重合開始剤)
光重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドを準備した。
【0066】
(無機酸化物粒子)
無機酸化物粒子として、以下の疎水性シリカ粒子を含むシリカゾル(MEK分散液)を準備した。
シリカ粒子a:メタクリル基を有するシランカップリング剤により処理された「粒径10nm以上20nm以下」の粒子
シリカ粒子b:メタクリル基を有するシランカップリング剤により処理された「粒径40nm以上60nm以下」の粒子
シリカ粒子c:メタクリル基を有するシランカップリング剤により処理された「粒径80nm以上130nm以下」の粒子
【0067】
ウレタンアクリレートオリゴマー20質量部、エポキシアクリレートオリゴマー20質量部、ライトアクリレートPO-A20質量部、IBXA25質量部、TPGDA15質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン1質量部、及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド1質量部を混合して、ベース樹脂を調製した。
【0068】
次いで、表1に示すシリカ粒子の含有量となるように、各シリカゾルをベース樹脂と混合した後、分散媒であるMEKの大部分を減圧除去して、実施例及び比較例の樹脂組成物(セカンダリ樹脂層用の樹脂組成物)をそれぞれ調製した。
【0069】
【0070】
[プライマリ樹脂層用の樹脂組成物]
(オリゴマー)
分子量2000のポリプロピレングリコール、2,4-トリレンジイソシアネート、2-ヒドロキシエチルアクリレート及びメタノールを反応させ得られるウレタンアクリレートオリゴマーを準備した。
【0071】
(樹脂組成物)
ウレタンアクリレートオリゴマー75質量部、ノニルフェノールEO変性アクリレート12質量部、N-ビニルカプロラクタム6質量部、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート2質量部、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド1質量部、及びγ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン1質量部を混合して、プライマリ樹脂層用の樹脂組成物を調製した。
【0072】
[光ファイバの作製]
コア及びクラッドから構成される直径125μmのガラスファイバの外周に、プライマリ樹脂層用の樹脂組成物と、実施例又は比較例の樹脂組成物をセカンダリ樹脂層用として塗布し、その後、紫外線を照射させることで樹脂組成物を硬化させ、厚さ35μmのプライマリ樹脂層とその外周に厚さ25μmのセカンダリ樹脂層を形成して光ファイバを作製した。線速は1500m/分とした。
【0073】
[各種評価]
実施例及び比較例で得られたセカンダリ樹脂層用の樹脂組成物、並びに光ファイバを用いて、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0074】
(X線小角散乱測定)
長さ8mm、2mmφのボロシリケートガラス製キャピラリーに、シリンジを用いて実施例又は比較例で得られた樹脂組成物を注入した。そして、ガラスキャピラリーの開口を粘土にて封止し、樹脂組成物測定用サンプルとした。この測定用サンプルに対し垂直にX線を入射させ、入射X線に対して5度以下の微小角度(小角)でサンプルから後方に散乱されるX線を、二次元検出器で測定した。二次元検出器では、360°方向に散乱される散乱パターンを取得した。
【0075】
また、実施例又は比較例で得られた光ファイバを、隙間無く重ならないように並べ、1cm×4cmサイズの光ファイバ測定用サンプルとした。この測定用サンプルに対し垂直にX線を入射させ、入射X線に対して5度以下の微小角度(小角)でサンプルから後方に散乱されるX線を、二次元検出器で測定した。二次元検出器では、360°方向に散乱される散乱パターンをそれぞれ取得した。ここで360°の二次元散乱パターンには、光ファイバの側面での反射に起因する成分が含まれるため、測定にはこの成分が見られない40°の成分を用いた。
【0076】
なお、シリカ粒子の粒径が小さい領域(概ね50nm未満)については、主にあいちシンクロトロン光センターのビームライン「BL8S3」を用いて、粒径が大きい領域(概ね50nm以上)については、あいちシンクロトロン光センターのビームライン「BL8S3」とSPring-8のビームライン「BL19B2」とを用いて、散乱パターンを取得した。それぞれの実験条件は以下のとおりとした。
「BL8S3」:X線エネルギー13.5keV、カメラ長4m、検出器R-AXISIV++。
「BL19B2」:X線エネルギー18keV、カメラ長42m、検出器PILATUS 2M。
【0077】
上記のとおり得られたX線の散乱強度プロファイルを、粒径・空孔解析ソフトウェア「NANO-Solver、Ver.3.7」(株式会社リガク製)を用いて解析した。より具体的には、測定したX線散乱強度と、解析ソフトで計算したX線散乱強度の値とが近似するように、非線形最小2乗法によってフィッティングを行った。フィッティング結果から、無機酸化物粒子の粒子群の数、体積平均粒径を算出した。なお、解析に当たり、無機酸化物粒子が完全な球状であると仮定した。粒子群の数は以下の手順で求めた。粒子群を1種類と仮定してフィッティングを行い、結果が規格化分散60%以下であれば1種類の粒子群であるとした。規格化分散が60%超の場合、粒子群を2種類と仮定して再度フィッティングを行い、結果が規格化分散60%以下であれば、2種類の粒子群であるとした。規格化分散が60%超の場合、粒子群を3種類と仮定して再度フィッティングを行い、結果が規格化分散60%以下であれば、3種類の粒子群であるとした。以下、同様に繰り返し行い、粒子群の数を求めた。
【0078】
測定の結果、樹脂組成物測定用サンプルを用いた場合及び光ファイバ測定用サンプルを用いた場合共に、算出される各シリカ粒子群の体積平均粒径の値に変わりはなかった。
【0079】
(粘度)
樹脂組成物の45℃における粘度を、B型粘度計(ブルックフィ-ルド社製の「デジタル粘度計DV-II」、使用スピンドル:No.18、回転数:10rpm)を用いて測定した。
【0080】
(ヤング率)
ヤング率は、上記のとおり作製した光ファイバからガラスファイバを抜き取って得られるパイプ状の被覆樹脂層(長さ:50mm以上)を用いて、23±2℃、50±10%RHの環境下で引張試験(標線間距離:25mm)を行い、2.5%割線値から求めた。なお、これにより求められるヤング率は、実質的にセカンダリ樹脂層のヤング率とみなすことができる。
【0081】
(塗布性)
上記のとおり作製した光ファイバについて、断線の有無を確認することで、樹脂組成物の塗布性を評価した。断線が無い場合をA評価とし、断線を確認した場合をB評価とした。
【0082】
(耐油性)
上記のとおり作製した光ファイバを、樹脂被覆層全体が完全に浸るように85℃に加熱したジェリーに60日間浸漬した。ジェリーとしてはミネラルオイル(シグマアルドリッチ製)を用いた。ジェリー浸漬後の光ファイバについて、25℃又は-40℃における波長1550nmでの伝送特性を測定した。各温度での光ファイバ保持時間は4時間以上とした。そして、25℃での伝送損失と-40℃での伝送損失の差が0.05dB/km以下である場合をA評価とし、0.05dB/km超である場合をB評価とした。
【0083】
【0084】
実施例の樹脂組成物は、セカンダリ樹脂層に求められる高い側圧特性を実現できると共に、塗布性にも優れることが確認できた。
【符号の説明】
【0085】
10 光ファイバ
11 コア
12 クラッド
13 ガラスファイバ
14 プライマリ樹脂層
15 セカンダリ樹脂層
16 被覆樹脂層